説明

電子デバイスにおける無線周波数伝送を制御するためのシステムおよび方法

【課題】調波のレベルを低減させるためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】無線通信デバイスのために無線周波数伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための電子回路であって、通信デバイスのために出力信号を生成する電力増幅器と、出力信号のために電力増幅器の出力端子に接続された回路であって、該回路は、第1のフィルタリングステージ、遅延要素、および調波フィルタを含んでいる、回路とを備えており、遅延要素は、調波フィルタと出力端子との間に配置されており、遅延要素は、出力信号にタイミング遅延を提供し、調波フィルタは、出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタである、電子回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本明細書に記載されている発明は、概して、電子デバイスにおける電力増幅器から発出された、伝送無線周波数(RF)信号の伝送の出力を制御および調整し、調波のレベルを低減させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現在の無線ハンドヘルドモバイル通信デバイスは、モバイルユーザが彼らの机から離れている間に、モバイルユーザが情報および通信(例えば、eメール、企業データ、およびスケジュール管理情報)に接することを可能にする様々な機能を実行する。そのようなデバイスはしばしば、無線伝送を用いてその他のデバイスと通信する。そのような伝送は、内部増幅器によって生成され、デバイス上の1つ以上のアンテナを介して伝送される。一般的な要件として、特定の権限が、無線デバイスの伝送局面を規制している。米国連邦通信委員会(FCC)は、米国で販売されているデバイスに対し、そのような伝送の電気的特性を規制している。一連のFCC規則は、そのような伝送によって生成された調波の振幅に対する制限を課している。通信デバイスにおける既存の伝送回路は、基本周波数の近くで大きな信号調波を生成する傾向がある。これらの調波は、FCC規則にしたがわないものであり得る、追加的な無線周波数ノイズを生成し得る。通常、電力増幅器からの無線周波数ノイズの主な原因は、3つ存在する:電力増幅器の出力信号に存在する信号調波;電力増幅器の出力とそれに関連する出力回路との間の、電力および/またはインピーダンスのミスマッチが原因で生成される、調波および/またはノイズ;および電力増幅器を電源(例えば、リチウムイオンバッテリーのような、バッテリー)に接続している印刷回路基板(PCB)上の回路トレースを介して入力電力回路から漏洩する信号であって、(例えば、バッテリーの場合には)バッテリーを介してデバイスから放出する信号から生成される、無線周波数伝送。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術における欠点に対処するシステムおよび方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
第1の局面において、無線通信デバイスのための無線周波数伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための電子回路が、提供され得る。電子回路は:印刷回路基板(PCB);通信デバイスのための出力信号を生成するための電力増幅器;出力信号のための電力増幅器の出力端子に接続されたPCB上に実装された回路、を含み得る。回路は、第1のフィルタリングステージ、遅延要素、および調波フィルタを含み得る。回路において、遅延要素は、調波フィルタと出力端子との間に配置され得、遅延要素は、少なくとも1つの0オームに評価されるコンポーネントを介して、出力信号に時間遅延を提供し得る。また、調波フィルタは、出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタであり得る。
【0005】
この電子回路において、遅延要素は、0オームのコンポーネントであり得る。
【0006】
この電子回路において、遅延要素は、回路におけるフィルタ要素のコンポーネントに置き換わり得る。
【0007】
この電子回路において、調波フィルタは、遅延要素が置き換わったフィルタ要素を実装し得る。
【0008】
この電子回路において、フィルタリングステージは、ノッチフィルタを含み得、特定の周波数帯域(例えば、5GHzの周波数帯域)の近くの信号を減衰させ得る。
【0009】
この電子回路において、フィルタリングステージは、ローパスフィルタをさらに含み得、特定の周波数帯域(例えば、5GHzの周波数帯域)以上の信号を減衰させ得る。
【0010】
この電子回路において、遅延要素は、フィルタ要素のコンポーネントの代わりにインダクタを利用することにより、回路におけるフィルタ要素に置き換わり得る。
【0011】
この電子回路において、遅延要素は、PCBにおいて代替的なトラックを含み得、この代替的なトラックは、少なくとも1つの0オームのコンポーネントの挿入によって、回路に選択的に接続され、トラックと回路との間の電気的な接続を完成させ得る。
【0012】
この電子回路は、キャパシタをさらに含み得、電力増幅器を増幅器に対するバッテリーに接続している電力接続回路のPCB内のトラックにおいて、電力増幅器からの信号の伝送を低減させ得る。
【0013】
この電子回路において、キャパシタの組は、ハイフィルタチョークと電力増幅器との間の電力接続回路に配置され得る。さらに、キャパシタは、ローパスフィルタを提供し得、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させ得る。
【0014】
加えてまたはあるいは、この電子回路において、キャパシタは、ハイフィルタチョークとバッテリーとの間の電力接続回路に配置され得る。さらに、キャパシタは、ローパスフィルタを提供し得、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させ得る。
【0015】
加えてまたはあるいは、遅延要素は、PCBにおけるトラックであり得、このトラックは、十分な長さを有しており、信号がこの長さをトラバースするための伝播遅延を提供することによって、タイミング遅延を提供し得る。
【0016】
また、この回路において、回路の入力ポイントは、電力増幅器の出力の電力およびインピーダンスの特性に適応するために、同調され得る。
【0017】
