説明

電動アクチュエータ

【課題】各機構部のバックラッシュによる角度センサの検出精度への影響を抑制して高精度で検出可能とし、被駆動部材を高い位置精度で位置決めすることができる電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動モータ109の回転力を、第1動力伝達機構111を介してボールねじ機構107に伝達して被駆動部材118を駆動すると共に、第2動力伝達機構112を介して角度センサ130に伝達して、測定軸131の回転角度を検出する。そして、ハウジング101,102と、電動モータ109、ボールねじ機構107、第1動力伝達機構111、及び第2動力伝達機構112のいずれか一つの回転軸との間に捩りコイルばね133を配設して、この捩りコイルばね133のばね力によって角度センサ130の測定軸131を常に所定の回転方向に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関し、より詳細には、一般産業用電動機、自動車、及び船舶などに使用される電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関でスクリューを駆動する比較的小型の船舶においては、前進方向へのスクリューの回転と、後進方向へのスクリューの回転との切換は、操作者により操作されたレバーに接続されるワイヤを介してドグクラッチを切り換え、前進用ギヤ或いは後進用ギヤに係合させることで行っている。しかるに、近年においては、船舶の大型化に伴なって切り換え操作力が重くなる傾向があるため、操作者の負担軽減や省力化のため電動アクチュエータを用いてドグクラッチの切換を行えないかという要請がある。電動アクチュエータとしては、車両の変速機用アクチュエータが種々、提案されており、これを流用することも考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−227567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の変速機用電動駆動装置は、車両変速機のシフト操作を行うシフト用アクチュエータと、セレクト操作を行うセレクト用アクチュエータとの2つのアクチュエータを備える。セレクト用アクチュエータには、ポテンショメータなどの変位センサが配設されており、出力軸の回転角度を検出する。変位センサは、検出部に突設された係合突起を、出力軸に設けられた係合凹部に係合させることによって出力軸と連結されており、検出部に伝達される出力軸の回転角度を検出する。
【0005】
電動アクチュエータの変位センサとしては、絶対位置が検出可能な、例えば、ポテンショメータなどが好ましく、ポテンショメータの検出可能な回転角は、通常360°以内の角度に設定されている。このようなポテンショメータの検出位置と、ボールねじなどのように多数回転する回転軸を備える駆動機構の位置とを、1:1で対応させるため、ポテンショメータの回転軸は、多段のギヤからなるギヤトレインなどによって大きく減速される。このため、変位センサの検出精度は、バックラッシュの影響を受けて検出精度が低下し、駆動機構による位置決め精度が低下する問題があった。
【0006】
特に、温度変化や湿度変化が激しい環境である、自動車や船外機などで使用される場合、熱や湿度による膨張を考慮してバックラッシュが大きめに設定されることが多く、検出精度に与える影響が大きい。また、ボールとねじとの間に隙間を設けて、駆動トルクの低下を図ったボールねじ機構を駆動機構として採用する場合も、この隙間が位置決め精度を低下させる要因となる。さらに、特許文献1に記載の変速機用電動駆動装置のように、検出部の係合突起と、出力軸の係合凹部とを係合させて連結するようにした変位センサにおいては、係合突起と係合凹部との係合隙間も検出精度に影響を及ぼす。
【0007】
