説明

電動機の冷却機構

【課題】電動機を確実に、且つ、効率的に冷却することができる電動機の冷却機構を提供する。
【解決手段】電動機の冷却機構において、天板47cのプラネタリギヤ側端部47c1は、プラネタリギヤ22Bの電動機側端部を通り、プラネタリギヤ22Bの回転軸である直線Oに直交する回転平面F1よりもプラネタリギヤ22B側に配置され、天板47cの電動機側端部47c2は、第2電動機2Bのプラネタリギヤ側端部を通り、プラネタリギヤ22Bの回転軸である直線Oに直交す鉛直平面F2よりも第2電動機2B側に配置され、天板47cの回転平面F1と交差する位置Q1は、天板47cの鉛直平面F2と交差する位置Q2よりも上方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を冷却するための電動機の冷却機構として、特許文献1では、電動機180を収容するハウジング181の上部に、電動機180に直接供給する冷却オイルを一時的に貯留するキャッチタンク182が取り付けられている。駆動軸に機械的に接続され駆動軸の駆動に伴ってハウジング181に貯留された冷却オイルをキャッチタンク182へかき上げるために、ハウジング181には、下部に貯留された冷却オイルに一部が浸漬されると共にキャッチタンク182の供給口184に略整合する位置にギヤ機構(ギヤ160a,160b)が配置された冷却機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−117790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電動機の冷却機構では、ハウジング181に貯留された冷却オイルをキャッチタンク182へかき上げるためのギヤ機構(ギヤ160a,160b)が電動機180と軸方向でオーバーラップするように設けられているので、径方向への拡大が避けられず、さらに効率的に冷却オイルを電動機に供給することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電動機を確実に、且つ、効率的に冷却することができる電動機の冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
電動機(例えば、後述の実施形態の第1及び第2電動機2A、2B)と、
前記電動機の冷却に供する液状流体(例えば、後述の実施形態のオイル)を貯留する貯留部(例えば、後述の実施形態の貯留部R)を有し、前記電動機を収容する筐体(例えば、後述の実施形態のケース11)と、
前記筐体に収容されるとともに前記電動機の近傍に配置され、少なくとも一部は前記貯留部に浸漬される回転体(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ22A、22B)と、
前記液状流体を前記電動機に導く導液手段(例えば、後述の実施形態の第1及び第2バッフルプレート47A、47B)と、を備える電動機の冷却機構であって、
前記回転体の回転軸は鉛直方向に対して傾斜する方向に、若しくは直交する方向に配置され、
前記導液手段は、前記回転体の上端及び前記電動機の上端と対向するように前記回転体及び前記電動機よりも上方に配置され前記回転体側から前記電動機側に延在する導液部(例えば、後述の実施形態の天板47c)を有し、
前記導液部の前記回転体側の端部(例えば、後述の実施形態の回転体側端部47c1)は、前記回転体の前記電動機側の端部を通り、前記回転軸に直交する平面(例えば、後述の実施形態の回転平面F1)よりも前記回転体側に配置され、
前記導液部の前記電動機側の端部(例えば、後述の実施形態の電動機側端部47c2)は、前記電動機の前記回転体側の端部を通る鉛直平面(例えば、後述の実施形態の鉛直平面F2)よりも前記電動機側に配置され、
前記導液部の前記平面と交差する位置(例えば、後述の実施形態の位置Q1)は、前記導液部の前記鉛直平面と交差する位置(例えば、後述の実施形態の位置Q2)よりも上方に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、
前記導液部の前記電動機側の前記端部は、前記電動機の鉛直方向上方に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、
前記筐体は、前記回転体と前記電動機との間に配置されて前記回転体と前記電動機を区画する隔壁部(例えば、後述の実施形態の隔壁18A、18B)を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、
前記隔壁部の上端は、前記電動機の最上端と、前記回転体の最上端と前記回転体の回転軌跡の最上端との何れか高い方とを結ぶ仮想線分よりも上方に配置され、
前記導液部は、前記隔壁部の上端よりも上方に配置されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の構成に加えて、
前記隔壁部には、前記電動機及び前記回転体をそれぞれ回転可能に支持する軸受(例えば、後述の実施形態の軸受19A、19B、軸受33A、33B)が配置されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記電動機の回転軸と前記回転体の回転軸とは同一直線上に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記導液手段は、前記電動機及び前記回転体及び前記筐体と別体に形成された別体部材であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記導液手段は、前記導液部に加えて、前記導液部から延出して前記導液手段を前記筐体に固定する固定部(例えば、後述の実施形態の固定部47h)を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加えて、
前記固定部は、前記導液部から下方に向けて延出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の構成に加えて、
