説明

電子システムおよび腕装着型端末

【課題】携帯電話機の操作が困難な状況においても、ヘッドセットを有効に利用することのできる腕装着型端末を提供する。
【解決手段】携帯電話30をカバンにしまい込み、手に持っていない状況であっても、腕時計50の操作部を介して受信したメールの読み上げ操作を行うと、腕時計50から携帯電話30へ読み上げコマンドP23が送信される。携帯電話30はこの読み上げコマンドP23に基づいて、受信したメール文の音声読み上げ処理を行い、読み上げされた音声をヘッドセット10へ送信する。ヘッドセット10は、携帯電話30から送られた音声を出力する。ユーザは受信したメール文をヘッドセット10にて音声で確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信手段を介して携帯電話機、ヘッドセット、および、腕装着型端末を相互に無線接続してなる電子システム、並びに、携帯電話機、ヘッドセットとの間で通信可能な腕装着型端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話と、腕時計などの腕装着型端末とを、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信などの短距離無線通信によりデータ通信可能な構成とし、携帯電話に通話着信やメール着信などがあった場合に、この着信情報を携帯電話から腕装着型端末に送信するとともに、腕装着端末を振動させて着信の情報をユーザに知らせるようにしたシステムが開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、携帯電話とヘッドセットとを短距離無線通信によりデータ通信可能な構成とし、携帯電話での通話を、ヘッドセットを介して行うようにしたシステムも実用化されている。
【0004】
また、本発明に関連する従来技術として、携帯電話とヘッドセットならびに携帯電話と腕時計とをそれぞれ短距離無線通信によってデータ通信可能とした構成も提案されている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−335567号公報
【特許文献2】国際公開第01/099393号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ヘッドセットは小型電池を駆動源とすることから、使用していないときには電源を切っておき使用するときだけ電源を入れるようにされることがある。このような使用形態の場合、従来のシステムでは、ヘッドセットの電源を付けた後に、携帯電話を操作して携帯電話とヘッドセットとの通信リンクを確立する処理を行う必要があった。
【0006】
しかしながら、ヘッドセットが使用される状況は、携帯電話がカバン等にしまわれていたり、携帯電話を手に持つことができないような状況となったりすることが多いので、上記のような通信リンクを確立させる処理はユーザにとって煩雑な処理となることが多い。
【0007】
また、ヘッドセットの電源を頻繁にオン・オフするような場合には、現在、携帯電話とヘッドセットとの通信リンクが確立した状態にあるのか否か、ユーザが忘れてしまうことも多々生じる。従来のシステムでは、このような場合に携帯電話を操作して通信リンクが確立しているか確認するしかなかった。
【0008】
この発明の目的は、携帯電話の操作が困難な状況においても、ヘッドセットを有効に利用することのできる電子システムおよび腕装着型端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
無線通信手段を有する腕装着型端末と、
無線通信手段を有し音声データを無線により送受信して音声の入出力を行うヘッドセットと、
基地局との交信を行う第1無線通信手段、および、前記腕装着型端末と前記ヘッドセットの各無線通信手段と通信を行う第2無線通信手段を有する携帯電話機とを備えた電子システムにおいて、
前記腕装着型端末は、
前記無線通信手段を介した前記携帯電話機へのコマンド送信によって、前記携帯電話機に前記ヘッドセットとの無線通信リンクを確立させる処理を実行させるリンク要求手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、
無線通信手段を有する腕装着型端末と、
無線通信手段を有し音声データを無線により送受信して音声の入出力を行うヘッドセットと、
基地局との交信を行う第1無線通信手段、および、前記腕装着型端末と前記ヘッドセットの各無線通信手段と通信を行う第2無線通信手段を有する携帯電話機とを備えた電子システムにおいて、
前記携帯電話機は、
当該携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクが確立しているか否かを示すリンク有無情報を、前記第2無線通信手段を介して前記腕装着型端末に送信するリンク情報送信手段を備え、
