説明

電動パワーステアリング装置

【課題】車輪回転速度が設計的に持つ誤差に起因するセルフアライニングトルクの誤推定による制御異常出力を防止することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段31と、車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段32と、操舵トルクの異常を検出したときに、第1のトルク指令値に代えて第2のトルク指令値をモータ制御手段に出力する異常時切換手段34と備えている。第2のトルク指令値演算手段32は、車輪回転速度に基づいて推定したセルフアライニングトルク推定値に不感帯を設定し、不感帯反映後のセルフアライニングトルクに基づいて第2のトルク指令値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいて、運転者の操舵負担を軽減する操舵補助力をステアリング機構に付与する電動モータを備える電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング装置として、運転者がステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
この種の電動パワーステアリング装置では、搭載対象車両が大型化することにより、電動パワーステアリング装置の高出力化が進み、モータトルクが増大すると共に大電流化が加速している。
このように、電動パワーステアリング装置の高出力化が進むと、電動パワーステアリング装置を停止させた状態での手動操舵時に必要な操舵トルクが大きくなって、操舵が困難となる状況となっている。
【0003】
従来、操舵トルクセンサ等の異常が発生した場合、電動パワーステアリング装置を停止させて安全を確保するようにしていたが、上述したように手動操舵に必要な操舵トルクが大きくなりすぎて操舵が困難となっているため、操舵トルクセンサ等の異常が発生した場合でも電動モータを駆動制御して操舵補助力の発生を継続することが望まれている。
そこで、操舵トルクセンサが故障した場合に、操舵トルク推定手段で車速信号と操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定し、推定した操舵トルクに基づいて電動機を駆動制御するようにした電動パワーステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、車速信号と操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定しているため、この推定した操舵トルクからは運転者の手放しなどの操舵状態を正しく認識することができない。そのため、このようにして推定したそうだトルクに基づいて電動モータを駆動制御すると、ステアリングホイールが勝手に切込んでしまうなど運転者の意に反する操舵状態となり、運転者に違和感を与えてしまう。しかも、路面状況を考慮しないで操舵トルクを推定しているので、路面摩擦係数が低い等、トルク推定モデルで考慮されていない状態に陥ると、正しく操舵トルクを推定できなくなる。
【0005】
そこで、車輪回転速度を用いて路面から実際に発生した路面反力すなわちセルフアライニングトルクを推定し、当該セルフアライニングトルクを考慮することで、適度な操舵補助力を発生するようにした電動パワーステアリング装置がある(例えば、特許文献2参照)。
ここでは、セルフアライニングトルク推定とは別に車輪回転速度及びモータ回転角センサから得られたモータ角度よりセルフアライニングトルクを計算し、セルフアライニングトルク推定値とセルフアライニングトルク計算値との比較によりセルフアライニングトルクの誤推定を防ぐようにしている。また、車輪回転速度より駆動輪スリップを推定することで駆動輪スリップ時におけるセルフステアを防ぐようにしている。さらに、車速とモータ回転角センサから得られたモータ角速度に応じた制御出力制限を行うことで、セルフステアや制御異常出力を確実に防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3390333号公報
【特許文献2】特開2010−18268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、車輪回転速度を用いてセルフアライニングトルクを推定しているが、車輪回転速度センサの設計的誤差、ノイズ、分解能によってはセルフアライニングトルクを誤推定してしまうおそれがある。このように、セルフアライニングトルクの誤推定が生じると、セルフステアや制御異常出力を防ぐことができず、適切な操舵補助力を発生させることができない。
そこで、本発明は、車輪回転速度が設計的に持つ誤差に起因するセルフアライニングトルクの誤推定による制御異常出力を防止することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、 ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記操舵トルク検出手段の異常を検出するトルク検出部異常検出手段と、車両の車輪回転速度を検出する車輪回転速度検出手段と、前記電動モータのモータ回転情報を検出するモータ回転情報検出手段と、前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段と、前記トルク検出部異常検出手段で前記トルク検出手段の異常を検出したときに、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて、前記第2のトルク指令値演算手段を選択して前記モータ制御手段に第2のトルク指令値を出力する異常時切換手段と、を備え、前記第2のトルク指令値演算手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて、前記ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定し、セルフアライニングトルク推定値として出力するセルフアライニングトルク推定手段と、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度が持つ誤差に起因して前記セルフアライニングトルク推定手段でセルフアライニングトルクが誤推定される領域を、前記セルフアライニングトルク推定値の不感帯として当該セルフアライニングトルク推定値をゼロとする不感帯設定手段と、該不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて前記第2のトルク指令値を演算することを特徴としている。
【0009】
このように、操舵トルク検出手段の異常を検出したときには、異常時切換手段で第1のトルク指令値演算手段に代えて第2のトルク指令値演算手段を選択することにより、車輪回転速度に基づいて推定したセルフアライニングトルクを考慮して操舵補助力を発生させることができる。したがって、操舵トルク検出手段の異常を検出した後も、操舵に必要な操舵補助制御を継続させることができる。また、車輪回転速度に基づいてセルフアライニングトルクを推定するので、ステアリング機構の路面から伝達されるセルフアライニングトルクを適切に検出することができる。また、アンチロックブレーキシステム等で使用されている車輪回転速度検出手段を利用してセルフアライニングトルクを推定することができるので、部品点数の増加を抑制してコストを低減することができる。
【0010】
さらに、セルフアライニングトルク推定値に不感帯を設けるので、車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度が設計的に持つ誤差に起因したセルフアライニングトルクの誤推定によって不正なアシスト出力がなされるのを防止することができる。このように、セルフアライニングトルクの推定精度を向上することができる、不正出力によって車両が運転者の意図しない挙動となるのを防止し、適切な操舵補助制御を行うことができる。
【0011】
また、上記において、前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値を、当該セルフアライニングトルク推定値の絶対値が小さくなる方向にオフセットして出力することを特徴としている。
これにより、不感帯領域から不感帯領域外へ変化した際のアシストの変動を無くす(あるいは抑制する)ことができる。このように、アシストをスムーズに出力することができるので、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0012】
さらに、上記において、前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値をそのまま出力することを特徴としている。
これにより、不感帯領域外において、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値が過少となることを防止し、アシスト出力を極力保つことができる。
【0013】
また、上記において、前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値の変化率に上限を設けるレートリミット処理を行うことを特徴としている。
これにより、不感帯領域から不感帯領域外へ変化した際のアシストの変動を無くし(あるいは抑制し)、アシストをスムーズに出力することができると共に、不感帯領域外において、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値が過少となることを防止し、アシスト出力を極力保つことができる。
【0014】
さらにまた、上記において、前記不感帯設定手段は、車輪回転速度、車速、モータ角速度、操舵角度の何れかに応じて前記不感帯の幅を変更することを特徴としている。
このように、車両走行状態や操舵状態に応じて不感帯の幅を設定するので、より確実に不正出力を防止することができる。
また、上記において、前記不感帯設定手段は、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて演算した前記第2のトルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御したときの車両挙動が、所望の車両挙動となるように、前記不感帯の幅を設定することを特徴としている。
これにより、不正出力により車両が運転者の意図しない挙動となることを防止することができ、安定した操舵補助制御を行うことができる。
【0015】
さらにまた、上記において、前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度、前記操舵トルク検出手段が正常であるときに検出した操舵トルク及び前記モータ回転情報検出手段で検出した前記モータ回転情報の少なくとも一つに基づいて前記車輪回転速度の異常を検出する車輪回転速度異常検出手段と、該車輪回転速度異常検出手段で前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記異常時切換手段で前記第2のトルク指令値を選択するときに、当該第2のトルク指令値を制限する異常時指令値制限手段と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
このように、車輪回転速度、正常時の操舵トルク、モータ回転情報の少なくとも一つに基づいて上記車輪回転速度の異常を検出するので、テンパタイヤ等の異径タイヤ装着等により左右の車輪回転速度に差が発生している場合には、これを異常として確実に検出することができる。そして、上記車輪回転速度の異常を検出した場合には、異常時切換手段によって第2のトルク指令値演算手段の第2のトルク指令値が選択されたときに、第2のトルク指令値を制限するので、第2のトルク指令値によるセルフステアの発生や制御異常出力を抑制することができる。
【0017】
また、上記において、前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該第2のトルク指令値の出力を停止させるように構成されていることを特徴としている。
このように、第2のトルク指令値の異常を検出した場合、第1のトルク指令値演算手段が選択されるときに、第2の指令値の出力を停止させるので、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
【0018】
さらに、上記において、前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、前記第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した左右車輪回転速度差に基づいて制限するように構成されていることを特徴としている。
このように、車輪回転速度の異常を検出した場合に、第2のトルク指令値を車輪回転速度検出手段で検出した左右車輪回転速度差に基づいて制限するので、左右車輪回転速度差に応じて第2のトルク指令値を制限することにより、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
【0019】
また、上記において、前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該異常を検出する前の第2のトルク指令値を第2のトルク指令値として設定するように構成されていることを特徴としている。
このように、車輪回転速度の異常を検出したときに、異常を検出する前の第2のトルク指令値を第2のトルク指令値として設定するので、異常が発生する前の第2のトルク指令値に基づいて操舵補助制御を継続することができ、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
【0020】
さらにまた、上記において、前記第2のトルク指令値演算手段は、前記不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値にゲインを乗算して前記第2のトルク指令値を演算するゲイン調整手段をさらに備えることを特徴としている。
このように、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値にゲインを乗算して第2のトルク指令値を演算するので、車両の操舵状態や走行状態に応じてゲインを設定することにより、第2のトルク指令値を適正化することができる。
【0021】
また、上記において、前記第2のトルク指令値演算手段は、前記ゲイン調整手段で演算した第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方とモータ角速度演算手段で算出したモータ角速度との少なくとも一方に基づいて制限するトルク制限手段をさらに備えることを特徴としている。
このように、ゲイン調整後の第2のトルク指令値を車速及びモータ角速度の少なくとも一方に基づいて制限することにより、高車速領域や高モータ角速度領域での制御異常出力を抑制することができる。
【0022】
さらに、上記において、前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルクとに基づいて切増し状態、切り戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態であるかを判定し、操舵状態の判定結果に基づいて操舵状態感応ゲインを調整する操舵状態ゲイン調整手段を有することを特徴としている。
これにより、操舵状態に応じた最適な操舵状態感応ゲインを調整することができ、操舵状態に応じて最適な第2のトルク指令値を算出することができる。
【0023】
また、上記において、前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方に基づいて車速感応ゲインを調整する車速ゲイン調整手段を有することを特徴としている。
これにより、車速に応じて車速感応ゲインを調整することができるので、車両の操舵フィーリングを向上させることができる。
【0024】