また、バックラッシュがある電動アクチュエータが、振動の大きな自動車や船外機などで使用されると、振動によってギヤの歯面同士や、ボールねじ機構のボールとねじとが激しくぶつかり合って摩耗し、耐久性に悪影響を及ぼす可能性があった。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、各機構部のバックラッシュによる角度センサの検出精度への影響を抑制して高精度で検出可能とし、被駆動部材を高い位置精度で位置決めすることができる電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) ハウジングに取り付けられる電動モータと、電動モータの回転軸から回転力が伝達されることにより被駆動部材を駆動する駆動機構と、電動モータの回転軸の回転力を駆動機構に伝達する第1動力伝達機構と、を備え、電動モータにより被駆動部材を駆動する電動アクチュエータであって、測定軸の回転角度を検出する角度センサと、複数のギヤを備え、電動モータの回転軸の回転力を角度センサの測定軸に伝達する第2動力伝達機構と、一端がハウジングに固定され、他端が電動モータ、駆動機構、第1動力伝達機構、及び第2動力伝達機構のいずれか一つの回転軸に固定される捩りコイルばねと、を備え、捩りコイルばねのばね力によって角度センサの測定軸を常に所定の回転方向に付勢することを特徴とする電動アクチュエータ。
(2) 捩りコイルばねは、ハウジングと、第2動力伝達機構の最終段ギヤとの間に配設されることを特徴とする(1)に記載の電動アクチュエータ。
(3) 捩りコイルばねは、ハウジングと、角度センサの測定軸との間に配設されることを特徴とする(1)に記載の電動アクチュエータ。
(4) 捩りコイルばねは、角度センサに内蔵されることを特徴とする(3)に記載の電動アクチュエータ。
(5) 捩りコイルばねは、そのばね力が電動アクチュエータが多用されるストローク近傍で弱くなるように設定されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
(6) 第1動力伝達機構及び第2動力伝達機構は、少なくとも樹脂製ギヤを含んで構成されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動アクチュエータによれば、捩りコイルばねのばね力によって角度センサの測定軸を常に所定の回転方向に付勢するため、各機構部のバックラッシュによる角度センサの検出精度への影響を抑制して高精度で回転角度を検出することができ、これにより、被駆動部材を高い位置精度で位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動アクチュエータの各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、図1〜図4を参照して、本発明に係る電動アクチュエータの第1実施形態について説明する。
図1は本発明に係る電動アクチュエータを採用した船外機の概略図、図2は本発明に係る電動アクチュエータの第1実施形態を説明するための断面図、図3は図2に示す捩りコイルばねを説明するための図であり、(a)は捩りコイルばねの縦断面図、(b)は捩りコイルばねの正面図、図4は捩りコイルばねの変形例を説明するための図であり、(a)は捩りコイルばねの側面図、(b)は捩りコイルばねの正面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の船外機2は、船体1に固定されるケーシング2aと、その上部に取り付けられたカウリング2bと、を有している。カウリング2bの内部には、出力軸3をケーシング2aに延在させてなるエンジン(不図示)が搭載されている。出力軸3の下端には、傘歯車3aが取り付けられている。
【0014】
ケーシング2aの下部には、プロペラ軸4が水平に配置され、回転可能に支持されている。プロペラ軸4の図中右端側は、ケーシング2aから外部へ突出しており、その端部にプロペラ5が取り付けられている。
【0015】
プロペラ軸4は、傘歯車3aに噛合する前進用傘歯車6と後進用傘歯車7とを貫通しており、また傘歯車6,7の間にドグクラッチ8を配置している。プロペラ軸4に対して、ドグクラッチ8は軸線方向に相対移動可能、且つ一体的に回転するようになっており、また傘歯車6,7は相対回転可能となっている。図示していないが、ドグクラッチ8は、軸線方向両方向に向いた突起を有しており、図中左方に移動することで突起が傘歯車6の凹部と係合し、ドグクラッチ8と傘歯車6とが一体で回転する。一方、図中右方に移動することで突起が傘歯車7の凹部と係合し、ドグクラッチ8と傘歯車7とが一体で回転する。
【0016】
