説明

電動弁及び冷凍装置

【課題】所定の駆動源により弁体を変位させる電動弁において、弁体のストローク量を充分確保できるようにする。
【解決手段】 一端に上記駆動源(50)に押し付けられて弁座開口(49)方向へ変位する上蓋部(61b)が設けられ、他端に上記弁体(65)を保持するとともに第1変位部(61b)の変位に応じて弁体(65)を移動させるように変位する底壁部(62c)が設けられるとともに、底壁部(62c)の変位方向に直交する断面積S2が、上蓋部(61b)の同方向の断面積S1よりも小さく設定された第1液室(70)と、第1液室(70)に連通された第2液室(52)と、第1液室(70)及び第2液室(52)に封入された液体が熱膨張すると第2液室(52)を拡張させるように変位する容量調整用ベローズ(54)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源によって弁体を駆動させて所定の流体流路を開閉する電動弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動弁は、所定の流体流路の開度を調節する流量調節弁や、流体流路を開閉する開閉弁等に広く適用されている。この電動弁では、例えばステッピングモータ等のモータを駆動源として弁体を駆動するものが知られている。一方、この種の電動弁では、モータの駆動による消費電力が比較的大きく、モータの占める容積も比較的大きくなる。そこで、電動弁の駆動源として、圧電素子(ピエゾ素子)を用い、電圧の印加に伴う圧電素子の変形力を利用して弁体を駆動するものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、この種の電動弁が開示されている。この電動弁は、車両等の内燃機関の燃焼室への燃料の噴射量を制御する、燃料噴射弁を構成している。この電動弁は、アクチュエータ室内にピエゾ素子が設けられ、ピエゾ素子の変形方向の一端側に弁体が設けられている。弁体は、案内孔内に進退自在に収納されている。特許文献1の電動弁では、ばねによって弁体が所定の燃料用流路を閉鎖する位置に付勢されている。一方、ピエゾ素子に電圧が印加されてピエゾ素子が変形すると、ピエゾ素子の一端部によって弁体が押圧される。この弁体は、上記ばねの付勢力に抗して燃料用流路を開放する位置に変位する。
【0004】
以上のように、特許文献1の電動弁では、ピエゾ素子の変形量に応じて弁体を閉鎖位置と開放位置との間で変位させ、燃料用流路の開度を調節するようにしている。
【特許文献1】特表2002−518640号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の電動弁では、ピエゾ素子の変形によって弁体を直接的に変位させるようにしている。つまり、この構成では、弁体の変位量(ストローク量)が、ピエゾ素子の変形量とほぼ同等となる。しかしながら、このような電動弁において、流体流路の開度を広範囲に亘って制御しようとする場合、弁体のストローク量を大きくする必要がある。そのため、例えば冷凍装置の冷媒回路に設けられる膨張弁等に、特許文献1の電動弁を適用する場合、弁体の変位量に限界があり、膨張弁の絞り量を広範囲に制御できないという問題が生じる。
【0006】
以上のように、電動弁では、その用途や駆動源の種類によって、弁体のストローク量が不足してしまうことがある。従って、このような弁体のストローク量を充分確保できる電動弁が望まれる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の駆動源により弁体を変位させる電動弁において、弁体のストローク量を充分確保できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、所定の流体流路(11)の弁座開口(49)を開閉するように変位する弁体(65)と、該弁体(65)を駆動する駆動源(50)とを備えた電動弁を前提としている。
【0009】
そして、一端に上記駆動源(50)に押し付けられて弁座開口(49)方向へ変位する第1変位部(61b)が設けられ、他端に上記弁体(65)を保持するとともに該第1変位部(61b)の変位に応じて該弁体(65)を移動させるように変位する第2変位部(62c)が設けられるとともに、第2変位部(62c)の変位方向に直交する断面積S2が、第1変位部(61b)の同方向の断面積S1よりも小さく設定された第1液室(70)と、上記第1液室(70)に連通された第2液室(52)と、上記第1液室(70)及び第2液室(52)に封入された液体が熱膨張すると上記第2液室(52)を拡張させるように変位する熱膨張吸収部材(54)とを備えていることを特徴としている。
【0010】
第1の発明では、駆動源(50)によって弁体(65)が駆動されることで、弁体(65)が所定の流体流路(11)の弁座開口(49)を開放する位置と、閉鎖する位置とに変位する。ここで、本発明の電動弁には、弁体(65)の変位量を拡大させるための第1液室(70)が設けられている。
【0011】
具体的に、第1液室(70)には所定の液体が封入される。第1液室(70)の一端には第1変位部(61b)が設けられ、他端には第2変位部(62c)が設けられている。
【0012】
駆動源(50)によって第1変位部(61b)が押し付けられると、第1変位部(61b)の変位に伴い、第1液室(70)の一端側を押し下げるように圧力がかかる。すると、パスカルの原理により、この圧力が他端側の第2変位部(62c)に作用する。その結果、第2変位部(62c)とともに、該第2変位部(62c)が保持している弁体(65)が移動する。これにより、弁体(65)が開閉位置の間を変位することになる。
【0013】
ここで、本発明の第1液室(70)では、第2変位部(62c)の変位方向に直交する面(以下、受圧面という)の断面積S2が、第1変位部(61b)の変位方向に直交する面(以下、作用面という)の断面積S1よりも小さくなっている。
【0014】
一方、上記第1変位部(61b)により、第1液室(70)の一端側が押し下げられる前後で、該第1液室(70)の内容積は、ほぼ一定となるように作用する。したがって、第1変位部(61b)で押し下げられて、第1液室(70)の一端側、つまり作用面付近の容積が減少すると、減少した分だけ他端側、つまり受圧面付近の容積が増加する。ここで、受圧面の断面積S2は、作用面の断面積S1よりも小さいので、上述したように変化する容積がほぼ一定の場合、第2変位部(62c)の変位量は、第1変位部(61b)の変位量よりも多くなる。
