説明

電力制御装置

【課題】インバータと、リアクトル、スイッチング素子および整流素子を有する昇圧コンバータと、平滑用の第1および第2コンデンサとを備えた電力制御装置において、昇圧コンバータのリアクトルと第1および第2コンデンサの劣化を個別に判定可能とする。
【解決手段】電力制御装置20は、第1リレー41および第1コンデンサ31とリアクトルLとの間に配置された第2リレー42と、昇圧コンバータ23のリアクトルLとダイオードD1との間に配置された第3リレー43と、リアクトルLに直列に接続されると共にトランジスタTr2に並列に接続された抵抗素子33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータと、リアクトル、スイッチング素子および整流素子を有する昇圧コンバータと、入力側および出力側の平滑コンデンサとを備えた電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力制御装置としては、動力を入出力可能な電動機を駆動するためのインバータ回路と、システムメインリレーを介して直流電源の正極側に接続されるリアクトルを有すると共に直流電源の電圧を昇圧してインバータ回路に供給する昇圧回路と、昇圧回路の直流電源側の電圧を平滑化する第1コンデンサと、昇圧回路のインバータ回路側の電圧を平滑化する第2コンデンサとを備え、インバータ回路に過電流が流れたときに、システムメインリレーをオフすると共に電動機がトルクを出力することなく電力を消費するようにインバータ回路を制御することで第1および第2コンデンサに蓄えられた電荷を放電させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電力制御装置では、インバータ回路に過電流が流れたのに伴う第1および第2コンデンサの放電に際して、第1および第2コンデンサの放電継続時間が計測され、当該放電継続時間が所定の閾値よりも短い場合には、第1および第2コンデンサの少なくとも一方が異常である(正常時に比べて容量が低下している)と判定される。なお、この種の電力制御装置として、バッテリにスイッチを介して接続されると共にバッテリからの直流電力を交流電力に変換するパワートランジスタ部と、パワートランジスタ部に対して並列に接続される電解コンデンサとを備え、スイッチの投入から電解コンデンサが充電されて所定電圧に到達するまでの充電時間を測定すると共に当該充電時間が基準時間より短いときに電解コンデンサが劣化したと判定するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−189214号公報
【特許文献2】特開平5−215800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電力制御装置では、第1および第2コンデンサの何れに劣化が生じているかを判別することができない。また、特許文献1に記載された電力制御装置では、第1および第2コンデンサに加えて、昇圧回路のリアクトルにも劣化を生じるおそれもあるが、特許文献1には、昇圧回路のリアクトルの劣化判定について何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、インバータと、リアクトル、スイッチング素子および整流素子を有する昇圧コンバータと、平滑用の第1および第2コンデンサとを備えた電力制御装置において、昇圧コンバータのリアクトルと第1および第2コンデンサの劣化を個別に判定可能とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電力制御装置は、直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータと、スイッチング素子がオンされたときにリアクトルにエネルギを蓄積すると共に該スイッチング素子がオフされたときに整流素子を介して前記直流電源からの電圧に該リアクトルに蓄積されたエネルギを重畳して出力する昇圧コンバータと、前記直流電源と前記昇圧コンバータの前記リアクトルとの間に配置された第1のスイッチと、前記第1のスイッチよりも前記昇圧コンバータ側で前記直流電源に対して該昇圧コンバータと並列に接続された第1のコンデンサと、前記昇圧コンバータに対して前記インバータと並列に接続された第2のコンデンサと、前記直流電源に流れる電流を取得する電流取得手段と、前記第1のコンデンサの端子間電圧を取得する第1電圧取得手段と、前記第2のコンデンサの端子間電圧を取得する第2電圧取得手段とを含む電力制御装置において、
前記第1のスイッチおよび前記第1のコンデンサと前記リアクトルとの間に配置された第2のスイッチと、
前記昇圧コンバータの前記リアクトルと前記整流素子との間に配置される第3のスイッチと、
