説明

電動車両のバッテリ取付け装置

【課題】バッテリ載置台がバッテリの重量により変形したのを矯正して、バッテリを収納空所に対し確実に挿脱し得るようになす。
【解決手段】(b)に示すように載置台9は、バッテリ7を乗せるとバッテリ重量による変形力F1を受けて、撓み変形される。この撓み変形により、線状材11の先端11aは線状材11を、支持基端9aから先端縁9bに向かう方向へ繰り出させる。かかる繰り出しをガイドローラ12の回転センサ15で検出し、この繰り出し量に相当する長さだけ線状材11を手繰り戻すよう、モータ13により端末ローラ14を回転駆動させ、(c)に示すごとく変形抗力F2により載置台9の変形を矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車両などの電動車両に用いるバッテリ取付け装置、特に、車体の下向き開口付きバッテリ収納空所内に、該下向き開口からバッテリを挿脱して取付けするようにした電動車両のバッテリ取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる電動車両のバッテリ取付け装置としては、従来から種々のものが提案されており、その一例として、例えば特許文献1に記載のようなものがある。
【0003】
このバッテリ取付け装置は、バッテリ載置台を、そのバッテリ取付け範囲が車体の下向き開口付きバッテリ収納空所と整列するよう位置決めし、
この状態でバッテリ載置台上にバッテリ収納空所から空のバッテリを受け取って仮置台に乗せ、
その後、ラックからバッテリ載置台上に充電済バッテリを受け取って、車体のバッテリ収納空所内に下向き開口から挿入し、この挿入状態でバッテリをロックするものである。
【特許文献1】特開平06−262951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでバッテリは、多数個のバッテリセルを相互に電気接続して一纏めにしたユニットで構成するため、重量が嵩んで非常に重くなることがあり、
上記の取付け作業に当たってこのバッテリをバッテリ載置台上に乗せた時、バッテリ載置台が、数ミリメートル程度ではあるが、撓み変形したり、曲げ変形するのを禁じ得ない。
【0005】
かようにバッテリ載置台が変形すると、バッテリをバッテリ収納空所内に挿入した時に、バッテリ側のロック部と、バッテリ収納空所側(車体側)ロック部との相対位置が正規の位置からずれてしまい、
バッテリをバッテリ収納空所内(車体)に対しロックすることができず、バッテリが搭載困難になる。
【0006】
本発明は、バッテリを乗せるバッテリ載置台が、バッテリの重量により変形しても、上記の問題が生じなくなる程度まで当該変形を低減し得るようにした電動車両のバッテリ取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明による電動車両のバッテリ取付け装置は、
車体の下向き開口付きバッテリ収納空所内に、該下向き開口からバッテリを挿脱して取付けするものであることを前提とする。
【0008】
そして本発明は、上記バッテリ収納空所に対するバッテリの挿脱中バッテリを載置しておくバッテリ載置台に対し、
バッテリ重量によるバッテリ載置台の変形力に抵抗する変形抗力を生じさせる変形抗力発生構造を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明による電動車両のバッテリ取付け装置にあっては、
変形抗力発生構造が、バッテリ重量によるバッテリ載置台の変形力に抵抗する変形抗力を生じさせるため、
この変形抗力で、バッテリの重量によるバッテリ載置台の変形を低減し得ることとなる。
【0010】
従ってバッテリ載置台の変形に起因して、バッテリをバッテリ収納空所内に挿入した時に、バッテリ側のロック部と、バッテリ収納空所側(車体側)ロック部との相対位置が正規の位置からずれてしまうようなこともなくなり、
バッテリをバッテリ収納空所内(車体)に対しロックすることができず、バッテリが搭載困難になるという問題を払拭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例になる電動車両のバッテリ取付け装置を示し、1は、ハイブリッド車両や電気自動車などの電動車両である。
