説明

電動ハブユニット

【課題】本発明は、減速歯車部の破損を防止するようにした電動ハブユニットを提供する。
【解決手段】電動ハブユニット1においては、モータ部3が通常に回転している場合、第1のロータ部41と第2のロータ部42との間に配置されている第1の摩擦板43が、第1のロータ部41と第2のロータ部42とを付勢力により発揮される摩擦力により連結させ、第1のロータ部41と第2のロータ部42とが一体的に回転する。また、第1のロータ部41とステータ13の間にゴミなどの異物が挟まって第1のロータ部41がロックされてしまった場合でハブ4が回転し続けようとしても、第1の摩擦板43の摩擦力に抗して第2のロータ部42を回転させることができるので、第2のロータ部42とハブ4とを連結している遊星歯車機構6は回転することができ、遊星歯車機構6が破損する事態を回避させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車(例えば、電動自転車、電動アシスト自転車、歩行介助車など)に利用される電動ハブユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2002−362467号公報がある。この公報に記載された電動ハブユニットは、コイル及びマグネットを収容したモータケーシングと、モータの周囲で車軸を中心に回転するハブと、モータの出力を減速させてハブに伝達する遊星歯車機構と、コイルへの通電を制御する回路基板と、を備えている。そして、電動ハブユニットには、人力によってハブを回転させるよりも後輪の回転速度が速くなったときに、人力駆動力とモータとの動力を遮断することができる一方向クラッチが内装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の電動ハブユニットでは、動作中に、モータのロータとステータとの間にゴミなどの異物が挟まってロータがロックされてしまった場合には、ロータとハブとの間を連結する遊星歯車機構(減速歯車部)が破損する虞があるが、このような事態を回避させる構造を電動ハブユニット自体にもたせることが望まれていた。
【0005】
本発明は、減速歯車部の破損を防止するようにした電動ハブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車軸の軸線を中心に回転するハブ内に、ロータ及びステータを有するモータ部と、ロータとハブとを連結し、ロータの回転を減速してハブに伝達する減速歯車部と、が内蔵されてなる電動ハブユニットにおいて、
ロータは、
ステータに対向する第1のロータ部と、
車軸に対して回転自在な第2のロータ部と、
第1のロータ部と第2のロータ部との間に配置されて、第1のロータ部と第2のロータ部とを連結する第1の摩擦板と、
第1のロータ部を第1の摩擦板に押圧する付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この電動ハブユニットにおいては、モータ部が通常に回転している場合、第1のロータ部と第2のロータ部との間に配置されている第1の摩擦板が、第1のロータ部と第2のロータ部とを、付勢力により発揮される摩擦力により連結させ、第1のロータ部と第2のロータ部とが一体的に回転する。また、第1のロータ部とステータの間にゴミなどの異物が挟まって第1のロータ部がロックされてしまった場合でハブが回転し続けようとしても、第1の摩擦板の摩擦力に抗して第2のロータ部を回転させることができるので、第2のロータ部とハブとを連結している減速歯車部は回転することができ、減速歯車部が破損する事態を回避させることができる。また、車輪がロックされてしまった場合で第1のロータ部が回転し続けようとしても、第1の摩擦板の摩擦力に抗して第1のロータ部を回転させることができるので、モータ部に多大な負荷をかけるような事態をも回避させることができる。
【0008】
また、第1のロータ部は、筒状のマグネットと、マグネットの内壁面に固定されて軸線方向に延在する筒状のヨーク部とを有し、第2のロータ部は、車軸に対して回転自在で軸線方向に延在するスリーブを有し、第1の摩擦板は、スリーブに設けられたフランジ部とヨーク部の端部との間に挟み込まれ、付勢手段は、ヨーク部とスリーブとの間で車軸の軸線方向に巻回された螺旋圧縮ばねであると共に、軸線方向でヨーク部を第1の摩擦板に向かって押圧すると好適である。
このような構成は、マグネットの磁力を増幅させることができるヨーク部を、第1のロータ部の構成の一部として有効利用を図っている。
【0009】