【0015】
以上より、本発明の第1液室(70)では、第1変位部(61b)の変位量が拡大されて第2変位部(62c)に伝達される。これにより、第2変位部(62c)に保持されるように変位する弁体(65)のストローク量が増大することになる。
【0016】
又、第1の発明では、上記第1液室(70)に連通された第2液室(52)と、上記第1液室(70)及び第2液室(52)に封入された液体が熱膨張すると上記第2液室(52)を拡張させるように変位する熱膨張吸収部材(54)とを備えている。これにより、上記液体に熱膨張が起こった場合に、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を拡張させることで、熱膨張による液体の体積増加を吸収することできる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記熱膨張吸収部材(54)は、上記第2液室(52)内の液体に浸漬するように設けられ、該熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体よりも体積膨張率の大きい液体が封入されていることを特徴としている。
【0018】
第2の発明では、上記第2液室(52)内の液体の温度が上昇すると、熱膨張吸収部材(54)内の液体の温度も上昇する。ここで、熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体よりも体積膨張率の大きい液体が封入されている。このため、上記第2液室(52)内の上記液体に熱膨張が起こった場合に、熱膨張吸収部材(54)内の体積膨張率の大きい液体が第2液室(52)内の上記液体よりも大きく熱膨張するので、該熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を確実に拡張させることができ、熱膨張による液体の体積増加を確実に吸収することできる。
【0019】
第3の発明は、第1の発明において、上記熱膨張吸収部材(54)は、上記第2液室(52)内の液体に浸漬するように設けられ、該熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体が封入されるとともに、該熱膨張吸収部材(54)の変位方向に直交する断面積は、上記第2液室(52)の同方向の断面積よりも小さく設定されていることを特徴としている。
【0020】
第3の発明では、上記第2液室(52)及び熱膨張吸収部材(54)の内部にそれぞれ同一の液体を封入する場合には、熱膨張吸収部材(54)の変位方向に直交する断面積は、上記第2液室(52)の同方向の断面積よりも小さく設定する。こうすれば、封入した液体の温度が上昇した場合に、断面積が小さい熱膨張吸収部材(54)の方が第2液室(52)よりも大きく変位する。したがって、このような構成であっても、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を確実に拡張させることができ、熱膨張による液体の体積増加を確実に吸収することできる。
【0021】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、上記駆動源(50)で上記第1変位部(61b)を押し付けた場合に上記第2液室(52)の拡張を禁止する容量保存手段(55)が設けられていることを特徴としている。
【0022】
第4の発明では、熱膨張吸収部材(54)の伸縮量を調整するために容量保存手段(55)が設けられている。この容量保存手段(55)は、駆動源(50)が第1変位部(61b)を押し付けた場合に、第2液室(52)の拡張を禁止するように熱膨張吸収部材(54)が調整される。これにより、上記駆動源(50)が第1筒状部材(61)を押し付けた場合に、熱膨張吸収部材(54)が拡張しないようにできる。
【0023】
第5の発明は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路の冷媒流路(11)を開閉する電動弁(30)を備えた冷凍装置を前提としている。
【0024】
そして、上記電動弁が、請求項1から4のいずれか1つに記載の電動弁で構成されていることを特徴としている。
【0025】
第5の発明では、第1から第4までの発明の電動弁が、冷凍装置(10)の冷媒回路の冷媒流路(11)を開閉する電動弁として用いられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、駆動源(50)に押し付けられて変位する第1変位部(48)の変位量を拡大させて第2変位部(62c)へ伝達させると共に、拡大された変位量で第2変位部(62c)を変位させて弁体(65)を移動させる第1液室(70)を設けるようにしている。
【0027】
これにより、駆動源(50)によって第1変位部(48)をさほど変位させなくても、第2変位部(62c)及び弁体(65)を比較的大きな変位量で変位させることができる。従って、弁体(65)のストローク量を充分確保することができ、広範囲に亘って弁体(65)の開閉位置を変更することができる。
【0028】
又、上記第1液室(70)の液体に熱膨張が起こった場合に、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を拡張させることで、熱膨張による液体の体積増加を吸収することできる。これにより、上記液体に熱膨張が起こったとしても、弁体(65)が変位しないようにすることができる。
【0029】
第2の発明によれば、上記第2液室(52)内の液体の温度が上昇すると、熱膨張吸収部材(54)内の液体の温度も上昇する。ここで、熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体よりも体積膨張率の大きい液体が封入されているため、上記液体に熱膨張が起こった場合に、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を確実に拡張させることができ、熱膨張による液体の体積増加を確実に吸収することできる。これにより、上記液体に熱膨張が起こったとしても、弁体(65)が確実に変位しないようにすることができる。
【0030】