前記固定部の下端は、前記回転体若しくは前記回転体の回転軌跡と径方向でオーバーラップすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記筐体は、前記電動機の上方及び前記導液部の上方を覆う上壁部(例えば、後述の実施形態の上壁部11Mu)を備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、請求項8〜11のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記筐体は前記筐体内部に向けて開口する凹設部(例えば、後述の実施形態の凹設部80)を有し、
前記凹設部の開口の少なくとも一部は前記固定部によって閉塞され、前記凹設部と前記固定部とで他の空間を形成することを特徴とする。
【0018】
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の構成に加えて、
前記他の空間は、前記筐体内で前記筐体内の前記液状流体の外部への流出を抑制するブリーザ室(例えば、後述の実施形態のブリーザ室41)であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記電動機は車両の車輪(例えば、後述の実施形態の後輪Wr)を駆動し、
前記回転体は前記電動機と前記車輪との動力伝達経路上に配置され、
前記回転体は、サンギヤ(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21A、21B)と該サンギヤに噛合する複数のプラネタリギヤ(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ22A、22B)と、該複数のプラネタリギヤを支持するプラネタリキャリア(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23A、23B)と、前記複数のプラネタリギヤの外周側に噛合するリングギヤ(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24A、24B)を備える遊星歯車機構(例えば、後述の実施形態の第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12B)のうちいずれかの要素であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の構成に加えて、
前記プラネタリギヤは、前記サンギヤと噛合する大径ピニオン(例えば、後述の実施形態の第1ピニオン26A、26B)と、前記リングギヤと噛合する小径ピニオン(例えば、後述の実施形態の第2ピニオン27A、27B)とを備える二段ピニオンで形成され、
前記回転体は前記大径ピニオンであることを特徴とする。
【0021】
また、請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の構成に加えて、
前記サンギヤは前記電動機の出力軸(例えば、後述の実施形態の円筒軸16A、16B)に接続されることを特徴とする。
【0022】
また、請求項17に記載の発明は、請求項14〜16のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記プラネタリキャリアは前記車輪に接続されることを特徴とする。
【0023】
また、請求項18に記載の発明は、
車輪を駆動する電動機(例えば、後述の実施形態の第1及び第2電動機2A、2B)と、
前記電動機と前記車輪との動力伝達系路上に設けられた回転体(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ22A、22B)と、
前記電動機の冷却を行う液状流体(例えば、後述の実施形態のオイル)を貯留する貯留部(例えば、後述の実施形態の貯留部R)を有し、前記電動機と前記回転体とを収容する筐体(例えば、後述の実施形態のケース11)と、を備え、
前記回転体の少なくとも一部は前記貯留部に浸漬される電動機の冷却機構であって、
前記筐体は、前記筐体の内部に向けて開口する凹設部(例えば、後述の実施形態の凹設部80)を有し、
前記凹設部の開口の少なくとも一部は、前記筐体と別体に設けられ前記筐体に固定される蓋部材によって閉塞され、
前記凹設部と前記蓋部材とによって前記筐体内の前記液状流体の外部への流出を抑制するブリーザ室(例えば、後述の実施形態のブリーザ室41)が形成され、
前記蓋部材と、前記回転体から飛散した前記液状流体を前記電動機へ導く導液手段(例えば、後述の実施形態の第1及び第2バッフルプレート47A、47B)とが結合されることを特徴とする。
【0024】
また、請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の構成に加えて、
前記凹設部の開口は前記回転体を指向して配置され、
前記凹設部と前記回転体との間に前記蓋部が配置され、
前記蓋部は、前記回転体若しくは前記回転体の回転軌跡と径方向でオーバーラップすることを特徴とする。
【0025】
また、請求項20に記載の発明は、請求項18又は19に記載の構成に加えて、
前記導液手段は、前記回転体及び前記電動機の上方に配置される導液部(例えば、後述の実施形態の天板47c)を有し、
前記導液部の前記回転体側の端部(例えば、後述の実施形態の回転体側端部47c1)は、前記回転体の前記電動機側の端部を通り、前記回転軸に直交する平面(例えば、後述の実施形態の回転平面F1)よりも前記回転体側に配置され、
前記導液部の前記電動機側の端部(例えば、後述の実施形態の電動機側端部47c2)は、前記電動機の前記回転体側の端部を通る鉛直平面(例えば、後述の実施形態の鉛直平面F2)よりも前記電動機側に配置され、