さらに、上記において、前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度とに基づいて演算したセルフアライニングトルク演算値と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値との偏差に基づいてセルフアライニングトルクゲインを調整するセルフアライニングトルクゲイン調整手段を有することを特徴としている。
【0025】
このように、セルフアライニングトルク設定手段で、モータ回転情報と車輪回転速度とに基づいて算出したセルフアライニングトルク演算値とセルフアライニングトルク推定値との偏差に基づいてセルフアライニングトルクゲインを設定するので、車輪回転速度に基づいて算出されるセルフアライニングトルク推定値に誤差が生じた場合に、その誤差を抑制することができる。
【0026】
また、上記において、前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて駆動輪スリップ状態を推定し、推定した駆動輪スリップ状態に基づいて駆動輪スリップ感応ゲインを調整する駆動輪スリップゲイン調整手段を有することを特徴としている。
これにより、駆動輪スリップがセルフアライニングトルク推定値に影響を与える場合に、この駆動輪スリップの影響を抑制することができる。
【0027】
さらに、上記において、前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定する車両横滑り角推定手段を有し、該車両横滑り角推定手段で推定した車両横滑り角に基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴としている。
このように、車輪回転速度に基づいて車両の車両横滑り角を推定し、推定した車両横滑り角に基づいてセルフアライニングトルクを推定するので、車両の走行状態を加味してより正確なセルフアライニングトルクを推定することができる。
【0028】
また、上記において、前記車両横滑り角推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定し、推定した車両横滑り角をモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報に基づいて補正するように構成されていることを特徴としている。
このように、車両の車輪回転速度に基づいて車両の横滑り角を推定し、推定した横滑り角をモータ回転情報に基づいて補正するので、車両の操舵状況に基づいてより正確な横滑り角を推定することができる。
【0029】
さらにまた、上記において、前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度とモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報とに基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴としている。
このように、車両の左右の車輪回転速度とモータ回転情報とに基づいてセルフアライニングトルクを推定するので、車両の操舵状況に応じたより正確なセルフアライニングトルクを推定することができる。
【0030】
また、上記において、前記異常時切換手段は、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて前記第2のトルク指令値演算手段を選択する場合に、前記第1のトルク指令値から前記第2のトルク指令値に徐々に変化させることを特徴としている。
このように、第1のトルク指令値から第2のトルク指令値への切換え時にトルク指令値を徐々に変化させるので、電動モータで発生させる操舵補助力の急変を防止して、安定した操舵補助状態を継続することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、第2のトルク指令値演算手段で、車輪回転速度に基づいてセルフアライニングトルクを推定し、推定したセルフアライニングトルクに基づいてトルク指令値を演算するので、操舵トルク検出手段の故障後も、第2のトルク指令値演算手段で演算したトルク指令値を用いて運転者に違和感のない操舵補助制御を継続することができる。しかも、セルフアライニングトルク推定値に不感帯を設けるので、車輪回転速度が設計的に持つ誤差に起因するセルフアライニングトルクの誤推定による制御異常出力を防止することができる。このように、セルフアライニングトルクの推定精度を向上し、より安定した操舵補助制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係るコントローラの具体例を示すブロック図である。
【図3】コントローラを構成するセルフアライニングトルク推定部の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】横滑り角算出マップを示す特性線図である。
【図5】セルフアライニングトルク初期推定値算出マップを示す特性線図である。
【図6】実際のセルフアライニングトルクに対するセルフアライニングトルク初期推定値のヒステリシス特性を示す特性線図である。
【図7】車輪回転速度に基づくセルフアライニングトルク推定値(車輪回転速度誤差なし)を示す図である。
【図8】車輪回転速度に基づくセルフアライニングトルク推定値(車輪回転速度誤差あり)を示す図である。
【図9】SAT推定値不感帯SATDBの設定例を示す図である。
【図10】SAT推定値の不感帯特性の設計例を示す図である。
【図11】SAT推定値の不感帯特性の設計例を示す図である。
【図12】SAT推定値の不感帯特性の設計例を示す図である。
【図13】操舵状態ゲイン設定部の具体的構成を示すブロック図である。
【図14】操舵状態ゲイン設定部に適用する操舵状態感応ゲイン算出マップを示す特性線図である。
【図15】車速感応ゲイン設定部に適用する車速感応ゲイン算出マップを示す特性線図である。
【図16】セルフアライニングトルクゲイン計算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図17】セルフアライニングトルクゲイン計算部に適用するセルフアライニングトルクゲイン算出マップを示す特性線図である。
【図18】駆動輪スリップゲイン設定部の具体的構成を示すブロック図である。
【図19】駆動輪スリップゲイン設定部に適用する駆動輪スリップゲイン算出マップを示す特性線図である。
【図20】制御出力制限値計算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図21】車輪回転速度異常検出部で実行する車輪回転速度異常検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図22】車輪回転速度制限値演算部で実行する車輪回転速度制限値演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図23】車輪回転速度制限値算出マップを示す特性線図である。
【図24】車速制限値演算部で使用する車速制限値算出マップを示す特性線図である。
【図25】モータ角速度制限値演算部で使用するモータ角速度制限値算出用マップを示す特性線図である。
【図26】トルクセンサ異常検出部で実行するトルクセンサ異常検出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図27】マイクロコンピュータで実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図28】第2の実施形態を示すコントローラの具体例を示すブロック図である。
【図29】制御出力制限値計算部の具体的構成を示すブロック図である。
【図30】車輪回転速度制限値演算部で実行する車輪回転速度制限値演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図31】車輪回転速度制限値算出マップを示す特性線図である。
【図32】第3の実施形態におけるセルフアライニングトルク推定部で実行するセルフアライニングトルク選択処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。ステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
【0034】
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8で車両幅方向の直進運動に変換されて左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって転舵輪WL,WRを転舵させる。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速機構11と、この減速機構11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
【0035】
また、減速機構11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
【0036】
そして、操舵トルクセンサ14から出力される操舵トルク検出値Tは、図2に示すように、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、操舵トルクセンサ14からのトルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速Vs、電動モータ12に流れるモータ電流Iu〜Iw及びレゾルバ、エンコーダ等で構成されるモータ回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θ及び車輪回転速度センサ18L,18Rで検出した車両の左右の車輪回転速度VwL及びVwRも入力される。
【0037】
コントローラ15では操舵トルクセンサ14が正常である状態では、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vsに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる電流指令値としての第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する。そして、算出した操舵補助トルク指令値Iref1に対して、回転角θに基づいて算出するモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいて各種補償処理を行ってから電動モータ12を駆動制御する。
【0038】
一方、操舵トルクセンサ14が異常であるときには、左右の従動輪の車輪回転速度VwL及VwRに基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、この第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて電動モータ12を駆動制御する。
すなわち、コントローラ15は、図2に示すように、モータ回転角センサ17で検出したモータ角度θに基づいてモータ角速度ω及びモータ角加速度αを演算する回転情報演算部20と、操舵補助トルク指令値Irefを演算する操舵補助トルク指令値演算部21と、この操舵補助トルク指令値演算部21で演算したトルク指令値Irefを補償する指令補償値Icomを算出するトルク指令値補償部22と、操舵補助トルク指令値演算部21で演算した操舵補助トルク指令値Irefとトルク指令値補償部22で算出した指令補償値Icomとを加算して補償後操舵補助トルク指令値Iref′を算出する加算器23と、この加算器23から出力される補償後操舵補助トルク指令値Iref′に基づいてモータ電流を生成して電動モータ12を駆動制御するモータ駆動回路24とで構成されている。
【0039】
回転情報演算部20は、モータ角度信号センサ200と、モータ角速度演算部201と、モータ角加速度演算部202とを備えている。
モータ角度信号センサ200は、モータ回転角センサ17で検出したモータ回転角検出信号に基づいてモータ角度θを演算する。モータ角速度演算部201は、モータ角度信号センサ200で演算したモータ角度θを微分してモータ角速度ωを算出する。モータ角加速度演算部202は、モータ角速度演算部201で算出したモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する。
【0040】
また、操舵補助トルク指令値演算部21は、第1の操舵補助トルク指令値演算部31と、第2の操舵補助トルク指令値演算部32と、トルクセンサ異常検出部33と、異常時切換手段としての指令値選択部34と、レートリミッタ35とを備えている。
第1の操舵補助トルク指令値演算部31は、操舵トルクセンサ14から入力される操舵トルクTと車速センサ16から入力される車速Vsとに基づいて、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を演算する。この第1の操舵補助トルク指令値演算部31は、トルク指令値算出部311と、位相補償部312と、センタ応答性改善部としての微分器313と、加算器314とを備えている。
【0041】
トルク指令値算出部311は、操舵トルクT及び車速Vsをもとに、図2中に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して、電流指令値である操舵補助トルク指令値Irefbを算出する。位相補償部312は、トルク指令値算出部311から出力される操舵補助トルク指令値Irefbの位相補償を行って位相補償値Irefb′を算出する。微分器313は、操舵トルクセンサ14から入力される操舵トルクTに基づいてステアリング中立付近の制御の応答性を高め、滑らかでスムーズな操舵を実現するように、操舵トルクTを微分演算処理してセンタ応答性改善指令値Irを出力する。このようにして、アシスト特性不感帯での安定性確保、静摩擦の補償を行う。加算器314は、位相補償部312の位相補償出力と微分器313から出力されるセンタ応答性改善指令値Irとを加算し、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する。
【0042】
ここで、トルク指令値算出部311で参照する操舵補助トルク指令値算出マップは、図2中に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助トルク指令値Irefbをとると共に、車速Vsをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成する。
【0043】
また、第2の操舵補助トルク指令値演算部32は、左右の車輪回転速度を検出する車輪回転速度センサ18から入力される車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて、第2の操舵補助トルク指令値Iref2を演算する。この第2のトルク指令値演算部32は、セルフアライニングトルク推定部(SAT推定部)32Aと、SAT不感帯反映部32A´と、ゲイン調整手段としてのゲイン調整部32Bと、異常時指令値制限手段としてのトルク制限部32Cとで構成されている。
【0044】
セルフアライニングトルク推定部32Aは、ステアリング機構に路面から伝達されるセルフアライニングトルクSATを推定する。SAT不感帯反映部32A´は、セルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルクSATに不感帯を設定し、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBを出力する。ゲイン調整部32Bは、SAT不感帯反映部32A´から出力される不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに対してゲインを乗算し、トルク制限部32Cは、ゲイン調整部32Bでゲイン調整したセルフアライニングトルクを制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。
【0045】
図3は、セルフアライニングトルク推定部32Aの具体的構成を示すブロック図である。