第2の局面において、無線通信デバイスのための無線周波数伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための方法が、提供され得る。方法は:出力信号に対して第1のフィルタリングステージを提供すること;第1のフィルタリングステージの後に、出力信号に対して調波フィルタを提供すること;調波フィルタの後に、出力信号に対して出力ステージを提供すること;調波フィルタの前に、出力信号に対して専用の遅延要素を提供し、出力信号に対して時間遅延を与えることによって、出力信号の調波を低減させること、を含み得る。この回路において、調波フィルタは、出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタであり得る。
【0018】
この方法において、遅延要素は、0オームのコンポーネントであり得る。
【0019】
この方法において、遅延要素は、回路におけるフィルタ要素のコンポーネントに置き換わり得る。
【0020】
この方法は、電力増幅器を増幅器のためのバッテリーに接続している電力接続回路において、電力増幅器からの信号の伝送をフィルタリングすることをさらに含み得る。
【0021】
この方法は、その他の局面において記載される回路の特徴をさらに実装し得る。
【0022】
その他の局面において、上述の局面の集合および部分集合の様々な組み合わせが、提供される。
【0023】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
【0024】
(項目1)
無線通信デバイスのために無線周波数伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための電子回路であって、
該通信デバイスのために出力信号を生成するための電力増幅器と、
該出力信号のために該電力増幅器の出力端子に接続された回路であって、該回路は、第1のフィルタリングステージ、遅延要素、および調波フィルタを含んでいる、回路と
を備えており、
該遅延要素は、該調波フィルタと該出力端子との間に配置されており、該遅延要素は、該出力信号にタイミング遅延を提供し、
該調波フィルタは、該出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタである、電子回路。
【0025】
(項目2)
上記遅延要素は、0オームのコンポーネントである、項目1に記載の電子回路。
【0026】
(項目3)
上記遅延要素は、上記回路におけるフィルタ要素のコンポーネントに置き換わる、項目2に記載の電子回路。
【0027】
(項目4)
上記調波フィルタは、上記遅延要素が置き換わった上記フィルタ要素を実装する、項目3に記載の電子回路。
【0028】
(項目5)
上記フィルタリングステージは、ノッチフィルタを含んでおり、約5GHzの周波数帯域の信号を減衰させる、項目2〜項目4のいずれか一項に記載の電子回路。
【0029】
(項目6)
上記フィルタリングステージは、ローパスフィルタをさらに含んでおり、約5GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させる、項目5に記載の電子回路。
【0030】
(項目7)
上記遅延要素は、上記フィルタ要素のコンポーネントの代わりにインダクタを利用することにより、上記回路におけるフィルタ要素に置き換わる、項目1に記載の電子回路。
【0031】
(項目8)
上記回路は、印刷回路基板「PCB」上に実装されており、上記遅延要素は、該PCBにおいて代替的なトラックを含んでおり、該代替的なトラックは、少なくとも1つの0オームのコンポーネントの挿入によって、該回路に選択的に接続され、該トラックと該回路との間の電気的な接続を完成させる、項目1に記載の電子回路。
【0032】
(項目9)
上記回路は、印刷回路基板「PCB」上に実装されており、該回路は、キャパシタをさらに含んでおり、上記電力増幅器を該増幅器のためのバッテリーに接続している電力接続回路のPCB内のトラックにおいて、該電力増幅器からの信号の伝送を低減させる、項目1に記載の電子回路。
【0033】
(項目10)
上記キャパシタの組は、ハイフィルタチョークと上記電力増幅器との間の上記電力接続回路に配置されている、項目9に記載の電子回路。
【0034】
(項目11)
上記キャパシタの組は、ローパスフィルタを提供し、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させる、項目10に記載の電子回路。
【0035】
(項目12)
上記キャパシタの第2の組は、上記ハイフィルタチョークとバッテリーとの間の上記電力接続回路に配置されている、項目10または項目11に記載の電子回路。
【0036】
(項目13)
上記キャパシタの第2の組は、ローパスフィルタを提供し、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させる、項目12に記載の電子回路。
【0037】
(項目14)
上記回路上の入力ポイントは、上記電力増幅器の出力の電力およびインピーダンスの特性に適応するように、同調される、項目9〜項目13のいずれか一項に記載の電子回路。
【0038】
(項目15)
上記回路は、印刷回路基板「PCB」上に実装されており、上記遅延要素は、該PCBにおけるトラックであり、該トラックは、十分な長さを有しており、該長さをトラバースする信号に、上記タイミング遅延を提供するために、伝播遅延を提供する、項目1に記載の電子回路。
【0039】
(項目16)
無線通信デバイスのために、無線周波数伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための方法であって、
該出力信号に対して第1のフィルタリングステージを提供することと、
該第1のフィルタリングステージの後に、該出力信号に対して調波フィルタを提供することと、
該調波フィルタの後に、該出力信号に対して出力ステージを提供することと、
該調波フィルタの前に、該出力信号に対して専用の遅延要素を提供し、該出力信号に対して時間遅延を与えることによって、該出力信号の調波を低減させることと
を包含し、
該調波フィルタは、該出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタである、方法。
【0040】
(項目17)
上記遅延要素は、0オームのコンポーネントである、項目16に記載の方法。
【0041】
(項目18)
上記遅延要素は、上記回路におけるフィルタ要素のコンポーネントに置き換わる、項目17に記載の方法。
【0042】
(項目19)
上記電力増幅器を該増幅器のためのバッテリーに接続している電力接続回路において、該電力増幅器からの信号の伝送をフィルタリングすることをさらに含んでいる、項目18に記載の方法。
