電動車両の制御装置
【課題】バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図る。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、モータジェネレータと、電力制限値制御手段と、を備える。モータジェネレータは、駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動する。電力制限値制御手段は、バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、瞬時用電力制限値による制限幅を連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、モータジェネレータと、電力制限値制御手段と、を備える。モータジェネレータは、駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動する。電力制限値制御手段は、バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、瞬時用電力制限値による制限幅を連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源にバッテリ電力により駆動するモータを備えた電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源にモータを備えた電動車両において、バッテリの電力制限値を、目標電圧と実電圧の偏差に基づきフィードバック(F/B)演算により求める際、バッテリ温度が低いほど、F/B制御ゲインが小さくなるように設定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−125161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動車両にあっては、バッテリの電力制限値を、バッテリ温度が低いほどF/B制御ゲインを小さくしたF/B演算により求めるようにしている。このため、バッテリの内部抵抗が大きい状態において、F/B制御ゲインを下げても、フィードフォワード(F/F)的に使用する電力を制限しないと、電圧の変動が大きくなることには差異がない。そして、バッテリ電圧が超過してからモータトルクを制限するというように、フィードバック介入が多いとドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
そして、上記課題を回避するために、F/F的に使用する電力を一律に制限すると、モータを用いる走行で運転性を向上させることができず、バッテリ保護と運転性を両立させることができない、という問題がある。例えば、変速に使用する電力(主に回転数変化を促進させる)は、瞬時であるが、必要以上に電力を制限すると変速性能が悪化する等が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、モータと、電力制限値制御手段と、を備える手段とした。
前記モータは、駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動する。
前記電力制限値制御手段は、前記バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する。
【発明の効果】
【0008】
よって、電力制限値制御手段において、バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を設定するに際し、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分けられる。そして、瞬時用電力制限値による制限幅が、連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定される。
すなわち、電動車両で走行する場合、モータの使い方として、変速のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある。この点に着目し、モータの使い方が瞬時か連続的かで電力制限値を切り分け、瞬時用電力制限値による制限幅が連続用電力制限値による制限幅よりも拡大して設定する。これにより、例えば、充電または放電の一方が連続的に使用されるときは、バッテリ状態を急変させないように制御することで、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能が発揮される。一方、例えば、変速等のように瞬時だけ使用されるときは、バッテリが発揮できる最大値まで使用することで、バッテリ状態にかかわらず運転性の向上が図られる。
この結果、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレーン系を示すパワートレーン系構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる定常目標トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられるエンジン始動停止線マップを示すマップ図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中要求発電出力を示す特性図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最良燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の統合コントローラにて実行される統合制御演算処理の構成および流れを示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS05にて実行される目標走行モード演算処理での目標走行モード遷移の一例を示す目標走行モード図である。
【図11】図9のステップS03にて実行される出力制限値及びモータトルク上限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である。
【図12】図9のステップS03にて実行される入力制限値及びモータトルク下限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である。
【図13】比較例の課題説明においてバッテリ温度とバッテリ内部抵抗の関係を示す特性図である。
【図14】比較例の課題説明において連続充放電時間とバッテリ内部抵抗の関係を示す特性図である。
【図15】比較例の課題説明において変速を伴うモータ回転数変化特性と車速特性の一例を示す回転数−車速特性図である。
【図16】図11の演算ブロックにて実行される瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】図12の演算ブロックにて実行される瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】HEVモードでの走行中に実施例1における電力制限値の設定を実行した場合の回転数(モータ回転数、出力軸回転数)・モータトルク(実モータトルク、モータトルク上限値、モータトルク下限値)・バッテリ電力・バッテリ電圧の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレーン系を示す。以下、図1に基づきパワートレーン系構成を説明する。
【0012】
実施例1のハイブリッド車両のパワートレーン系は、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(モータ)と、自動変速機3と、第1クラッチ4と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7、7と、を備えている。
【0013】
実施例1のハイブリッド車両は、エンジンと1モータ・2クラッチを備えたパワートレーン系構成であり、走行モードとして、第1クラッチ4の締結による「HEVモード」と、第1クラッチ4の開放による「EVモード」と、第2クラッチ5をスリップ締結状態にして走行する「WSCモード」と、を有する。
【0014】
前記エンジン1は、その出力軸とモータジェネレータ2(略称MG)の入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4(略称CL1)を介して連結される。
【0015】
前記モータジェネレータ2は、その出力軸と自動変速機3(略称AT)の入力軸とが連結される。
【0016】
前記自動変速機3は、その出力軸にディファレンシャルギア6を介してタイヤ7、7が連結される。
【0017】
前記第2クラッチ4(略称CL2)は、自動変速機3のシフト状態に応じて異なる変速機内の動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチ・ブレーキによる締結要素のうち、1つを用いている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力を合成してタイヤ7、7へ出力する。
【0018】
前記第1クラッチ4と前記第2クラッチ5には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチ等を用いればよい。このパワートレーン系には、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードがあり、第1クラッチ4の切断状態では、モータジェネレータ2の動力のみで走行する「EVモード」であり、第1クラッチ4の接続状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の動力で走行する「HEVモード」である。
