説明

電力制御方法、電力制御装置、および画像形成装置

【課題】交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給する際のスルーアップ制御に要する時間の短縮および突入電流の抑制を図ることを目的とする。
【解決手段】交流電源からの交流電力を負荷に供給する電力制御装置であって、交流電源と負荷との間に設けられたスイッチング手段と、スイッチング手段のオンオフ動作を制御する制御回路と、を備え、制御回路は、交流電力の各半サイクルにおいて、スイッチング手段のオンオフによって電圧を負荷に2回印加し、1回目の電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、交流電力の半サイクルごとに、電圧の印加時間を順次増加させるように、スイッチング手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御方法、電力制御装置、および画像形成装置に関する。本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、およびこれらの複合機などの電子写真方式の画像形成装置などの電力制御に利用される。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、通常、用紙上に形成されたトナー像を熱で溶融して定着させるためにヒーターを備える。近年においては、画像形成装置におけるショートウォームアップの要望にこたえるためヒーターが大電力化する傾向にある。ヒーターが大電力化すると、通電開始時の突入電流が大きくなり、これにより電源電圧が低下して同じ電源系統内の蛍光灯にちらつきが生じるなどの悪影響が発生する。
【0003】
ところで、従来において、温度調整のために、ヒーターに供給する電力を交流電源の半サイクル単位で間引き制御することが行われている。このような制御において、蛍光灯のちらつきを抑えるために、2本のヒーターに対して間引き制御を行い、かつ交流電圧の欠落が生じないようにヒーターを互い違いにオンすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、複数のヒーターに対し、大電力のヒーターにはPWM制御を行い、小電力のヒーターには位相制御を行うことが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、複数のヒーターに対して独立して間引き制御を行い、同時にオンとなる場合にはそれを半サイクル分ずらしてオンすることが提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、突入電流の影響を抑制するために、ヒーターへの通電開始時にスルーアップ制御が行われる。スルーアップ制御では、交流の各サイクルにおいてゼロ点から徐々にオンする区間の間隔を広げる位相制御を行い、最終的に全点灯状態へ遷移する。これによって、突入電流を抑えながら徐々にヒーターを暖めることができる。
【0007】
図8には、従来のスルーアップ制御におけるタイミングチャートが示されている。
【0008】
図8において、交流電源の電圧(交流電圧)について、ゼロクロスポイントを検出し、半サイクル(半波)ごとに位相制御を行う。つまり、スイッチング素子を、各半サイクルの適当な位相角でオンし、位相角πでオフする。半サイクルごとにオンの時間を増加させる。スイッチング素子として、非ゼロクロスタイプのフォトトライアックカプラとトライアックが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−48090号公報
【特許文献2】特開2002−63981号公報
【特許文献3】特開平11−339930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された従来技術による場合は、半サイクル単位でヒーターのオンオフを制御するので、きめ細かな制御を行うことが難しく、ショートウォームアップと蛍光灯のちらつき抑制の両方を十分に満足させることが困難である。また2本1組みのヒーターを制御対象とするため、設計上の制約が生じる。
【0011】
特許文献2に示された従来技術は、ヒーターの電力に応じてドライバを最適化して少サイズ化を狙うものであるが、PWM制御のための回路が複雑化するという問題がある。
【0012】
特許文献3に示された従来技術による場合は、特許文献1の場合と同様に、半サイクル単位での制御であるのできめ細かな制御を行うことが難しい。また、設計上の制約がある。
【0013】
また、図8に示すスルーアップ制御では、半サイクル内において位相制御を行うので、きめ細かな制御を行うことができ、ショートウォームアップと蛍光灯のちらつき抑制の両方をある程度満足させることができる。しかし、上に述べたように、ヒーターが大電力化することによってこれが十分とは言えなくなってきている。
【0014】