【0043】
(項目20)
項目1〜項目15のいずれか一項に記載の無線通信デバイスのための無線周波数伝送回路において、電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための電子回路を有している、無線通信デバイス。
【0044】
(摘要)
本発明は、出力信号における調波を減衰させるためのシステムおよび方法に関する。このシステムにおいて、無線通信デバイスのために、伝送回路における電力増幅器からの出力信号の調波を低減させるための電子回路が、提供される。この回路は:印刷回路基板(PCB);出力信号を生成するための電力増幅器;および出力信号のための電力増幅器の出力端子に接続されているPCB上に実装された回路、を含んでいる。この回路は、第1のフィルタリングステージ;遅延要素;および調波フィルタ、を含んでいる。遅延要素は、調波フィルタと出力端子との間に配置されており、遅延要素は、少なくとも1つの0オームと評価されるコンポーネントを介して、出力信号にタイミング遅延を提供する。また、調波フィルタは、出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有しているローパスフィルタである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施形態にしたがう、無線周波数(RF)伝送モジュールを有する電子デバイスの概略図である。
【図2】図2は、特定の内部コンポーネントおよび図1のRF伝送モジュールのブロック図である。
【図3】図3は、図1のデバイスのRF伝送モジュールのブロック図である。
【図4】図4は、図3のRF伝送モジュールの概略図である。
【図5A】図5Aは、従来技術のシステムの電力増幅器の出力に提供されるオリジナルのインピーダンスのスミスチャートである。
【図5B】図5Bは、図3の伝送モジュールに追加される遅延要素を用いて電力増幅器の出力に提供されるインピーダンスのスミスチャートである。
【図6】図6は、図3のRF伝送モジュールに関連する追加的な回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで本発明の実施形態が、図面を参照して、単なる例示のために記載される。
【0047】
(実施形態の説明)
概して、実施形態は、無線デバイスのRF伝送モジュールの出力を制御するためのシステムおよび方法を提供する。特にRF伝送は、それらの基本周波数の近くの出力信号の調波が減衰されるように制御される。実施形態は、RF伝送の出力回路において遅延要素を利用し、RF伝送のための出力信号に対し、それがデバイスのアンテナに提供される前に、タイミング遅延を導入する。以下で分かるように、この遅延は、出力信号の振幅を維持しながらも、出力信号に時間遅延を導入し、これは、出力信号の基本周波数に関連する調波を減衰させる効果を有している。
【0048】
以下の記載および本明細書に記載される実施形態は、本開示の原理の特定の実施形態の(単数または複数の)実施例を例示することによって、提供されている。これらの実施例は、本発明のそれらの原理の例示を目的として提供されており、限定を目的としては提供されていない。以下の記載において、同じ部分は、本明細書および図面にわたって、対応する同じ参照番号を用いてマークされている。
【0049】
実施形態の例示的詳細が、本明細書に提供される。第1に、実施形態を組み込んだデバイスの一般的なコンポーネントに関する記載が提供される。次に、実施形態の回路の例示的な特徴に関するさらなる詳細が提供される。
【0050】
図1は、実施形態にしたがう、ポータブルな電子デバイスの一般的な特徴を提供しており、この電子デバイスは、概して10で示されている。デバイス10は、セル電話を有するエンハンスされたパーソナルデジタルアシスタントの機能を有するコンピューティングプラットフォームに基づいており、無線通信(eメール、SMSおよび音声通信を含む)を受信および送信することができる。電子デバイス10は、その他の電子デバイス(例えば、スマートフォン、デスクトップコンピュータ、テレフォニー装置を有しているページャまたはラップトップ)の構成設計および機能に基づき得る。本実施形態において、電子デバイス10は、ハウジング12、LCD14、スピーカ16、LEDインジケータ18、トラックボール20、ESC(「エスケープ(escape)」)キー22、キーパッド24、イヤーバッド26およびマイクロフォン28から構成される電話ヘッドセットを含んでいる。トラックボール20およびESCキー22は、デバイス10に追加的な入力を提供するための手段として、矢印「A」のパスに沿って、内側に押され得る。ハウジング12は、当業者に想到され得る任意の適切な材料から製造され得、デバイス10の全てのコンポーネントを収容および保持するように適切に形成され得ることに留意されたい。
【0051】
デバイス10のコンポーネントに関するさらなる詳細が提供される。デバイス10は、任意の公知な無線電話システム、例えば、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーション(GSM;Global System for Mobile Communication)システム、符号分割多重アクセス(CDMA;Code Division Multiple Access)システム、CDMA2000システム、セルラデジタルパケットデータ(CDPD;Cellular Digital Packet
Data)システム、および時分割多重アクセス(TDMA;Time Division Multiple Access)システムを用いることにより、無線電話コールを行うように動作可能である。その他の無線電話システムは、Bluetooth(登録商標)および音声をサポートする802.11無線ブロードバンドの多くの形式(例えば、802.11a、802.11b、802.11g等)を含み得る。デバイス10は、クワッドバンド(quad−band)互換性のデバイスであり、800MHz、900MHz、1800MHz、および1900MHzの周波数のブロードキャスト帯域のうちの任意の1つ以上で動作するネットワークとの無線通信能力を提供する。その他の実施形態は、ボイスオーバーIP(VoIP;Voice over IP)タイプのストリーミングデータ通信を含み、これは、回線交換電話コールをシミュレートし得る。イヤーバッド26は、電話コールおよびその他のサウンドメッセージを聴くために用いられ得、マイクロフォン28は、デバイス10に話しかけたり、サウンドメッセージを入力したりするために用いられ得る。