また、スリーブに対して軸線方向に移動自在な可動筒体は、スリーブとヨーク部との間で軸線方向に延在し、可動筒体の端部とヨーク部の端部との間には、第1の摩擦板に対向して第2の摩擦板が配置され、螺旋圧縮ばねによって軸線方向で可動筒体を第2の摩擦板に向かって押圧すると好適である。
この構成は、スリーブのフランジ部とヨーク部の端部との間に第1の摩擦板が配置され、ヨーク部の端部と可動筒体との間に第2の摩擦板が配置され、2枚の摩擦板でヨーク部の端部を挟み込むようにしているので、一定の摩擦力を発揮させるにあたって、1枚の摩擦板を利用する場合に比べてそれぞれの摩擦板の摩擦力を低減させることができので、摩擦力を発現させる螺旋圧縮ばねのばね力を小さくでき、螺旋圧縮ばねの線径を小さくすることができる。これによって、可動筒体とヨーク部との間で螺旋圧縮ばねが配置される占有スペースを小さくすることができる。
【0010】
また、ロータ及びステータを包囲するモータケースの端部には、
スリーブの端部に形成されて車軸の周囲を回転する太陽歯車と、
モータケースの端部の内壁面に形成された内歯車と、
キャリアとして機能するハブに軸支されると共に、太陽歯車と内歯車との間に配置されて、太陽歯車及び内歯車と噛合する遊星歯車と、からなる減速歯車部としての遊星歯車機構が配置されていると好適である。
このような構成を採用すると、第2のロータ部のスリーブの端部を、遊星歯車機構の太陽歯車として機能させ、モータケースの端部の内壁面を、遊星歯車機構の内歯車として機能させることができるので、モータケースと第2のロータ部との有効活用を図った遊星歯車機構を可能にしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減速歯車部の破損を防止するようにした機構を電動ハブユニット自体にもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電動ハブユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示された電動ハブユニットの分解断面図である。
【図3】遊星歯車機構及び仕切板を示す平面図である。
【図4】モータ部の拡大断面図である。
【図5】本発明に係る電動ハブユニットの他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る電動ハブユニットの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、電動ハブユニット1は、電動自転車、電動アシスト自転車、電動バイク、電動自動車などの車輪に利用される。この電動ハブユニット1は、車軸2が貫通したモータ部3と、車軸2を中心に回転するハブ4と、モータ部3の出力を減速させてハブ4に伝達する減速歯車部6と、モータ部3を制御する回路基板7と、車軸2に対してハブ4を回転自在に支持する左右一対の軸受部30,31と、を主たる構成部品として備えている。そして、ハブ4内には、モータ部3と減速歯車部6と回路基板7とが収容されている。
【0015】
モータ部3は、車軸2の軸線L方向における一端が開放されて他端に車軸2が固定されたモータケース10を有し、モータケース10の周囲でハブ4は回転するので、モータケース10の外周壁10bは、ハブ4から離間させられている。このモータケース10内には、鉄心からなるコア11にコイル12が巻かれたステータ13と、ステータ13に対して回転するロータ14とを備えている。ステータ13は、電気絶縁性及び弾力性のある樹脂によって形成された第1の樹脂モールド部M1によって封止され、樹脂モールドされたステータ13の外周面は、モータケース10の円筒状の外周壁10b及び円板状の端壁10cの内壁面に密着されている。ロータ14は、ステータ13より内側に位置する円筒状のマグネット16と、マグネット16と車軸2との間に介装されて、モータ部3が電気的にロックされてもハブ4の回転を可能にするスリップ制御手段17と、で構成されている。
【0016】
モータケース10の軸線L方向における一端部には、軸線Lを中心としたリング状の開口部10aが形成されている。この開口部10aは、モータケース10の平坦な端面の略全体に渡って形成され、開口部10a内には、減速歯車部としての遊星歯車機構6が配置されている。
【0017】