また、上記第3の発明によれば、上記第2液室(52)及び熱膨張吸収部材(54)の内部にそれぞれ同一の液体を封入した場合には、熱膨張吸収部材(54)の変位方向に直交する断面積は、上記第2液室(52)の同方向の断面積よりも小さく設定する。こうすれば、封入した液体の温度が上昇した場合に、断面積が小さい熱膨張吸収部材(54)の方を第2液室(52)よりも大きく変位させることができる。したがって、このような構成であっても、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)を確実に拡張させることができ、熱膨張による液体の体積増加を確実に吸収することできる。これにより、上記液体に熱膨張が起こったとしても、弁体(65)が確実に変位しないようにすることができる。
【0031】
また、上記第4の発明によれば、熱膨張吸収部材(54)の伸縮量を調整するために容量保存手段(55)が設けられている。この容量保存手段(55)は、駆動源(50)が第1変位部(61b)を押し付けた場合に、熱膨張吸収部材(54)が第2液室(52)の拡張を禁止するように調整されている。これにより、上記駆動源(50)が第1筒状部材(61)を押し付けた場合に、熱膨張吸収部材(54)が拡張しないようにできる。したがって、確実に弁体(65)のみを変位させることができる。
【0032】
また、上記第5の発明によれば、冷凍サイクルを行う冷媒回路の冷媒流路(11)を開閉する電動弁として、第1から第4までの電動弁を適用するようにしている。従って、本発明によれば、例えばモータ式の電動弁と比較して、電動弁に要するスペースを最小限に抑えることができ、冷凍装置(10)のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
本実施形態は、本発明に係る電動弁を室内の空調を行う空気調和装置(10)の膨張弁として適用したものである。空気調和装置(10)は、冷媒回路を備えており、該冷媒回路で冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置を構成している。
【0035】
〈空気調和装置の概略構成〉
図1に示すように、空気調和装置(10)は、室外ユニット(12)と室内ユニット(13)とを備えている。室外ユニット(12)は室外に設置され、室内ユニット(13)は室内に設置されている。空気調和装置(10)では、室外ユニット(12)と室内ユニット(13)とが連絡配管を介して互いに接続されることで、冷媒が流れる冷媒回路が構成されている。
【0036】
室外ユニット(12)には、圧縮機(20)と室外熱交換器(21)と膨張弁(30)と四路切換弁(23)とが設けられている。また、室内ユニット(13)には、室内熱交換器(22)が設けられている。
【0037】
圧縮機(20)は、冷媒を所定圧力まで圧縮する圧縮機構を構成している。圧縮機(20)は、例えばスクロール型、あるいはロータリ型の圧縮機で構成されている。室外熱交換器(21)及び室内熱交換器(22)は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器を構成している。室外熱交換器(21)では、冷媒と室外空気との間で熱交換が行われる。また、室内熱交換器(22)では、冷媒と室内空気との間で熱交換が行われる。
【0038】
膨張弁(30)は、本発明の電動弁を構成している。膨張弁(30)は、流体としての冷媒が流れる所定流路、つまり冷媒回路の液配管の冷媒流路(11)の開度を調節する。なお、本実施形態では、膨張弁(30)を室外ユニット(12)に設けているが、この膨張弁(30)を室内ユニット(13)に設けるようにしてもよい。
【0039】
四路切換弁(23)は、第1から第4までのポートを備えている。四路切換弁(23)では、第1ポートが圧縮機(20)の吐出側と繋がり、第2ポートが室外熱交換器(21)と繋がり、第3ポートが室内熱交換器(22)と繋がり、第4ポートが圧縮機(20)の吸入側と繋がっている。四路切換弁(23)は、第1ポートと第2ポートとを連通させると同時に第3ポートと第4ポートとを連通させる状態(図1の実線で示す状態)と、第1ポートと第3ポートとを連通させると同時に第2ポートと第4ポートとを連通させる状態(図1の破線で示す状態)とに、設定が切換可能となっている。
【0040】
〈膨張弁の構成〉
図2(a)に示す膨張弁(30)は、本体部(40)と上部ケーシング(45)とを備え、本体部(40)と上部ケーシング(45)とに跨って第1液室(70)が設けられ、上部ケーシング(45)内に、圧電アクチュエータ(50)と第2液室(52)と容積調整用ベローズ(熱膨張吸収部材)(54)とコイルバネ(容量保存手段)(55)とが設けられ、本体部(40)内に弁体(65)が設けれている。
【0041】
本体部(40)は、円筒状に形成されている。本体部(40)には、第1通路(41)と第2通路(42)と下側収容空間(43)とが形成されている。第1通路(41)は、本体部(40)を外周側から貫通しており、その一端が下側収容空間(43)と連通している。第2通路(42)は、本体部(40)を下側から貫通しており、その一端が下側収容空間(43)と連通している。第1通路(41)、第2通路(42)、及び下側収容空間(43)は、冷媒が流れる流路を構成している。また、第2通路(42)の一端側の開口部は、弁体(65)によって開閉される弁座開口(49)を構成している。
【0042】
又、本体部(40)には、導入通路(73)と連通路(53)とが形成されている。導入通路(73)は、本体部(40)を上面側から貫通しており、その一端が下側収容空間(43)と連通し、他端が後述する上側収容空間(44)と連通している。尚、導入通路(73)は、下側収容空間(43)を流れる冷媒を上側収容空間(44)へ導く流路を構成している。連通路(53)は、本体部(40)を上面側から貫通しており、その一端が第1液室(70)と連通し、他端が上記第2液室(52)と連通している。
【0043】
上部ケーシング(45)は、本体部(40)の上側に設けられており、該上部ケーシング(45)の内側には、上述した上側収容空間(44)が形成されている。本実施形態の上部ケーシング(45)は、下側に開放した円筒状に形成され、大径部(46)と、該大径部(46)の上側に該大径部(46)よりも小径の小径部(47)とが連続して形成されている。
【0044】
又、この小径部(47)の上面には孔部が設けられ、この孔部を閉塞するように蓋部(51)が設けられている。蓋部(51)の下面には支持棒が取り付けられている。尚、この支持棒が孔部を貫通するように配置されている。そして、この支持棒の下面には、圧電アクチュエータ(50)の上端が固定されている。
【0045】