前記腕装着型端末は、
前記リンク有無情報を受信した場合にこのリンク有無情報に基づいて前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクの状態をユーザに通知するリンク状態通知手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子システムにおいて、
前記携帯電話機は、
前記第1無線通信手段を介して電子メールを受信するメール受信手段と、
受信した電子メールの情報を、前記第2無線通信手段を介して前記腕装着型端末に送信するメール情報送信手段と、
前記メール受信手段により受信した電子メールの情報からこの電子メールのメール文を読み上げる音声データを生成するメール読上げ手段とを備え、
前記腕装着型端末には、
前記携帯電話機から電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を表示出力するメール表示手段と、
外部からのメール読上げの操作入力を受けた場合に前記携帯電話機にメール読上げ要求のコマンドを送信するメール読上げ要求手段とが設けられ、
前記腕装着型端末に電子メールの内容が表示出力され、前記腕装着型端末から前記携帯電話機にメール読上げ要求がなされたら、前記携帯電話機から前記ヘッドセットへ前記電子メールを読上げる音声データが送られて、前記ヘッドセットにおいてこの電子メールを読み上げる音声出力がなされることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段と、
前記無線通信手段を介した前記携帯電話機へのコマンド送信によって、前記携帯電話機に前記ヘッドセットとの無線通信リンクを確立させる処理を実行させるリンク要求手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末である。
【0013】
請求項5記載の発明は、
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段と、
前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクが確立しているか否かを示すリンク有無情報を、前記無線通信手段を介して前記携帯電話機から受信した場合に、このリンク有無情報に基づいて前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクの状態をユーザに通知するリンク状態通知手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末である。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5に記載の腕装着型端末において、
前記携帯電話機から前記無線通信手段を介して電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を表示出力するメール表示手段と、
外部からのメール読上げの操作入力を受けた場合に、前記無線通信手段を介して前記携帯電話機に、前記電子メールの内容を前記ヘッドセットから音声出力させるためのメール読上げ要求コマンドを送信するメール読上げ要求手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項7記載の発明は、
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段とデータを表示する表示部とを備えている腕装着型端末において、
前記携帯電話機から前記無線通信手段を介して電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を前記表示部に表示させるメール表示制御手段と、
このメール表示制御手段の制御により表示された電子メールを読上げる際に操作される操作手段と、
この操作手段が操作されると、これに応答して、前記表示された電子メールを音声出力させるためのメール読上げ要求コマンドを前記無線通信手段を介して前記携帯電話機に送信するように制御する送信制御手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、腕装着型端末のリンク要求手段を利用することで、携帯電話を操作することなく携帯電話とヘッドセットとの通信リンクを確立させることができる。
また、腕装着型端末のリンク状態通知手段を利用することで、携帯電話を操作することなく携帯電話とヘッドセットの通信リンク状態を確認することができる。従って、例えば、携帯電話をカバン等にしまい込んでいたり、携帯電話を手に取れないような状況であっても、ヘッドセットと腕装着型端末を身に付けていれば、携帯電話とヘッドセットとの通信リンクを確立させてヘッドセットを介して携帯電話での通話を可能としたり、ヘッドセットと携帯電話とが現在リンクされているか否かを容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機と腕時計とヘッドセットの各内部構成を示すブロック図である。
