説明

電力増幅装置

【課題】トランスを用いて複数の増幅器対の出力を合成する電力増幅装置において、各増幅器対の差動動作のずれによって生じる出力の低下を抑制する。
【解決手段】電力増幅装置110は、基板上に全体で環状に設けられた複数の一次インダクタ7,8と、複数の増幅器対3〜6と、二次インダクタ9と、接続配線10とを備える。各増幅器対は、対応の一次インダクタの両端に接続され、差動入力信号として与えられた一対の第1および第2の信号IN(+),IN(−)をそれぞれ増幅して対応の一次インダクタに出力する。二次インダクタ9は、複数の一次インダクタ7,8に隣接して環状に設けられ、各一次インダクタで合成された第1および第2の信号の合成信号をさらに合成して出力する。接続配線10は、基板上で複数の一次インダクタ7,8の内側に設けられ、各一次インダクタの中点MP1,MP2を互いに電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力信号を必要な電圧レベルまで増幅する電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末などの通信機器においては、電力増幅装置などの内蔵部品の小占有面積化および低コスト化が重要な課題である。たとえば、特表2005−503679号公報(特許文献1)は、無線周波数信号を効率的かつ低コストで増幅するための分布型の電力増幅装置を開示する。
【0003】
この文献の電力増幅装置は、相互に環状に接続された複数のプッシュプル増幅器を備える。各プッシュプル増幅器の隣接する増幅器には、等しい大きさで逆相の入力信号が入力される。複数のプッシュプル増幅器が接続された閉ループは、トランスの一次巻線として機能する。電力増幅装置は、さらに、一次巻線の形状に適合した二次巻線を備えることにより、個々のプッシュプルプル増幅器の出力電力を効率的に合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−503679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献のようにトランスを用いて複数の差動動作する増幅器対の出力を合成するタイプの電力増幅装置は、各増幅器対の差動動作が理想的であることが前提となっている。したがって、差動入力信号の位相のずれや、各増幅器の特性のばらつきや、レイアウトの非対称性などによって、電力増幅装置全体の差動動作にずれが生じてしまう。この結果、電力増幅装置の出力信号のレベルが低下することになる。
【0006】
この発明の目的は、トランスを用いて複数の増幅器対の出力を合成する電力増幅装置において、各増幅器対の差動動作のずれによって生じる出力の低下を抑制することができる電力増幅装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は要約すれば電力増幅装置であって、基板上に全体で環状に設けられた複数の一次インダクタと、複数の増幅器対と、二次インダクタと、接続配線とを備える。複数の増幅器対は、複数の一次インダクタにそれぞれ対応して設けられる。複数の増幅器対の各々を構成する第1および第2の増幅器は、対応の一次インダクタの両端にそれぞれ接続され、差動入力信号として与えられた一対の第1および第2の信号をそれぞれ増幅して対応の一次インダクタに出力する。二次インダクタは、複数の一次インダクタに隣接して1または複数巻で環状に設けられ、複数の一次インダクタと磁気的に結合することによって、複数の一次インダクタの各々で合成された第1および第2の信号の合成信号をさらに合成して出力する。接続配線は、基板上で複数の一次インダクタの内側に設けられ、複数の一次インダクタの各々の中点を互いに電気的に接続する。ここで、中点は、一次インダクタ上の点で一次インダクタの両端から等しい距離にある点である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の一次インダクタの各中点を互いに電気的に接続する接続配線を設けることによって、各増幅器対の差動動作のずれを抑制することができ、これによって電力増幅装置の出力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】巻数比1:mのトランスを用いたトランスアンプを示す回路図である。
【図2】巻数比1:1のトランスをn段接続したトランスアンプを示す回路図である。
【図3】図1、図2のトランスアンプにおいてトランジスタ1個当たりの出力を示す表である。
【図4】巻数比1:mのトランスをn段接続したトランスアンプを示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態1による電力増幅装置110の構成を示す図である。
【図6】図5の電力増幅装置110の一次インダクタ7,8の配置を示す平面図である。
【図7】図5の電力増幅装置110の等価回路図である。
【図8】接続配線10を有しない比較例の電力増幅装置の場合の信号波形のシミュレーション結果である。
【図9】図5の電力増幅装置110における信号波形のシミュレーション結果である。
【図10】図5のトランジスタ3〜6の出力信号の位相ずれについて説明するための図である。
【図11】差動信号の位相ずれの抑制効果について説明するための図である。
【図12】図5のトランス100のVd端子11,18に接続される外部電源回路を含む回路図である。
【図13】実施の形態1の変形例1による電力増幅装置110Aの構成を示す図である。
【図14】実施の形態1の変形例2による電力増幅装置110Bの構成を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2による電力増幅装置210の構成を示す図である。
【図16】図15のトランス200の高周波特性を電磁界シミュレーションで求めた結果を示す表である。
【図17】図15のトランス200の整合時挿入損失を電磁界シミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図18】実施の形態2の変形例1によるトランス200Aの構成を示す平面図である。
【図19】実施の形態2の変形例2による電力増幅装置210Bの構成を示す図である。
【図20】図19の電力増幅装置210Bの一次インダクタ91〜93の配置を示す平面図である。
【図21】この発明の実施の形態3による電力増幅装置310の構成を示す図である。
【図22】図21の電力増幅装置310の一次インダクタ21〜24の配置を示す平面図である。
【図23】この発明の実施の形態3の変形例によるトランス300Aの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0011】
<実施の形態1>
[トランスアンプの原理]
まず、この発明の基礎となるトランスアンプ(Transformer-based Power Amplifier)の原理について説明する。
【0012】
携帯電話端末などの通信機器においては、内蔵部品の多くは、トランジスタとしてCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ(相補絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を利用している。
【0013】
しかし、プロセスノードの微細化によりCMOSのソース−ドレイン間耐圧は低下しており、電力増幅装置のようなアナログ部品はCMOSでの実現が困難となっている。たとえば、一般的な微細CMOSのソース−ドレイン間耐圧は数Vである。これに対して、携帯電話端末の送信部のように数Wの電力が出力される場合、ドレインから直接50Ω負荷に出力すると、ドレインにはソース−ドレイン間耐圧を優に超える交流電圧が印加される。具体的に、ソース接地のMOSトランジスタから4Wの電力が出力される場合、ドレインに直接50Ωの負荷が接続されているとすると、ドレイン電圧の振幅(ゼロ・ツー・ピーク)は20Vになる。