前記リアクトルに直列に接続されると共に前記スイッチング素子に並列に接続された抵抗とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の電力制御装置では、インバータがシャットダウンされた状態で第2および第3のスイッチをオフすると共に第1のスイッチのみをオンすれば、直流電源からの電力が第1コンデンサのみに供給されて第1コンデンサが充電され、充電の進行に伴って第1コンデンサの端子間電圧が所定電圧(直流電源の端子間電圧)に収束する。従って、第1のスイッチのみをオンしてから第1電圧取得手段により取得される第1コンデンサの端子間電圧が所定電圧となるまでの時間が例えば予め定められた閾値よりも短い場合には、第1コンデンサが劣化してその容量が低下していると判定することができる。また、インバータがシャットダウンされた状態で第3のスイッチをオフすると共に第1および第2のスイッチをオンすれば、直流電源からの電流が昇圧コンバータのリアクトルおよび抵抗を流れ、当該電流は、リアクトルおよび抵抗の特性に従って徐々に増加すると共にやがて一定値に収束する。従って、第1および第2のスイッチをオンしてから電流取得手段により取得される直流電源を流れる電流が一定値に達するまでの時間が予め定められた閾値よりも短い場合には、リアクトルが劣化してインダクタンスが低下していると判定することができる。更に、インバータがシャットダウンされた状態で第1、第2および第3のスイッチのすべてをオンすれば、直流電源からの電力がリアクトル、第3スイッチおよび昇圧コンバータの整流素子を介して第2コンデンサへと供給されて第2コンデンサが充電され、充電の進行に伴って第2コンデンサの端子間電圧が所定電圧(直流電源の端子間電圧)に収束する。従って、第1、第2および第3のスイッチのすべてをオンしてから第2電圧取得手段により取得される第2コンデンサの端子間電圧が所定電圧となるまでの時間が予め定められた閾値よりも短い場合には、第2コンデンサが劣化してその容量が低下していると判定することができる。この結果、本発明の電力制御装置では、昇圧コンバータのリアクトルと第1および第2コンデンサの劣化を個別に判定することが可能となる。また、抵抗をリアクトルに直列かつスイッチング素子に並列に接続することで、当該抵抗を第1コンデンサに蓄積された電荷を放電させるための放電抵抗としても用いることが可能となり、部品点数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係るパワーコントロールユニット20を搭載した電気自動車10の概略構成図である。
【図2】電気自動車10においてスタートスイッチ51がオンされた後の第1および第2コンデンサ31,32の端子間電圧VL,VHおよびバッテリ電流Ibの時間変化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る電力制御装置としてのパワーコントロールユニット20を搭載した電気自動車10の概略構成図である。同図に示すように、実施例の電気自動車10は、例えば同期発電電動機として構成されて駆動輪18a,18bにデファレンシャルギヤ16を介して回転子が接続されたモータ11と、モータ11と電力のやり取りが可能な例えばリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池であるバッテリ(直流電源)12と、モータ11とバッテリ12との間でやり取りされる電力を制御するパワーコントロールユニット(電力制御装置)20と、パワーコントロールユニット20や車両全体をコントロールする電子制御ユニット40等とを備える。また、パワーコントロールユニット20は、モータ11とバッテリ12との間に介設されると共にモータ11を駆動するインバータ22と、バッテリ12に第1リレー(第1のスイッチ)41および電力ライン38を介して接続されると共にバッテリ12からの電力を昇圧してインバータ22に供給可能な昇圧コンバータ23と、第1リレー41よりも昇圧コンバータ23側でバッテリ12に対して昇圧コンバータ23と並列に接続された第1コンデンサ31と、昇圧コンバータ23に対してインバータ22と並列に接続された第2コンデンサ32等とを備える。
【0012】
第1リレー41は、バッテリ12の正極端子と電力ライン38の正極母線38aとに接続された正極側リレー41aと、バッテリ12の負極端子と電力ライン38の負極母線38bとに接続された負極側リレー41bと、正極側リレー41aをオンする際の突入電流を回避するために正極側リレー41aに並列接続された回避用リレー41cおよび抵抗素子41dとにより構成されている。また、インバータ22は、複数のスイッチング素子のスイッチングによりバッテリ12からの直流電力を交流電力に変換してモータ11の三相コイルに回転磁界を形成するための相電流を供給してモータ11を回転駆動させることが可能な周知のインバータとして構成されている。