【0019】
この実施形態の電子システムは、音声の入出力機能を有するヘッドセット10と、基地局との無線通信により通話や電子メールの送受信が可能な携帯電話30と、腕装着型端末としての電子式腕時計50とから構成される。
【0020】
ヘッドセット10は、ユーザの例えば頭や耳などに固定して使用する小型の機器であり、短距離無線通信により音声データの送受信を行って、マイク入力したユーザの音声を通信相手へ携帯電話30を介して送信したり、通信相手から受信した音声データに基づいて音声出力を行ったりするものである。
ヘッドセット10には、図1に示すように、通信制御等を行うマイクロコンピュータ11と、アンテナAN1を介して短距離無線信号の送受信処理を行うRF回路12と、送受信するベースバンド信号に対してデータ処理を行うベースバンド回路13と、送受信される音声のコード化処理やデコード処理を行う音声コーデック14と、音声信号の入出力処理を行う音声インターフェース15と、音声出力を行うヘッドフォン16と、音声入力を行うマイク17と、電源電圧を供給する電池18と、電池18と各部との接続・切断を切り換える電源スイッチ19などが設けられている。
【0021】
携帯電話30は、基地局70との無線通信により通話や電子メールの送受信を行う機能に加えて、例えば短距離無線通信によりヘッドセット10や腕時計50と無線通信を行ってヘッドセット10との間で音声の送受信を行ったり、腕時計50との間で様々な連携動作を行う機能を有するものである。
携帯電話30は、図1に示すように、機器全体の動作制御を行うマイクロコンピュータ31と、電話機能やメール機能など種々の機能に関わる表示出力を行う表示部32と、マイクロコンピュータ31からの表示データに基づき表示部32を駆動する表示ドライバ33と、制御プログラムや設定データを格納する不揮発性メモリ34と、短距離通信用の通信データのデータ処理を行うベースバンド回路35と、通信データと無線信号とを相互変換してアンテナAN3を介して送受信する短距離無線用RF回路36と、アンテナAN2を介して基地局70と無線信号の送受信を行う対基地局用RF回路37と、基地局70に送受信する通信データのデータ処理を行うベースバンド回路38と、音声のコード化処理やデコード処理を行う音声コーデック39と、音声信号の入出力を行う音声インターフェース40と、音声出力を行うスピーカ41と、音声入力を行うマイク42と、ユーザからの操作入力を受ける操作部43等が設けられている。
【0022】
腕時計50は、時刻の計時やその表示を行う時計機能に加え、例えば短距離無線通信により携帯電話30と無線通信を行って様々な連携動作を行う機能を有するものである。
この腕時計50には、機器の全体的な制御を行うマイクロコンピュータ51と、時刻の計時を行う計時回路52と、計時回路52に一定の周波数信号を供給する発振回路53と、アンテナAN4を介して短距離無線通信の信号の送受信を行うRF回路56と、RF回路56により送受信される通信データのデータ処理を行うベースバンド回路57と、時刻表示やその他の機能表示を行う液晶パネルなどの表示部54と、マイクロコンピュータ51から出力された表示データに基づいて表示部54を駆動する表示ドライバ55と、マイクロコンピュータ51のCPUが実行する制御プログラムや制御データが格納される不揮発性メモリ58と、ユーザからの操作入力を受ける操作部59と、例えば発光出力、振動、音出力などによりユーザに報知を行う報知部60と、この報知部60をマイクロコンピュータ51からの信号により駆動するドライバ61等が設けられている。
【0023】
上記のヘッドセット10、携帯電話30、および腕時計50は、それぞれ短距離無線通信を介して同一の通信ネットワークに接続可能なように構成されている。通信ネットワークの構成は、例えば、携帯電話30がネットワークへのゲートウェイとなって、この携帯電話30を中心にヘッドセット10と腕時計50とが通信ネットワークにマルチ接続する構成とされる。例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)のピコネット接続において、携帯電話30をマスター、ヘッドセット10と腕時計50とをスレーブとした接続形態である。
【0024】
このような接続形態においては、ヘッドセット10の電源が切られてヘッドセット10が通信ネットワークから切断されても、携帯電話30と腕時計50とで通信ネットワークが構成されて両者間でデータ通信が可能とされる。また、腕時計50が通信ネットワークから切断された場合でも、携帯電話30とヘッドセット10により通信ネットワークを構成して両者間で音声データのやり取りが可能とされる。このような通信ネットワークに接続されてデータ通信可能な状態を、通信リンクが確立した状態と呼ぶ。