【0014】
したがって、微細CMOSで電力増幅装置を実現するには、CMOSプロセスで作製される受動素子回路によってドレイン電圧振幅を抑制する必要がある。このドレイン電圧振幅の抑制には、差動信号の合成およびインピーダンス変換が有効である。
【0015】
差動構成の電力増幅装置の場合、逆相同振幅の2信号である差動信号をバラン(平衡−不平衡変換器)で合成することによって、2倍振幅の単相信号が得られる。そのため、同一出力で比較した場合、差動構成ではドレイン電圧を単相構成の半分にすることができる。
【0016】
インピーダンス変換では、LC回路(インダクタ、キャパシタからなる回路)などを用いて、トランジスタの出力インピーダンスを低減し、ドレイン電圧を低減する。1/Nにインピーダンス変換することで、ドレイン電圧を(1/N)1/2にすることができる。ただし、トランジスタの出力電力は不変であるので、トランジスタのドレイン電流はN1/2倍になる。
【0017】
この差動信号の合成およびインピーダンス変換の両方の機能をもつ受動素子がトランスである。トランスは標準的な金属薄膜配線層を用いて作製することができるため、CMOSプロセスにより電力増幅装置全体をワンチップ化できる。このように、金属薄膜配線層を用いて作製されるトランスはオンチップトランスと呼ばれる。
【0018】
トランスアンプは、差動動作する一対のMOSトランジスタ(差動対)の出力をトランスで合成する電力増幅装置である。トランスアンプは差動構成であるため、それ自体にドレイン電圧振幅を抑制する効果があるが、回路構成によりドレイン電圧振幅をさらに抑制することができる。そのアプローチは2つあり、1つは、トランスの巻数比、すなわちインダクタンス比を変えてインピーダンス変換する方法(図1参照)であり、もう1つはトランスの二次インダクタを介してトランスアンプを多段に接続し、負荷と電力を分割する方法(図2参照)である。
【0019】
図1は、巻数比1:mのトランスを用いたトランスアンプを示す回路図である。図1を参照して、トランスアンプは、巻数比1:mのトランスXFと、トランスXFの一次巻線の両端に接続された増幅器対AP,AN(差動対とも称する)とを含む。トランスXFの二次巻線には負荷抵抗RLが接続される。
【0020】
増幅器対AP,ANの各々は、たとえば、ソース接地されたNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(Nチャネル絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)で構成される。以下、増幅器対AP,ANをトランジスタ対AP,ANとも記載する。トランジスタ対AP,ANの各ゲートには、逆相同振幅の2信号IN(+),IN(−)(第1、第2の信号)である差動信号が入力される。この明細書では、信号IN(+)を非反転信号IN(+)とも称し、信号IN(−)を反転信号IN(−)とも称する。
【0021】
図1の回路構成では巻数比1:mのトランスXFを用いてトランジスタのドレイン電圧を1/(2m)にすることができる。たとえば、トランスアンプの出力を4Wとし、負荷抵抗RLを50Ωとすると、トランスXFの2次側の電圧振幅(ゼロ・ツー・ピーク)は20Vである。この場合、負荷抵抗RLをNMOSトランジスタのドレインに直結するとドレインの電圧振幅が20Vになるところ、トランスXFを介してトランジスタを接続することによって各トランジスタAP,ANのドレインの電圧振幅は10/m[V]になる。このとき、各トランジスタAP,ANの出力に換算された負荷抵抗RLの大きさは50/(2m2)[Ω]である。
【0022】
図2は、巻数比1:1のトランスをn段接続したトランスアンプを示す回路図である。図2を参照して、トランスアンプは、巻数比1:1のn個(nは2以上の整数)のトランスXF1〜XFnと、トランスXF1〜XFnにそれぞれ対応して設けられたn組のトランジスタ対AP1,AN1〜APn,ANnとを含む。各組のトランジスタAP,ANは、対応のトランスXFの一次巻線の両端にそれぞれ接続される。トランスXF1〜XFnの二次巻線は、負荷抵抗RLに対して直列に接続される。
【0023】
図2の回路構成では巻数比1:1のトランスXFをn段接続することによってトランジスタの出力電圧を1/(2n)にすることができる。たとえば、トランスアンプの出力を4Wとし、負荷抵抗RLを50Ωとすると、2次側が直列接続されたトランスXF1〜XFnの出力電圧振幅(ゼロ・ツー・ピーク)は20Vである。この場合、各トランジスタAP,ANのドレインの電圧振幅は10/n[V]になる。このとき、各トランスの一次側に換算された負荷抵抗RLの大きさ(負荷インピーダンス)は50/(2n)[Ω]である。
【0024】
図3は、図1、図2のトランスアンプにおいてトランジスタ1個当たりの出力を示す表である。図3は、トランスアンプから4Wの正弦波を50Ω負荷に出力したときのトランジスタ1個あたりの出力電圧(W)、負荷インピーダンス(Ω)、ドレイン電圧振幅(V)、およびドレイン電流振幅(A)を示す。
【0025】
図2の回路構成のようにトランスの巻数比が1:1の場合には、ドレイン電流振幅が段数nに依らないことが特長である。CMOSは寄生バイポーラトランジスタを内在しているため、過度のドレイン電流により寄生バイポーラ効果を生じる。そのため、図2の回路構成の方が図1の回路構成に比べて有利である。
【0026】
図4は、巻数比1:mのトランスをn段接続したトランスアンプを示す回路図である。
図1の回路構成と図2の回路構成は異なるメカニズムでドレイン電圧を抑制しているため、両者を併用することが可能である。図4の回路構成は、図2の回路構成で各トランスXF1〜XFnの巻数比を1:mとしたものである。このように、巻数比1:mのトランスをn段接続すると、各トランジスタのドレイン電圧は1/(2mn)になる。
【0027】
たとえば、図4のトランスアンプから4Wの正弦波を50Ω負荷に出力したときの、トランジスタ1個あたりのドレイン電圧は10/(mn)[V]になる。このとき、トランジスタ1個あたりの負荷インピーダンスは、50/(2m2n)[Ω]であるので、トランジスタ1個のあたりのドレイン電流振幅は0.4m[A]となり、図2の場合と同じく、段数nに依存しない。mの値に応じてドレイン電流振幅が増加するものの、2つの異なるメカニズムを用いてドレイン電圧を抑制するため、図4のようなトランスアンプは微細CMOSプロセスで数W級出力の電力増幅装置を実現する有力な手段となり得る。
【0028】
[実施の形態1の電力増幅装置110の構成]
図2または図4のように複数のトランスを用いる場合、単純にトランスを並べたレイアウトではトランスの占有面積がn倍に増加するため、電力増幅装置全体のチップ面積も増加してしまう。これは、CMOSによる小占有面積化、さらには低コスト化と相反している。
【0029】
実施の形態1の電力増幅装置は、オンチップトランスのレイアウトを工夫するにより、その占有面積の増加を抑えたものである。具体的に実施の形態1の電力増幅装置では、トランスの一次インダクタおよび二次インダクタを各々スラブ形状とし、各々を環状に配置することにより、低損失化および小占有面積化を図っている。巻数比は1:1となる。
【0030】
図5は、この発明の実施の形態1による電力増幅装置110の構成を示す図である。図5を参照して、電力増幅装置110は、基板SUB上に形成された、入力端子1,2と、増幅器3〜6と、スラブ状のトランス100とを含む。図5の電力増幅装置110は、図2においてn=2、巻数比1:1のトランスアンプに相当する。
【0031】