例えば、ヒーターとして1200ワット程度の大電力のハロゲンヒータを想定した場合に、突入電流を抑えながらスルーアップ制御を行うとすると、半サイクルを1波と数えてスルーアップ制御のために70波を要することとなる。スルーアップ制御に要する波数は、商用電源ラインにおけるインピーダンス、突入電流による電圧降下分、およびその繰り返し頻度などによって経験的に算出される。
【0015】
スルーアップ制御の間は、ヒーターを全点灯するのではないため、ヒーターの立ち上がりが遅くなってしまう。例えば、交流電源が50Hzの場合は、半波70波のために約0.7秒の立ち上がり時間を要する。したがって、その分だけウォームアップ時間が長くなってしまう。
【0016】
このように、従来において、ショートウォームアップの要望と突入電流の低減による蛍光灯のちらつき抑制の両方を満足させることはできなかった。
【0017】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給する際のスルーアップ制御に要する時間の短縮および突入電流の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る電力制御方法は、交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給するための電力制御方法であって、前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に2回印加し、1回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、前記交流電力の半サイクルごとに、前記電圧の印加時間を順次増加させる。
【0019】
本発明に係る電力制御装置は、交流電源からの交流電力を負荷に供給する電力制御装置であって、前記交流電源と前記負荷との間に設けられたスイッチング手段と、前記スイッチング手段のオンオフ動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に2回印加し、1回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、前記交流電力の半サイクルごとに、前記電圧の印加時間を順次増加させるように、前記スイッチング手段を制御する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給する際のスルーアップ制御に要する時間の短縮および突入電流の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の定着部の構成の例を示す図である。
【図3】画像形成装置の電力制御に関係する部分の説明のためのブロック図である。
【図4】電力制御装置の構成の例を説明するためのブロック図である。
【図5】スルーアップ制御におけるタイミングチャートの例を示す図である。
【図6】スルーアップ制御用データの例を示す図である。
【図7】トライアックを用いた場合の電力制御装置の構成の例を示す図である。
【図8】従来のスルーアップ制御におけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る電力制御方法を用いた画像形成装置1について説明する。
【0023】
図1には、一実施形態に係る画像形成装置1の構成の例が示されている。
【0024】
図1において、画像形成装置1は、タンデム型のプリントエンジンを内蔵した電子写真方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、一般に複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼ばれる装置であって、コピー、ネットワークプリンティング(PCプリント)、ファックス、およびスキャナなどの機能を集約した装置である 画像形成装置1は、原稿読取り部GA、画像形成部(プリントエンジン)GB、給紙部GC、操作部GD、および電源部GEなどからなる。
【0025】
原稿読取り部GAは、原稿読取り装置12および自動原稿送り装置12bなどを備える。
【0026】
画像形成部(プリントエンジン)GBは、画像形成光学系13、画像形成プロセス系14、定着装置15、および画像処理部16などを備える。
【0027】
給紙部GCは、第1給紙カセット17aおよび第2給紙カセット17bなどを備える。操作部GDは、操作パネル18などを備える。電源部GEは、直流電源回路19aおよび電力制御装置19bなどを備える。
【0028】
画像読取り装置12は、自動原稿送り装置12bで搬送された原稿、または原稿台ガラス上に直接に載置された原稿の画像を、光学的に読み取ってRGBの三原色の電気信号に変換する。変換された電気信号(画像データ)は、画像処理部16に転送されて種々のデータ処理が施されるとともに、YMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の各再現色に変換される。
【0029】
操作パネル18は、例えばタッチパネルを有する液晶表示画面を備えている。操作者(ユーザー)は、操作パネル18を用いて画像形成装置1を操作する。
