説明

電力変換装置、電力変換システム、およびモータインバータ

【課題】直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構や動作を必要とせず、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することが容易となる電力変換装置を提供する。
【解決手段】駆動パルス信号に応じてスイッチングを行うスイッチング素子を有し、該スイッチングにより、入力される交流電圧に交流−直流変換を行う変換回路と、前記スイッチング素子の操作量を定める操作信号を生成する操作信号生成部と、前記操作信号を信号波としたパルス幅変調を行い、該操作信号に応じた前記駆動パルス信号を生成するパルス信号生成部と、を備え、前記操作信号生成部は、前記パルス幅変調における変調度を検出し、該変調度の検出値に基づいて前記操作信号を生成する電力変換装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を直流に変換する電力変換装置、ならびに、これを有した電力変換システムおよびモータインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電圧を直流に変換する電力変換装置が広く利用されている。また電力変換装置の一種として、交流電源にリアクトルを介してPWMブリッジ型変換回路を接続させる構成の高力率コンバータが知られている。
【0003】
この装置の電力変換回路は、例えばIGBT[Insulated Gate Bipolar Transistor]等のスイッチング素子をブリッジ接続し、各スイッチング素子に逆並列にダイオードを接続することによって構成されている。この種の電力変換回路は、単に交流電圧を直流に変換するだけではなく、通常、入力される交流電流の波形を正弦波に近似させる機能、力率を1に近づける機能、および直流出力電圧を目標値(所望値)に制御する機能を有する。
【0004】
なお直流出力電圧を目標値に制御する手法としては、例えば、直流出力電圧を検出し、この検出結果が目標値に近づくように、各スイッチング素子をフィードバック制御する手法が挙げられる。また特許文献1には、直流出力電圧を検出する代わりに、入力される交流電圧や交流電流に基づいて直流出力電圧を推定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−59354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直流出力電圧を目標値に制御する電力変換装置によれば、出来るだけ所望値に近い値の直流出力電圧を得ることが可能である。しかし電力変換装置の主な使用目的が、入力される交流電流の波形を正弦波に近似させたり、力率を1に近づけたりすること等である場合、直流出力電圧の目標値をどのように設定しておくかが問題となる。
【0007】
ところで、例えば先述した構成の高力率コンバータでは、主回路自体が昇圧型となっている。そのため、入力される交流電流を完全な正弦波にするためには、直流出力電圧は、少なくとも、入力される交流電圧のピーク値以上の値に制御される必要がある。
【0008】
しかし直流出力電圧の目標値を低く設定し過ぎると、入力される交流電圧の変動などにより、直流出力電圧がこの交流電圧のピーク値より低くなり易くなる。その結果、入力される交流電流のピーク値付近の波形が歪み、高調波電流が増加する。その一方で、直流出力電圧の目標値を高く設定し過ぎると、各スイッチング素子でのスイッチング損失が増大し、電力変換の効率低下を招くことになる。
【0009】
そのため、入力される電流波形を歪ませないように直流出力電圧の目標値を設定する手法として、(1)入力される交流電圧のピーク値を検出し、このピーク値に一定のマージンを加えた値を、当該目標値に設定する手法や、(2)電力変換の効率は多少犠牲になるが、入力される交流電圧の変動に比べて十分に高いと考えられる値を、当該目標値として固定的に設定しておく手法、などが挙げられる。
【0010】
しかしこのような手法では、ある程度の幅をもつ動作領域全体において、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することは困難である。また直流出力電圧の検出や推定を伴う手法を採用する場合、直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構や動作が必要となり、電力変換装置のコスト増大を招く結果となる。
【0011】
本発明は上述した問題に鑑み、直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構や動作を必要とせず、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することが容易となる電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力変換装置は、駆動パルス信号に応じてスイッチングを行うスイッチング素子を有し、該スイッチングにより、入力される交流電圧に交流−直流変換を行う変換回路と、前記スイッチング素子の操作量を定める操作信号を生成する操作信号生成部と、前記操作信号を信号波としたパルス幅変調を行い、該操作信号に応じた前記駆動パルス信号を生成するパルス信号生成部と、を備え、前記操作信号生成部は、前記パルス幅変調における変調度を検出し、該変調度の検出値に基づいて前記操作信号を生成する構成とする。
【0013】
本構成によれば、直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構や動作を必要とせず、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することが容易となる。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記変換回路は、複数の前記スイッチング素子がブリッジ接続されて形成されたブリッジ型変換回路を有し、前記操作信号生成部は、入力される交流電流が力率1の正弦波に近づくように、前記操作信号を生成する構成としてもよい。
【0015】
また上記構成としてより具体的には、前記操作信号生成部は、前記変調度の検出値をフィードバックさせ、前記変調度が予め設定されている目標値に近づくように、または、前記変調度が予め設定されている許容範囲に収まるように、前記操作信号を生成する構成としてもよい。
