説明

電動車両

【課題】2次電池の残価値に関連する内部状態を2次電池の充電状態の制御に適正に反映させる。
【解決手段】電動車両10は、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎の劣化度と容量維持率とに関係性を有する周波数に応じた交流インピーダンス値の単位時間当たりの変移挙動と、バッテリ11の状態に基づく使用履歴との対応関係を示す変移挙動マップを記憶する第1記憶部と、バッテリ11の使用履歴に応じて変移挙動マップを参照して、バッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を推定する相関抵抗値推定部と、正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値に基づいてバッテリ11の正極の劣化状態と負極の劣化状態とのバランスを示す劣化バランスを算出し、該劣化バランスに基づいて目標充電状態を設定する目標充電状態設定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリチウムイオン電池は、満充電状態に比べて、より低い充電状態の方が劣化し難いことを前提に、車両で使用される平均的な電力量だけ充電し、満充電を行なわない充電方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えばリチウムイオン電池の劣化の程度を示す内部抵抗が、電解液のリチウムイオン濃度に応じて変化することに基づき、リチウムイオン濃度を適正値に設定する所定の充放電を行なうことでリチウムイオン電池の状態を回復させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88206号公報
【特許文献2】特開2010−49882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る充電方法によれば、単に、残容量や温度が高い状態では劣化速度が速く、残容量や温度が低い状態では劣化速度が遅いという、単純な劣化モデルを採用するだけであって、リチウムイオン電池の残価値に関連する内部状態を考慮していないことから、リチウムイオン電池の劣化速度や寿命期間などの将来における状態の変化を適正に反映させた、より緻密な制御を行なうことができないという問題が生じる。
つまり、適宜の時点での残容量や温度が同一であっても、この時点に到るまでの劣化の条件が異なる場合には内部状態が異なり、劣化速度や寿命期間などの将来における状態の変化が内部状態に応じて異なる。
このため、上記従来技術に係る充電方法によれば、リチウムイオン電池の残価値に関連する将来的な容量(あるいは容量維持率)の劣化を適正に考慮して、劣化抑制などの制御を適切に行なうことができないという問題が生じる。
【0005】
また、上記従来技術に係る方法のように、電解液のリチウムイオン濃度を適正値に設定するように充放電を行なうだけでは、他の劣化要因を考慮していないことから、リチウムイオン電池の状態を適正に制御することはできない虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、2次電池の残価値に関連する内部状態を2次電池の充電状態の制御に適正に反映させることが可能な電動車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電動車両は、2次電池(例えば、実施の形態でのバッテリ11)を搭載し、該2次電池の劣化状態を推定することで、目標充電状態を制御する電動車両(例えば、実施の形態での電動車両10)であって、前記2次電池の状態を検出する状態検出手段(例えば、実施の形態での状態検出部21)として、少なくとも、前記2次電池の電圧を検出する電圧検出手段(例えば、実施の形態での電圧センサ32)と、前記2次電池の電流を検出する電流検出手段(例えば、実施の形態での電流センサ31)と、前記2次電池の温度を検出する温度検出手段(例えば、実施の形態での温度センサ33)と、前記2次電池の使用時間を検出する時間検出手段(例えば、実施の形態でのタイマー34)とを具備し、前記2次電池の各正極および負極および電解液毎の劣化度と容量維持率とに関係性を有する周波数に応じた交流インピーダンス値の単位時間当たりの変移挙動と、前記状態検出手段により検出される前記2次電池の状態に基づく前記2次電池の使用履歴との対応関係を示すデータからなる変移挙動データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での第1記憶部51)と、前記状態検出手段により検出された前記2次電池の状態に基づく前記2次電池の使用履歴に応じて前記変移挙動データを参照して、前記2次電池の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を推定する相関抵抗値推定手段(例えば、実施の形態での相関抵抗値推定部41)
と、前記相関抵抗値推定手段により推定された前記正極側相関抵抗値および前記負極側相関抵抗値に基づいて前記2次電池の前記正極の劣化状態と前記負極の劣化状態とのバランスを示す劣化バランスを算出し、該劣化バランスに基づいて前記目標充電状態を設定する目標充電状態設定手段(例えば、実施の形態での目標充電状態設定部42)とを備える。
【0008】
さらに、本発明の第2態様に係る電動車両では、前記電動車両は、前記2次電池に充電する電力を前記電動車両の外部から供給する外部給電装置(例えば、実施の形態での外部給電装置1)を接続可能であって、該外部給電装置が前記電動車両に接続されて前記外部給電装置によって前記2次電池の充電が開始された場合に、前記2次電池の充電状態が前記目標充電状態に到達した時点で充電を停止させる充電制御手段(例えば、実施の形態での充電制御部27)を備える。
【0009】