入力端子1,2は、差動入力信号を受ける。入力端子1から入力された非反転信号IN(+)が増幅器3,5で増幅され、入力端子2から入力された反転信号IN(−)が増幅器4,6で増幅される。増幅器3〜6は同一構造であり、通常、ソース接地のMOSトランジスタによって構成される。以下、増幅器3〜6をトランジスタ3〜6とも記載する。トランジスタ3〜6で増幅された差動信号はトランス100に入力される。
【0032】
トランス100は、全体で環状に配置された2個の1/2回巻き(1回巻きの半周分)の一次インダクタ7,8と、一次インダクタに隣接する1回巻きの二次インダクタ9と、一次インダクタ7,8の各中点を接続する接続配線10と、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2からそれぞれ外側に引き出された配線部19,20とを含む。図5では、図解を容易にするために接続配線10および配線部19,20にハッチングを付している。ここで、一次インダクタの中点とは、一次インダクタ上の点で、かつ、一次インダクタの端点から等距離にある点である。
【0033】
図5のトランス100は、交差部以外は同一配線層で作製される。この場合、CMOSプロセスにおいて最も低抵抗な最上層の配線層を用いることが好ましい。無論、異なる配線層で作製したインダクタを積層してオンチップトランスを構成することも可能である。後述する実施の形態2,3のトランスについても同様である。
【0034】
図5に示すように、一次インダクタ7の両端部P1,N1にはトランジスタ3,6の出力ノードがそれぞれ接続され、一次インダクタ8の両端部P2,N2にはトランジスタ5,4の出力ノードがそれぞれ接続される。トランジスタ3,4は基板上で互いに隣接して二次インダクタ9の外側に配置され、トランジスタ5,6は基板上で互いに隣接して二次インダクタ9の外側に配置される。
【0035】
配線部19,20のドレインバイアス印加用端子(Vd端子)11,18には、ドレインバイアス(駆動電圧)が印加される。これによって、トランジスタ3〜6にドレインバイアスが供給される。
【0036】
二次インダクタ9は、一次インダクタ7,8と磁気的に結合することによって、一次インダクタ7で合成された信号IN(+),IN(−)の合成信号(IN(+)−IN(−))と、一次インダクタ8で合成された信号IN(+),IN(−)の合成信号(IN(+)−IN(−))とをさらに合成する。合成された信号は、二次インダクタ9の一方の端子13を接地することにより、他方の端子12から単相の出力信号OUTとして出力される。
【0037】
図6は、図5の電力増幅装置110の一次インダクタ7,8の配置を示す平面図である。図6を参照して、一次インダクタ7,8を1つの図形と捉えた全体形状に着目すると、一次インダクタ7,8は、基板面上の中心点CPを通り基板に垂直な中心軸に対して2回回転対称となっている。さらに、一次インダクタ7,8は、回転対称の中心軸を含む対称面14,15の各々に対して鏡映対称となっている。ここで、鏡映対称面14は、一次インダクタ7の中点MP1および一次インダクタ8の中点MP2を通る。
【0038】
図5の接続配線10は図6の鏡映対称面14に沿って配置される。より詳しくは、接続配線10は、中心点CPと一次インダクタ7の中点MP1とを接続する第1の配線部10Aと、中心点CPと一次インダクタ8の中点MP2とを接続する第2の配線部10Bとを含む。Vd端子11,18には同じ大きさのドレインバイアスが印加されるので、接続配線10の配置を上記のようにすることにより、接続配線10にはDC電流(直流電流)が流れないようにできる。
【0039】
図7は、図5の電力増幅装置110の等価回路図である。図7を参照して、図5の増幅器3〜6は、それぞれNMOSトランジスタ3A〜6Aによって構成される。NMOSトランジスタ3A〜6Aのドレインバイアスは、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2から外側に引き出された配線より印加される。トランジスタ3Aのソースは、隣接するトランジスタ4Aのソースと接続される。トランジスタ3A,4Aの接続ノードSP1は接地ノードGNDとボンディングワイヤなどによって接続される。トランジスタ5Aのソースは、隣接するトランジスタ6Aのソースと接続される。トランジスタ5A,6Aの接続ノードSP2はボンディングワイヤなどによって接地ノードGNDと接続される。
【0040】
理想的な場合、すなわち、入力信号IN(+),IN(−)が同振幅で互いに逆相であり、NMOSトランジスタ3A〜6Aが同一構成であり、図6で説明した鏡映対称性が保たれているような場合には、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2と、隣接するトランジスタ間の接続ノードSP1,SP2とは、いずれも仮想AC接地となる。仮想AC接地であるので、Vd端子11,18にはチョークコイルのような外付けのACカット部品を取付ける必要がない。さらに、差動入力信号IN(+),IN(−)は、接続ノードSP1,SP2と接地ノードGNDとの間に接続されたボンディングワイヤによる寄生インピーダンスZP1,ZP2の影響を受けない。ここで寄生インピーダンスとは、寄生抵抗と寄生インダクタンスの合成インピーダンスを意味する。また、接続配線10にも寄生インピーダンスZP3が存在するが、理想的な場合には、一次インダクタ7,8全体の鏡映対称面14は仮想AC接地となっているため、接続配線10はトランス100の高周波特性にほとんど影響を与えない。
【0041】
[接続配線10の効果]
次に、この発明の特徴である接続配線10の効果について説明する。
【0042】
図5を参照して、たとえば、トランジスタ3,6から一次インダクタ7に出力される第1の差動信号と、トランジスタ5,4から一次インダクタ8に出力される第2の差動信号の間に位相差がある場合を考える。この場合、図6の鏡映対称面14は仮想AC接地となるが、鏡映対称面15は仮想AC接地とはならない。そのため、図7のNMOSトランジスタの接続ノードSP1,SP2と接地ノードGNDとの間の寄生インピーダンスZP1,ZP2の影響を受けて、電力増幅装置110の出力が低下する。この寄生インピーダンスZP1,ZP2の影響は第1および第2の差動信号間のずれが大きい程大きくなる。
【0043】
ここで、接続配線10を設けることにより、第1および第2の差動信号間の位相ずれを抑制することができ、鏡映対称面15を仮想AC接地に近づけることができる。その結果、ボンディングワイヤの寄生インピーダンスZP1,ZP2の影響が小さくなり、電力増幅装置110の出力低下を抑制することができる。
【0044】
以下、シミュレーション結果を参照して、接続配線10の効果をより具体的に説明する。このシミュレーションでは、図5のトランジスタ3〜6を一次インダクタの端部P1,N2,P2,N1にそれぞれ接続する前の開放負荷状態において、トランジスタ3〜6の出力電圧波形にばらつきを与える。そして、トランジスタ3〜6を一次インダクタの端部P1,N2,P2,N1にそれぞれ接続したときの、一次インダクタの端部P1,N2,P2,N1の電圧波形が計算される。具体的に、開放負荷状態のトランジスタ3〜6の出力電圧波形を、
トランジスタ3:V・cos(ωt +θ3) …(1)
トランジスタ4:V・cos(ωt+π+θ4) …(2)
トランジスタ5:V・cos(ωt +θ5) …(3)
トランジスタ6:V・cos(ωt+π+θ6) …(4)
としたとき、各トランジスタの出力信号の位相θ3〜θ6は、
θ3=0,θ4=−10π/180,θ5=−5π/180,θ6=+5π/180
のように与えた。ただし、上式(1)〜(4)において、角周波数をωで表わし、時間をtで表わし、円周率をπで表わしている。シミュレーションでは、電圧振幅Vを101/2=3.16[V]と設定している。
【0045】