車両横滑り角推定部321は、左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて車両横滑り角βを推定する。先ず、駆動輪となる後輪の車輪回転速度センサ18RL及び18RRで検出された車輪回転速度VwRL及びVwRRに基づいて下記(1)式の演算を行って、車速に応じた左右の車輪回転速度差ΔVwRを算出する。
ΔVwR=(VwRL−VwRR)/{(VwRL+VwRR)/2} ………(1)
【0046】
次いで、算出した車輪回転速度差ΔVwをもとに図4に示す車両横滑り角算出マップを参照して車両横滑り角βを推定する。車両横滑り角算出マップは、図4に示すように、横軸に車輪回転速度差ΔVwRをとり、縦軸に車両横滑り角βをとった実車の測定値から求められる特性線図で表され、車輪回転速度差ΔVwがゼロ近傍であるときには、比較的緩やかな勾配となり、これより車輪回転速度差ΔVwが大きくなると比較的急峻な勾配となる特性曲線Lが設定されている。
【0047】
また、セルフアライニングトルク推定部32Aの角度変化量演算部322は、モータ角度θに基づいて角度変化量Δθを算出し、これを増幅器323に出力する。増幅器323は、角度変化量Δθに滑り角補正ゲインKslpを乗算し、滑り角補正値Aslpを算出する。加算器324は、増幅器323で算出した滑り角補正値Aslpを車両横滑り角推定部321で推定した横滑り角βに加算して、タイヤ捩じり量による補正を行なう。
【0048】
そして、セルフアライニングトルク演算部325は、この加算器324の加算出力に基づいてセルフアライニングトルク初期推定値SATiを演算する。ここでは、加算器324から出力される車両横滑り角βをもとに、図5に示すセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出する。
このセルフアライニングトルク初期推定値算出マップは、図5に示すように、横軸に車両横滑り角βをとり、縦軸にセルフアライニングトルク初期推定値SATiをとった実車の測定値から求められる特性線図で表され、車速相当値Vs′をパラメータとして車速相当値Vs′が大きな値となるに応じて傾斜角が大きくなる線形区間Lsとこの線形区間Lsの両端から延長する飽和区間Laとでなる特性線が設定されている。
【0049】
ところで、セルフアライニングトルク演算部325で算出するセルフアライニングトルク初期推定値SATiと、実際に車両に生じるセルフアライニングトルクSATとの関係は、図6で破線図示のように、比較的大きなヒステリシス特性を有することになる。このヒステリシス特性を補正するために、加算器327は、セルフアライニングトルク初期推定値SATiに増幅器326で算出したヒステリシス補正値Ahysを加算する。ヒステリシス補正値Ahysは、モータ角速度ωを増幅して算出する。これにより、ヒステリシス特性がモータ角速度すなわち舵角速度に応じて補正されることになり、図6の実線図示のように、ヒステリシス特性の幅を狭くしてより正確なセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出することができる。
【0050】
加算器327の加算出力は、ローパスフィルタ328でノイズが除去された後、セルフアライニングトルク初期推定値SATi′として位相補正部331に入力される。位相補正部331には、平均値算出部330の算出結果も入力される。平均値算出部330は、加算器329で算出した車輪回転速度VwL及びVwRの加算値の1/2を、車速相当値Vs′として算出するものである。
【0051】
位相補正部331は、車速相当値Vs′に基づいてセルフアライニングトルク初期推定値SATi′の位相補正を行って、セルフアライニングトルク推定値SATを算出するものであり、定常ゲイン=1の一時遅れフィルタ(1/T1s+1)で構成されている。ここで、sはラプラス演算子、T1は時定数であって、この時定数T1は車速相当値Vs′に応じて設定される。
【0052】
また、図2のSAT不感帯反映部32A´は、セルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルク推定値SATに不感帯を設け、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBを出力する。ここでは、車輪回転速度センサ18の設計的誤差、ノイズ、分解能による車輪回転速度が持つ誤差(以下、単に車輪回転速度誤差という)に起因してセルフアライニングトルクが誤推定される領域を、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯として設定する。
【0053】
車輪回転速度誤差がない場合、車輪回転速度センサ18L及び18Rで検出された車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて推定されるセルフアライニングトルクは、図7に示すように滑らかな特性曲線を描く。一方、車輪回転速度誤差がある場合、車輪回転速度センサ18L及び18Rで検出された車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて推定されるセルフアライニングトルクは、図8に示すように誤推定されてしまう。このセルフアライニングトルクの誤推定は、図8の矢印で示すように、左右車輪回転速度差ΔVwが零である直進走行時など、トルクの小さい領域で出やすい。これは、出力が小さいために誤差の比率が高くなることなどに起因すると考えられる。
【0054】
SAT不感帯反映部32A´は、先ず、この車輪回転速度誤差に起因したセルフアライニングトルクの誤推定が発生する領域が、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯となるようにSAT推定値不感帯SATDBを設定する。SAT推定値不感帯SATDBは、不感帯の幅すなわち不感帯特性を決定するものである。すなわち、−SATDB≦SAT≦SATDBとなる領域がセルフアライニングトルク推定値SATの不感帯となって、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBが“0”となる。
ここでは、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯特性を、車輪回転速度VwFL〜VwRR、車速Vs、モータ角速度ω、モータ角度θ(推定操舵角θ)の何れかに応じて変化させるものとする。
【0055】
図9は、SAT推定値不感帯SATDBの設定例を示す図である。この図9において、横軸は車速Vs、縦軸はSAT推定値不感帯SATDBである。この図9に示すように、SAT推定値の不感帯特性は、車速Vsが0から設定値Vsaまでの間ではSAT推定値不感帯SATDBが比較的小さい値で一定となり、車速Vsが設定値Vsaを超えて設定値Vsbに達するまでの間は、車速Vsの増加に応じて比較的急な勾配でSAT推定値不感帯SATDBが増加し、車速Vsが設定値Vsbを超えると、車速Vsの増加に応じて比較的緩やかな勾配でSAT推定値不感帯SATDBが増加するように設定されている。すなわち、車速Vsが速いほど不感帯の幅が広く設定される。
【0056】
SAT推定値不感帯SATDBの設定方法としては、車両が運転者の意図しない挙動となることを防ぐために、車両のフリクション以下となるように(不正出力によりハンドルが回らないように)設計する方法や、不正出力を運転者が手で押えられる不正出力となるように設計する方法を採用する。
なお、ここでは車速Vsに応じてSAT推定値不感帯SATDBを設定する場合についてのみ示したが、車輪回転速度VwFL〜VwRR、モータ角速度ω、モータ角度θ(推定操舵角θ)に応じて設定する場合にも、同様の設定方法を用いる。
【0057】
また、ここでは常時、車両の走行状態や操舵状態を監視することでSAT推定値不感帯SATDBを可変とする場合について説明したが、SAT推定値不感帯SATDBは予め設定した固定値としてもよい。この場合、予め車輪回転速度誤差を算出(検出)してSAT推定値不感帯SATDBを決定しておく。
【0058】
次に、SAT不感帯反映部32A´は、設定したSAT推定値不感帯SATDBを用いて、セルフアライニングトルク推定値SATに対して不感帯を反映した後のセルフアライニングトルクIref2DBを出力する。ここでは、SAT誤推定に起因する不正出力を防止すると共に、アシストをスムーズに出力するようなセルフアライニングトルクIref2DBを出力するように、不感帯特性を設計する。
図10は、SAT推定値の不感帯特性の設計例を示す図である。この図10において、破線はセルフアライニングトルク推定値(設計値)、実線は不感帯反映後のセルフアライニングトルクである。このように、−SATDB≦SAT≦SATDBである場合にはIref2DB=0として不正出力を確実に防止する。
【0059】
そして、SAT<−SATDBである場合にはIref2DB=SAT+SATDBとし、SAT>−SATDBである場合にはIref2DB=SAT+SATDBとする。すなわち、不感帯以外の領域では、セルフアライニングトルク推定値SATを、当該セルフアライニングトルク推定値SATの絶対値が小さくなる方向にSAT推定値不感帯SATDB分だけオフセットして出力する。これにより、不感帯領域から不感帯以外の領域への変化時にセルフアライニングトルクIref2DBをスムーズに変化させることができるので、アシストをスムーズに出力することができる。
【0060】
なお、ここでは、セルフアライニングトルク推定値SATのオフセット値をSAT推定値不感帯SATDB相当とする場合について説明したが、当該オフセット値はSAT推定値不感帯SATDBよりも小さい値であってもよい。この場合にも、不感帯領域から不感帯以外の領域への変化時におけるセルフアライニングトルクIref2DBの変動を抑えることができるので、アシストを比較的スムーズに出力することができる。
【0061】
また、不感帯特性の設計方法としては、図10に示すようにセルフアライニングトルク推定値をオフセットさせる方法に限定されるものではなく、車両としての要求に合わせて適宜設定するようにする。
例えば、図11に示すように、不感帯部分のみアシスト出力を制限する(零とする)ようにしてもよい。すなわち、不感帯以外の領域では、セルフアライニングトルク推定値SATをそのまま不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBとして出力するようにしてもよい。これにより、不正出力を防止することができると共に、アシスト出力を極力保つことができる。
【0062】
また、図12に示すように、不感帯部分のみ出力を制限する(零とする)と共に、不感帯から不感帯以外へのアシスト出力の急な変化を制限するようにしてもよい。すなわち、不感帯以外の領域では、不感帯設定後のセルフアライニングトルクIref2DBの変化率に上限を設けるレートリミット処理を行うようにしてもよい。これにより、不正出力を防止することができると共に、アシスト出力を極力保つことができ、且つアシストをスムーズに出力することができる。
図2に戻って、ゲイン調整部32Bは、操舵状態ゲイン調整部36、車速ゲイン調整部37、セルフアライニングトルクゲイン調整部38、及び駆動輪スリップゲイン調整部39を有する。
【0063】
操舵状態ゲイン調整部36は、操舵状態ゲイン設定部(切り増し/切り戻し/保舵操舵ゲイン設定部)36Aと、ゲイン乗算部36Bとで構成されている。操舵状態ゲイン設定部36Aは、セルフアライニングトルク推定部32Aから出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT及びモータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωを入力し、これらに基づいて切増し状態、切戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態かを検出し、検出した操舵状態に応じた操舵状態ゲインK0を設定する。そして、ゲイン乗算部36Bは、操舵状態ゲイン設定部36Aで設定した操舵状態ゲインK0を、SAT不感帯反映部32A´から出力される不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに乗算し、ゲイン倍指令値Iref21を出力する。
【0064】
ここで、操舵状態ゲイン設定部36Aは、図13に示すように、セルフアライニングトルク推定値SATとモータ角速度ωとに基づいて、切増し状態、切戻し状態及び保舵状態を判定する操舵状態判定部361と、この操舵状態判定部361の判定結果とモータ角速度ωとに基づいて操舵状態ゲインK0を算出する操舵状態ゲイン算出部362とを有する。
【0065】
操舵状態判定部361は、セルフアライニングトルク推定値SATの符号とモータ角速度ωの符号が一致するときに切増し状態であると判定し、セルフアライニングトルク推定値SATの符号とモータ角速度ωの符号が不一致であるときに切戻し状態であると判定する。また、モータ角速度ωの絶対値|ω|が設定値ωt以下であるときには保舵状態であると判定する。
【0066】
操舵状態ゲイン算出部362は、入力される操舵状態及びモータ角速度ωに基づいて図14に示す操舵状態ゲイン算出マップを参照して操舵状態ゲインK0を算出する。操舵ゲイン算出マップは、図14に示すように、操舵状態が保舵状態であるときには、モータ角速度ωの値にかかわらず所定ゲインK0hを維持するように特性線Lhが設定されている。一方、操舵状態が切増し状態であるときには、モータ角速度ωが零から所定値ω1迄の間で所定ゲインK0hより大きいな値の所定ゲインK0iを維持し、モータ角速度ωが所定値ω1を超えるとモータ角速度ωの増加に伴ってゲインが比較的大きな勾配で増加するように特性線Liが設定されている。さらに、操舵状態が切戻し状態であるときには、モータ角速度ωが零から所定値ω1迄の間で所定ゲインK0hより小さな値の所定ゲインK0dを維持し、モータ角速度ωが所定値ω1を超えるとモータ角速度ωの増加に伴ってゲインが比較的小さな勾配で減少するように特性線Ldが設定されている。
【0067】
図2の車速ゲイン調整部37は、車速感応ゲイン算出部37Aと、ゲイン乗算部37Bとで構成されている。車速ゲイン算出部37Aは、入力される車速Vsに基づいて、図15に示す車速感応ゲイン算出マップを参照して車速感応ゲインK1を算出する。
ここで、車速感応ゲイン算出マップは、車速Vsが零から所定値Vs1迄の間では所定値Kvを維持し、車速Vsが所定値Vs1を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的大きな勾配でゲインが減少し、車速Vsが所定値Vs1より大きい所定値Vs2を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的小さな勾配でゲインが減少するように特性線Lvが設定されている。
【0068】
そして、ゲイン乗算部37Bは、車速感応ゲイン算出部37Aで算出された車速感応ゲインK1を、操舵状態ゲイン調整部36から出力されるゲイン倍指令値Iref21に乗算してゲイン倍指令値Iref22を出力する。
セルフアライニングトルクゲイン調整部38は、セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aと、ゲイン乗算部38Bとで構成されている。セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aは、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出して補正ゲインK2を設定する。そして、ゲイン乗算部38Bは、セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aで設定されたセルフアライニングトルクゲインK2を、ゲイン倍指令値Iref22に乗算してゲイン倍指令値Iref23を出力する。
【0069】