【0019】
そして、パワートレーン系には、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0020】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す。以下、図2に基づいて制御システム構成を説明する。
【0021】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、ソレノイドバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、バッテリ温度センサ23と、SOCセンサ16と、を備えている。
【0022】
前記統合コントローラ20は、パワートレーン系構成要素の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOとバッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、モータコントローラ22に目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に目標エンジントルクを指令し、ソレノイドバルブ14、15に駆動信号を指令する。
【0023】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。前記ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ17は、アクセル開度(APO)を検出する。前記バッテリ温度センサ23は、バッテリ9の温度を検出する。前記SOCセンサ16は、バッテリ9の充電状態を検出する。
【0024】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて統合コントローラ20の構成を説明する。
【0025】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0026】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常駆動トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0027】
前記モード選択部200は、図5に示す車速毎のアクセル開度で設定されているエンジン始動停止線マップを用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線とエンジン停止線は、エンジン始動線(SOC高、SOC低)とエンジン停止線(SOC高、SOC低)の特性に代表されるように、バッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する特性として設定されている。
ここで、エンジン始動処理は、「EVモード」の選択状態で図5に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、第2クラッチ5をスリップさせるように、第2クラッチ5のトルク容量を制御する。そして、第2クラッチ5がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ4を完全に締結する。その後、第2クラッチ5をロックアップさせて「HEVモード」に遷移させることをいう。
【0028】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最良燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0029】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク、MGアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標CL2トルク容量と目標変速比とCL1ソレノイド電流指令を演算する。
【0030】
前記変速制御部500は、目標CL2トルク容量と目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。車速VSPとアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0031】
図9は、実施例1の統合コントローラ20にて実行される統合制御演算処理の構成および流れを示す。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0032】
ステップS01では、各コントローラからデータを受信し、次のステップS02では、センサ値を読み込み、後の演算に必要な情報を取り込む。
【0033】
ステップS03では、ステップS02でのセンサ値読み込みに続き、バッテリ状態に応じて電力制限値(出力制限値、入力制限値)及びモータトルク制限値(モータトルク上限値、モータトルク下限値)を算出し、ステップS04へ進む。
ここでは、瞬時用電力制限値と連続用電力制限値とモータトルク制限値を算出し、目的に応じて使い分ける。例えば、EV走行の許可電力や発電のような長時間続く可能性があるものは、連続用電力制限値を選択し、変速等の短時間で終わる用途には、瞬時用電力制限値を用いて制限する。なお、詳しい説明は、図11、図12,図16,図17を用いて後述する。
【0034】
ステップS04では、ステップS03での電力制限値及びモータトルク制限値演算に続き、車速VSP、アクセル開度APO、ブレーキ制動力に応じて目標駆動トルクを演算し、ステップS05へ進む。
【0035】
ステップS05では、ステップS04での目標駆動トルクの演算に続き、目標駆動トルク、バッテリSOC、アクセル開度APO、車速VSP、路面勾配、等の車両状態に応じて、目標走行モードを選択し、ステップS06へ進む。
参考として、図10に「EVモード」と「HEVモード」と「WSCモード」を互いに遷移する目標走行モードの抜粋を示す。ここで、「WSCモード」とは、第2クラッチ5(CL2)をスリップさせての「HEVモード」による走行モードをいう。ステップS05の演算で、「EVモード」から「HEVモード」を選択した場合には、エンジン始動を実施する。
【0036】
ステップS06では、ステップS05での目標走行モード演算に続き、エンジン始動時の第1クラッチ4(CL1),第2クラッチ5(CL2)の状態に応じて、モータ制御モード、エンジン起動タイミングを選択し、ステップS07へ進む。過渡走行モードとしては、第1クラッチ4(CL1),第2クラッチ5(CL2)のスリップ状態や、エンジン完爆状態に応じて、各デバイス状態を切替え、走行状態を管理する。
【0037】
ステップS07では、ステップS06での過渡走行モード演算に続き、ステップS06で求めた車両状態や変速状態に応じて、特に回転数制御を考慮し、モータ制限トルクを、瞬時用モータ制限トルクと連続用モータ制限トルクを切替えて用い、ステップS08へ進む。
【0038】
ステップS08では、ステップS07でのエンジン始動時電力拡大要求演算に続き、ステップS05で決めた走行状態及びモータ制御状態に合わせて、目標入力回転数を演算し、ステップS09へ進む。
エンジン始動時のうちクランキング時は、第2クラッチ5(CL2)のスリップを維持するように制御する。エンジン1の完爆を判定した後は、第2クラッチ5(CL2)のスリップを収束させるように制御する。
【0039】
ステップS09では、ステップS08での目標入力回転数演算に続き、目標駆動トルク及び各種デバイスの保護を考慮した目標入力トルクを演算し、ステップS10へ進む。
エンジン始動時は、目標駆動トルクに対して、第2クラッチ5(CL2)をスリップさせやすくするようにCL2スリップ助長トルクを加算する。この時、CL2トルク容量を低下させつつ、本演算を行うことで、実入力トルク>第2クラッチトルク容量の状態を積極的に作ることでスリップ促進させる。
【0040】
ステップS10では、ステップS09での目標入力トルク演算に続き、ステップS09で算出した目標入力トルク及び発電要求を考慮し、エンジン1とモータジェネレータ2へのトルク配分を決め、それぞれの目標値を算出し、ステップS11へ進む。
ここで、発電要求は、ステップS03で算出したモータトルク下限値(連続)を用いる。
【0041】
ステップS11では、ステップS10での目標エンジントルク/モータトルク演算に続き、ステップS06の過渡走行モード演算で決めた指令に応じて、第1クラッチ4(CL1)の目標クラッチトルク容量を演算し、ステップS11へ進む。
【0042】
ステップS12では、ステップS11での目標クラッチ1トルク容量演算に続き、ステップS06で決めた走行状態、CL2スリップ回転数に応じて、第2クラッチ5(CL2)の目標クラッチトルク容量を演算し、ステップS13へ進む。
【0043】
ステップS13では、ステップS12での目標クラッチ2トルク容量演算に続き、各コントローラへデータを送信し、エンドへ進む。
【0044】
図11は、図9のステップS03にて実行される出力制限値及びモータトルク上限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である(電力制限値制御手段)。以下、図11の各ブロックについて説明する。
【0045】
ブロックB01では、バッテリSOCと電流F/B開始しきい値マップに基づいて、出力側バッテリ電力の電流F/B開始しきい値が算出される。
【0046】
ブロックB02では、電流制限値とバッテリ総電圧を掛け合わせることで、出力側バッテリ電力の最大出力値が算出される。
【0047】
ブロックB03では、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの出力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大出力値と、の最小値選択により、出力制限値1が決定される。