図8は、接続配線10を有しない比較例の電力増幅装置の場合の信号波形のシミュレーション結果である。図8(A)は一次インダクタの端部P1,N2,P2,N1の電圧波形を重ねて示したものであり、図8(B)〜図8(E)は、差動信号を構成する非反転信号と反転信号とを組にして示したものである。
【0046】
理想的な差動信号の場合、差動信号を構成する非反転信号と反転信号とは、同振幅で互いの位相差がπである。図8(B)〜(E)に示した差動信号を構成する4組の組合せのうち、図8(E)に示される一次インダクタ8の端部P2の電圧波形と一次インダクタ7の端部N1の電圧波形の組合せは、互いの位相差がほぼπであり、差動信号に近い。これに対して、他の3組の電圧波形の組合せ(図8(B)〜図8(D)参照)は、差動信号から大きく乖離している。
【0047】
この明細書では、差動信号を構成する非反転信号と反転信号との位相差がπのとき、差動信号の位相ずれは0であるとし、位相差がπからφだけずれたとき差動信号の位相ずれはφであるとする。
【0048】
図8のように、差動対から出力される信号が差動信号に対して大きく乖離すると、差動対の出力信号のうちの同相成分が相殺される。さらに、図7で説明したように、隣接するトランジスタ間の接続ノードSP1,SP2と接地ノードGNDとの間の配線(ボンディングワイヤ)による寄生インピーダンスの影響をうけることによって、電力増幅装置110全体の出力が低下する。
【0049】
図9は、図5の電力増幅装置110における信号波形のシミュレーション結果である。図8の場合と同様に、図9(A)は一次インダクタの端部P1,N2,P2,N1の電圧波形を重ねて示したものであり、図9(B)〜図9(E)は、差動信号を構成する非反転信号と反転信号とを組にして示したものである。図9の場合には、4組の電圧波形の組合せの全てで差動信号に近い波形となっており、接続配線10を設けることによって差動信号の位相ずれが抑制されていることがわかる。これによって、電力増幅装置の出力低下を抑制することができる。
【0050】
[差動信号の位相ずれの抑制効果が得られる理由]
図9のシミュレーション結果に見られた差動信号の位相ずれの抑制効果は、次の(i)または(ii)の条件が成立する場合に顕著になる。
【0051】
(i)トランジスタ3,6間の差動信号の位相ずれ(前述の式(1),(4)でθ3−θ6)と、トランジスタ4,5間の差動信号の位相ずれ(前述の式(2),(3)でθ4−θ5)とが近い値の場合
(ii)トランジスタ3,4間の差動信号の位相ずれ(前述の式(1),(2)でθ3−θ4)と、トランジスタ6,5間の差動信号の位相ずれ(前述の式(3),(4)でθ6−θ5)とが近い値の場合
上式(i)または(ii)が成立するとき、一次インダクタ7の中点MP1と一次インダクタ8の中点MP2とを接続する接続配線10の中心点CPで、仮想AC接地に近い状態となっている。具体的に式を用いて説明すると、トランジスタ3〜6の出力信号を前述の式(1)〜(4)で表わしたとき、全てのトランジスタ3〜6から等距離xにある中心点CPにおける電圧振幅は、波数ベクトルをkとして、
V・{cos(kx+ωt+θ3)+cos(kx+ωt+π+θ4)+cos(kx+ωt+θ5)+cos(kx+ωt+π+θ6)} …(5)
とあらわされる。上式(5)の振幅成分は、上記の条件(i)または(ii)が満たされるとき極小になる。
【0052】
図10は、図5のトランジスタ3〜6の出力の位相ずれについて説明するための図である。図10を参照して、上記の(i),(ii)の条件は、現実的には、次のような原因によって生じると考えられる。
【0053】
まず、製造プロセス上の原因で、トランジスタの3〜6の特性にばらつきが生じる場合が考えられる。具体的には、隣接するトランジスタ間の特性が同じで、離隔したトランジスタ間の特性が異なる場合である。この場合、トランジスタの寄生容量の違いにより、図10に示すように、トランジスタ5,6の出力がトランジスタ3,4の出力に対して位相差φ2を有することになる。
【0054】
さらに、図10のように、入力端子1からトランジスタ3,5に至る差動入力配線16の長さがトランジスタ3とトランジスタ5とで異なり、入力端子2からトランジスタ4,6に至る差動入力配線17の長さがトランジスタ4とトランジスタ6とで異なる場合が考えられる。この場合も、トランジスタ5,6の出力が、トランジスタ3,4の出力に対して位相差φ2を有することになる。
【0055】
さらに、図10もしくは図5のように、入力端子1からトランジスタ3に至る差動入力配線16の長さが、入力端子2からトランジスタ4に至る差動入力配線17の長さと異なり、入力端子2からトランジスタ6に至る差動入力配線17の長さが、入力端子1からトランジスタ5に至る差動入力配線16の長さと異なる場合が考えられる。この場合は、トランジスタ3,6の出力が、トランジスタ4,5の出力に対してそれぞれ位相差φ1を有することになる。
【0056】
さらに、一次インダクタ7の中点MP1に印加されるバイアス電圧と、一次インダクタ8の中点MP2に印加されるバイアス電圧とが異なる場合が考えられる。これによってトランジスタの寄生容量に差が生じると、トランジスタ3,6の出力が、トランジスタ4,5の出力に対して位相差φ1を有することになる。
【0057】
以上の原因が全て生じた場合、前述の式(1)〜(4)で表されるトランジスタ3〜6の出力信号の位相θ3〜θ6は、図10に示すように、θ3=φ0+φ1、θ4=φ0、θ5=φ2、θ6=φ0+φ1+φ2のように表わされる。ただし、トランジスタ3〜6に共通の原因による位相遅れをφ0としている。この場合、θ3−θ6=θ4−θ5=φ1となるので上記の条件(i)が満たされ、θ3−θ4=θ6−θ5=φ2となるので上記の条件(ii)が満たされていることがわかる。したがって、上記の原因によってトランジスタ3〜6の出力の位相ずれが生じたとしても、接続配線10によってその影響を抑制することができる。
【0058】
図11は、差動信号の位相ずれの抑制効果について説明するための図である。別の観点からみると、上記の抑制効果は、基板上の配線で接続された差動対がのべ4組形成されることに関係していると考えることができる。
【0059】
具体的に説明すると、図11(A)に示すように、一次インダクタ7によって端子P1に接続された図10のトランジスタ3と、端子N1に接続された図10のトランジスタ6とが接続される。図11(B)に示すように、一次インダクタ8によって端子P2,N2にそれぞれ接続されたトランジスタ5,4間が接続される。図11(C)に示すように、接続配線10によって端子P1,N2にそれぞれ接続された図10のトランジスタ3,4間が接続される。図11(D)に示すように、接続配線10によって端子P2,N1にそれぞれ接続された図10のトランジスタ5,6間が接続される。
【0060】
トランジスタ3〜6の出力に位相ずれがある場合でなく振幅にずれがある場合にも、接続配線10を設けることによって振幅ずれの影響を緩和することができる。振幅ずれの場合にも、振幅の大小関係に関して前述の条件(i),(ii)と類似の条件が成立する場合に接続配線10の効果が顕著に現われる。具体的に、トランジスタ3〜6の出力電圧の振幅をそれぞれV3,V4,V5,V6とすると、
(iii)トランジスタ3,6間の電圧振幅の差V3−V6とトランジスタ4,5間の電圧振幅の差V4−V5とが近い値の場合、または
(iv)トランジスタ3,4間の電圧振幅の差V3−V4とトランジスタ6,5間の電圧振幅の差V6−V5が近い値の場合に、振幅ずれの影響の緩和効果が顕著に現われる。
【0061】
[まとめ]
上記のとおり、一次インダクタ7,8の中点を接続する接続配線10を設けることによって、トランジスタ3〜6から出力される差動信号に位相ずれまたは振幅ずれがあったとしても、電力増幅装置110全体の差動動作のずれを抑制することができる。この結果、電力増幅装置110の出力低下を抑制することができる。
【0062】