前記導液部の前記平面と交差する位置(例えば、後述の実施形態の位置Q1)は、前記導液部の前記鉛直平面と交差する位置(例えば、後述の実施形態の位置Q2)よりも上方に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、回転体によって液状流体がかき上げられる方向に、電動機が位置していない場合でも、回転体の上端及び電動機の上端と対向するように回転体及び電動機よりも上方に配置され、回転体側から電動機側に延在する導液部を有する導液手段によって、液状流体を電動機に導くことで、電動機を確実に、且つ、効率的に冷却することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、導液部によって導かれた液状流体の滴下位置を電動機のある位置にすることができるので、導液部に導かれた液状流体を電動機に滴下することができ、電動機を効率的に冷却することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、回転体がかき上げた液状流体が軸方向に飛散することを防止することができ、電動機のエアギャップに液状流体が浸入するのを抑制することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、隔壁部の高さは、回転体の軌跡と電動機の最上端よりも高いので、より回転体がかき上げた液状流体が軸方向に飛散することを防止することができ、電動機のエアギャップに液状流体が浸入するのを抑制することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、電動機及び回転体のそれぞれを回転可能に支持しながら、回転体と電動機とを別々の空間に区画することができ、軸受を支持する部材と隔壁部を別々の部材で構成する必要がなく軸方向への長大化を防止することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、電動機と回転体とは径方向でオーバーラップして配置されるため、径方向の拡大は防止しつつも、回転体から電動機へ液状流体を供給することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、電動機と回転体と筐体とによらず、導液手段の位置・形状を最適に設計することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、導液手段が筐体に固定されることで、電動機及び回転体の回転を妨げることなく導液手段を配置することができる。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、固定部は筐体内で径方向内側に配置されるので、筐体の径方向への拡大を防止しつつ、固定部を大きく確保することができる。
【0035】
請求項10に記載の発明によれば、固定部が回転体と径方向でオーバーラップする位置まで延びているので、固定部によって軸線方向で回転体と区画される他の空間を形成することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明によれば、導液部を形成する別体部材と電動機とを同一の筐体内に収納することができる。
【0037】
請求項12に記載の発明によれば、固定部を凹設部の閉塞に用いることで、筐体内部に他の空間を形成することができる。
【0038】
請求項13に記載の発明によれば、筐体内にブリーザ室を設けることで筐体内の圧力を一定に保つことができる。
【0039】
請求項14に記載の発明によれば、回転体を遊星歯車機構のいずれかの要素にすることで、電動機の冷却を行いつつ、遊星歯車機構の変速比を利用した変速が可能となる。
【0040】
請求項15に記載の発明によれば、大径ピニオンの公転軌跡がリングギヤよりも大きな半径を有するので、大径ピニオンを用いて液状流体をかき上げることができる。言い換えると、二段ピニオンの大径ピニオンを液状流体かき上げ用としても利用することができるので、別部材を設ける必要がなく、軽量化することができる。
【0041】
請求項16に記載の発明によれば、サンギヤが電動機に接続されることで電動機の回転数に応じた量の液状流体を供給することができる。
【0042】
請求項17に記載の発明によれば、キャリアが車輪に接続されることで、車輪の回転数に応じた量の液状流体を供給することができる。
【0043】
請求項18に記載の発明によれば、凹設部を閉塞してブリーザ室を形成する蓋部材と、回転体から液状流体を電動機に導く導液手段とが結合されて一体化するので、部品点数を削減することができ、それぞれ独立して形成する場合に比べてそれぞれの部材の固定などを省略することができる。
【0044】
請求項19に記載の発明によれば、ブリーザ室を形成する蓋部材によって、回転体と凹設部とが区画されるので、回転体から飛散した液状流体が凹設部に流入するのを防止することができる。
【0045】
請求項20に記載の発明によれば、導液部によって導かれた液状流体を電動機に滴下することができ、別な動力を使わずに電動機への液状流体の供給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る電動機の冷却機構を備えた車両用駆動装置を搭載した車両の一実施形態であるハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】後輪駆動装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す後輪駆動装置の部分拡大図である。
【図4】フレーム部材に取り付けられた後輪駆動装置の斜視図である。
【図5】後輪駆動装置の部分分解斜視図である。
【図6】図3に示す後輪駆動装置の部分拡大図である。
【図7】特許文献1に記載の電動機の冷却機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明に係る電動機の冷却機構は、車両用駆動装置に好適に用いることができる。以下に示す車両用駆動装置は、電動機を車輪駆動用の駆動源とするものであり、例えば、図1に示すような駆動システムの車両に用いられる。なお、以下の説明では車両用駆動装置を後輪駆動用として用いる場合を例に説明するが、前輪駆動用に用いてもよい。