【0030】
画像形成プロセス系14は、図示しないYMCKの各色のイメージングユニットを備え、画像形成光学系13からのレーザ光に基づいて各色のトナー画像を形成する。各イメージングユニットは、感光体ドラム、現像ユニット、帯電装置、および残留トナーや残留電荷のクリーニング装置などを含んで構成される。イメージングユニットで形成されたトナー画像は、図示しない中間転写ベルトに一次転写され、さらに用紙に二次転写される。二次転写によって表面にトナー画像が形成された用紙は、定着装置15によって定着され、排紙トレー15b上に排出される。
【0031】
第1給紙カセット17aおよび第2給紙カセット17bには、それぞれ異なるサイズの用紙が収納されている。使用される用紙のサイズに応じて、いずれかの給紙カセット17a、17bから用紙が一枚ずつ送り出され、用紙搬送路PAに沿って搬送される。なお、給紙カセット17a、17bからの用紙の取り出しおよび用紙の搬送は図示しない各種のローラーによって行われる。
【0032】
図2には定着装置15の構成の例が示されている。
【0033】
図2において、定着装置15は、内部にヒーター42を有する加熱ローラー41、加圧ローラー43、クリーニングローラー44、搬送ローラー47、分離爪45,46、温度センサー48、およびこれらの部材を収納するケース49を備える。
【0034】
ヒーター42は、例えばハロゲンヒーターであって、加熱ローラー41の内部に装着され、電源部GEから電力を供給されることで発熱する。ヒーター42が発熱することにより加熱ローラー41が加熱される。
【0035】
加圧ローラー43は、加熱ローラー41に対向して配置され、これらにより用紙PPが挟まれて熱圧着され、かつ用紙搬送路PAに沿って前方へ送られる。分離爪45、46は、先端部が加熱ローラー41または加圧ローラー43の表面に接するように配置され、用紙がこれらのローラーに巻き付くことを防止する。
【0036】
温度センサー48は、加熱ローラー41および加圧ローラー43の表面の温度を検出するためのものである。温度センサー48の出力する温度検知信号Stは、電力制御装置19bに送られる。電力制御装置19bは、温度検知信号Stをフィードバック信号として用い、後述するようにヒーター42に供給する電力を制御し、これによって加熱ローラー41および加圧ローラー43の表面の温度を制御する。温度センサー48として、例えば、熱電対、サーミスタ、またはその他の半導体センサーなどが用いられる。
【0037】
次に、電源部GEについて説明する。
【0038】
図3には、画像形成装置1の電力制御に関する説明のためのブロック図が、図4には電力制御装置19bの構成の例を説明するためのブロック図が、それぞれ示されている。
【0039】
図3において、電源部GEには、上に述べたように、直流電源回路19aおよび電力制御装置19bが設けられ、これらにより、商用の交流電源PSからの交流電力を元にして画像形成装置1の全体に直流および交流の電力を供給する。
【0040】
直流電源回路19aは、AC/DC変換器(整流回路)、およびDC/DC変換器などを備え、交流電源PSの交流電力を直流電力に変換する。直流電源回路19aとして、コンデンサインプット形の整流回路やスイッチング回路を備えたレギュレータ、その他の種々の方式のものを用いることができる。直流電源回路19aからの直流電力は、直流負荷である二次側負荷FK2に供給される。
【0041】
二次側負荷FK2は、例えば、各部に設けられたローラーやファンなどを駆動するためのモーター、ソレノイド、表示装置など、また、画像形成プロセスのための回路、制御回路、その他の電子回路などである。直流電源回路19aは、二次側負荷37の種類に応じて、種々の電圧の直流電力を供給する。
【0042】
電力制御装置19bは、スイッチング部31、ゼロクロス検出回路32、および制御回路33などを備える。
【0043】
電力制御装置19bによって、交流電源PSを元にして、交流負荷FK1に交流電力が供給される。なお、図3においては、交流負荷FK1として定着装置15のみが示されているが、図示されていない定着装置15以外の種々の交流負荷FK1に交流電力が供給される。
【0044】
ここでは、電力制御装置19bによって定着装置15のヒーター42に供給する交流電力を制御する方法について主に説明する。なお、電力制御装置19bの動作に必要な直流電源は、例えば直流電源回路19aから供給される。
【0045】
スイッチング部31は、交流電源PSと交流負荷FK1であるヒーター42との間に設けられる。スイッチング部31には、非ゼロクロスタイプのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )などのスイッチング素子が用いられる。
【0046】
IGBTは、ゼロクロスポイントとは無関係にターンオフを行うことができ、換言すれば自己消弧能力があるので、交流電力の電圧の半サイクル内の任意の位相角でオンオフをコントロールすることができる。
【0047】