さらに、本発明の第3態様に係る電動車両では、前記電動車両は、発電電力により前記2次電池を充電可能な発電装置(例えば、実施の形態での発電機62)と、前記2次電池の充電状態を前記目標充電状態に収束させるようにして前記発電装置の発電を制御する発電制御手段(例えば、実施の形態での充電制御部27が兼ねる)とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様に係る電動車両によれば、2次電池の状態(電圧、電流、温度、使用時間など)に基づく使用履歴から、変移挙動データにより、2次電池の劣化速度や寿命期間などの残価値に関連する内部状態として正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を推定することができる。
そして、これらの正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値に基づいて、2次電池の正極の劣化状態と負極の劣化状態との劣化バランスを算出することで、劣化バランスを整えるようにして目標充電状態を設定することができる。
つまり、2次電池の劣化速度や寿命期間などの残価値を目標充電状態に反映させることで、充電状態の制御を適正に行なうことができる。
そして、劣化バランスを整えるようにして目標充電状態を設定することによって、2次電池の内部状態を良好な状態に維持することができ、2次電池の設計時に過剰な耐久性を確保する必要無しに設計マージンを減少させることができ、2次電池の出力性能を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の第2態様に係る電動車両によれば、2次電池の劣化速度や寿命期間などの残価値が反映された目標充電状態に応じて充電制御が実行されることから、2次電池の内部状態を良好な状態に維持することができる。
【0012】
さらに、本発明の第3態様に係る電動車両によれば、2次電池の劣化速度や寿命期間などの残価値が反映された目標充電状態に応じて発電制御が実行されることから、2次電池の内部状態を良好な状態に維持することができると共に、発電動作を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動車両の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る充電制御装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る交流インピーダンス分析にて作成されるCole-Cole Plot図の一例である。
【図4】本発明の実施の形態に係るバッテリの各正極および負極の電位と充電量との対応関係の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るバッテリの相関抵抗値増加率と経過時間tのルート値(=√t)との対応関係の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るバッテリの正極および負極の劣化速度と残容量SOCとバッテリ温度TBとの対応関係の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電動車両の動作、特に、外部給電装置からの給電によってバッテリを充電する動作のフローチャートである。
【図8】図7に示す目標SOC設定の処理のフローチャートである。
【図9】図8に示す正極及び負極相関抵抗値R1,R2推定の処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態の変形例に係る電動車両の構成図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例に係る電動車両の動作、特に、バッテリ制御のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態の変形例に係る電動車両の動作、特に、内燃機関および発電機制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る電動車両について添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施の形態による電動車両10は、例えば図1に示すように、外部給電装置1に充電ケーブル2により接続されて、外部給電装置1から供給される電力によってバッテリ11を充電可能なプラグインタイプの電動車両(EV:Electrical vehicle)である。
【0016】
この電動車両10は、例えば、バッテリ11と、電動機12と、パワードライブユニット(PDU)13と、ダウンバータ(D/V)14と、12Vバッテリ15と、リッド(Lid)16と、充電器17と、制御装置18とを備えて構成されている。
【0017】
バッテリ11は、例えばリチウムイオン2次電池などであって、PDU13およびD/V14との間で電気エネルギーの授受が可能であって、充電器17から供給される電力により充電可能である。
【0018】
電動機12は、例えば3相のDCブラシレスモータなどであって、トランスミッション(T/M)を介して駆動輪Wに動力を伝達可能な車両走行駆動用の電動機であって、PDU13によって駆動制御されている。
また、電動機12は、例えば電動車両10の減速時などにおいて駆動輪W側から電動機12側に駆動力が伝達されると、発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0019】
PDU13は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどを備え、電動機12の駆動時には、バッテリ11から供給される直流電力を交流電力に変換して電動機12に供給する。
また、PDU13は、例えば電動機12の発電時には、電動機12から出力される交流の発電(回生)電力を直流電力に変換してバッテリ11を充電する。
【0020】
各種補機類からなる電気負荷を駆動するための低圧の12Vバッテリ15は、例えばDC/DCコンバータなどを備えるD/V14に接続されている。
D/V14は、バッテリ11の端子間電圧あるいはPDU13や充電器17の端子間電圧を所定の電圧値まで降圧して12Vバッテリ15を充電可能である。
なお、例えばバッテリ11の残容量(SOC:State Of Charge)が低下している場合などにおいては、12Vバッテリ15の端子間電圧を昇圧してバッテリ11を充電可能にしてもよい。
【0021】