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5が直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される一方で、この前輪駆動装置6と別に車両後部に設けられた駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。前輪駆動装置6の電動機5と後輪Wr側の後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bは、バッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が可能となっている。図1中、符号8は車両全体を制御するための制御装置である。
【0048】
先ず、本発明に係る第1実施形態の車両用駆動装置について、図2及び図3に基づいて説明する。図中の矢印は、後輪駆動装置1が車両に搭載された状態における位置関係を示している。
図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、図3は、図2の上部部分拡大断面図である。同図において、符号11は、後輪駆動装置1のケースであり、ケース11は、車幅方向略中央部に配置される中央ケース11Mと、中央ケース11Mを挟むように中央ケース11Mの左右に配置される側方ケース11A、11Bと、から構成され、全体が略円筒状に形成される。ケース11の内部には、後輪Wr用の車軸10A、10Bと、車軸駆動用の第1及び第2電動機2A、2Bと、この電動機2A、2Bの駆動回転を減速する第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bとが、それらの回転軸が同一直線O上に位置するように配置されている。この車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを駆動制御し、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを駆動制御する。車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aと、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは、ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。
【0049】
側方ケース11A、11Bの中央ケース11M側には、それぞれ径方向内側に延びる隔壁18A、18Bが設けられ、側方ケース11A、11Bと隔壁18A、18Bとに囲まれた空間には、それぞれ第1及び第2電動機2A、2Bが配置される。また、中央ケース11Mと隔壁18A、18Bとに囲まれた空間には、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bが配置されている。言い換えると、隔壁18A、18Bによって、第1及び第2電動機2A、2Bを収容する空間と第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bを収容する空間が区画されている。ケース11の鉛直方向下部には、第1及び第2電動機2A、2Bの冷却に供される液状流体としてのオイルを貯留する貯留部Rが形成される。貯留部Rに貯留されるオイルの上面は、後述するプラネタリギヤ22A、22Bの公転軌跡の最下点よりも上方となるように設定される。
【0050】
そして、ケース11は、図4に示すように、車両3の骨格となるフレームの一部であるフレーム部材13の支持部13a、13bと、不図示の駆動装置1のフレームで支持されている。支持部13a、13bは、車幅方向でフレーム部材13の中心に対し左右に設けられている。
【0051】
後輪駆動装置1には、ケース11の内部と外部を連通するブリーザ装置40が設けられ、内部の空気が過度に高温・高圧とならないように内部の空気をブリーザ室41を介して外部に逃がすように構成される。ブリーザ室41は、ケース11の鉛直方向上部に配置され、中央ケース11Mの上壁部11Muと、中央ケース11M内に左側方ケース11A側に略水平に延設された第1円筒壁43と、右側方ケース11B側に略水平に延設された第2円筒壁44と、第1及び第2円筒壁43、44の内側端部同士をつなぐ左右分割壁45と、第1円筒壁43の左側方ケース11A側先端部に当接するように取り付けられた第1バッフルプレート47Aと、第2円筒壁44の右側方ケース11B側先端部に当接するように取り付けられた第2バッフルプレート47Bと、により形成された空間により構成される。
【0052】
ブリーザ室41の下面を形成する第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45は、第1円筒壁43が第2円筒壁44より径方向内側に位置し、左右分割壁45が、第2円筒壁44の内側端部から縮径しつつ屈曲しながら第1円筒壁43の内側端部まで延設され、さらに径方向内側に延設されて略水平に延設された第3円筒壁46に達する。第3円筒壁46は、第1円筒壁43と第2円筒壁44の両外側端部より内側に且つその略中央に位置している。
【0053】
図5は、図2に示す後輪駆動装置の部分分解斜視図である。図5では、左側の第1バッフルプレート47Aと第1遊星歯車式減速機12Aのみを示すが、右側の第2バッフルプレート47Bと第2遊星歯車式減速機12Bも同様の構成を有する。
第1及び第2バッフルプレート47A、47Bは、それぞれ薄板状の側壁部47aが下端で開口した略円環形状を有してなり、側壁部47aを囲うように側壁部47aの外縁から軸方向に切り立つリブ47bが設けられている。また、側壁部47aの上方には、側壁部47aから外径側に固定部47hが延設されており、固定部47hには、2ヶ所のボルト孔47f(一方のみ図示)が形成される。第1バッフルプレート47Aの固定部47hは、第1円筒壁43と中央ケース11Mの上壁部11Muとの間の空間を第1遊星歯車式減速機12Aから区画するように構成され、第2バッフルプレート47Bの固定部47hは、第2円筒壁44と中央ケース11Mの上壁部11Muとの間の空間を遊星歯車式減速機12Bから区画するように構成される。
【0054】
