説明

電力用半導体装置

【課題】 並列に接続された複数のIPMを備えた電力用半導体装置において、一方のIPMの保護回路が動作してその動作を遮断したときに、他方のIPMの動作を遮断する。
【解決手段】 IGBTTR1,TR2を駆動制御するためのIPM3−1,3−2が並列に接続されてなる電力用半導体装置において、エラー信号通信回路16−1は、IPM3−1において発生される保護アラーム信号FO等に基づいて、通信エラー信号をIPM3−2のエラー信号通信回路16−2に送信する。エラー信号通信回路16−2は、エラー信号通信回路16−1から送信された通信エラー信号を受信し、受信された通信エラー信号に基づいて当該IPM3−2の駆動制御動作を停止させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電力半導体素子を駆動制御するための、例えばインテリジェント・パワー・モジュール(以下、IPMという。)などの複数の電力制御用半導体モジュールが並列に接続されてなる電力用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電力半導体素子を駆動制御するための、例えばIPMなどの複数の電力制御用半導体モジュールが並列に接続されてなる電力用半導体装置に関して以下の従来技術が開示されている。
【0003】
特許文献1においては、パワー素子にゲート駆動回路等を設けてインテリジェント化したIPMの並列接続運転時に、パワー素子のスイッチング時のアンバランスによる誤った過電流検出や熱集中の防止を図るために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献1の図1においては、例えば2つのIPM回路2A,2Bを並列接続して運転する場合に、動作指令信号L1を遅延させる遅延回路D1A,D2Aの出力信号をIPM回路2Bに、遅延回路D1B,D2Bの出力信号をIPM回路2Aへ伝達することにより、IPM回路2A,2Bの各パワー素子3A,3Bにスイッチングのアンバランスが生じないようにしたことを特徴としている。
【0004】
また、特許文献2においては、IPMの並列接続を行う際に、IPMを構成するスイッチング素子のスイッチング特性によるスイッチング素子の選別基準を緩和し、かつ並列接続された各IPMに均等に電流を流すために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献2の図1においては、各スイッチング素子の主電流入力側の第1の主電極同士及び主電流出力側の第2の主電極同士を接続するとともに、上記各第2の主電極に同一の抵抗値の抵抗を接続し、当該抵抗から補助端子を介して第1の配線導体により、上記各第2の主電極を接続し、かつ上記各スイッチング素子の制御電極を所定の周波数で高いインピーダンスとなるインピーダンス素子を介して第2の配線導体により接続することを特徴としている。
【0005】
さらに、特許文献3においては、並列接続される電力用半導体素子の電流分担の不均等を防止し、所望容量の半導体電力変換装置を小形で低コストにて実現するために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献3の図1においては、1つのアーム内に複数個の電力用半導体素子を並列接続してなる半導体電力変換装置において、IGBTQ1,Q2の陽極を互いに接続し、かつ、制御極を互いに接続するとともに、各IGBTQ1,Q2の陰極をそれぞれインダクタンス成分L1,L2を介して互いに接続し、これらのインダクタンス成分L1,L2の相互接続点と前記制御極の相互接続点との間にゲート駆動回路GDUを接続し、その他、各制御極とゲート駆動回路GDUとの間に抵抗を接続したり、各制御極と陰極との間に過電圧保護回路を接続する等の手段を採ることを特徴としている。
【0006】
またさらに、特許文献4においては、並列動作を行うスイッチ素子のターンオン特性に差がある場合でも安定したスイッチングを行わせるために以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献4の図1においては、並列接続されたスイッチ素子2,3のいずれか一方のスイッチ素子が速くターンオンすると、該スイッチ素子のエミッタ主回路側の配線の浮遊インダクタンスによって生じる誘起電圧によりスイッチ素子2、3のエミッタ補助端子相互間を接続する回路に電流ΔiEが流れ、この回路の浮遊インダクタンスに該スイッチ素子のゲート電圧を低下させる電圧が誘起するが、変成器12のインダクタンスにより上記電流ΔiEが小さくなりゲート電圧を低下させる電圧が抑制され、ターンオン途中においてターンオフする現象が防止される。
【0007】
また、特許文献5においては、パワー素子にゲート駆動回路等を設けてインテリジェント化したIPMの並列接続運転時に、パワー素子のスイッチング時のアンバランスによる誤った過電流検出や熱集中の防止を図るために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献5の図1においては、例えば2つのIPM回路2A,2Bを並列接続して運転する場合に、動作指令信号L1を遅延させる遅延回路D1A,D2Aの出力信号をIPM回路2Bに、遅延回路D1B,D2Bの出力信号をIPM回路2Aへ伝達することにより、回路2A,2Bの各パワー素子3A,3Bにスイッチングアンバランスが生じないようにしたことを特徴としている。
【0008】
さらに、特許文献6の図1においては、パワー素子3にゲート駆動回路等を設けてインテリジェント化したIPMを並列接続して用いる場合に、パワー素子のスイッチング時のアンバランスによる誤った過電流検出や熱集中の防止を図るために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献6の図1においては、IPMを並列接続して用いる場合に、パワー素子3のゲート間を短絡線8で短絡することにより、回路A,Bの各パワー素子3にスイッチングアンバランスが生じないようにしたことを特徴としている。
【0009】