ここで、セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aは、図16に示す構成を有する。この図16において、セルフアライニングトルク演算部381は、車輪回転速度センサ18から入力される4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRとモータ角度θとに基づいて、車両モデルを用いてセルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。
すなわち、セルフアライニングトルク演算部381は、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRの平均値を車速Vsとして算出すると共に、モータ角度θを推定操舵角θとして、車両諸元定数を下記(2)式で表される車両モデルとなる車両横方向の運動方程式(状態方程式)に代入し、下記(3)式で表されるセルフアライニングトルク演算値算出式(出力式)を用いることで、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。
【0070】
【数1】

【0071】
車両諸元定数
m:車両質量
I:車両慣性モーメント
lf:車両重心点と前軸間の距離
lr:車両重心点と後軸間の距離
Kf:前輪タイヤのコーナリングパワー
Kr:後輪タイヤのコーナリングパワー
V:車速
N:オーバーオール舵角比
θ:推定操舵角
δf:実舵角(δf=θ/N)
β:車両重心点の横滑り角
γ:ヨーレート
ε:トレール
【0072】
【数2】

【0073】
また、減算器382は、前述したセルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルク推定値SATからセルフアライニングトルク演算部381で算出したセルフアライニングトルク演算値SAToを減算する。絶対値演算部383は、減算器382の減算出力を絶対値化してセルフアライニングトルク偏差ΔSAT(=|SAT−SATo|)を算出する。ゲイン算出部384は、絶対値演算部383で算出したセルフアライニングトルク偏差ΔSATに基づいて、図17に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照し、セルフアライニングトルクゲインK2を算出する。
【0074】
ここで、セルフアライニングトルクゲイン算出マップは、図17に示すように、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|が0から設定値ΔSAT1迄の間ではセルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|の増加に応じて比較的緩やかな勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少し、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSAT1を超えて設定値ΔSAT2に達するまでの間は比較的急な勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少し、設定値SAT2を超えると、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|の増加に応じて比較的緩やかな勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少するように特性線Lsが設定されている。
【0075】
図2の駆動輪スリップゲイン調整部39は、駆動輪スリップ推定部39Aと、ゲイン乗算部39Bとで構成されている。駆動輪スリップ推定部39Aは、車輪回転速度センサ18で検出された車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて駆動輪スリップゲインK3を設定する。そして、ゲイン乗算部39Bは、駆動輪スリップ推定部39Aで設定された駆動輪スリップゲインK3を、ゲイン倍指令値Iref23に乗算してゲイン倍指令値Iref24を出力する。
【0076】
ここで、駆動輪スリップ推定部39Aは、図18に示す構成を有する。この図18において、加算部391は、前輪の左右車輪回転速度VwFL及びVwFRを加算する。乗算器392は、加算部391の加算出力に2分の1を乗算して前輪平均値VwFを算出する。また、加算部393は、後輪の左右車輪回転速度VwRL及びVwRRを加算する乗算器394は、加算部393の加算出力に2分の1を乗算して後輪平均値VwRを算出する。そして、減算部395は、乗算器392から出力される前輪平均値VwFから乗算器394から出力される後輪平均値VwRを減算し、駆動輪車輪回転速度偏差ΔVwを算出する。
【0077】
この減算部395から出力される駆動輪車輪回転速度偏差ΔVwは、絶対値回路396で絶対値化され、その駆動輪車輪回転速度偏差の絶対値|ΔVw|に基づいて、ゲイン算出部397は駆動輪スリップ感応ゲインK3を算出する。
ここで、ゲイン算出部397は、入力される駆動輪車輪回転速度偏差の絶対値|ΔVw|に基づいて、図19に示す駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップ感応ゲインK3を算出する。この駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップは、駆動輪車輪回転速度偏差の絶対値|ΔVw|が0から増加するに応じて駆動輪スリップゲインK3が徐々に減少するように折れ線状の特性線Lwが設定されている。
【0078】
また、図2のトルク制限部32Cは、制御出力制限値計算部40と、リミッタ部41とを備えている。リミッタ部41は、制御出力制限値計算部40で計算された出力制限値Limでゲイン倍指令値Iref24を制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を出力する。
ここで、制御出力制限値計算部40は、図20に示すように、車輪回転速度異常検出部40a、車輪回転速度制限値演算部40b、車速制限値演算部40c及びモータ角速度制限値演算部40dを備えている。
【0079】
車輪回転速度異常検出部40aは、車速Vs、操舵トルクT、モータ角速度ω及び4輪の車輪回転速度VwFL,VwFR,VwRL,VwRRに基づいて車輪回転速度センサ18の異常を検出し、異常を検出したときに“0”の異常制限値Limaを設定する。
すなわち、車輪回転速度異常検出部40aでは、図21に示す車輪回転速度異常検出処理を実行する。この車輪回転速度異常検出処理は、先ず、ステップS1で、後述するトルクセンサ異常検出処理で、操舵トルクセンサ14の異常を表すトルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているか否かを判定し、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているときには、車輪回転速度異常検出処理の信頼性が低いものと判断してそのまま処理を終了する。
【0080】
一方、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされているときには、ステップS2に移行して、車速Vsが車両直進状態を判定可能な速度に設定された閾値Vssを超えているか否かを判定する。このとき、Vs≦Vssであるときには異常判定ができないものと判断してステップS3に移行し、異常判定フラグFlgaを車輪回転速度異常無しを表す“0”に設定するとともに、ゲイン倍トルク指令値Iref24を制限しないために、車輪回転速度制限値Limaを最大値Limamaxに設定する。そして、これを制限値選択部40eに出力してから異常判定処理を終了する。一方、Vs>Vssであるときには、直進状態の判定可能と判断してステップS4に移行する。
【0081】
ステップS4では、操舵トルクTの絶対値が車両直進状態を判断可能な閾値Ts未満であるか否かを判定する。そして、T≧Tsであるときには操舵トルクTが大きく操舵状態又は保舵状態であり、異常判定ができないものと判断して前記ステップS3に移行する。一方、T<Tsであるときには、車両が直進走行状態である可能性が高いものと判断してステップS5に移行する。
【0082】
ステップS5では、モータ角速度ωの絶対値が車両直進走行を判断可能な閾値ωs未満であるか否かを判定する。そして、|ω|≧ωsであるときには異常判定ができないものと判断して前記ステップS3に移行し、|ω|<ωsであるときには、車両が直進走行状態であると判断してステップS6に移行する。
ステップS6では、各車輪回転速度VwFL〜VwRRの内の前後における左右の回転速度差ΔVwF及びΔVwRの絶対値が予め設定した閾値ΔVwsを超えているか否かを判定する。そして、ΔVwF≦ΔVws且つΔVwR≦ΔVwsであるときには、車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断して前記ステップS3に移行する。一方、ΔVwF>ΔVws又はΔVwR>ΔVwsであるときには、4輪のうちの1つにテンパタイヤ等の異径タイヤが装着されているか又は車輪回転速度センサ自体が異常となっており、車輪回転速度VwFL〜VwRRの何れか1つが異常であるものと判断してステップS7に移行する。
【0083】
このステップS7では、異常判定フラグFlgaを車輪回転速度の異常を表す“1”に設定するとともに、車輪回転速度制限値Limaを“0”に設定する。そして、これを制限値選択部40eに出力してから車輪回転速度異常検出処理を終了する。
この図21の処理において、ステップS2、ステップS4〜ステップS6の処理が車輪回転速度異常検出手段に対応し、ステップS7の処理と制限値選択部40e及びリミッタ部41が異常時指令値制限手段に対応している。
【0084】
また、図20の車輪回転速度制限値演算部40bは、例えば後輪駆動車を対象として、モータ角速度ω及び車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいて、左右の一方が雪路、凍結路等の低摩擦係数路面で、他方が乾燥路等の高摩擦係数路面である所謂スプリットμ路を走行する場合のように外乱による車輪回転速度の異常を検出するものであり、図22に示す車輪回転速度制限値演算処理を実行する。
【0085】
この車輪回転速度制限値演算処理は、図22に示すように、先ず、ステップS11で、モータ角速度ωの絶対値がステアリングホイール1が操舵されている状態を判断可能な閾値ωs2未満であるか否かを判定する。そして、|ω|≧ωs2であるときには、ステアリングホイール1が操舵されている状態であり、車輪回転速度の異常判定ができず車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であるものと判断してステップS12に移行する。
ステップS12では、車輪回転速度制限値Limwを最大値Limwmaxに設定してからステップS13に移行し、ステップS13で、車輪回転速度制限値Limwを制限値選択部40eに出力してから車輪回転速度制限値演算処理を終了する。
【0086】
一方、前記ステップS11で|ω|<ωs2であると判定した場合には、ステップS14に移行して、従動輪である前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFが保舵状態を判断する閾値ΔVwFs2未満であるか否かを判定する。そして、|ΔVwF|≧ΔVwFs2であるときには、ステアリングホイール1が内外輪回転速度差を有する保舵状態であると判断してステップS15に移行する。
【0087】
ステップS15では、駆動輪となる後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が外乱による異常を判断する閾値ΔVwRs2未満であるか否かを判定する。そして、|ΔVwR|≧ΔVwR2であるときには、後輪側についても左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が大きく内外輪回転速度差を有する保舵状態であると判断し、各車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断して前記ステップS12に移行する。
【0088】
また、前記ステップS15の判定結果が、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるときには、後輪側の車輪回転速度VwRL及びVwRRの何れかが例えば前述したスプリットμ路を走行した場合のように外乱によって車輪回転速度が変化しているものと判断してステップS16に移行する。
ステップS16では、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRと閾値ΔVwRs2又は、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFと閾値ΔVwFs2との偏差ΔVwの絶対値に基づいて、図23に示す車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Linwを算出してから前記ステップS13に移行する。
【0089】
ここで、車輪回転速度制限値算出マップは、図23に示すように、横軸に左右車輪回転速度差ΔVwの絶対値をとり、縦軸に車輪回転速度制限値Limwをとった特性線図で構成される。ここでは、左右車輪回転速度差ΔVwの絶対値が“0”から所定値ΔVw1までの間は車輪回転速度制限値Limwが制御出力を制限しない最大値Limwmaxを維持し、左右車輪回転速度差ΔVwの絶対値が所定値ΔVw1を超えると左右車輪回転速度差ΔVmの絶対値が増加するに応じて車輪回転速度制限値Limwが最大値Limwmaxから徐々に減少して最終的に車輪回転速度制限値Limwが“0”となる折れ線状の特性線Lwが設定されている。
【0090】
また、前記ステップS14で、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であると判断した場合には、直進走行状態であると判断してステップS17に移行する。
ステップS17では、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が外乱による異常を判断する閾値ΔVwRs2を超えているか否かを判定する。そして、左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるときには、外乱による車輪回転速度の変化がない正常状態であると判断して前記ステップS12に移行する。
【0091】
一方、駆動輪となる後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2を超えているときには、後輪側の車輪回転速度VwRL及びVwRRの少なくとも一方に外乱の影響があるものと判断して前記ステップS16に移行する。
この図22の処理において、ステップS11、S14、S15及びS17の処理が車輪回転速度異常検出手段に対応し、ステップS16の処理と制限値選択部40e及びリミッタ部41とが異常時指令値制限手段に対応している。
【0092】
また、図20の車速制限値演算部40cは、車速Vsに基づいて、図24に示す車速制限値算出マップを参照して車速制限値Limvを算出する。
ここで、車速制限値算出マップは、車速Vsが零から所定値Vs3に達するまでの間は最大制限値Limmaxを維持し、車速Vsが所定値Vs3を超えると車速Vsの増加に応じて徐々に車速制限値Limvが減少し、さらに車速Vsが所定値Vs4を超えるとより大きな減少量で減少する折れ線状の特性線Lv1が設定されている。
【0093】
さらに、図20のモータ角速度制限値演算部40dは、モータ角速度ωに基づいて、図25に示すモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度制限値Limmを算出する。
ここで、モータ角速度制限値算出マップは、モータ角速度ωが零から運転者の操舵又は路面反力によって発生する設定角速度ω2に達する迄の間は最大制限値Limmaxを維持し、モータ角速度ωが設定角速度ω2を超えると、モータ角速度ωの増加に伴って比較的大きな勾配でモータ角速度制限値Limmが減少する特性線Lωが設定されている。