充電ケーブル2を接続可能なリッド(Lid)16は充電器17に接続されており、充電器17は、充電ケーブル2によって外部給電装置1と電動車両10のリッド(Lid)16が接続されて給電が開始されると、電動車両10がオフ状態(パワースイッチのオフ状態)であっても外部給電装置1からの給電によって動作可能である。
充電器17は、例えば外部給電装置1から給電される交流電力を直流電力に変換するインバータなどを備え、外部給電装置1からの給電によってバッテリ11を充電する。
【0022】
なお、充電ケーブル2は、例えば、充電ケーブル2と電動車両10との接続状態の検出と、過電流や漏れ電流の発生時に外部給電装置1と電動車両10との間の接続の遮断となどを行なう充電遮断装置(CCID:Charging Circuit Interrupt Device)を備えている。そして、このCCIDから出力されるコントロールパイロット信号(CPL信号:Control PiLot signal)によって充電器17の起動が制御されている。
【0023】
例えば充電ケーブル2によって外部給電装置1と電動車両10のリッド(Lid)16が接続されると、CPL信号が充電器17に送信され、このCPL信号に応じて充電器17が起動する。
そして、充電器17は、CPL信号から給電側の定格電流の情報などを取得して充電準備を開始し、充電準備が完了するとCPL信号の電圧を変化させて、充電準備の完了を充電ケーブル2のCCIDに通知する。
そして、充電ケーブル2のCCIDは、外部給電装置1から電動車両10に給電するためにリレーなどの接点を接続して充電を開始する。
【0024】
制御装置18は、PDU13の電力変換動作を制御することで電動機12の駆動および発電を制御する。
また、制御装置18は、D/V14の電力変換動作を制御することで12Vバッテリ15の充電を制御する。
さらに、制御装置18は、バッテリ11の状態を検出して残容量(SOC:State Of Charge)などの各種の状態量を算出し、例えば充電器17などによる充電時のバッテリ11の充電状態を制御する。
【0025】
制御装置18の一部を成す充電制御装置20は、例えば図2に示すように、状態検出部21と、抵抗推定部22と、開路電圧推定部23と、残容量推定部24と、内部状態推定部25と、記憶部26と、充電制御部27と、を備えて構成されている。
【0026】
状態検出部21は、例えば、バッテリ11から負荷(例えば、PDU13とD/V14となど)へと供給される放電電流及びバッテリ11に供給される充電電流からなる電流IBを検出する電流センサ31と、バッテリ11の端子電圧VBを検出する電圧センサ32と、バッテリ11の温度TBを検出する温度センサ33と、計時を行なうタイマー34とを備えて構成されている。
【0027】
抵抗推定部22は、電流センサ31から出力されるバッテリ11の電流IBの検出結果と、電圧センサ32から出力されるバッテリ11の端子電圧VBの検出結果とに基づき、バッテリ11の内部抵抗を推定し、この推定結果を出力する。
開路電圧推定部23は、抵抗推定部22から出力されるバッテリ11の内部抵抗の推定結果に基づき、バッテリ11の開路電圧(バッテリ11の無負荷状態での端子電圧)を推定し、この推定結果を出力する。
残容量推定部24は、予め設定されたバッテリ11の開路電圧と残容量SOCとの対応関係を示す所定のマップまたは数式などのデータを用いて、開路電圧推定部23から出力されるバッテリ11の開路電圧の推定結果に対応する残容量SOCを推定し、この推定結果を出力する。
【0028】
内部状態推定部25は、例えば、相関抵抗値推定部41と、目標充電状態設定部42とを備えている。
また、記憶部26は、例えば、変移挙動マップを記憶する第1記憶部51と、劣化度マップを記憶する第2記憶部52とを備えている。
【0029】
相関抵抗値推定部41は、状態検出部21の各センサ31,32,33から出力される検出結果およびタイマー34から出力される計時結果(バッテリ11の通電期間である使用時間と、バッテリ11の非通電期間である経過時間となど)と、残容量推定部24から出力される残容量SOCの推定結果となどからなるバッテリ11の状態に基づいて、バッテリ11の使用履歴を演算する。
そして、バッテリ11の使用履歴の演算結果に応じて、第1記憶部51に記憶されている変移挙動マップを参照して、バッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値および電解液相関抵抗値を推定する。
【0030】
なお、記憶部26の第1記憶部51に記憶されている変移挙動マップは、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎の劣化度と容量維持率とに関係性を有する周波数に応じた交流インピーダンス値の単位時間当たりの変移挙動と、バッテリ11の状態に基づくバッテリ11の使用履歴との対応関係を示すデータである。
このデータは、予め実施される試験の試験結果などに基づいて作成されている。
【0031】
正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値および電解液相関抵抗値は、バッテリ11の交流インピーダンスの実数部と虚数部とによる2次元座標(所謂交流インピーダンス分析によって得られるCole-Cole Plot図)上での各成分に関連する抵抗値である。
なお、各成分に関連する抵抗値の具体例は、例えばバッテリ11の種別や構成などに応じて適宜に設定される。
【0032】
例えば、正極側相関抵抗値は、図3に示すCole-Cole Plot図において、バッテリ11の正極に起因する正極成分Pに関連する抵抗値であって、例えば円弧状の曲線を示す正極成分Pの極大値に対応する周波数での交流インピーダンス値(虚数部)PRとされている。この周波数は、例えばバッテリ11の正極の劣化度と容量維持率とに対して強い関係性を有する周波数である。
【0033】
例えば、負極側相関抵抗値は、図3に示すCole-Cole Plot図において、バッテリ11の負極に起因する負極成分Nに関連する抵抗値であって、例えば円弧状の曲線を示す負極成分Nの極大値に対応する周波数での交流インピーダンス値(虚数部)NRとされている。この周波数は、例えばバッテリ11の負極の劣化度と容量維持率とに対して強い関係性を有する周波数である。