【0013】
昇圧コンバータ23は、第1リレー41を介してバッテリ12の正極端子に接続される一端を有するリアクトルLと、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である2つのトランジスタ(スイッチング素子)Tr1,Tr2と、ダイオード(整流素子)D1,D2とにより構成されている。トランジスタTr1のエミッタはリアクトルLの他端に接続されると共にトランジスタTr1のコレクタはインバータ22側に接続される。ダイオードD1のアノードはリアクトルLの他端に接続されると共にダイオードD1のカソードはインバータ22側に接続される。トランジスタTr2のエミッタは負極母線38bに接続されると共にトランジスタTr2のコレクタはリアクトルLの他端に接続される。ダイオードD2のアノードは負極母線38bに接続されると共にダイオードD1のカソードはリアクトルLの他端に接続される。従って、リアクトルLの他端は、トランジスタTr1およびTr2の中点に接続され、ダイオードD1はトランジスタTr1に逆方向に並列接続され、ダイオードD2はトランジスタTr2に逆方向に並列接続される。
【0014】
2つのトランジスタTr1、Tr2のうちの図中下側に位置するトランジスタ(下アーム)Tr2と2つのダイオードD1,D2のうちの図中上側に位置するダイオードD1とは、リアクトルLと共にバッテリ12からの電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路を構成する。すなわち、トランジスタTr2がオンされるとリアクトルLにエネルギが蓄積され、その後にトランジスタTr2がオフされると、バッテリ12からの電圧にリアクトルLに蓄積されたエネルギが重畳されて昇圧された電圧がダイオードD1を介して出力される。また、2つのトランジスタTr1、Tr2のうちの図中上側に位置するトランジスタ(上アーム)Tr1と2つのダイオードD1,D2のうちの図中下側に位置するダイオードD2とは、リアクトルLと共にモータ11からの電圧を降圧する降圧チョッパ回路を構成する。従って、トランジスタTr1,Tr2をオン/オフ制御すれば、昇圧コンバータ23によりバッテリ12からの電圧を昇圧してインバータ22に供給したり、モータ11からの電圧を降圧してバッテリ12に供給したりすることが可能となる。
【0015】
更に、実施例のパワーコントロールユニット20では、第1リレー41および第1コンデンサ31と昇圧コンバータ23のリアクトルLとの間、すなわち、第1リレー41を構成する正極側リレー41aおよび回避用リレー41cと昇圧コンバータ23のリアクトルLとの間に第1コンデンサ31(正極母線との接続点)よりもリアクトルL側に位置するように第2リレー(第2のスイッチ)42が配置されている。第2リレー42をオンすることにより第1リレー41を介してバッテリ12とリアクトルLとを電気的に接続すると共に第2リレー42をオフすることによりバッテリ12とリアクトルLとの電気的接続を解除することができる。また、昇圧コンバータ23のリアクトルLとダイオードD1のアノードとの間には、第3リレー(第3のスイッチ)43が配置されている。第3リレー43をオンすることによりリアクトルLとダイオードD1のアノードとを電気的に接続すると共に第3リレー43をオフすることによりリアクトルLとダイオードD1のアノードとの電気的接続を解除することができる。加えて、実施例のパワーコントロールユニット20は、リアクトルLに直列に接続されると共にトランジスタTr2に並列に接続された抵抗素子33を有する。すなわち、抵抗素子33の一端は、リアクトルLとダイオードD1のアノードと間に接続されており、当該抵抗素子33の他端は、負極母線38bに接続されている。かかる抵抗素子33は、第1コンデンサ31に蓄積された電荷を放電させるための放電抵抗としても用いられるものである。
【0016】
第1コンデンサ31は、昇圧コンバータ23とバッテリ12との間で電圧を平滑化するものであり、第1コンデンサ31の端子間には、当該第1コンデンサ31の端子間電圧VLを検出する電圧センサ34が配置されている。また、第2コンデンサ32は、昇圧コンバータ23とインバータ22との間で電圧を平滑化するものであり、第2コンデンサ32の端子間には、当該第2コンデンサ32の端子間電圧VHを検出する電圧センサ35が配置されている。更に、パワーコントロールユニット20は、昇圧コンバータ23とインバータ22との間で第2コンデンサ32に並列に接続された抵抗素子36を有する。抵抗素子36は、第2コンデンサ32に蓄積された電荷を放電させるための放電抵抗として用いられるものである。そして、正極母線38aには、バッテリ12を流れる電流であるバッテリ電流Ibを検出する電流センサ37が設置されている。
【0017】