【0052】
図2を参照すると、デバイス10の機能コンポーネントが、概略図200に提供されている。機能コンポーネントは、概して電子的、構造的、または電子機械的なデバイスである。特に、マイクロプロセッサ202は、デバイス10に関連するほぼ全てのデータ、伝送、入力および出力を制御および受信するように提供されている。マイクロプロセッサ202は、キーパッド24およびその他の内部デバイスに接続されるように、概略的に示されている。マイクロプロセッサ202は、好適には、デバイス10およびそのコンポーネントの全体の動作を制御する。マイクロプロセッサ202に対する例示的なプロセッサは、Data950(登録商標)シリーズのマイクロプロセッサ、および6200シリーズのマイクロプロセッサを含み、それら全ては、Intel Corporationから入手可能である。マイクロプロセッサ202は、その様々な入力および出力ピンへの一連の電気的接続を介することにより、デバイス10におけるその他の要素に接続されている。マイクロプロセッサ202は、IRQ入力ラインを有しており、これは、マイクロプロセッサが、様々なデバイスからの信号を受信することを可能にする。適切な割り込みファームウェアが提供され、これは、IRQライン上で検出された信号を受信したり、この信号に反応したりする。
【0053】
マイクロプロセッサ202に加え、デバイス10のその他の内部デバイスが、図2に概略的に示されている。これらは:ディスプレイ14;スピーカ16;キーパッド24;通信サブシステム206;短距離通信サブシステム208;補助I/Oデバイス210;シリアルポート212;マイクロフォン28のためのマイクロフォンポート214;フラッシュメモリ216(これは、データの永続性の格納を提供する);ランダムアクセスメモリ(RAM)218;クロック220、およびその他のデバイスサブシステム(図示されず)を含む。デバイス10は、好適には、音声およびデータ通信能力を有している、双方向の無線周波数(RF)通信デバイスである。加えてデバイス10は、好適には、インターネットを介して、その他のコンピュータシステムと通信する能力を有している。
【0054】
マイクロプロセッサ202によって実行されるオペレーティングシステムソフトウェアは、好適には、コンピュータ読取り可能な媒体(例えば、フラッシュメモリ216)に格納され得るが、その他のタイプのメモリデバイス(例えば、リードオンリメモリ(ROM)または同様の格納要素)にも格納され得る。加えて、システムソフトウェア、特定のデバイスアプリケーション、またはそれらの一部は、揮発性記憶媒体(例えば、RAM218)に一時的にロードされ得る。モバイルデバイスによって受信された通信信号もまた、RAM218に格納され得る。
【0055】
マイクロプロセッサ202は、オペレーティングシステム機能に加えて、デバイス10上のソフトウェアアプリケーションの実行が可能である。一連のソフトウェア(ファームウェア)アプリケーションは、概してアプリケーション222として同定されており、例えば音声通信モジュール222Aおよびデータ通信モジュール222Bのような、基本的なデバイス動作を制御し、製造中にデバイス10にインストールされ得るか、後でデバイス10にダウンロードされ得る。同様に、追加的なソフトウェアモジュール、例えばソフトウェアモジュール222Nは、これは例えば、個人情報マネージャ(PIM)アプリケーションであり得るが、製造中にデバイス10にインストールされ得るか、後でデバイス10にダウンロードされ得る。各アプリケーションに関連するデータは、フラッシュメモリ216に格納され得る。
【0056】
通信機能(データおよび音声通信を含む)は、通信サブシステム206および短距離通信サブシステム208を介して実行される。サブシステム206および208は共に、デバイス10によって処理される全ての通信技術に対して、信号レベルのインターフェースを提供する。様々なアプリケーション222は、通信をさらに処理したり、通信をログしたりするための、動作制御を提供する。通信サブシステム206は、受信器224、送信器226、および1つ以上のアンテナ(受信アンテナ228および送信アンテナ230として示されている)を含んでいる。加えて、通信サブシステム206はまた、処理モジュール、例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)232および局所発振器(LO)234をも含んでいる。通信サブシステム206の特定の設計および実装は、デバイス10が動作することが意図されている通信ネットワークに依存する。例えば、デバイス10の通信サブシステム206は、Mobitex(登録商標)、DataTAC(登録商標)、または汎用パケット無線サービス(GPRS)モバイルデータ通信ネットワークで動作し得、様々な音声通信ネットワークのうちの任意のもの、例えば、先進移動電話サービス(AMPS;Advanced Mobile Phone Service)、時分割多重アクセス(TDMA)、符号分割多重アクセス(CDMA)、CDMA2000、パーソナル通信サービス(PCS;Personal Communication Service)、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーション(GSM)等でも動作し得る。その他のタイプのデータおよび音声(テレフォニーの)ネットワーク(分離型および統合型の両方)もまた、デバイス10と共に利用され得る。いずれにせよ、通信サブシステム206は、インスタントメッセージング(IM;instant messaging)システム、テキストメッセージング(TM;text messaging)システム、およびショートメッセージサービス(SMS;short message service)システムを含む、様々な通信技術を用いることにより、デバイス10に、その他のデバイスとの通信能力を提供する。
【0057】
通信信号を処理することに加え、DSP232は、受信器224および送信器226の制御を提供する。例えば、受信器224および送信器226において通信信号に適用される利得は、DSP232に実装されている自動利得制御アルゴリズムを介して、適応制御され得る。
【0058】