【0048】
ブロックB04では、モータ回転数とトルク変化率制限値を掛け合わせることで、電力制限値を変更する際、変化率制限を実施するためのトルク及び回転条件となる変化率制限値を求める。
【0049】
ブロックB05では、ブロックB03からの出力制限値1の変化率を、ブロックB04からの変化率制限値により制限し、F/F出力上限電力を算出する。
【0050】
ブロックB06では、ブロックB05からのF/F出力上限電力とバッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求める。
【0051】
ブロックB07では、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求める。
【0052】
ブロックB08では、ブロックB06からの電力フィードバック補正量と、ブロックB07からの電圧フィードバック補正量と、の最小値選択により、F/F出力上限電力のフィードバック補正量を決定する。
【0053】
ブロックB09では、ブロックB05からのF/F出力上限電力と、ブロックB08からのフィードバック補正量を加算し、出力上限電力を求める。
【0054】
ブロックB10では、バッテリ温度に応じてゲインを設定し、このゲインにブロックB09からの出力上限電力を掛け合わせて出力制限電力を求める。なお、バッテリ温度が高温であるほどゲインを小さな値に設定する。
【0055】
ブロックB11では、ブロックB09からの出力上限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用出力制限値を求める。なお、A/Cは、エアーコンディショナーである。
【0056】
ブロックB12では、ブロックB10からの出力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用出力制限値を求める。
【0057】
ブロックB13では、ブロックB11からの瞬時用出力制限値とモータ回転数に基づいて、電力→トルク変換を行い、瞬時用モータトルク上限値を求める。
【0058】
ブロックB14では、ブロックB12からの連続用出力制限値とモータ回転数に基づいて、電力→トルク変換を行い、連続用モータトルク上限値を求める。
【0059】
図12は、図9のステップS03にて実行される入力制限値及びモータトルク下限値演算処理を示す演算ブロック図である(電力制限値制御手段)。図12のブロックB21〜ブロックB34については、図11の演算ブロック図に対し、「出力、上限」と「入力、下限」の関係が入れ替わる。そして、ブロックB23とブロックB28において、最大値の選択によりフィードバック補正量を決める点で、ブロックB3とブロックB8の最小値選択と異なるのみである。よって、各ブロックの説明は省略する。
【0060】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題について」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用」、「瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用」、「電力制限値制御作用」に分けて説明する。
【0061】
[比較例の課題について]
まず、バッテリ温度とバッテリ内部抵抗の関係は、図13に示すように、バッテリ温度等のバッテリ状態によって内部抵抗が変化する。特に、バッテリ温度が低いときにバッテリ内部抵抗が高くなる。また、連続充放電時間とバッテリ内部抵抗の関係は、図14に示すように、連続して充電/放電を継続すると、連続充放電時間に比例して内部抵抗が上昇する。
【0062】
そこで、バッテリの電力制限値を、バッテリ温度が低いほどF/B制御ゲインを小さくしたF/B演算により求めるものを比較例1とする。この比較例1では、バッテリの内部抵抗が大きい状態において、F/B制御ゲインを下げても、フィードフォワード(F/F)的に使用する電力を制限しないと、電圧の変動が大きくなることには差異がない。そして、バッテリ電圧が超過してからモータトルクを制限するというように、フィードバック介入が多いとドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0063】
この課題を回避するために、F/F的に使用する電力を、バッテリ保護を重視して一律に制限するものを比較例2とする。この比較例2では、モータを用いる走行で運転性を向上させることができず、バッテリ保護と運転性を両立させることができない。
【0064】
例えば、変速に使用する電力(主に回転数変化を促進させる)は、瞬時であるが、必要以上に電力を制限すると変速性能が悪化する等が挙げられる。つまり、変速時にモータの回転数制御により変速機入力回転数を制御する場合、図15の領域Aに示すように、アップシフト毎にモータ回転数を急激に低下させるモータ回転数制御が行われる。このモータ回転数制御によって、車速が滑らかに上昇するとう良好な運転特性が得られる。しかし、電力制限により、図15に示すようなモータ回転数を急激に低下させる制御を行うことができないと、アップシフトに要する時間が長くなる変速間延び感が出てしまい、車速の変動等を招いて運転特性が低下する。
【0065】
このように、モータの使い方にかかわらず、バッテリ保護機能を出すために一律に電力制限値のF/F項を設定すると、変速のような瞬時の使い方のときに過剰な制限となって運転性が低下するというように、アンマッチが生じる。
【0066】
[瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用]
上記比較例の課題に対し、走行時、モータの使い方として、変速のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある点に着目してなされた。図16は、図11の演算ブロックにて実行される瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図16を用いて瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用を説明する。
【0067】
ステップS101では、ブロックB03において、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの出力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大出力値と、の最小値選択により、出力制限値1を決定し、ステップS102へ進む。
【0068】
ステップS102では、ブロックB05において、ブロックB03からの出力制限値1の変化率を、ブロックB04からの変化率制限値により制限し、F/F出力上限電力を算出し、ステップS103へ進む。
【0069】
ステップS103では、ブロックB06において、ブロックB05からのF/F出力上限電力と(実)バッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求め、ステップS104へ進む。
【0070】
ステップS104では、ブロックB07において、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求め、ステップS105へ進む。
【0071】
ステップS105では、ブロックB05からのF/F出力上限電力と、ブロックB08からのフィードバック補正量を加算し、出力上限電力を求め、ステップS106へ進む。
【0072】
ステップS106では、ブロックB10において、ブロックB09からの出力上限電力にバッテリ温度に応じてゲインを掛け合わせて求めた出力制限電力を連続用とし、ブロックB09からの出力上限電力そのものを瞬時用とし、瞬時/連続を切り分け、ステップS106へ進む。
【0073】
ステップS107では、ブロックB11において、ブロックB09からの出力上限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用出力制限値を求める。また、ブロックB12において、ブロックB10からの出力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用出力制限値を求める。
【0074】
したがって、上記切り分け演算処理により、モータジェネレータ2の使い方が瞬時か連続的かで出力制限値が切り分けられ、瞬時用出力制限値(瞬時用モータトルク上限値)が連続用出力制限値(連続用モータトルク上限値)よりも高い値に設定される。
【0075】
[瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用]
図17は、図12の演算ブロックにて実行される瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図17を用いて瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用を説明する。
【0076】
ステップS201では、ブロックB23において、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの入力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大入力値と、の最大値選択により、入力制限値1を決定し、ステップS202へ進む。
【0077】
ステップS202では、ブロックB25において、ブロックB23からの入力制限値1の変化率を、ブロックB24からの変化率制限値により制限し、F/F入力下限電力を算出し、ステップS203へ進む。
【0078】