電子制御ユニット40には、スタートスイッチ51からの始動指示信号、アクセルペダル54の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ55からのアクセル開度、車速センサ58からの車速、電流センサ37からのバッテリ電流Ib、電圧センサ34からの第1コンデンサ31の端子間電圧VL、電圧センサ35からの第2コンデンサ32の端子間電圧VH等が入力ポートを介して入力される。電子制御ユニット40からは、インバータ22へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ23へのスイッチング制御信号、第1〜第3リレー41〜43へのオンオフ信号等が出力ポートを介して出力される。
【0018】
実施例の電気自動車10の走行に際して、電子制御ユニット40は、アクセルペダル54の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ55からのアクセル開度と車速センサ58からの車速とに応じて走行のためにモータ11に要求される要求トルクを設定する。そして、設定した要求トルクとモータ11の回転数とに基づいて要求トルクやモータ11の回転数が大きいほど大きくなる傾向にインバータ22に作用させるべき目標電圧を設定し、第1〜第3リレー41〜43をすべてオンした状態で端子間電圧VHが目標電圧となるように所定のデューティ比を用いてトランジスタTr1,Tr2をオン/オフ制御すると共に、モータ11から要求トルクに応じたトルクが出力されるようインバータ22をスイッチング制御する。
【0019】
次に、実施例の電気自動車10において、第1コンデンサ31,32および昇圧コンバータ23のリアクトルLの劣化の有無を判定する手順について説明する。実施例では、運転者によりスタートスイッチ51がオンされてバッテリ12から昇圧コンバータ23やインバータ22を介してモータ11に電力を供給し始める際に、電子制御ユニット40により以下の手順に従って第1〜第3リレー41〜43がオンオフ制御されると共に第1コンデンサ31,32および昇圧コンバータ23のリアクトルLの劣化の有無が判定される。図2に、電気自動車10においてスタートスイッチ51がオンされた後の第1〜第3リレー41〜43のオンオフ状態、第1および第2コンデンサ31,32の端子間電圧VL,VHおよびバッテリ電流Ibの時間変化の一例を示す。なお、以下に説明する劣化判定の開始から完了までの間、インバータ22はシャットダウンされる。
【0020】
運転者によりスタートスイッチ51がオンされると、電子制御ユニット40は、第2および第3リレー42,43をオフしたまま、第1リレー41の負極側リレー41bおよび回避用リレー41cをオンする(以下、負極側リレー41bおよび回避用リレー41cをオンすることを「第1リレー41をオンする」という)と共に抵抗素子41dを介して第1コンデンサ31へと電流を流すことで第1コンデンサ31に突入電流が流れてしまうことを抑制するために正極側リレー41aをオフする(図2の時刻t1)。これにより、バッテリ12からの電力が第1コンデンサ31のみに供給されて第1コンデンサ31が充電され、図2に示すように、充電の進行に伴って第1コンデンサ31の端子間電圧VLがバッテリ12の端子間電圧VBに収束する(図2の時刻t2)。電子制御ユニット40は、第1リレー41をオンしてから第1コンデンサ31の端子間電圧VLがバッテリ12の端子間電圧VBに収束するまでの経過時間Δt1を計測し、計測した経過時間Δt1と予め定められた閾値tref1とを比較することにより第1コンデンサ31の劣化の有無を判定する。ここで、閾値tref1は、第1コンデンサ31に劣化が生じていない状態で第1コンデンサ31に電圧VBを印加し始めてから充電が完了するまでの時間として第1コンデンサ31の容量等に基づいて実験・解析等により予め定められる。従って、例えば経過時間Δt1が閾値tref1よりも所定時間以上短い場合には、第1コンデンサ31が劣化して容量が低下していると判定することが可能であり、例えば経過時間Δt1が閾値tref1を中心とした許容範囲内に含まれる場合には、第1コンデンサ31は劣化していないと判定することができる。なお、バッテリ12から第1コンデンサ31に流れる電流(バッテリ電流Ib)は、第1コンデンサ31および抵抗素子41dの特性に従って第1リレー41をオンした直後に最も大きくなり、第1コンデンサ31の充電が進むにつれて徐々に小さくなって第1コンデンサ31の充電が完了した段階で概ねゼロとなる。
【0021】