ドグクラッチ8は、カム軸9により軸線方向に駆動されるようになっている。カム軸9は、操作軸10の回転に応じて軸線方向に変位するように連結されている。操作軸10は、リンク部材11を介して、後述する電動アクチュエータ100の駆動軸118に連結されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ100は、略円筒状に形成されたアルミ製のハウジング本体101と、その端面にボルト103によって組み付けられるアルミ製のカバー部材102と、を備える。ハウジング本体101の内部には、玉軸受104によって回転自在に支持されたねじ軸105と、ねじ軸105の軸方向に移動可能なナット106と、を有するボールねじ機構107を収容する機構室108が形成されている。また、カバー部材102の内部には、電動モータ109を収容するモータ室110と、第1動力伝達機構111及び第2動力伝達機構112(いずれもギヤトレインとして構成される)を収容するギヤ室113と、を有する。
【0018】
ハウジング本体101に設けられる玉軸受114により、一端が回転自在に支持された電動モータ109の回転軸115には、金属製の第1ギヤ116が圧入されており、回転軸115と一体となって回転する。第1ギヤ116は、ギヤ室113内に突出するねじ軸105の一端に固定される樹脂製の第2ギヤ117の大ギヤ部117aと噛合する。第1ギヤ116及び第2ギヤ117の大ギヤ部117aは、第1動力伝達機構111を構成し、電動モータ109の回転軸115の回転力をボールねじ機構107のねじ軸105に伝達する。
【0019】
ボールねじ機構107のねじ軸105は、円筒状のナット106を貫通している。ナット106の内周面には、ねじ軸105の雄ねじ溝に対向して雌ねじ溝が形成されており、両ねじ溝によって形成される螺旋状の空間(転走路)には、多数のボール(図示せず)が転動自在に配置されている。ナット106は、ハウジング本体101に対して回り止め(図示せず)が設けられ、機構室108内において、軸線方向に相対移動可能となっている。
【0020】
そして、軸線方向移動要素であるナット106と、回転要素であるねじ軸105と、転動体であるボール(図示せず)とでボールねじ機構107を構成し、このボールねじ機構107と、以下の駆動軸118とで駆動機構を構成する。なお、電動アクチュエータ100の駆動トルクを低減するためには、ねじ軸105とボールとの間に予圧が付与されていないボールねじ機構107を用いることができる。
【0021】
ねじ軸105の左端は、被駆動部材である丸軸状の駆動軸118の軸心を通って形成される袋孔119内に収容されている。駆動軸118は、ハウジング本体101に対してブッシュ120によって軸線方向に移動可能に支持されており、ハウジング本体101から出没自在となっている。また、ブッシュ120の左方(外部側)にはシール121が配置されて、ハウジング本体101と駆動軸118との間から海水や塵埃等の異物が侵入することを防止している。
【0022】
駆動軸118の右端は、ナット106に対して同軸に嵌合し、コッタ122で一体的に連結されている。これにより、駆動軸118はナット106と一体となって軸線方向に移動する。なお、ハウジング本体101から突出した駆動軸118の左端部には、リンク部材11(図1参照)に連結するための雌ねじ123が形成されている。
【0023】
一方、ねじ軸105に固定される第2ギヤ117の小ギヤ部117bは、一端がハウジング本体101に固定されてねじ軸105と平行に設けられる第1アイドラ軸124に遊嵌する樹脂製の第3ギヤ125の大ギヤ部125aと噛合する。この第3ギヤ125の小ギヤ部125bは、一端がカバー部材102に固定されてねじ軸105と平行に設けられる第2アイドラ軸126に遊嵌する樹脂製の第4ギヤ127の大ギヤ部127aと噛合している。さらに、第4ギヤ127の小ギヤ部127bは、第1アイドラ軸124の右端に遊嵌する樹脂製のセンサギヤ128に噛合している。
【0024】
カバー部材102には、第1アイドラ軸124の軸心の延長線上にセンサ取付穴129が貫通して形成されており、このセンサ取付穴129に測定軸131が挿入された角度センサ130が、取付けねじ132によってカバー部材102に固定されている。センサギヤ128は、角度センサ130の測定軸131に一体的に連結されており、一体となって回転する。
【0025】
ここで、第1ギヤ116、第2ギヤ117、第3ギヤ125、第4ギヤ127、及びセンサギヤ128は、第2動力伝達機構112を構成し、電動モータ109の回転軸115の回転力を、角度センサ130の測定軸131に伝達する。また、カバー部材102は、各ギヤに異物が侵入しないように密閉するギヤカバーとしての機能を有する。なお、噛合するギヤの樹脂素材を互いに異なるものにすると、摩滅を抑制できるので好ましい。