【0025】
図2には、腕時計50の記憶部に格納されるデータの一部を表わしたデータ構成図を示す。
【0026】
腕時計50に備わる記憶部(不揮発性メモリ58や、マイクロコンピュータ51の内部に設けられるRAM51b等)には、次のようなデータが格納されるようになっている。
すなわち、不揮発性メモリ58のデータ格納領域58a,58bには、通信ネットワークに接続する予定の1個又は複数個のヘッドセット(例えば第1ヘッドセット「HS1」や第2ヘッドセット「HS2」など)のデバイス識別子(例えばデバイス毎に一意に付加されたデバイスアドレス)が格納され、RAM51bのデータ格納領域51ba,51bbには、上記1個又は複数個のヘッドセットが通信ネットワークに接続されているか否かを示す接続フラグが格納されるようになっている。
【0027】
格納領域58a,58bに格納されるデバイスアドレスは、たとえば、腕時計50の操作部59の操作入力によりユーザが設定入力したり、或いは、別のコンピュータや携帯電話30から短距離無線通信を介したデータ通信によりユーザが設定入力したりする。また、格納領域51ba,51bbの接続フラグはマイクロコンピュータ51のCPUが内部情報として設定するものである。
【0028】
その他、腕時計50の記憶部、ヘッドセット10の記憶部、携帯電話30の記憶部には、通信ネットワークに接続してデータ通信を行うための認証情報や暗号キーなどの情報が予め設定されている。
【0029】
次に、上記のように構成される電子システムの3つの動作例について説明する。
【0030】
[第1の動作例]
図3には、腕時計50の操作によって携帯電話30とヘッドセット10との通信リンクを確立して通話を行う処理の流れを表わしたシーケンス図を示す。
【0031】
第1の動作例は、先ず、携帯電話30と腕時計50との通信リンクが確立され(状態S1)、第1ヘッドセット(HS1)10がこの通信ネットワークに加わっていない状態を初期状態としている。このような状態においては、携帯電話30は、新たな機器を通信ネットワークへ参加させるための呼び出し処理や、通信ネットワークに参加可能な機器の検索処理を自動的に実行することはせず、操作部43を介した操作入力やデータ通信によってこれらの処理の実行要求がなされた場合のみ、上記のような呼び出し処理や検索処理を実行するようになっている。このような設定により消費電力の低減が図られている。
【0032】
ここで、ユーザが、ヘッドセット10を通信ネットワークへ参加させるためにその電源スイッチ19をオン操作すると(ステップJ1)、ヘッドセット10のマイクロコンピュータ11が動作して、短距離無線通信を介して通信ネットワークへの呼び出しがないか検索する処理が実行される(ステップJ2)。
【0033】
この状態においては、ユーザが携帯電話30を操作してヘッドセット10を通信ネットワークへ参加させるための呼び出し処理を実行させることもできる。しかしながら、例えば、携帯電話30がカバンなどにしまわれている場合や、携帯電話30を手に持てる状態にない場合など、そのような操作が困難なときがある。そこで、この実施形態では、ユーザが携帯電話30を操作することなく、腕時計50を操作するだけで、ヘッドセット10を通信ネットワークへ参加させることが可能になっている。
【0034】
すなわち、ユーザは、携帯電話30の操作が困難な場合に、腕時計50の操作部59を操作して腕時計50に予め登録されている例えば第1ヘッドセット10を通信ネットワークへ参加させるための接続操作を行う(ステップJ3)。すると、腕時計50から携帯電話30へ、呼び出しコマンドと、指定した第1ヘッドセット10の識別子(例えばデバイスアドレスA)とからなる情報P0が短距離無線通信を介して送信される。この処理によりリンク要求手段が構成される。
【0035】
携帯電話30は、上記の呼び出しコマンドとデバイスアドレスAの情報P0を受信すると、これらに基づきデバイスアドレスAの機器を通信ネットワークへ参加させるための呼び出し処理を開始する(ステップJ4)。呼び出し処理は、携帯電話30が短距離無線通信により例えばブロードキャストを行ってデバイスアドレスAの機器に接続要求を行うことで実現される。
【0036】
一方、ヘッドセット10は、このとき呼び出しの検索処理を行っているので、携帯電話30からの接続要求を受信して、これに対して応答処理を行う。そして、両者間で接続認証の処理等が行われて、ヘッドセット10が通信ネットワークへ接続された状態となる(状態S2)。なお、ステップJ3の接続操作を最初に行って、その後に、ステップJ1のヘッドセット10の電源オン操作を行った場合でも、同様に携帯電話30とヘッドセット10とで接続処理が行われてヘッドセット10を通信ネットワークへ接続させることができる。