またさらに、特許文献7においては、並列接続されたスイッチング素子の電流不均衡を高精度で解消するために、以下の解決手段が開示されている。すなわち、特許文献7の図12においては、以下のステップが実行される。
(1)並列接続されたn(≧2)個のIGBTの主電流の検出値である電流センス電圧VCS1〜VCSnが、デジタル形式へ変換された後に、演算処理に供される。
(2)電流センス電圧VCS1〜VCSnが、定数G〜G,及びオフセット電圧VOFFSET1〜VOFFSETnを用いて、コレクタ電流I〜Iへと換算された(ステップ103)後に、コレクタ電流I〜Iの平均値IAVGからの偏差ΔI〜ΔIが算出される(ステップ104,105)。
(3)偏差ΔI〜ΔIに、係数Kijを乗じて得られる変化量ΔVD1〜ΔVDnだけ、駆動制御電圧VD1〜VDnが更新される(ステップ106,107)。
(4)駆動制御電圧VD1〜VDnは、アナログ形式へ変換された後、ゲート電圧VGEとしてn個のIGBTへ供給される。定数G〜G,オフセット電圧VOFFSET1〜VOFFSETn,及び係数Kijは、n個のスイッチング素子の各々ごとに、個別に作成される。
【0010】
【特許文献1】特開2002−369497号公報。
【特許文献2】国際出願公開WO01/089090号公報。
【特許文献3】特開平10−042548号公報。
【特許文献4】特開平10−014215号公報。
【特許文献5】特開2002−369496号公報。
【特許文献6】特開平08−213890号公報。
【特許文献7】特開2000−092820号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術では、主として、並列に接続された各IPM又は各スイッチング素子に流れる電流の不均衡を解消するための具体的な防止手段が開示されている。しかしながら、一般的に、各IPM又は各スイッチング素子にはそれぞれ保護回路が接続されており、一方のIPM又はスイッチング素子の保護回路が動作して当該IPM又はスイッチング素子の動作を遮断することができるが、他方のIPM又はスイッチング素子は動作し続ける。これにより、他方のIPM又はスイッチング素子が破壊し、又は劣化して寿命の短縮を招くという問題点があった。
【0012】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、並列に接続された複数のIPM又はスイッチング素子を備えた電力用半導体装置において、一方のIPM又はスイッチング素子の保護回路が動作して当該IPM又はスイッチング素子の動作を遮断したときに、他方のIPM又はスイッチング素子の動作を遮断することができる電力用半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電力用半導体装置は、電力半導体素子を駆動制御するための複数の電力制御用半導体モジュールが並列に接続されてなる電力用半導体装置において、
一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される所定の起動信号に基づいて、所定の通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信する送信手段と、
他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を制御する受信手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
従って、本発明に係る電力用半導体装置によれば、例えば、上記起動信号は、上記電力半導体素子を保護するための保護アラーム信号であり、上記送信手段は、一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される保護アラーム信号に基づいて、上記通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信し、上記受信手段は、他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を停止させる。それ故、両方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を確実に停止させることができる。これにより、当該電力用半導体装置において安全な動作を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0016】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の構成を示すブロック図である。図1の電力用半導体装置においては、中央演算処理装置(以下、CPUという。)1は、駆動制御信号CSをインターフェース回路2−1,2−2を介して2個のIPM3−1,3−2に伝達することにより、IPM3−1,3−2の各IGBTTR1,TR2を駆動制御する。ここで、IPM3−1のIGBTTR1のコレクタと第1のエミッタとの間に還流ダイオードDi1が接続され、IGBTTR1のコレクタは電源電圧Vccに接続される一方、IGBTTR1の第1のエミッタは電流バランス化用インダクタL1を介して負荷装置4の第1の端子に接続される。また、IPM3−2のIGBTTR2のコレクタと第1のエミッタとの間に還流ダイオードDi2が接続され、IGBTTR2のコレクタは電源電圧Vccに接続される一方、IGBTTR2の第1のエミッタは電流バランス化用インダクタL1を介して負荷装置4の第1の端子に接続される。さらに、負荷装置4の第2の端子は接地されている。以上の接続により、各IPM3−1,3−2の各IGBTTR1,TR2は互いに並列に接続されている。
【0017】