【0016】
また上記構成としてより具体的には、前記操作信号生成部は、前記変調度が1に近づくように、前記操作信号を生成する構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記変換回路は、前記交流−直流変換を行う方向とは逆の方向に、電圧の直流−交流変換を行う構成としてもよい。
【0017】
また本発明に係る電力変換システムは、上記構成の電力変換装置と、双方向に昇圧または降圧の直流−直流変換を行う直流−直流変換回路と、を備え、前記電力変換装置の側に入力される交流電圧に、前記交流−直流変換および前記直流−直流変換を順に行って得られる直流電圧を、前記直流−直流変換回路の側から出力する動作、および、前記直流−直流変換回路に入力される直流電圧に、前記直流−直流変換および前記直流−交流変換を順に行って得られる交流電圧を、前記電力変換装置の側から出力する動作、を行う構成とする。
【0018】
また上記構成において、前記電力変換装置の側には配電系統が接続され、前記直流−直流変換回路の側には二次電池が接続される構成としてもよい。本構成によれば、当該電力変換システムを、二次電池用のパワーコンディショナとして用いることが可能となる。
【0019】
また本発明に係るモータインバータは、上記構成に係る電力変換装置と、前記交流−直流変換によって得られた直流電圧が入力され、該直流電圧に直流−交流変換を行う直流−交流変換回路と、を備え、前記直流−交流変換によって得られた交流電圧を、モータ駆動用の電圧として出力する構成とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した通り、本発明に係る電力変換装置によれば、直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構や動作を必要とせず、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することが容易となる。また本発明に係る電力変換システムおよびモータインバータによれば、当該電力変換装置の利点を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る制御部の構成図である。
【図3】不足変調の場合におけるパルス信号等の模式的なグラフである。
【図4】過変調の場合におけるパルス信号等の模式的なグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る制御部の構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る双方向パワコンの構成図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る双方向パワコンの構成図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るモータインバータの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第5実施形態の各々を例に挙げて、以下に説明する。
【0023】
1.第1実施形態
[電力変換装置の構成等について]
まず第1実施形態として、単相交流電源に対応した電力変換装置(高力率コンバータ)を挙げて説明する。図1は、当該電力変換装置9の構成図である。本図に示すように電力変換装置9は、主回路1および制御部2を有している。
【0024】
主回路1は、ブリッジ型変換回路11、電流電圧検出回路12、リアクトルL1、コンデンサC1、および出力端子T1などを有している。主回路1は、単相交流電源E1が接続されており、単相交流電源E1から交流入力電流Iiおよび交流入力電圧Vsが入力される。
【0025】
ブリッジ型変換回路11は、フルブリッジ接続された各スイッチング素子(Q1〜Q4)を有しており、PWMブリッジ型変換回路を形成している。なお本発明の各実施形態では、スイッチング素子はNPN型のIGBTであるとするが、パワーMOSFETといった他種のものが採用されていても構わない。
【0026】
各スイッチング素子(Q1〜Q4)の接続形態としては、スイッチング素子Q1のエミッタにスイッチング素子Q2のコレクタが接続され、スイッチング素子Q3のエミッタにスイッチング素子Q4のコレクタが接続され、スイッチング素子Q1のコレクタにスイッチング素子Q3のコレクタが接続され、スイッチング素子Q2のエミッタにスイッチング素子Q4のエミッタが接続されている。
【0027】
なお、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、インダクタL1を介して、単相交流電源E1の正極側に接続され、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点は、単相交流電源E1の負極側に接続される。また、ブリッジ型変換回路11の上側の出力端(スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3との接続点)は、コンデンサC1の一端および上側の出力端子T1に接続され、ブリッジ型変換回路11の下側の出力端(スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q4との接続点)は、コンデンサC1の他端および下側の出力端子T1に接続されている。
【0028】
またスイッチング素子(Q1〜Q4)には、それぞれに、ダイオードが逆並列接続されている。また各スイッチング素子(Q1〜Q4)は、自身に対応する駆動パルス信号(G1〜G4)が制御部2から入力されるようになっており、入力された駆動パルス信号に応じて導通/非導通のスイッチングを行う。
【0029】
電流電圧検出回路12は、交流入力電流Iiおよび交流入力電圧Vsの波形を検出する。電流電圧検出回路12は、検出された交流入力電流Iiの波形を表す信号(「入力電流信号」と称する)、および検出された交流入力電圧Vsの波形を表す信号(「入力電圧信号」と称する)を、制御部2に出力する。
【0030】
制御部2は、主回路1側から入力される入力電流信号および入力電圧信号に基づいて、駆動パルス信号(G1〜G4)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q4)に出力する。
【0031】
[制御部の詳細構成等について]
