説明

電子デバイスのためのヘテロピレン系半導体材料

有機半導体薄膜材料を含む有機半導体材料の薄膜層を開示する。当該薄膜材料は、実質的にヘテロピレン化合物又は誘導体を含む。一つの態様としては、薄膜トランジスタは当該有機半導体材料の層を含む。さらに、好ましくは、基板上への相対的に低温度の昇華、又は溶液相堆積によって、有機薄膜トランジスタデバイスの製作方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス内の半導体材料、例えば電子デバイスのための薄膜トランジスタ内の半導体材料として、ヘテロピレン化合物を使用することに関する。本発明はまた、このようなトランジスタ及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)は、電子装置、例えばアクティブ・マトリックス液晶ディスプレイ、スマートカード、及び種々の他の電子デバイス並びにこれらの構成部分におけるスイッチング素子として、幅広く使用される。薄膜トランジスタ(TFT)は、電界効果トランジスタ(FET)の一例である。FETの最もよく知られている例は、MOSFET(金属酸化膜半導体−FET)であり、これは高速用途のための今日のコンベンショナルなスイッチング素子である。目下のところ、たいていの薄膜デバイスは、半導体として非晶質シリコンを使用して形成される。非晶質シリコンは、結晶質シリコンに対する低廉な代替物である。この事実は、大面積用途におけるトランジスタのコスト削減のために特に重要である。しかしながら、非晶質シリコンの用途は、比較的低速のデバイスに限られる。それというのもその最大移動度(0.5〜1.0cm2/Vsec)が、結晶質シリコンの約1000分の1の小ささであるからである。
【0003】
非晶質シリコンは、TFTにおける使用に際して高結晶質シリコンよりも低廉ではあるが、非晶質シリコンは依然としてその欠点を有している。トランジスタの製造中における非晶質シリコンの堆積は、ディスプレイ用途にとって十分な電気的特性を達成するために比較的コストの高いプロセス、例えばプラズマ支援型化学気相堆積及び高い温度(約360℃)を必要とする。このような高い処理温度は、可撓性ディスプレイのような用途で使用するのに望ましいはずの特定のプラスチックから形成された基板を、堆積のために使用するのを許さない。
【0004】
過去10年間、TFTの半導体チャネルにおいて使用するための無機材料、例えば非晶質シリコンの代わりになり得るものとして、有機材料が注目を集めている。有機半導体材料、特に有機溶剤中に可溶性である材料はより処理しやすく、従ってこれらの材料は、はるかに低廉な方法、例えばスピン塗布、浸漬塗布、及びマイクロコンタクト印刷によって大きな面積に適用することができる。さらに有機材料は、より低い温度で堆積させることができ、プラスチックを含む広範囲の基板材料を、可撓性電子デバイスのために利用可能にする。従って、有機材料から形成される薄膜トランジスタは、製作しやすさ、及び/又はあまり高くない作業温度が重要な考慮事項となり、そして/又は製品の機械的フレキシビリティが望ましいプラスチック回路もしくはデバイスの潜在的主要技術と見なすことができる。
【0005】
有機半導体材料は、0.01cm2/Vsを十分に超える有意な移動度、及び1000を超える電流オン/オフ比(以後「オン/オフ比」と呼ぶ)を、その多くが必要とする電子構成部分において、スイッチング素子及び/又は論理素子を提供するためにTFT内に使用することができる。このような特性を有する有機TFTは、電子用途、例えばディスプレイのための画素ドライバ、識別タグ、ポータブル・コンピュータ、ポケットベル(登録商標)、トランザクション・カード内のメモリー素子、電子サインなどのために使用することができる。
【0006】
TFTにおける潜在的な半導体チャネルとして使用するための有機材料が、例えば“Thin-Layer Field-Effect Transistors with MIS Structure Whose Insulator and Semiconductors Are Made of Organic Materials”と題される米国特許第5,347,144号明細書(Garnier他)に開示されている。
【0007】
有機半導体として種々様々な材料が考えられており、最も一般的なのは、テトラセン及びペンタセン等の縮合アセン類、チオフェン又はフルオレン単位を含有するオリゴマー材料、並びにレジオレギュラー型ポリ(3−アルキルチオフェン)のようなポリマー材料である。ポリマーは、溶液から塗布することができるが、デバイス性能は、高真空蒸着によって調製された整列薄膜と比較すると劣る。