なお、IPM3−1,3−2の各IGBTTR1,TR2の第2のエミッタは、各IGBTTR1,TR2に流れる電流を検出するための電流検出用抵抗Rsを介して接地され、電流検出用抵抗Rsの非接地側端子はセンサ及びセンサ回路23に接続されている。また、各IPM3−1,3−2の電流バランス化用インダクタL1には、インダクタL1に対して電磁的に疎結合で結合するように設けられた電流検出用インダクタL2が設けられ、その一端はセンサ及びセンサ回路23に接続される一方、その他端は接地されている。本実施の形態においては、各IPM3−1,3−2の電流バランス化用インダクタL1,L1(例えば、数μH以上に十分に大きくかつ実質的に同一値のインダクタンスを有する。)をそれぞれIPM3−1,3−2に内蔵しており、かつ各電流バランス化用インダクタL1,L1の各一端を接続して負荷装置4に接続することにより、公知の電気回路技術を用いて、各IGBTTR1,TR2に流れる各コレクタ電流を均一化することができる。
【0018】
図1において、インターフェース回路2−1は、CPU1からの駆動制御信号CSに対して、所定の信号変換や電気的な絶縁などのインターフェース処理を行った後、IPM3−1のアンドゲート12及び電源回路11に出力する。また、インターフェース回路2−1は、IPM3−1からのエラー信号ER、2個のエラーモード信号EM及び4個のアナログ検出信号AS(これらの信号については詳細後述する。)を受信して、これらの信号ER,EM,ASに対して、所定の信号変換や電気的な絶縁などのインターフェース処理を行った後、CPU1に出力する。インターフェース回路2−2は、CPU1からの駆動制御信号CSに対して、所定の信号変換や電気的な絶縁などのインターフェース処理を行った後、IPM3−2のアンドゲート12及び電源回路11に出力する。また、インターフェース回路2−2は、IPM3−2からのエラー信号ER、2個のエラーモード信号EM及び4個のアナログ検出信号ASを受信して、これらの信号ER,EM,ASに対して、所定の信号変換や電気的な絶縁などのインターフェース処理を行った後、CPU1に出力する。
【0019】
さらに、図1に示すように、IPM3−1の接地端子は、インターフェース回路2−1の接地端子を介してCPU1の接地端子に接続され、また、IPM3−2の接地端子は、インターフェース回路2−2の接地端子を介してCPU1の接地端子に接続される。すなわち、IPM3−1,3−2の各接地端子間を直接に接続していないので、接地電位のループ回路を形成していない。これにより、IPM3−1,3−2などの回路で雑音を検出することを防止している。
【0020】
次いで、IPM3−1,3−2(総称して、符号3を付す。また、インターフェース回路2−1,2−2についても総称して符号2を付す。)の構成及び動作について以下に説明するが、これら2個のIPM3−1,3−2は互いに同様に構成されるために、区別して説明する必要があるエラー信号通信回路16−1,16−2、IGBTTR1,TR2及び還流ダイオードDi1,Di2を除いた各構成要素の回路に対して同一の符号を付し、主として1つのIPM3の構成及び動作について説明する。図1において、各IPM2は、図1の左側に図示のコントローラ回路10と、図1の右側に図示の電力駆動回路20とから構成され、各回路10,20の間は、電気的に絶縁するために、フォトカプラ31,32を介して接続されている。
【0021】
電源回路11はインターフェース回路2からの駆動制御信号CSから電気エネルギーを抽出して、IPM3内の各回路に電源電圧を供給する。また、インターフェース回路2からの駆動制御信号CSはアンドゲート12、フォトカプラ31及びアンドゲート21を介して駆動回路22に出力する。ここで、駆動回路22は、ハイレベルの駆動制御信号に応答してIGBTTR1又はTR2がオンするように駆動する。エラー信号発生回路15からのエラー信号EDはアンドゲート12の反転入力端子に入力され、アンドゲート12はハイレベルのエラー信号EDを受信するときに、駆動制御信号CSを遮断する。また、検出保護回路24からの保護アラーム信号FO(Fault Out)はアンドゲート21の反転入力端子に入力され、アンドゲート21はハイレベルの保護アラーム信号FOを受信するときに、駆動制御信号CSを遮断する。
【0022】
IPM3の電力駆動回路20において、センサ及びセンサ回路23は、好ましくは、当該センサ及びセンサ回路23に接続される以下のセンサ及び当該回路23内に含まれる以下のセンサを含み、以下のように検出信号を検出保護回路13,24に出力し、これに応答して、検出保護回路13,24は以下のように所定のしきい値と比較して保護アラーム信号を発生する。
【0023】
(1)電流検出用インダクタL2:電流検出用インダクタL2はIGBTTR1又はTR2のコレクタ電流の電流値を検出して、検出した電流値をセンサ及びセンサ回路23に出力する。これに応答して、センサ及びセンサ回路23は当該検出した電流値を示す検出信号を検出保護回路13に出力する。検出保護回路13は、過電流によるIGBTTR1又はTR2の熱破壊を防止するために、検出した電流値を所定の過電流保護(OC)トリップレベルと比較して、当該トリップレベル以上となったとき、OC用保護アラーム信号FE1を発生する。また、検出保護回路13は、短絡電流によるIGBTTR1又はTR2の破壊を防止するために、検出した電流値を所定の短絡保護(SC)トリップレベル(当該トリップレベルは、上記過電流保護(OC)トリップレベルよりも大きなレベルである。)と比較して、当該トリップレベル以上となったとき、SC用保護アラーム信号FE2を発生する。
【0024】
(2)電流検出用抵抗Rs:電流検出用抵抗RsはIGBTTR1又はTR2の第2のエミッタに流れるエミッタ電流からコレクタ電流の電流値を検出して、検出した電流値をセンサ及びセンサ回路23に出力する。これに応答して、センサ及びセンサ回路23は当該検出した電流値を示す検出信号を検出保護回路24に出力する。検出保護回路24は、過電流によるIGBTTR1又はTR2の熱破壊を防止するために、検出した電流値を所定の過電流保護(OC)トリップレベルと比較して、当該トリップレベル以上となったとき、OC用保護アラーム信号FE1を発生する。また、検出保護回路24は、短絡電流によるIGBTTR1又はTR2の破壊を防止するために、検出した電流値を所定の短絡保護(SC)トリップレベルと比較して、当該トリップレベル以上となったとき、SC用保護アラーム信号FE2を発生する。