また、このように差動信号のずれが抑制されることにより、トランジスタ3,6の出力部(CMOSではドレイン)における最大電圧振幅も抑えられるので、トランジスタの破壊を防ぐことができる。特に、ソース−ドレイン間耐圧の低いCMOSにおいて有効である。
【0063】
さらに、図1〜図4で説明した電力増幅装置(トランスアンプ)は、理想状態において、トランジスタから出力される偶数次高調波をトランスで相殺することができるため、最終的に低歪みな出力を得ることができる。もっとも、電力増幅装置全体の差動動作にずれがある場合は、偶数次高調波は二次インダクタ9に伝達されてしまうため、最終的な出力の歪みが大きくなる。そのため、一次インダクタ7,8の中点を接続することにより差動信号のずれを抑制すれば、最終的な出力の歪みを低減できる。すなわち、一次インダクタの中点を電気的に接続することにより、差動入力信号のずれやトランジスタのばらつきなどに起因する、電力増幅装置110全体の出力低下および歪みの増加を生じにくくする効果が得られる。
【0064】
また、図7で説明したように、図5の電力増幅装置110全体において差動動作が理想的であるとき、一次インダクタ7,8の鏡映対称面14は仮想AC接地となっているため、接続配線10はトランス100の高周波特性にほとんど影響を与えない(具体的なシミュレーション結果を実施の形態2で示す。)。トランジスタ3〜6の出力信号にばらつきがある場合でも、配線10により電力増幅装置110全体の差動動作のずれが抑制されるため、接続配線10がトランス100の高周波特性に与える影響は小さくなる。
【0065】
図12は、図5のトランス100のVd端子11,18に接続される外部電源回路を含む回路図である。図12を参照して、接続配線10の高周波特性に対する影響について補足する。
【0066】
図12に示すように、トランス100のVd端子11,18は、ボンディングワイヤを含んだ配線74,75を介して直流電源76に接続される。配線74,75は、それぞれ寄生インピーダンスZP4,ZP5を有している。この場合、一次インダクタ7,8の中点を接続する接続配線10の寄生インピーダンスZP3は、トランス100の外部の配線74,75の寄生インピーダンスZP4,ZP5に比べて十分に小さい。したがって、接続配線10の寄生インピーダンスZP3は無視することができる。
【0067】
一次インダクタ7,8の中点を接続する接続配線10の寄生インピーダンスZP3が無視できない大きさであれば、電力増幅装置110全体の差動動作のずれを抑制する機能は弱まる。したがって、トランスの外側を迂回する配線で一次インダクタ7,8の中点を接続しても、一次インダクタ7,8の内側を接続するのと同等の効果は望めない。
【0068】
<実施の形態1の変形例1>
図13は、実施の形態1の変形例1による電力増幅装置110Aの構成を示す図である。図13の電力増幅装置110Aは、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2と接地ノードGNDとの間に接続されたバイパスコンデンサ72,73をさらに含む点で、図5、図12の電力増幅装置110と異なる。具体的に、バイパスコンデンサ72はボンディングワイヤ70を介して中点MP1側のVd端子11に接続され、バイパスコンデンサ73はボンディングワイヤ71を介して中点MP2側のVd端子18に接続される。その他の点については、図13の電力増幅装置110Aは、図5、図12の電力増幅装置110と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。なお、図13では、トランジスタ3〜6の図示を省略している。
【0069】
仮に、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2を接続する接続配線10を設けず、全ての一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2に直接バイパスコンデンサ72,73を接続してAC接地にしたとする。この場合、コモンモード(同相成分)が存在できなくなるので、差動信号のずれがほとんどなくなる。ただし、厳密には、一次インダクタ7,8と二次インダクタ9との間の容量結合によって若干のコモンモードは残るが、わずかであるので無視できる。
【0070】
しかし、実際には、バイパスコンデンサ72,73は大容量であるためトランス100と同一チップ上に形成することはできず、最短距離でもボンディングワイヤ70,71の後ろにチップ部品としてバイパスコンデンサ72,73を設置することとなる。このため、AC接地GNDまでにボンディングワイヤ70,71の寄生インピーダンスZP4,ZP5を有することになってしまう。この寄生インピーダンスが大きければ、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2をAC接地することによる差動信号ずれの抑制効果が弱まる。
【0071】
図13の電力増幅装置110Aでは、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2を接続する接続配線10を設けることによって、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2からAC接地GNDまでの寄生インピーダンスを小さくすることができる。なぜなら、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2からAC接地GNDまでの経路が増えるために、寄生インピーダンスが合成されるからである。たとえば、図13のような場合では、Vd端子11からAC接地GNDまでの寄生インピーダンスは、ボンディングワイヤ70によるものと、接続配線10からボンディングワイヤ71までのものとが並列に合成されたものになる。同様に、Vd端子18からAC接地GNDまでの寄生インピーダンスは、ボンディングワイヤ71によるものと、接続配線10からボンディングワイヤ70までのものとが並列に合成されたものになる。このようなAC接地までの寄生インピーダンスが小さくなる効果は、接続するトランスの段数nが増えるほど顕著になる。AC接地までの経路がn個のバイパスコンデンサの各々を介した並列の経路になるためである。
【0072】
<実施の形態1の変形例2>
図14は、実施の形態1の変形例2による電力増幅装置110Bの構成を示す図である。図14の電力増幅装置110Bは、トランジスタ3〜6の配置が図5の電力増幅装置110と異なる。
【0073】
図5の電力増幅装置110ではトランジスタ3〜6をトランス100の外側に配置しているが、図14の電力増幅装置110Bでは、トランジスタ3〜6はトランス100の内側に配置される。いずれの配置であっても、全てのトランジスタ3〜6は一次インダクタ7,8全体と同一の対称面(図6の参照符号14,15)に対して鏡映対称に配置されることが好ましい。
【0074】
さらに、入力端子1,2と各トランジスタ3〜6とを接続する差動入力配線16,17を一次インダクタ全体の鏡映対称面(図6の参照符号14)近傍に配置してもよい。この時、互いに隣接させた差動入力配線16,17の間隙の中心線と一次インダクタ全体の鏡映対称面(どちらも仮想AC接地)が一致するように配置する。トランジスタがトランスの外側に配置される場合でも、差動入力配線16,17を同様に配置したほうが好ましい。
【0075】
なお、後述する実施の形態2,3の電力増幅装置の場合にも、トランジスタおよび差動入力配線の配置を上記と同様にしたほうが好ましい。
【0076】
<実施の形態2>
実施の形態2では、図4に示した巻数比1:m(mは2以上の整数)のトランスアンプに相当する電力増幅装置の構成について説明する。
【0077】
図15は、この発明の実施の形態2による電力増幅装置210の構成を示す図である。図15の電力増幅装置210は、図4における段数n=2、巻数比1:2のトランスアンプに相当する。すなわち、図15のトランス200は、二次インダクタ51が2回巻きとなっている点で、1枚巻きの二次インダクタ9を有する図5のトランス100と異なる。なお、図15では図解を容易にするために、二次インダクタ51にハッチングを付している。