圧電アクチュエータ(50)は、弁体(65)の駆動源を構成しており、縦長の棒状に形成されている。この圧電アクチュエータ(50)は、複数枚の圧電素子(ピエゾ素子)が長手方向に積層されて構成されている。つまり、圧電アクチュエータ(50)は、いわゆる積層型の圧電アクチュエータで構成されている。また、本実施形態では、圧電アクチュエータ(50)は、セラミック材料から成る圧電素子により構成されている。圧電アクチュエータ(50)には、その正極及び負極にリード線を介して電源が接続されている(図示省略)。電源からは、圧電アクチュエータ(50)に対して電圧が印加される。これにより、圧電アクチュエータ(50)は、長手方向、すなわちピエゾ素子の積層方向に伸縮変形可能に構成されている。
【0046】
圧電アクチュエータ(50)は、上部ケーシング(45)の小径部(47)内に概ね収容されている。圧電アクチュエータ(50)の下端は、上部ケーシング(45)の大径部(46)の内部に臨んでいる。
【0047】
第1液室(70)は、上側収容空間(44)内に設けられた第1筒状部材(61)及び下側収容空間(43)内に設けられた第2筒状部材(62)の内部に形成されている。ここで、第1筒状部材(61)には、その内部に上部室(71)が形成され、第2筒状部材(62)には、その内部に下部室(72)が形成されている。第1筒状部材(61)の上部室(71)と第2筒状部材(62)の下部室(72)とは、互いに連通している。
【0048】
上記第1液室(70)には、作動流体として塩化カルシウム溶液(液体)が封入されている。尚。作動流体は塩化カルシウム溶液である必要はなく、非圧縮性の流体であればよく。更に好ましくは電解質溶液であればよい。
【0049】
第1筒状部材(61)は、上下方向、つまり軸方向に扁平な円筒状に形成されている。第1筒状部材(61)は、筒状の周壁部(61a)と、該周壁部(61a)の上側の一端を閉塞する上蓋部(第1変位部)(61b)と、周壁部(61a)の下側の他端に形成される底壁部(61c)とを有している。
【0050】
第1筒状部材(61)の周壁部(61a)は、所定の弾性力を有するベローズ部材によって構成されている。つまり、第1筒状部材(61)は、軸方向に伸縮変形可能に構成されている。第1筒状部材(61)の上蓋部(61b)は、円板状に形成されている。そして、上蓋部(61b)には、上記円板部材(48)の下端面が固定されている。上蓋部(61b)は、円板部材(48)と概ね同径であり、且つ円板部材(48)と同軸となっている。上蓋部(61b)には、円板部材(48)を介して圧電アクチュエータ(50)の変形に伴う押し付け力が作用する。そして、上蓋部(61b)は、圧電アクチュエータ(50)の押し付け力に応じて軸方向に変位可能な第1変位部を構成している。第1筒状部材(61)の底壁部(61c)は、その中央に開口を有するリング板状に形成されている。
【0051】
第2筒状部材(62)は、上下方向、つまり軸方向に延びる円筒状に形成されている。第2筒状部材(62)は、上側が開口する円筒状の周壁部(62a)と、周壁部(62a)の下側を閉塞する底壁部(第2変位部)(62c)とを有している。
【0052】
第2筒状部材(62)の周壁部(62a)は、上記第1筒状部材(61)の周壁部(61a)と同様にして、所定の弾性力を有するベローズ部材によって構成されている。つまり、第2筒状部材(62)は、軸方向に伸縮変形可能に構成されている。第2筒状部材(62)の上端側の開口部は、上記第1筒状部材(61)の底壁部(61c)の開口部と連接している。
【0053】
第2筒状部材(62)の底壁部(62c)は、円板状に形成されている。そして、底壁部(62c)の下面には、上記弁体(65)が固定されている。つまり、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)は、弁体(65)を保持するための保持部を構成している。そして、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)は、弁体(65)を保持するようにしながら変位して弁体(65)を移動させる第2変位部を構成している。
【0054】
弁体(65)は、下側に向かうに連れて小径となるテーパー状、あるいは円錐状に形成されている。弁体(65)は、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)に保持されるようにして、図2の(A)で示す位置(開放位置)と、図2の(B)で示す位置(閉鎖位置)との間を移動することで、第2通路(42)の開度を調節するように構成されている。
【0055】
上述の第1液室(70)では、第2筒状部材(62)の内径が、上記第1筒状部材(61)の内径よりも小さくなっている。つまり、第2筒状部材(62)は、その軸断面積S2(軸に直交する断面の面積)が、第1筒状部材(61)の軸断面積S1よりも小さくなるように構成されている。
【0056】
具体的に、本実施形態では、第2筒状部材(62)の断面積S2が約0.5cm2 であるのに対し、第1筒状部材(61)の断面積S1は約6cm2 である。つまり、本実施形態では、第1筒状部材(61)の断面積S1は、第2筒状部材(62)の面積S2の約12倍となっている。以上のような構成の第1液室(70)は、第1筒状部材(61)の上蓋部(61b)の変位量を拡大させて、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)へ伝達させる。つまり、第1液室(70)は、圧電アクチュエータ(50)の長手方向の変形量よりも大きな変位量で弁体(65)を変位させるように構成されている。このような弁体(65)の制御動作の詳細は後述するものとする。
【0057】
又、上記第1液室(70)は、上述したように上記連通路(53)を経て、第2液室(52)と連通している。つまり、第2液室(52)には上記第1液室(70)の塩化カルシウム溶液が導入されている。第2液室(52)は、上側収容空間(44)内に設けられた第3筒状部材(56)の内部に形成されている。
【0058】
第3筒状部材(56)は、上下方向、つまり軸方向に延びる円筒状に形成されている。第3筒状部材(56)は、円筒状の周壁部を有し、この周壁部の内側に本体部(40)の上面の設けられた連通路(53)の開口部が位置するように、本体部(40)の上面に固定されている。又、この周壁部は、所定の弾性力を有するベローズ部材によって構成されている。つまり、第3筒状部材(56)は、軸方向に伸縮変形可能に構成されている。そして、第3筒状部材(56)の上端側の開口部を閉塞するように平板(57)が設けられている。