遊星歯車機構6は、ロータ14の一部として構成されると共に、開口部10aの位置で車軸2の周囲を回転する太陽歯車21と、開口部10aの位置でモータケース10の外周壁10bの端部に形成された内歯車22と、キャリアとして機能するハブ4に軸支されると共に、太陽歯車21と内歯車22との間に配置されて、太陽歯車21及び内歯車22と噛合する4個の遊星歯車23と、を備えている(図3参照)。そして、各遊星歯車23は、ハブ4の軸線L方向における一端部からハブ4の内方に向けて軸線L方向に突出する軸部26に、軸受27を介して回転自在に取り付けられている。
【0018】
このような遊星歯車機構6では、ロータ14と一緒に太陽歯車21が回転し、太陽歯車21の周囲で遊星歯車23が公転することでハブ4が回転し、ロータ14の回転は減速されてハブ4に伝達される。そして、遊星歯車機構6は、偏平であるので、開口部10aを塞ぐように配置させることができ、ハブ4の薄型化に寄与している。
【0019】
ドラム状のハブ4は、カップ形状をなすハブ本体部4Aと、ハブ本体部4Aの開口端4aを閉鎖する偏平なカバー部4Bとからなる。ハブ本体部4Aに形成されたフランジ部4eと、カバー部4Bに形成されたフランジ部4bとを突き合わせた状態で、ネジ28により、ハブ本体部4Aとカバー部4Bとが一体化されている。そして、ハブ本体部4Aとカバー部4Bとの重なり部分には、リング状のシールゴム29が介装されている。
【0020】
さらに、軸線L方向において、ハブ本体部4Aの端部に形成された車軸突出孔4cには、車軸2に対するハブ4の回転を支持するための転がり軸受からなる第1の軸受部30が装着され、カバー部4Bの端部に形成された車軸突出孔4dには、車軸2に対するハブ4の回転を支持するための転がり軸受からなる第2の軸受部31が装着されている。そして、車軸2の一端部には、第1の軸受部30を保持する第1のナット部32が螺着され、第1の軸受部30の外輪30aがハブ4のハブ本体部4Aに当接し、第1の軸受部30の内輪30bが第1のナット部32に当接することで、第1の軸受部30の脱落を防止している。同様に、車軸2の他端部には、第2の軸受部31を保持する第2のナット部33が螺着され、第2の軸受部31の外輪31aがハブ4のカバー部4Bに当接し、第2の軸受部31の内輪31bが第2のナット部33に当接することで、第2の軸受部31の脱落を防止している。
【0021】
カバー部4Bとモータケース10の円板状の端壁10cと第2の軸受部31とで画成された空間内に円板状の回路基板7が配置され、電子部品が実装された回路基板7は、電気絶縁性及び弾力性のある樹脂によって形成された第2の樹脂モールド部M2によって封止されている。この第2の樹脂モールド部M2は、回転可能なハブ4のカバー部4Bから離間され、第2の樹脂モールド部M2の端面M2aは、モータケース10の端壁10cの外壁面に密着されている。更に、回路基板7の中央開口7a及び第2の樹脂モールド部M2の中央開口M2c内には、モータケース10の端壁10cから車軸2に沿って突出する突起部10dが挿入され、回路基板7は、モータケース10の端壁10cに接近され且つ平行に配置されている。そして、回路基板7に結線された配線34は、第2の軸受部31の内輪31bを貫通して外部に排出され、第2の軸受部31の内輪31bに形成された配線引出し孔35には、第1及び第2の樹脂モールド部M1,M2と同じ材質からなる防水性のシール材39が充填されている。
【0022】
第2の軸受部31は、外輪31aがハブ4に固定され、内輪31bが車軸2に固定されて、ハブ4を回転自在に支持し、この内輪31bは、径方向断面積がモータケース10の突起部10dの径方向断面積よりも大きく形成され、突起部10dの端面10eにナット部33によって軸線L方向から圧着されている。また、第2の樹脂モールド部M2の周縁部M2bは、軸線L方向に環状に膨出され、これによって第2の樹脂モールド部M2の拡大化が図られ、電子部品の放熱化の向上が図られている。
【0023】
この電動ハブユニット1において、第1の樹脂モールド部M1及びコア11は、モータケース10の外周壁10bに圧着され、第1の樹脂モールド部M1と第2の樹脂モールド部M2とでモータケース10の端壁10cが挟み込まれ、第2の樹脂モールド部M2の中央開口M2cを形成する壁面M2dは、突起部10dの周面に圧着されているので、ステータ13で発生した熱は第1の樹脂モールド部M1を介してモータケース10に伝達され、回路基板7上の電子部品が発生した熱は、第2の樹脂モールド部M2を介してモータケース10に伝達される。そして、モータケース10に集められた熱は、第2の軸受部31に伝達されて外部に放散されることになる。このような構成の電動ハブユニット1は、第2の軸受部31を大型化させ易く、しかも、第2の軸受部31を大型化させればさせる程、放熱効果を高めることができる。