【0025】
(3)温度検出用サーミスタ:温度検出用サーミスタ(図示せず。)はIGBTチップを接着している同一絶縁パワー基板上に設けられ、IGBTTR1又はTR2の温度を検出して、検出した温度値をセンサ及びセンサ回路23に出力する。これに応答して、センサ及びセンサ回路23は当該検出した温度値を示す検出信号を検出保護回路13及び検出保護回路24に出力する。各検出保護回路13,24は、過熱によるIGBTTR1又はTR2の熱破壊を防止するために、検出した温度値を所定の過熱保護(OT)トリップレベルと比較して、当該トリップレベル以上となったとき、OT用保護アラーム信号FE3を発生する。
【0026】
(4)制御電源電圧検出センサ:制御電源電圧検出センサ(図示せず。)は、IPM3内の内部回路でIPMの制御電源電圧を検出し、検出した電圧値をセンサ及びセンサ回路23に出力する。これに応答して、センサ及びセンサ回路23は当該検出した電圧値を示す検出信号を検出保護回路13及び検出保護回路24に出力する。各検出保護回路13,24は、制御電源電圧の低下に対する素子破壊の保護のために、検出したIPMの制御電源電圧を所定の制御電源電圧低下保護回路(UV)トリップレベルと比較して、当該トリップレベル以下となったとき、UV用保護アラーム信号FE4を発生する。
【0027】
検出保護回路24は、上記発生した4つの保護アラーム信号FE1乃至FE4に対して論理和演算を実行し、その演算値を示す保護アラーム信号FOを発生し、当該保護アラーム信号FOをアンドゲート21の反転入力端子に出力するとともに、フォトカプラ32を介して検出保護回路13に出力する。検出保護回路13は、入力される4個の検出値をそれぞれ示す4個のアナログ検出信号を発生してインターフェース回路2を介してCPU1に出力する。これにより、CPU1は、4個のアナログ検出信号に基づいて、検出された4個の検出値を確認できる。また、検出保護回路13は、上記発生した4つの保護アラーム信号FE1乃至FE4及び検出保護回路24からの保護アラーム信号FOをエラー信号発生回路15に出力する。
【0028】
図2は図1のエラー信号発生回路15の詳細構成を示すブロック図である。図2において、エラー信号発生回路15は、3個のオアゲートOR1,OR2,OR3と、エラー信号発生器SG1とを備えて構成される。検出保護回路13からの5個の保護アラーム信号FO,FE1乃至FE4はオアゲートOR1に入力され、オアゲートOR1は入力される5個の保護アラーム信号FO,FE1乃至FE4に対して論理和演算を実行し、その演算値を示すエラー信号ECを発生してエラー信号通信回路16−1又は16−2並びにオアゲートOR2及びOR3に出力する。また、エラー信号通信回路16−1又は16−2からの通信エラー信号FA1又はFB1はオアゲートOR2及びOR3に入力され、エラー信号通信回路16−1又は16−2からの通信エラー信号FA2又はFB2はオアゲートOR3に入力される。さらに、オアゲートOR2は入力される2個の信号(エラー信号ECと通信エラー信号FA1、もしくはエラー信号ECと通信エラー信号FA2)に対して論理和演算を実行し、その演算値を示すエラー信号ERを発生してインターフェース回路2を介してCPU1に出力する。オアゲートOR3は入力される3個のエラー信号EC,FA1又はFB1,FA2又はFB2に対して論理和演算を実行し、その演算値を示すエラー信号EDを発生してアンドゲート12の反転入力端子に出力する。
【0029】
また、図2において、検出保護回路13からの4個の保護アラーム信号FE1乃至FE4はエラーモード信号発生器SG1に入力され、エラーモード信号発生器SG1は、図5に示すように、保護アラーム信号FE1乃至FE4に対して、2ビットのエラーモード信号EM(em1,em2)を発生してインターフェース回路2を介してCPU1に出力する。なお、図5において、「発振信号」とは所定の周波数で繰り返される、例えば、矩形パルス信号である。CPU1では、入力される2ビットのエラーモード信号EM(em1,em2)に基づいて、どの保護アラーム信号が発生しているかを確認できる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、各エラー信号及び各保護アラーム信号は、非エラー時である通常時において、ローレベル又は0である一方、保護が必要なエラー時においては、ハイレベル又は1となる。
【0031】
図3は図1のエラー信号通信回路16−1,16−2の詳細構成及び当該エラー信号通信回路16−1,16−2間の接続を示すブロック図である。以下、図3を参照して、エラー信号通信回路16−1,16−2の構成及び動作について説明する。
【0032】
図3において、エラー信号通信回路16−1は、電流源41と、スイッチ42と、負荷抵抗Rと、2個の電流検出器43,44とを備えて構成される。また、エラー信号通信回路16−2は、電流源51と、スイッチ52と、負荷抵抗Rと、2個の電流検出器53,54とを備えて構成される。電流源41は所定の電流値Iを有する直流電流をスイッチ42の接点aを介して電流検出器43に出力するとともに、端子T1と、ケーブルCA1と、エラー信号通信回路16−2の端子T4を介して、エラー信号通信回路16−2の電流検出器54に出力する。また、電流源51は所定の電流値Iを有する直流電流をスイッチ52の接点aを介して電流検出器53に出力するとともに、端子T3と、ケーブルCA2と、エラー信号通信回路16−1の端子T2を介して、エラー信号通信回路16−1の電流検出器44に出力する。
【0033】