【0078】
図15の場合、二次インダクタ51を2回巻としたために、トランス200全体の鏡映対称性は消失している。しかしながら、交差部52を一次インダクタ7,8全体の鏡映対称面(図6の参照符号15)上に配置することにより、差動信号を入力したときの電力増幅装置210全体の差動動作のずれを最小限に抑えることができる。この結果、最終的な電力増幅装置210の出力の低下を抑制することができる。
【0079】
図16は、図15のトランス200の高周波特性を電磁界シミュレーションで求めた結果を示す表である。
【0080】
シミュレーションにおいて、トランス200の二次インダクタの外周のサイズは、図面の横方向(接続配線10の延在方向)の長さを900μmとし、図面の縦方向の長さを760μmとした。トランス200の配線はCu(銅)配線とした。一次インダクタ7,8の配線幅を60μm、二次インダクタ51の配線幅を30μm、Vd印加用の配線部19,20および接続配線10の配線幅を50μmとした。
【0081】
図16に示すシミュレーション結果の表は、接続配線10を設けない場合と設けた場合とを比較したものである。図16においてトランス1個あたりの巻数比は、図4の巻数比mに対応する値である。トランス200内部を横断する接続配線10によって、巻数比がほとんど変化しないことがわかる。
【0082】
図17は、図15のトランス200の整合時挿入損失を電磁界シミュレーションで求めた結果を示す図である。整合時挿入損失とは、各周波数でトランス200が実現できる最小の挿入損失を意味する。実線のグラフ58は、図15に示すように接続配線10を設けた場合のシミュレーション結果を示す。破線のグラフ59は、接続配線10を設けない場合のシミュレーション結果を示す。
【0083】
図17のシミュレーション結果によれば、各周波数において、接続配線を設けた場合と設けない場合とで整合時挿入損失がほとんど変化しないことがわかる。たとえば、周波数が900MHzのとき接続配線10を設けることによって0.03dBの損失増加が見られるが、百分率に換算すると1%以下である。
【0084】
正確に言えば、仮想AC接地は鏡映対称面でのみ実現されており、鏡映対称面上に配置された有限の幅を有する接続配線10全体で理想的に仮想AC接地となっているわけではない。そのため、たとえ接続配線10が鏡映対称面を通っていたとしても、その占める面積がトランスに対して無視できなくなると、挿入損失増加の原因となる。したがって、一次インダクタ7,8の中点MP1,MP2を接続するために、極端に幅の広い配線を用いることは好ましくない。一方で、極端に幅の細い配線を用いると、接続配線10自体の寄生抵抗と寄生インダクタンスにより、電力増幅装置210全体の差動動作のずれを抑制する機能が弱まる。つまり、トランス200の挿入損失と差動動作の調節機能はトレードオフの関係にある。
【0085】
<実施の形態2の変形例1>
図18は、実施の形態2の変形例1によるトランス200Aの構成を示す平面図である。図18の二次インダクタ53は、3つの交差部54,55,56を有する点で、図15に示す単一の交差部52を有する二次インダクタ51と異なる。その他の点については、図18のトランス200Aは図15のトランス200と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。なお、図18では図解を容易にするために二次インダクタ53にハッチングを付している。
【0086】
二次インダクタ53が2回巻のとき、トランス全体の鏡映対称性を保持するには、奇数個の交差部が必要である。図18のように二次インダクタ53に3つの交差部54,55,56を設けた場合には、これらの交差部54,55,56を一次インダクタ7,8全体の鏡映対称面(図6の参照符号14,15)上に配置して、トランス200A全体の鏡映対称性を保持することが望ましい。なお、厳密に言うと、交差部54,55,56の重なり順は鏡映対称性を保持できないが、電力増幅装置の特性にはほとんど影響しないので無視できる。
【0087】
<実施の形態2の変形例2>
図19は、実施の形態2の変形例2による電力増幅装置210Bの構成を示す図である。図19の電力増幅装置210Bは、図4のトランスアンプで段数n=3、巻数比1:2の場合に相当する。電力増幅装置210Bは、基板SUB上に形成された増幅器81〜86とトランス200Bとを含む。
【0088】
増幅器81,83,85は、差動入力信号のうちの非反転信号IN(+)を増幅し、増幅器82,84,86は、差動入力信号のうちの反転信号IN(−)を増幅する。増幅器81〜86は同一構成であり、通常、ソース接地のMOSトランジスタによって構成される。以下では、増幅器81〜86をそれぞれトランジスタ81〜86とも記載する。トランジスタ81〜86で増幅された差動入力信号はトランス200Bに入力される。
【0089】
トランス200Bは、環状に配置された3個の一次インダクタ91〜93と、2回巻きの二次インダクタ61と、接続配線97と、ドレイン電圧(Vd)印加用の配線部87〜89とを含む。
【0090】
図20は、図19の電力増幅装置210Bの一次インダクタ91〜93の配置を示す平面図である。一次インダクタ91〜93の各々は1/3回巻き(1回巻きの1/3周分)の形状を有し、一次インダクタ91〜93全体で環状に配置される。図20の場合、一次インダクタ91〜93全体は、基板上の中心点CPを通り基板に垂直な中心軸に対して3回回転対称性を有する。さらに、一次インダクタ91〜93全体は、回転対称の中心軸を含む対称面94,95,96の各々に関して鏡映対称性を有する。対称面94〜96は一次インダクタ91〜93の中点をそれぞれ通る。
【0091】
再び図19を参照して、トランジスタ81,86は一次インダクタ91の両端部にそれぞれ接続され、トランジスタ83,82は一次インダクタ92の両端部にそれぞれ接続され、トランジスタ85,84は一次インダクタ93の両端部にそれぞれ接続される。図19のトランジスタ81,82は図20の対称面96に関して対称な位置で互いに近接して設けられる。同様にトランジスタ83,84は対称面94に関して対称な位置で互いに近接して設けられ、トランジスタ85,86は対称面95に関して対称な位置で互いに近接して設けられる。トランジスタ81〜86の全体は、図20の鏡映対称面94〜96の各々に関して鏡映対称となっている。
【0092】
2回巻きの二次インダクタ61は、一次インダクタ91〜93に隣接して配置され、一次インダクタ91〜93と磁気的に結合することによって、各一次インダクタで合成された信号IN(+),IN(−)の合成信号をさらに合成する。二次インダクタ61は3個の交差部62〜64を含む。交差部62〜64は一次インダクタ91〜93全体の鏡映対称面のいずれかに近接して配置され、これによって二次インダクタ61は3回回転対称に近い構造を有する。具体的には、交差部62は図20の対称面96に近接して配置され、交差部63は図20の対称面94に近接して配置され、交差部64は図20の対称面95に近接して配置される。
【0093】
接続配線97は、環状に配置された一次インダクタ91〜93の内側に配置され、各一次インダクタの中点MP3,MP4,MP5を接続する。より詳細には、接続配線10は、中心点CPと一次インダクタ91の中点MP3とを接続する配線部97Aと、中心点CPと一次インダクタ92の中点MP4とを接続する配線部97Bと、中心点CPと一次インダクタ93の中点MP5とを接続する配線部97Cとを含む。各配線部97A〜97Cは、対応の一次インダクタの中点を通る鏡映対称面に沿って設けられる。一次インダクタの個数(すなわち、トランスアンプの段数n)が増えると、中心点CPと各一次インダクタの中点とを接続する配線部の本数が多くなるため、接続配線の面積が増え、トランスの挿入損失が増加する傾向にある。