【0094】
また、図20の制限値選択部40eは、異常制限値Limaが入力されているときにはこの異常制限値Limaを制御出力制限値Limとしてリミッタ部41に出力し、異常制限値Limaが入力されていないときには、車輪回転速度制限値Limw、車速制限値Limv及びモータ角速度制限値Limmを比較して何れか小さい値を制御出力制限値Limとしてリミッタ部41に出力する。
【0095】
図2に戻って、トルクセンサ異常検出部33は、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTを入力し、この操舵トルクTに基づいて図26に示すトルクセンサ異常検出処理を実行して操舵トルクセンサ14の異常を検出する。
このトルクセンサ異常検出処理では、先ず、ステップS21で、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTを読込み、次いでステップS22に移行して、ステップS21で読込んだ操舵トルクTが操舵トルクセンサ異常検出条件を満足するか否かを判定する。この操舵トルクセンサ異常検出条件としては、車両の走行時に所定時間以上変化しない状態が継続した場合、操舵トルクTが予め設定した天絡による異常設定値を超えた状態が所定時間以上継続した場合、操舵トルクTが予め設定した地絡による異常閾値未満の状態を所定時間以上継続した場合等が挙げられる。
【0096】
そして、ステップS22で、トルクセンサ異常検出条件を満足していない(操舵トルクセンサ14が正常である)と判断した場合には、ステップS23に移行する。そして、ステップS23で、トルクセンサ異常検出フラグFlgを“0”にリセットしてからトルクセンサ異常検出処理を終了する。
一方、ステップS22で、トルクセンサ異常検出条件を満足している(操舵トルクセンサ14が異常である)と判断した場合には、ステップS24に移行する。そして、ステップS24で、トルクセンサ異常検出フラグFlgを“1”にセットしてからトルクセンサ異常検出処理を終了する。
【0097】
また、図2の指令値選択部34は、トルクセンサ異常検出部33から出力される異常検出信号に基づいて、第1の操舵補助トルク指令値Iref1及び第2の操舵補助トルク指令値Iref2の何れかを選択する。
具体的には、トルクセンサ異常検出部33で設定されるトルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされているときには、前述した第1のトルク指令値演算部31で演算した第1の操舵補助トルク指令値Iref1を選択する。一方、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているときには、前述した第2のトルク指令値演算部32で演算した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を選択する。
【0098】
そして、選択した第1の操舵補助トルク指令値Iref1又は第2の操舵補助トルク指令値Iref2をトルク指令値Irefとし、このトルク指令値Irefをレートリミッタ35に供給する。レートリミッタ35は、指令値選択部34で選択した指令値の急激な変化を抑制してから後述する加算器23に出力する。
また、指令値補償部22は、収斂性補償部43と、慣性補償部44とを少なくとも有する。収斂性補償部43は、回転情報演算部20のモータ角速度演算部201で演算されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償するものである。すなわち、収斂性補償部43は、モータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωに収斂性制御ゲインKcを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
【0099】
また、慣性補償部44は、回転情報演算部20のモータ角加速度演算部202で演算されたモータ角加速度αに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して、慣性感又は制御応答性の悪化を防止するものである。この慣性補償部44は、慣性補償値Iiを算出する。
そして、慣性補償部44で算出された慣性補償値Iiと収斂性補償部43で算出された収斂性補償値Icとが加算器45で加算されて、指令補償値Icomが算出される。この指令補償値Icomは、加算器23で前述した操舵補助トルク指令値演算部21から出力される操舵補助トルク指令値Irefに加算され、補償後操舵補助トルク指令値Iref′が算出される。この補償後操舵補助トルク指令値Iref′は、モータ駆動回路24へ出力される。
【0100】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、操舵トルクセンサ14が正常状態であるものとする。この場合、操舵補助トルク指令値演算部21に設けられたトルクセンサ異常検出部33において、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTがトルクセンサ異常検出条件を満足しないことにより、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされ、このトルクセンサ異常検出フラグFlgが指令値選択部34に出力される。このため、指令値選択部34は第1の操舵補助トルク指令値演算部31から出力される第1の操舵補助トルク指令値Iref1を選択する。したがって、この第1の操舵補助トルク指令値Iref1がレートリミッタ35で変化量が制限されて、操舵補助トルク指令値Irefとして加算器23に出力される。
【0101】
このとき、車両が停止しており、運転者がステアリングホイール1を中立位置として操舵していない状態であるとすると、第1の操舵補助トルク指令値Iref1は“0”となる。また、電動モータ12も停止しているため、指令値補償部22から出力される指令補償値Icomも“0”となる。そのため、加算器23から出力される補償後操舵補助トルク指令値Iref′も“0”となる。したがって、モータ駆動回路24から出力されるモータ駆動電流も“0”を継続して、電動モータ12は停止状態を継続する。
【0102】
この車両の停車状態で、ステアリングホイール1を操舵して所謂据え切りを行うと、これに応じて操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが比較的大きな値となることにより、第1の操舵補助トルク指令値演算部31で算出される操舵補助トルク指令値Iref1が操舵トルクTに応じて急増する。なお、この状態でも電動モータ12は停止しているため、指令補償値Icomは“0”である。そのため、加算器23から操舵補助トルク指令値Irefがそのまま補償後操舵補助トルク指令値Iref′としてモータ駆動回路24に出力される。
したがって、モータ駆動回路24から補償後操舵補助トルク指令値Iref′に応じたモータ駆動電流Iref″が電動モータ12に出力されて、この電動モータ12が回転駆動され、操舵トルクTに応じた操舵補助力を発生する。これにより、運転者は軽い操舵トルクで転舵輪WL,WRを転舵することができる。
【0103】
また、車両を発進させた場合には、車速センサ16で検出した車速Vsの増加に応じて、第1の操舵補助トルク指令値演算部31におけるトルク指令値算出部311で算出される操舵補助トルク指令値Irefbが減少する。このように、車両の走行状態に応じた最適な操舵補助トルク指令値Iref1が設定されて、車両の走行状態に応じた最適な操舵補助制御が行われる。
【0104】
この最適な操舵補助制御が行われている最中に、制御出力制限値計算部40の車輪回転速度異常検出部40aは車輪回転速度センサ18の異常検出を行う。この車輪回転速度異常検出部40aでは、車速Vsが閾値Vssを超えており、操舵トルクTの絶対値が閾値Ts未満であり、モータ角速度ωの絶対値が閾値ωs未満であるとき、車両の直進走行条件が成立したと判断する。そして、この直進走行条件が成立したときに、|ΔVwF|<ΔVwFs及び|ΔVwR|<ΔVwRsであるとき、すなわち各車輪回転速度VwFL〜VwRRがVwFL≒VwFR≒VwRL≒VwRRであるときに、各車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断して異常判定フラグFlgaを“0”とする。
【0105】
一方、この回転速度差ΔVwF(又はΔVwR)の絶対値が閾値ΔVwFs(又はΔVwRs)を超えている場合には、左右の車輪の一方にテンパタイヤ等の異径タイヤが装着されていて回転速度差を生じているか、車輪回転速度センサ自体が異常となっており、検出された車輪回転速度VwFL〜VwRRに信頼性がないものと判断して異常判定フラグFlgaを“1”にセットする。
しかしながら、異常判定フラグFlgaが“1”にセットされた場合でも、操舵トルクセンサ14が正常である場合には、指令値選択部34が第2の操舵補助トルク指令値Iref2を選択することはないので、第1の操舵補助トルク指令値Iref1に基づく最適な操舵補助制御が継続される。
【0106】
ところが、車両の走行中に、操舵トルクセンサ14が異常状態となると、このトルクセンサ異常検出部33でトルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされる。すると、指令値選択部34で第1の操舵補助トルク指令値Iref1に代えて第2の操舵補助トルク指令値Iref2が選択され、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいた操舵補助制御に切り換わる。
このとき、制御出力制限値計算部40の車輪回転速度異常検出部40aで、車輪回転速度センサ18から出力される車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であることが検出されているときには、この車輪回転速度異常検出部40aから出力される車輪回転速度異常制限値Limaが制御出力を制限しない最大値Limamaxに設定される。
【0107】
また、第2の操舵補助トルク指令値演算部32では、車輪回転速度センサ18L及び18Rで検出した車輪回転速度VwL及びVwRをもとに推定されたセルフアライニングトルク推定値SATに基づいて、第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。このとき、セルフアライニングトルク推定値SATには、SAT不感帯反映部32A’で不感帯が設定される。
【0108】
そして、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに対して、ゲイン調整部32Bでゲイン調整処理を行うとともに、トルク制限部32Cでトルク制限処理を行うことにより、セルフアライニングトルクSATを考慮した第2の操舵補助トルク指令値Iref2が算出される。この第2の操舵補助トルク指令値Iref2には、加算器23で指令補償値Icomが加算され、補償後操舵補助トルク指令値Iref′となってモータ駆動回路24に供給される。このように、操舵トルクセンサ14が異常状態となった場合には、セルフアライニングトルクSATを考慮した操舵補助力を発生させ、操舵補助制御を継続することができる。
【0109】
車両の車速Vsが速い場合には、左右の車輪回転速度VwFL及びVwFRの差が大きな値となることから、前記(1)式で算出される車輪回転速度差ΔVwFが大きな値となる。そのため、これに応じて、セルフアライニングトルク初期推定部321で図4の横滑り角算出マップを参照して算出される横滑り角βが大きな値となり、図5のセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照して算出されるセルフアライニングトルク初期推定値SATiも比較的大きい値となる。このセルフアライニングトルク初期推定値SATiがローパスフィルタ328でローパス処理され、位相補正部331で車速相当値Vs′による位相補正が行なわれることにより、車両走行時にステアリングギヤ機構8のラック軸に路面から入力されるセルフアライニングトルクSATを適切に推定することができる。
【0110】
ところで、車輪回転速度センサ18から出力される車輪回転速度VwL〜VwRは、上述したように設計的な誤差を持つため、車輪回転速度センサ18から出力された車輪回転速度VwL〜VwRをそのまま用いると、セルフアライニングトルクSATが誤推定されてしまう。そのため、操舵トルクセンサ14が異常状態となった場合に、誤推定されたセルフアライニングトルクSATをもとに操舵補助力を発生させる操舵補助制御を行うと、不正出力となって車両が運転者の意図しない挙動となってしまう。
【0111】
このため、車輪回転速度誤差に起因してセルフアライニングトルクの誤推定が生じる領域を、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯として設定する。これにより、例えば直進時などでセルフアライニングトルクの誤推定が生じた場合には、SAT不感帯反映部32A’で不感帯を反映することで、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBが“0”に設定され、その結果、第2の操舵補助トルク指令値Iref2も“0”となる。
【0112】
したがって、操舵トルクセンサ14が異常状態となって、指令値選択部34で第2の操舵補助トルク指令値Iref2が選択された場合には、モータ駆動回路24には、それまでの電動モータ12の駆動状態に応じたトルク指令値補償部22からの指令補償値Icomのみが供給される。すなわち、セルフアライニングトルク推定値SATに不感帯を設けることで、セルフアライニングトルクの誤推定により第2の操舵補助トルク指令値Iref2が不正な値となるのを防止し、不正なアシスト出力を防止することができる。
【0113】
このように上記第1の実施形態によると、操舵トルクセンサ14が異常状態となったときに、路面からの反力を考慮した第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて電動モータ12を駆動制御する。これにより、電動モータ12で路面からの反力に応じた操舵補助力を発生することができ、操舵トルクセンサ14が異常となった後も操舵に必要な操舵補助制御を継続することができる。また、路面からの反力を考慮しているので、路面摩擦係数が低い降雨路、凍結路、積雪路等を走行する場合でも、操舵角の変化に応じて最適な操舵補助力を発生させることができる。
さらに、他のアンチロックブレーキシステムに使用される車輪回転速度センサ18RL及び18RRを使用してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出するので、部品点数の増加を抑制して、コストを低減することができる。
【0114】
また、第2の操舵補助トルク指令値Iref2の算出に際し、セルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルクSATに対して不感帯を設け、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに応じて第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。そして、その不感帯は、車輪回転速度センサ18の設計的誤差、ノイズ、分解能によってセルフアライニングトルクSATの誤推定が出やすい領域に設定する。そのため、適切に不正アシスト出力を防止することができる。
【0115】
ところで、操舵トルクセンサ14が正常な状態で、直進走行状態となっているときに、前述した制御出力制限値計算部40における車輪回転速度異常検出部40aで、テンパタイヤなどの異径タイヤを装着したり、車輪回転速度センサ18を構成する各センサの少なくとも1つに異常が発生したりした場合には、車輪回転速度センサ18から出力される車輪回転速度VwFL〜VwRRの少なくとも1つが異常値となる。このため、第2の操舵補助トルク指令値演算部32で、これら車輪回転速度VwFL〜VwRRを異常値のまま使用して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出すると、当該第2の操舵補助トルク指令値Iref2の信頼性が低下してしまう。