【0024】
第2の軸受部31は、回転保持精度や耐久力を高めるために、設計上、大型化させる必要性に迫られることがあるが、本実施形態のような構成を採用することで、放熱効果の向上とハブ4の回転安定性との両立を第2の軸受部31の大型化によって達成させることができる。さらに、一般的に電子部品の耐熱性を高めると電子部品自体が大型化されてしまうが、本実施形態では、回路基板7上の電子部品の放熱性を高めているので、耐熱性の高い電子部品を使用しなくても良く、電子部品の小型化や低コスト化が可能になり、その結果、電子部品の占有スペースの縮小化が図られ、モータ部3の占有スペースの拡大化すなわちパワーアップを目的としたモータ部3の大型化を可能にする。
【0025】
また、一般的な電動ハブユニットにおけるハブは、モータ部や減速歯車部を包むように形成されている場合が多く、しかも回転しているので、従来の配線の引出し方は、車軸を貫通させるような設計が強いられていたが、本実施形態の場合、回路基板7に結線された配線34を、大型化された第2の軸受部31の内輪31bを利用して容易に外部に排出させることができ、第2の軸受部31が大型化すればするほど、配線34の引出しが容易になる。なお、この配線34は、突起部10dに形成されたスリット10fを通って配線引出し孔35から外部に導出される。
【0026】
更に、この電動ハブユニット1においては、遊星歯車機構(減速歯車部)6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とを仕切るように、軸線Lに対して垂直に配置された円板状の仕切板36が、モータケース10内で別部品として配置され、この仕切板36は、遊星歯車23を支持する軸部26の遊端に当接し、軸部26の雌ねじ部26aに螺着されたネジ37により固定されている。仕切板36の外周端は、モータケース10の外周壁10bに近接され、仕切板36の中央開口部36aには、車軸2が貫通し、中央開口部36aから太陽歯車21を突出させている。また、ネジ37は、緩み止めのためにワッシャ38を介して仕切板36に挿入されている。
【0027】
この仕切板36によって、減速歯車部6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とが分離され、モータケース10によって減速歯車部6と回路基板7とが分離されている。また、モータケース10の開口部10a内に減速歯車部6が配置されているので、ハブ4に関しては、軸線L方向即ち車幅方向の長さを短くすることができ、ハブ4を薄型化させることができる。
【0028】
この薄型化の達成のために、減速歯車部6をモータケース10内に配置させた結果として、減速歯車部6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とが接近し、歯車21,22,23の摩耗粉の影響をロータ14及びステータ13が受け易くなっているが、減速歯車部6で発生した歯車21,22,23の摩耗粉が、減速歯車部6に塗布されたグリースと一緒に飛散しても、仕切板36によって、摩耗粉がロータ14やステータ13に付着し難く、摩耗粉の噛み込みによるモータ部3の回転不良を回避させることができる。更に、回路基板7は、モータケース10内に配置された減速歯車部6から遠く離されて、モータケース10の外に配置されているので、歯車21,22,23の摩耗粉が極めて付着し難い。そして、回路基板7は、モータケース10によってコイル12から隔てられているので、コイル12から発生する熱は、モータケース10によって回路基板7に伝達し難く、回路基板7上の電子部品の寿命低下や、電子部品の誤作動を防止することができる。
【0029】
そして、遊星歯車23の回転を支持する軸部26を有効に利用することで、仕切板36をネジ37によって簡単に固定させることができる。そして、仕切板36をハブ4に固定すると、ハブ4内にモータ部3を組み付ける際に遊星歯車23が落下することがないので、ハブ4のハブ本体4A内にモータ部3を組み込む際の作業性が良好になる。また、電動ハブユニット1の内部の分解掃除の際に、ネジ37の採用によって仕切板36を容易に外すことができる。なお、仕切板36は、軸部26の遊端に溶接やカシメ等により固定されてもよい。
【0030】
次に、クラッチとして機能するスリップ制御手段17について詳細に説明する。
【0031】