【0008】
有機半導体のアセン・クラスの中では、5つの縮合ベンゼン環を有するペンタセンが、このクラスの主力であり、3.3cm2-1-1もの高さの正電荷キャリヤ移動度(p型)(Kelly, T. W.; Boardman, L. D.; Dunbar, T.D.; Muyres, D.V.; Pelleriate, M.; Smith, T. P., J. Phys. Chem. B2003, 107, 5877-5881)、108を超えるオン/オフ電流比(Knipp, D.; Street, R. A.; Voelkel, A.; Ho, J., J. Apply. Phys. 2003, 93, 347-355)、及び0.5V未満の閾値下電圧(Klauk, H.; Halik, M.; Zshieschang, U.;Schmid, G.;Radlik, W.; Weber, W., J. Appl. Phys. 2002, 92, 5259-5263)がペンタセン系トランジスタに関して報告されている。これらの値は、非晶質シリコン系デバイスのものに匹敵するか又はこれらよりも優れている。
【0009】
ペンタセンは、改善された性能、具体的には溶解度、組織固着基、及び電子的改質を求めて、広範囲に調べられ、改質されている。ペンタセンの向上した溶解度は、不安定なディールス・アルダー付加物を中心環に付加する(米国特許第2003/0136964号明細書)ことにより、そして不安定でない可溶化基を付加する(2004年2月10日付けでAnthony他に発行された米国特許第6,690,029号明細書)ことにより、達成されている。これらのそして他の戦略が、ペンタセンの溶解度を向上させることができる。しかしながら、無秩序の溶液から又は蒸気相から、整列膜を形成することは、未だに難関である。C. Nuckolls他(J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 15048-15050)は、このジレンマを認識し、メトキシ又はヒドロキシル基でテトラセンの一端を官能化しようとした。非対称に配置されたこれらの固着基は、水素結合誘引を介して誘電体表面に分子を組織化するように意図された。非対称タイプの分子のために、水素結合を凌ぐ他のタイプの表面・分子相互作用を想像することもできた。
【0010】
ペンタセン構造の電子的及び化学的な特性(バンドギャップ、HOMO−LUMOレベル、酸化電位)は、例えば、末端環の両方をチオフェン環で置換することによって変えられている(J. G. Laquindanum, H. E. Katz, A. J. Lovinger, J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 664-672)。しかし、アセンの両端にチオフェンを配置することは、シス−トランス混合物を必然的に招く。これに加えて単一端非対称構造の固有の配向性効果は対称アプローチによって失われる。にもかかわらず、代わりの半導体材料が改善をもたらすいくつかの点がある。デバイスのアーキテクチャ、材料の選択、及び基板の粗さは全てデバイス性能に影響を及ぼす。ペンタセン系デバイスの場合、これらの変化は部分的に、いくつかの多形体の存在に起因している(Mattheus, C. C.; de Wijs, G. A.; de Groot, R. A.; Palstra, T. T., M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 6323-6330)。ペンタセン分子の整列状態又は構造秩序は、それぞれの多形体又は結晶相ごとに異なり、そしてこの構造秩序は、デバイスの電子特性を決定する。ペンタセンによって採用される結晶相は、結晶が形成される過程及び条件に依存する。ペンタセンの薄膜形態は、溶剤、例えばイソプロパノール、アセトン又はエタノールに曝すことによって、バルク相に変換することができる(例えばGrundlach他、Appl. Phys. Lett. 200, 74(22) 3302)。
【0011】