【0037】
ヘッドセット10が通信ネットワークに接続されたら、次いで、携帯電話30から腕時計50に第1ヘッドセット10(HS1)が接続したことを示すHS1接続通知P1の送信がなされる。腕時計50にHS1接続通知P1が受信されると、この接続通知P1に受信に基づき、腕時計50のマイクロコンピュータ51が制御動作を行って、報知部60により振動、ビープ音、発光出力等が行われるとともに、腕時計50の表示部54にHS1接続通知の表示が行われる(ステップJ5:リンク状態通知手段)。ユーザは、このような報知動作や接続通知の表示によってヘッドセット10が使用可能になったことを確実に認識することができる。
【0038】
また、このとき、マイクロコンピュータ51内のCPUによりRAM51のデータ格納領域51baに、HS1の接続フラグ情報として有効値がセットされる。
【0039】
そして、この状態で、例えば基地局70から着信呼出信号P2が携帯電話30に送られると、携帯電話30で着信動作が行われるとともに短距離無線通信を介して着信呼出警告情報P3が腕時計50に送られる。そして、これにより腕時計50では報知部60の駆動や表示出力により着信呼出の報知動作がなされる(ステップJ6)。ここで、ユーザが着信呼出の報知動作を受けて操作部59を介して受話操作を行うと(ステップJ7)、腕時計50から携帯電話30へ受話コマンドP4が送られて、これにより携帯電話30のマイクロコンピュータ31が着信応答の処理を実行し、受話と通話の処理が開始される(ステップJ8)。
【0040】
このとき、携帯電話30とヘッドセット10とは通信リンクが確立した状態にあるので、短距離無線通信により音声バスが形成されて(状態S3)、ヘッドセット10において通話処理が可能となる(ステップJ9)。図示は省略するが、その後、携帯電話30の通話が相手先から切断されたり、或いは、腕時計50の操作により通話を切断したりした場合には、携帯電話30の通話処理が終了され、それにより、ヘッドセット10と携帯電話30との間に形成された音声バスの構成も解除される。
【0041】
次に、ユーザが、例えばヘッドセット10を暫く使用しないと判断して電源スイッチ19をオフ操作したとする(ステップJ10)。すると、携帯電話30とヘッドセット10との間で、所定周期で実行されている接続確認の交信が途切れ、それにより、携帯電話30のマイクロコンピュータ31の制御動作が実行されてヘッドセット10との通信リンクが解除される(状態S4)。さらに、このとき、携帯電話30のマイクロコンピュータ31は、通信ネットワークを介して腕時計50へ第1ヘッドセット10の接続を解除したことを示すHS1解除通知P5が送信される。
【0042】
そして、このHS1解除通知P5が腕時計50に受信されると、腕時計50のマイクロコンピュータ51が制御処理を行って、報知部60が駆動されるとともに、表示部54を介して接続解除情報の表示出力が行われる(ステップJ11:リンク状態通知手段)。これにより、ユーザはヘッドセット10の接続解除が完了したことを確実に認識することができる。また、このとき、腕時計50におけるRAM51のデータ格納領域51baには、HS1の接続フラグ情報として無効値がセットされて、接続解除の情報が記憶される。
【0043】
[第2の動作例]
図4には、携帯電話30とヘッドセット10との通信ネットワークへ後から腕時計50を参加させた場合の処理の流れを表わしたシーケンス図を示す。
【0044】
第2の動作例は、携帯電話30とヘッドセット10との間に通信リンクが確立されている一方(状態S11)、腕時計50の短距離無線通信機能がオフにされている状態など、腕時計50が通信ネットワークに接続されていない状態を初期状態としたものである。この状態において、例えば、ユーザが、腕時計50を通信ネットワークに接続させるために、その操作部59を操作して短距離無線通通信機能をオン作動させ(ステップJ12)、且つ、携帯電話30を操作して腕時計50を通信ネットワークへ参加させるための呼び出し処理を開始させたとする(ステップJ14)。
【0045】
このような操作が行われると、携帯電話30と腕時計50との間で呼び出し処理と呼び出し検索処理が実行されて、腕時計50が携帯電話30の接続要求に短距離無線通信を介して応答する。そして、両者間で接続認証の処理等が行われて、腕時計50が通信ネットワークへ接続される(状態S12)。
【0046】
携帯電話30では、マイクロコンピュータ31のCPUが実行する制御プログラムによって、腕時計50が新たに通信ネットワークに参加した場合に、現在のヘッドセット10の接続状況を腕時計50へ通知する処理ステップが実行されるようになっている。この処理ステップにより、携帯電話30のマイクロコンピュータ31は、上記のように腕時計50が新たに通信ネットワークに参加した場合に、現在のヘッドセット10の接続状況を示す通知情報P11を腕時計50に送信する。図4の例では第1ヘッドセット10が接続状態にあるのでHS1接続有り通知情報P11を腕時計50に送信している。