【0034】
例えば、電解液相関抵抗値は、図3に示すCole-Cole Plot図において、バッテリ11の電解液に起因する電解液成分Fに関連する抵抗値であって、例えば最も高い周波数での交流インピーダンス値(実数部)FRとされている。この周波数は、例えばバッテリ11の電解液の劣化度と容量維持率とに対して強い関係性を有する周波数である。
【0035】
なお、交流インピーダンス分析は、バッテリ11の負荷電流(バッテリ11から負荷へと供給される放電電流)に重畳する交流電流周波数を変化させつつ、バッテリ11の等価回路となる内部インピーダンスを実数部と虚数部とに分けて測定し、この測定結果から実数部と虚数部とによる2次元座標のCole-Cole Plot図を作成するものである。
本発明の相関抵抗値推定部41は、交流インピーダンス分析を実行せずに、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎の劣化度と容量維持率とに関係性を有する周波数に応じた交流インピーダンス値による各相間抵抗値を、バッテリ11の使用履歴の演算結果に応じて変移挙動マップを参照して推定する。
【0036】
なお、バッテリ11の容量維持率は、例えば図4に示すように、劣化の無い初期時などにおけるバッテリ11の容量を基準(例えば、1.0)として、各時点(例えば、劣化時など)でのバッテリ11の容量の基準に対する割合(≦1.0)を示す値である。
また、バッテリ11の容量は、各時点(初期時や劣化時など)において、バッテリ11の満充電状態での所定の電位差(満充電側電位差)に対応する充電量(例えば、図4に示す各充電量A4または充電量A3など)と、満放電状態での所定の電位差(満放電側電位差)に対応する充電量(例えば、図4に示す各充電量A1または充電量A2など)との差である。
【0037】
記憶部26の第1記憶部51に記憶されている変移挙動マップは、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎の経時劣化成分のデータからなる第1データと、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎の通電劣化成分のデータからなる第2データとを有している。
相関抵抗値推定部41は、バッテリ11の各正極および負極および電解液毎にバッテリ11の使用履歴の演算結果に応じて第1データおよび第2データを参照して、各第1データおよび第2データ毎に抽出した各相関抵抗値を用いた加算モデルによる演算により、バッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値および電解液相関抵抗値を推定する。
【0038】
例えばバッテリ11の正極の経時劣化成分のデータからなる第1データは、下記表1に示すように記述されている。
この第1データは、例えば、正極側相関抵抗値の単位時間当たりの変移挙動に関連する係数kと、バッテリ11の温度TBと、バッテリ11の残容量SOCとの対応関係を示すデータである。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1での係数kは、例えば、正極の経時劣化時における正極側相関抵抗値の増加率(相関抵抗値増加率)が経過時間tのルート値(=√t)に比例するとして設定された比例係数であって、バッテリ11の温度TBの増大に伴い、あるいは、バッテリ11の残容量SOCの増大に伴い、増大傾向に変化するように設定されている。
【0041】
また、例えばバッテリ11の正極の通電時劣化成分のデータからなる第2データは、下記表2に示すように記述されている。
この第2データは、例えば、正極側相関抵抗値の単位時間当たりの変移挙動に関連する係数kと、バッテリ11の温度TBと、バッテリ11の電流IBとの対応関係を示すデータである。
【0042】
【表2】

【0043】
上記表2での係数kは、例えば、正極の通電劣化時における正極側相関抵抗値の増加率(相関抵抗値増加率)が経過時間(使用時間)tのルート値(=√t)に比例するとして設定された比例係数であって、バッテリ11の温度TBの増大に伴い、あるいは、バッテリ11の電流IBの増大に伴い、増大傾向に変化するように設定されている。
【0044】
相関抵抗値推定部41は、逐次繰り返す推定の処理において、例えば、前回の推定時における各相関抵抗値の推定結果を基点として、今回の推定時において状態検出部21から出力されたバッテリ11の状態の検出結果に応じて変移挙動マップから検索して得た係数kによって、今回の推定時における各相関抵抗値を推定する。そして、この推定の処理を繰り返すことによって、バッテリ11の使用履歴を今回の推定時の各相関抵抗値に反映させる。
【0045】
例えば図5に示すように、正極の経時劣化時における正極側相関抵抗値の増加率(相関抵抗値増加率)が経過時間tのルート値(=√t)に比例するとして係数kが設定された場合において、先ず、ルート値(=√t)が所定値T1となる期間のバッテリ11の温度TBが10℃かつバッテリ11の残容量SOCが40%であれば、この状態に応じて検索された係数kによって正極側相関抵抗値が初期値(例えば、1)から第1推定値Y1まで増加することが推定される。
【0046】
次に、ルート値(=√t)が所定値T2となる期間のバッテリ11の温度TBが0℃かつバッテリ11の残容量SOCが40%であれば、この状態に応じて検索された係数kによって正極側相関抵抗値が前回の推定値(つまり第1推定値Y1)から第2推定値Y2まで増加することが推定される。
【0047】
次に、ルート値(=√t)が所定値T3となる期間のバッテリ11の温度TBが25℃かつバッテリ11の残容量SOCが80%であれば、この状態に応じて検索された係数kによって正極側相関抵抗値が前回の推定値(つまり第2推定値Y2)から第3推定値Y3まで増加することが推定される。
【0048】
次に、ルート値(=√t)が所定値T4となる期間のバッテリ11の温度TBが10℃かつバッテリ11の残容量SOCが40%であれば、この状態に応じて検索された係数kによって正極側相関抵抗値が前回の推定値(つまり第3推定値Y3)から第4推定値Y4まで増加することが推定される。