ゼロクロス検出回路32は、交流電源PSから供給される交流電圧のゼロクロス点を検出し、ゼロクロス検出信号Szとして制御回路33に送る。制御回路33は、ゼロクロス検出信号Szに基づいて、スイッチング部31のオンまたはオフのタイミングを決定し、決定した所定のタイミングでオンオフ動作を行わせるための制御信号Scをスイッチング部31に出力する。
【0048】
図4において、制御回路33は、CPU(Central Processing Unit )33a、ゲート制御回路33b、および、RAMまたはROMなどのメモリ33cなどを備える。CPU33aおよびメモリ33cには、制御を行うための適当な種々のプログラム(コンピュータプログラム)が格納されている。CPU33aがプログラムを実行することにより、制御回路33における機能の一部または全部が実現される。
【0049】
なお、CPU33aは複数個であってもよい。CPU33aに代えてまたはこれとともに、DSP(Digital Signal Processor )を用いてもよい。また、制御回路33は、これらの素子の他、インターフェース回路素子、入出力回路素子、A/D変換素子、D/A変換素子、演算素子、論理回路素子、その他の周辺回路素子、ディスクリートな電子回路素子など、種々のハードウエア回路のための素子を備えることもある。
【0050】
CPU33aは、ゼロクロス検出回路32からのゼロクロス検出信号Sz、およびメモリ33cに記憶されたスルーアップ制御用データTDなどに基づいて、スイッチング部31のオンオフ動作のタイミングを決定し、ゲート制御回路33bに指令信号Ssを出力する。
【0051】
ゲート制御回路33bは、CPU33aからの指令信号Ssに基づいて、スイッチング部31のオンオフ動作を制御するための制御信号Sc(Sc1,Sc2)を生成し、スイッチング部31に出力する。つまり、スイッチング部31の各スイッチング素子Q1,Q2のゲートに対し、オン動作に対応する期間において所定の電圧値を有する制御信号Sc1,Sc2を出力する。
【0052】
メモリ33cは、種々のプログラムおよびデータを格納する。本実施形態においては、特に、スルーアップ制御に関するスルーアップ制御用データTDを記憶する。
【0053】
スイッチング部31は、IGBTである2つのスイッチング素子Q1,Q2を備える。2つのスイッチング素子Q1,Q2による向き合い回路となっており、これにより交流電圧のプラス側とマイナス側の両方向の制御が行われる。各スイッチング素子Q1,Q2はフリーホイールダイオードを内蔵している。ゲート制御回路33bからの制御信号Scによって、スイッチング素子Q1,Q2の各ゲートが制御され、そのオンオフ動作が制御される。
【0054】
制御回路33は、ヒーター42への電力供給の開始時(立ち上がり時)において、突入電流の影響を抑制するためにスルーアップ制御を行う。スルーアップ制御では、ヒーター42への供給電力を時間の経過とともに徐々に増加させる。つまり、ヒーター42への電力供給を開始する以前は、ヒーター42の温度は低く抵抗値も低いので、電力の供給の開始時に流れる電流を制限するために、位相制御を行って供給する電圧を低くする。ヒーター42の温度が高くなって抵抗値が高くなるにしたがって、供給する電圧を増大させていき、最後には位相制御された所定の電圧、または交流電源PSの全電圧が印加されるようにする。
【0055】
本実施形態において、スルーアップ制御においては、交流電力の各半サイクルにおいて、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフによって電圧をヒーター42に2回印加し、1回目の電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了する。そして、交流電力の半サイクルごとに、電圧の印加時間つまりオン時間を順次増加させるように、スイッチング素子Q1,Q2を制御する。
【0056】
このように、スルーアップ制御時に、半サイクル内において、交流電圧を2回に渡って印加する。印加する2回の電圧は、互いに同じ電圧値とする。つまり、同一の半サイクル内における1回目と2回目の印加時間が互いに等しくなるように制御する。これによって、印加する電圧の電圧値を大きくすることなく、各半サイクルにおけるヒーター42への供給電力を増大することができる。ヒーター42に流れる突入電流は、印加される電圧の大きさに比例するので、突入電流を増大させることなく、大きな電力を短時間で供給することができる。
【0057】
なお、制御回路33によるスイッチング部31のスルーアップ制御において、互いに隣接する半サイクル間における印加時間の増加量が一定となるように制御してもよい。また、互いに隣接する半サイクル間においてヒーター42に供給される電力量の増加量が一定となるように制御してもよい。
【0058】
また、スルーアップ制御時の交流電力の各半サイクルにおいて、スイッチング素子のオンオフによって電圧をヒーター42に複数回印加し、交流電力の半サイクルごとに、ヒーター42に印加する電圧の最大値を順次増加させるように制御してもよい。