次に、制御部2の詳細な構成等について説明する。図2は制御部2の構成図である。本図に示すように、制御部2は、基準正弦波生成部21、乗算器22、減算器23、PI制御器24、補償信号生成部25、加算器26、三角波生成部27、PWMコンパレータ28、変調度制御部29、およびゲート駆動回路30などを備えている。
【0032】
基準正弦波生成部21は、主回路1側から入力された入力電圧信号について、ゼロクロス検出処理(電圧値がゼロとなるタイミングの検出処理)などを実行し、交流入力電圧Vsと同相である基準正弦波を生成して出力する。
【0033】
乗算器22は、基準正弦波生成部21から出力される基準正弦波に、変調度補正値CMV(詳しくは後述する)を乗算する処理を施す。当該乗算によって得られる波形の信号は、減算器23に出力される。
【0034】
減算器23は、主回路1側から入力された入力電流信号に基づき、乗算器22から出力される信号の波形から交流入力電流Iiの波形を減算する処理を施す。当該減算によって得られる波形の信号は、PI制御器24に出力される。
【0035】
PI制御器24は、減算器23から出力される信号の値がゼロに近づくように出力値を算出し、この出力値を表す信号を加算器26に出力する。すなわちPI制御器24は、乗算器22から出力される信号の波形と交流入力電流Iiの波形との偏差が小さくなるように、PI制御を実行する。これにより、交流入力電流Iiが、力率1の正弦波に近づくように制御されることとなる。
【0036】
補償信号生成部25は、主回路1にて発生する逆起電圧を補償するための、補償信号を生成する。補償信号生成部25は、主回路1側から入力された入力電流信号に基づいて、交流入力電圧Vsに所定係数Kを乗じた値の信号を補償信号として生成し、加算器26に出力する。
【0037】
加算器26は、PI制御器24の出力信号の値に、補償信号の値を加算する処理を施す。これにより、逆起電圧を補償するためのフィードフォワード(FF)制御が実現される。当該加算によって得られる波形の信号は、ブリッジ型変換回路11の操作量を定める操作信号mvとして、PWMコンパレータ28の非反転入力端子および変調度制御部29に出力される。
【0038】
三角波生成部27は、周期や振幅が予め定められている基準三角波TRIの信号を生成し、PWMコンパレータ28の反転入力端子に出力する。PWMコンパレータ28は、各入力端子に入力される信号の値を比較し、当該比較の結果に応じた信号(HレベルとLレベルが交互に現れるパルス信号)を生成する。
【0039】
すなわちPWMコンパレータ28は、操作信号mvを信号波とし、基準三角波TRIを搬送波(キャリア)とする、キャリア変調方式のパルス幅変調(PWM)を実行する。なお当該パルス幅変調における変調度MVは、操作信号mv(信号波)の振幅と基準三角波TRI(搬送波)の振幅との比で表される。PWMコンパレータ28によって生成されたパルス信号は、ゲート駆動回路30に出力される。
【0040】
また変調度制御部29は、変調度MVを目標値に近づけるためのフィードバック制御を行うものであり、変調度検出部29a、目標変調度信号生成部29b、減算器29c、およびPI制御器29dを備えている。
【0041】
変調度検出部29aは、入力される操作信号の振幅を検出し、この検出結果(操作信号の振幅)と基準三角波TRIの振幅(予め定められている値)との比である、現時点での変調度MVを検出する。なお、基準三角波TRIの振幅が1に設定されている場合、検出された操作信号の振幅を変調度とみなすことが出来る。検出された現時点での変調度MVを表す信号は、減算器29cに出力される。
【0042】
目標変調度信号生成部29bは、変調度MVの目標値を表す信号を生成し、減算器29cに出力する。なお後述する理由により、変調度MVは1であることが理想であるため、通常、この目標値は1に設定されことが好ましい。但し、当該目標値は1に限られるものではなく、例えば、変調度MVが1を越えることをより確実に防ぐため、目標値を1よりやや小さい値としても構わない。また当該目標値は、常時固定としておいても良く、所定の手段によって更新可能としておいても良い。
【0043】
減算器29cは、変調度検出部29aおよび目標変調度信号生成部29bから入力される信号に基づき、目標変調度から現時点での変調度MVを減算する処理を施す。当該減算によって得られる値の信号は、PI制御器29dに出力される。
【0044】
PI制御器29dは、減算器29cから出力される信号の値がゼロに近づくように先述した変調度補正値CMVを算出し、この変調度補正値CMVを表す信号を乗算器22に出力する。すなわちPI制御器29dは、目標変調度と現時点での変調度MVとの偏差が小さくなるように、PI制御を実行する。
【0045】
先述した通り、変調度補正値CMVは、基準正弦波生成部21から出力される基準正弦波に乗じられる。これにより変調度MVは、目標値に近づくようにフィードバック制御されることとなる。
【0046】
ゲート駆動回路30は、PWMコンパレータ28から入力されるパルス信号に応じて駆動パルス信号(G1〜G4)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q4)に出力する。これにより、各スイッチング素子(Q1〜Q4)のPWM制御が実現されることになる。
【0047】
[電力変換回路の動作および変調度について]
電力変換回路9は上述した通りの構成となっており、ブリッジ型変換回路11における各スイッチング素子(Q1〜Q4)をスイッチングさせることによって、単相交流電源E1から入力される交流入力電圧Vsを直流電圧に変換し、直流出力電圧Voとして出力端子T1から出力する。
【0048】
また上述した通り、制御部2は、交流入力電流Iiが力率1の正弦波に近づくように、かつ、変調度MVが目標値の1に近づくように、各スイッチング素子(Q1〜Q4)の操作量を定める操作信号mvを生成する。そして制御部2は、操作信号mvを信号波とし、基準三角波TRIを搬送波(キャリア)とするキャリア変調方式のパルス幅変調を行い、操作信号mvに応じた駆動パルス信号(G1〜G4)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q4)を駆動させる。
【0049】
ここで、制御部2が行うパルス幅変換について、変調度MVが1より小さい場合(不足変調)におけるパルス信号等の模式的なグラフを図3に、変調度MVが1より大きい場合(過変調)に生成されるパルス信号等の模式的なグラフを図4に、それぞれ示す。なお変調度MV(=操作信号mvの振幅/基準三角波TRIの振幅)は、図3については0.7(=0.7/1.0)となっており、図4については1.2(=1.2/1.0)となっている。