データ通信モードにおいて、受信された信号(例えば、テキストメッセージまたはWebページのダウンロード)は、通信サブシステム206によって処理され、マイクロプロセッサ202に対して入力として提供される。そして受信された信号は、マイクロプロセッサ202によってさらに処理され、そしてこれは、ディスプレイ14または補助I/Oデバイス210に対する出力を生成する。デバイスのユーザはまた、キーパッド24、トラックボール20、および/またはその他のなんらかの補助I/Oデバイス210(例えば、タッチパッド、ロッカースイッチ、トラックボール、またはその他のなんらかの入力デバイス)を用いることにより、データアイテム(例えば、eメールメッセージ)を構成し得る。そして構成されたデータアイテムは、通信サブシステム206を経由して、通信ネットワーク140を介して伝送される。サブシステム206はまた、その遠隔システムに対し、それがいつ通信範囲外に出るかを検出し得る。
【0059】
音声通信モードにおいて、デバイス10の全体の動作は、受信された信号がスピーカ16に出力され、伝送のための信号がマイクロフォン28によって生成されることを除き、実質的にデータ通信モードに類似したものである。代替的な音声またはオーディオI/Oサブシステム(例えば、音声メッセージ録音サブシステム)もまた、デバイス10に実装され得る。加えて、ディスプレイ14もまた、例えば、発呼側の身元、音声コールの継続時間、またはその他の音声コール関連の情報を表示するために、音声通信モードにおいて利用され得る。
【0060】
短距離通信サブシステム208は、デバイス10と、その他の近くのシステムまたはデバイス(これらは、必ずしも同様のデバイスである必要はない)との間の通信を可能にする。例えば、短距離通信サブシステムは、同様にイネーブルにされたシステムおよびデバイスとの通信を提供するために、赤外線デバイスならびに関連する回路およびコンポーネント、あるいはBluetooth(登録商標)通信モジュールを含み得る。示されてはいないが、サブシステム208は、その信号の物理的な伝送を提供するために、送信器226に接続され得る。
【0061】
電源236は、モバイルハンドヘルド通信デバイスの全ての電子素子に電力供給する。一実施形態において、電源236は、1つ以上のバッテリーを含んでいる。別の実施形態において、電源236は、単一のバッテリーパックであり得、特に再充電可能なバッテリーパックであり得る。電力スイッチ(図示されず)は、デバイス10に対する「オン/オフ」スイッチを提供する。電源インターフェース(図示されず)が、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの要素の組み合わせで提供され得、電源236に対するデバイス10におけるコンポーネントのアクセスを選択的に制御する。電源236からの電力は、デバイス10における1つ以上のコンポーネント(送信器226におけるコンポーネントを含む)に対して提供され得る。バッテリー236からの電圧は、デバイス10におけるコンポーネントによるその後の使用のために、デバイス10における電圧レギュレータ(図示されず)に提供され得る。電力スイッチが活性化されると、アプリケーション222は、デバイス10をオン状態にするように始動される。電力スイッチが不活性化されると、アプリケーション222は、デバイス10をオフ状態にするようにイニシエートされる。デバイス10に対する電力はまた、その他のデバイスによって、そしてアプリケーション222によって制御され得る。
【0062】
ここで、デバイス10からのRF伝送を制御するためのシステムおよび方法に関する実施形態の局面について、さらなる詳細が提供される。図3を参照すると、送信器226に関するさらなる詳細が示されている。ここでは、送信器226は、電力増幅器300を含んでおり、これは、RF送受信器310に信号を送信したり、このRF送受信器310から信号を受信したりする。送受信器310を介して、DSP232から送信器226に提供された信号は、最終的にアナログ信号に変換されることになる信号を含んでおり、この信号は変調され、アンテナ230を介して無線信号として伝送される。送信器226からDSP232に提供される信号は、DSP232によって提供される信号の変調に関連する動作信号を含んでいる。送信器226において、DSP232からの信号は、電力増幅器300に提供される。例示的な電力増幅器は、6037R2 Freescale(登録商標)である。背景技術の節に記載されているように、望ましくない無線周波数ノイズの量における1つの要因は、電力増幅器300に対する送信器226の電気的なマッチングである。示されているような電力増幅器300は、送信器226が、増幅器300の出力に対し、約50オームの負荷として現れる場合に、より少ない追加的なノイズを生成し得る。
【0063】
以下のコンポーネントは、増幅器300によって生成された、アンテナ230を介して伝送される出力信号の出力経路に提供される。第1に、電力増幅器300からの未加工の出力(raw output)が、電圧信号を有しているアナログ信号として、フィルタモジュール302に提供され、このフィルタモジュールは、未加工の信号のなんらかの初期的なフィルタリングを提供する。フィルタモジュール302の後、(フィルタされた)信号は、遅延要素304に提供され、この遅延要素は、出力信号の出力レベルを減衰させることなしに、出力信号の時間遅延を機能的に提供する。出力信号が遅延された後、これは、調波フィルタ306に提供される。調波フィルタ306は、出力信号をさらに整形し、所定の周波数範囲の外にある信号をフィルタする。一実施形態において、調波フィルタ306に信号をさらに整形させる前に、遅延要素304によって出力信号を遅延させることは、出力信号における調波の追加的な減衰を提供する。
【0064】
調波フィルタ306の出力は、アンテナマッチングモジュール308に提供され、これは、出力信号に対するなんらかの周波数マッチング回路を提供する。モジュール308からの出力信号は、アンテナ230に提供され、このアンテナは、アナログ信号を無線ラジオ信号に変換し、この変換された信号は、デバイス10からブロードキャストされる。
【0065】
その他の実施形態において、図3に示されているモジュールの異なる配置が提供され得るということに、留意されたい。例えば、フィルタ要素302および遅延要素304は、電力増幅器300の出力からの位置の順序が交換され得る。さらなる例として、調波フィルタ306および遅延要素304における要素は、電力増幅器300の出力からの位置の順序が交換され得る。さらなる追加的なモジュールが提供され得、選択されたモジュールが、送信器226から除去され得る。任意の配置での留意すべき特徴は、遅延要素は、好適には、コンポーネントの連鎖において、調波の実質的なフィルタリングを提供する要素(例えば、調波フィルタ306に提供される回路)の前に、配置され得るということである。
【0066】
