説明

電動圧縮機

【課題】潤滑性を確実に向上することのできる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】主軸ホルダ11Bに、モータ部20側と旋回スクロール32側とを貫通する冷媒流入路40Aを形成し、冷媒流入路40Aの吹出口40bから吹出す冷媒が、ドライブベアリング36に向けて吹き付けられるようにした。これにより、冷媒に含まれる潤滑油により、ドライブベアリング36を確実に潤滑する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の空気調和機を構成する電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用空気調和機を構成する圧縮機を、従前からのエンジンによって駆動するのではなく、モータによって駆動する電動圧縮機が用いられつつある。電動圧縮機は、圧縮部と、圧縮部を駆動するためのモータ部と、がハウジング内に収められている。
【0003】
図6に示すように、このような電動圧縮機1においては、ハウジング2内に吸入された冷媒は、モータ部3を冷却した後、冷媒流路4を通って、圧縮部5へと導かれる。圧縮部5において、旋回スクロール5Aと固定スクロール5Bとの間に形成された圧縮室へ前記の冷媒は導かれ、固定スクロール5Bに対する旋回スクロール5Aの公転により、圧縮室内の冷媒が圧縮され、ハウジング2に形成された吐出ポートから外部に吐出される。
【0004】
ここで、旋回スクロール5Aは、モータ部3によって回転駆動される主軸6に対し、主軸6の回転中心から所定寸法だけオフセットして回転自在(すなわち公転自在)に支持されている。そして、主軸6と旋回スクロール5Aの間には、主軸6に対し旋回スクロール5Aを公転自在に支持するためのドライブベアリング7が介在している。
このドライブベアリング7は、主軸6と旋回スクロール5Aとの相対回転により発熱する。そこで、ドライブベアリング7の給油不足を避けるため、潤滑剤を含んだ冷媒を、ドライブベアリング7の部分に供給することが従来より行われている。
【0005】
潤滑剤を含んだ冷媒のドライブベアリング7への供給は、例えば、主軸6を回転自在に保持する主軸保持部材8に形成された冷媒流路4に、圧縮部5に連通するドライブベアリング7の近傍の空間に連通する冷媒供給路9を形成することで行われている。
また、ハウジング2内の油溜まりに溜まった冷媒を、ドライブベアリング7の近傍の空間に供給する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−343458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の手法は、いずれも、ドライブベアリング7の近傍の空間への冷媒供給は、強制的なものではない。主軸6およびドライブベアリング7が相対的に回転し、ドライブベアリング7が発熱すると、ドライブベアリング7の周囲に温度勾配が生じる。また、ドライブベアリング7の発熱により周囲の冷媒が加熱されて膨張し、冷媒の圧力勾配が生じる。これら温度勾配および圧力勾配により、ドライブベアリング7の周囲とドライブベアリング7から離れた領域との間で、冷媒に流れが生じる。この流れを利用し、ドライブベアリング7の近傍への冷媒供給を自然に行うのである。
【0008】
このような温度勾配や圧力勾配を利用した冷媒供給では、ドライブベアリング7の確実な潤滑が行えるとは限らない。特に、冷媒圧力が高圧となるCOを冷媒に用いる場合、ドライブベアリング7をはじめとする各部への負荷も大きいために、潤滑性の向上が望まれている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、潤滑性を確実に向上することのできる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明は、外殻を形成するハウジングの内部に、冷媒を圧縮するスクロール式の圧縮部と、圧縮部を駆動するためのモータとを備えた電動圧縮機であって、モータの主軸は、ハウジングに設けられた主軸ホルダに回転自在に支持され、圧縮部は、主軸に対して偏心し、ベアリングを介して回転自在に設けられた旋回スクロールと、ハウジングに固定された固定スクロールと、を備える。そして、主軸ホルダに、ハウジン部の外部から導入されてモータを冷却した冷媒を、ベアリングに吹き付ける第一の冷媒流路と、ベアリングに吹き付けられた冷媒を圧縮部に送り込む第二の冷媒流路とが形成されていることを特徴とする。
このように、モータを冷却した冷媒を第一の冷媒流路によりベアリングに強制的に吹き付けることで、冷媒に含まれる潤滑油によりベアリングを潤滑することができる。