【0049】
次に、ルート値(=√t)が所定値T5となる期間のバッテリ11の温度TBが25℃かつバッテリ11の残容量SOCが100%であれば、この状態に応じて検索された係数kによって正極側相関抵抗値が前回の推定値(つまり第4推定値Y4)から第5推定値Y5まで増加することが推定される。
【0050】
また、相関抵抗値推定部41は、例えばバッテリ11の通電期間と非通電期間とが混在する期間に亘って各相関抵抗値を推定する場合などにおいては、非通電期間において経時劣化成分の第1データを用いて推定した各相関抵抗値と、通電期間において通電劣化成分の第2データを用いて推定した各相関抵抗値とを用いた加算モデルによる演算を行なう。
この加算モデルによる演算では、例えば、逐次繰り返す推定の処理において、変移挙動マップとして第1データまたは第2データの何れを参照したかにかかわらずに、前回の推定時における変移挙動マップに基づく各相関抵抗値の推定結果を基点として、今回の推定時において状態検出部21から出力されたバッテリ11の状態の検出結果に応じて変移挙動マップから検索して得た係数kによって今回の推定時における各相関抵抗値を推定する。
【0051】
目標充電状態設定部42は、相関抵抗値推定部41から出力されたバッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値の推定結果に応じて、第2記憶部52に記憶されているSOCマップを参照して、バッテリ11の充電状態(例えば、残容量SOCなど)に対する目標充電状態として目標SOCを設定する。
【0052】
なお、記憶部26の第2記憶部52に記憶されているSOCマップは、バッテリ11の各正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値毎の劣化速度(例えば、各相間抵抗値の増大速度など)と、バッテリ11の残容量SOCとの対応関係を示すデータである。
このデータは、例えば無負荷状態などのバッテリ11に対して予め実施される試験の試験結果などに基づいて作成されている。
【0053】
例えば図6(A)に示す正極側相関抵抗値の劣化速度(例えば、増大速度など)とバッテリ11の残容量SOCとの対応関係では、バッテリ11の温度TBの増大に伴い、劣化速度が増大傾向に変化すると共に、バッテリ11の残容量SOCの増大に伴い、劣化速度が増大傾向に変化している。
【0054】
また、例えば図6(B)に示す負極側相関抵抗値の劣化速度(例えば、増大速度など)とバッテリ11の残容量SOCとの対応関係では、バッテリ11の温度TBの増大に伴い、劣化速度が増大傾向に変化すると共に、バッテリ11の残容量SOCが所定値に向かい増大することに伴い、あるいは、バッテリ11の残容量SOCが所定値に向かい減少することに伴い、劣化速度が増大傾向に変化している。
【0055】
目標充電状態設定部42は、相関抵抗値推定部41から出力されたバッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値の推定結果に応じて、例えば正極側相関抵抗値R1と負極側相関抵抗値R2との比(R2/R1)などによって、正極の劣化状態と負極の劣化状態とのバランスを示す劣化バランスBAを算出する。
【0056】
例えば、目標充電状態設定部42は、適宜のタイミングを基準タイミングとして、この基準タイミングでの各相関抵抗値(正極側相関抵抗基準値R10、負極側相関抵抗基準値R20)の比によって、劣化バランスBAの基準値BA0(=R20/R10)を設定する。
そして、劣化バランスBAの算出を目的とするタイミングでの各相関抵抗値(正極側相関抵抗値R1および負極側相関抵抗値R2)と基準値BA0とによって、劣化バランスBA(=(R2/R1)/BA0)を算出する。
【0057】
例えば上記数式に示す劣化バランスBAにおいて、基準タイミングを劣化の無い初期時とした場合、BA=1の状態から乖離することに伴い、正極の劣化状態と負極の劣化状態とのアンバランスが促進されることを示している。
つまり、劣化バランスBAは、基準タイミングでの初期値を1として、目的とするタイミングにおいて劣化バランスBAが初期値(=1)よりも大きい場合は、負極の劣化度が正極の劣化度よりも大きいアンバランスな劣化状態を示し、目的とするタイミングにおいて劣化バランスBAが初期値(=1)よりも小さい場合は、正極の劣化度が負極の劣化度よりも大きいアンバランスな劣化状態を示している。
【0058】
なお、例えば図4に示すように、バッテリ11の劣化が増大することに伴い、各正極および負極の電位が所定の電位に到達する満充電状態での充電量が低下傾向に変化しており、この充電量の低下度合いがバッテリ11の劣化度となる。
そして、例えば、バッテリ11の正極のみが劣化した場合に、劣化の無い初期時などにおける満充電側電位差(満充電状態での正極と負極との電位差)と同一の電位差を確保するためには、満充電状態での正極の電位を所定の電位Va(初期時)から電位Vb(劣化時;Vb>Va)へと過剰に増大させる必要が生じ、正極の劣化が、より一層、促進されることになる。
【0059】
そして、目標充電状態設定部42は、例えば劣化バランスBAが初期値(=1)を含む所定範囲(例えば、0<α<1のパラメータαに対して、1−α≦BA≦1+αなど)内の値であれば、バッテリ11に対する通常の充電を許可する。なお、バッテリ11に対する通常の充電は、例えば予め設定された残容量SOCの固定値を目標値とする充電などである。
一方、例えば劣化バランスBAが初期値(=1)を含む所定範囲(例えば、1−α≦BA≦1+αなど)外の値であれば、第2記憶部52に記憶されているSOCマップを参照して、バッテリ11の残容量SOCに対する目標値である目標SOCを設定する。
【0060】
例えば、目標充電状態設定部42は、劣化バランスBAが所定のハイ側閾値(=1+α)よりも大きい場合には、正極側に比べて負極側の劣化をより抑制するようにして、例えば所望の残容量SOCを確保する際に正極側相関抵抗値の劣化速度に比べて負極側相関抵抗値の劣化速度がより遅くなるようにして、目標充電状態としてSOCマップから目標SOCを検索する。
