説明

電動機

【課題】モータ本体を冷却するためのファンの風を利用した端子箱内の冷却を実現可能とする電動機を提供する。
【解決手段】ファンカバー3、又は端子箱5の形状を改良することにより、モータ空冷用の風Faを利用して端子箱5を冷却する。端子箱5の側面(5zを含む)とファンカバー3との間に隙間(10zを含む)を設け、ファン4からの風Faを隙間から放出させて、端子箱5の側面に風を当て、端子箱5をその表面から冷却する。また、端子箱5の下面に風の進入口と排気口を設け、ファン4からの風を進入口より端子箱内に取り込み、排気口より放出させて、端子箱5の内部を直接に冷却することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボアンプやインバータで駆動される電動機に関し、特に、空冷構造を備えた大容量の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボアンプやインバータ等で駆動される回転電機としてのモータは、例えば、プレス装置の金型駆動用モータや、射出成形機の樹脂射出用ポンプの駆動モータのように、各産業分野において広汎に用いられている。これらの装置は大型化すると、使用されるモータも大型モータとなるが、使用中に大きな電流が流れるモータ本体からはジュール熱として多量の熱が発生し、モータの特性に熱による影響が生じる場合もある。それゆえ、モータを利用する上でモータの冷却を考察することは非常に重要なことである。
【0003】
従来、モータ本体から発生した熱の放熱対策の一つとして、モータ本体で発生した熱を端子箱に伝達することで熱放射表面積を拡大し、当該拡大された熱放射表面積から放熱させることで冷却効果を向上させた冷却構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この冷却構造においては、端子箱にフィンを取り付け、当該フィンをファンモータユニットのケーシング内に突出させており、ファンによる風をフィンに当てることにより、フィンから熱を奪って端子箱を更に冷却し、端子箱内に設置された電子部品が高温になるのを防止することができる。
【0004】
また、電動機と一体型にされる制御装置に加わる振動を抑制し、かつ、制御装置の温度を許容値以下に維持することを図った車両用駆動装置が提案されている(特許文献2参照)。この車両用駆動装置は、電動機本体の密閉されたケース外方で回転軸の端部に冷却ファンを取り付け、ケースには冷却ファンを覆うファンカバーを取り付け、電動機本体に電力を供給する制御装置をケース外面又はファンカバーに防振部材を介して支持し、制御装置に対向してヒートシンクを設けて構成されており、制御装置と電動機とを一体型にした場合でも、制御装置に加わる振動を抑制し、且つ制御装置の温度を許容値以下に維持することを図っている。制御装置をファンカバーに直接密着している場合、制御装置で発生した熱が放熱面積の広いファンカバーに伝導し、さらに放熱効果を高めることができ、冷却性能を向上させることができる。
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、端子箱に設けたフィンにより端子箱の熱を逃がす構造であるため、フィン部分において構造が複雑となってしまう問題がある。
また、特許文献2に記載の技術では、制御装置とファンカバーとの間にファンから送風された冷却空気を流しているだけであるので、制御装置の十分な冷却効果が得られず、制御装置の内部までをも効率的に冷却することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−94949号公報
【特許文献2】特開2009−27863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
端子箱の内部には大きな電流が流れる導線とそれに接続される端子が収容されており、大容量のモータを使用する場合、端子箱内に配線されている動力線からジュール熱によって発生する熱量が多くなるのに対して、端子箱は密閉されているため、端子箱の温度が上昇してしまうという問題がある。
そこで、モータ本体に端子箱を備えた電動機において、端子箱の内部が、配線されている動力線から生じるジュール熱によって高温になるのをより簡単な構造で防止する点で解決すべき課題がある。
本発明の目的は、かかる問題を解消し、モータ冷却用のファンの風を利用して端子箱内の冷却が可能な電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明による電動機は、モータ本体と、前記モータ本体を覆うファンカバーと、前記モータ本体又は前記ファンカバーに設置されたファンと、前記モータ本体又は前記ファンカバーに設置された端子箱と、を備え、前記モータ本体と前記ファンカバーとの間の隙間を流れる前記ファンの風を利用して前記端子箱を冷却することを特徴としている。