【0010】
このとき、第一の冷媒流路と、第二の冷媒流路とを、主軸ホルダの周方向において同一角度に設ければ、第一の冷媒流路のベアリング側の出口と第二の冷媒流路のベアリング側の入口を近接させることができるので、圧力損失を抑えることができる。
【0011】
また、第一の冷媒流路と、第二の冷媒流路とを、主軸ホルダの周方向において互いに異なる角度に設ければ、旋回スクロールの旋回によって生じる冷媒の流れを利用し、第一の冷媒流路から吹き出した冷媒を、ベアリングに確実に吹き付けることができる。
【0012】
第一の冷媒流路は、主軸ホルダの中心からの放射方向に対し、一定角度傾斜して設けても良い。これにより、旋回スクロールの旋回によって生じる流れにより、第一の冷媒流路から冷媒を引き出すことができる。
【0013】
主軸ホルダに、モータを冷却した冷媒を、ベアリングを経ずに圧縮部に直接送りこむ第三の冷媒流路を形成することもできる。冷媒循環量が多い場合に、モータを冷却した冷媒の全てを第一の冷媒流路からベアリングに吹き付けるのではなく、その一部を第三の冷媒流路により圧縮部に直接送りこむことで、圧力損失を抑えることができる。
【0014】
第一の冷媒流路は、上流側から下流側に向けて、その断面積を拡大または縮小させてもよい。下流側に向けて断面積を拡大させれば、圧力損失を抑えることができ、下流側に向けて断面積を縮小させれば、冷媒の流速を上げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータを冷却した冷媒を第一の冷媒流路によりベアリングに吹き付けることで、冷媒に含まれる潤滑油によりベアリングを確実に潤滑することができる。これにより、特に、冷媒圧力が高圧となるCOを冷媒に用いる場合においても、負荷の高いベアリングの潤滑を確実に行い、電動圧縮機の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態における電動圧縮機の側断面図である。
【図2】第一の実施の形態における主軸ホルダを示す図であって、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は正面図である。
【図3】第二の実施の形態における主軸ホルダを示す図であって、(a)は(b)のB−B断面図、(b)は正面図である。
【図4】第三の実施の形態における主軸ホルダを示す図であって、(a)は(b)のC−C断面図、(b)は正面図である。
【図5】第四の実施の形態における主軸ホルダを示す図であって、(a)は(b)のD−D断面図、(b)は正面図である。
【図6】従来の電動圧縮機の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
〔第一の実施の形態〕
図1、図2は、本実施の形態における電動圧縮機10の構成を示すための図である。
この図1、図2に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11内にモータ部20およびスクロール式の圧縮部30が収容されている。
【0018】
図1に示したように、ハウジング11のモータ部20が設けられた側の端部に形成された冷媒導入ポート(図示無し)からハウジング11内に冷媒が導入され、圧縮部30が設けられた側の端部に形成された冷媒吐出ポート(図示無し)から、圧縮部30によって圧縮された冷媒を吐出する。
【0019】
モータ部20は、ハウジング11に固定された固定子21と、固定子21の内側で回転自在に設けられた回転子22とを備える。回転子22は、主軸23の外周部に形成され、主軸23は、その両端がハウジング11に回転自在に支持されている。
【0020】
圧縮部30は、ハウジング11に固定された固定スクロール31と、主軸23の回転に伴って回転する旋回スクロール32と、を備える。
固定スクロール31、旋回スクロール32は、それぞれ円板状のベース31a、32aの一面側に、渦巻状のスクロール壁31b、32bが立設されている。これら固定スクロール31と旋回スクロール32は、スクロール壁31b、32bを互いに組み合わせて、双方のスクロール壁31b、32b間に圧縮室を形成している。
【0021】
このような電動圧縮機10の外殻を形成するハウジング11は、モータ部20および主軸23を収容するハウジング本体11Aと、主軸23および旋回スクロール32を回転自在に保持する主軸ホルダ11Bと、固定スクロール31を収容するスクロールハウジング11Cとから構成されている。これらハウジング本体11A、主軸ホルダ11B、スクロールハウジング11Cは、それぞれ外周側に張り出したフランジ部14A、14B、14Cにおいて、ボルトやノックピン15により一体に締結されている。
【0022】