【0047】
ここで、何れのヘッドセットの接続もなされていないような場合には、接続なしの通知情報が腕時計50に送信されて、腕時計50においてヘッドセットの接続なしの状況が認識される。なお、何れのヘッドセットの接続もなされていないような場合に、何れの接続通知情報も送信しないことで、腕時計50がヘッドセットの接続なしの状況を認識するような構成としても良い。
【0048】
腕時計50にヘッドセットの接続状況の通知がなされたら、腕時計50のマイクロコンピュータ51は報知部60を駆動して報知動作を行わせるとともに、腕時計50の表示部54に通知されたヘッドセットの接続状況に関する表示出力を行う(ステップJ15)。 また、このとき、マイクロコンピュータ51のCPUはRAM51のデータ格納領域51ba,51bbに、ヘッドセットの接続情報に応じたフラグ値をセットする。図4の例では、HS1接続有り通知情報P11に基づいて、格納領域51baのHS1接続フラグに有効値が、格納領域51bbのHS2接続フラグに無効値が格納される。
【0049】
以上のような処理によって、携帯電話30とヘッドセット10と腕時計50とが同一の通信ネットワークに接続された状態となる。その後、例えば、基地局70から着信呼出信号P2が携帯電話30に送信された場合には、図3の処理シーケンスの信号P2の送信以降の処理と同様の処理が実現される。
【0050】
[第3の動作例]
図5には、ヘッドセット10と腕時計50と携帯電話とが通信ネットワークに接続された状態で携帯電話へメール受信があった場合の処理の流れの一例を表わしたシーケンス図を、図6には、この処理中に腕時計50の表示部54に表示されるメール文の状態を示す画像図の一例を示す。
【0051】
第3の動作例は、例えば、図3に示した第1の動作例と同様に、先ず、ステップJ1〜J5の処理やデータP0,P1の送受信によって、携帯電話30腕時計50とヘッドセット10とが通信ネットワークに接続された状態で、基地局70から携帯電話30にメール着信があった場合を示している。
【0052】
携帯電話30と腕時計50とヘッドセット10が、それぞれ通信ネットワークに接続された状況で、基地局70から携帯電話30にメール着信があって携帯電話30にメールデータP21が送信された場合、先ず、携帯電話30は自動的にこのメールデータP21の受信を行うとともに(ステップJ21)、受信したものと同様のメールデータP22を腕時計50に転送する(ステップJ22:メール情報送信手段)。なお、このメール転送の処理は、例えば、携帯電話30の動作設定によりオン・オフを切り替えられるように構成すると良い。
【0053】
メールデータP22が腕時計50に送信されると、腕時計50のマイクロコンピュータ51は、これを受信する処理を行うとともに、メールデータP22の受信が完了したら、報知部60を作動させてユーザにメール受信の報知動作を行う。さらに、受信したメールデータに基づき表示部54にメール文を表示出力させる(ステップJ23:メール表示手段)。このような処理によって、ユーザはメール受信を知ることができ、さらに、腕時計50の表示部54を見ることで、図6に示すような、メール文の一部(送信者、件名、メール本分の頭部分など)の表示を確認することができる。但し、メール文が長い場合などは、腕時計50の表示部54から外れた範囲54Bのメール文は煩雑なスクロール操作を行わないとすぐには確認することができない。
【0054】
ユーザは、メール文の一部を確認して、メールの全文を読みたいと思った場合、腕時計50の操作部59を介して読み上げ実行の操作を行う(ステップJ24)。すると、腕時計50から携帯電話30へ読み上げコマンドP23が送信され、携帯電話30のマイクロコンピュータ31が、この読み上げコマンドP23に基づいて、先に転送したメール文の音声読み上げ処理を実行する(ステップJ25:メール読上げ手段)。すなわち、メール文を各単語に分割して各単語ごとの音声データを作成しこれらをつなげてメール文読み上げ用の音声データを合成する。そして、この音声データの出力処理を行う。
【0055】
このとき携帯電話30とヘッドセット10との通信リンクが確立した状態にあると、短距離無線通信により音声バスが形成され(状態S3)、この音声バスを介してヘッドセット10へ音声データが転送される。それにより、ヘッドセット10においてメール文読み上げの音声出力が行われる(ステップJ26)。ユーザは、このメール文読み上げ音声を、ヘッドセット10を介して聞くことで、腕時計50の表示部54の一画面の表示では得られないメール全文の内容を音声により確認することができる。
【0056】