加えて、ペンタセンの長期の酸化・熱安定性は、ペンタセン系半導体デバイスの寿命と同様に知られていない。合成及び精製のし易さは、有機半導体の有用性に関して考えられるべきもう1つの要因である。具体的には、可溶性材料は、ペンタセンのような縮合アセンのためには利用できない良く知られた技術である再結晶化又はクロマトグラフィによって精製されることがある。溶液処理技術を用いてデバイスを構成する能力は、低コスト製造法を実現するために潜在的に重要である。そして最後に、所定の範囲の物理特性及び化学特性を有する種々様々な有機半導体材料が特定の用途のために必要となることが考えられる。
【0012】
発光トランジスタ・デバイスにおける潜在的な半導体材料として使用するためのピレン類が、“Pyrene compound and, utilizing the same, light emitting transistor device and electroluminescence device”と題するOyamada他の国際公開第2006057325号パンフレットに開示されている。
【0013】
チエニル置換型ピレンが、薄膜トランジスタにおけるアクティブp型材料として使用されているが、しかしこれは0.0037cm2/Vsという低い移動度、及び極めて高い閾値電圧を示す(Zhang他、in Chemical Communications, 2005, 7, 755-757)。オリゴチオフェンで末端置換されたピレンから成る真空蒸着薄膜が、電界効果トランジスタ内のアクティブ層として使用されているが、しかしこれは1.0-3cm2/Vsという中程度の正孔移動度しか示さない(Journal of Materials Chemistry (2006), 16(24), 2380-2386)。
【0014】
1−イミノニトロキシド・ピレンから成る蒸着膜を用いて製作された薄膜トランジスタは、最大0.1cm2/Vsの移動度を有する、p型特性を示すことが実証されているが、しかしこれは104という劣った電流オン/オフ比を示す(Journal Am. Chem. Soc. (2006), 128(40), 13058-13059)。さらに、この化合物は、化学的に不安定にする有機ラジカルである。
【0015】
上記の点に照らして、我々は、化学的に安定であり、しかも安定且つ再現可能な電気特性を提供する新しい有機半導体が必要であることを認識する。本発明は、有機半導体として有用なヘテロピレン化合物を開示している。本発明の化合物は、信頼性高く調製され、有利には、具体的な材料に応じて、勾配昇華、及び/又は再結晶化、及び/又はクロマトグラフィによって調製される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、例えば薄膜トランジスタにおいて、半導体材料としてヘテロピレン化合物を使用することに関する。
【0017】
1つの態様の場合、本発明は、p−チャネル半導体膜における1,6−ヘテロピレン化合物であって、化合物の1及び6の位置における2つのヘテロ原子が、酸素及び硫黄から成る群から選択され、ヘテロピレン核上の位置のうちのいずれかが任意選択的に置換されていてもよく、該置換基のいずれか2つは結合して環となることができ、飽和環、不飽和環、又は芳香族縮合環となることができる、化合物の使用に関する。
【0018】
このような膜は、膜の形態において、有用な電界効果電子移動度、及び半導体膜の有用な関連特性を呈することができる。このような半導体膜はまた、少なくとも105の範囲のオン/オフ比を提供することができる。
【0019】
本発明の別の態様は、有機薄膜トランジスタにおける、そのようなp−チャネル半導体膜を使用することに関し、そのようなトランジスタは、p−チャネル半導体膜に接続される、離隔された第1及び第2のコンタクト手段を含む。前記第1及び第2のコンタクト手段から所定の間隔を置いて、第3のコンタクト手段を配置することができ、そして前記膜を通る第1のコンタクト手段と第2のコンタクト手段との間の電流を、第3のコンタクト手段に印加される電圧によって制御するように、第3のコンタクト手段が適合される。第1、第2、及び第3のコンタクト手段は、電界効果トランジスタにおけるドレイン、ソース及びゲート電極に相当することができる。
【0020】
本発明の別の形態は、薄膜半導体又はトランジスタの製作方法であって、好ましくは、p−チャネル半導体膜を基板上に昇華又は液相堆積させることにより行われ、堆積中の基板温度が好ましくは250℃以下の温度である、薄膜トランジスタの製作方法に関する。
【0021】