主軸ホルダ11Bは、両面側が、ハウジング本体11Aおよびスクロールハウジング11Cの内周部に挿入され、中間部のフランジ部14Bが、ハウジング本体11Aのフランジ部14Aとスクロールハウジング11Cのフランジ部14Cとの間に挟み込まれる。
主軸ホルダ11Bの中央部には、貫通孔41が形成されている。主軸23は、貫通孔41に対し、ベアリング34を介して回転自在に保持されている。
主軸23の先端部には、主軸23の中心軸から予め定められた寸法だけ偏心した位置に、ボス35が突出形成されている。このボス35に、ドライブベアリング36を介し、旋回スクロール32が回転自在に保持されている。これにより、旋回スクロール32は、主軸23の中心に対し、予め定められた寸法だけ偏心して設けられている。モータ部20により主軸23がその軸線周りに回転すると、旋回スクロール32は、主軸23の中心に対し、偏心した寸法を半径とした回転(公転)を行う。
【0023】
旋回スクロール32のベース32aにおいて、主軸ホルダ11Bに対向する側の中心部には、円柱状の凸部37が形成されている。凸部37には、前記のボス35およびドライブベアリング36を収容する凹部37aが形成されている。
主軸ホルダ11Bにおいて、旋回スクロール32に対向する側には、旋回スクロール32の凸部37を収容する凹部38が形成されている。ここで、ボス35およびドライブベアリング36を介して主軸23に支持された旋回スクロール32の凸部37と、主軸ホルダ11Bの凹部38との間には、空間Sが形成されている。
【0024】
図1、図2に示すように、主軸ホルダ11Bには、モータ部20側と旋回スクロール32側とを貫通する複数(図2の例では4箇所)の冷媒流入路(第一の冷媒流路)40Aが放射状に配置されて形成されている。冷媒は、モータ部20側から旋回スクロール32側へと冷媒流入路40Aを通って流れる。各冷媒流入路40Aは、旋回スクロール32側の吹出口40bが、凹部38の内周面に臨んで形成されている。また、各冷媒流入路40Aのモータ部20側の吸込口40aは、吹出口40bよりも外周側に位置している。そして、各冷媒流入路40Aは、主軸ホルダ11Bの径方向に連続して形成されている。これにより、冷媒流入路40Aの吹出口40bから吹出す冷媒は、凹部38内の中心部に位置するドライブベアリング36に向けて吹き付けられる。
また、主軸ホルダ11Bには、凹部38の内周縁部から主軸ホルダ11Bの外周部へと延びる複数の冷媒流出路(第二の冷媒流路)50が放射状に配置されている。各冷媒流出路50は、主軸ホルダ11Bの径方向(主軸ホルダ11Bの中心に対して放射方向)に連続して形成されている。主軸ホルダ11Bと旋回スクロール32との間には、円板状のスラストプレート39が設けられている。各冷媒流出路50は、主軸ホルダ11Bの表面に溝状に形成されており、凹部38の内周面に臨む吸込口50aと、主軸ホルダ11Bの外周部の吹出口50bとを除いた部分がスラストプレート39により覆われている。
【0025】
本実施の形態において、主軸ホルダ11Bに放射状に配置された複数の冷媒流入路40Aと冷媒流出路50とは、主軸ホルダ11Bの周方向において、同一角度に設けられている。
【0026】
このような電動圧縮機10においては、冷媒導入ポート(図示無し)からハウジング11内に導入された冷媒は、モータ部20を冷却した後、冷媒流入路40Aを通り、凹部38の内周面に形成された吹出口40bから凹部38内に吹き出す。すると、凹部38内に位置するドライブベアリング36に冷媒が吹き付けられ、ドライブベアリング36が冷却される。ドライブベアリング36に吹き付けられた冷媒は、冷媒流出路50を経て、吹出口50bから、圧縮部30の旋回スクロール32と固定スクロール31との間に形成された圧縮室へと供給される。そして、圧縮部30で圧縮された冷媒は固定スクロール31に設けられたリード弁31rを押し開き、冷媒吐出ポート(図示無し)から吐出される。
【0027】
上述したように、電動圧縮機10においては、冷媒流入路40Aにより、ドライブベアリング36へと冷媒が強制的に吹き付けられるので、冷媒に含まれる潤滑油により、ドライブベアリング36を確実に潤滑することができる。これにより、冷媒圧力が高圧となるCOを冷媒に用いる場合において、負荷の高いドライブベアリング36の潤滑を確実に行い、電動圧縮機10の信頼性を向上することができる。
【0028】
また、冷媒流入路40Aと冷媒流出路50とが主軸ホルダ11Bの周方向において同一角度に設けられ、冷媒流入路40Aの吹出口40bと冷媒流出路50の吸込口50aとが互いに近接しているため、冷媒流路全体としての圧力損失を抑えることが可能である。
【0029】
〔第二の実施の形態〕