以上のように、この実施の形態の電子システムおよびその腕時計50によれば、腕時計50を操作してヘッドセット10との接続操作(図3のステップJ3)を行うことで、携帯電話30を操作することなく、携帯電話30とヘッドセット10との通信リンクを確立させることができる。また、通信ネットワークへヘッドセット10が参加した際や、接続が解除された際、或いは、通信ネットワークへの腕時計50を参加させた際などに、腕時計50の報知部60が作動するとともに、その表示部54にヘッドセット10の接続状況が表示されるので、ユーザはこれらによってヘッドセット10の接続状況を確実に認識することができる。
【0057】
従って、例えば、携帯電話30をカバンにしまっていたり手に持てない状況であっても、ヘッドセット10と腕時計50とを身に付けていれば、腕時計50を操作して携帯電話30とヘッドセット10との通信リンクを確立させ、ヘッドセット10を介した通話を可能としたり、ヘッドセット10の電源スイッチ19を頻繁に切り換えている状況であっても、現在、ヘッドセット10と携帯電話30との通信リンクの状態がどうなっているのか確認することが可能となる。
【0058】
また、携帯電話30に電子メールが受信された場合においても、腕時計50の動作によりメール受信やメール内容の一部を確認することができるとともに、必要があれば、携帯電話30を操作することなく、メール文の内容を、ヘッドセット10を介して音声で聞くことも可能となる。従って、携帯電話30をカバンにしまい込み手に持っていない状況であっても、携帯電話30に受信された電子メールを音声で適宜に確認することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、腕時計50の操作により指定のヘッドセット10の接続要求が行われるようになっているが、指定なく任意のヘッドセットの接続要求がなされるようにしても良い。また、腕時計50によりヘッドセットの接続状況をユーザに通知する形態は、報知動作のみとしたり、或いは、表示出力のみとしたりするなど適宜変更可能である。
【0060】
また、上記実施の形態では、腕装着型端末として腕時計50を例示しているが、時計機能のない端末としても良い。また、上記実施の形態では、短距離無線通信としてブルートゥース通信を例示したが、例えばWibree(ワイブリー:フィンランドの会社.が提唱する近距離向け無線規格)やZigBee(ジグビー:家電向けの短距離無線通信規格)などの各種の省電力短距離無線通信を適用することもできるし、また、独自規格の短距離無線通信や、短距離無線通信以外の他の無線通信を適用することも出来る。その他、上記の実施形態で示した細部等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機と腕時計とヘッドセットの内部構成を示すブロック図である。
【図2】腕時計の記憶部に格納されるデータの一部を示すデータ構成図である。
【図3】腕時計の操作により携帯電話とヘッドセットとの通信リンクを確立させて通話を行う処理の流れを示したシーケンス図である。
【図4】携帯電話とヘッドセットとの通信ネットワークへ後から腕時計を参加させた場合の処理の流れを示したシーケンス図である。
【図5】携帯電話へメール受信があった場合の処理の流れを示したシーケンス図である。
【図6】メール受信時における腕時計でのメール表示の一例を示した画像図である。
【符号の説明】
【0062】
10 ヘッドセット
12 RF回路(無線通信手段)
13 ベースバンド回路(無線通信手段)
30 携帯電話
35 ベースバンド回路(第2無線通信手段)
36 無線通信用RF回路(第2無線通信手段)
37 対基地局用RF回路(第1無線通信手段)
38 ベースバンド回路(第1無線通信手段)
50 腕時計(腕装着型端末)
54 表示部
56 RF回路(無線通信手段)
57 ベースバンド回路(無線通信手段)
59 操作部
60 報知部
70 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信手段を有する腕装着型端末と、
無線通信手段を有し音声データを無線により送受信して音声の入出力を行うヘッドセットと、
基地局との交信を行う第1無線通信手段、および、前記腕装着型端末と前記ヘッドセットの各無線通信手段と通信を行う第2無線通信手段を有する携帯電話機とを備えた電子システムにおいて、
前記腕装着型端末は、
前記無線通信手段を介した前記携帯電話機へのコマンド送信によって、前記携帯電話機に前記ヘッドセットとの無線通信リンクを確立させる処理を実行させるリンク要求手段を備えていることを特徴とする電子システム。
【請求項2】
無線通信手段を有する腕装着型端末と、
無線通信手段を有し音声データを無線により送受信して音声の入出力を行うヘッドセットと、