【0094】
Vd印加用の配線部87〜89は、一次インダクタ91〜93の中点からそれぞれ外側に引き出される。各トランジスタには、各トランジスタが接続された一次インダクタを介してドレインバイアスが供給される。鏡映対称面に沿って配置された接続配線97にはDC電流がほとんど流れない。
【0095】
<実施の形態3>
実施の形態3では、差動信号を増幅するトランジスタのドレイン電圧をトランスの一次側の1箇所から給電する場合について説明する。
【0096】
図21は、この発明の実施の形態3による電力増幅装置310の構成を示す図である。図21の電力増幅装置310は、図2のトランスアンプで段数n=4、巻数比1:1の場合に相当する。電力増幅装置310は、基板SUB上に形成された増幅器151〜158とトランス300とを含む。
【0097】
増幅器151,153,155,157は、差動入力信号のうちの非反転信号IN(+)を増幅し、増幅器152,154,156,158は、差動入力信号のうちの反転信号IN(−)を増幅する。増幅器151〜158は同一構成であり、通常、ソース接地のMOSトランジスタによって構成される。以下では、増幅器151〜158をそれぞれトランジスタ151〜158とも記載する。トランジスタ151〜158で増幅された差動入力信号はトランス300に入力される。
【0098】
トランス300は、環状に配置された4個の一次インダクタ21〜24と、1回巻きの二次インダクタ25と、接続配線26と、ドレイン電圧(Vd)印加用の配線部30とを含む。図21では図解を容易にするために、接続配線26と配線部30とにハッチングを付している。
【0099】
図22は、図21の電力増幅装置310の一次インダクタ21〜24の配置を示す平面図である。
【0100】
一次インダクタ21〜24の各々は1/4回巻き(1回巻きの1/4周分)の形状を有し、一次インダクタ21〜24全体で環状に配置される。図22の場合、一次インダクタ21〜24全体は、基板上の中心点CPを通り基板に垂直な中心軸に関して4回回転対称性を有する。さらに、一次インダクタ21〜24全体は、回転対称の中心軸を含む対称面31〜34の各々に関して鏡映対称性を有する。対称面31は、一次インダクタ21の中点MP6と一次インダクタ23の中点MP8とを通る。対称面32は、一次インダクタ22の中点MP7と一次インダクタ24の中点MP9とを通る。
【0101】
再び図21を参照して、トランジスタ151,158は一次インダクタ21の両端部にそれぞれ接続され、トランジスタ153,152は一次インダクタ22の両端部にそれぞれ接続され、トランジスタ155,154は一次インダクタ23の両端部にそれぞれ接続され、トランジスタ157,156は一次インダクタ24の両端部にそれぞれ接続される。トランジスタ151〜158の全体は、図22の鏡映対称面31〜34の各々に関して鏡映対称となっている。
【0102】
1回巻きの二次インダクタ25は、一次インダクタ21〜24に隣接して配置され、一次インダクタ21〜24と磁気的に結合することによって、各一次インダクタに入力された差動入力信号を合成する。合成された信号は、二次インダクタ25の一方の端子44を接地することにより、他方の端子43から単相の出力信号OUTとして出力される。
【0103】
接続配線26は、環状に配置された一次インダクタ21〜24の内側に配置され、各一次インダクタの中点MP6〜MP9を接続する。より詳細には、接続配線26は、中心点CPと一次インダクタ21の中点MP6とを接続する配線部26Aと、中心点CPと一次インダクタ22の中点MP7とを接続する配線部26Bと、中心点CPと一次インダクタ23の中点MP8とを接続する配線部26Cと、中心点CPと一次インダクタ24の中点MP9とを接続する配線部26Dとを含む。各配線部26A〜26Dは、対応の一次インダクタの中点を通る鏡映対称面に沿って設けられる。
【0104】
Vd印加用の配線部30は、一次インダクタ24の中点MP9からトランス300の外側に引き出される。配線部30のVd端子45にドレインバイアス電圧が印加される。一次インダクタ24の両端に接続されたトランジスタ157,156に対しては、ドレインバイアス電圧が配線部30および一次インダクタ24を介して供給される。一次インダクタ21の両端に接続されたトランジスタ151,158に対しては、ドレインバイアス電圧が配線部30,26D,26Aおよび一次インダクタ21を介して供給される。同様に、トランジスタ153,152に対しては、ドレインバイアス電圧が配線部30,26D,26Bおよび一次インダクタ22を介して供給される。トランジスタ155,154に対しては、ドレインバイアス電圧が配線部30,26D,26Cおよび一次インダクタ23を介して供給される。
【0105】
図2および図4のトランスアンプに対応する実施の形態1,2の電力増幅装置の場合、Vd端子の数はトランスの段数nに比例して増加する。その結果、外部電源に接続するためのワイヤボンド箇所が増加し、ボンディングワイヤの本数が増加する。ボンディングワイヤが交差したり、外部電源回路が複雑化したりすると、さらにチップ実装コストが上昇することになる。これは、CMOSによる低コスト化と相反する傾向である。実施の形態3の電力増幅装置によれば、一次インダクタの中点を接続する配線を用いてVd端子を1つに集約することにより、チップ実装を簡素化し、全体コストの低減に寄与することができる。
【0106】
実施の形態3の電力増幅装置のその他の効果として、設置すべきACカット部品を削減できることが挙げられる。電力増幅装置全体が理想的な差動動作をしている場合は、Vd端子に接続される一次インダクタの中点は仮想AC接地である。したがって、Vd端子から外部へ高周波信号が漏れることはほとんどない。しかし、差動動作にずれが生じたときは、一次インダクタの中点は仮想AC接地とはならない。この場合、Vd端子から高周波信号が漏れるのを防止するために、Vd端子にチョークコイルのような外付けのACカット部品を接続することがある。実施の形態3の電力増幅装置によれば、Vd端子を1つに集約することができるので、必要なACカット部品の点数を削減することができる。
【0107】
<実施の形態3の変形例>
図23は、この発明の実施の形態3の変形例によるトランス300Aの構成を示す平面図である。図23のトランス300Aは、Vd印加用の配線部30に代えて中心点CPに設けられたVd印加用のパッド41を含む点で図21のトランス300と異なる。図23のその他の点については図21のトランス300と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0108】
ワイヤボンドの制約が許せば、Vd端子をトランス外部に出さずに図23のようにトランス300Aの中心点CPにパッド41を配置し、ここをVd端子としてもよい。この場合、全ての一次インダクタ21〜24の中点からVd端子としてのパッド41までの電気抵抗(すなわち、配線部26A〜26Dの電気抵抗)が同一であれば、一次インダクタ21〜24に接続された図21の8つのトランジスタ151〜158のドレイン抵抗を均一にすることができる。この結果、トランジスタ全体の動作ばらつきを抑制することができる。
【0109】
また、トランス300Aでは図21の配線部30が設けられていないので、二次インダクタ25の端子43,44を図21のトランス300の場合よりも近接して配置することができる。この結果、一次インダクタ24と二次インダクタ25との対向距離を伸ばすことができるので、一次インダクタ24と二次インダクタ25の磁気結合を強めることができる。
【0110】