この電動車両1は、床下に下向き開口付きバッテリ収納空所2を具え、当該空所2内におけるバッテリ(図1では、空所2内に未だバッテリが収納されていない状態を示す)からの電力で駆動されるモータを動力源として具えるものとする。
【0012】
電動車両1は、テーブル3上に乗せた状態でバッテリ取付け作業を自動的に行われるものとする。
テーブル3上には、Y方向(横方向)車体位置調整機構4およびX方向(前後方向)車体位置調整機構5を設け、
これら機構4,5により電動車両1をテーブル3上における正規の位置に位置決めする。
この状態で、テーブル3上に設けた車体床面レベルセンサ6により、水平面に対するバッテリ収納空所2の傾斜を検知する。
【0013】
7は交換用バッテリで、この交換用バッテリ7はバッテリ搬送装置8によりバッテリ載置台9上に搬送する。
バッテリ取付けに際しては、バッテリ載置台9をロボット10により、バッテリ載置台9上のバッテリ7が、車体床面レベルセンサ6で検知したバッテリ収納空所2の傾斜と同じ傾斜状態になるよう傾き制御すると共に、バッテリ載置台9上のバッテリ7がバッテリ収納空所2に整列するよう位置決めする。
【0014】
その後、バッテリ載置台9をロボット10により矢印で示すように上昇させ、バッテリ載置台9上のバッテリ7をバッテリ収納空所2内にその下向き開口から、バッテリ収納空所2の側面ガイドによる案内下で挿入する。
この挿入後バッテリ7を、バッテリ収納空所2内に保持されるよう、車体に対しロックする。
【0015】
ところで、バッテリ7は図2に示すように、多数個のバッテリセル7aを相互に電気接続して一纏めにしたユニットで構成するため、重量が嵩んで200kg〜300kgもの重さになることがある。
このため、バッテリ載置台9が図2に示すごとく、基端9aにおいてロボット10(図1参照)に対し片持ち梁型式に支持されている場合につき説明すると、以下のような問題を生ずる。
【0016】
つまり、バッテリ取付け作業に当たってバッテリ7をバッテリ載置台9上に乗せた時、バッテリ載置台9はバッテリ7を乗せる前の図2(a)に示す状態から、バッテリ重量による同図(b)に示す下向き変形力F1によって、先端縁9bが5〜7mm程度下降して、撓み変形するのを禁じ得ない。
【0017】
かようにバッテリ載置台9が変形すると、バッテリ取付け作業時にバッテリ7がバッテリ収納空所2(図1参照)の周壁ガイド部に噛み込んだり、引っかかり、
バッテリ7を、空になってバッテリ収納空所2から取り出そうとする時に、バッテリ7をバッテリ収納空所2から取り外すことができなくなる懸念がある。
【0018】
また、バッテリ載置台9が図2(b)につき上記したように変形すると、バッテリ7をバッテリ収納空所2内に挿入した時に、バッテリ側のロック部(図示せず)と、バッテリ収納空所側(車体側)ロック部(同じく図示せず)との相対位置が正規の位置からずれてしまい、
バッテリ7をバッテリ収納空所2内に挿入後、車体に対しロックすることができず、バッテリ7が搭載困難になるという懸念も払拭しきれない。
【0019】
[変形抗力発生構造]
そこで本実施例(第1実施例)においては、バッテリ載置台9が、バッテリ7の重量により変形しても、この変形を無くし得るように、若しくは少なくとも上記の問題が生じなくなる程度まで当該変形を低減し得るようになす、以下のごとき変形抗力発生構造を付加する。
【0020】
この変形抗力発生構造を詳述するに、片持ち梁型式に支持したバッテリ載置台9の支持基端9aと、この支持基端9aから遠いバッテリ載置台9の先端縁9bとの間に、図3(a)に示すごとくワイヤなどの非伸縮線状材11を張設する。
この非伸縮線状材11は、その先端11aをバッテリ載置台9の先端縁9bに係着し、他端11bを、バッテリ載置台9の支持基端9aに設けたガイドローラ12により案内しつつ、モータ13の出力軸に固設した端末ローラ14の外周に係着する。
【0021】
モータ13は、非伸縮線状材11に所定の張力が付与されるよう端末ローラ14を附勢するモータとし、かかる非伸縮線状材11の張設状態を保つようモータ13は端末ローラ14を両方向へ回転位置制御可能なものとする。