一方、劣化バランスBAが所定のロー側閾値(=1−α)よりも小さい場合には、負極側に比べて正極側の劣化をより抑制するようにして、例えば所望の残容量SOCを確保する際に負極側相関抵抗値の劣化速度に比べて正極側相関抵抗値の劣化速度がより遅くなるようにして、目標充電状態としてSOCマップから目標SOCを検索する。
【0061】
充電制御部27は、目標充電状態設定部42により設定されたバッテリ11の目標充電状態(例えば、目標SOCなど)にバッテリ11の実際の充電状態(例えば、残容量推定部24により推定される残容量SOCなど)を収束させるようにして、バッテリ11に対する充電を制御する。
【0062】
本実施の形態による電動車両10は上記構成を備えており、次に、この電動車両10の動作、特に、外部給電装置1からの給電によってバッテリ11を充電する動作について説明する。
【0063】
先ず、例えば図7に示すステップS01においては、充電ケーブル2によって外部給電装置1と電動車両10のリッド(Lid)16が接続されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS02に進む。
【0064】
次に、ステップS02においては、残容量推定部24から出力される残容量SOCの推定結果を取得する。
次に、ステップS03においては、後述する目標SOC設定の処理を実行する。
次に、ステップS04においては、外部給電装置1からの給電によってバッテリ11の充電を開始する。
【0065】
そして、ステップS05においては、取得した残容量SOC(取得SOC)は目標SOC未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05の判定を繰り返し実行することによって、バッテリ11の充電を継続する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS06に進む。
そして、ステップS06においては、バッテリ11の充電を停止し、エンドに進む。
【0066】
以下に、上述したステップS03での目標SOC設定の処理について説明する。
先ず、例えば図8に示すステップS11においては、後述する正極及び負極相関抵抗値R1,R2推定の処理を実行する。
次に、ステップS12においては、劣化バランスBAが初期値(=1)を含む所定範囲(1−α≦BA≦1+α)内の値であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進み、このステップS13においては、バッテリ11に対する通常の充電を許可して、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS14に進む。
【0067】
そして、ステップS14においては、劣化バランスBAが所定のハイ側閾値(=1+α)よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進み、このステップS15においては、正極側に比べて負極側の劣化をより抑制するようにして、例えば所望の残容量SOCを確保する際に正極側相関抵抗値の劣化速度に比べて負極側相関抵抗値の劣化速度がより遅くなるようにして、目標充電状態としてSOCマップから目標SOCを検索する。
一方、この判定結果が「NO」の場合つまり劣化バランスBAが所定のロー側閾値(=1−α)よりも小さい場合には、ステップS16に進み、このステップS16においては、負極側に比べて正極側の劣化をより抑制するようにして、例えば所望の残容量SOCを確保する際に負極側相関抵抗値の劣化速度に比べて正極側相関抵抗値の劣化速度がより遅くなるようにして、目標充電状態としてSOCマップから目標SOCを検索する。
【0068】
そして、ステップS17においては、ステップS15またはステップS16においてSOCマップから検索された目標SOCを目標充電状態として設定して、リターンに進む。
【0069】
以下に、上述したステップS11での正極及び負極相関抵抗値R1,R2推定の処理について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS21においては、バッテリ11の各種の状態(例えば、温度TB、電流IB、電圧VB、使用時間、残容量SOCなど)の検出結果および推定結果を取得する。
【0070】
次に、ステップS22においては、バッテリ11の状態に基づいてバッテリ11の使用履歴を演算する。そして、バッテリ11の使用履歴の演算結果に応じて変移挙動マップを参照して、必要に応じて非通電期間における経時劣化成分による各相関抵抗値と通電期間における通電劣化成分による各相関抵抗値とを区別しつつ、バッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値および電解液相関抵抗値の変移挙動を推定する。
【0071】
次に、ステップS23においては、必要に応じて非通電期間における経時劣化成分による各相関抵抗値と通電期間における通電劣化成分による各相関抵抗値とを用いた加算モデルによる演算を行ないつつ、バッテリ11の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値および電解液相関抵抗値を推定し、リターンに進む。
【0072】
上述したように、本実施の形態による電動車両10によれば、バッテリ11の状態(例えば、温度TB、電流IB、電圧VB、使用時間、残容量SOCなど)に基づく使用履歴から、変移挙動マップにより、バッテリ11の劣化速度や寿命期間などの残価値に関連する内部状態として正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を推定することができる。
そして、これらの正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値に基づいて、バッテリ11の正極の劣化状態と負極の劣化状態との劣化バランスBAを算出することで、正極の劣化状態と負極の劣化状態とのバランスを整えるようにして目標充電状態として目標SOCを設定することができる。
【0073】
つまり、バッテリ11の劣化速度や寿命期間などの残価値を目標SOCに反映させることで、充電状態の制御を適正に行なうことができる。