【0050】
図3に示すように、不足変調である場合は直流出力電圧Voが過剰傾向となり、各スイッチング素子(Q1〜Q4)のスイッチング損失などが増大し、電力変換の効率低下を招くおそれがある。一方、図4に示すように、過変調である場合は直流出力電圧Voが不足傾向となり、直流出力電圧Voが交流入力電圧Vsのピーク値より低くなると、交流入力電流Iiのピーク値付近の波形が歪んで高調波電流が増加し易くなってしまう。
【0051】
このような理由から、変調度MVは、出来るだけ1に近い状態に維持されることが望ましいといえる。電力変換装置9によれば、交流入力電圧Vsや直流の出力電流が変動しても、常時1付近の値となるように変調度MVが動的に制御される。その結果、直流出力電圧Voは、最適な値となるように動的に制御される。
【0052】
なお電力変換装置9は、上述したように変調度MVを制御するが、出力電圧については、直接制御するようになってはいない。そこで、電力変換装置9を用いて負荷への電力供給システムを形成する際には、電力変換装置9と負荷との間(すなわち主回路1の後段側)に、電圧調整用の機器(直流出力電圧Voを負荷に適合するように調整する機器)が設けられるようにしても良い。これにより、負荷に適正な入力電圧を供給することが可能でありながら、電力変換装置9の特長を活かした電力供給システムが実現される。
【0053】
2.第2実施形態
次に第2実施形態として、三相交流電源に対応した電力変換装置(高力率コンバータ)を挙げて説明する。図5は、当該電力変換装置9aの構成図である。本図に示すように電力変換装置9aは、主回路3および制御部4を有している。
【0054】
主回路3は、ブリッジ型変換回路31、電流電圧検出回路32、リアクトル(L1〜L3)、コンデンサC1、および出力端子T1などを有している。主回路3は三相交流電源E2が接続されており、三相交流電源E2から、三相(U相、V相、およびW相)の交流入力電流(Iu、Iv、Iw)および交流入力電圧(Vu、Vv、Vw)が入力される。なお添字のu、v、およびwは、それぞれ、U相、V相、およびW相であることを表す。
【0055】
ブリッジ型変換回路31は、フルブリッジ接続された各スイッチング素子(Q1〜Q6)を有しており、PWMブリッジ型変換回路を形成している。
【0056】
各スイッチング素子(Q1〜Q6)の接続形態としては、スイッチング素子Q1のエミッタにスイッチング素子Q2のコレクタが接続され、スイッチング素子Q3のエミッタにスイッチング素子Q4のコレクタが接続され、スイッチング素子Q5のエミッタにスイッチング素子Q6のコレクタが接続されている。またスイッチング素子Q1、Q3、およびQ5の各コレクタが互いに接続され、スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6の各エミッタが互いに接続されている。
【0057】
なお、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点は、インダクタL1を介して、三相交流電源E2のU相電源ラインに接続され、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、インダクタL2を介して、三相交流電源E2のV相電源ラインに接続され、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点は、インダクタL3を介して、三相交流電源E2のW相電源ラインに接続される。また、ブリッジ型変換回路31の上側の出力端(スイッチング素子Q1、Q3、およびQ5の接続点)は、コンデンサC1の一端および上側の出力端子T1に接続され、ブリッジ型変換回路31の下側の出力端(スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6の接続点)は、コンデンサC1の他端および下側の出力端子T1に接続されている。
【0058】
またスイッチング素子(Q1〜Q6)には、それぞれに、ダイオードが逆並列接続されている。また各スイッチング素子(Q1〜Q6)は、自身に対応する駆動パルス信号(G1〜G6)が制御部4から入力されるようになっており、駆動パルス信号に応じて導通/非導通のスイッチングを行う。
【0059】
電流電圧検出回路32は、各相の交流入力電流(Iu、Iv、Iw)および交流入力電圧(Vu、Vv、Vw)の波形を検出する。電流電圧検出回路12は、検出された各相の交流入力電流の波形、および検出された各交流入力電圧の波形を、制御部4に出力する。
【0060】
制御部4は、主回路2側から入力される入力電流信号および入力電圧信号に基づいて、駆動パルス信号(G1〜G6)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q6)に出力する。
【0061】
[制御部の詳細構成等について]
次に、制御部4の詳細な構成等について説明する。図6は制御部4の構成図である。本図に示すように、制御部4は、電流値に対応した座標変換部41、減算器(42a、42b)、PI制御器(43a、43b)、電圧値に対応した座標変換部44、補償処理部(45a、45b)、加算器(46a、46b)、逆座標変換部47、三角波生成部28、PWMパルス生成部49、変調度制御部50、およびゲート駆動回路51などを備えている。
【0062】
座標変換部41は、主回路3側から入力された各相の交流入力電流の波形に座標変換(三相二相変換と回転座標変換を含む)を施し、交流入力電流のd軸成分(有効電流成分)の信号Id、およびq軸成分(無効電流成分)の信号Iqを生成する。信号Idは加算器42aへ、Iqの信号は加算器42bへ、それぞれ出力される。
【0063】
減算器42aは、変調度補正値CMV(詳しくは後述する)から信号Idの値を減算する処理を行う。当該減算によって得られる値の信号は、PI減算器43aに出力される。また減算器42bは、ゼロの電流値(0A)から信号Iqの値を減算する処理を行う。当該減算によって得られる値の信号は、PI減算器43bに出力される。
【0064】
PI制御器43aは、減算器42aから出力される信号の値がゼロに近づくように出力値を算出し、この出力値を表す信号を加算器46aに出力する。すなわちPI制御器43aは、変調度補正値CMVと信号Idの値との偏差が小さくなるように、PI制御を実行する。このようにして、有効電流成分の振幅の制御が行われる。