図4に示すように、ロータ14は、筒状のマグネット16を有する第1のロータ部41と、車軸2に対して回転自在な第2のロータ部42と、第1のロータ部41と第2のロータ部42との間に配置されて、第1のロータ部41と第2のロータ部42とを連結する第1の摩擦板43と、第1のロータ部41を第1の摩擦板43に向けて押圧する螺旋圧縮ばね(付勢手段)44と、を備えている。ここで利用される第1の摩擦板43は、ドーナツ状に形成されると共に、両面に摩擦面を有している。
【0032】
第1のロータ部41は、マグネット16の内壁面に固定されて軸線L方向に延在する筒状のヨーク部46を有している。このヨーク部46の端部には、内側に折り曲げられて径方向に延在するドーナツ状の端壁46aが設けられている。また、第2のロータ部42は、車軸2に対して回転自在で軸線方向に延在するスリーブ47を有している。このスリーブ47は、軸受45によって車軸2に対し回転自在に保持されると共に、スリーブ47は、第1のスリーブ部48と第2のスリーブ部49との二部材により構成され、ネジ50によって連結されている。
【0033】
第1のスリーブ部48の端部には、径方向に延在するフランジ部48aが設けられ、第2のスリーブ部49の端部には、太陽歯車21が形成されている。そして、第1のスリーブ部48のフランジ部48aと第2のスリーブ部49の端部に形成されたフランジ部49aとを突き合わせて、ネジ50により第1のスリーブ部48と第2のスリーブ49とが連結されている。このようにスリーブ47を二部材により構成させることで、スリーブ47を複雑な形状にすることができる。
【0034】
スリーブ47に設けられたフランジ部48aとヨーク部46の端壁46aとの間に第1の摩擦板43が挟み込まれている。そして、ヨーク部46と第1のスリーブ部48との間に形成された空間で車軸2の軸線L方向に巻回された螺旋圧縮ばね44は、第1のスリーブ部48に対して軸線L方向に移動自在な可動筒体51及び第2の摩擦板52を介して、軸線L方向でヨーク部46を第1の摩擦板43に向かって押圧している。
【0035】
可動筒体51は、ヨーク部46と第1のスリーブ部48とで形成された空間において螺旋圧縮ばね44の内側で軸線L方向に延在すると共に、スプライン係合部54を介して第1のスリーブ部48に連結されている。なお、可動筒体51と第1のスリーブ部48とは、軸線L方向に延在するキーにより連結されていてもよい。また、可動筒体51の端部にフランジ部51aが形成され、可動筒体51のフランジ部51aとヨーク部46の端壁46aとで第2の摩擦板52が挟みこまれている。そして、可動筒体51のフランジ部51aは、螺旋圧縮ばね44によってヨーク部46の端壁46aに向かって押圧されている。ここで利用されるドーナツ状の第2の摩擦板52は、ヨーク部46の端壁46aを介して第1の摩擦板43に対向して配置されると共に、第1の摩擦板43と同一のものが利用されている。
【0036】
また、螺旋圧縮ばね44の一端は、可動筒体51のフランジ部51aに当接され、螺旋圧縮ばね44の他端は、第1のスリーブ部48にワッシャ56を介して保持されたリング体57によって支持されている。このような螺旋圧縮ばね44は、付勢力により第1及び第2の摩擦板43,52に適切な摩擦力を発生させることに寄与している。
【0037】
この電動ハブユニット1においては、モータ部3が通常に回転している場合、第1のロータ部41と第2のロータ部42との間に配置されている第1の摩擦板43が、第1のロータ部41と第2のロータ部42とを付勢力により発揮される摩擦力により連結させ、第1のロータ部41と第2のロータ部42とが一体的に回転する。また、第1のロータ部41とステータ13の間にゴミなどの異物が挟まって第1のロータ部41がロックされてしまった場合でハブ4が回転し続けようとしても、第1の摩擦板43の摩擦力に抗して第2のロータ部42を回転させることができるので、第2のロータ部42とハブ4とを連結している遊星歯車機構6は回転することができ、遊星歯車機構6が破損する事態を回避させることができる。また、車輪がロックされてしまった場合で第1のロータ部41が回転し続けようとしても、第1の摩擦板43の摩擦力に抗して第1のロータ部41を回転させることができるので、モータ部3に多大な負荷をかけるような事態をも回避させることができる。
【0038】
また、電動ハブユニット1では、マグネットの磁力を増幅させることができるヨーク部46を、第1のロータ部41の構成の一部として有効利用を図っている。
【0039】