【0026】
角度センサ130は、例えば、ポテンショメータであり、測定軸131の所定範囲(例えば180°)の回転角度を、連続して精度良く検出できるものである。そして、図2及び図3に示すように、センサギヤ128と角度センサ130との間には、捩りコイルばね133が配設されている。具体的には、捩りコイルばね133の一端(図中右端部)133aは、カバー部材102の内壁面に形成された係止穴134に嵌合し、他端(図中左端部)133bは、センサギヤ128に形成された係合穴135に嵌合している。
【0027】
捩りコイルばね133は、捩られた状態、即ち、初期ばね力が設定された状態で、その両端部133a,133bが係止穴134及び係合穴135にそれぞれ嵌合している。これにより、センサギヤ128は、捩りコイルばね133のばね力によって、常に所定の回転方向に付勢されているので、ギヤトレインで構成される第1動力伝達機構111及び第2動力伝達機構112の各ギヤは一回転方向に偏った状態で噛合しており、これにより各ギヤ間のバックラッシュが相殺された状態となっている。
【0028】
捩りコイルばね133は、電動アクチュエータ100が多用されるストローク近傍で弱くなるように設定されるのが好ましい。これにより、多用されるストローク範囲において、各ギヤの歯面に作用する面圧を低減することができ、ギヤの耐久性を向上させることができる。
【0029】
ここで、多用されるストローク近傍とは、電動アクチュエータ100が船外機2の前後進切換えに使用される場合は、前進側に相当する。さらに、具体的には、ねじ軸105のねじ溝が右ねじであり、駆動軸118がハウジング本体101内に収容される方向に移動する状態(図2に示す状態)が船外機2の前進側に対応し、ハウジング本体101から突出する方向に移動する状態が後進側に対応するように、リンク部材11を介して操作軸10に連結されている場合(図1参照)、捩りコイルばね133としては、図3に示す右捩りコイルばねを使用するのが好ましい。これにより、ドグクラッチ8を前進側に切り替えるべく、駆動軸118を図2において右方向に移動させるため、ねじ軸105を右回転させると、捩りコイルばね133は、ばね力が弱まる方向に捩られる。これにより、多用される前進側において作用する各ギヤは、比較的弱い付勢力よってバックラッシュが解消されるので、耐久性の向上に寄与する。
【0030】
次に、本実施形態の動作について説明する。図1において、傘歯車3aは、前進用傘歯車6と後進用傘歯車7のいずれにも常時噛合しているから、内燃機関が動作している限り、傘歯車3aから動力を伝達された傘歯車6,7は互いに逆方向に回転している。しかしながら、ドグクラッチ8がいずれの傘歯車6,7とも係合していないニュートラル状態においては、出力軸3の動力はプロペラ軸4に伝達されずプロペラ5は回転しない。なお、ニュートラル状態におけるナット106の位置は、機構室108の軸方向略中央の図2に破線で示すニュートラル位置に位置しているものとする。
【0031】
ここで、ニュートラル状態から、操作者が不図示のレバーを前進方向に操作すると、図2において、電動モータ109の回転軸115が所定の方向に回転する(例えば、左回転)。回転軸115の回転力は、第1ギヤ116,第2ギヤ117を介してねじ軸105に伝達されてねじ軸105を右回転させるので、ナット106は図中破線で示すニュートラル位置から右方向へ移動する。
【0032】
ナット106の右方向への変位に伴って駆動軸118も右方向に移動し、これにより図1において、リンク部材11を介して操作軸10が所定の方向に回転してカム軸9が左方に移動し、ドグクラッチ8を前進用傘歯車6と係合させる。これにより出力軸3の動力は、傘歯車3a,6及びドグクラッチ8を介してプロペラ軸4に伝達されてプロペラ5を正回転させる。
【0033】
このとき、センサギヤ128は左回転するので、角度センサ130とセンサギヤ128との間に配設される捩りコイルばね(右捩りコイルばね)133は、ばね力が弱まる方向に捩られる。即ち、多用される前進側では、捩りコイルばね133のばね力によって、各ギヤの歯面に作用する面圧が低くなり、耐久性が向上する。
【0034】
一方、回転軸115の回転力は、第1ギヤ116,第2ギヤ117,第3ギヤ125、第4ギヤ127,センサギヤ128を介して角度センサ130の測定軸131に伝達される。測定軸131の回転に応じた信号は、角度センサ130から信号線136を介して駆動回路(図示せず)に入力され、ねじ軸105が所定の回転量だけ回転したと判断されると、駆動回路は電動モータ109への電力供給を停止させる。