【0059】
制御回路33は、スルーアップ制御時以外であってもヒーター42の電力制御を行う。例えば、定常制御においては、温度検知信号Stに基づいて、ヒーター42を所定の温度にするための制御信号Scを生成する。
【0060】
また、スルーアップ制御とともに、またはスルーアップ制御を行うことなく、ヒーター42などの交流負荷FK1への電力供給を終了する際に、スルーダウン制御を行うこともある。スルーダウン制御では、交流負荷FK1への供給電力を時間の経過とともに徐々に減少させ、最後に零にする。この場合においても、上に述べたスルーアップ制御と同様に、半サイクル内において交流電圧を2回に渡って印加することができる。これによって、各半サイクルにおける交流負荷FK1への供給電力の制御が行い易くなるので、スルーダウン制御に要する時間を短縮することが可能である。
【0061】
なお、スイッチング素子として非ゼロクロスタイプのトライアックを用いた場合の電力制御装置19jの構成の例が図7に示されている。
【0062】
図7において、電力制御装置19jは、トライアック131、ゼロクロス検出回路132、CPU133、およびゲート制御回路134などを備える。ゲート制御回路134からトライアック131に点弧のためのトリガ信号が出力されることによって、トライアック131はオンし、ゼロクロスポイントにおいてオフする。
【0063】
次に、電力制御装置19bによるスルーアップ制御についてさらに詳しく説明する。
【0064】
図5には本実施形態のスルーアップ制御におけるタイミングチャートの例が示されており、図6にはスルーアップ制御用データTD1,2の例が示されている。図5および図6において、交流電源PSの電圧の半サイクルを1波として示している。スルーアップ制御が開始された最初の半サイクルを第1波とし、順次、第2波、第3波…とする。
【0065】
なお、図5においては、スルーアップ制御の途中経過が部分的に省略され、スルーアップ制御が行われる波数を少なくして示されている。
【0066】
図5において、交流電源PSの電圧(交流電圧)について、ゼロクロス検出回路32によってゼロクロスポイントが検出され、ゼロクロス検出信号Szが出力される。CPU33aは、ゼロクロス検出信号Szに基づいて、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフ動作のタイミングを決定して指令信号Ssを出力する。ゲート制御回路33bは、指令信号Ssに基づいてスイッチング素子Q1,Q2にオンオフ動作を行わせるための制御信号Sc1,Sc2を出力する。これによって、交流負荷FK1であるヒーター42には、位相制御された交流電圧(ヒーター電圧)Vhが印加される。
【0067】
スルーアップ制御において、半サイクル内でスイッチング素子Q1,Q2を2回オンし、ヒーター42に2回に渡ってヒーター電圧Vhを印加する。そして、第1波、第2波、第3波…と進むにつれてオン時間Tが長くなっていき、これによって、各半サイクル内のヒーター電圧Vhの最大値が、V11、V12、V13…というように増大している。
【0068】
1つの半サイクル(0〜πラジアン)内において、1回目の電圧の印加は、位相角φ=0においてオンし、第1オン時間Tfが経過したときの位相角(第1位相角)φf(0<φf<π/2)においてオフする。2回目の電圧の印加は、位相角(第2位相角)φs(π/2<φs<π)においてオンし、第2オン時間Tsが経過したときの位相角πにおいてオフする。
【0069】
本実施形態では、第1オン時間Tfと第2オン時間Tsとは互いに同じである。
【0070】
Tf=Ts
したがって、第1位相角φfと第2位相角φsとは、次の関係がある。
【0071】
φs=π−φf
そうすると、ヒーター42に印加される1回目のヒーター電圧Vhの最大値と1回目のヒーター電圧Vhの最大値とは同じとなる。また、ヒーター42に流れる電流(ヒーター電流)Ihについては、1回目の最大値と2回目の最大値とはほぼ同じとなるが、2回目では1回目と比べてヒーター42の抵抗値が少し高くなるので、2回目の方が1回目よりもヒーター電流Ihは若干少なくなる。したがって、ヒーター42に供給される電力量は、1回目と2回目とでほぼ同じであるか、または2回目の方が1回目よりも若干少なくなる。
【0072】
このように、各半サイクル内において、電圧を2回に分けて印加することにより、半サイクル内においてヒーター42に流れるヒーター電流Ihの最大値つまり突入電流を増大させることなく、大きな電力を供給することができる。したがって、突入電流を抑制した状態で、ヒーター42を早く暖めることができ、スルーアップ制御に要する時間、つまりはウォームアップに要する時間を短縮することができる。蛍光灯のちらつきを抑制し、ウォームアップ時間を短縮することができるので、画像形成装置1のユーザの利便性を向上することができる。
【0073】