次に、本発明に係る第二の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第一の実施の形態と異なる点を中心として説明を行い、第一の実施の形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、本実施の形態の電動圧縮機10においては、主軸ホルダ11Bに形成された冷媒流入路(第一の冷媒流路)40Bが、冷媒流出路50に対し、主軸ホルダ11Bの周方向において、一定の角度、例えば45°異なる位置に形成されている。本実施の形態と前記第一の実施の形態との相違は、冷媒流入路40Bの配置のみであり、他の構成は全て共通する。
【0030】
上述したような構成によれば、上記第一の実施の形態と同様、冷媒流入路40Bにより、ドライブベアリング36へと冷媒が強制的に吹き付けられるので、冷媒に含まれる潤滑油により、ドライブベアリング36を確実に潤滑することができ、電動圧縮機10の信頼性を向上することができる。
さらに、冷媒流入路40Bと冷媒流出路50は、主軸ホルダ11Bの周方向において一定の角度異なる位置に形成されている。凹部38内においては、旋回スクロール32の回転(公転)により、空間S(図1参照)で旋回する流れが生じる。そこで、冷媒流入路40Bと冷媒流出路50とを主軸ホルダ11Bの周方向にずらして形成することで、冷媒流入路40Bから空間S(図1参照)内に供給した冷媒を、冷媒流出路50から効率よく流出させることが可能となる。
【0031】
なお、上記第二の実施の形態において、冷媒流入路40Bと冷媒流出路50とを、主軸ホルダ11Bの周方向において一定の角度異なる位置に設けるようにしたが、その角度は、旋回スクロール32の回転数等に応じて適宜変更しても良い。
【0032】
〔第三の実施の形態〕
次に、本発明に係る第三の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第一の実施の形態と異なる点を中心として説明を行い、第一の実施の形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、本実施の形態の電動圧縮機10においては、主軸ホルダ11Bに形成された冷媒流入路(第一の冷媒流路)40Cが、冷媒流出路50に対し、主軸ホルダ11Bの周方向において、一定の角度、例えば45°異なる位置に形成されている。さらに、各冷媒流入路40Cは、吸込口40aと吹出口40bとを結ぶ方向が、主軸ホルダ11Bの径方向(主軸ホルダ11Bの中心から放射方向)に対し、一定角度θだけ傾斜して形成されている。本実施の形態と前記第一の実施の形態との相違は、冷媒流入路40Cの配置のみであり、他の構成は全て共通する。
【0033】
上述したような構成によれば、上記第一の実施の形態と同様、冷媒流入路40Cにより、ドライブベアリング36へと冷媒が強制的に吹き付けられるので、冷媒に含まれる潤滑油により、ドライブベアリング36を確実に潤滑することができ、電動圧縮機10の信頼性を向上することができる。
さらに、冷媒流入路40Cは、主軸ホルダ11Bの径方向に対し、一定角度θだけ傾斜して形成されている。空間S(図1参照)内においては、旋回スクロール32の回転(公転)により、空間S(図1参照)で旋回する流れが生じる。そこで、冷媒流入路40Cを、主軸ホルダ11Bの径方向に対して旋回スクロール32の回転方向に応じた方向に傾斜させることで、圧力損失が小さくなり、旋回スクロール32の回転によって生じる空間S(図1参照)内で旋回する流れにより、冷媒流入路40Cから冷媒を効率よく流入させることができる。これによって冷媒に含まれる潤滑油による潤滑性を向上させることができる。
【0034】
なお、上記第三の実施の形態において、冷媒流入路40Cと冷媒流出路50とを、主軸ホルダ11Bの周方向において一定の角度異なる位置に設けるようにしたが、その角度は、旋回スクロール32の回転数等に応じて適宜変更しても良いし、上記第一の実施の形態と同様、同一角度に配置しても良い。
【0035】
〔第四の実施の形態〕
次に、本発明に係る第四の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第二の実施の形態と異なる点を中心として説明を行い、第二の実施の形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように、本実施の形態の電動圧縮機10においては、主軸ホルダ11Bに、冷媒流入路40B、冷媒流出路50に加え、ドライブベアリング36が収容された空間S(図1参照)を通らず、主軸ホルダ11Bのモータ部20側から旋回スクロール32側へとダイレクトに連通する冷媒流路(第三の冷媒流路)60が設けられている。冷媒流路60は、旋回スクロール32側の端部60bが、冷媒流出路50に臨んで形成されている。本実施の形態と前記第一の実施の形態との相違は、冷媒流路60を設けたのみであり、他の構成は全て共通する。