IPM3−1において、エラー信号発生回路15からのエラー信号ECがローレベルであるとき、スイッチ42は接点a側に切り換えられる。一方、エラー信号ECがハイレベルであるとき、スイッチ42は接点b側に切り換えられ、このとき、上記電流値Iを有する直流電流が流れないようにスイッチ42により遮断される。電流検出器43は、入力される直流電流値Iを検出して、上記電流値Iよりも若干小さい(実施の形態において、若干小さく設定しているのは、偏差マージンを設定しているためであり、以下同様である。)しきい値電流値IAthと比較して、上記スイッチ42による遮断時に、上記検出した直流電流値Iがしきい値電流値IAth以下になったとき、通信エラー信号FA1をエラー信号発生回路15に出力する。また、電流検出器54は、端子T4を介して入力される直流電流値Iを検出して、上記しきい値電流値IAthと比較して、上記スイッチ42による遮断時もしくはケーブルCA1の断線又は未接続時に、上記検出した直流電流値Iがしきい値電流値IAth以下になったとき、エラー信号FB2をエラー信号発生回路15に出力する。
【0034】
以上のように構成された回路において、図2のエラー信号発生回路15から明らかなように、通信エラー信号FA1に基づいてハイレベルのエラー信号ER及びEDが発生されてIPM3−1内のIGBTTR1に対する駆動制御が停止される一方、エラー信号FB2に基づいてIPM3−2でハイレベルのエラー信号EDが発生されてIPM3−2内のIGBTTR2に対する駆動制御が停止される。すなわち、各IPM3−1,3−2でエラー信号を共有でき、片方のIPM3でエラー信号に基づいてその動作を停止したときに、他方のIPM3でエラー信号に基づいてその動作を停止できる。
【0035】
IPM3−2において、エラー信号発生回路15からのエラー信号ECがローレベルであるとき、スイッチ52は接点a側に切り換えられる。一方、エラー信号ECがハイレベルであるとき、スイッチ52は接点b側に切り換えられ、このとき、上記電流値Iを有する直流電流が流れないようにスイッチ52により遮断される。電流検出器53は、入力される直流電流値Iを検出して、上記電流値Iよりも若干小さいしきい値電流値IBthと比較して、上記スイッチ52による遮断時に、上記検出した直流電流値Iがしきい値電流値IBth以下になったとき、エラー信号FB1をエラー信号発生回路15に出力する。また、電流検出器44は、端子T2を介して入力される直流電流値Iを検出して、上記しきい値電流値IBthと比較して、上記スイッチ52による遮断時もしくはケーブルCA2の断線又は未接続時に、上記検出した直流電流値Iがしきい値電流値IBth以下になったとき、通信エラー信号FA2をエラー信号発生回路15に出力する。
【0036】
以上のように構成された回路において、図2のエラー信号発生回路15から明らかなように、エラー信号FB1に基づいてエラー信号ER及びEDが発生されてIPM3−2内のIGBTTR2に対する駆動制御が停止される一方、エラー信号FB1に基づいてIPM3−1でエラー信号EDが発生されてIPM3−1内のIGBTTR1に対する駆動制御が停止される。すなわち、各IPM3−1,3−2でエラー信号を共有でき、片方のIPM3でエラー信号に基づいてその動作を停止したときに、他方のIPM3でエラー信号に基づいてその動作を停止できる。
【0037】
図3の回路では、定電流を送受信することにより、エラー信号ECの発生又はケーブルCA1,CA2の断線を検出しているので、各IPM3−1,3−2同士の接地レベルの変動に影響を及ぼさない。なお、IPM3−1においてエラー信号が発生したときに、IPM3−1はそれ自身の検出保護回路13,24により駆動制御信号が遮断されて、その動作が停止されるので、電流検出器43からの通信エラー信号FA1を出力しなくてもよい。また、IPM3−2においてエラー信号が発生したときに、IPM3−2はそれ自身の検出保護回路13,24により駆動制御信号が遮断されて、その動作が停止されるので、電流検出器53からのエラー信号FB1を出力しなくてもよい。
【0038】
また、図3の回路では、定電流のオン・オフでエラー信号を送信し又は送信を停止しているが、本発明はこれに限らず、定電流の電流値の増減でエラー信号を送信し又は送信を停止してもよい。
【0039】
さらに、ケーブルCA1又はCA2において、断線又は未接続などのトラブルが発生した場合において、ケーブルCA1又はCA2を介して直流電流が流れなくなるので、電流検出器54からのエラー信号FB2、もしくは電流検出器44からの通信エラー信号FA2に基づいてケーブルCA1,CA2のトラブル状態を検出できる。すなわち、図6に示すように、IPM3−1又は3−2においてエラー信号ECが発生したとき、もしくはケーブルCA1又はCA2が断線したときの各状態に応じて、通信エラー信号FA1,FA2間の関係及び通信エラー信号FB1,FB2間の関係が変化するので、上記各状態を確認できる。なお、図6において、エラー信号ECの発生と、ケーブルCA1又はCA2の断線とが同時に発生した場合を考慮していない。
【0040】
図4は図1のエラー信号通信回路16−1の単独動作時の接続を示すブロック図である。図4において、例えばIPM3−1のエラー信号通信回路16−1の端子T1と端子T2とを短絡ケーブルCA3を用いて短絡する。図4に示すように、エラー信号通信回路16−1の内部構成は変わらない。また、短絡ケーブルCA3を介して電流が流れるので、単独動作時でも動作することができる。さらに、短絡ケーブルCA3を接続していないとき、当該エラー信号通信回路16−1は動作しないので、接続忘れの防止にもなる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、エラー信号通信回路16−1,16−2を用いてIPM3−1,3−2間で通信エラー信号FA1,FA2及びFB1,FB2を発生して通信を行うことにより、一方のIPMにおいてエラー信号ECが発生したときは、他方のIPMにおいて通信エラー信号FB2又はFB1を発生してエラー信号EDなどを発生することにより、両方のIPMの駆動制御信号CSを遮断することができ、これにより、両方のIGBTTR1及びTR2の動作を確実に停止させることができる。これにより、当該電力用半導体装置において安全な動作を実現できる。
【0042】
以上の実施の形態においては、有線のケーブルCA1,CA2を用いてエラー信号を送受信しているが、本発明はこれに限らず、所定のネットワーク回線又は無線通信回線を介してエラー信号を送受信してもよい。
【0043】