ステップS203では、ブロックB26において、ブロックB25からのF/F入力下限電力と(実)バッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求め、ステップS204へ進む。
【0079】
ステップS204では、ブロックB27において、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求め、ステップS205へ進む。
【0080】
ステップS205では、ブロックB25からのF/F入力下限電力と、ブロックB28からのフィードバック補正量を加算し、入力下限電力を求め、ステップS206へ進む。
【0081】
ステップS206では、ブロックB30において、ブロックB29からの入力下限電力にバッテリ温度に応じてゲインを掛け合わせて求めた入力制限電力を連続用とし、ブロックB29からの入力下限電力そのものを瞬時用とし、瞬時/連続を切り分け、ステップS206へ進む。
【0082】
ステップS207では、ブロックB31において、ブロックB29からの入力下限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用入力制限値を求める。また、ブロックB32において、ブロックB30からの入力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用入力制限値を求める。
【0083】
したがって、上記切り分け演算処理により、モータジェネレータ2の使い方が瞬時か連続的かで入力制限値が切り分けられ、瞬時用入力制限値(瞬時用モータトルク下限値)が連続用入力制限値(連続用モータトルク下限値)よりも低い値に設定される。
【0084】
[電力制限値制御作用]
実施例1における電力制限値制御作用を、「HEVモード」を選択しての発電走行中、モータ回転数制御によるアップシフト変速が行われる場合を示す図18のタイムチャートに基づき説明する。
【0085】
図18の時刻t0から時刻t1までの時間域、時刻t2から時刻t3までの時間域、時刻t4以降の時間域は、モータジェネレータ2による充電が連続的に行われる区間であり、制限幅を狭く抑えた連続用モータトルク上限値と連続用モータトルク上限値が設定される。したがって、モータジェネレータ2による充電が連続的に行われる区間におけるバッテリ電圧やバッテリ電力は、図18に示すように、滑らかな特性で推移し、バッテリ状態を急変させないように制御される。
【0086】
図18の時刻t1から時刻t2までの時間域、時刻t3から時刻t4までの時間域は、モータジェネレータ2によるモータ回転数制御によってアップシフトが瞬間的に行われる区間であり、制限幅を広く拡大した瞬時用モータトルク上限値と瞬時用モータトルク上限値が設定される。したがって、アップシフトが瞬間的に行われる区間におけるバッテリ電力は、図18に示すように、モータ回転数を低下させる制御を円滑に行うように急に下げる。このため、素早く変速ショックを抑えた高品質のアップシフトを行うことで運転性が向上する。この運転性の向上と共に、バッテリ電圧の上昇から明らかなように、バッテリ充電量を高めることができる。
【0087】
すなわち、ハイブリッド車両で走行する場合、モータジェネレータ2の使い方として、変速時やエンジン始動時やエンジン停止時のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある。これに対し、バッテリ状態で電力制限値のF/B項を設定すると、フィードバック介入が多くなりドライバに違和感を与える。また、モータの使い方にかかわらず、バッテリ保護機能を出すために一律に電力制限値のF/F項を設定すると、変速のような瞬時の使い方のときに過剰な制限となって運転性が低下するというように、アンマッチが生じる。
【0088】
これに対し、実施例1では、モータジェネレータ2の使い方が瞬時であるか連続的であるかで電力制限値(出力制限値、入力制限値)を切り分け、瞬時用電力制限値による制限幅を、連続用電力制限値による制限幅よりも広く拡大して設定する構成を採用した。
これにより、バッテリ9の状態にかかわらず、充電または放電の一方が連続的に使用されるときは、バッテリ状態を急変させないように制御することで、バッテリ保護機能が発揮される。一方、変速等のように瞬時だけ使用されるときは、バッテリ9が発揮できる最大値まで使用することで、運転性の向上が図られる。
この結果、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【0089】
実施例1では、瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値とで切り分けるのは、バッテリ温度により実施する構成を採用している。
すなわち、バッテリ温度により電池内部抵抗であるバッテリ状態を推定でき、このバッテリ状態に応じて瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値を切替えるようにしている。
したがって、バッテリ状態に応じて劣化を抑えた確実な電池保護機能が図られる。
【0090】
実施例1では、電力制限値を変更する際は、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定する構成を採用している。
したがって、ドライバへ違和感を与えることなく、電池保護機能が実現される。
【0091】
実施例1では、瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値とで使い分ける電力に、補機やA/C等のように、駆動系に関わらない電力を除く構成を採用している。
このように、駆動系に関わらない電力を除くことで、バッテリ状態を急変させないようにして電力収支が管理される。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0093】
(1) 駆動源に設けられ、バッテリ9からの電力により駆動するモータ(モータジェネレータ2)と、
前記バッテリ9の電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する電力制限値制御手段(図11,図12)と、
を備える。
このため、バッテリ9の電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【0094】
(2) バッテリ内部抵抗またはバッテリ温度を検出するバッテリ状態検出手段(バッテリ温度センサ23)を備え、
前記電力制限値制御手段(図11,図12)は、前記バッテリ状態検出手段(バッテリ温度センサ23)からのバッテリ内部抵抗またはバッテリ温度に基づいて、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する(ブロックB10、ブロックB30)。
このため、(1)の効果に加え、バッテリ状態に応じて劣化を抑えた確実な電池保護機能を図ることができる。
【0095】
(3) 前記電力制限値制御手段(図11,図12)は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値との間で電力制限値を変更する際、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定する(ブロックB5、ブロックB25)。
このため、(1)または(2)の効果に加え、ドライバへ違和感を与えることなく、電池保護機能を実現することができる。
【0096】
(4) 前記電力制限値制御手段(図12)は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する際、駆動系に関わらない他の車載強電系の使用許可電力を除く(ブロックB11,B12、ブロックB31,B32)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、バッテリ状態を急変させないようにして電力収支を管理することができる。
【0097】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0098】
実施例1では、パワートレーン系にエンジンとモータジェネレータを持つハイブリッド車両に対して適用した例を示した。しかし、ハイブリッド車両に限らず、電気自動車や燃料電池車等の駆動源にバッテリ駆動のモータを備えた電動車両に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 ディファレンシャルギア
7 タイヤ
8 インバータ
9 バッテリ
10 エンジン回転センサ
11 MG回転センサ
12 AT入力回転センサ
13 AT出力回転センサ
14、15 ソレノイドバルブ
16 SOCセンサ
17 アクセル開度センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータコントローラ
23 バッテリ温度センサ(バッテリ状態検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源にバッテリ電力により駆動するモータを備えた電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源にモータを備えた電動車両において、バッテリの電力制限値を、目標電圧と実電圧の偏差に基づきフィードバック(F/B)演算により求める際、バッテリ温度が低いほど、F/B制御ゲインが小さくなるように設定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−125161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動車両にあっては、バッテリの電力制限値を、バッテリ温度が低いほどF/B制御ゲインを小さくしたF/B演算により求めるようにしている。このため、バッテリの内部抵抗が大きい状態において、F/B制御ゲインを下げても、フィードフォワード(F/F)的に使用する電力を制限しないと、電圧の変動が大きくなることには差異がない。そして、バッテリ電圧が超過してからモータトルクを制限するというように、フィードバック介入が多いとドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0005】