【0035】
これに対し、操作者が不図示のレバーを後進方向に操作すると、電動モータ109の回転軸115が逆方向(例えば、右方向)に回転し、上述とは逆に作動して電動アクチュエータ100の駆動軸118が図2中左方向に移動する。これにより、図1において、リンク部材11を介して操作軸10が逆方向に回転してカム軸9が右方に移動し、ドグクラッチ8を後進用傘歯車7と係合させる。これにより出力軸3の動力は、傘歯車3a,7及びドグクラッチ8を介してプロペラ軸4に伝達され、プロペラ5を逆回転させる。
【0036】
ドグクラッチ8の前進、後進への切り替え時に、電動モータ109の回転軸115の回転は、第2動力伝達機構112の各ギヤ116,117,125,127,128を介して角度センサ130の測定軸131に伝達されるが、互いに噛合する各ギヤは、捩りコイルばね133のばね力によって常に所定の回転方向に偏った状態で噛合しており、各ギヤ間のバックラッシュが相殺されている。また、温度や湿度の変化によってバックラッシュ量が変動しても、これに自動的に追従してバックラッシュを相殺することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の電動アクチュエータ100によれば、捩りコイルばね133のばね力によって角度センサ130の測定軸131を常に所定の回転方向に付勢するため、各機構部のバックラッシュによる角度センサ130の検出精度への影響を抑制して高精度で回転角度を検出することができ、これにより、駆動軸118を高い位置精度で位置決めすることができる。
【0038】
また、本実施形態の電動アクチュエータ100によれば、各機構部のバックラッシュを防止することができるので、正逆切り替え時のロストモーションを低減することができる。また、第1及び第2動力伝達機構111,112の各ギヤのバックラッシュを防止することができるので、例え、電動アクチュエータ100に振動が作用しても、各ギヤがぶつかり合うことはない。これにより、各ギヤの摩滅を防止することができるので、電動アクチュエータ100の耐久性を向上することができる。
【0039】
また、本実施形態の電動アクチュエータ100によれば、捩りコイル133ばねのばね力が、電動アクチュエータ100が多用されるストローク近傍で弱くなるように設定されるため、多用されるストローク近傍での各機構部の摩耗を低減することができ、電動アクチュエータ100の耐久性を向上することができる。
【0040】
さらに、本実施形態の電動アクチュエータ100によれば、第1及び第2動力伝達機構111,112が樹脂製ギヤを含んで構成されるため、多数のギヤからなり、減速比が大きなギヤトレインを安価に製作することができる。
【0041】
なお、捩りコイルばねの変形例として、図4に示す捩りコイルばね137を使用してもよい。この捩りコイルばね137は、その両端137a,137bが径方向に折り曲げられており、一端137aをカバー部材102に嵌合させ、他端137bをセンサギヤ128に嵌合させるようにする。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明に係る電動アクチュエータの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の電動アクチュエータでは、捩りコイルばねが角度センサに内蔵されている以外は、第1実施形態の電動アクチュエータと同様であるので、角度センサの部分のみを図示し、同一部分には同一符号又は相当符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
図5は本発明に係る電動アクチュエータの第2実施形態を説明するための要部断面図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ100の角度センサ130は、測定部142がセンサブロック140に設けられるセンサ室141に収容されて一体に組み付けられている。センサブロック140は、取付けねじ132によってカバー部材102に固定され、測定部(回転部)142がセンサギヤ128に連結する。そして、捩りコイルばね133は、その一端133aが角度センサ130の測定部142に固定され、他端133bがセンサ室141の側壁141aに固定されて、センサ室141に内蔵されている。