以上の実施の形態においては、IPM3−1,3−2間で双方向で通信エラー信号を送受信しているが、本発明はこれに限らず、エラー信号又は保護アラーム信号が発生したIPM3から他方のIPM3に対して片方向で通信エラー信号を送信するようにしてもよい。
【0044】
以上の実施の形態においては、一方のIPM3において発生され、電力半導体素子であるIGBTTR1を保護するための保護アラーム信号に基づいて、通信エラー信号を他方のIPM3に送信し、他方のIPM3において上記送信された通信エラー信号を受信し、上記受信された通信エラー信号に基づいて当該他方のIPM3の駆動制御動作を停止させているが、本発明はこれに限らず、一方のIPM3において発生される所定の起動信号に基づいて、所定の通信信号を他方のIPM3に送信し、他方のIPM3において上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方のIPM3の駆動制御動作を制御するように構成してもよい。
【0045】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置におけるエラー信号通信回路16A−1,16A−2の詳細構成及び当該エラー信号通信回路16A−1,16A−2間の接続を示すブロック図である。実施の形態1において、各IPM3−1,3−2でそれぞれ2個の通信エラー信号FA1,FA2;FB1,FB2を用いたときは、図6に示すように、以下の問題点がある。
【0046】
(1)IPM3−2でエラー信号ECが発生したときと、ケーブルCA2が断線したときで同一の信号値となる。このとき、いずれの場合であるか判断できない。
(2)IPM3−1でエラー信号ECが発生したときと、ケーブルCA1が断線したときで同一の信号値となる。このとき、いずれの場合であるか判断できない。
【0047】
以上の問題点を解決するために、実施の形態1の図3の回路に比較して、以下の点が異なる。
(1)エラー信号通信回路16A−1において、電流源45と、電流検出器46とをさらに備えた。
(2)エラー信号通信回路16A−2において、電流源55と、電流検出器56とをさらに備えた。
(3)ハイレベルのエラー信号ECに応答して、各スイッチ42,52を接点b側から接点a側に切り換える。
(4)各電流源41,45,51,55の電流値をそれぞれIA1,IA2,IB1,IB2とし、各電流検出器43,44,46,53,54,56での電流検出又は電流未検出のためのしきい値をそれぞれIA12th,IB12th,IB1th,IB12th,IA12th,IA1thに変更した。ここで、しきい値IA1thは電流値IA1を検出するために、当該電流値IA1よりも若干小さい値であり、しきい値IA12thは和電流値(IA1+IA2)を検出するために、当該和電流値(IA1+IA2)よりも若干小さい値である。また、しきい値IB1thは電流値IB1を検出するために、当該電流値IB1よりも若干小さい値であり、しきい値IB12thは和電流値(IB1+IB2)を検出するために、当該和電流値(IB1+IB2)よりも若干小さい値である。
【0048】
IPM3−1のエラー信号通信回路16A−1において、電流源45は電流値IA1の直流電流を電流検出器43に出力するとともに、端子T1、ケーブルCA1及び端子T4を介してエラー信号通信回路16A−2の電流検出器54,56に出力する。また、エラー信号発生回路15からのエラー信号ECがローレベルであるとき、スイッチ42は接点b側に切り換えられる。一方、エラー信号ECがハイレベルであるとき、スイッチ42は接点a側に切り換えられ、電流源41は電流値IA2を有する直流電流を電流検出器43に出力するとともに、端子T1、ケーブルCA1及び端子T4を介してエラー信号通信回路16A−2の電流検出器54,56に出力する。電流検出器43は入力される直流電流値がしきい値IA12th以上になったとき、通信エラー信号FA1を出力し、エラー信号通信回路16A−2の電流検出器54は入力される直流電流値がしきい値IA12th以上になったとき、通信エラー信号FB2を出力する。さらに、電流検出器56は端子T4に入力される直流電流値がしきい値IA1th以下になったとき、通信エラー信号FB3を出力する。すなわち、例えば、ケーブルCA1が断線したとき、端子T4に入力される直流電流値は0になるので、電流検出器56は通信エラー信号FB3を出力する。
【0049】
以上の場合において、ケーブルCA1が断線せず、IPM3−1でエラー信号ECが発生したのみ、通信エラー信号FA1,FB2がハイレベルになる一方、ケーブルCA1が断線したとき、通信エラー信号FB3のみハイレベルになる。従って、ケーブルCA1が断線したときと、IPM3−1でエラー信号ECが発生したときとを通信エラー信号で区別でき、上述の図3の回路の問題点を解決できる。
【0050】
また、IPM3−2のエラー信号通信回路16A−2において、電流源55は電流値IB1の直流電流を電流検出器53に出力するとともに、端子T3、ケーブルCA2及び端子T2を介してエラー信号通信回路16A−1の電流検出器44,46に出力する。また、エラー信号発生回路15からのエラー信号ECがローレベルであるとき、スイッチ52は接点b側に切り換えられる。一方、エラー信号ECがハイレベルであるとき、スイッチ42は接点a側に切り換えられ、電流源51は電流値IB2を有する直流電流を電流検出器53に出力するとともに、端子T3、ケーブルCA2及び端子T2を介してエラー信号通信回路16A−1の電流検出器44,46に出力する。電流検出器53は入力される直流電流値がしきい値IB12th以上になったとき、通信エラー信号FB1を出力し、エラー信号通信回路16A−1の電流検出器44は入力される直流電流値がしきい値IB12th以上になったとき、通信エラー信号FA2を出力する。さらに、電流検出器46は端子T2に入力される直流電流値がしきい値IB1th以下になったとき、通信エラー信号FA3を出力する。すなわち、例えば、ケーブルCA2が断線したとき、端子T2に入力される直流電流値は0になるので、電流検出器46は通信エラー信号FA3を出力する。