そして、上記課題を回避するために、F/F的に使用する電力を一律に制限すると、モータを用いる走行で運転性を向上させることができず、バッテリ保護と運転性を両立させることができない、という問題がある。例えば、変速に使用する電力(主に回転数変化を促進させる)は、瞬時であるが、必要以上に電力を制限すると変速性能が悪化する等が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、モータと、電力制限値制御手段と、を備える手段とした。
前記モータは、駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動する。
前記電力制限値制御手段は、前記バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する。
【発明の効果】
【0008】
よって、電力制限値制御手段において、バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を設定するに際し、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分けられる。そして、瞬時用電力制限値による制限幅が、連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定される。
すなわち、電動車両で走行する場合、モータの使い方として、変速のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある。この点に着目し、モータの使い方が瞬時か連続的かで電力制限値を切り分け、瞬時用電力制限値による制限幅が連続用電力制限値による制限幅よりも拡大して設定する。これにより、例えば、充電または放電の一方が連続的に使用されるときは、バッテリ状態を急変させないように制御することで、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能が発揮される。一方、例えば、変速等のように瞬時だけ使用されるときは、バッテリが発揮できる最大値まで使用することで、バッテリ状態にかかわらず運転性の向上が図られる。
この結果、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレーン系を示すパワートレーン系構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる定常目標トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられるエンジン始動停止線マップを示すマップ図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中要求発電出力を示す特性図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最良燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の統合コントローラにて実行される統合制御演算処理の構成および流れを示すフローチャートである。
【図10】図9のステップS05にて実行される目標走行モード演算処理での目標走行モード遷移の一例を示す目標走行モード図である。
【図11】図9のステップS03にて実行される出力制限値及びモータトルク上限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である。
【図12】図9のステップS03にて実行される入力制限値及びモータトルク下限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である。
【図13】比較例の課題説明においてバッテリ温度とバッテリ内部抵抗の関係を示す特性図である。
【図14】比較例の課題説明において連続充放電時間とバッテリ内部抵抗の関係を示す特性図である。
【図15】比較例の課題説明において変速を伴うモータ回転数変化特性と車速特性の一例を示す回転数−車速特性図である。
【図16】図11の演算ブロックにて実行される瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】図12の演算ブロックにて実行される瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】HEVモードでの走行中に実施例1における電力制限値の設定を実行した場合の回転数(モータ回転数、出力軸回転数)・モータトルク(実モータトルク、モータトルク上限値、モータトルク下限値)・バッテリ電力・バッテリ電圧の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレーン系を示す。以下、図1に基づきパワートレーン系構成を説明する。
【0012】
実施例1のハイブリッド車両のパワートレーン系は、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(モータ)と、自動変速機3と、第1クラッチ4と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7、7と、を備えている。
【0013】
実施例1のハイブリッド車両は、エンジンと1モータ・2クラッチを備えたパワートレーン系構成であり、走行モードとして、第1クラッチ4の締結による「HEVモード」と、第1クラッチ4の開放による「EVモード」と、第2クラッチ5をスリップ締結状態にして走行する「WSCモード」と、を有する。
【0014】
前記エンジン1は、その出力軸とモータジェネレータ2(略称MG)の入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4(略称CL1)を介して連結される。
【0015】
前記モータジェネレータ2は、その出力軸と自動変速機3(略称AT)の入力軸とが連結される。
【0016】
前記自動変速機3は、その出力軸にディファレンシャルギア6を介してタイヤ7、7が連結される。
【0017】
前記第2クラッチ4(略称CL2)は、自動変速機3のシフト状態に応じて異なる変速機内の動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチ・ブレーキによる締結要素のうち、1つを用いている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力を合成してタイヤ7、7へ出力する。
【0018】
前記第1クラッチ4と前記第2クラッチ5には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチ等を用いればよい。このパワートレーン系には、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードがあり、第1クラッチ4の切断状態では、モータジェネレータ2の動力のみで走行する「EVモード」であり、第1クラッチ4の接続状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の動力で走行する「HEVモード」である。
【0019】
そして、パワートレーン系には、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0020】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す。以下、図2に基づいて制御システム構成を説明する。
【0021】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、ソレノイドバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、バッテリ温度センサ23と、SOCセンサ16と、を備えている。
【0022】
前記統合コントローラ20は、パワートレーン系構成要素の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOとバッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、モータコントローラ22に目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に目標エンジントルクを指令し、ソレノイドバルブ14、15に駆動信号を指令する。
【0023】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。前記ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ17は、アクセル開度(APO)を検出する。前記バッテリ温度センサ23は、バッテリ9の温度を検出する。前記SOCセンサ16は、バッテリ9の充電状態を検出する。
【0024】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて統合コントローラ20の構成を説明する。