【0116】
そこで、制御出力制限値計算部40における車輪回転速度異常検出部40aでは、車輪回転速度センサ18の異常を検出した場合には、車輪回転速度異常制限値Limwを“0”に設定する。これにより、制限値選択部40eで“0”の車輪回転速度異常制限値Limwが選択されて制限値Limとしてリミッタ部41に供給されることにより、このリミッタ部41で、第2の操舵補助トルク指令値Iref2が“0”に制限される。このため、モータ駆動回路24には、それまでの電動モータ12の駆動状態に応じたトルク指令値補償部22からの指令補償値Icomのみが供給され、電動モータ12の回転速度が低下し、これに応じて指令補償値Icomも減少するので、やがて電動モータ12の駆動が停止され、操舵補助制御が停止される。
【0117】
このように、制御出力制限値計算部40の車輪回転速度異常検出部40aで、操舵トルクセンサ14が正常な状態にあるときに、車両が直進走行状態となる毎に車輪回転速度センサ18で検出される車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常を検出するので、この車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常が検出されている状態で、トルクセンサ異常検出部33で、操舵トルクセンサ14の異常を検出したときには、車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいて算出される第2の操舵補助トルク指令値Iref2が“0”に制限されることにより、電動モータ12の駆動が停止されて、操舵補助制御が停止される。
このため、異常となった車輪回転速度に基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2が算出されることによる、セルフステアリングの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
【0118】
また、車輪回転速度センサ18が正常な状態であっても、前述したスプリットμ路を走行する状態となったり、アンチロックブレーキシステムが作動して車輪回転速度が制限された状態となったりすることにより、外乱によって車輪回転速度VwFL〜VwRRが一時的に変化した場合にも、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に影響を与えることになる。
そこで、制御出力制限値計算部40における車輪回転速度制限値演算部40bで、図22に示す車輪回転速度制限処理を常時実行している。このとき、直進走行状態である場合及び定常円旋回状態である場合には、モータ角速度ωの絶対値が閾値ωs2未満となる。このため、図22の車輪回転速度制限処理において、ステップS11からステップS14に移行し、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であるか否かを判定する。
【0119】
ここで、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2以上であるときには、保舵状態で定常円旋回をしているものと判断してステップS15に移行して、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRが閾値ΔVwRs2以上であるときには、前輪側及び後輪側がともに閾値以上の左右車輪回転速度差を生じており、定常円旋回を行っている保舵状態であって、各車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断してステップS12に移行する。このため、車輪回転速度制限値Limwとして制御出力を制限しない最大値Limwmaxを設定し、この車輪回転速度制限値Limwを制限値選択部40eに出力する。したがって、車輪回転速度制限値Limwによってゲイン倍指令値Iref24が制限されることはなく、リミッタ部41からゲイン倍指令値iref24がそのまま第2の操舵補助トルク指令値Iref2として出力される。
【0120】
ところが、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2以上であって、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2未満である状態では、従動輪となる前輪側では内外輪差を有する保舵状態を表し、駆動輪となる後輪側では直進走行状態を表すことになるので、例えば後輪側の内輪側となる車輪が低摩擦係数路面を走行し、外輪側となる車輪が高摩擦係数路面を走行して、低摩擦係数路面を走行する内輪側駆動輪に車輪スリップを生じて該当する車輪の車輪回転速度VwRL又はVwRRが変化しているものと判断することができる。
【0121】
したがって、ステップS15からステップS16に移行して、後輪の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値と閾値ΔVwR2との偏差ΔVwの絶対値に基づいて図17の車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limwを算出する。このとき、後輪の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2に近い値であって所定値ΔVw1未満であるときには車輪回転速度制限値Limwがゲイン倍指令値Iref24を制限しない最大値Limwmaxに設定される。
【0122】
しかしながら、後輪の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値と閾値ΔVwRs2との偏差ΔVwの絶対値が所定値ΔVw1を超えると、そのときの偏差ΔVwの絶対値に応じて最大値Limwmaxより小さい車輪回転速度制限値Limwが算出される。この車輪回転速度制限値Limwは制限値選択部40eに供給される。そして、制限値選択部40eは、車輪回転速度制限値Limwが車速制限値Limvより小さいときに、この車輪回転速度制限値Limwを制限値Limとして選択して、リミッタ部41に供給する。
【0123】
したがって、リミッタ部41から車輪回転速度制限値Limwによってゲイン倍指令値Iref24を制限した第2の操舵補助トルク指令値Iref2が出力される。これによって、外乱による車輪回転速度の変化の影響を軽減して、セルフステアリングや制御異常出力を確実に防止することができる。
また、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFが閾値ΔVwFs2より小さく、直進走行状態と判断された状態で、駆動輪となる後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs3以下であるときには、車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断される。
【0124】
一方、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFが閾値ΔVwFs2より地いたく、直進走行状態と判断された状態で、駆動輪となる後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs3を超えている場合には、後輪の旋回内輪側(又は外輪側)の車輪が低摩擦係数路面を走行し、外輪側(又は内輪側)の車輪が高摩擦係数路面を走行することにより、低摩擦係数路面側の車輪で車輪スリップが生じて該当する車輪回転速度が増加しているものと判断してステップS16に移行する。
このため、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値と閾値ΔVwRs3との偏差ΔVwの絶対値に基づいて図17の車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limwを算出し、算出した車輪回転速度制限値Limwを制限値選択部40eに出力する。
【0125】
したがって、車輪回転速度制限値Limwが一番小さい値であるときに、この車輪回転速度制限値Limwが選択されて、出力制限値Limとしてリミッタ部41に出力される。これによって、リミッタ部41からゲイン倍指令値Iref24が車輪回転速度制限値Limwによって制限された値が第2の操舵補助トルク指令値Iref2として出力され、指令値選択部34を介してモータ駆動回路24に出力される。このため、外乱によって車輪回転速度に異常が生じても、電動モータ12が車輪回転速度制限値Limwで制限された第2の操舵補助トルク指令値Iref2で回転駆動されて、セルフステア及び制御異常出力を確実に防止しながら操舵補助制御を継続することができる。
【0126】
なお、上記第1の実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コントローラ15として、マイクロコンピュータを適用して、回転情報演算部20、操舵補助トルク指令値演算部21、指令値補償部22の機能を全てソフトウェアで処理することもできる。この場合の処理としては、マイクロコンピュータで図27に示す操舵補助制御処理を実行するようにすればよい。
【0127】
ここで、操舵補助制御処理は、図27に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS31で、操舵トルクセンサ14、車速センサ16、回転角センサ17、車輪回転速度センサ18等の各種センサの検出値を読込む。次いでステップS32に移行して、前述した図21に示す車輪回転速度異常検出処理を実行する。次いでステップS33に移行して、前述した図26に示すトルクセンサ異常検出処理で設定されたトルクセンサ異常検出フラグFlgを読込み、このトルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているか否かを判定する。
【0128】
トルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされている場合には、ステップS34に移行し、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされている場合にはステップS45に移行する。
ステップS34では、操舵トルクTをもとに前述した操舵補助トルク指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値Irefbを算出してからステップS35に移行する。
【0129】
ステップS35では、算出した操舵補助トルク指令値Irefbに対して位相補償処理を行って位相補償後操舵補助トルク指令値Irefb′を算出する。次いでステップS36に移行して、操舵トルクTを微分してセンタ応答性改善指令値Irを算出する。次いでステップS37に移行して、位相補償後操舵補助トルク指令値Irefb′にセンタ応答性改善指令値Irを加算して第1の操舵補助トルク指令値Iref1(=Irefb′+Ir)を算出し、これを操舵補助トルク指令値Iref1としてRAM等の記憶装置のトルク指令値記憶領域に更新記憶してからステップS38に移行する。
【0130】
このステップS38では、モータ角度θを微分してモータ角速度ωを算出し、次いでステップS39に移行して、モータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する。次いでステップS40に移行して、収斂性補償部43と同様にモータ角速度ωに車速Vsに応じて設定された補償係数Kcを乗算して収斂性補償値Icを算出してからステップS41に移行する。
【0131】
このステップS41では、慣性補償部44と同様に、モータ角加速度αに基づいて慣性補償値Iiを算出する。次いでステップS42に移行して、RAM等の記憶装置のトルク指令値記憶領域に記憶された操舵補助トルク指令値IrefにステップS40及びS41で算出した収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiを加算することで補償後操舵補助トルク指令値Iref′を算出し、ステップS43に移行する。
このステップS43では、算出した補償後操舵補助トルク指令値Iref′に対して最大値制限処理を行なって制限後操舵補助トルク指令値Iref″を算出し、次いでステップS44に移行して、算出した制限後操舵補助トルク指令値Iref″をモータ駆動回路24に出力して、電動モータ12を駆動する。
【0132】
一方、前記ステップS23の判定結果が、センサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているときには、操舵トルクセンサ14が異常であると判断してステップS45に移行して、図21の車輪回転速度異常検出処理で設定された異常判定フラグFlgaを読み込む。このとき、異常判定フラグFlgaが“1”であるときには、車輪回転速度センサ18が異常であると判断してステップS46に移行し、操舵補助制御を停止させてから操舵補助制御処理を終了する。
【0133】
また、前記ステップS45の判定結果が、異常判定フラグFlgaが“0”にリセットされているときには、車輪回転速度センサ18が正常であると判断してステップS47に移行し、従動輪となる前輪の車輪回転速度VwFL及びVwFRに基づいて前記(1)式の車輪回転速度差ΔVwFを算出する。そして、算出した車輪回転速度差ΔVwFに基づいて図4に示す横滑り角算出マップを参照して、車両の横滑り角βを算出する。次に、算出した横滑り角βに基づいて図5に示すセルフアライニングトルク算出マップを参照して、セルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出する。そして、このセルフアライニングトルク初期推定値SATiをローパスフィルタ処理及び位相補正処理してセルフアライニングトルク推定値SATを算出する。
【0134】
次いで、ステップS48に移行して、車輪回転速度VwFL〜VwRR、車速Vs、モータ角速度ω、モータ角度θ(推定操舵角θ)の何れかに応じて、車輪回転速度誤差に起因したセルフアライニングトルクの誤推定が発生する領域が、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯となるようにSAT推定値不感帯SATDBを設定する。このとき、例えば車速Vsに応じてSAT推定値不感帯SATDBを設定する場合には、図9に示すマップを参照してSAT推定値不感帯SATDBを設定する。
【0135】
次いで、ステップS49に移行して、セルフアライニングトルク推定値SATに対してSAT推定値不感帯SATDBを反映し、不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBを算出する。不感帯反映方法としては、図10に示すように不感帯以外の領域でセルフアライニングトルク推定値SATをオフセットさせて出力する方法や、図11に示すように不感帯領域のみ出力を零とする方法や、図12に示すように不感帯領域のみ出力を零とすると共に、不感帯領域と不感帯以外の領域との間で出力値の変化率に上限を設ける(レートリミット処理する)方法を採用する。
【0136】
次いで、ステップS50に移行して、算出したセルフアライニングトルク推定値SATとモータ角速度ωとに基づいて切増し状態、切戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態であるかを判定し、判定された操舵状態に応じて図14の操舵状態感応ゲイン算出マップを参照して操舵状態ゲインK0を算出する。
次いで、ステップS51に移行して、算出した操舵状態ゲインK0を前記ステップS49で算出した不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに乗算してゲイン倍指令値Iref21(=Iref2DB*K0)を算出する。