【0051】
以上の場合において、ケーブルCA2が断線せず、IPM3−2でエラー信号ECが発生したのみ、通信エラー信号FB1,FA2がハイレベルになる一方、ケーブルCA2が断線したとき、通信エラー信号FA3のみハイレベルになる。従って、ケーブルCA2が断線したときと、IPM3−2でエラー信号ECが発生したときとを通信エラー信号で区別でき、上述の図3の回路の問題点を解決できる。
【0052】
図8は図7の電力用半導体装置における各状態に対する通信エラー信号FA1,FA2,FA3との間の関係及び通信エラー信号FB1,FB2,FB3との間の関係を示す表である。なお、図8において、エラー信号ECの発生と、ケーブルCA1又はCA2の断線とが同時に発生した場合を考慮していない。図8から明らかなように、6個の通信エラー信号に基づいて、各状態を区別して確認できることがわかる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、一方のIPM3のエラー信号の発生に基づいて他方のIPM3の動作を停止させることができるとともに、6個の通信エラー信号に基づいて、各IPM3でのエラー信号の発生及び各ケーブルCA1,CA2の断線を区別して確認できる。
【0054】
以上の実施の形態においては、例えば、エラー信号通信回路16A−1において、エラー信号ECに基づいて、端子T1に流れる電流をIA1から(IA1+IA2)に増加しているが、本発明はこれに限らず、端子T1に流れる電流をIA1から(IA1−IA2)に減少させることによりエラー信号を送信してもよい。また、エラー信号通信回路16−2においても同様である。
【0055】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置におけるIPM3A−1,IPM3A−2の詳細構成及び当該IPM3A−1,IPM3A−2間の接続を示すブロック図である。本実施の形態では、図9に示すように、実施の形態1において、FO信号通信回路26−1,26−2をそれぞれIPM3A−1,IPM3A−2にさらに備えたことを特徴としている。
【0056】
図9において、IPM3A−1の検出保護回路24からの保護アラーム信号FOはFO信号通信回路26−1に入力され、FO信号通信回路26−1は当該保護アラーム信号FOを保護アラーム信号FOAとしてIPM3A−2のFO信号通信回路26−2を介して検出保護回路24に出力する。当該検出保護回路24は、他の保護アラーム信号FE1乃至FE4と、受信された保護アラーム信号FOAとに対して論理和演算を実行して、その演算値を示す信号を保護アラーム信号FOとして当該IPM3A−2内のアンドゲート21及び検出保護回路13に出力するとともに、FO信号通信回路26−2に出力する。
【0057】
また、IPM3A−2の検出保護回路24からの保護アラーム信号FOはFO信号通信回路26−2に入力され、FO信号通信回路26−2は当該保護アラーム信号FOを保護アラーム信号FOBとしてIPM3−1のFO信号通信回路26−1を介して検出保護回路24に出力する。当該検出保護回路24は、他の保護アラーム信号FE1乃至FE4と、受信された保護アラーム信号FOBとに対して論理和演算を実行して、その演算値を示す信号を保護アラーム信号FOとして当該IPM3A−1内のアンドゲート21及び検出保護回路13に出力するとともに、FO信号通信回路26−1に出力する。
【0058】
以上説明したように、実施の形態1における各IPM3−1,3−2のコントローラ回路10間で通信エラー信号を送受信することに加えて、実施の形態3における各IPM3A−1,3A−2の電力駆動回路20間で保護アラーム信号FOを送受信することにより、より確実に両方のIPM3A−1,3A−2において動作を停止させることができる。
【0059】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置における電流バランス化用インダクタL1Aとスイッチ27とを含む出力回路の詳細構成を示すブロック図である。本実施の形態では、図10に示すように、実施の形態1における電流バランス化用インダクタL1,L1に代えて、中間タップを有する電流バランス化用インダクタL1A,L1A及び切り換えスイッチ27をIPM3B−1,3B−2に備えたことを特徴としている。図10において、スイッチ27を以下のように各接点に切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を変化させることができる。
(1)スイッチ27を接点aに切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を例えば10μHに設定できる。
(2)スイッチ27を接点bに切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を例えば5μHに設定できる。
(3)スイッチ27を接点cに切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を例えば3μHに設定できる。
(4)スイッチ27を接点dに切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を例えば2μHに設定できる。
(5)スイッチ27を接点aに切り換えたとき、インダクタL1Aのインダクタンス値を例えば0μH(インダクタL1Aを未接続)に設定できる。
【0060】
本実施の形態において、各インダクタL1Aのインダクタンス値は上述のように、各IGBTTR1,TR2のコレクタ電流のバランス化のために、実質的に同一となるように、各スイッチ27を切り換えることが好ましい。また、単独でIPM3を用いるときは、電気エネルギーの損失の観点からインダクタL1Aを接続しないことが好ましい。本実施の形態によれば、IPM3を単独で動作させるときと、並列に接続して動作させるときで、インダクタL1Aのインダクタンス値を変化させることができるので、別のIPM3を製造する必要はなくなるという特有の効果を有する。
【0061】
変形例.