図4を参照すると、図3における送信器226のブロック図に示されている要素に関するさらなる詳細が提供されており、概して400で示されている。送信器226の物理的な実装として、そのコンポーネントおよび回路は、典型的には、印刷回路基板(PCB)上に提供される。当該技術分野において公知なように、PCBは、回路のコンポーネントをその上に搭載および固定するための基板を提供する。回路におけるコンポーネントの間の電気的な接続は、接続されたコンポーネントの関係のある端子の間を走っている、PCBに埋め込まれた導電性トラックによって提供され得る。回路のコンポーネントに対し、特定の位置が提供され、これらの位置は、PCB上のシルクスクリーンに任意の回路参照識別子をともなうアウトラインで、しばしば示される。回路のコンポーネントに対する端子と整列させるために、PCBの表面上の導電性パッドが、PCB上に提供される。このパッドは、トラックに対する端子の接触ポイントを提供する。PCB上に回路のコンポーネントを組み立てるとき、製造ラインにおける自動化された「ピックアンドプレイス(pick and place)」挿入機械は、回路に対して関連のあるコンポーネントを積載し得、これらのコンポーネントをPCB上のそれらの所定された位置に挿入するようにプログラムされ得る。回路における一部のコンポーネントは、表面搭載パッケージであり得;その他のものは、スルーホールコンポーネント(through−hole component)であり得;さらに他のコンポーネントは、PCB上の適切な位置への手動の挿入を必要とし得る。コンポーネントは、一連の標準化されたパッケージサイズで提供されるので、異なるサイズのコンポーネントを、回路における意図されたコンポーネントに代えて、その配置することが可能である。
【0067】
図3のフィルタモジュール302は、図4に示されており、電力増幅器300の出力に取り付けられた出力回路に対し、電力およびインピーダンスのマッチングを提供する。回路の入力ポイントのインピーダンスおよび電力の特性の同調は、増幅器の出力の正確な特性とはマッチしないことがあり得る。フィルタモジュールの一部は、ノッチフィルタである。このフィルタは、キャパシタ402、レジスタ404、インダクタ408、およびキャパシタ410を含んでおり、ノッチフィルタを提供し、およそ5GHzの調波を低減させる。キャパシタ402は、モジュール302における別のコンポーネントであり、RFカップリングおよびDCブロッキングのために、増幅器300の出力と直列に配置されている。レジスタ404は、モジュール302における別のコンポーネントであり、電力増幅器のRF安定性のために、接地に対するシャントとして機能している。モジュール302のパーツが実装されて、好適には増幅器300に対して電力およびインピーダンスの信号のマッチングを提供する際、モジュール302のコンポーネントは、増幅器300の出力にできるだけ近くに配置されることが、好適である。
【0068】
ノッチフィルタ406の出力は、遅延要素304に提供される。回路400において、遅延要素304は、回路のテンプレート(template)として、そして第2のローパスフォルタ412として提供されており、ノッチフィルタ406からの出力と直列に配置されたレジスタ414、ならびに接地に対するシャントとして、レジスタ414の各端子に配置されたキャパシタ416および418を含んでいる。遅延要素304の出力は、インダクタ420に提供され、これは、アンテナ430から受信された、遊離(errant)放電に対する静電気保護コンポーネントとして機能し、そのような放電が電力増幅器300に到達することを防止する。したがって、インダクタ420は、アンテナ430にできるだけ近くに配置されることが、好適である。
【0069】
この実施形態に対し、遅延要素304は、選択された電気的に中立な(electrically neutral)コンポーネントによって、ローパスフィルタ412用のコンポーネントに置換することにより、実装される。特に、遅延要素304は、PCBデバイス10におけるレジスタ414の位置に、0オームのコンポーネントを装着(populate)し、キャパシタ416および418の位置にはコンポーネントを装着しないことにより、実装される。したがって、遅延要素304によって提供される遅延は、フィルタ406の出力を0オームのコンポーネントを介しインダクタ420に接続しているデバイス10のPCB上のトラックを、出力信号がトラバースするのに要する伝播時間である。一実施形態において、0オームのレジスタに対する物理的なパッケージは、「0402」サイズのコンポーネントである。以下に記載されるように、0オームに定められた任意のコンポーネント(0オームのコンポーネント、および特定の実装において、デバイス10のPCBに特別に実装されたトラックを含む)は、デバイス414の位置において用いられ得るということに、留意されたい。その他の実施形態において、遅延要素304は、インダクタ426とスイッチコネクタ422との間に配置されるように、移動され得る。その他の実施形態において、遅延要素304(またはそれの均等物)は、増幅器300の出力とフィルタ424(またはそれの均等物)の入力との間の、任意の位置に配置され得る。
【0070】
その他の実施形態において、遅延の時間の長さは、PCBにおける電力増幅器300とフィルタ304との間の接続におけるトラックの長さを、事実上低減させることによって、短くされ得る。その他の実施形態において、遅延の長さは、PCBにおける電力増幅器300とフィルタ304との間の接続におけるトラックの長さを、事実上増加させることによって、長くされ得る。トラックの長さを長くすることは、一連の0オームのレジスタをトラックに配置することにより、事実上達成され得る。さらに、異なる0オームのレジスタは、異なる信号のタイミング伝播特性を有し得、これは、要素304における遅延のタイミングの一部として、用いられ得る。一部の実施形態において、0オームのレジスタに代えて、または0オームのレジスタに加えて、インダクタを挿入することが可能であり得る。インダクタの使用は、一般に、出力信号の位相を変化させる。したがって、インダクタの使用は、遅延要素304に対する異なる回路およびタイミングパラメータに対して、適切であり得る。
【0071】
その他の実施形態において、遅延は、ローパスフィルタ412のコンポーネントに装着されたローパスフィルタを機能させることによって、提供され得る。ローパスフィルタを機能させることは、出力のパラメータによって必要とされる、ローパスフィルタの一部を電力増幅器300に提供するように設計され得る。そのように機能するローパスフィルタの使用は、出力信号の位相に影響し得る。その他の実施形態においては、特定の動作パラメータを有するハイパス、バンドパス、またはノッチフィルタを用いることによって、フィルタ412にコンポーネントを装着することが、可能であり得る。
【0072】