【0065】
PI制御器43bは、減算器42bから出力される信号の値がゼロに近づくように出力値を算出し、この出力値を表す信号を加算器46bに出力する。すなわちPI制御器43bは、信号Iqの値がゼロに近づくように、PI制御を実行する。このように、力率1が保たれるように無効電流成分の振幅はゼロに近づくよう調整され、交流入力電流が力率1の正弦波に近づくように制御される。
【0066】
座標変換部44は、主回路3側から入力された各相の交流入力電圧の波形に座標変換を施し、交流入力電圧のd軸成分の信号Vd、およびq軸成分の信号Vqを生成する。信号Vdは補償処理部45aへ、信号Vqは補償処理部45bへ、それぞれ出力される。
【0067】
補償信号生成部(45a、45b)は、主回路3にて発生する逆起電圧を補償するための、補償信号を生成する。より具体的には、補償処理部45aは、信号Vdの値に所定係数K1を乗じた値の信号を補償信号として生成し、加算器46aに出力する。また補償信号生成部45bは、信号Vqの値に所定係数K2を乗じた値の信号を補償信号として生成し、加算器46bに出力する。
【0068】
加算器46aは、PI制御器43aの出力値に、補償処理部45aが出力する補償信号の値を加算する処理を行う。当該加算によって得られる値の信号は、調整後の有効電流成分の振幅に応じた信号(コンバータの振幅md)として、逆座標変換部47および変調度制御部50に出力される。
【0069】
加算器46bは、PI制御器43bの出力値に、補償処理部45bが出力する補償信号の値を加算する処理を行う。当該加算によって得られる値の信号は、調整後の無効電流成分の振幅に応じた信号として、逆座標変換部47に出力される。これらの加算処理により、逆起電圧を補償するためのフィードフォワード(FF)制御が実現される。
【0070】
逆座標変換部47は、加算器46aからの入力信号(d軸の値)および加算器46bからの入力信号(q軸の値)に、逆座標変換(座標変換部41が行う座標変換の逆の処理)を施す。当該逆座標変換により、ブリッジ型変換回路11の操作量を定める操作信号として、U相に対応した操作信号mu、V相に対応した操作信号mv、およびW相に対応した操作信号mwが生成される。これらの操作信号は、PWMパルス生成部49に出力される。
【0071】
三角波生成部48は、周期や振幅が予め定められている基準三角波TRIの信号を生成し、PWMパルス生成部49に出力する。PWMパルス生成部49は、U相、V相、およびW相の各々について、操作信号と基準三角波TRIとの値を比較し、当該比較の結果に応じた信号(HレベルとLレベルが交互に現れるパルス信号)を生成する。
【0072】
すなわちPWMパルス生成部49は、各相の操作信号を信号波とし、基準三角波TRIを搬送波(キャリア)とする、キャリア変調方式のパルス幅変調(PWM)を実行する。なお当該パルス幅変調における変調度MDは、操作信号(信号波)の振幅と基準三角波TRI(搬送波)の振幅との比で表される。PWMパルス生成部49によって生成された各パルス信号は、ゲート駆動回路51に出力される。
【0073】
また変調度制御部50は、変調度MDを目標値に近づけるためのフィードバック制御を行うものであり、変調度検出部50a、目標変調度信号生成部50b、減算器50c、およびPI制御器50dを備えている。
【0074】
変調度検出部29aは、加算器46aから入力される信号の値について、基準三角波TRIの振幅(予め定められている値)で除することによるスケール換算を行う。なお、加算器46aから入力される信号の値は操作信号の振幅を表しているため、当該スケール換算によって、現時点での変調度MDが検出されることになる。また、基準三角波TRIの振幅が1に設定されている場合、加算器46aから入力される信号の値を変調度とみなすことが出来る。検出された現時点での変調度MDを表す信号は、減算器50cに出力される。
【0075】
目標変調度信号生成部50bは、変調度MDの目標値を表す信号を生成し、減算器50cに出力する。なお第1実施形態の場合と同様に、変調度MDは1であることが理想であるため、通常、この目標値は1に設定されることが好ましい。但し、当該目標値は1に限られるものではなく、例えば、変調度MVが1を越えることをより確実に防ぐため、目標値を1よりやや小さい値としても構わない。また当該目標値は、常時固定としておいても良く、所定の手段によって更新可能としておいても良い。
【0076】
減算器50cは、変調度検出部50aおよび目標変調度信号生成部50bから入力される信号に基づき、目標変調度から現時点での変調度MDを減算する処理を行う。当該減算によって得られる値の信号は、PI制御器50dに出力される。
【0077】
PI制御器50dは、減算器50cから出力される信号の値がゼロに近づくように先述した変調度補正値CMVを算出し、この変調度補正値CMVを表す信号を減算器42aに出力する。すなわちPI制御器50dは、目標変調度と現時点での変調度MDとの偏差が小さくなるように、PI制御を実行する。
【0078】
先述した通り、変調度補正値CMVから信号Idの値が減算された値の信号は、PI減算器43aに出力される。これにより変調度MDは、目標値に近づくようにフィードバック制御されることとなる。
【0079】
ゲート駆動回路30は、PWMコンパレータ28から入力されるパルス信号に応じて駆動パルス信号(G1〜G4)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q4)に出力する。これにより、各スイッチング素子(Q1〜Q4)のPWM制御が実現されることになる。
【0080】
[電力変換回路の動作について]
電力変換回路9aは上述した通りの構成となっており、ブリッジ型変換回路31における各スイッチング素子(Q1〜Q6)をスイッチングさせることによって、三相交流電源E2から入力される交流入力電圧を直流電圧に変換し、直流出力電圧Voとして出力端子T1から出力する。
【0081】
また上述した通り、制御部4は、交流入力電流が力率1の正弦波に近づくように、かつ、変調度MDが目標値の1に近づくように、各スイッチング素子(Q1〜Q6)の操作量を定める操作信号(mu、mv、mw)を生成する。そして制御部4は、各操作信号(mu、mv、mw)を信号波とし、基準三角波TRIを搬送波(キャリア)とするキャリア変調方式のパルス幅変調を行い、これらの操作信号に応じた駆動パルス信号(G1〜G6)を生成し、各スイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動させる。