上述のようにして第1コンデンサ31の劣化の有無を判定すると、電子制御ユニット40は、第1リレー41をオンすると共に第3リレー43をオフしたまま、第2リレー42をオンする(図2の時刻t3)。これにより、バッテリ12から昇圧コンバータ23のリアクトルLとそれに直列に接続された抵抗素子33とに電流が流れ、バッテリ電流Ibは、リアクトルLおよび抵抗素子33の特性に従って徐々に増加すると共にやがて一定値に収束する(図2の時刻t4)。電子制御ユニット40は、第2リレー42をオンしてからバッテリ電流Ibが一定値に収束するまでの経過時間Δt2を計測し、計測した経過時間Δt2と予め定められた閾値tref2とを比較することによりリアクトルLの劣化の有無を判定する。ここで、閾値tref2は、リアクトルLに劣化が生じていない状態でリアクトルLおよび抵抗素子33に電圧VBを印加し始めてから当該リアクトルLおよび抵抗素子33に流れる電流(バッテリ電流Ib)が一定値に収束するまでの時間としてリアクトルLのインダクタンス等に基づいて実験・解析等により予め定められる。従って、例えば経過時間Δt2が閾値tref2よりも所定時間以上短い場合には、リアクトルLが劣化してインダクタンスが低下していると判定することが可能であり、例えば経過時間Δt2が閾値tref2を中心とした許容範囲内に含まれる場合には、リアクトルLは劣化していないと判定することができる。
【0022】
続いて、電子制御ユニット40は、第1リレー41および第2リレー42をオンしたまま第3リレー43をオンする(図2の時刻t5)。これにより、バッテリ12からの電力が昇圧コンバータ23のリアクトルL、第3リレー43およびダイオードD1を介して第2コンデンサ32に供給されて当該第2コンデンサ32が充電され、充電の進行に伴って第2コンデンサ32の端子間電圧VHがバッテリ12の端子間電圧VBに収束する(図2の時刻t6)。電子制御ユニット40は、第3リレー43をオンしてから第2コンデンサ32の端子間電圧VHがバッテリ12の端子間電圧VBに収束するまでの経過時間Δt3を計測し、計測した経過時間Δt3と予め定められた閾値tref1とを比較することにより第2コンデンサ32の劣化の有無を判定する。ここで、閾値tref3は、第2コンデンサ32に劣化が生じていない状態で第2コンデンサ32に電圧VBを印加し始めてから充電が完了するまでの時間として第2コンデンサ32の容量等に基づいて実験・解析等により予め定められる。従って、例えば経過時間Δt3が閾値tref3よりも所定時間以上短い場合には、第2コンデンサ32が劣化して容量が低下していると判定することが可能であり、例えば経過時間Δt2が閾値tref2を中心とした許容範囲内に含まれる場合には、第2コンデンサ32は劣化していないと判定することができる。
【0023】
以上説明したように、実施例のパワーコントロールユニット20では、インバータ22がシャットダウンされた状態で第2および第3リレー42,43をオフすると共に第1リレー41すなわち負極側リレー41bおよび回避用リレー41cのみをオンすれば、バッテリ12からの電力が第1コンデンサ31のみに供給されて第1コンデンサ31が充電され、充電の進行に伴って第1コンデンサ31の端子間電圧VLが所定電圧(バッテリ12の端子間電圧VB)に収束する。従って、第1リレー41のみをオンしてから電圧センサ34により取得される第1コンデンサ31の端子間電圧VLがバッテリ12の端子間電圧VBとなるまでの経過時間Δt1が例えば予め定められた閾値tref1よりも所定時間以上短い場合には、第1コンデンサ31が劣化してその容量が低下していると判定することができる。また、インバータ22がシャットダウンされた状態で第3リレー43をオフすると共に第1および第2リレー41,42をオンすれば、バッテリ12からの電流が昇圧コンバータ23のリアクトルLおよび抵抗素子33を流れ、当該電流は、リアクトルLおよび抵抗素子33の特性に従って徐々に増加すると共にやがて一定値に収束する。従って、第1および第2リレー41,42をオンしてから電流センサ37により取得されるバッテリ電流Ibが一定値に達するまでの経過時間Δt2が例えば予め定められた閾値tref2よりも所定時間以上短い場合には、リアクトルLが劣化してインダクタンスが低下していると判定することができる。更に、インバータ22がシャットダウンされた状態で第1リレー41、第2リレー42および第3リレー43のすべてをオンすれば、バッテリ12からの電力がリアクトルL、第3リレー43および昇圧コンバータ23のダイオード(整流素子)D1を介して第2コンデンサ32へと供給されて当該第2コンデンサ32が充電され、充電の進行に伴って第2コンデンサ32の端子間電圧VHが所定電圧(バッテリ12の端子間電圧VB)に収束する。従って、第1リレー41、第2リレー42および第3リレー43のすべてをオンしてから電圧センサ35により取得される第2コンデンサ32の端子間電圧VHがバッテリ12の端子間電圧VBとなるまでの経過時間Δt3が例えば予め定められた閾値tref3よりも所定時間以上短い場合には、第2コンデンサ32が劣化してその容量が低下していると判定することができる。この結果、実施例のパワーコントロールユニット20を搭載した電気自動車10では、昇圧コンバータ23のリアクトルLと第1および第2コンデンサ31,32の劣化を個別に判定することが可能となる。