1つの特定の態様の場合、本発明は、ヘテロピレン化合物を含む有機半導体材料から成る薄膜を、薄膜トランジスタ内に含む物品に関する。本発明の1つの態様の場合、有機半導体材料は、下記構造Iによって表されるヘテロピレン化合物を含む:
【0022】
【化1】

【0023】
(上記式中、各Xは独立して、O又はSから選択され、A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素、又は薄膜内での当該化合物の有効な半導体特性と合致する置換基であり、そして該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHのうちのいずれか2つは任意選択的に、該ヘテロピレン核に縮合された非芳香族環を形成することができ、そしてA及びB、並びに/又はE及びFは、任意選択的に、構造I内の該ヘテロピレン核に縮合された芳香族環を形成することができる)。
【0024】
本明細書中に使用される「ヘテロピレン核」又は「ヘテロピレン部分」という用語は、置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHが、不特定の結合又は結合価によって置換されている構造I、II、又はIIIの化合物を意味する。
【0025】
このような化合物の使用は、半導体膜の安定性又は溶液特性、皮膜形成特性、又は半導体膜の処理可能性を改善することができる。加えて、本発明のヘテロピレン化合物は、末端環上の種々多様な性能修正末端置換基A及びEの容易な導入を可能にする。さらに、末端置換基A及びEは、誘電体又は導体表面との相互作用を容易にし、分子内組織化を可能にし、望ましい塗布溶剤中の可溶性を向上させ、又は最終デバイスの安定性を向上させる追加の官能基を含有していてもよい。
【0026】
本発明はまた、薄膜半導体デバイスの製作方法であって、必ずしも下記順序通りではなく、
(a) ヘテロピレン化合物を含む有機半導体材料から成る薄膜を、この有機半導体材料薄膜が0.01cm2/Vsを超えるp型電界効果移動度を示すように、基板上に堆積する工程;
(b) 離隔されたソース電極とドレイン電極とを形成する工程、ここで該ソース電極及び該ドレイン電極は、p−チャネル半導体膜によって分離され、そしてp−チャネル半導体膜と電気的に接続されている;及び
(c) 該半導体材料から離隔されたゲート電極を形成する工程
を含む、薄膜半導体デバイスの製作方法に関する。
【0027】
好ましくは、化合物は、昇華によって又は溶液相堆積によって基板上に堆積され、そして基板は、堆積中に250℃以下、好ましくは100℃以下の温度を有する。
【0028】
本明細書中で、単数形で使用されたものは、「1つ又は2つ以上」の要素の言い換えを意味するために、「少なくとも1つ」と置き換え可能に使用される。
【0029】
薄膜半導体を含む電子構成部分内の層に関連して本明細書中で使用された「上」「上方」及び「下」などの用語は、通常、支持体又は基板の上方の層の順序を意味するが、しかし層がすぐに隣接すること、又は中間の層がないことを必ずしも示すものではない。
【0030】
特に断りのない限り、「置換型」又は「置換基」という用語の使用は、任意の基又は水素以外の原子を意味する。加えて、「基」又は「置換基」という用語が使用されるときには、置換基が置換され得る水素を含有する場合には、置換基の無置換形態だけでなく、置換基が半導体有用性に必要な特性を破壊しない限り、任意の置換基又は基で(最大限可能な数まで)さらに置換され得る範囲の形態をも含むことも意図される。所望の場合、置換基はそれ自体、許容され得る置換基で1回又は2回以上さらに置換されてよい。例えば、アルキル基又はアルコキシ基は、1つ又は2つ以上のフッ素原子で置換することができる。化合物が2つ又は3つ以上の置換基を有する場合には、特に他の定めがない限り、これらの置換基は一緒になって、任意の脂肪族環、不飽和環、又は芳香族環を、置換基間のブリッジ、又はヘテロピレン核と縮合された環として形成してもよい。
【0031】
本発明の上記及びその他の目的、特徴、及び利点は、下記説明及び図面と関連させれば、より明らかになる。図面において、図面に共通の同一又は同様の構成を表すために、可能な場合には同一の符号を使用している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ボトム・コンタクト形態を有する典型的な有機薄膜トランジスタを示す断面図である。