【0009】
この電動機によれば、モータ本体又はファンカバーに設置されたファンは、モータ本体とファンカバーとの間の隙間に冷却用の空気を送り込んで、モータ本体の表面を流れる空気によってモータ本体を冷却する。同時に、その空気の流れは、一部が端子箱に送り込まれることによって端子箱に流れ、端子箱を効果的に冷却することができる。
【0010】
また、本発明による電動機はファンからの風を端子箱側面に吹き付けることができる
また、本発明による電動機は、端子箱の下面にファンから送られる風の進入口と排気口を設け、ファンからの風を進入口を通して端子箱内に取り入れ、端子箱内の空気を排気口を通して排気することができる。
また、端子箱内を冷却する電動機において、ファンカバー及び端子箱のどちらか一方又は双方に遮蔽板を設けて、遮蔽板によって空気を端子箱内に誘導することができる。
更に、本発明による電動機は、ファンカバー、端子箱及びファンの少なくとも一つにフィルタを設けて、端子箱内へ粉塵・油等の異物の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動機によれば、端子箱にフィンを設けなくても、モータ本体又はファンカバーに設置されたファンから送られる風を端子箱の表面に流して端子箱自体を冷却することができる。また、端子箱下面に端子箱内への風の進入口と排気口を設けることで、ファンから送られる風を端子箱内部に流すこともできる。また、ファンカバー及び端子箱のどちらか一方、又は双方に遮蔽板を設けることで、風を端子箱又は端子箱内部へ導くことができ、更にファンカバー、端子箱及びファンの少なくとも一つにフィルタを設けることで、粉塵・油当の端子箱内部への侵入を防ぐことができる。これらより、端子箱内部の冷却が可能となる電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明による電動機の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図2は図1のX−Y断面図である。
【図3】図3は本発明による電動機の別の実施例を示す斜視図である。
【図4】図4は図2のX−Y断面図である。
【図5】図5は図3に示す電動機の端子箱を含む要部の拡大斜視図である。
【図6】図6は図2に示す電動機の端子箱を含む要部における流体解析図である。
【図7】図7は本発明による電動機の別の実施例におけるファンの部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2は、本発明による電動機の一実施形態を示す図であり、図1は本発明による電動機の斜視図、図2は図1に示す電動機の縦断面図である。図1に示す実施形態は、端子箱5の側面とファンカバー3との間に隙間を設け、ファン4より送り込まれた風をモータ本体2に表面とファンカバー3の間に形成されている隙間に通し、この風を端子箱5とファンカバー3との間に形成される開口10から放出させることで、端子箱5の側面を冷却する冷却構造を備えている。
【0014】
詳述すると、図1に示す電動機は、出力軸としてのシャフト1がモータ本体2から突出する態様で設けられており、ファンカバー3がモータ本体2の大部分を覆うように配設されている。ファンカバー3には、外気を吸い込むことができるファン4が取り付けられている。ファン4はモータ本体2の図示した側面のファンの他に、モータ本体2の反対側の側面にも設けられている。Faは、ファン4によって矢印の向きに示すように内向きに吸い込まれる風を示している。なお、ファン4については、ファンカバー3に配設した例を示したが、ファンカバー3に代えてモータ本体2に配設することもできる。
【0015】
ファンカバー3は、モータ本体2に対してモータ本体2の表面との間に隙間を確保して取り付けられており、ファン4の風向を図示Faのように内向きに吸い込む流れとすることで、モータ本体2とファンカバー3の間の隙間には、図中で破線で示すように万遍なく風が流れる。ファン4で吸い込まれた外気は、モータ本体2の側面では、ファンカバー3との間のX−Y面に平行に広がる隙間に沿って流れ、一部はX軸方向前後の隙間端部の隙間開口から流出し、残る部分はモータ本体2の天面と底面とにおいてファンカバー3との間のX−Z面に平行に広がる隙間に沿って流れる。反対側の側面に配設されているファンからの風が対称的に流れるので、モータ本体2の天面と底面とにおいては、それらの中央領域で両側(Z軸方向)からの風がX軸上で衝突し、X軸と平行な向きに流れが変わり、シャフト1方向と平行な方向(X軸方向)に流れてX軸方向に延びる隙間開口から流出する。