例えば、半サイクル内で2回の電圧の印加を行うことができるので、スルーアップ制御に要する波数を、図8に示す1回の場合と比べるとその半分程度に低減して高速に行うことができる。つまり、図8に示す場合に70波を要し約0.7秒の立ち上がり時間を要するとした場合に、本実施形態では、スルーアップ制御を例えば35波で行うことができ、これに要する時間を約0.35秒程度に短縮することが可能である。
【0074】
また、各半サイクル内における1回目と2回目のオン時間を同じにすることにより、ヒーター電流Ihがほぼ均等に分散され、これによる交流電源PSの電圧の降下分が低減される。したがって、突入電流の影響、つまり、例えば蛍光灯のちらつきをより一層効果的に抑制することができる。
【0075】
また、交流負荷FK1であるヒーター42を単体で制御することができるので、従来のように2本1組みとして制御しなければならないような設計上の制約もない。
【0076】
なお、上に述べたスルーアップ制御のために、図6(A)(B)に示すスルーアップ制御用データTD1,2を用いることができる。
【0077】
図6(A)に示すスルーアップ制御用データTD1は、第n波(n=1,2,3…)について、第1オン時間Tfおよび第2オン時間Tsを、例えばテーブル形式で示したものである。第1オン時間Tfおよび第2オン時間Tsは、それぞれ具体的な数値によって記録されている。
【0078】
スルーアップ制御用データTD1は、交流電源PSの周波数に対応して、例えば50Hz用、60Hz用などとして作成しておけばよい。
【0079】
例えば、交流電源PSの周波数が50Hzで、35波でスルーアップ制御を完了するとし、第1オン時間Tfと第2オン時間Tsとが同じでありかつ半サイクル進むごとの増加分が同じであるとすると、Tf1、2、3、4…およびTs1、2、3、4…は、0.14、0.29、0.43、0.57〔ms〕となる。
【0080】
スルーアップ制御用データTD1は、上に述べたようにメモリ33cに格納され、CPU33aにより読み出される。
【0081】
なお、第1オン時間Tfと第2オン時間Tsとが同じである場合には、いずれか一方を省略することができる。
【0082】
また、図6(B)に示すスルーアップ制御用データTD2は、第n波(n=1,2,3…)について、第1位相角φfおよび第2位相角φsを示したものである。第1位相角φfおよび第2位相角φsは、それぞれ具体的な数値によって記録される。スルーアップ制御用データTD2は、交流電源PSの周波数に依存しないので、1つのスルーアップ制御用データTD2によって種々の異なる周波数に対応することができる。
【0083】
スルーアップ制御用データTD2は、例えばメモリ33cに格納され、CPU33aにより読み出される。読み出された第1位相角φf、第2位相角φsに対し、必要に応じて演算を行い、ゲート制御回路33bに指令信号Ssを出力する。
【0084】
なお、第1位相角φfと第2位相角φsとが、φs=π−φfの関係にある場合には、いずれか一方を省略し、他方を演算によって算出することができる。
【0085】
また、スルーアップ制御用データTDに代えて、またはこれとともに、演算式をメモリ33cに記憶しておき、演算によって指令信号Ssを出力するようにしてもよい。
【0086】
上に述べた実施形態においては、同一の半サイクル内における1回目と2回目の印加時間(Tf、Ts)を互いに等しくした。しかし、これに限ることなく、1回目と2回目の印加時間を互いに異ならせてもよい。例えば、2回目の印加時間を1回目よりも長くする。また、次の半サイクルの1回目の印加時間を、前の半サイクルの2回目の印加時間よりも長くする。つまり、時間が進むにしたがって印加時間が長くなるようにする。または、半サイクルの2回目の電圧の印加と次の半サイクルの1回目の電圧の印加とが続くので、2回目の電圧の印加時間を1回目よりも短くしてもよい。
【0087】
また、上に述べた実施形態においては、互いに隣接する半サイクル間における印加時間の増加量を一定とした。しかし、これに限ることなく、互いに隣接する半サイクル間における印加時間の増加量を異ならせてもよい。
【0088】
また、互いに隣接する半サイクル間において負荷に供給される電力量の増加量を一定とするように制御してもよい。そのためには、例えば、ヒーター電圧Vhを印加することによるヒーター電流Ihの変化、またはヒーター電流Ihを流すことによるヒーター42の抵抗値変化などを、実験またはコンピュータによるシミュレーションなどによって求めておき、これらから、負荷に供給される電力量の増加量が一定となるように、第1オン時間Tf、第2オン時間Ts、第1位相角φf、または第2位相角φsを求めればよい。
【0089】
上に述べた実施形態においては、半サイクル内において2回に渡って交流負荷FK1に電圧を印加した。しかし、これに限らず、半サイクル内において3回以上の複数回に渡って交流負荷FK1に電圧を印加してもよい。また、半サイクル内における交流負荷FK1への電圧の印加を、任意のタイミングまたは位相角において行ってよい。IGBTまたはパワーMOSFETなどを用いることにより、任意のタイミングでオンオフを行うことができる。そして、例えば、交流負荷FK1に印加する電圧の最大値を順次増加させるようにすればよい。