【図2】図2は、トップ・コンタクト形態を有する典型的な有機薄膜トランジスタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の半導体薄膜材料は、例えば薄膜トランジスタなどにおいて有用である。典型的な有機薄膜トランジスタの断面が図1及び図2に示されている。図1は、典型的なボトム・コンタクト形態を示し、図2は、典型的なトップ・コンタクト形態を示す。
【0034】
図1及び図2における各薄膜トランジスタ(TFT)は、ソース電極20、ドレイン電極30、ゲート電極44、ゲート誘電体56、基板28、及びソース電極20をドレイン電極30に接続する膜の形態を成す、本発明において使用される半導体70を含有し、この半導体は、本明細書中に記載された末端チオフェン基を含有する縮合ヘテロピレンを基剤とする化合物のクラスから選択された化合物を含む。
【0035】
TFTが蓄積モード内で動作しているときには、ソース電極20から半導体70内へ注入された電荷は移動可能であり、主に半導体−誘電体界面の約100オングストローム以内の薄いチャネル領域内で、電流はソース電極からドレイン電極へ流れる。A. Dodabalapur、L. Torsi、H. E. Katz, Science 1995, 268, 270を参照されたい。図1の形態の場合、チャネルを形成するためには、電荷をソース電極20から横方向に注入するだけでよい。ゲート電界が存在しない場合には、チャネルは理想的には電荷キャリヤをほとんど有さず、結果として、ソース-ドレイン伝導がないのが理想的である。
【0036】
オフ電流は、ゲート電圧を印加することにより電荷が意図的にチャネル内に注入されてはいないときに、ソース電極20とドレイン電極30との間に流れる電流と定義される。多くの有機半導体にとって典型的であるようなp−チャネル蓄積モードのTFTの場合、オフ挙動は、ゲート−ソース電圧が閾値電圧として知られる特定電圧よりも正である場合に生じる。Sze「Semiconductor Devices--Physics and Technology」John Wiely & Sons (1981)、第438-443頁を参照されたい。オン電流は、適切な電圧をゲート電極44に印加することにより電荷キャリヤがチャネル内に意図的に蓄積されており、そしてチャネルが導電性であるときに、ソース電極20とドレイン電極30との間に流れる電流と定義される。p−チャネル蓄積モードのTFTの場合、このことは閾値電圧よりも負のゲート-ソース電圧で発生する。このことは、ゲートがソースとともに接地に保持されているときにデバイスがオフ・モードにあることを保証する。オンとオフとの切換えは、ゲート電極44からゲート誘電体56を横切って半導体-誘電体界面へ電界を印加してキャパシタを効果的に充電し、そしてこの電界を除去することによって達成される。
【0037】
本発明によれば、本発明において使用される有機半導体材料は、特別な化学物質の下層を必要とすることなしに、周囲条件下で高い性能を示すことができる。
【0038】
本明細書中に記載されたヘテロピレン化合物を含む、本発明の半導体膜は、10-6cm2/Vsを超える、好ましくは0.001cm2/Vsを超えるp型電界効果移動度を示すことができる。
【0039】
加えて、本発明において使用される半導体膜は、少なくとも102、有利には少なくとも105のオン/オフ比を提供することができる。オン/オフ比は、最小ドレイン電流に対する最大ドレイン電流の比である。それというのも、ゲート電圧は5から−50Vまで変化し、そして二酸化ケイ素ゲート誘電体を採用するからである。
【0040】
上記のように、本発明は、下記構造Iによって表されるヘテロピレン化合物を含む有機半導体材料から成る薄膜を含む物品に関する:
【0041】
【化2】

【0042】
(上記式中、各Xは独立して、O又はSから選択され、A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素、又は薄膜内での当該化合物の有効な半導体特性と合致する置換基であり、そして該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHのうちのいずれか2つは任意選択的に、該ヘテロピレン核に縮合された非芳香族環を形成することができ、そしてA及びB、並びに/又はE及びFは、任意選択的に、構造I内の該ヘテロピレン核に縮合された芳香族環を形成することができる)。
【0043】