図21のトランス300の場合には、Vd端子を1つに集約しているために、一次インダクタ21〜24の中点を接続する配線部26A〜26Dにも、DC(直流)のドレイン電流が流れる。そのため、一次インダクタの中点を接続する配線部26A〜26Dの幅は、流れるDC電流の大きさに合わせて調節する必要がある。特に、図21の配線部26Dには配線部26A〜26Cを通して一次インダクタ21〜23のDC電流(3組の差動対のDCドレイン電流)が集まる。配線部30にはさらに一次インダクタ24に接続された差動対用のDC電流も重畳され、4個の差動対のDCドレイン電流が流れるので、より幅広の配線が必要となる。もっとも、配線幅を広くするとトランスの挿入損失は増加するので、トランスの挿入損失の大きさに応じてVd端子の数を調整するほうがよい。
【0111】
これに対して、図23のトランス300Aにおいては、配線部26A〜26Dにはそれぞれに1組の差動対のDCドレイン電流しか流れない。たとえば、一次インダクタ21の両端に接続されたトランジスタには、配線部26Aと一次インダクタ21を介してドレインバイアスが供給される。したがって、図21のトランス300の場合のような配線幅の制約が軽減される。特に、図23のように、一次インダクタ21〜24の中点とVd端子としてのパッド41との距離が全て同一の場合には、配線部26A〜26Dの幅は全て同一でよい。
【0112】
図23のように中心点CPにパッド41を設けたトランスにおいて、トランスの形状(すなわち、一次インダクタ21〜24によって構成される環の形状)が横長である場合(図のX方向がY方向より長い場合)や、縦長である場合(図のY方向がX方向よりも長い場合)も考えられる。この場合、配線部26A〜26Dの各線幅および一次インダクタ21〜24の各線幅を調整することによって、パッド41から図21の各トランジスタに至るバイアス電圧の供給経路の抵抗値をすべて同一にすることができる。この結果、図21の8つのトランジスタ151〜158のドレイン抵抗を均一にすることができるので、トランジスタ全体の動作ばらつきを抑制することができる。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
3〜6 トランジスタ(増幅器)、7,8 一次インダクタ、9 二次インダクタ、10 接続配線、10A,10B 配線部、14,15 鏡映対称面、21〜24 一次インダクタ、25 二次インダクタ、26 接続配線、26A〜26D 配線部、31〜34 鏡映対称面、41 パッド、51 二次インダクタ、52 交差部、53 二次インダクタ、54〜56 交差部、61 二次インダクタ、62〜64 交差部、72,73 バイパスコンデンサ、81〜86 トランジスタ(増幅器)、91〜93 一次インダクタ、94〜96 鏡映対称面、97 接続配線、97A〜97C 配線部、100,200,300 トランス、110,210,310 電力増幅装置、151〜158 トランジスタ(増幅器)、AP,AN トランジスタ(増幅器)、CP 中心点、MP1〜MP9 一次インダクタの中点、SUB 基板、XF トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に全体で環状に設けられた複数の一次インダクタと、
前記複数の一次インダクタにそれぞれ対応して設けられた複数の増幅器対とを備え、
前記複数の増幅器対の各々を構成する第1および第2の増幅器は、対応の一次インダクタの両端にそれぞれ接続され、差動入力信号として与えられた一対の第1および第2の信号をそれぞれ増幅して対応の一次インダクタに出力し、
さらに、前記複数の一次インダクタに隣接して1または複数巻で環状に設けられ、前記複数の一次インダクタと磁気的に結合することによって、前記複数の一次インダクタの各々で合成された前記第1および第2の信号の合成信号をさらに合成して出力する二次インダクタと、
前記基板上で前記複数の一次インダクタの内側に設けられ、前記複数の一次インダクタの各々の中点を互いに電気的に接続する接続配線とを備え、
前記中点は、一次インダクタ上の点で一次インダクタの両端から等しい距離にある点である、電力増幅装置。
【請求項2】
前記複数の一次インダクタの全体の形状は、前記基板に垂直な特定の中心軸に対して回転対称であるとともに、前記中心軸を含む特定の複数の対称面の各々に対して鏡映対称になるように形成され、
前記複数の一次インダクタの各々の中点は、前記複数の対称面のいずれか1つに含まれ、
前記接続配線は、前記複数の一次インダクタにそれぞれ対応する複数の配線部を含み、
前記複数の配線部の各々は、前記中心軸と基板面との交点である中心点と、対応の一次インダクタの中点とを接続し、対応の一次インダクタの中点を通る対称面に沿って設けられる、請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記二次インダクタは、1または複数の交差部を含んで複数巻で形成され、
前記1または複数の交差部の各々は、前記複数の対称面のいずれか1つに近接して設けられる、請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項4】
前記第1および第2の増幅器の各々は、駆動電圧によって動作するトランジスタを有し、
前記駆動電圧は、外部から前記複数の一次インダクタのうちのいずれか1つである第1の一次インダクタの中点に供給され、
前記第1の一次インダクタの両端に接続された前記トランジスタに対しては、前記第1の一次インダクタを通って前記駆動電圧が供給され、
前記複数の一次インダクタのうち前記第1の一次インダクタと異なる第2の一次インダクタの両端に接続された前記トランジスタに対しては、前記接続配線および前記第2の一次インダクタを通って前記駆動電圧が供給される、請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記第1および第2の増幅器の各々は、駆動電圧によって動作するトランジスタを有し、
前記駆動電圧は、外部から前記接続配線上の前記中心点に供給され、
前記複数の一次インダクタのうちの第1の一次インダクタの両端に接続された前記トランジスタに対しては、前記接続配線および前記第1の一次インダクタを通って前記駆動電圧が供給される、請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
前記第1および第2の増幅器の各々は、駆動電圧によって動作するトランジスタを有し、
前記駆動電圧は、外部から前記複数の一次インダクタの各々の中点に供給され、
前記複数の一次インダクタのうちの第1の一次インダクタの両端に接続された前記トランジスタに対しては、前記第1の一次インダクタを通って前記駆動電圧が供給される、請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項7】
前記複数の一次インダクタの各々の中点と接地ノードとの間に個別に接続された複数のバイパスコンデンサをさらに備える、請求項6に記載の電力増幅装置。
【請求項8】
前記複数の一次インダクタの各々に接続された前記第1および第2の増幅器は、全体として、前記複数の対称面の各々に関して鏡映対称となるように配置される、請求項2または3に記載の電力増幅装置。
【請求項9】
前記電力増幅装置は、前記複数の一次インダクタの各々について、前記第1および第2の増幅器に前記第1および第2の信号をそれぞれ供給するための第1および第2の信号線をさらに備え、
前記第1および第2の信号線は、対応の一次インダクタの中点を通る対称面に関して鏡映対称な位置に配置される、請求項8に記載の電力増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−66599(P2011−66599A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214308(P2009−214308)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】