【0137】
次いで、ステップS52に移行して、4輪車輪回転速度VwFL〜VwRRの平均値又は車速Vsに基づいて図15に示す車速感応ゲイン算出マップを参照して車速感応ゲインK1を算出し、次いでステップS53に移行して、算出した車速感応ゲインK1をゲイン倍指令値Iref21に乗算してゲイン倍指令値Iref22(=Iref21*K1)を算出する。
【0138】
次いで、ステップS54に移行して、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRとモータ角度θとに基づいて車両モデルを利用して前述した(2)及び(3)式の演算を行ってセルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。次に、算出したセルフアライニングトルク演算値SAToと前記ステップS47で算出したセルフアライニングトルク推定値SATとの偏差ΔSATを算出する。そして、算出した偏差ΔSATの絶対値|ΔSAT|に基づいて、図17に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照してセルフアライニングトルクゲインK2を算出する。
【0139】
次いで、ステップS55に移行して、算出したセルフアライニングトルクゲインK2をゲイン倍指令値Iref22に乗算してゲイン倍指令値Iref23(=Iref22*K2)を算出する。
次いで、ステップS56に移行して、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいて前述した駆動輪スリップ率ΔVwを算出し、その絶対値|ΔVw|に基づいて図19の駆動輪スリップゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップゲインK3を算出する。
【0140】
次いで、ステップS57に移行して、算出した駆動輪スリップゲインK3をゲイン倍指令値Iref23に乗算してゲイン倍指令値Iref24(=Iref23*K3)を算出する。
次いで、ステップS58に移行して、車速Vsに基づいて図24に示す車速制限値算出マップを参照して車速制限値Limvを算出する。次いでステップS59に移行して、モータ角速度ωに基づいて図25に示すモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度制限値Limmを算出する。
【0141】
次いで、ステップS60に移行して、4輪車輪回転速度VwFL〜VwRRとモータ角度θとに基づいて前述した図22に示す車輪回転速度制限値算出処理を行って車輪回転速度制限値Limwを算出する。
次いで、ステップS61に移行して、車速制限値Limv、モータ角速度制限値Limm及び車輪回転速度制限値Limwの最小値を出力制限値Limとして決定する。次いでステップS62に移行して、決定された出力制限値Limでゲイン倍指令値Iref24を制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。そして、算出した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を操舵補助トルク指令値Irefとして所定の指令値記憶領域に更新記憶してから前記ステップS38に移行する。
【0142】
この図27の処理において、ステップS34の処理が異常時切換手段に対応し、ステップS34〜S37の処理が第1のトルク指令値演算手段に対応し、S38〜S44の処理がモータ制御部に対応し、ステップS47〜S62の処理が第2のトルク指令値演算手段に対応している。このうち、ステップS48及びS49の処理が不感帯設定手段に対応し、ステップS50〜S57の処理がゲイン調整手段に対応し、ステップS45,S46及びS58〜S62の処理が異常時指令値制限手段に対応している。
【0143】
このように、マイクロコンピュータで、図27の操舵補助制御処理を実行することにより、前述した第1の実施形態と同様に操舵トルクセンサ14が正常であるときには図27の操舵補助制御処理におけるステップS34〜S37の処理を実行して、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する。そして、第1の操舵補助トルク指令値Iref1に基づいて電動モータ12を駆動制御して、正確な操舵補助制御を行う。
【0144】
一方、操舵トルクセンサ14が異常であり、車輪回転速度センサ18が正常であるときには、ステップS47〜S62の処理を実行して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。すなわち、車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいてステアリングギヤ機構8のラック軸に入力される路面からの反力でなるセルフアライニングトルクSATを推定し、推定したセルフアライニングトルクSATに不感帯を設定すると共にゲイン調整を行い、さらにトルク制限を行って第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。そして、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて電動モータ12を駆動制御して、操舵補助制御を行う。
このため、操舵トルクセンサ14が正常な状態から異常な状態となった場合にも、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて路面反力を考慮した最適な操舵補助制御を継続することができる。
【0145】
また、操舵トルクセンサ14が異常な状態となった場合に、車輪回転速度センサ18が異常であるときには操舵補助制御を停止することができる。このため、異常となった車輪回転速度に基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2が算出されることによる、セルフステアリングの発生や制御異常出力を防止することができる。
ところで、アンチロックブレーキシステムが作動した場合にも、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRに影響を与える。この場合、図21の車輪回転速度異常検出処理で、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であるか否かの状態と、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるか否かの状態とが不一致であると判定される。そのため、アンチロックブレーキシステムの作動により車輪回転速度が変化している(外乱により車輪回転速度変化が生じている)と判断することができる。
【0146】
したがって、この場合には、この外乱による車輪回転速度変化が生じている場合に、アンチロックブレーキシステムの制動指令値を読込むことにより、制動状態にある車輪を特定し、この車輪を含む前輪又は後輪の車輪回転速度差の絶対値と閾値との偏差の絶対値に基づいて図23に示す車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limwを算出する。これにより、外乱による車輪回転速度の変化の影響を軽減することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、後輪駆動車を対象とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪駆動車や4輪駆動車にも本発明を適用することができる。
【0147】
ここで、前輪駆動車に本発明を適用する場合には、前輪を駆動輪とし、後輪を従動輪として扱えば良い。また、4輪駆動車に本発明を適用する場合には、図22の処理で、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であるか否かの状態と、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるか否かの状態とが一致したときに車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断し、両者の状態が不一致であるときに、前輪側の車輪回転速度VwFL又はVwFR若しくは後輪側の車輪回転速度VwRL又はVwRRが外乱による異常であると判断するようにすればよい。
【0148】
また、上記第1の実施形態においては、車速制限値演算部40cで車速制限値Limvを演算する際に、車速センサ16で検出した車速Vsを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車輪回転速度センサ18で検出した車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいて演算した車速を適用することもできる。
【0149】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態では、トルク制限部32Cの制御出力制限値計算部40における車輪回転速度制限値演算部40bにモータ角度信号センサ200で検出したモータ角度θも供給するようにし、このモータ角度θを使用して車輪回転速度制限値Limwを演算するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図28に示すように、制御出力制限値計算部40にモータ角度θが供給され、このモータ角度θが図29に示すように、車輪回転速度制限値演算部40bに入力されている。
【0150】
そして、車輪回転速度制限値演算部40bでは、前述した第1の実施形態と同様に、モータ角速度ωに基づいて図22に示す車輪回転速度制限値演算処理を実行するとともに、図30に示す車輪回転速度制限値演算処理を実行する。
図30の車輪回転速度制限値演算処理は、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS71で、モータ角度θ(n)及び4輪の車輪回転角度VwFL〜VwRRを読込んで、これらをRAM等のメモリに個別に形成した所定のm段数のシフトレジスタの初段に書込む。次いでステップS72に移行して、シフトレジスタに格納されているモータ角度θ(n)〜θ(n−m−1)を読込み、モータ角度が変化していないか否かを判定する。ここでは、モータ角度θ(n)〜θ(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅θwが予め設定したモータ角度が殆ど変化していないと判断可能な閾値θws以下であるか否かを判定する。
【0151】
このステップS72の判定結果が、モータ角度変化が生じているものであるときには、そのままタイマ割込処理を終了して、所定のメインプログラムに復帰し、モータ角度変化が生じていないときにはステップS73に移行する。
このステップS73では、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwF(n)〜ΔVwF(n−m−1)が略一定値であるか否かを判定する。ここでは、左右車輪回転速度差ΔVwF(n)〜ΔVwF(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅Wfが左右車輪回転速度差ΔVwFを一定と見做せる閾値Wfs以下であるか否かを判定する。
【0152】
このステップS73の判定結果が、前輪の左右車輪回転速度差ΔVwFが一定であるときには、ステップS74に移行して、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwR(n)〜ΔVwR(n−m−1)が変動しているか否かを判定する。そして、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwR(n)〜ΔVwR(n−m−1)が変動しているときには後輪側の車輪回転速度VwRL又はVwRRに異常があるものと判断してステップS75に移行する。
【0153】
このステップS75では、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwR(n)〜ΔVwR(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅Wに基づいて、図31に示す車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limw2を算出する。次いで、ステップS76に移行して、算出した車輪回転速度制限値Limw2と図22で算出した車輪回転速度制限値Limwとの何れか小さい値を車輪回転速度制限値Limwとして決定し、制限値選択部40eに出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0154】
また、前記ステップS74の判定結果が、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRが変動していないときには、各車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断してステップS77に移行する。そして、車輪回転速度制限値Limw2として、ゲイン倍指令値Iref24を制限しない最大値Limw2maxを設定してから前記ステップS76に移行する。
【0155】
さらに、前記ステップS73の判定結果が、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFが略一定ではなく変動している場合には、ステップS78に移行して、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwR(n)〜ΔVwR(n−m−1)が略一定であるか否かを判定する。このとき、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRが変動している場合には、各車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断して前記ステップS77に移行し、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRが略一定であるときには、前輪側の車輪回転速度VwFL又はVwFRが異常であると判断してステップS79に移行する。
【0156】
このステップS79では、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwF(n)〜ΔVwF(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅Wに基づいて、図31に示す車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limw2を算出してから前記ステップS76に移行する。
このように、上記第2の実施形態によると、前述した第1の実施形態の作用効果に加えて、モータ角度θに基づいて車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常を検出するので、より精度良く車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常を検出することができる。
【0157】
なお、上記第2の実施形態においては、モータ角度θとしてモータ角度信号センサ200で検出したモータ角度を使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、モータ角速度センサを設けて、このモータ角速度センサで検出したモータ角速度ωを積分してモータ角度θを算出したり、電動モータ12のモータ逆起電圧を検出して、検出したモータ逆起電圧に基づいてモータ角速度を算出し、算出したモータ角速度を積分してモータ角度θを算出したりするようにしてもよい。
また、上記第2の実施形態では、制御出力制限値計算部40にモータ角度θが入力されているので、このモータ角度θの単位時間当たりのモータ角度変化量Δθを算出し、このモータ角度変化量Δθを前述した図21及び図22の演算処理でモータ角速度ωに代えて使用するようにしてもよい。