【0059】
第3筒状部材(56)の周壁部の内側には、容積調整用ベローズ(54)が配置されている。この容積調整用ベローズ(54)は、所定の弾性力を有して、上下方向、つまり軸方向に延びる円筒状に形成されている。容積調整用ベローズ(54)の下側は、本体部(40)の上面に固定され、該容積調整用ベローズ(54)の上側は、平板(57)の下面に固定されている。容積調整用ベローズ(54)の内部には、エタノールが封入されている。このエタノールは、第1、2液室(71,52)内の塩化カルシウム溶液より体積膨張率の大きいものである。
【0060】
上記第3筒状部材(56)における平板(57)の上面と上部ケーシング(45)の内壁面との間には、コイルバネ(55)が設けられている。このコイルバネ(55)のバネ定数は、所定の値に設定されて、容積調整用ベローズ(54)の軸方向への変位量を調整している。
【0061】
−運転動作−
まず、上記実施形態の空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)では、四路切換弁(23)の設定が図1の実線で示す状態と、破線で示す状態とに切り換わることで、冷房運転と暖房運転とが行われる。ここでは、これらの運転のうち冷房運転を代表して説明する。
【0062】
図1に示す圧縮機(20)が運転状態になると、圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、四路切換弁(23)を通過して室外熱交換器(21)を流れる。室外熱交換器(21)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(21)で凝縮した冷媒は、膨張弁(30)を流れる。膨張弁(30)では、圧電アクチュエータ(50)に印加される電圧に応じて、冷媒が流れる流路の開度が適宜調節される。その結果、冷媒は膨張弁(30)通過する際に減圧されて膨張する。
【0063】
膨張弁(30)で膨張した冷媒は、室内熱交換器(22)を流れる。室内熱交換器(22)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却され、室内の冷房が行われる。室内熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、圧縮機(20)に吸入されて再び圧縮される。
【0064】
−電動弁の制御動作−
次に、本発明の電動弁を構成する膨張弁(30)の制御動作について図2を参照しながら説明する。
【0065】
膨張弁(30)による冷媒回路の開度制御時には、圧電アクチュエータ(50)に所定値の電圧が印加される。ここで、図2(A)に示す状態の圧電アクチュエータ(50)に印加される電圧が増大すると、圧電アクチュエータ(50)は主として長手方向に膨張変形しようとする。その結果、圧電アクチュエータ(50)は、変形が許容される下側に向かって伸長する。
【0066】
圧電アクチュエータ(50)が所定の変形量で下側に伸長変形すると、第1筒状部材(61)の上蓋部(61b)に所定の押し付け力が作用する。この押し付け力によって上部室(71)の容積が縮小する。上部室(71)の容積が縮小すると、縮小した容積の分だけ、上部室(71)の塩化カルシウム溶液が押しのけられて下部室(72)側へ移動する。上部室(71)から下部室(72)へ塩化カルシウム溶液が押しのけられると、下部室(72)が拡張して底壁部(62c)が下側に変位する。
【0067】
具体的に、上部室(71)の作用面(断面積S1をなす面)と、下部室(72)の受圧面(断面積S2をなす面)とでは、断面積S1よりも断面積S2の方が小さくなっている。従って、例えば圧電アクチュエータ(50)の平均的な変位量が例えば0.6mmである場合、底壁部(62c)の変位量は0.6mm×S1/S2=約7.2mmとなる。従って、底壁部(62c)は、圧電アクチュエータ(50)の変位量よりも極めて大きな変位量で下側に変位する。
【0068】
以上のようにして第2筒状部材(62)の底壁部(62c)が下側に変位すると、弁体(65)が下側に変位する。つまり、弁体(65)は、底壁部(62c)と同等の変位量で下側に変位する。その結果、弁体(65)は、図2(B)に示すように、第2通路(42)を閉鎖する位置となる。
【0069】
一方、図2(B)に示す状態の圧電アクチュエータ(50)に印加される電圧が減少する若しくはゼロ電圧になると、圧電アクチュエータ(50)は主として長手方向に収縮変形しようとする。その結果、圧電アクチュエータ(50)は、上方に向かって収縮する。
【0070】
圧電アクチュエータ(50)が所定の変形量で上側に伸長変形すると、第1筒状部材(61)に対する押し付け力が小さくなり、上部室(71)の容積が拡大する。上部室(71)の容積が拡大すると、下部室(72)内の塩化カルシウム溶液が上部室(71)側へ引き込まれる。
【0071】
下部室(72)から上部室(71)へ塩化カルシウム溶液が引き込まれると、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)は、上側に変位する。ここで、圧電アクチュエータ(50)が元の状態に戻る際の平均的な変位量が約0.6mmである場合、底壁部(62c)の変位量は0.6mm×S1/S2=約7.2mmとなる。従って、底壁部(62c)は、圧電アクチュエータ(50)の変位量よりも極めて大きな変位量で上側に変位する。
【0072】
以上のようにして筒状部材(62)の底壁部(62c)が上側に変位すると、弁体(65)が上側に変位する。つまり、弁体(65)は、底壁部(62c)と同等の変位量で上側に変位する。その結果、弁体(65)は、図2(A)に示すように、第2通路(42)を開放する位置となる。
【0073】
〈塩化カルシウム溶液の熱膨張防止作用について〉
ところで、上述のような膨張弁(30)で冷媒回路の開度を調節する際には、弁体(65)の周辺、つまり下側収容空間(43)が高温の冷媒で満たされる場合がある。そのため、この冷媒の熱が、下側収容空間(43)に収納される弁体(65)や第2筒状部材(62)へ伝熱すると、下部室(72)の塩化カルシウム溶液が加熱され、更には上部室(71)の塩化カルシウム溶液も加熱されてしまう。このようにして両室(71,72)、即ち第1液室(70)の塩化カルシウム溶液が加熱されると、塩化カルシウム溶液が熱膨張してしまう。その結果、塩化カルシウム溶液の容積が大きくなり、第1液室(70)の内圧が上昇する。これにより、底壁部(62c)、更には弁体(65)が変位してしまうので、弁体(65)を所望とする位置で保持することができず、膨張弁(30)の開度を適切に制御できなくなるという問題が生じる。そこで、本実施形態の膨張弁(30)では、このような塩化カルシウム溶液の熱膨張に起因する弁体(65)の変位を抑制するようにしている。