そして、正極の劣化状態と負極の劣化状態とのバランスを整えるようにして目標SOCを設定することによって、バッテリ11の内部状態を良好な状態に維持することができ、バッテリ11の設計時に過剰な耐久性を確保する必要無しに設計マージンを減少させることができ、バッテリ11の出力性能を向上させることができる。
【0074】
なお、正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値の推定には、交流インピーダンス分析を応用して得られる変移挙動マップを用いることで、例えば電動車両に搭載されたバッテリ11を構成する複数のセルのそれぞれ(つまり、単セル毎)に対して実際に交流インピーダンス測定機によって測定を行なう場合に比べて、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
しかも、実際に交流インピーダンス測定機によって測定を行なうだけでは把握することが困難である各劣化状態と容量維持率と交流インピーダンス値の単位時間当たりの変移挙動との関連性をバッテリ11の使用履歴から取得することができ、各正極および負極毎の劣化状態を容易に推定することができる。
【0075】
なお、上述した実施の形態において、目標充電状態設定部42は、正極側相関抵抗値R1と負極側相関抵抗値R2との比(R2/R1)によって劣化バランスBAを算出するとしたが、これに限定されず、他の数式(例えば、正極側相関抵抗値R1と負極側相関抵抗値R2との差など)によって算出してもよい。
【0076】
また、上述した実施の形態において、目標充電状態設定部42は、例えば相関抵抗値推定部41により推定された各相間抵抗値から各正極および負極の劣化度(正極劣化度PBおよび負極劣化度NB)を推定し、正極劣化度PBと負極劣化度NBとの比(NB/PB)などによって劣化バランスBAを算出してもよい。
この場合、目標充電状態設定部42は、例えば下記表3に示すような、相関抵抗値推定部41により推定された各相間抵抗値(例えば、初期値である1を基点とした各相関抵抗値増加量)と、各正極および負極の劣化度(正極劣化度PBおよび負極劣化度NB)との対応関係を示す劣化度マップを参照して、劣化バランスBAを算出する。
この劣化度マップのデータは、予め実施される試験の試験結果などに基づいて作成される。
【0077】
【表3】

【0078】
なお、上述した実施の形態においては、外部給電装置1からの給電によってバッテリ11を充電する際の目標充電状態(例えば、目標SOCなど)を設定するとしたが、これに限定されず、例えば走行駆動源として内燃機関と電動機とを併用するハイブリッド車両などの電動車両10において、走行中などにバッテリ11を充電する際の目標充電状態(例えば、目標SOCなど)を設定してもよい。
この上述した実施の形態の変形例に係る電動車両10は、例えば図10に示すように、バッテリ11と、電動機12と、パワードライブユニット(PDU)13と、ダウンバータ(D/V)14と、12Vバッテリ15と、内燃機関61と、発電機62と、パワードライブユニット(PDU)63と、制御装置18とを備えて構成されている。
なお、上述した実施の形態の電動車両10と同一部分については同じ符号を配した。
【0079】
この変形例による電動車両10は、内燃機関61のクランクシャフト(図示略)に発電機62が連結され、電動機12が駆動輪Wに連結されたシリーズ型のハイブリッド車両である。
そして、内燃機関61の動力により発電機62が発電する場合には、パワードライブユニット(PDU)63は発電機62から出力される交流の発電電力を直流電力に変換して、バッテリ11を充電、あるいは電動機12のPDU13やD/V14に電力を供給する。
【0080】
そして、制御装置18の充電制御部27は、電動車両10の走行中などにおいて内燃機関61の動力による発電機62の発電によって発生する発電電力によりバッテリ11を充電する際に、目標充電状態設定部42により設定されたバッテリ11の目標充電状態(例えば、目標SOCなど)にバッテリ11の実際の充電状態(例えば、残容量推定部24により推定される残容量SOCなど)を収束させるようにして、バッテリ11に対する充電を制御する。
【0081】
この変形例に係る電動車両10の動作として、例えば図11に示すバッテリ制御の処理では、先ず、ステップS31において、バッテリ11の各種の状態(例えば、温度TB、電流IB、電圧VB、使用時間など)の検出結果を取得する。
次に、ステップS32においては、バッテリ11の入出力制限値を算出する。
次に、ステップS33においては、バッテリ11の残容量SOCを算出する。
そして、ステップS34においては、上述した実施の形態でのステップS03と同一の目標SOC設定の処理を実行し、リターンに進む。
【0082】
また、例えば図12に示す内燃機関、発電機制御の処理では、先ず、ステップS41において、上述したステップS32にて算出したバッテリ11の入出力制限値を取得する。
次に、ステップS42においては、上述したステップS32にて算出した残容量SOC(算出SOC)と、上述したステップS33にて算出した目標SOCとの差などに応じて、発電機62に対する発電要求値を算出する。
【0083】
次に、ステップS43においては、発電機62に対する発電要求値に応じた発電電力量を設定する。
次に、ステップS44においては、発電機62の発電電力量を確保するために要する内燃機関61の出力量を設定し、リターンに進む。
【0084】
この変形例によれば、バッテリ11の劣化速度や寿命期間などの残価値が反映された目標充電状態(例えば、目標SOCなど)に応じて発電機62の発電制御が実行されることから、バッテリ11の内部状態を良好な状態に維持することができると共に、発電動作を適正化することができる。
【0085】
なお、上述した実施の形態において、正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値では、バッテリ11の正極の劣化度と容量維持率とに対して強い関係性を有する周波数を、円弧状の曲線を示す各正極成分Pおよび負極成分Nの極大値に対応する周波数としたが、これに限定されず、例えば、各正極成分Pおよび負極成分Nの形状の各種の形状値などに基づいて設定される他の特定の周波数としてもよい。