【0158】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態では、4輪車輪回転速度とモータ角度とに基づいてセルフアライニングトルク推定値SATの推定精度を向上させるようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、システム構成としては前述した第2の実施形態と同様の構成を有するが、セルフアライニングトルク推定部32Aで図32に示すセルフアライニングトルク推定値選択処理を行うようにしている。
このセルフアライニングトルク推定値選択処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS81で、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT(n)及びモータ角度信号センサ200で検出したモータ角度θ(n)を読込む。
【0159】
次いでステップS82に移行して、セルフアライニングトルク推定値SATが急変しているか否かを判定する。ここでは、今回読込んだセルフアライニングトルク推定値SAT(n)から前回処理時に読込んだセルフアライニングトルク推定値SAT(n−1)を減算してセルフアライニングトルク変化量ΔSATを求め、求めたセルフアライニングトルク変化量ΔSATの絶対値が予め設定されたセルフアライニングトルク推定値SATの急変を判断する閾値ΔSATsを超えているか否かを判定する。
【0160】
このステップS82の判定結果が、|ΔSAT|≦ΔSATsであるときには、セルフアライニングトルク推定値SAT(n)が急変していないものと判断してステップS83に移行し、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT(n)をそのままセルフアライニングトルク推定値SATとしてゲイン調整部32Bに出力する。
【0161】
一方、ステップS82の判定結果が、|ΔSAT|>ΔSATsであるときには、セルフアライニングトルク推定値SAT(n)が急変したものと判断してステップS84に移行する。そして、ステップS81で読込んだモータ角度θ(n)から前回の処理時に読込んだモータ角度θ(n−1)を減算してモータ角度変化量Δθを算出し、算出したモータ角度変化量Δθが予め設定した閾値Δθsを超えているか否かを判定する。
【0162】
このステップS84の判定結果が、|Δθ|≦Δθsであるときには、モータ角度変化量Δθが小さく車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常によるセルフアライニングトルク推定値SATの急変ではないものと判断して前記ステップS83に移行する。一方、|Δθ|>Δθsであるときには、セルフアライニングトルク推定値SATが急変し、且つモータ角度変化量Δθも大きく、車輪回転速度VwFL〜VwRRの何れかに異常が発生しているものと判断して、ステップS85に移行する。
【0163】
このステップS85では、位相補正部331から出力されたセルフアライニングトルク推定値SAT(n)に代えて、前回処理時のセルフアライニングトルク推定値SAT(n−1)をセルフアライニングトルク推定値SATとしてゲイン調整部32Bに出力する。
この第3の実施形態によると、セルフアライニングトルク推定部32Aの位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATが急変したときに、この間のモータ角度変化量Δθの絶対値が閾値Δθs小さい場合には、車輪回転速度VwFL〜VwRRに異常が発生していないものと判断する。そして、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATをそのままゲイン調整部32Bに出力して、セルフアライニングトルク推定値SATによる第2の操舵補助トルク指令値Iref2の算出を継続する。
【0164】
しかしながら、セルフアライニングトルク推定部32Aの位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATが急変したときに、この間のモータ角度変化量Δθの絶対値が閾値Δθsより大きい場合には、車輪回転速度VwFL〜VwRRの何れかに異常が発生しているものと判断する。そして、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT(n)に代えて前回処理時に読込んだセルフアライニングトルク推定値SAT(n−1)をゲイン調整部32Bに出力する。したがって、電動モータ12の回転速度が車輪回転速度VwFL〜VwRRの何れかに異常が発生したことによる影響を受けないように制御することができる。
【0165】
このため、セルフアライニングトルク推定部32Aによるセルフアライニングトルク推定値SATの誤推定によって制御異常となることを確実に防止することができ、セルフアライニングトルク推定精度を向上させることができる。
なお、上記第3の実施形態においても、モータ角度θは、レゾルバ等のモータ角度センサで検出されたモータ角度θを用いる場合に限らず、モータ角速度又はモータ逆起電圧から算出されるモータ角速度を積分した値を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0166】
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…出力軸、3…ステアリングコラム、4,6…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、8…ステアリングギヤ機構、9…タイロッド、WL,WR…転舵輪、10…操舵補助機構、11…減速機構、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントローラ、16…車速センサ、17…回転角センサ、18、18RL,18RR…車輪回転速度センサ、20…回転情報演算部、201…モータ角速度演算部、212…モータ角加速度演算部、21…操舵補助トルク指令値演算部、22…指令値補償部、23…電流制限部、24…モータ駆動回路、31…第1の操舵補助トルク指令値演算部、311…トルク指令値算出部、312…位相補償部、313…センタ応答性改善部、314…加算器、32…第2の操舵補助トルク指令値演算部、32A…セルフアライニングトルク推定部、32A’…SAT不感帯反映部、32B…ゲイン調整部、32C…トルク制限部、321…車両横滑り角推定部、322…角度変化量算出部、323…増幅器、324…加算器、325…セルフアライニングトルク演算部、326…増幅器、327…加算器、328…ローバスフィルタ、329…加算器、330…平均値算出部、331…位相補正部、33…トルクセンサ異常検出部、34…指令値選択部、36…操舵状態ゲイン調整部、37…車速感応ゲイン調整部、38…セルフアライニングトルクゲイン調整部、38A…セルフアライニングトルクゲイン設定部、38B…ゲイン乗算部、39…駆動輪スリップゲイン調整部、40…制御出力制限値計算部、40a…車輪回転速度異常検出部、40b…車輪回転速度制御値演算部、40c…車速制限値演算部、40d…モータ角速度制限値演算部、40e…制限値選択部、41…リミッタ部、43…収斂性補償部、44…慣性補償部、45,46…加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルク検出手段の異常を検出するトルク検出部異常検出手段と、
車両の車輪回転速度を検出する車輪回転速度検出手段と、
前記電動モータのモータ回転情報を検出するモータ回転情報検出手段と、
前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段と、
前記トルク検出部異常検出手段で前記トルク検出手段の異常を検出したときに、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて、前記第2のトルク指令値演算手段を選択して前記モータ制御手段に第2のトルク指令値を出力する異常時切換手段と、を備え、
前記第2のトルク指令値演算手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて、前記ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定し、セルフアライニングトルク推定値として出力するセルフアライニングトルク推定手段と、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度が持つ誤差に起因して前記セルフアライニングトルク推定手段でセルフアライニングトルクが誤推定される領域を、前記セルフアライニングトルク推定値の不感帯として当該セルフアライニングトルク推定値をゼロとする不感帯設定手段と、該不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて前記第2のトルク指令値を演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値を、当該セルフアライニングトルク推定値の絶対値が小さくなる方向にオフセットして出力することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値をそのまま出力することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値の変化率に上限を設けるレートリミット処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記不感帯設定手段は、車輪回転速度、車速、モータ角速度、操舵角度の何れかに応じて前記不感帯の幅を変更することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記不感帯設定手段は、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて演算した前記第2のトルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御したときの車両挙動が、所望の車両挙動となるように、前記不感帯の幅を設定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度、前記操舵トルク検出手段が正常であるときに検出した操舵トルク及び前記モータ回転情報検出手段で検出した前記モータ回転情報の少なくとも一つに基づいて前記車輪回転速度の異常を検出する車輪回転速度異常検出手段と、
該車輪回転速度異常検出手段で前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記異常時切換手段で前記第2のトルク指令値を選択するときに、当該第2のトルク指令値を制限する異常時指令値制限手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該第2のトルク指令値の出力を停止させるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、前記第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した左右車輪回転速度差に基づいて制限するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該異常を検出する前の第2のトルク指令値を第2のトルク指令値として設定するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項11】
前記第2のトルク指令値演算手段は、前記不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値にゲインを乗算して前記第2のトルク指令値を演算するゲイン調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項12】
前記第2のトルク指令値演算手段は、前記ゲイン調整手段で演算した第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方とモータ角速度演算手段で算出したモータ角速度との少なくとも一方に基づいて制限するトルク制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項13】
前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルクとに基づいて切増し状態、切り戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態であるかを判定し、操舵状態の判定結果に基づいて操舵状態感応ゲインを調整する操舵状態ゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項14】
前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方に基づいて車速感応ゲインを調整する車速ゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項15】
前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度とに基づいて演算したセルフアライニングトルク演算値と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値との偏差に基づいてセルフアライニングトルクゲインを調整するセルフアライニングトルクゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項16】
前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて駆動輪スリップ状態を推定し、推定した駆動輪スリップ状態に基づいて駆動輪スリップ感応ゲインを調整する駆動輪スリップゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項17】
前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定する車両横滑り角推定手段を有し、該車両横滑り角推定手段で推定した車両横滑り角に基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項18】
前記車両横滑り角推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定し、推定した車両横滑り角をモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報に基づいて補正するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項19】
前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度とモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報とに基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項20】
前記異常時切換手段は、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて前記第2のトルク指令値演算手段を選択する場合に、前記第1のトルク指令値から前記第2のトルク指令値に徐々に変化させることを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−56632(P2013−56632A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196477(P2011−196477)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】