そして、図3(a)に示すバッテリ非搭載時におけるガイドローラ12の回転位置を基準とし、この基準位置からのガイドローラ12の回転量を検知する回転センサ15を設ける。
【0022】
バッテリ載置台9上にバッテリ7を乗せる前は、バッテリ載置台9がバッテリ重量を受けないため、図3(a)に示すように真っ直ぐな状態であり、ガイドローラ12の回転位置は基準位置に保たれる。
このとき回転センサ15は、ガイドローラ12の基準位置からの回転が0であるのを検出しており、これをもって、バッテリ載置台9がバッテリ荷重に伴う変形を生じていないと判定し得る。
【0023】
図3(b)に示すようにバッテリ載置台9上にバッテリ7を乗せると、バッテリ載置台9はバッテリ重量による下向き変形力F1を受けて、
図3(a)に示す真直状態から、同図(b)に示すように、支持基端9aを支点とする撓み変形される。
かかるバッテリ載置台9の撓み変形により、非伸縮線状材11の先端11aは非伸縮線状材11を、バッテリ載置台9の支持基端9aから先端縁9bに向かう方向へ繰り出させることとなる。
【0024】
かかる非伸縮線状材11の繰り出しは、非伸縮線状材11を案内しているガイドローラ12の対応方向(図3の時計方向)への回転を生起させ、当該ガイドローラ12の回転量(非伸縮線状材11の繰り出し量)がバッテリ載置台9の撓み変形量に対応する。
よって、当該ガイドローラ12の回転量を検出する回転センサ15の検出値からバッテリ載置台9の撓み変形量を判定することができる。
従って非伸縮線状材11は、回転センサ15と共に、本発明におけるバッテリ載置台変形検知手段に相当する。
【0025】
かかるバッテリ載置台9の撓み変形時は図3(c)に示すごとく、上記非伸縮線状材11の繰り出し量に相当する長さだけ非伸縮線状材11を手繰り戻すよう、モータ13により端末ローラ14を回転駆動させ、ガイドローラ12を図3(a)の基準位置に回転復帰させる。
この間、非伸縮線状材11の先端11aは、これが係着されているバッテリ載置台9の先端縁9bに対し、図3(b)に示す下向き変形力F1と逆向きの変形抗力F2を生じさせ、
図3(b)に示すバッテリ載置台9の変形を、図3(c)に示すようになくすか、または少なくとも小さくすることができる。
従ってモータ13および端末ローラ14は、非伸縮線状材11と共に、本発明における変形抗力発生手段に相当する。
【0026】
[作用効果]
上記した第1実施例になる電動車両のバッテリ取付け装置にあっては、
バッテリ載置台9の片持ち梁支持基端9aと、この基端9aから遠いバッテリ載置台9の先端縁9bとの間に張設した非伸縮線状材11の基端9aから先端縁9bへの繰り出し量を基にバッテリ載置台9の撓み変形量を検知し、
非伸縮線状材11を上記の繰り出し量に相当する長さだけ、モータ13および端末ローラ14により手繰り戻して、バッテリ重量によるバッテリ載置台9の変形力F1に抵抗する変形抗力F2を生じさせるため、
この変形抗力F2で、バッテリ7の重量によるバッテリ載置台9の変形を無くし得るか、少なくとも低減し得ることとなる。
【0027】
従って、バッテリ載置台9の変形に起因して、バッテリ取付け作業時にバッテリ7がバッテリ収納空所2の周壁ガイド部に噛み込んだり、引っかかるようなことがなくなり、
バッテリ7を、空になってバッテリ収納空所2から取り出そうとする時に、バッテリ7をバッテリ収納空所2から取り外すことができなくなる懸念を払拭することができる。
【0028】
また、バッテリ載置台9の変形に起因して、バッテリ7をバッテリ収納空所2内に挿入した時に、バッテリ側のロック部(図示せず)と、バッテリ収納空所側(車体側)ロック部(同じく図示せず)との相対位置が正規の位置からずれてしまうようなこともなくなり、
バッテリ7をバッテリ収納空所2内(車体)に対しロックすることができず、バッテリ7が搭載困難になるという懸念も払拭することができる。
【0029】
なお、バッテリ載置台9の撓み変形量を検知するに際し、バッテリ載置台9の片持ち梁支持基端9aと、この基端9aから遠いバッテリ載置台9の先端縁9bとの間に張設した非伸縮線状材11の基端9aから先端縁9bへの繰り出し量を基に当該検知を行うため、
バッテリ載置台9の撓み変形量が最も大きな先端縁9bの変形を検知することとなって、バッテリ載置台9の撓み変形量を高感度に、しかも簡単で安価な構成により検知することができる。