固定部47hの上部外縁からは、水平方向から僅かに下方に傾くように天板47cが延設されている。天板47cの中央には、周方向両側に対し天板47cの長さが短くなるように切欠き47dが設けられ、切欠き47d及び天板47cの先端部を介してケース11内の空気がブリーザ室41に導入するように構成される。天板47cには、切欠き47dの両側に、凹状に窪んだ溝部47eが設けられている。第1及び第2バッフルプレート47A、47Bは、固定部47hに設けられた2ヶ所のボルト孔47fとリブ47bの下方に設けられた2ヶ所の取り付け片47gのボルト孔47fを挿通するボルト48で中央ケース11Mに固定される。
【0055】
また、図2及び図3に戻って、中央ケース11Mには、ブリーザ室41と外部とを連通する外部連通路49がブリーザ室41の鉛直方向上面に接続される。外部連通路49のブリーザ室側端部49aは、鉛直方向下方を指向して配置されている。従って、オイルが外部連通路49を通って外部に排出されるのが抑制される。
【0056】
第1及び第2電動機2A、2Bは、ステータ14A、14Bがそれぞれ側方ケース11A、11Bに固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する第1及び第2電動機2A、2Bの出力軸としての円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸上に相対回転可能となるように側方ケース11A、11Bの端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転位置情報を電動機2A、2Bの制御コントローラ(図示せず)にフィードバックするためのレゾルバ20A、20Bが設けられている。
【0057】
また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して車軸10A、10Bに出力されるようになっている。
【0058】
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bとを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bとが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはプラネタリキャリア23A、23Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸方向外側端部が軸受33A、33Bを介して隔壁18A、18Bに支持されている。即ち、隔壁18A、18Bには、それぞれプラネタリキャリア23A、23Bを介してプラネタリギヤ22A、22Bを支持する軸受33A、33Bと、円筒軸16A、16Bを介して第1及び第2電動機2A、2Bを支持する軸受19A、19Bとが配置されている。
【0059】
プラネタリキャリア23A、23Bの回転に伴って、プラネタリギヤ22A、22Bは自転しながら公転し、その際、ケース11の鉛直方向下部に位置する貯留部Rに貯留したオイルをかき上げる。
【0060】
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径でケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bとを備えて構成されている。この実施形態の場合、リングギヤ24A、24Bの径方向外縁は、第1ピニオン26A、26Bの車軸10A、10Bの中心からの最大距離よりも小さくなるように設定されている。
【0061】
ギヤ部28A、28Bは、中央ケース11Mの左右分割壁45の内径側端部に形成された第3円筒壁46を挟んで軸方向に対向している。小径部29A、29Bは、その外周面がそれぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように互いに連結されて構成されている。
【0062】
ケース11を構成する中央ケース11Mの第2円筒壁44とリングギヤ24Bのギヤ部28Bとの間に空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24Bに対する制動手段を構成する油圧ブレーキ60が第1ピニオン26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27Bと軸方向でオーバーラップするように配置されている。油圧ブレーキ60は、第2円筒壁44の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Bのギヤ部28Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35,36が環状のピストン37によって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37は、中央ケース11Mの左右分割壁45と第3円筒壁46間に形成された環状のシリンダ室に進退自在に収容されており、さらに第3円筒壁46の外周面に設けられた受け座38に支持される弾性部材39によって、常時、固定プレート35と回転プレート36とを解放する方向に付勢される。
【0063】
また、さらに詳細には、左右分割壁45とピストン37との間はオイルが直接導入される作動室Sとされ、作動室Sに導入されるオイルの圧力が弾性部材39の付勢力に勝ると、ピストン37が前進(右動)し、固定プレート35と回転プレート36とが相互に押し付けられて締結することとなる。また、弾性部材39の付勢力が作動室Sに導入されるオイルの圧力に勝ると、ピストン37が後進(左動)し、固定プレート35と回転プレート36とが離間して解放することとなる。なお、油圧ブレーキ60は電動オイルポンプ70(図4参照)に接続されている。
【0064】