【0016】
モータ本体2の頂面の一部には、端子箱5が取り付けられている。ファンカバー3は、端子箱5が取り付けられている領域では凹部3aに切り欠かれており、端子箱5の周囲において冷却風が吹き出すことができる若干の隙間開口10(後述するように、10x,10zとから成る)が形成されている。端子箱5の側面5zについては、ファンカバー3との間に形成されている隙間開口10zから冷却風が吹き出し、吹き出した冷却風は当該側面5zに沿って流れて当該側面5zを冷却する。
【0017】
図1のX−Y断面図である図2に示すように、Y−Z軸に平行な端子箱5の前面5xの冷却に関しても冷却が可能となる。モータ本体2の天面とファンカバー3との間に流れる風は、一部が端子箱5との間の隙間開口10xから空気流れFaで示すように端子箱5の前面5xに沿って流れ、当該前面5xを冷却する。なお、図2には、モータ本体2の底面とファンカバー3との間に流れてモータ本体2の底面を冷却する空気流れFaも示している。図1及び図2に示したように、ファンカバー3、又は端子箱5の形状を改良することにより、ファン4によって送り込まれるモータ空冷用の風を利用して、端子箱5を冷却することができる。
【0018】
また、モータ本体2の天面に位置する端子箱5は、モータ本体2の両側面に設けられるファン4よりもX軸方向において位置をずらして配置されている。本実施例では、モータ本体2の側面のほぼ中央部にファン4が配置され、端子箱5はモータ本体2の天面において、シャフト1から遠い位置に配置されている。すなわち、ファン4の対向位置と端子箱5はX軸方向位置が異なる配置となっている。
この配置により、モータ本体2の天面において、Z軸方向の中央部分で両側のファン4から送られる冷却風が合流し、X軸方向に流れを変えることができる。このため、端子箱5の冷却のために開口10から冷却風が流出する前に、モータ本体2の冷却を十分に行うことができる。したがって、モータ本体2とファンカバー3との隙間に十分に冷却風が流れた後に、端子箱5の冷却が可能となり、モータの冷却と端子箱5の冷却を効果的に行うことができる。
【0019】
図3〜図5は、本発明による電動機の別の実施形態を示す図であり、図3は本発明による電動機の斜視図、図4は図3に示す電動機のX−Y断面図、図5は図3に示す電動機の端子箱のところで切断した要部の拡大斜視図である。図3〜図5に示す実施形態は、端子箱5をファンカバー3に取り付け、モータ4から送り込まれた風をモータ本体2の表面とファンカバー3の間に形成されている隙間に通し、この風を端子箱5の内部に誘導することで端子箱5の内部を冷却する冷却構造を備えている。その他の構造は図1に示す電動機と同様であるので、共通する構造については再度の説明を省略する。
【0020】
図3に示す実施態様では、図1及び図2に示す態様で採用したような端子箱5とファンカバー3との間に隙間開口は設けられていない。図4及び図5に示すように、端子箱5はその外壁がファンカバー3に連続的に接続されている。端子箱5の下部には、ファンカバー3内側の端子箱5との接続領域において、X軸方向の両端位置にそれぞれ進入口6及び排気口7が形成されている。
【0021】
モータ本体2の天面において、それらの中央領域でZ軸方向両側からの風がX軸上で衝突し、X軸と平行な向きに流れが変わり、シャフト1方向と平行な方向(X軸方向)に流れた風は、X軸の前方向に形成されている進入口6より端子箱5内に取り込まれ、X軸の後方向に形成されている排気口7より放出される。このように、風の進入口6と排気口7とを設け、X軸と平行な向きに流れる冷却風を端子箱5内に取り入れ、冷却風が端子箱5内を流れることで、端子箱5の内部が冷却される。
【0022】
図4及び図5中の符号8は、風の進入口6において端子箱5側に設けられた遮蔽板を示す。遮蔽板8を設けることで、進入口6から風を端子箱5内により多く取り込むことが可能となり、端子箱5内の冷却効果の向上が図れる。遮蔽板8については、端子箱5側ではなく、ファンカバー3側において端子箱5内に風を導くように設けることもできる。
【0023】
ファン4の位置を端子箱5の進入口6よりも負荷側(−X方向)に配置し、尚且つモータ本体2とファンカバー3の負荷側の隙間を埋めることができる。そうした場合には、負荷側(−X方向)へ流れようとする風量が制限され、その分更に多くの風が+X方向へ移動し、端子箱5内部への風の進入量が増加し、冷却能力を向上する。また、ファン4の出口部分、ファンカバー3及び端子箱5のいずれか又はその組み合わせにおいて、端子箱5の内部に取り入れられる風に対するフィルタを設けることができる。かかるフィルタにより、端子箱5内へ粉塵・油等の異物の侵入を防止することができる。