【0030】
また、バッテリ重量によるバッテリ載置台9の変形力F1に抵抗する変形抗力F2を生じさせるに際し、上記の非伸縮線状材11を上記繰り出し量に相当する長さだけ、モータ13および端末ローラ14により手繰り戻すことにより変形抗力F2を生じさせるため、
バッテリ載置台9の撓み変形量が予定通り0にされたり、低減されるような変形抗力F2を正確に発生させることができる。
【0031】
[第2実施例]
ところで、図3に示す第1実施例によりバッテリ載置台9の撓み変形に関した問題を解消したとしても、
バッテリ7の更なる重量増や、セル配置の違いなどにより、図4(a)に矢印で示す変形力F3により、バッテリ載置台9が片持ち梁支持基端9aおよび先端縁9b間において、例えば2〜4mm程度下降する曲げ変形を生ずることがある。
【0032】
かかるバッテリ載置台9の両端間曲げ(湾曲)変形によっても、バッテリ取付け作業時にバッテリ7がバッテリ収納空所2(図1参照)の周壁ガイド部に噛み込んだり、引っかかり、バッテリ7をバッテリ収納空所2から取り外すことができなくなるという問題や、
バッテリ7をバッテリ収納空所2内に挿入した時に、バッテリ側ロック部およびバッテリ収納空所側(車体側)ロック部の相互係合ができずに、バッテリ7が搭載困難になるという問題を生ずる。
【0033】
そこで本実施例(第2実施例)は、かかるバッテリ載置台9の両端間曲げ(湾曲)変形をも解消または軽減し得るようにしたものである。
このため図4(a)に示すごとく、バッテリ載置台9の下方にあって該バッテリ載置台9との間の距離を検出する複数個(図示例では5個)のレーザ変位計などの距離センサ20-1〜20-5を設ける。
これら距離センサ20-1〜20-5は、バッテリ載置台9の片持ち梁支持基端9aおよび先端縁9b間に順次、等間隔に配列し、これら距離センサ20-1〜20-5により検出した距離の変化からバッテリ載置台9の上記曲げ変形を検知する。
従って距離センサ20-1〜20-5は、本発明におけるバッテリ載置台変形検知手段に相当する。
【0034】
そして、距離センサ20-1〜20-5からの距離情報に基づき検知したバッテリ載置台9の曲げ変形から、バッテリ載置台9に乗っているバッテリ7の仕様を特定し、
当該特定仕様のバッテリ7に対応する矯正ブロック21を、図4(b)に示すごとくバッテリ載置台9の下面に着脱自在に取り付ける。
【0035】
ここで矯正ブロック21は、バッテリ7の仕様が1種類のみである場合、1種類の矯正ブロック21をバッテリ載置台9の下面に取り付けっぱなしにするが、
バッテリ7の仕様が複数種類ある場合、図4(b)に矯正ブロック21-1および矯正ブロック21-2により示すごとく、バッテリ仕様の数と同数の種類のものを予め用意しておく。
【0036】
しかし何れにしても、1種類の矯正ブロック21、各種の矯正ブロック21-1および矯正ブロック21-2はそれぞれ、対応する仕様のバッテリ7がバッテリ載置台9に付与する図4(a)に示した曲げ変形力F3を打ち消すような逆向きの変形抗力を、バッテリ載置台9の下面から上向きに作用させて、バッテリ載置台9の曲げ変形を無くしたり、軽減するものとする。
【0037】
かかる本実施例(第2実施例)の構成によれば、第1実施例と同様にバッテリ載置台9の撓み変形に関する問題を解消し得て、第1実施例と同様な作用効果を奏し得るのに加え、
バッテリ載置台9の両端間曲げ(湾曲)変形をも解消または軽減し得て、これに関する問題解決をも実現することができる。
【0038】
なお、バッテリ載置台9の支持基端9aおよび先端縁9b間の曲げ変形を検知するに際し、
バッテリ載置台9の下方でその支持基端9aおよび先端縁9b間に等間隔に配列した距離センサ20-1〜20-5により、バッテリ載置台9の下面との間における距離を検出して、当該検出距離の変化からバッテリ載置台9の上記曲げ変形を検知するため、
当該バッテリ載置台9の曲げ変形検知を、簡単で安価な構成により行うことがでできる。
【0039】
[第3実施例]
ところで、図4に示す第2実施例においては、バッテリ載置台9に乗せるバッテリ7の仕様が変化する度に、バッテリ載置台9の下面へ着脱自在に取り付けた矯正ブロック21を交換する面倒な作業が必要である。