なおもさらに、その他の実施形態において、追加的なトラックまたは回路が、PCB上に提供され得、遅延要素304の信号経路に選択的に架橋され得る。例えば、分離した並列のトラックが、第1のギャップ接続ポイント(レジスタ414およびキャパシタ418に対する共通端子の物理的接合部において、またはその近くに存在)および第2のギャップ接続ポイント(レジスタ414およびキャパシタ416に対する共通端子において、またはその近くに存在)と共に、PCBに提供され得る。接続ポイントのギャップは、各ポイントにおいて、0オームのレジスタを装着することによって、架橋され得る。分離した並列のトラックはまた、追加的な回路網、またはそこに提供されるそのような回路網に対するパッドをも有し得る。あるいは、並列のトラックの1つの端部は、1つの接合ポイントに接続され得、並列のトラックの別の端部は、別の接合ポイントへのギャップ接続ポイントを有し得る。あるいはまたは加えて、特定のトラックは、送信器226の回路における任意のコンポーネントの間の接続ポイントの一部として、PCBに存在し得、これは、トラックの長さをトラバースする電圧に対し、公知の信号の伝播遅延を与える、これによって、上述のような遅延要素またはそれの均等物によって提供された遅延と同程度の遅延を与える。トラックは、遅延要素に対して上述されたように、調波フィルタの前のコンポーネントの間の任意の適切な位置に配置され得る。
【0073】
遅延要素304から次の、出力調波フィルタ306のステージは、スイッチコネクタ422および調波フィルタ306から構成されている。スイッチコネクタ422は、出力信号が、調波フィルタ306への道程で、このスイッチコネクタをトラバースするときに、この出力信号に対して、追加的な遅延を提供し得る。スイッチコネクタは、スイッチをその通常の「閉」状態から選択的に「開く」ためのデバイスとして用いられ、テスト、製造、または修理の間に、デバイスの出力のRF信号の測定を可能にする。調波フィルタ306は、インダクタ426およびキャパシタ428から構成された、ローパスフィルタ424である。キャパシタ428は、インダクタ426の各端子に配置され、それらは各々、接地に対するシャントを提供する。ローパスフィルタ424の出力は、フィルタ306の出力であり、アンテナコネクタ430に提供される。実施形態において、ローパスフィルタは、DCから2GHzの帯域幅を提供する。これは、DCS帯域(1747MHz)およびPCS帯域(1880MHz)における信号の2次および3次の調波を表す、3.4GHz以上の調波を減衰させるために用いられる。
【0074】
図4における要素の特定の値は、様々な周波数を同調させることによって、様々な周波数における信号が通過することを可能にするように、あるいは選択された周波数範囲における信号を減衰させるように、選択されるということに、留意されたい。
【0075】
その他の実施形態において、様々なPCBトラックが、送信器226の出力回路におけるコンポーネントに対して、提供され得る。したがって、遅延要素304は、専用の較正された遅延コンポーネントによって置換され得、キャパシタ416および418に対するパッドは、排除され得る。
【0076】
図5Aは、従来技術のRF伝送回路の実および虚の出力成分のスミスプロットを示している。図5Bは、図4の回路からの実および虚の出力成分のスミスプロットを示している。図5Aと比較すると、図5Bにおけるチャートは、2.472GHz(これは、824MHzの3次の調波である)におけるマーク5の位置が、遅延要素によって顕著に変化したことを示している。
【0077】
図6を参照すると、概略図600は、電力増幅器300の近くの追加的なフィルタリングコンポーネントを示している。上述の背景技術の節に記載されているように、無線周波数伝送の望ましくない根源は、PCB上の接続トラックを介して、電力増幅器300からその供給バッテリーに放出される、漏出伝送である。フィルタは、これらの望ましくないノイズ伝送を低減させることを助けることによって、バッテリー(例えば、バッテリー236)を介する電力増幅器300の出力信号に課されるノイズおよび追加的な調波の量を低減させる。一実施形態の動作パラメータに対して、フィルタリングは、2GHz以上の信号を減衰させるように設定され得る。
【0078】
電力増幅器300は、送受信器によって提供されたRF信号を用いることにより、出力信号を生成する。増幅器300に対する供給電圧は、バッテリー236から発生する。2つの電源、すなわちVBat信号602およびVReg信号604が、提供される。VBatは、高電流であり、3.8ボルトDCの電源である。VRegは、デバイス10における内部電圧レギュレータ(図示されず)に入力される、低電流の電圧であり、2.7ボルトDCの電源である。
【0079】
VBat信号602は、増幅器300に提供され、フェライトビーズ606を介することにより、増幅器300に対する低帯域(LB)および高帯域(HB)の電力入力ピンに対する、最終の電圧入力端子およびドライバーの電圧入力端子に提供される。ビーズ606は、高エネルギーのチョーク(choke)を提供し、増幅器300からVBatに流出する高周波数の信号を吸収する、インダクタである。任意の均等な高周波数のチョークもまた、用いられ得る。ファライトビーズ606は、VBat604と電力増幅器300との間の各電力トラックにおいて、直列に配置される。ビーズ606Aは、HB電力信号とVBatとの間に配置される。バッテリーをLB電力ラインに接続するPCBトラックにおいて、ビーズ606Bおよび606Cの組は、回路において並列に配置され得、提供されるフィルタリングの量を増加させ得る。
【0080】
また、キャパシタ608Aおよび608Bの組は、ビーズ606の出力と増幅器300の入力ピンとの間に配置される。キャパシタ608Aは、0.01μFおよび1000pFである。キャパシタ608Bは、33pFおよび0.01μFである。キャパシタ608Aおよび608Bは、増幅器300から漏洩するフィードバック調波をフィルタし、最終的にVBat信号602を増幅器300に接続する、PCBのトラックに沿って放出する。
【0081】
キャパシタ610は、10pFの公称値を有しており、ビーズ606の入力端子とVBat信号602との間で、ビーズ606の入力側に配置される。キャパシタ610はまた、増幅器300からの無線周波数の調波をフィルタするようにも機能する。
【0082】
キャパシタ612は、100μFの公称値を有しており、同じトラック上で、キャパシタ610の近くに配置される。その比較的大きな値は、増幅器300からの2次の調波をフィルタするように選択される。
【0083】