また、電動ハブユニット1では、スリーブ47のフランジ部48aとヨーク部46の端壁46aとの間に第1の摩擦板43が配置され、ヨーク部46の端壁46aと可動筒体51のフランジ部51aとの間に第2の摩擦板52が配置され、2枚の摩擦板43,52でヨーク部46の端壁46aを挟み込むようにしているので、一定の摩擦力を発揮させるにあたって、1枚の摩擦板を利用する場合に比べてそれぞれの摩擦板43,52の摩擦力を低減させることができので、摩擦力を発現させる螺旋圧縮ばねのばね力を小さくでき、螺旋圧縮ばね44の線径を小さくすることができる。これによって、可動筒体51とヨーク部46との間で螺旋圧縮ばね44が配置される占有スペースを小さくすることができる。
【0040】
他の実施形態として、図5に示すように、電動ハブユニット1Aおいて、回路基板7の裏面(電子部品が実装される面の反対側の面)には、アルミ等の非導電性金属からなるドーナツ状の放熱板25が圧着され、この放熱板25は、モータケース10の端壁10cの外壁面に圧着されている。この放熱板25の採用により、回路基板7上の電子部品が発生した熱を、モータケース10の端壁10cに伝達させ易くしている。
【0041】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、付勢手段として皿ばねなどの利用も可能である。
【符号の説明】
【0042】
1,1A…電動ハブユニット 2…車軸 3…モータ部 4…ハブ 6…減速歯車部(遊星歯車機構) 7…回路基板 10…モータケース 11…鉄心(コア) 12…コイル 13…ステータ 14…ロータ 41…第1のロータ部 42…第2のロータ部 43…第1の摩擦板 44…螺旋圧縮ばね(付勢手段) 46…ヨーク部 46a…端壁 47…スリーブ 48…第1のスリーブ部 48a…フランジ部 49…第2のスリーブ部 51…可動筒体 51a…フランジ部 52…第2の摩擦板 L…軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の軸線を中心に回転するハブ内に、ロータ及びステータを有するモータ部と、前記ロータと前記ハブとを連結し、前記ロータの回転を減速して前記ハブに伝達する減速歯車部と、が内蔵されてなる電動ハブユニットにおいて、
前記ロータは、
前記ステータに対向する第1のロータ部と、
前記車軸に対して回転自在な第2のロータ部と、
前記第1のロータ部と前記第2のロータ部との間に配置されて、前記第1のロータ部と前記第2のロータ部とを連結する第1の摩擦板と、
前記第1のロータ部を前記第1の摩擦板に押圧する付勢手段と、を備えたことを特徴とする電動ハブユニット。
【請求項2】
前記第1のロータ部は、筒状のマグネットと、前記マグネットの内壁面に固定されて軸線方向に延在する筒状のヨーク部とを有し、
前記第2のロータ部は、前記車軸に対して回転自在で軸線方向に延在するスリーブを有し、
前記第1の摩擦板は、前記スリーブに設けられたフランジ部と前記ヨーク部の端部との間に挟み込まれ、
前記付勢手段は、前記ヨーク部と前記スリーブとの間で前記車軸の軸線方向に巻回された螺旋圧縮ばねであると共に、軸線方向で前記ヨーク部を前記第1の摩擦板に向かって押圧することを特徴とする請求項1記載の電動ハブユニット。
【請求項3】
前記スリーブに対して軸線方向に移動自在な可動筒体は、前記スリーブと前記ヨーク部との間で軸線方向に延在し、
前記可動筒体の端部と前記ヨーク部の前記端部との間には、前記第1の摩擦板に対向して第2の摩擦板が配置され、
前記螺旋圧縮ばねによって軸線方向で前記可動筒体を前記第2の摩擦板に向かって押圧することを特徴とする請求項2記載の電動ハブユニット。
【請求項4】
前記ロータ及び前記ステータを包囲するモータケースの端部には、
前記スリーブの端部に形成されて前記車軸の周囲を回転する太陽歯車と、
前記モータケースの前記端部の内壁面に形成された内歯車と、
キャリアとして機能する前記ハブに軸支されると共に、前記太陽歯車と前記内歯車との間に配置されて、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛合する遊星歯車と、からなる前記減速歯車部としての遊星歯車機構が配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の電動ハブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156912(P2011−156912A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18409(P2010−18409)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】