以上の実施の形態においては、2つのIPM3を並列に接続した場合について説明しているが、3個以上の複数のIPM3を並列に接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上詳述したように、本発明に係る電力用半導体装置によれば、電力半導体素子を駆動制御するための複数の電力制御用半導体モジュールが並列に接続されてなる電力用半導体装置において、一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される所定の起動信号に基づいて、所定の通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信する送信手段と、他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を制御する受信手段とを備える。具体的には、上記起動信号は、上記電力半導体素子を保護するための保護アラーム信号であり、上記送信手段は、一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される保護アラーム信号に基づいて、上記通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信し、上記受信手段は、他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を停止させる。それ故、両方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を確実に停止させることができる。これにより、当該電力用半導体装置において安全な動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のエラー信号発生回路15の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図1のエラー信号通信回路16−1,16−2の詳細構成及び当該エラー信号通信回路16−1,16−2間の接続を示すブロック図である。
【図4】図1のエラー信号通信回路16−1の単独動作時の接続を示すブロック図である。
【図5】図1の電力用半導体装置における保護エラー信号FE1乃至FE4とエラーモード信号EMとの間の関係を示す表である。
【図6】図1の電力用半導体装置における各状態に対する通信エラー信号FA1,FA2との間の関係及び通信エラー信号FB1,FB2との間の関係を示す表である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電力用半導体装置におけるエラー信号通信回路16A−1,16A−2の詳細構成及び当該エラー信号通信回路16A−1,16A−2間の接続を示すブロック図である。
【図8】図7の電力用半導体装置における各状態に対する通信エラー信号FA1,FA2,FA3との間の関係及び通信エラー信号FB1,FB2,FB3との間の関係を示す表である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電力用半導体装置におけるIPM3A−1,IPM3A−2の詳細構成及び当該IPM3A−1,IPM3A−2間の接続を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る電力用半導体装置における電流バランス化用インダクタL1Aとスイッチ27とを含む出力回路の詳細構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
1 中央演算処理装置(CPU)、2−1,2−2 インターフェース回路、3,3−1,3−2,3A−1,3A−2,3B−1,3B−2 インテリジェント・パワー・モジュール(IPM)、4 負荷装置、10 コントローラ回路、11 電源回路、12 反転入力端子付きアンドゲート、13 検出保護回路、15 エラー信号発生回路、16−1,16−2,16A−1,16A−2 エラー信号通信回路、20 電力駆動回路、21 反転入力端子付きアンドゲート、22 駆動回路、23 センサ及びセンサ回路、24 検出保護回路、26−1,26−2 FO信号通信回路、27 スイッチ、31,32 フォトカプラ、41,45,51,55 電流源、42,52 スイッチ、43,44,46,53,54,56 電流検出器、CA1,CA2,CA3 ケーブル、L1,L1A 電流バランス化用インダクタ、L2 電流検出用インダクタ、OR1,OR2,OR3 オアゲート、R 負荷抵抗、Rs 電流検出用抵抗、SG1 エラーモード信号発生器、TR IGBT、Di 還流ダイオード、Vcc 電源電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力半導体素子を駆動制御するための複数の電力制御用半導体モジュールが並列に接続されてなる電力用半導体装置において、
一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される所定の起動信号に基づいて、所定の通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信する送信手段と、
他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を制御する受信手段とを備えたことを特徴とする電力用半導体装置。
【請求項2】
上記起動信号は、上記電力半導体素子を保護するための保護アラーム信号であり、
上記送信手段は、一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される保護アラーム信号に基づいて、上記通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信し、
上記受信手段は、他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された通信信号を受信し、上記受信された通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を停止させることを特徴とする請求項1記載の電力用半導体装置。
【請求項3】
上記送信手段は、電流源により発生される電流をオン・オフすることにより、上記通信信号を発生して送信し、
上記受信手段は、上記電流のオン・オフを検出することにより上記通信信号を受信することを特徴とする請求項1又は2記載の電力用半導体装置。
【請求項4】
上記送信手段は、電流源により発生される電流を増減することにより、上記通信信号を発生して送信し、
上記受信手段は、上記電流の増減を検出することにより上記通信信号を受信することを特徴とする請求項1又は2記載の電力用半導体装置。
【請求項5】
上記受信手段は、上記電流を検出しないときに、上記送信手段と上記受信手段との間の回線断を検出することを特徴とする請求項3又は4記載の電力用半導体装置。
【請求項6】
一方の電力制御用半導体モジュールにおいて発生される別の保護アラーム信号に基づいて、上記別の通信信号を他方の電力制御用半導体モジュールに送信する別の送信手段と、
他方の電力制御用半導体モジュールにおいて上記送信された別の通信信号を受信し、上記受信された別の通信信号に基づいて当該他方の電力制御用半導体モジュールの駆動制御動作を停止させる別の受信手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項2乃至5のうちのいずれか1つに記載の電力用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−238635(P2006−238635A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50781(P2005−50781)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】