第3実施例は、この面倒を解消し得るよう、バッテリ載置台9に乗せるバッテリ7の仕様が変化しても、バッテリ載置台9の曲げ変形を自動的に無くしたり、軽減し得るようにしたものである。
【0040】
このため本実施例(第3実施例)においては、図5に示すごとくバッテリ載置台9の下方に配してボールネジ31を設け、
このボールネジ31は、バッテリ載置台9の基端9aおよび先端縁9b間に延在するよう、また、バッテリ載置台9の下面に平行に延在するよう配置し、バッテリ載置台9に回転自在に支持する。
【0041】
ボールネジ31は図6に明示するごとく、バッテリ載置台9の基端9aおよび先端縁9b間の中間地点直下の中央部を境に、両側でネジの向きを相互逆向きとなし、
これら逆向きネジ部にそれぞれ、ボールナット32,33を介して変形抗力発生ブロック34,35を螺合させる。
変形抗力発生ブロック34,35はそれぞれ、図5,6の下面を平坦とし、これら平坦面をバッテリ載置台9の対応する平坦面に接触させて廻り止めする。
【0042】
ボールネジ31の一端に、バッテリ載置台9上に設けたモータ36を結合し、これによりボールネジ31を何れか一方向へ回転可能とする。
モータ36によるボールネジ31の回転制御は、図4(a)におけると同様な距離センサ20-1〜20-5からの信号に応答させて、以下のように当該回転制御を行うものとする。
【0043】
バッテリ7の重量に伴う図5に矢印で示す変形力F3により、バッテリ載置台9が片持ち梁支持基端9aおよび先端縁9b間において曲げ変形したとき、
距離センサ20-1〜20-5からの距離情報に基づき当該バッテリ載置台9の曲げ変形を判定し、この曲げ変形をなくすか、または、問題とならない程度まで小さくするのに必要な変形抗力発生ブロック34,35の相互接近位置を演算する。
【0044】
そして、かようにして演算した変形抗力発生ブロック34,35の相互接近位置を実現するためのボールネジ31の回転方向および回転量を求め、これらが実現されるようモータ36を回転制御する。
当該モータ36を回転制御で変形抗力発生ブロック34,35は、上記演算結果の通りとなるよう相互に接近する。
【0045】
変形抗力発生ブロック34,35は、かかる相互接近により、図6に示すごとくバッテリ載置台9の下面9cに対し、変形力F3と逆向きの変形抗力F4を付与する。
これにより、変形抗力発生ブロック34,35はそれぞれ、バッテリ載置台9の下面9cを図6の破線で示す湾曲状態から実線で示す真直状態へと押し上げ、バッテリ載置台9の曲げ変形をなくすか、または、問題とならない程度まで小さくすることができる。
従って変形抗力発生ブロック34,35は、ボールネジ31、ボールナット32,33およびモータ36と共に、本発明における変形抗力発生手段に相当する。
【0046】
かかる本実施例(第3実施例)の構成によれば、第1実施例と同様な作用効果を奏し得ると共に、
バッテリ載置台9の両端間曲げ(湾曲)変形をも解消または軽減し得て、第2実施例と同様な作用効果を奏し得るのに加え、
第2実施例におけるように、矯正ブロック21の面倒な交換作業を要することなく自動的に、バッテリ載置台9の曲げ変形を自動的に無くしたり、軽減し得るという作用効果を達成することができる。
【0047】
なお、バッテリ載置台9の下面9cに変形抗力F4を付与して、バッテリ載置台9の曲げ変形をなくすか、または、問題とならない程度まで小さくするに際し、
一対1組の変形抗力発生ブロック34,35を、共通なボールネジ31の一方向回転により相互接近させて作用を行わせる構成としたため、
変形抗力F4がバッテリ載置台9の下面9cにバランス良く付与されることとなり、上記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0048】
[第4実施例]
ところで、第3実施例においては変形抗力発生ブロック34,35がバッテリ載置台9の下面9cに対し摩擦接触するため、両者の摩耗が大きいと共にモータ36の要求駆動力が大きくなるという問題を生ずる。
この問題解決のため本実施例(第4実施例)においては、図7に示すごとく、バッテリ載置台9の下面9cと変形抗力発生ブロック34,35とが転がり接触となるよう、