【0025】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0026】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常駆動トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0027】
前記モード選択部200は、図5に示す車速毎のアクセル開度で設定されているエンジン始動停止線マップを用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線とエンジン停止線は、エンジン始動線(SOC高、SOC低)とエンジン停止線(SOC高、SOC低)の特性に代表されるように、バッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する特性として設定されている。
ここで、エンジン始動処理は、「EVモード」の選択状態で図5に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、第2クラッチ5をスリップさせるように、第2クラッチ5のトルク容量を制御する。そして、第2クラッチ5がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ4を完全に締結する。その後、第2クラッチ5をロックアップさせて「HEVモード」に遷移させることをいう。
【0028】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最良燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0029】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク、MGアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標CL2トルク容量と目標変速比とCL1ソレノイド電流指令を演算する。
【0030】
前記変速制御部500は、目標CL2トルク容量と目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。車速VSPとアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0031】
図9は、実施例1の統合コントローラ20にて実行される統合制御演算処理の構成および流れを示す。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0032】
ステップS01では、各コントローラからデータを受信し、次のステップS02では、センサ値を読み込み、後の演算に必要な情報を取り込む。
【0033】
ステップS03では、ステップS02でのセンサ値読み込みに続き、バッテリ状態に応じて電力制限値(出力制限値、入力制限値)及びモータトルク制限値(モータトルク上限値、モータトルク下限値)を算出し、ステップS04へ進む。
ここでは、瞬時用電力制限値と連続用電力制限値とモータトルク制限値を算出し、目的に応じて使い分ける。例えば、EV走行の許可電力や発電のような長時間続く可能性があるものは、連続用電力制限値を選択し、変速等の短時間で終わる用途には、瞬時用電力制限値を用いて制限する。なお、詳しい説明は、図11、図12,図16,図17を用いて後述する。
【0034】
ステップS04では、ステップS03での電力制限値及びモータトルク制限値演算に続き、車速VSP、アクセル開度APO、ブレーキ制動力に応じて目標駆動トルクを演算し、ステップS05へ進む。
【0035】
ステップS05では、ステップS04での目標駆動トルクの演算に続き、目標駆動トルク、バッテリSOC、アクセル開度APO、車速VSP、路面勾配、等の車両状態に応じて、目標走行モードを選択し、ステップS06へ進む。
参考として、図10に「EVモード」と「HEVモード」と「WSCモード」を互いに遷移する目標走行モードの抜粋を示す。ここで、「WSCモード」とは、第2クラッチ5(CL2)をスリップさせての「HEVモード」による走行モードをいう。ステップS05の演算で、「EVモード」から「HEVモード」を選択した場合には、エンジン始動を実施する。
【0036】
ステップS06では、ステップS05での目標走行モード演算に続き、エンジン始動時の第1クラッチ4(CL1),第2クラッチ5(CL2)の状態に応じて、モータ制御モード、エンジン起動タイミングを選択し、ステップS07へ進む。過渡走行モードとしては、第1クラッチ4(CL1),第2クラッチ5(CL2)のスリップ状態や、エンジン完爆状態に応じて、各デバイス状態を切替え、走行状態を管理する。
【0037】
ステップS07では、ステップS06での過渡走行モード演算に続き、ステップS06で求めた車両状態や変速状態に応じて、特に回転数制御を考慮し、モータ制限トルクを、瞬時用モータ制限トルクと連続用モータ制限トルクを切替えて用い、ステップS08へ進む。
【0038】
ステップS08では、ステップS07でのエンジン始動時電力拡大要求演算に続き、ステップS05で決めた走行状態及びモータ制御状態に合わせて、目標入力回転数を演算し、ステップS09へ進む。
エンジン始動時のうちクランキング時は、第2クラッチ5(CL2)のスリップを維持するように制御する。エンジン1の完爆を判定した後は、第2クラッチ5(CL2)のスリップを収束させるように制御する。
【0039】
ステップS09では、ステップS08での目標入力回転数演算に続き、目標駆動トルク及び各種デバイスの保護を考慮した目標入力トルクを演算し、ステップS10へ進む。
エンジン始動時は、目標駆動トルクに対して、第2クラッチ5(CL2)をスリップさせやすくするようにCL2スリップ助長トルクを加算する。この時、CL2トルク容量を低下させつつ、本演算を行うことで、実入力トルク>第2クラッチトルク容量の状態を積極的に作ることでスリップ促進させる。
【0040】
ステップS10では、ステップS09での目標入力トルク演算に続き、ステップS09で算出した目標入力トルク及び発電要求を考慮し、エンジン1とモータジェネレータ2へのトルク配分を決め、それぞれの目標値を算出し、ステップS11へ進む。
ここで、発電要求は、ステップS03で算出したモータトルク下限値(連続)を用いる。
【0041】
ステップS11では、ステップS10での目標エンジントルク/モータトルク演算に続き、ステップS06の過渡走行モード演算で決めた指令に応じて、第1クラッチ4(CL1)の目標クラッチトルク容量を演算し、ステップS11へ進む。
【0042】
ステップS12では、ステップS11での目標クラッチ1トルク容量演算に続き、ステップS06で決めた走行状態、CL2スリップ回転数に応じて、第2クラッチ5(CL2)の目標クラッチトルク容量を演算し、ステップS13へ進む。
【0043】
ステップS13では、ステップS12での目標クラッチ2トルク容量演算に続き、各コントローラへデータを送信し、エンドへ進む。
【0044】
図11は、図9のステップS03にて実行される出力制限値及びモータトルク上限値演算処理の一例を示す演算ブロック図である(電力制限値制御手段)。以下、図11の各ブロックについて説明する。
【0045】
ブロックB01では、バッテリSOCと電流F/B開始しきい値マップに基づいて、出力側バッテリ電力の電流F/B開始しきい値が算出される。
【0046】
ブロックB02では、電流制限値とバッテリ総電圧を掛け合わせることで、出力側バッテリ電力の最大出力値が算出される。
【0047】
ブロックB03では、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの出力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大出力値と、の最小値選択により、出力制限値1が決定される。
【0048】
ブロックB04では、モータ回転数とトルク変化率制限値を掛け合わせることで、電力制限値を変更する際、変化率制限を実施するためのトルク及び回転条件となる変化率制限値を求める。
【0049】
ブロックB05では、ブロックB03からの出力制限値1の変化率を、ブロックB04からの変化率制限値により制限し、F/F出力上限電力を算出する。
【0050】
ブロックB06では、ブロックB05からのF/F出力上限電力とバッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求める。
【0051】
ブロックB07では、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求める。
【0052】
ブロックB08では、ブロックB06からの電力フィードバック補正量と、ブロックB07からの電圧フィードバック補正量と、の最小値選択により、F/F出力上限電力のフィードバック補正量を決定する。
【0053】
ブロックB09では、ブロックB05からのF/F出力上限電力と、ブロックB08からのフィードバック補正量を加算し、出力上限電力を求める。
【0054】
ブロックB10では、バッテリ温度に応じてゲインを設定し、このゲインにブロックB09からの出力上限電力を掛け合わせて出力制限電力を求める。なお、バッテリ温度が高温であるほどゲインを小さな値に設定する。
【0055】
ブロックB11では、ブロックB09からの出力上限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用出力制限値を求める。なお、A/Cは、エアーコンディショナーである。
【0056】
ブロックB12では、ブロックB10からの出力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用出力制限値を求める。
【0057】
ブロックB13では、ブロックB11からの瞬時用出力制限値とモータ回転数に基づいて、電力→トルク変換を行い、瞬時用モータトルク上限値を求める。