基地局との交信を行う第1無線通信手段、および、前記腕装着型端末と前記ヘッドセットの各無線通信手段と通信を行う第2無線通信手段を有する携帯電話機とを備えた電子システムにおいて、
前記携帯電話機は、
当該携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクが確立しているか否かを示すリンク有無情報を、前記第2無線通信手段を介して前記腕装着型端末に送信するリンク情報送信手段を備え、
前記腕装着型端末は、
前記リンク有無情報を受信した場合にこのリンク有無情報に基づいて前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクの状態をユーザに通知するリンク状態通知手段を備えていることを特徴とする電子システム。
【請求項3】
前記携帯電話機は、
前記第1無線通信手段を介して電子メールを受信するメール受信手段と、
受信した電子メールの情報を、前記第2無線通信手段を介して前記腕装着型端末に送信するメール情報送信手段と、
前記メール受信手段により受信した電子メールの情報からこの電子メールのメール文を読み上げる音声データを生成するメール読上げ手段とを備え、
前記腕装着型端末には、
前記携帯電話機から電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を表示出力するメール表示手段と、
外部からのメール読上げの操作入力を受けた場合に前記携帯電話機にメール読上げ要求のコマンドを送信するメール読上げ要求手段とが設けられ、
前記腕装着型端末に電子メールの内容が表示出力され、前記腕装着型端末から前記携帯電話機にメール読上げ要求がなされたら、前記携帯電話機から前記ヘッドセットへ前記電子メールを読上げる音声データが送られて、前記ヘッドセットにおいてこの電子メールを読み上げる音声出力がなされることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子システム。
【請求項4】
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段と、
前記無線通信手段を介した前記携帯電話機へのコマンド送信によって、前記携帯電話機に前記ヘッドセットとの無線通信リンクを確立させる処理を実行させるリンク要求手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末。
【請求項5】
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段と、
前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクが確立しているか否かを示すリンク有無情報を、前記無線通信手段を介して前記携帯電話機から受信した場合に、このリンク有無情報に基づいて前記携帯電話機と前記ヘッドセットとの無線通信リンクの状態をユーザに通知するリンク状態通知手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末。
【請求項6】
前記携帯電話機から前記無線通信手段を介して電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を表示出力するメール表示手段と、
外部からのメール読上げの操作入力を受けた場合に、前記無線通信手段を介して前記携帯電話機に、前記電子メールの内容を前記ヘッドセットから音声出力させるためのメール読上げ要求コマンドを送信するメール読上げ要求手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の腕装着型端末。
【請求項7】
ヘッドセットとの無線通信機能を有する携帯電話機に対して当該無線通信機能を介して無線通信を可能とする無線通信手段とデータを表示する表示部とを備えている腕装着型端末において、
前記携帯電話機から前記無線通信手段を介して電子メールの情報が送られた場合にこの電子メールの内容を前記表示部に表示させるメール表示制御手段と、
このメール表示制御手段の制御により表示された電子メールを読上げる際に操作される操作手段と、
この操作手段が操作されると、これに応答して、前記表示された電子メールを音声出力させるためのメール読上げ要求コマンドを前記無線通信手段を介して前記携帯電話機に送信するように制御する送信制御手段と、
を備えていることを特徴とする腕装着型端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−253869(P2009−253869A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102007(P2008−102007)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】