この油圧ブレーキ60の場合、固定プレート35がケース11を構成する中央ケース11Mの左右分割壁45から伸びる第2円筒壁44に支持される一方で、回転プレート36がリングギヤ24Bのギヤ部28Bに支持されているため、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦締結によってリングギヤ24Bに制動力が作用し固定される。その状態からピストン37による締結が解放されると、リングギヤ24Bの自由な回転が許容される。なお、上述したように、リングギヤ24A、24Bは互いに連結されているため、油圧ブレーキ60が締結することによりリングギヤ24Aにも制動力が作用し固定され、油圧ブレーキ60が解放することによりリングギヤ24Aも自由な回転が許容される。
【0065】
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、第3円筒壁46により位置決めされるとともに、回り止めされている。
【0066】
一方向クラッチ50は、車両3が電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、車輪Wr側の順方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに車輪Wr側の逆方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
【0067】
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、電動機2A、2Bと車輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60とが並列に設けられている。なお、油圧ブレーキ60は、車両の走行状態や一方向クラッチ50の係合・非係合状態に応じて、電動オイルポンプ70から供給されるオイルの圧力により、解放状態、弱締結状態、締結状態に制御される。例えば、車両3が電動機2A、2Bの力行駆動により前進する時(低車速時、中車速時)は、一方向クラッチ50が締結するため動力伝達可能な状態となるが油圧ブレーキ60が弱締結状態に制御されることで、電動機2A、2B側からの順方向の回転動力の入力が一時的に低下して一方向クラッチ50が非係合状態となった場合にも、電動機2A、2B側と車輪Wr側とで動力伝達不能になることが抑制される。また、車両3が内燃機関4及び/又は電動機5の力行駆動により前進する時(高車速時)は、一方向クラッチ50が非係合となりさらに油圧ブレーキが解放状態に制御されることで、電動機2A、2Bの過回転が防止される。一方、車両3の後進時や回生時には、一方向クラッチ50が非係合となるため油圧ブレーキ60が締結状態に制御されることで、電動機2A、2B側からの逆方向の回転動力が車輪Wr側に出力され、又は車輪Wr側の順方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力される。
【0068】
ここで、本発明の電動機の冷却機構について説明する。
上述したプラネタリギヤ22A、22Bが貯留部Rに貯留したオイルをかき上げる回転体として機能し、第1及び第2バッフルプレート47A、47Bがプラネタリギヤ22A、22Bによってかき上げられたオイルを第1及び第2電動機2A、2Bに導く導液手段として機能する。より具体的に説明すると、回転体であるプラネタリギヤ22A、22Bが公転することで、貯留部Rに貯留したオイルがかき上げられ、プラネタリギヤ22A、22Bから飛散したオイルが、導液手段である第1及び第2バッフルプレート47A、47Bを介して第1及び第2電動機2A、2Bに供給される。
【0069】
このとき、第1及び第2バッフルプレート47A、47Bの天板47cは導液部として機能する。天板47cは、プラネタリギヤ22A、22Bの上端及び第1及び第2電動機2A、2Bの上端と対向するようにプラネタリギヤ22A、22B及び第1及び第2電動機2A、2Bよりも上方に配置され、プラネタリギヤ22A、22B側から第1及び第2電動機2A、2B側に延在している。
【0070】
また、図6に示すように、第2バッフルプレート47Bにおいて、天板47cのプラネタリギヤ側端部47c1は、プラネタリギヤ22Bの電動機側端部を通り、プラネタリギヤ22Bの回転軸である直線Oに直交する回転平面F1よりもプラネタリギヤ22B側に配置され、天板47cの電動機側端部47c2は、第2電動機2Bのプラネタリギヤ側端部を通り、プラネタリギヤ22Bの回転軸である直線Oに直交する鉛直平面F2よりも第2電動機2B側に配置され、天板47cの回転平面F1と交差する位置Q1は、天板47cの鉛直平面F2と交差する位置Q2よりも上方に配置される。さらに、天板47cの電動機側端部47c2は、第2電動機2Bの鉛直方向上方に配置される。なお、鉛直平面F2とは、第2電動機2Bのステータ14Bを構成するステータコアのプラネタリギヤ側端部を通る鉛直平面である。
【0071】
図6においては省略したが、第1バッフルプレート47Aに対するプラネタリギヤ22Aと第1電動機2Aの位置関係も同様であり、第1バッフルプレート47Aにおいて、天板47cのプラネタリギヤ側端部は、プラネタリギヤ22Aの電動機側端部を通り、プラネタリギヤ22Aの回転軸である直線Oに直交する回転平面よりもプラネタリギヤ22A側に配置され、天板47cの電動機側端部は、第1電動機2Aのプラネタリギヤ側端部を通り、プラネタリギヤ22Aの回転軸である直線Oに直交する鉛直平面よりも第1電動機2A側に配置され、天板47cの回転平面と交差する位置は、天板47cの鉛直平面と交差する位置よりも上方に配置される。さらに、天板47cの電動機側端部は、第1電動機2Aの鉛直方向上方に配置される。なお、鉛直平面とは、第1電動機2Aのステータ14Aを構成するステータコアのプラネタリギヤ側端部を通る鉛直平面である。
【0072】
これにより、プラネタリギヤ22A、22Bによってかき上げられたオイルは、天板47cの裏面を伝って、第1及び第2電動機2A、2Bに滴下する。従って、プラネタリギヤ22A、22Bによってオイルがかき上げられる方向に、第1及び第2電動機2A、2Bが位置していない場合でも、第1及び第2電動機2A、2Bを確実に、且つ、効率的に冷却することができる。なお、導液手段としての第1及び第2バッフルプレート47A、47Bは、側壁部47aが設けられている必要はなく、導液部としての天板47cを備えていればよく、固定部47hを備えていることが好ましい。