その他の実施形態において、図4および図6に示されているキャパシタに対するその他のフィルタ回路およびその他の値が提供され得るということに、留意されたい。フィルタに対する目的の周波数は、目的の基本伝送周波数およびその調波に依存して、変更され得る。しかしながら、示されている回路に対して、それらのフィルタは、記載されているデバイス10が、クワッドバンドの通信を提供するように、およそ2GHzの帯域幅の範囲で動作するように設計され、デバイス10は、800MHz、900MHz、1800MHz、および/または1900MHzの周波数帯域の任意の伝送の近くで生成される、2次、3次、4次、およびその他の調波を生成し得る。その他の伝送帯域および/またはその他の調波に対して、その他のフィルタリングシステムが提供され得るということに、留意されたい。
【0084】
その他の実施形態において、出力信号の調波を減衰させる方法は、本明細書における回路に記載されたフィルタリングおよび遅延コンポーネントと互換性のある、フィルタリングおよび遅延ステップを実行することによって、提供され得る。
【0085】
本発明は、請求の範囲と共に、本発明の実施形態を単に例示している上述の記載によって、規定される。当業者は、本明細書には明示的に議論されていないが、請求の範囲によって規定されている、本発明の範囲から逸れることなしに、上述の実施形態の特定の変更を構想し得る。
【符号の説明】
【0086】
226 送信器
232 デジタル信号プロセッサ(DSP)
236 電源
300 電力増幅器
302 フィルタ要素
304 遅延要素
306 調波フィルタ
308 アンテナマッチングモジュール
310 無線送受信器
402、410、416、418、428、430 キャパシタ
404、414 レジスタ
406 ノッチフィルタ
408、420、426 インダクタ
412、424 ローパスフィルタ
422 スイッチコネクタ
430 アンテナコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信デバイスの電力増幅器からの無線周波数信号の漏出を低減するための電子回路であって、
前記電力増幅器は、バッテリーにより給電され、
前記回路は、
印刷回路基板(PCB)であって、前記PCBの上に前記電力増幅器が搭載されている、PCBと、
前記PCB内の第1の電気トラックであって、前記電力増幅器の電力入力端子に接続する第1の電気トラックと、
前記第1の電気トラックおよび前記PCB内の接地基準に接続された第1のキャパシタであって、前記第1のキャパシタは、前記電気トラックにおいて前記電力増幅器の前記入力端子からの無線周波数信号の伝送を低減する、第1のキャパシタと
を備える、電子回路。
【請求項2】
前記第1の電気トラックおよび前記第1のキャパシタに接続する第1の接続と、前記バッテリーに接続する第2の接続とを有する第1のハイフィルタチョークをさらに備える、請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記第1のキャパシタは、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させるローパスフィルタを提供する、請求項1または2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記第1のキャパシタは、0.01μFまたは1000pfのキャパシタンスを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記入力端子と第1のハイフィルタチョークとの間において前記第1の電気トラックに接続された第2のキャパシタをさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第1の電気トラックは、前記電力増幅器の高帯域電力入力端子に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項7】
前記バッテリーとハイフィルタチョークとの間に第3のキャパシタが接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記第3のキャパシタは、2GHzの周波数帯域以上の信号を減衰させるローパスフィルタを提供する、請求項7に記載の電子回路。
【請求項9】
前記電力増幅器の低帯域電力入力端子に接続された第2の電気トラックと、
前記第2の電気トラックに接続された第4のキャパシタと
をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項10】
前記第4のキャパシタは、0.01μFまたは33pfのキャパシタンスを有する、請求項9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記第2のトラックに接続された第5のキャパシタをさらに備える、請求項9または10に記載の電子回路。
【請求項12】
前記第2の電気トラックおよび前記第2のキャパシタに接続する第1の接続と、前記バッテリーに接続する第2の接続とを有する第2のハイフィルタチョークをさらに備える、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項13】
前記電力増幅器の出力端子に接続されたフィルタリングステージと、
前記出力信号の1次の調波を減衰させる周波数カットオフポイントを有するローパスフィルタを提供する調波フィルタと、
前記フィルタリングステージと前記調波フィルタとの間に配置された0オームコンポーネントであって、前記電力増幅器からの出力信号を遅延させる0オームコンポーネントと
をさらに備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の電子回路を備える通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−155677(P2011−155677A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59946(P2011−59946)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2008−10689(P2008−10689)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(500043574)リサーチ イン モーション リミテッド (531)
【氏名又は名称原語表記】Research In Motion Limited
【住所又は居所原語表記】295 Phillip Street, Waterloo, Ontario N2L 3W8 Canada
【Fターム(参考)】