【0074】
具体的に、まず、本実施形態では、第1液室(70)と第2液室(52)との間に連通路(53)を設け、該第2液室(52)の内部に容積調整用ベローズ(54)を設けている。この容積調整用ベローズ(54)は、該容積調整用ベローズ(54)自体が軸方向に伸縮することにより、上記第2液室(52)の容積を可変に構成している。ここで、容積調整用ベローズ(54)は第2液室(52)内であって、塩化カルシウム溶液内に浸漬されるように配置されている。したがって、塩化カルシウム溶液の温度が上昇すると、容積調整用ベローズ(54)内のエタノールの温度も上昇する。上述したように、エタノールの体積膨張率が塩化カルシウム溶液より大きいため、容積調整用ベローズ(54)の変位量は、第3筒状部材(56)の変位量より大きくなる。したがって、上記容積調整用ベローズ(54)は、第3筒状部材(56)をさらに押し上げる。
【0075】
この構成により、上記第1液室(70)の塩化カルシウム溶液に熱膨張が起こった場合に、容積調整用ベローズ(54)が第2液室(52)を拡張させることで、熱膨張による塩化カルシウム溶液の体積増加を吸収することできる。
【0076】
又、容積調整用ベローズ(54)の伸縮量を調整するためにコイルバネ(55)が設けられている。このコイルバネ(55)のバネ定数は、圧電アクチュエータ(50)が第1筒状部材(61)を押し付けた場合に、容積調整用ベローズ(54)が第2液室(52)の拡張を禁止するような値に設定されている。
【0077】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、圧電アクチュエータ(50)に押し付けられて変位する第1筒状部材(61)の上蓋部(61b)の変位量を第1液室(70)によって拡大させ、拡大された変位量で弁体(65)を変位させるようにしている。従って、圧電アクチュエータ(50)の長手方向の長さを短くでき、ひいては複数の圧電素子の積層枚数を減らすことができ、且つ弁体(65)のストローク量を充分確保することができる。その結果、膨張弁(30)の小型化、低コスト化を図ることができ、更には消費電力の削減を図ることができる。
【0078】
又、上記実施形態では、第1液室(70)と第2液室(52)との間に連通路(53)を設け、該第2液室(52)の内部に容積調整用ベローズ(54)を設けている。この容積調整用ベローズ(54)は、該容積調整用ベローズ(54)自体が軸方向に伸縮することにより、上記第2液室(52)の容積を可変に構成している。ここで、容積調整用ベローズ(54)は第2液室(52)内であって、塩化カルシウム溶液内に浸漬されるように配置されている。したがって、塩化カルシウム溶液の温度が上昇すると、容積調整用ベローズ(54)内のエタノールの温度も上昇する。上述したように、エタノールの体積膨張率が塩化カルシウム溶液より大きいため、容積調整用ベローズ(54)の変位量は、第3筒状部材(56)の変位量より大きくなる。したがって、上記容積調整用ベローズ(54)は、第3筒状部材(56)をさらに押し上げる。
【0079】
この構成により、上記第1液室(70)の塩化カルシウム溶液に熱膨張が起こった場合に、容積調整用ベローズ(54)が第2液室(52)を拡張させることで、熱膨張による塩化カルシウム溶液の体積増加を吸収することできる。これにより、塩化カルシウム溶液に熱膨張が起こったとしても、確実に弁体(65)が変位しないようにすることができる。
【0080】
又、上記実施形態では、容積調整用ベローズ(54)の伸縮量を調整するためにコイルバネ(55)が設けられている。このコイルバネ(55)のバネ定数は、圧電アクチュエータ(50)が第1筒状部材(61)を押し付けた場合に、容積調整用ベローズ(54)が第2液室(52)の拡張を禁止するような値に設定されている。したがって、圧電アクチュエータ(50)が第1筒状部材(61)を押し付けた場合に、容積調整用ベローズ(54)が拡張しないので、確実に弁体(65)を変位させることができる。
【0081】
又、上記実施形態では、上記導入通路(73)が設けられているので、下側収容空間(43)を流れる冷媒を上側収容空間(44)へ導くことができる。従って、上側収容空間(44)が、冷媒(例えば高圧冷媒)で満たされており、第1筒状部材(61)の上蓋部(61b)に作用している。これにより、上蓋部(61b)には、圧電アクチュエータ(50)の押し付け方向と同一方向の圧力が作用する。このように上蓋部(61b)の背面側に冷媒の圧力を作用させることで、弁体(65)側から圧電アクチュエータ(50)へ向かう応力をキャンセルすることができる。
【0082】
したがって、下側収容空間(43)側からの圧力に抗するように、上側収容空間(44)側から冷媒の圧力が上蓋部(61b)に作用する。これにより、圧電アクチュエータ(50)に作用する応力が低減されるので、圧電アクチュエータ(50)が折れてしまうといような不具合を回避できる。また、これにより、圧電アクチュエータ(50)の厚みや径を小さくできるので、電動弁(30)の小型化を図ることができる。
【0083】
−実施形態の変形例1−
変形例1の電動弁(30)は、図3に示すように、上記実施形態の第1筒状部材(61)を設けない代わりに、上記本体部(40)に上部室(71)が設けられ、該上部室(71)の上側に上側開放部(61a)が形成されている。そして、この上側開放部(61a)に嵌合するようにダイヤフラム(100)が設けられている。このダイヤフラム(100)は、上側開放部(61a)の開口面に沿うように上側開放部(61a)に固定され、上部室(71)を封止している。ダイヤフラム(100)は、弾性変形可能な金属板で構成されている。
【0084】
ダイヤフラム(100)の上面の中央部には、上記圧電アクチュエータ(50)の下端が固定されている。これにより、圧電アクチュエータ(50)の変形に伴う押し付け力が、ダイヤフラム(100)の上面中央部に作用する。ダイヤフラム(100)は、この押し付け力によって、上部室(71)の内側に向かって変位するように撓み変形する第1変位部を構成している。
【0085】