【0086】
また、上述した実施の形態において、各相間抵抗値をバッテリ11の各劣化度と容量維持率とに関係性を有する特定の1点の周波数での交流インピーダンス値としたが、これに限定されず、例えば、バッテリ11の各劣化度と容量維持率とに関係性を有する特定の複数の周波数に関連した交流インピーダンス値としてもよい。
【0087】
また、上述した実施の形態においては、正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を交流インピーダンス値の虚数成分としたが、これに限定されず、例えば、実数成分や、虚数成分と実数成分との複合的な値としてもよい。
同様に、上述した実施の形態においては、電解液相関抵抗値を交流インピーダンス値の実数成分としたが、これに限定されず、例えば、虚数成分や、実数成分と虚数成分との複合的な値としてもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態においては、各相間抵抗値をCole-Cole Plot図上での各成分に関連する抵抗値としたが、これに限定されず、各相間抵抗値を他の成分に関連する抵抗値としてもよい。
【0089】
なお、上述した実施の形態においては、各相関抵抗値の単位時間当たりの変移挙動に関連する係数kを、各相関抵抗値の増加率が経過時間tのルート値(=√t)に比例するとして設定された比例係数であるとしたが、これに限定されず、各相関抵抗値の増加率が経過時間tに対して他の関係性(例えば、経過時間tの4乗根に比例するなど)を有しているとして設定される適宜の係数であってもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態においては、第1データは、係数kと、バッテリ11の温度TBと、バッテリ11の残容量SOCとの対応関係を示すデータであるとしたが、これに限定されず、例えば、係数kと、バッテリ11の各種の状態(例えば、温度TB、電流IB、電圧VB、使用時間など)の適宜の組み合わせとの対応関係を示すデータであってもよい。
同様に、上述した実施の形態においては、第2データは、係数kと、バッテリ11の温度TBと、バッテリ11の電流IBとの対応関係を示すデータであるとしたが、これに限定されず、例えば、係数kと、バッテリ11の各種の状態(例えば、温度TB、電流IB、電圧VB、使用時間など)の適宜の組み合わせとの対応関係を示すデータであってもよい。
【0091】
なお、上述した実施の形態においては、加算モデルによる演算を、前回の推定時における第1データまたは第2データに基づく各相関抵抗値の推定結果を基点として、今回の推定時におけるバッテリ11の状態の検出結果に応じて第1データまたは第2データから検索して得た係数kによって各相関抵抗値を推定する演算としたが、これに限定されず、他の演算としてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 外部給電装置
10 電動車両
11 バッテリ(2次電池)
18 制御装置
20 充電制御装置
21 状態検出部(状態検出手段)
25 内部状態推定部
27 充電制御部(充電制御手段、発電制御手段)
31 電流センサ(電流検出手段)
32 電圧センサ(電圧検出手段)
33 温度センサ(温度検出手段)
34 タイマー(時間検出手段)
41 相関抵抗値推定部(相関抵抗値推定手段)
42 目標充電状態設定部(目標充電状態設定手段)
51 第1記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池を搭載し、該2次電池の劣化状態を推定することで、目標充電状態を制御する電動車両であって、
前記2次電池の状態を検出する状態検出手段として、少なくとも、前記2次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、前記2次電池の電流を検出する電流検出手段と、前記2次電池の温度を検出する温度検出手段と、前記2次電池の使用時間を検出する時間検出手段とを具備し、
前記2次電池の各正極および負極および電解液毎の劣化度と容量維持率とに関係性を有する周波数に応じた交流インピーダンス値の単位時間当たりの変移挙動と、前記状態検出手段により検出される前記2次電池の状態に基づく前記2次電池の使用履歴との対応関係を示すデータからなる変移挙動データを記憶する記憶手段と、
前記状態検出手段により検出された前記2次電池の状態に基づく前記2次電池の使用履歴に応じて前記変移挙動データを参照して、前記2次電池の正極側相関抵抗値および負極側相関抵抗値を推定する相関抵抗値推定手段と、
前記相関抵抗値推定手段により推定された前記正極側相関抵抗値および前記負極側相関抵抗値に基づいて前記2次電池の前記正極の劣化状態と前記負極の劣化状態とのバランスを示す劣化バランスを算出し、該劣化バランスに基づいて前記目標充電状態を設定する目標充電状態設定手段と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記電動車両は、前記2次電池に充電する電力を前記電動車両の外部から供給する外部給電装置を接続可能であって、
該外部給電装置が前記電動車両に接続されて前記外部給電装置によって前記2次電池の充電が開始された場合に、前記2次電池の充電状態が前記目標充電状態に到達した時点で充電を停止させる充電制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記電動車両は、発電電力により前記2次電池を充電可能な発電装置と、前記2次電池の充電状態を前記目標充電状態に収束させるようにして前記発電装置の発電を制御する発電制御手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−135168(P2012−135168A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287268(P2010−287268)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】