【0058】
ブロックB14では、ブロックB12からの連続用出力制限値とモータ回転数に基づいて、電力→トルク変換を行い、連続用モータトルク上限値を求める。
【0059】
図12は、図9のステップS03にて実行される入力制限値及びモータトルク下限値演算処理を示す演算ブロック図である(電力制限値制御手段)。図12のブロックB21〜ブロックB34については、図11の演算ブロック図に対し、「出力、上限」と「入力、下限」の関係が入れ替わる。そして、ブロックB23とブロックB28において、最大値の選択によりフィードバック補正量を決める点で、ブロックB3とブロックB8の最小値選択と異なるのみである。よって、各ブロックの説明は省略する。
【0060】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題について」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用」、「瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用」、「電力制限値制御作用」に分けて説明する。
【0061】
[比較例の課題について]
まず、バッテリ温度とバッテリ内部抵抗の関係は、図13に示すように、バッテリ温度等のバッテリ状態によって内部抵抗が変化する。特に、バッテリ温度が低いときにバッテリ内部抵抗が高くなる。また、連続充放電時間とバッテリ内部抵抗の関係は、図14に示すように、連続して充電/放電を継続すると、連続充放電時間に比例して内部抵抗が上昇する。
【0062】
そこで、バッテリの電力制限値を、バッテリ温度が低いほどF/B制御ゲインを小さくしたF/B演算により求めるものを比較例1とする。この比較例1では、バッテリの内部抵抗が大きい状態において、F/B制御ゲインを下げても、フィードフォワード(F/F)的に使用する電力を制限しないと、電圧の変動が大きくなることには差異がない。そして、バッテリ電圧が超過してからモータトルクを制限するというように、フィードバック介入が多いとドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0063】
この課題を回避するために、F/F的に使用する電力を、バッテリ保護を重視して一律に制限するものを比較例2とする。この比較例2では、モータを用いる走行で運転性を向上させることができず、バッテリ保護と運転性を両立させることができない。
【0064】
例えば、変速に使用する電力(主に回転数変化を促進させる)は、瞬時であるが、必要以上に電力を制限すると変速性能が悪化する等が挙げられる。つまり、変速時にモータの回転数制御により変速機入力回転数を制御する場合、図15の領域Aに示すように、アップシフト毎にモータ回転数を急激に低下させるモータ回転数制御が行われる。このモータ回転数制御によって、車速が滑らかに上昇するとう良好な運転特性が得られる。しかし、電力制限により、図15に示すようなモータ回転数を急激に低下させる制御を行うことができないと、アップシフトに要する時間が長くなる変速間延び感が出てしまい、車速の変動等を招いて運転特性が低下する。
【0065】
このように、モータの使い方にかかわらず、バッテリ保護機能を出すために一律に電力制限値のF/F項を設定すると、変速のような瞬時の使い方のときに過剰な制限となって運転性が低下するというように、アンマッチが生じる。
【0066】
[瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用]
上記比較例の課題に対し、走行時、モータの使い方として、変速のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある点に着目してなされた。図16は、図11の演算ブロックにて実行される瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図16を用いて瞬時用出力制限値及び連続用出力制限値の切り分け演算処理作用を説明する。
【0067】
ステップS101では、ブロックB03において、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの出力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大出力値と、の最小値選択により、出力制限値1を決定し、ステップS102へ進む。
【0068】
ステップS102では、ブロックB05において、ブロックB03からの出力制限値1の変化率を、ブロックB04からの変化率制限値により制限し、F/F出力上限電力を算出し、ステップS103へ進む。
【0069】
ステップS103では、ブロックB06において、ブロックB05からのF/F出力上限電力と(実)バッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求め、ステップS104へ進む。
【0070】
ステップS104では、ブロックB07において、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求め、ステップS105へ進む。
【0071】
ステップS105では、ブロックB05からのF/F出力上限電力と、ブロックB08からのフィードバック補正量を加算し、出力上限電力を求め、ステップS106へ進む。
【0072】
ステップS106では、ブロックB10において、ブロックB09からの出力上限電力にバッテリ温度に応じてゲインを掛け合わせて求めた出力制限電力を連続用とし、ブロックB09からの出力上限電力そのものを瞬時用とし、瞬時/連続を切り分け、ステップS106へ進む。
【0073】
ステップS107では、ブロックB11において、ブロックB09からの出力上限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用出力制限値を求める。また、ブロックB12において、ブロックB10からの出力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用出力制限値を求める。
【0074】
したがって、上記切り分け演算処理により、モータジェネレータ2の使い方が瞬時か連続的かで出力制限値が切り分けられ、瞬時用出力制限値(瞬時用モータトルク上限値)が連続用出力制限値(連続用モータトルク上限値)よりも高い値に設定される。
【0075】
[瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用]
図17は、図12の演算ブロックにて実行される瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理の流れを示すフローチャートである。以下、図17を用いて瞬時用入力制限値及び連続用入力制限値の切り分け演算処理作用を説明する。
【0076】
ステップS201では、ブロックB23において、バッテリコントローラが送信するバッテリ9からの入力制限値(基本)と、電流F/B開始しきい値と、最大入力値と、の最大値選択により、入力制限値1を決定し、ステップS202へ進む。
【0077】
ステップS202では、ブロックB25において、ブロックB23からの入力制限値1の変化率を、ブロックB24からの変化率制限値により制限し、F/F入力下限電力を算出し、ステップS203へ進む。
【0078】
ステップS203では、ブロックB26において、ブロックB25からのF/F入力下限電力と(実)バッテリ電力の偏差に基づいて電力フィードバック演算を行い、電力フィードバック補正量を求め、ステップS204へ進む。
【0079】
ステップS204では、ブロックB27において、バッテリ総電圧とセル最低電圧(総電圧相当)の偏差に基づいて電圧フィードバック演算を行い、電圧フィードバック補正量を求め、ステップS205へ進む。
【0080】
ステップS205では、ブロックB25からのF/F入力下限電力と、ブロックB28からのフィードバック補正量を加算し、入力下限電力を求め、ステップS206へ進む。
【0081】
ステップS206では、ブロックB30において、ブロックB29からの入力下限電力にバッテリ温度に応じてゲインを掛け合わせて求めた入力制限電力を連続用とし、ブロックB29からの入力下限電力そのものを瞬時用とし、瞬時/連続を切り分け、ステップS206へ進む。
【0082】
ステップS207では、ブロックB31において、ブロックB29からの入力下限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて瞬時用入力制限値を求める。また、ブロックB32において、ブロックB30からの入力制限電力から補機+A/C使用許可電力を差し引いて連続用入力制限値を求める。
【0083】
したがって、上記切り分け演算処理により、モータジェネレータ2の使い方が瞬時か連続的かで入力制限値が切り分けられ、瞬時用入力制限値(瞬時用モータトルク下限値)が連続用入力制限値(連続用モータトルク下限値)よりも低い値に設定される。
【0084】
[電力制限値制御作用]
実施例1における電力制限値制御作用を、「HEVモード」を選択しての発電走行中、モータ回転数制御によるアップシフト変速が行われる場合を示す図18のタイムチャートに基づき説明する。
【0085】
図18の時刻t0から時刻t1までの時間域、時刻t2から時刻t3までの時間域、時刻t4以降の時間域は、モータジェネレータ2による充電が連続的に行われる区間であり、制限幅を狭く抑えた連続用モータトルク上限値と連続用モータトルク上限値が設定される。したがって、モータジェネレータ2による充電が連続的に行われる区間におけるバッテリ電圧やバッテリ電力は、図18に示すように、滑らかな特性で推移し、バッテリ状態を急変させないように制御される。