バッテリ載置台9の下面9cと接する変形抗力発生ブロック34,35の箇所にそれぞれ、コロ41,42を設け、これらコロ41,42をそれぞれ、軸43,44で変形抗力発生ブロック34,35に対し回転自在に支持する。
【0049】
かかる本実施例(第4実施例)の構成によれば、第3実施例の作用効果に加えて、
バッテリ載置台9の両端間曲げ(湾曲)変形を矯正している間に変形抗力発生ブロック34,35がバッテリ載置台9の下面9cに対し転がり接触するため、両者の摩耗を軽減し得ると共にモータ36の要求駆動力を低下させ得るという作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施例になる電動車両のバッテリ取付け装置を、車両側方から見て示す概略説明図である。
【図2】図1に示すバッテリ取付け装置のバッテリ載置台に第1実施例の対策を施さなかった場合における、バッテリ載置台の変形状態を示し、 (a)は、バッテリを乗せる前におけるバッテリ載置台を示す概略側面図、 (b)は、バッテリを乗せた後における変形したバッテリ載置台を示す概略側面図である。
【図3】第1実施例の対策を施した図1に示すバッテリ取付け装置におけるバッテリ載置台の変形状態、および変形矯正状態を示し、 (a)は、バッテリを乗せる前におけるバッテリ載置台を示す概略側面図、 (b)は、バッテリを乗せた後における変形したバッテリ載置台を示す概略側面図、 (c)は、変形状態から矯正されたバッテリ載置台を示す概略側面図である。
【図4】本発明の第2実施例を示し、 (a)は、第1実施例によっては解消し得ないバッテリ載置台の曲げ変形を示すバッテリ載置台の概略側面図、 (b)は、第2実施例により、変形状態から矯正されたバッテリ載置台を示す概略側面図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す、図4(a)と同様なバッテリ載置台の概略側面図である。
【図6】同実施例になる変形抗力発生ブロックの変位構造を示す側面図である。
【図7】本発明の第4実施例を示す、図6と同様な変形抗力発生ブロック変位構造の側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 電動車両
2 バッテリ収納空所
3 テーブル
4 Y方向(横方向)車体位置調整機構
5 X方向(前後方向)車体位置調整機構
6 車体床面レベルセンサ
8 バッテリ搬送装置
9 バッテリ載置台
9a 支持基端
9b 先端縁
10 ロボット
11 非伸縮線状材(変形抗力発生構造:バッテリ載置台変形検知手段:変形抗力発生手段)
12 ガイドローラ
13 モータ(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
14 端末ローラ(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
15 回転センサ
20-1,20-2,20-3,20-4,20-5 距離センサ(変形抗力発生構造:バッテリ載置台変形検知手段)
21,21-1,21-2 矯正ブロック(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
31 ボールネジ(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
32,33 ボールナット(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
34,35 変形抗力発生ブロック(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
36 モータ(変形抗力発生構造:変形抗力発生手段)
41,42 コロ
43,44 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下向き開口付きバッテリ収納空所内に、該下向き開口からバッテリを挿脱して取付けるための電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記バッテリ収納空所に対するバッテリの挿脱中バッテリを載置しておくバッテリ載置台に対し、