圧電アクチュエータ(50)が所定の変形量で下側に伸長変形すると、ダイヤフラム(100)の中央部に所定の押し付け力が作用する。ダイヤフラム(100)は、この押し付け力によって中央が下側に膨出するように撓み変形する。その結果、上部室(71)の容積が縮小する。上部室(71)の容積が縮小すると、上部室(71)の液体が押しのけられて下部室(72)側へ移動する。つまり、上部室(71)の容積の縮小に伴い、上部室(71)及び下部室(72)の内圧が上昇する。
【0086】
上部室(71)から下部室(72)へ液体が押しのけられると、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)に作用する圧力も上昇する。これにより、第2筒状部材(62)が軸方向に伸長変形すると同時に底壁部(62c)が下側に変位する。ここで、上部室(71)へ圧力を作用させるためのダイヤフラム(100)の作用面(面積S1をなす面)と、下部室(72)の液体から圧力を受ける受圧面(底壁部(62c)の面積S2をなす面)とでは、面積S1よりも面積S2の方が小さくなっている。従って、例えばダイヤフラム(100)の平均的な変位量が例えば0.6mmである場合、底壁部(62c)の変位量は0.6mm×S1/S2=約7.2mmとなる。従って、底壁部(62c)は、ダイヤフラム(100)の変位量よりも極めて大きな変位量で下側に変位する。
【0087】
以上のようにして第2筒状部材(62)の底壁部(62c)が下側に変位すると、弁体(65)が下側に変位する。つまり、弁体(65)は、変位量が拡大された底壁部(62c)と同等の変位量で下側に変位する。その結果、弁体(65)は、第2通路(42)を閉鎖する位置となる。
【0088】
一方、圧電アクチュエータ(50)に印加される電圧が減少する若しくはゼロ電圧になると、圧電アクチュエータ(50)は主として長手方向に収縮変形しようとする。その結果、圧電アクチュエータ(50)は、上方に向かって収縮する。
【0089】
圧電アクチュエータ(50)が所定の変形量で上側に伸長変形すると、ダイヤフラム(100)に対する押し付け力が小さくなり、ダイヤフラム(100)は元の平板状の状態に戻る。その結果、上部室(71)の容積が拡大する。上部室(71)の容積が拡大すると、下部室(72)内の液体が上部室(71)側へ引っ張られ、上部室(71)及び下部室(72)の内圧が減少する。
【0090】
下部室(72)から上部室(71)へ液体が引き込まれると、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)に作用する圧力も減少する。これにより、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)は、上側に変位する。ここで、ダイヤフラム(100)が元の状態に戻る際の平均的な変位量が約0.6mmである場合、底壁部(62c)の変位量は0.6mm×S1/S2=約7.2mmとなる。従って、底壁部(62c)は、ダイヤフラム(100)の変位量よりも極めて大きな変位量で上側に変位する。以上のようにして第2筒状部材(62)の底壁部(62c)が上側に変位すると、弁体(65)が上側に変位する。つまり、弁体(65)は、変位量が拡大された底壁部(62c)と同等の変位量で上側に変位する。その結果、弁体(65)は、第2通路(42)を開放する位置となる。
【0091】
以上より、上記実施形態と同様、弁体(65)のストローク量を拡大することができる。
【0092】
−実施形態の変形例2−
変形例2の電動弁(30)は、第1筒状部材(61)に代えて、第1シリンダ部材(81)と第1ピストン部材(91)とを設けるようにしたものである。以下には、上記実施形態と異なる点について説明する。尚、変形例2の電動弁(30)を示す図4は、上記実施形態と異なる点のみを図示している。
【0093】
図4に示すように、上側収容空間(44)には、第1シリンダ部材(81)が収納されている。第1シリンダ部材(81)は、軸方向の両端が開口する筒状であり、その内部に上部室(71)を形成している。第1シリンダ部材(81)の下端は、環状仕切板(88)に固定されている。一方、第1シリンダ部材(81)の上端は、上部室(71)の一端側を開放させるように上側開放部(81a)が形成されている。また、上側開放部(81a)の内周面の上端には、径方向の内側に突出する抜き止め部(81b)が形成されている。
【0094】
上記第1ピストン部材(91)は、軸方向に扁平な円柱状に形成されている。第1ピストン部材(91)は、第1シリンダ部材(81)の上側開放部(81a)に内嵌しており、上部室(71)を上側から塞いでいる。そして、第1ピストン部材(91)は、上部室(71)において、軸方向に進退自在となっている。第1ピストン部材(91)の周囲には、シール部材としてのOリング(91a)が設けられている。第1ピストン部材(91)は、圧電アクチュエータ(50)に押し付けられて変位する第1変位部を構成している。
【0095】
第1ピストン部材(91)の下側の断面積S1と、第2筒状部材(62)の底壁部(62c)の上側の面積S2とを比較すると、面積S2が面積S1よりも小さくなっている。これにより、上記実施形態と同様、弁体(65)のストローク量を拡大することができる。
【0096】
具体的に、圧電アクチュエータ(50)に比較的大きな電圧が印加されると、圧電アクチュエータ(50)が下側に伸長変形する。これに伴い、第1ピストン部材(91)が下側に変位する。その結果、上部室(71)の容積が縮小し、上部室(71)の作動流体が下部室(72)へ押しのけられる。
【0097】
第2筒状部材(62)では、底壁部(62c)に作用する内圧が上昇ことにより、周壁部(62a)が伸長変形し、底壁部(62c)及び弁体(65)が下側に変位する。ここで、弁体(65)の変位量は、圧電アクチュエータ(50)の変形量、つまり第1ピストン部材(91)の変位量に上記S1/S2の比を乗じたものとなる。その結果、圧電アクチュエータ(50)の変形量が比較的小さくても、弁体(65)は大きなストローク量で変位して閉鎖位置となる。
【0098】
逆に、圧電アクチュエータ(50)に比較的小さな電圧が印加されると、圧電アクチュエータ(50)が上側に収縮変形する。これに伴い、第1ピストン部材(91)が上側に変位する。その結果、上部室(71)の容積が拡大し、下部室(72)の作動流体が上部室(71)へ引き込まれる。
【0099】
第2筒状部材(62)では、底壁部(62c)に作用する内圧が減少することにより、周壁部(62a)が収縮変形し、底壁部(62c)及び弁体(65)が上側に変位する。ここで、弁体(65)の変位量は、圧電アクチュエータ(50)の変形量、つまり第1ピストン部材(91)の変位量に上記S1/S2の比を乗じたものとなる。その結果、圧電アクチュエータ(50)の変形量が比較的小さくても、弁体(65)は大きなストローク量で変位して開放位置となる。