【0082】
電力変換装置9aによれば、第1実施形態に係る電力変換装置9の場合と同様に、交流入力電圧や直流の出力電流が変動しても、常時1付近の値となるように変調度MDが動的に制御される。その結果、直流出力電圧Voは、最適な値となるように動的に制御される。
【0083】
なお電力変換装置9aは、上述したように変調度MDを制御するが、出力電圧については、直接制御するようになってはいない。そこで、電力変換装置9aを用いて負荷への電力供給システムを形成する際には、電力変換装置9aと負荷との間(すなわち主回路3の後段側)に、電圧調整用の機器(直流出力電圧Voを負荷に適合するように調整する機器)が設けられるようにしても良い。これにより、負荷に適正な入力電圧を供給することが可能でありながら、電力変換装置9aの特長を活かした電力供給システムが実現される。
【0084】
3.第3実施形態
先述の通り、第1実施形態として、単相交流電源に対応した電力変換装置9(高力率コンバータ)についての説明を行った。電力変換装置9の構成形態については、各種用途の機器に利用することが可能である。このような構成形態が利用された機器として、二次電池用の双方向パワコン[パワーコンディショナ](電力変換システムの一形態)を例に挙げ、第3実施形態として以下に説明する。
【0085】
図7は、当該双方向パワコン10の構成図である。本図に示すように双方向パワコン10は、主回路1aおよび制御部2を有している。
【0086】
主回路1aは、ブリッジ型変換回路11、電流電圧検出回路12、リアクトル(L1、L2、L4)、コンデンサ(C1、C2)、および双方向チョッパ回路5などを有している。なお、ブリッジ型変換回路11、および電流電圧検出回路12の構成については、第1実施形態のものと同等であるため説明を省略する。また制御部2は、第1実施形態と同等の機能に加え、交流−直流変換を行う方向とは逆方向へ電圧の直流−交流変換が行われるように、駆動パルス信号(G1〜G4)を出力する機能をも有している。
【0087】
主回路1aは、単相の交流電力を供給する配電系統E3および二次電池BATが接続されており、双方向への電力伝送(二次電池BATの充電と放電)が可能となっている。主回路1aには、配電系統E3からは交流電力(交流入力電流Iiおよび交流入力電圧Vs)が入力され、二次電池BATからは直流電力が入力される。
【0088】
双方向チョッパ回路5は、スイッチング素子(Q7、Q8)、リアクトルL4、およびコンデンサC3を有している。スイッチング素子Q7のエミッタはスイッチング素子Q8のコレクタとリアクトルL4の一端に接続されている。スイッチング素子Q7のコレクタは、ブリッジ型変換回路11の上側の出力端、およびコンデンサC1の一端に接続されている。スイッチング素子Q8のエミッタは、ブリッジ型変換回路11の下側の出力端、コンデンサC1の他端、および二次電池BATの負極側に接続されている。またリアクトルL4の他端は、二次電池BATの正極側に接続されている。またコンデンサC3の両端は、それぞれ二次電池BATの正極側と負極側に接続されている。
【0089】
双方向チョッパ回路5は、不図示の制御装置からパルス信号が入力され、これに応じて各スイッチング素子(Q7、Q8)はスイッチングを行うようになっている。双方向チョッパ回路5は、ブリッジ型変換回路11側から二次電池BAT側への方向、および二次電池BAT側からブリッジ型変換回路11側への方向の何れにも(つまり双方向に)、直流電圧の変換(直流−直流変換)を行う機能を有している。なお双方向チョッパ回路5による電圧の変換は、昇圧および降圧の何れとしておいても構わない。
【0090】
またスイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、インダクタL1を介して、配電系統E3の正側に接続され、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点は、配電系統E3の負側に接続されている。またコンデンサC2の両端は、それぞれ配電系統E3の正極側と負極側に接続されている。
【0091】
双方向パワコン10は二次電池BATの充電を行う際、配電系統E3から入力された交流電圧(交流入力電圧Vs)に対して、ブリッジ型変換回路11による交流−直流変換および双方向チョッパ回路5による直流−直流変換が順に行われるように、各スイッチング素子(Q1〜Q4、O7、Q8)を制御する。そして双方向パワコン10は、これらの変換動作により得られた直流電圧を、二次電池BATに出力する。
【0092】
また双方向パワコン10は二次電池BATの放電を行う際、二次電池BATから入力された直流電圧に対して、双方向チョッパ回路5による直流−直流変換およびブリッジ型変換回路11による直流−交流変換が順に行われるように、各スイッチング素子(Q1〜Q4、O7、Q8)を制御する。そして双方向パワコン10は、これらの変換動作により得られた交流電圧を、配電系統E3に出力する。
【0093】
本実施形態では、主回路1aはブリッジ型変換回路11と双方向チョッパ回路5の二段構成となっているが、二次電池BATの充電時におけるブリッジ型変換回路11の制御手順については、第1実施形態の場合と同様である。そのため本実施形態の双方向パワコン10においても、第1実施形態の場合と同様の原理により、制御部2が行うパルス幅変調の変調度MVは、常時1付近の値となるように動的に制御される。
【0094】
なお本実施形態の双方向パワコン10は、第1実施形態のものとほぼ同等の構成形態の電力変換装置(但し、交流−直流変換を行う方向とは逆の方向に、電圧の直流−交流変換をも行うようにしたもの)と、双方向チョッパ回路5とを備え、電力変換装置の側には配電系統E3が、双方向チョッパ回路5の側には二次電池BATが、それぞれ接続されるようにしたものと見ることが出来る。
【0095】
このように見れば、双方向パワコン10は、電力変換装置の側に入力される交流電圧に、交流−直流変換および直流−直流変換を順に行って得られる直流電圧を、双方向チョッパ回路5の側から出力する動作、および、双方向チョッパ回路5の側に入力される直流電圧に、直流−直流変換および直流−交流変換を順に行って得られる交流電圧を、電力変換装置の側から出力する動作、を行うものと言える。
【0096】
4.第4実施形態