【0073】
固定部47hにより、第1及び第2バッフルプレート47A、47Bがケース11に固定されることで、第1及び第2電動機2A、2B及びプラネタリギヤ22A、22Bの回転を妨げることなく第1及び第2バッフルプレート47A、47Bをケース11内に配置することができる。また、固定部47hは、天板47cから径方向内側に延出しているので、ケース11の径方向への拡大を防止しつつ、固定部47hを大きく確保することができる。さらに、固定部47hの下端が、プラネタリギヤ22A、22Bの回転(公転)軌跡と径方向でオーバーラップすることで、固定部47hによって軸線方向でプラネタリギヤ22A、22Bと区画される他の空間を形成することができる。
【0074】
本実施形態では、ケース11の内部に、第1及び第2電動機2A、2B側にプラネタリギヤ22A、22Bを指向して開口し、中央ケース11Mの上壁部11Muと、中央ケース11M内に左側方ケース11A側に略水平に延設された第1円筒壁43と、右側方ケース11B側に略水平に延設された第2円筒壁44と、第1及び第2円筒壁43、44の内側端部同士をつなぐ左右分割壁45と、から構成される凹設部80が設けられており、凹設部80の開口が第1及び第2バッフルプレート47A、47Bの固定部47hによって閉塞されることで、ブリーザ室41が形成されている。なお、この空間は必ずしも、ブリーザ室41である必要はないが、ブリーザ室41とすることで、ケース11内の圧力を一定に保つことができる。
【0075】
この構成は、言い換えると、ブリーザ室41がケース11に形成された凹設部80と、凹設部80を閉塞する蓋部材とから構成され、ブリーザ室41を構成する蓋部材と、プラネタリギヤ22A、22Bから飛散したオイルを第1及び第2電動機2A、2Bへ導く導液手段とが結合されているということもできる。
【0076】
また、第1及び第2バッフルプレート47A、47Bは、第1及び第2電動機2A、2B及びプラネタリギヤ22A、22B及びケース11と別体に形成された別体部材から構成されるので、これらの構成によらず、第1及び第2バッフルプレート47A、47Bの位置・形状を最適に設計することができる。
【0077】
さらに、上述したように、隔壁18A、18Bによって、第1及び第2電動機2A、2Bを収容する空間と第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bを収容する空間、特にプラネタリギヤ22A、22Bを収容する空間とが区画されているので、プラネタリギヤ22A、22Bによりかき上げられたオイルが軸方向に飛散することを防止することができ、それにより第1及び第2電動機2A、2Bのエアギャップにオイルが浸入するのを抑制することができる。この効果は、隔壁18A、18Bの上端が、第1及び第2電動機2A、2Bの最上端と、プラネタリギヤ22A、22Bの回転軌跡の最上端とを結ぶ仮想線分よりも上方に配置され、天板47cは隔壁18A、18Bの上端よりも上方に配置されることで、より顕著となる。
【0078】
なお、上記実施形態では、回転体を第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのプラネタリギヤ22A、22Bとしたがこれに限らず、回転軸が鉛直方向に対して傾斜する方向に、若しくは直交する方向(水平方向)に配置された回転体であればよい。例えば、通常の歯車等であってもよい。この場合、歯車の回転軸は、電動機の回転軸と同一直線状に配置されることが好ましく、さらに隔壁の上端は、電動機の最上端と、歯車の最上端とを結ぶ仮想線分よりも上方に配置され、導液部は、隔壁の上端よりも上方に配置されることが好ましい。
【0079】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
また、電動機2A、2Bの出力軸と車軸10A、10Bとは同軸上に配置される必要はない。
また、前輪駆動装置6を内燃機関4を用いずに電動機5を唯一の駆動源とするものでもよい。
【0080】
上記実施形態では、電動機の冷却機構を適用する駆動装置として、左右の後輪Wr(RWr、LWr)をそれぞれ駆動制御する第1及び第2電動機2A、2Bを搭載する車両用駆動装置を例示したが、これに限定されず、1つの電動機により左右の後輪を駆動制御する駆動装置、又は、車両に限らず1つの電動機を備える駆動装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
2A、2B 第1、第2電動機(電動機)
11 ケース(筐体)
11Mu 上壁部
12A、12B 遊星歯車式減速機(遊星歯車機構)
16A、16B 円筒軸(出力軸)
18A、18B 隔壁(隔壁部)
19A、19B 軸受
21A、21B サンギヤ
22A、22B プラネタリギヤ(回転体)
23A、23B プラネタリキャリア
24A、24B リングギヤ
26A、26B 第1ピニオン(大径ピニオン)
27A、27B 第2ピニオン(小径ピニオン)
33A、33B 軸受
41 ブリーザ室(他の空間)
47A、47B 第1、第2バッフルプレート(導液手段)
47c 天板(導液部)
47c1 回転体側端部
47c2 電動機側端部
47h 固定部
80 凹設部
R 貯留部
Wr 後輪(車輪)
F1 回転平面
F2 鉛直平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機の冷却に供する液状流体を貯留する貯留部を有し、前記電動機を収容する筐体と、
前記筐体に収容されるとともに前記電動機の近傍に配置され、少なくとも一部は前記貯留部に浸漬される回転体と、
前記液状流体を前記電動機に導く導液手段と、を備える電動機の冷却機構であって、
前記回転体の回転軸は鉛直方向に対して傾斜する方向に、若しくは直交する方向に配置され、
前記導液手段は、前記回転体の上端及び前記電動機の上端と対向するように前記回転体及び前記電動機よりも上方に配置され前記回転体側から前記電動機側に延在する導液部を有し、
前記導液部の前記回転体側の端部は、前記回転体の前記電動機側の端部を通り、前記回転軸に直交する平面よりも前記回転体側に配置され、