【0024】
図6に、例として図2の形状で流体解析を行った結果を示す。図6において、ベクトルは風向・風速を表しており、ファン4からの風が進入口6から端子箱5内へ入り、排気口7から放出しているのが分かる。この結果より、端子箱5内の冷却が可能であると言及できる。
この実施例においても、モータの冷却と端子箱5の冷却の両立を図るため、モータ本体2の天面に位置する端子箱5は、モータ本体2の両側面に設けられるファン4よりもX軸方向において位置をずらして配置されることが望ましい。
【0025】
図7は、この発明による電動機の更に別の実施例を示す斜視図である。この実施例は、冷却用ファン4がモータ本体2に設置された電動機を示している。ファン4は、ファンカバー3を切り欠いた切欠き部3aにおいてモータ本体2に直接に設置されている。ファン4が引き込んだ風Faは、ファンケーシング4aに形成した切欠き4bを通して、ファン4の周囲においてモータ本体2の表面に沿って広がり、モータ本体2の表面とファンカバー3の内面との間に形成されている隙間に流れ込む。端子箱5への風Faの送り込み等、この実施例におけるその余の構造は、図1に示す実施例の構造と同等であるので、これらに関する再度の詳細な説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による電動機は、空冷を必要とする小形から大容量までのすべての電動機、あるいは回転電機に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 シャフト 2 モータ本体
3 ファンカバー 3a 切欠き部
4 ファン 5 端子箱
5a 前面 5z 側面
6 進入口 7 排気口
8 遮蔽板
10x,10z 隙間開口
Fa ファンからの風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体と、前記モータ本体を覆うファンカバーと、前記モータ本体又は前記ファンカバーに設置されたファンと、前記モータ本体又は前記ファンカバーに設置された端子箱と、を備え、
前記モータ本体と前記ファンカバーとの間に形成されている隙間を流れる前記ファンの風を利用して前記端子箱を冷却することを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1記載の電動機において、
前記ファンから送られた前記風を前記端子箱の周面に吹き付けることで前記端子箱を外部から冷却することを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項2記載の電動機において、
前記隙間を通した風を前記端子箱の前記周面と前記ファンカバーの端部との間に形成された隙間開口を通して前記端子箱の前記周面に沿わせて流すことを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項1記載の電動機において、
前記端子箱の下面に進入口と排気口を設け、前記ファンから送られた前記風を前記進入口から前記端子箱の内部に進入させて前記排気口から排気することで前記端子箱を内部から冷却することを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項4記載の電動機において、
前記ファンカバー及び前記端子箱の少なくとも一方に、前記進入口に繋がって前記ファンからの風を前記端子箱の内部に向かって誘導する遮蔽板を設けたことを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項1記載の電動機において、
前記ファンは前記モータ本体の両側に対向するように複数設けられ、前記端子箱の位置は複数のファンが対向する位置と異なることを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の電動機において、
前記ファンカバー、前記端子箱及び前記ファンの少なくとも一つに前記端子箱の内部に流れる風のためのフィルタを設けたことを特徴とする電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−239744(P2010−239744A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84310(P2009−84310)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】