バッテリ重量によるバッテリ載置台の変形力に抵抗する変形抗力を生じさせる変形抗力発生構造を設けたことを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生構造は、バッテリ重量によるバッテリ載置台の変形を検知するバッテリ載置台変形検知手段と、
該手段により検知したバッテリ載置台の変形を少なくとも小さくするような変形抗力を生じさせる変形抗力発生手段とを具備したものであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項3】
前記バッテリ載置台が、片持ち梁型式に支持されたものである、請求項2に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記バッテリ載置台変形検知手段は、前記片持ち梁型式の支持部と、該支持部から遠いバッテリ載置台の先端縁との間に張設した線状材を具え、該線状材の前記支持部から前記先端縁への繰り出し量を基に前記バッテリ載置台の撓み変形を検知するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生手段は、前記線状材を前記繰り出し量に相当する長さだけ手繰り戻すものであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記バッテリ載置台変形検知手段は、前記線状材の手繰り戻し後において、前記バッテリ載置台の前記支持部および先端縁間における曲げ変形を検知するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記バッテリ載置台変形検知手段は、前記バッテリ載置台の下方にあって該バッテリ載置台との間の距離を検出する複数個の距離センサを、バッテリ載置台の前記支持部および先端縁間に順次配列して具え、これら距離センサにより検出した距離の変化からバッテリ載置台の前記曲げ変形を検知するものであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生手段は、前記バッテリ載置台変形検知手段で検知したバッテリ載置台の曲げ変形を少なくとも小さくするような変形抗力を生じさせるようバッテリ載置台の下面に着脱自在に取り付けた矯正ブロックであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生手段は、前記バッテリ載置台変形検知手段で検知したバッテリ載置台の曲げ変形を少なくとも小さくするような変形抗力を生じさせるようバッテリ載置台の下面に接して変位可能に設けた変形抗力発生ブロックであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生ブロックは、バッテリ載置台の前記支持部および/または先端縁から、これら前記支持部および先端縁間の中間位置まで変位可能に配置して、1個または2個一組として設けた変形抗力発生ブロックであることを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項10】
前記変形抗力発生ブロックが2個一組として設けられた、請求項9に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生ブロックを、共通なネジ軸上に形成した相互逆向きのネジ部に螺合して、該ネジ軸の一方向回転によりこれら変形抗力発生ブロックが相互に接近するよう、またネジ軸の他方向回転によりこれら変形抗力発生ブロックが相互に遠ざかるよう構成したことを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ取付け装置において、
前記変形抗力発生ブロックと、前記バッテリ載置台の下面との接触部を、転がり接触となるよう構成したことを特徴とする電動車両のバッテリ取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137700(P2010−137700A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315493(P2008−315493)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】