先述の通り、第2実施形態として、三相交流電源に対応した電力変換装置9a(高力率コンバータ)についての説明を行った。電力変換装置9aの構成形態については、各種用途の機器に利用することが可能である。このような構成形態が利用された機器として、二次電池用の双方向パワコン(電力変換システムの一形態)を例に挙げ、第4実施形態として以下に説明する。
【0097】
図8は、当該双方向パワコン10aの構成図である。本図に示すように双方向パワコン10aは、主回路2aおよび制御部4を有している。
【0098】
主回路2aは、ブリッジ型変換回路31、電流電圧検出回路32、リアクトル(L1〜L4)、コンデンサC1、および双方向チョッパ回路5などを有している。なお、ブリッジ型変換回路31、および電流電圧検出回路32の構成については、第1実施形態のものと同等であり、双方向チョッパ回路5の構成については第3実施形態のものと同等であるため、それぞれの説明を省略する。また制御部4は、第2実施形態と同等の機能に加え、交流−直流変換を行う方向とは逆方向へ電圧の直流−交流変換が行われるように、駆動パルス信号(G1〜G6)を出力する機能をも有している。
【0099】
主回路2aは、三相の交流電力を供給する配電系統E4および二次電池BATが接続されており、双方向への電力伝送(二次電池BATの充電と放電)が可能となっている。主回路2aには、配電系統E4からは交流電力(各相の交流入力電流(Iu、Iv、Iw)および交流入力電圧(Vu、Vv、Vw))が入力され、二次電池BATからは直流電力が入力される。
【0100】
また、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点は、インダクタL1を介して、配電系統E4のU相電源ラインに接続され、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、インダクタL2を介して、配電系統E4のV相電源ラインに接続され、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点は、インダクタL3を介して、配電系統E4のW相電源ラインに接続されている。
【0101】
双方向パワコン10aは二次電池BATの充電を行う際、配電系統E4から入力された交流電圧に対して、ブリッジ型変換回路31による交流−直流変換および双方向チョッパ回路5による直流−直流変換が順に行われるように、各スイッチング素子(Q1〜Q8)を制御する。そして双方向パワコン10aは、これらの変換動作により得られた直流電圧を、二次電池BATに出力する。
【0102】
また双方向パワコン10aは二次電池BATの放電を行う際、二次電池BATから入力された直流電圧に対して、双方向チョッパ回路5による直流−直流変換およびブリッジ型変換回路31による直流−交流変換が順に行われるように、各スイッチング素子(Q1〜Q8)を制御する。そして双方向パワコン10aは、これらの変換動作により得られた交流電圧を、配電系統E4に出力する。
【0103】
本実施形態では、主回路2aはブリッジ型変換回路31と双方向チョッパ回路5の二段構成となっているが、二次電池BATの充電時におけるブリッジ型変換回路31の制御手順については、第2実施形態の場合と同様である。そのため本実施形態の双方向パワコン10aにおいても、第2実施形態の場合と同様の原理により、制御部4が行うパルス幅変調の変調度MDは、常時1付近の値となるように動的に制御される。
【0104】
なお本実施形態の双方向パワコン10aは、第2実施形態のものとほぼ同等の構成形態の電力変換装置(但し、交流−直流変換を行う方向とは逆の方向に、電圧の直流−交流変換をも行うようにしたもの)と、双方向チョッパ回路5とを備え、電力変換装置の側には配電系統E4が、双方向チョッパ回路5の側には二次電池BATが、それぞれ接続されるようにしたものと見ることが出来る。
【0105】
このように見れば、双方向パワコン10aは、電力変換装置の側に入力される交流電圧に、交流−直流変換および直流−直流変換を順に行って得られる直流電圧を、双方向チョッパ回路5の側から出力する動作、および、双方向チョッパ回路5の側に入力される直流電圧に、直流−直流変換および直流−交流変換を順に行って得られる交流電圧を、電力変換装置の側から出力する動作、を行うものと言える。
【0106】
5.第5実施形態
次に、第1実施形態に係る電力変換装置9を力率改善(power factor correction:PFC)のための部品として適用した、モータインバータについて説明する。図9は、当該モータインバータ6の構成図である。本図に示すようにモータインバータ6は、電力変換装置9および直流−交流変換回路7を有している。モータインバータ6は、単相の交流電力を供給する単相交流電源E1が入力側に、交流電力によって駆動するモータ8が出力側に、それぞれ接続された形態で用いられる。
【0107】
モータインバータ6は、単相交流電源E1から入力される交流電圧を、電力変換装置9によって直流電圧に変換した後、更に直流−交流変換装置7によって交流電圧に変換した上でモータ8に出力し、モータ8を駆動させる。ここで電力変換装置9は、高力率コンバータとしての機能を有しているため、力率を改善させる役割を果すことになる。
【0108】
このようにモータインバータ6は、電力変換装置9と、交流−直流変換によって得られた直流電圧が入力され、この直流電圧に直流−交流変換を行う直流−交流変換回路7と、を備えており、この直流−交流変換によって得られた交流電圧を、モータ駆動用の電圧として出力するものとなっている。なお力率改善用の部品として、電力変換装置9の代わりに、第2実施形態に係る電力変換装置9aを適用することも可能である。この場合モータインバータ6は、三相の交流電源に対応するものとなる。
【0109】
6.その他
以上までに説明した通り、本実施形態に係る電力変換装置は、駆動パルス信号に応じてスイッチングを行うスイッチング素子を有し、該スイッチングにより、入力される交流電圧に交流−直流変換を行う主回路と、前記スイッチング素子の操作量を定める操作信号を生成する機能部(操作信号生成部)と、前記操作信号を信号波としたパルス幅変調を行い、該操作信号に応じた前記駆動パルス信号を生成する機能部(パルス信号生成部)と、を備えている。
【0110】