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0044】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、各実施形態では、電動アクチュエータは、船外機の前後進切換えに用いられるものとして説明したが、これに限定されず、自動車、自動二輪車、バス、トラック、バギー車などの車両のトランスミッションの切換えに用いてもよい。この場合、捩りコイルばねのばね力をドライブレンジ付近で小さくなるように設定する方が耐久性の観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る電動アクチュエータを採用した船外機の概略図である。
【図2】本発明に係る電動アクチュエータの第1実施形態を説明するための断面図である。
【図3】図2に示す捩りコイルばねを説明するための図であり、(a)は捩りコイルばねの縦断面図、(b)は捩りコイルばねの正面図である。
【図4】捩りコイルばねの変形例を説明するための図であり、(a)は捩りコイルばねの側面図、(b)は捩りコイルばねの正面図である。
【図5】本発明に係る電動アクチュエータの第2実施形態を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
【0046】
100 電動アクチュエータ
101 ハウジング本体(ハウジング)
102 カバー部材(ハウジング)
107 ボールねじ機構(駆動機構)
109 電動モータ
111 第1動力伝達機構
112 第2動力伝達機構
115 電動モータの回転軸
116 第1ギヤ(ギヤ)
117 第2ギヤ(ギヤ)
118 駆動軸(被駆動部材)
125 第3ギヤ(ギヤ)
127 第4ギヤ(ギヤ)
128 センサギヤ(第2動力伝達機構の最終段ギヤ)
130 角度センサ
131 測定軸
133 捩りコイルばね
133a 捩りコイルばねの一端
133b 捩りコイルばねの他端
137 捩りコイルばね
137a 捩りコイルばねの一端
137b 捩りコイルばねの他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに取り付けられる電動モータと、前記電動モータの回転軸から回転力が伝達されることにより被駆動部材を駆動する駆動機構と、前記電動モータの回転軸の回転力を前記駆動機構に伝達する第1動力伝達機構と、を備え、前記電動モータにより前記被駆動部材を駆動する電動アクチュエータであって、
測定軸の回転角度を検出する角度センサと、
複数のギヤを備え、前記電動モータの回転軸の回転力を前記角度センサの測定軸に伝達する第2動力伝達機構と、
一端が前記ハウジングに固定され、他端が前記電動モータ、前記駆動機構、前記第1動力伝達機構、及び前記第2動力伝達機構のいずれか一つの回転軸に固定される捩りコイルばねと、を備え、
前記捩りコイルばねのばね力によって前記角度センサの測定軸を常に所定の回転方向に付勢することを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記捩りコイルばねは、前記ハウジングと、前記第2動力伝達機構の最終段ギヤとの間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記捩りコイルばねは、前記ハウジングと、前記角度センサの測定軸との間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記捩りコイルばねは、前記角度センサに内蔵されることを特徴とする請求項3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記捩りコイルばねは、そのばね力が前記電動アクチュエータが多用されるストローク近傍で弱くなるように設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1動力伝達機構及び前記第2動力伝達機構は、少なくとも樹脂製ギヤを含んで構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−210019(P2009−210019A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53281(P2008−53281)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】