【0086】
図18の時刻t1から時刻t2までの時間域、時刻t3から時刻t4までの時間域は、モータジェネレータ2によるモータ回転数制御によってアップシフトが瞬間的に行われる区間であり、制限幅を広く拡大した瞬時用モータトルク上限値と瞬時用モータトルク上限値が設定される。したがって、アップシフトが瞬間的に行われる区間におけるバッテリ電力は、図18に示すように、モータ回転数を低下させる制御を円滑に行うように急に下げる。このため、素早く変速ショックを抑えた高品質のアップシフトを行うことで運転性が向上する。この運転性の向上と共に、バッテリ電圧の上昇から明らかなように、バッテリ充電量を高めることができる。
【0087】
すなわち、ハイブリッド車両で走行する場合、モータジェネレータ2の使い方として、変速時やエンジン始動時やエンジン停止時のような短時間で終わる瞬時の使い方と、走行中の許可電力や発電のような長時間連続する使い方がある。これに対し、バッテリ状態で電力制限値のF/B項を設定すると、フィードバック介入が多くなりドライバに違和感を与える。また、モータの使い方にかかわらず、バッテリ保護機能を出すために一律に電力制限値のF/F項を設定すると、変速のような瞬時の使い方のときに過剰な制限となって運転性が低下するというように、アンマッチが生じる。
【0088】
これに対し、実施例1では、モータジェネレータ2の使い方が瞬時であるか連続的であるかで電力制限値(出力制限値、入力制限値)を切り分け、瞬時用電力制限値による制限幅を、連続用電力制限値による制限幅よりも広く拡大して設定する構成を採用した。
これにより、バッテリ9の状態にかかわらず、充電または放電の一方が連続的に使用されるときは、バッテリ状態を急変させないように制御することで、バッテリ保護機能が発揮される。一方、変速等のように瞬時だけ使用されるときは、バッテリ9が発揮できる最大値まで使用することで、運転性の向上が図られる。
この結果、バッテリの電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【0089】
実施例1では、瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値とで切り分けるのは、バッテリ温度により実施する構成を採用している。
すなわち、バッテリ温度により電池内部抵抗であるバッテリ状態を推定でき、このバッテリ状態に応じて瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値を切替えるようにしている。
したがって、バッテリ状態に応じて劣化を抑えた確実な電池保護機能が図られる。
【0090】
実施例1では、電力制限値を変更する際は、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定する構成を採用している。
したがって、ドライバへ違和感を与えることなく、電池保護機能が実現される。
【0091】
実施例1では、瞬時用入出力制限値と連続用入出力制限値とで使い分ける電力に、補機やA/C等のように、駆動系に関わらない電力を除く構成を採用している。
このように、駆動系に関わらない電力を除くことで、バッテリ状態を急変させないようにして電力収支が管理される。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0093】
(1) 駆動源に設けられ、バッテリ9からの電力により駆動するモータ(モータジェネレータ2)と、
前記バッテリ9の電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する電力制限値制御手段(図11,図12)と、
を備える。
このため、バッテリ9の電力制限値を設定するに際し、バッテリ状態にかかわらずバッテリ保護機能と運転性向上の両立を図ることができる。
【0094】
(2) バッテリ内部抵抗またはバッテリ温度を検出するバッテリ状態検出手段(バッテリ温度センサ23)を備え、
前記電力制限値制御手段(図11,図12)は、前記バッテリ状態検出手段(バッテリ温度センサ23)からのバッテリ内部抵抗またはバッテリ温度に基づいて、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する(ブロックB10、ブロックB30)。
このため、(1)の効果に加え、バッテリ状態に応じて劣化を抑えた確実な電池保護機能を図ることができる。
【0095】
(3) 前記電力制限値制御手段(図11,図12)は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値との間で電力制限値を変更する際、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定する(ブロックB5、ブロックB25)。
このため、(1)または(2)の効果に加え、ドライバへ違和感を与えることなく、電池保護機能を実現することができる。
【0096】
(4) 前記電力制限値制御手段(図12)は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する際、駆動系に関わらない他の車載強電系の使用許可電力を除く(ブロックB11,B12、ブロックB31,B32)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、バッテリ状態を急変させないようにして電力収支を管理することができる。
【0097】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0098】
実施例1では、パワートレーン系にエンジンとモータジェネレータを持つハイブリッド車両に対して適用した例を示した。しかし、ハイブリッド車両に限らず、電気自動車や燃料電池車等の駆動源にバッテリ駆動のモータを備えた電動車両に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 ディファレンシャルギア
7 タイヤ
8 インバータ
9 バッテリ
10 エンジン回転センサ
11 MG回転センサ
12 AT入力回転センサ
13 AT出力回転センサ
14、15 ソレノイドバルブ
16 SOCセンサ
17 アクセル開度センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータコントローラ
23 バッテリ温度センサ(バッテリ状態検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動するモータと、
前記バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する電力制限値制御手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
バッテリ内部抵抗またはバッテリ温度を検出するバッテリ状態検出手段を備え、
前記電力制限値制御手段は、前記バッテリ状態検出手段からのバッテリ内部抵抗またはバッテリ温度に基づいて、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記電力制限値制御手段は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値との間で電力制限値を変更する際、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記電力制限値制御手段は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する際、駆動系に関わらない他の車載強電系の使用許可電力を除くことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項1】
駆動源に設けられ、バッテリからの電力により駆動するモータと、
前記バッテリの電力入出力の制限値である電力制限値を、短時間で終わる走行シーンで用いる瞬時用電力制限値と、長時間続く可能性のある走行シーンで用いる連続用電力制限値と、に分け、かつ、前記瞬時用電力制限値による制限幅を前記連続用電力制限値による制限幅よりも拡大するように設定する電力制限値制御手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
バッテリ内部抵抗またはバッテリ温度を検出するバッテリ状態検出手段を備え、
前記電力制限値制御手段は、前記バッテリ状態検出手段からのバッテリ内部抵抗またはバッテリ温度に基づいて、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記電力制限値制御手段は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値との間で電力制限値を変更する際、車両挙動に影響を与えないようトルク及び回転条件を考慮して変化率制限を設定することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記電力制限値制御手段は、前記瞬時用電力制限値と前記連続用電力制限値を設定する際、駆動系に関わらない他の車載強電系の使用許可電力を除くことを特徴とする電動車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−90416(P2012−90416A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234428(P2010−234428)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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