そして操作信号生成部は、このパルス幅変調における変調度を検出し、この変調度の検出値に基づいて前記操作信号を生成するようになっている。そのため各実施形態に係る電力変換装置によれば、直流出力電圧の検出や推定を実行するための機構(直流電圧検出器など)や動作を必要とせず、入力される電流波形を歪ませずに、かつ電力変換の効率が十分高くなるように、直流出力電圧の目標値を動的に設定することが容易となっている。また、検出回路の誤差や主回路の素子のバラツキに依存せず、かつ、交流入力電圧の変動や電力変換装置の負荷変動にも動的に追従可能な出力電圧のより適切な制御が可能となり、従来のものより高調波入力電流が少なく、より効率的で、小型化や低コスト化が達成された電力変換装置が実現できる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。本発明はその主旨を逸脱しない限り、種々の変形を加えた形態で実施され得る。
【0112】
例えば先に説明した各実施形態では、操作信号生成部は、変調度の検出値をフィードバックさせ、変調度が予め設定されている目標値に近づくように、操作信号を生成するようになっている。この点、操作信号の生成に当該検出値を反映させるための形態や、当該検出値のフィードバックの具体的形態などについては、本発明の主旨を逸脱しない限り、他の形態が採用されても構わない。また、変調度が予め設定されている目標値に近づくようにする代わりに、変調度が予め設定されている許容範囲に収まるように、操作信号を生成する形態が採用されても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、交流電圧を直流電圧に変換する電力変換装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1、1a、3、3a 主回路
2、4 制御部
5 双方向チョッパ回路(直流−直流変換回路)
6 モータインバータ
7 直流−交流変換回路
8 モータ
9、9a、 電力変換装置
10、10a 双方向パワコン(電力変換システム)
11、31 ブリッジ型変換回路
12、32 電流電圧検出回路
21 基準正弦波生成部
22 乗算器
23 減算器
24 PI制御器
25 補償信号生成部
26 加算器
27 三角波生成部
28 PWMコンパレータ
29 変調度制御部
29a 変調度検出部
29b 目標変調度信号生成部
29c 減算器
29d PI制御器
30 ゲート駆動回路
41 座標変換部
42a、42b 減算器
43a、43b PI制御器
44 座標変換部
45a、45b 補償処理部
46a、46b 加算器
47 逆座標変換部
48 三角波生成部
49 PWMパルス生成部
50 変調度制御部
50a 変調度検出部
50b 目標変調度信号生成部
50c 減算器
50d PI制御器
51 ゲート駆動回路
BAT 二次電池
C1〜C3 コンデンサ
E 交流電源
E1 単相交流電源
E2 三相交流電源
E3 配電系統(単相)
E4 配電系統(三相)
L1〜L4 リアクトル
Q1〜Q8 スイッチング素子
T1 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動パルス信号に応じてスイッチングを行うスイッチング素子を有し、該スイッチングにより、入力される交流電圧に交流−直流変換を行う変換回路と、
前記スイッチング素子の操作量を定める操作信号を生成する操作信号生成部と、
前記操作信号を信号波としたパルス幅変調を行い、該操作信号に応じた前記駆動パルス信号を生成するパルス信号生成部と、を備え、
前記操作信号生成部は、
前記パルス幅変調における変調度を検出し、該変調度の検出値に基づいて前記操作信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記変換回路は、
複数の前記スイッチング素子がブリッジ接続されて形成されたブリッジ型変換回路を有し、
前記操作信号生成部は、
入力される交流電流が力率1の正弦波に近づくように、前記操作信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記操作信号生成部は、
前記変調度の検出値をフィードバックさせ、
前記変調度が予め設定されている目標値に近づくように、または、前記変調度が予め設定されている許容範囲に収まるように、前記操作信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記操作信号生成部は、
前記変調度が1に近づくように、前記操作信号を生成することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変換回路は、
前記交流−直流変換を行う方向とは逆の方向に、電圧の直流−交流変換を行うことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置と、
双方向に昇圧または降圧の直流−直流変換を行う直流−直流変換回路と、を備え、
前記電力変換装置の側に入力される交流電圧に、前記交流−直流変換および前記直流−直流変換を順に行って得られる直流電圧を、前記直流−直流変換回路の側から出力する動作、および、
前記直流−直流変換回路の側に入力される直流電圧に、前記直流−直流変換および前記直流−交流変換を順に行って得られる交流電圧を、前記電力変換装置の側から出力する動作、
を行うことを特徴とする電力変換システム。
【請求項7】
前記電力変換装置の側には配電系統が接続され、前記直流−直流変換回路の側には二次電池が接続されることを特徴とする請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項8】
請求項2から請求項4の何れかに記載の電力変換装置と、
前記交流−直流変換によって得られた直流電圧が入力され、該直流電圧に直流−交流変換を行う直流−交流変換回路と、を備え、
前記直流−交流変換によって得られた交流電圧を、モータ駆動用の電圧として出力することを特徴とするモータインバータ。

【図2】
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【図6】
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【図9】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178944(P2012−178944A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41391(P2011−41391)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】