【0036】
上述したような構成によれば、上記第一の実施の形態と同様、冷媒流入路40Bにより、ドライブベアリング36へと冷媒が強制的に吹き付けられるので、冷媒に含まれる潤滑油により、ドライブベアリング36を確実に潤滑することができ、電動圧縮機10の信頼性を向上することができる。
また、冷媒の一部は、冷媒流入路40Bを通らず、冷媒流路60を通って冷媒流出路50から直接圧縮部30へと供給される。このような構成は、特にCO冷媒に比較して冷媒循環量の多くなるR134a冷媒等を用いる場合に有効であり、ドライブベアリング36の十分な潤滑性を確保しつつ、冷媒の流路全体としての圧力損失を抑えることができる。
【0037】
なお、上記第四の実施の形態は、第一、第三の実施の形態と組み合わせることも可能である。
【0038】
さらに、上記第一〜第四の実施の形態において、冷媒流入路40A、40B、40Cは、吸込口40aから吹出口40bまで、その断面積を一定としたが、吸込口40a側の断面積を、吹出口40b側の断面積よりも大きくした、全体としてテーパ状の構成としても良い。この場合、冷媒流入路40A、40B、40C内における冷媒の流速を高めることができ、ドライブベアリング36に冷媒を確実に吹き付けることができる。
また逆に、冷媒流入路40A、40B、40Cを、吸込口40a側の断面積を、吹出口40b側の断面積よりも小さくした、全体としてテーパ状の構成としても良い。この場合、冷媒流入路40A、40B、40Cの圧力損失を抑えることができる。
【0039】
これ以外にも、冷媒流入路40A、40B、40Cの断面積と、冷媒流出路50との断面積を異ならせることも可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、11A…ハウジング本体、11B…主軸ホルダ、11C…スクロールハウジング、20…モータ部、23…主軸、30…圧縮部、31…固定スクロール、32…旋回スクロール、36…ドライブベアリング、38…凹部、40A、40B、40C…冷媒流入路(第一の冷媒流路)、40a…吸込口、40b…吹出口、50…冷媒流出路(第二の冷媒流路)、50a…吸込口、50b…吹出口、60…冷媒流路(第三の冷媒流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を形成するハウジングの内部に、冷媒を圧縮するスクロール式の圧縮部と、前記圧縮部を駆動するためのモータとを備えた電動圧縮機であって、
前記モータの主軸は、前記ハウジングに設けられた主軸ホルダに回転自在に支持され、
前記圧縮部は、前記主軸に対して偏心し、ベアリングを介して回転自在に設けられた旋回スクロールと、前記ハウジングに固定された固定スクロールと、を備え、
前記主軸ホルダに、前記ハウジングの外部から導入されて前記モータを冷却した冷媒を、前記ベアリングに吹き付ける第一の冷媒流路と、前記ベアリングに吹き付けられた前記冷媒を前記圧縮部に送り込む第二の冷媒流路とが形成されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第一の冷媒流路と、前記第二の冷媒流路とが、前記主軸ホルダの周方向において同一角度に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第一の冷媒流路と、前記第二の冷媒流路とが、前記主軸ホルダの周方向において互いに異なる角度に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第一の冷媒流路が、前記主軸ホルダの中心からの放射方向に対し、一定角度傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記主軸ホルダに、前記モータを冷却した前記冷媒を、前記ベアリングを経ずに前記圧縮部に直接送りこむ第三の冷媒流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第一の冷媒流路が、上流側から下流側に向けて、その断面積が拡大または縮小することを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−163977(P2010−163977A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7102(P2009−7102)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】