【0090】
上に述べた実施形態においては、ヒーター42としてハロゲンヒーターを用いた例を示した。しかしこれ以外に、カーボンヒーター、電熱線、セラミックヒーターまたは誘導加熱(IH:Induction Heating )コイルなどを用いてもよい。また、交流負荷FK1として、ヒーター42以外の種々の負荷を用いることができ、本実施形態のスルーアップ制御または電力制御をそれら種々の交流負荷FK1に対して適用することができる。
【0091】
その他、スイッチング素子Q1,Q2、スイッチング部31、制御回路33、電力制御装置19b、定着装置15、電源部GE、または画像形成装置1の全体または各部の構成、構造、形状、寸法、回路、個数、材質、種類、処理の内容または順序またはタイミングなどは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置
19b 電力制御装置
31 スイッチング部(スイッチング手段)
32 ゼロクロス検出回路
33 制御回路(制御手段)
33a CPU
33b ゲート制御回路(制御手段)
42 ヒーター(負荷)
PS 交流電源
FK1 交流負荷(負荷)
GE 電源部
Q1,Q2 スイッチング素子(スイッチング手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給するための電力制御方法であって、
前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に2回印加し、
1回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、
2回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、
前記交流電力の半サイクルごとに、前記電圧の印加時間を順次増加させる、
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
同一の前記半サイクル内における前記1回目と前記2回目の前記印加時間を互いに等しくする、
請求項1記載の電力制御方法。
【請求項3】
互いに隣接する前記半サイクル間における前記印加時間の増加量を一定とする、
請求項2記載の電力制御方法。
【請求項4】
互いに隣接する前記半サイクル間において前記負荷に供給される電力量の増加量を一定とする、
請求項2記載の電力制御方法。
【請求項5】
交流電力をスイッチング手段を介して負荷に供給するための電力制御方法であって、
前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に複数回印加し、
前記交流電力の半サイクルごとに、前記負荷に印加する電圧の最大値を順次増加させる、
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項6】
交流電源からの交流電力を負荷に供給する電力制御装置であって、
前記交流電源と前記負荷との間に設けられたスイッチング手段と、
前記スイッチング手段のオンオフ動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に2回印加し、1回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、前記交流電力の半サイクルごとに、前記電圧の印加時間を順次増加させるように、前記スイッチング手段を制御する、
ことを特徴とする電力制御装置。
【請求項7】
同一の前記半サイクル内における前記1回目と前記2回目の前記印加時間が互いに等しい、
請求項6記載の電力制御装置。
【請求項8】
交流電源から交流電力が供給される負荷を備えた画像形成装置であって、
前記交流電源と前記負荷との間に設けられたスイッチング手段と、
前記スイッチング手段のオンオフ動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記交流電力の各半サイクルにおいて、前記スイッチング手段のオンオフによって電圧を前記負荷に2回印加し、1回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角0において開始し、2回目の前記電圧の印加を当該半サイクルの位相角πにおいて終了し、前記交流電力の半サイクルごとに、前記電圧の印加時間を順次増加させるように、前記スイッチング手段を制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記負荷は、定着装置に設けられたヒーターである、
請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61900(P2013−61900A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201402(P2011−201402)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】