前記導液部の前記電動機側の端部は、前記電動機の前記回転体側の端部を通る鉛直平面よりも前記電動機側に配置され、
前記導液部の前記平面と交差する位置は、前記導液部の前記鉛直平面と交差する位置よりも上方に配置されることを特徴とする電動機の冷却機構。
【請求項2】
前記導液部の前記電動機側の前記端部は、前記電動機の鉛直方向上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電動機の冷却機構。
【請求項3】
前記筐体は、前記回転体と前記電動機との間に配置されて前記回転体と前記電動機を区画する隔壁部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機の冷却機構。
【請求項4】
前記隔壁部の上端は、前記電動機の最上端と、前記回転体の最上端と前記回転体の回転軌跡の最上端との何れか高い方とを結ぶ仮想線分よりも上方に配置され、
前記導液部は、前記隔壁部の上端よりも上方に配置されることを特徴とする請求項3に記載の電動機の冷却機構。
【請求項5】
前記隔壁部には、前記電動機及び前記回転体をそれぞれ回転可能に支持する軸受が配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動機の冷却機構。
【請求項6】
前記電動機の回転軸と前記回転体の回転軸とは同一直線上に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項7】
前記導液手段は、前記電動機及び前記回転体及び前記筐体と別体に形成された別体部材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項8】
前記導液手段は、前記導液部に加えて、前記導液部から延出して前記導液手段を前記筐体に固定する固定部を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項9】
前記固定部は、前記導液部から下方に向けて延出することを特徴とする請求項8に記載の電動機の冷却機構。
【請求項10】
前記固定部の下端は、前記回転体若しくは前記回転体の回転軌跡と径方向でオーバーラップすることを特徴とする請求項9に記載の電動機の冷却機構。
【請求項11】
前記筐体は、前記電動機の上方及び前記導液部の上方を覆う上壁部を備えることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項12】
前記筐体は前記筐体内部に向けて開口する凹設部を有し、
前記凹設部の開口の少なくとも一部は前記固定部によって閉塞され、前記凹設部と前記固定部とで他の空間を形成することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項13】
前記他の空間は、前記筐体内で前記筐体内の前記液状流体の外部への流出を抑制するブリーザ室であることを特徴とする請求項12に記載の電動機の冷却機構。
【請求項14】
前記電動機は車両の車輪を駆動し、
前記回転体は前記電動機と前記車輪との動力伝達経路上に配置され、
前記回転体は、サンギヤと該サンギヤに噛合する複数のプラネタリギヤと、該複数のプラネタリギヤを支持するプラネタリキャリアと、前記複数のプラネタリギヤの外周側に噛合するリングギヤを備える遊星歯車機構のうちいずれかの要素であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項15】
前記プラネタリギヤは、前記サンギヤと噛合する大径ピニオンと、前記リングギヤと噛合する小径ピニオンとを備える二段ピニオンで形成され、
前記回転体は前記大径ピニオンであることを特徴とする請求項14に記載の電動機の冷却機構。
【請求項16】
前記サンギヤは前記電動機の出力軸に接続されることを特徴とする請求項14又は15に記載の電動機の冷却機構。
【請求項17】
前記プラネタリキャリアは前記車輪に接続されることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の電動機の冷却機構。
【請求項18】
車輪を駆動する電動機と、
前記電動機と前記車輪との動力伝達系路上に設けられた回転体と、
前記電動機の冷却を行う液状流体を貯留する貯留部を有し、前記電動機と前記回転体とを収容する筐体と、を備え、
前記回転体の少なくとも一部は前記貯留部に浸漬される電動機の冷却機構であって、
前記筐体は、前記筐体の内部に向けて開口する凹設部を有し、
前記凹設部の開口の少なくとも一部は、前記筐体と別体に設けられ前記筐体に固定される蓋部材によって閉塞され、
前記凹設部と前記蓋部材とによって前記筐体内の前記液状流体の外部への流出を抑制するブリーザ室が形成され、
前記蓋部材と、前記回転体から飛散した前記液状流体を前記電動機へ導く導液手段とが結合されることを特徴とする電動機の冷却機構。
【請求項19】
前記凹設部の開口は前記回転体を指向して配置され、
前記凹設部と前記回転体との間に前記蓋部が配置され、
前記蓋部は、前記回転体若しくは前記回転体の回転軌跡と径方向でオーバーラップすることを特徴とする請求項18に記載の電動機の冷却機構。
【請求項20】
前記導液手段は、前記回転体及び前記電動機の上方に配置される導液部を有し、
前記導液部の前記回転体側の端部は、前記回転体の前記電動機側の端部を通り、前記回転軸に直交する平面よりも前記回転体側に配置され、
前記導液部の前記電動機側の端部は、前記電動機の前記回転体側の端部を通る鉛直平面よりも前記電動機側に配置され、
前記導液部の前記平面と交差する位置は、前記導液部の前記鉛直平面と交差する位置よりも上方に配置されることを特徴とする請求項18又は19に記載の電動機の冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106416(P2013−106416A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247898(P2011−247898)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】