【0024】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、バッテリ12からの直流電力を交流電力に変換するインバータ22が「インバータ」に相当し、トランジスタ(スイッチング素子)Tr2がオンされたときにリアクトルLにエネルギを蓄積すると共にトランジスタTr2がオフされたときにダイオード(整流素子)D1を介してバッテリ12からの電圧にリアクトルLに蓄積されたエネルギを重畳して出力する昇圧コンバータ23が「昇圧コンバータ」に相当し、バッテリ12と昇圧コンバータ23のリアクトルLとの間に配置された第1リレー41が「第1のスイッチ」に相当し、第1リレー41よりも昇圧コンバータ23側でバッテリ12に対して昇圧コンバータ23と並列に接続された第1コンデンサ31が「第1のコンデンサ」に相当し、昇圧コンバータ23に対してインバータ22と並列に接続された第2コンデンサ32が「第2のコンデンサ」に相当し、バッテリ12に流れるバッテリ電流Ibを取得する電流センサ37が「電流取得手段」に相当し、第1コンデンサ31の端子間電圧VLを取得する電圧センサ34が「第1電圧取得手段」に相当し、第2コンデンサ32の端子間電圧VLを取得する電圧センサ35が「第2電圧取得手段」に相当し、第1リレー41および第1コンデンサ31とリアクトルLとの間に配置された第2リレー42が「第2のスイッチ」に相当し、昇圧コンバータ23のリアクトルLとダイオードD1との間に配置される第3リレー43が「第3のスイッチ」に相当し、リアクトルLに直列に接続されると共にトランジスタTr2に並列に接続された抵抗素子33が「抵抗」に相当する。ただし、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0025】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、インバータと、リアクトル、スイッチング素子および整流素子を有する昇圧コンバータと、平滑用の第1および第2コンデンサとを備えた電力制御装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 電気自動車、11 モータ、12 バッテリ、16 デファレンシャルギヤ、18a,18b 駆動輪、22 インバータ、23 昇圧コンバータ、31 第1コンデンサ、32 第2コンデンサ、33,36 抵抗素子、34,35 電圧センサ、37 電流センサ、38 電力ライン、38a 正極母線、38b 負極母線、40 電子制御ユニット、41 第1リレー、41a 正極側リレー、41b 負極側リレー、41c 回避用リレー、41d 抵抗素子、42 第2リレー、43 第3リレー、51 スタートスイッチ、54 アクセルペダル、55 アクセルペダルポジションセンサ、58 車速センサ、D1,D2 ダイオード、Tr1,Tr2 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータと、スイッチング素子がオンされたときにリアクトルにエネルギを蓄積すると共に該スイッチング素子がオフされたときに整流素子を介して前記直流電源からの電圧に該リアクトルに蓄積されたエネルギを重畳して出力する昇圧コンバータと、前記直流電源と前記昇圧コンバータの前記リアクトルとの間に配置された第1のスイッチと、前記第1のスイッチよりも前記昇圧コンバータ側で前記直流電源に対して該昇圧コンバータと並列に接続された第1のコンデンサと、前記昇圧コンバータに対して前記インバータと並列に接続された第2のコンデンサと、前記直流電源に流れる電流を取得する電流取得手段と、前記第1のコンデンサの端子間電圧を取得する第1電圧取得手段と、前記第2のコンデンサの端子間電圧を取得する第2電圧取得手段とを含む電力制御装置において、
前記第1のスイッチおよび前記第1のコンデンサと前記リアクトルとの間に配置された第2のスイッチと、
前記昇圧コンバータの前記リアクトルと前記整流素子との間に配置される第3のスイッチと、
前記リアクトルに直列に接続されると共に前記スイッチング素子に並列に接続された抵抗とを備えることを特徴とする電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−115018(P2012−115018A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261178(P2010−261178)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】