【0100】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0101】
又、本実施形態では、上記容積調整用ベローズ(54)にはエタノールを封入しているが、第1,2液室(70,52)に封入した塩化カルシウム溶液を封入してもよい。この場合、第3筒状部材(56)の軸断面積と、容積調整用ベローズ(54)の軸断面積と、断面積S2とを適切に設定する必要がある。つまり、塩化カルシウム溶液の熱膨張により増加した体積と、上記第2液室(52)が拡張する容積とが同一となるように設定する。例えば、第3筒状部材(56)の軸断面積から容積調整用ベローズ(54)の軸断面積を差し引いた値が、断面積S2となるように設定してもよい。
【0102】
又、上記実施形態では、空気調和装置(10)の冷媒回路の膨張弁(30)として本発明の電動弁を適用するようにしているが、これに限定されず、例えばこの電動弁を冷媒回路の所定の流路を開閉する開閉弁や、冷媒の流量を調節する流量調節弁として適用するようにしてもよい。
【0103】
具体的に、図5の例は、空気調和装置(10)の熱交換器の分流器の開閉を行う開閉弁(32,33)に本発明の電動弁を適用したものである。この例の室外熱交換器(21)では、互いに分岐する3つのパス(21a,21b,21c)が形成されており、各パス(21a,21b,21c)にそれぞれ開閉弁(32)が1つずつ設けられている。同様に、室内熱交換器(22)では、互いに分岐する3つのパス(22a,22b,22c)が形成されており、各パス(22a,22b,22c)にそれぞれ開閉弁(33)が1つずつ設けられている。
【0104】
このような分流器の各開閉弁(32,33)として本発明の電動弁を適用することで、この分流器のコンパクト化を図ることができ、且つ各開閉弁の消費電力を抑えることができる。従って、空気調和装置(10)の省エネ性を向上できる。
【0105】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明は、駆動源によって弁体を駆動させて所定の流体流路を開閉する電動弁、及び電動弁を備えた冷凍装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施形態に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成を示す配管系統図である。
【図2】実施形態に係る電動弁の概略構成を示す縦断面図であり、図2(A)は弁体が開放位置に変位している状態を示すものであり、図2(B)は弁体が閉鎖位置に変位している状態を示すものである。
【図3】実施形態の変形例1に係る電動弁の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】実施形態の変形例2に係る電動弁の概略構成を示す縦断面図である。
【図5】その他の実施形態に係る空気調和装置の概略構成を示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0108】
10 空気調和装置(冷凍装置)
11 流体流路
30 膨張弁(電動弁)
32,33 開閉弁(電動弁)
50 圧電アクチュエータ(駆動源)
52 第2液室
54 容積調整用ベローズ(熱膨張吸収手段)
55 コイルバネ(容量保存手段)
61b 上蓋部(第1変位部)
62c 底壁部(第2変位部)
63 仕切部材
65 弁体
70 第1液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流体流路(11)の弁座開口(49)を開閉するように変位する弁体(65)と、該弁体(65)を駆動する駆動源(50)とを備えた電動弁であって、
一端に上記駆動源(50)に押し付けられて弁座開口(49)方向へ変位する第1変位部(61b)が設けられ、他端に上記弁体(65)を保持するとともに該第1変位部(61b)の変位に応じて該弁体(65)を移動させるように変位する第2変位部(62c)が設けられるとともに、第2変位部(62c)の変位方向に直交する断面積S2が、第1変位部(61b)の同方向の断面積S1よりも小さく設定された第1液室(70)と、
上記第1液室(70)に連通された第2液室(52)と、上記第1液室(70)及び第2液室(52)に封入された液体が熱膨張すると上記第2液室(52)を拡張させるように変位する熱膨張吸収部材(54)とを備えていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
請求項1において、
上記熱膨張吸収部材(54)は、上記第2液室(52)内の液体に浸漬するように設けられ、該熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体よりも体積膨張率の大きい液体が封入されていることを特徴とする電動弁。
【請求項3】
請求項1において、
上記熱膨張吸収部材(54)は、上記第2液室(52)内の液体に浸漬するように設けられ、該熱膨張吸収部材(54)の内部には上記液体が封入されるとともに、該熱膨張吸収部材(54)の変位方向に直交する断面積は、上記第2液室(52)の同方向の断面積よりも小さく設定されていることを特徴とする電動弁。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つにおいて、
上記駆動源(50)で上記第1変位部(61b)を押し付けた場合に上記第2液室(52)の拡張を禁止する容量保存手段(55)が設けられていることを特徴とする電動弁。
【請求項5】
冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路の冷媒流路(11)を開閉する電動弁(30)を備えた冷凍装置において、
上記電動弁が、請求項1から4のいずれか1つに記載の電動弁で構成されていることを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127733(P2009−127733A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302868(P2007−302868)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】