置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHは好ましくは、置換基が全て水素である化合物と比較して化合物の有効特性に悪影響を及ぼさないように、むしろ有効特性を改善するように選択されている。より好ましくは、全ての置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素、及び炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜6の有機基から選択され、これらの基は、他の原子、例えば酸素、硫黄、窒素、リン、又はフッ素を、しかし好ましくは電子供与基を含有していてもよい。
【0044】
好ましい態様の場合、各Xは独立して、O又はSから選択され、A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素、又は置換型又は無置換型のアルキル、又はアリール、又はアルキルアリール置換基であり、そして任意選択的に、組み合わさるいずれか2つの置換基が、シクロアルキル環又は複数の環を形成していてもよく、そして/又は、AとB、及び/又はDとF、のいずれか2つが任意選択的に、縮合ベンゾ環を形成することができる。
【0045】
2つの好ましい態様が、それぞれ構造II及び構造IIIによって表される:
【0046】
【化3】

【0047】
[上記式中(いずれの構造II及びIIIの場合でも)、A、B、C、D、E、F、G、及びHはそれぞれ独立して、水素、又は構造Iにおけるような置換基であり、そしてこれらの置換基は構造Iにおけるような環又は複数の環を形成していてもよい]。
【0048】
構造I、II、及びIIIの好ましい態様の場合、置換基B、C、D、F、G、及びHは独立して水素、又は置換型もしくは無置換型のアルキル、又はアリール置換基であり、そして置換基A及びEは、構造Iにおけるような有機置換基である。
【0049】
構造I、II及びIIIの別の好ましい態様の場合、置換基C、D、G、及びHは水素であり、そしてA、B、E、及びFは独立して置換基であり、これらの置換基AとB、及び/又は置換基EとFとは、各環において炭素原子5〜7を有する芳香族又は非芳香族縮合環もしくは複数の環を形成することができる。
【0050】
さらに他の好ましい態様の場合、置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素と、種々の有機置換基又は種々の基から選択されていてもよい。1つの好ましい態様の場合、これらの基、特にA、B、E、及びF、殊にA及びEは、酸素含有有機置換基及び/又は炭素含有置換基を含有していてもよい。好ましい酸素含有置換基は、全て置換型又は無置換型の、アルコキシ、アリールオキシ、カルボアルキル(−C(=O)R)、カルボアリール(−C(=O)Ar)、カルボアルコキシ(−C(=O)OR)、カルボアリールオキシ(−C(=O)OAr)を含む。好ましい炭素含有置換基は、全て置換型又は無置換型の、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数6〜20のアルカリール基、ヘテロ原子数が少なくとも1であり炭素原子数が2〜20の複素環式基を含む。他の好ましい酸素含有有機置換基は、全て置換型又は無置換型の、アルキルアリール又はアルキルケトン(−RC(=O)R)又は(−ArC(=O)Ar)を含む。他の好適なA、B、C、D、E、F、G、及びH、特にA、B、E、及びF置換基、殊にA及びEは、例えばハロゲン;シアノ(−CN);ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノカルボニル、スルホンアミド、スルファモイル、スルホ、スルホネート、又はアルキルアンモニウムを含んでよい。さらに、A、B、C、D、E、F、G、及びHから成る下記集合のうちのいずれか2つの員、特に2つの最隣接基は、一緒になって、脂肪族又は不飽和の縮合環(置換基を架橋する環を含む)を形成していてもよく、そしてA、B、E、及びFは任意選択的に、いずれの環の形成も本発明による化合物から成る半導体薄膜の機能を過度に妨害しないことを条件として、芳香族である縮合環であってよい。
【0051】
上述の基のうちの任意の基における置換基の例は、既知の置換基、例えば、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード;ヒドロキシ;アルコキシ、具体的には低級アルキル(すなわち炭素原子数1〜12のもの、例えばメトキシ、エトキシ);置換型又は無置換型アルキル、具体的には低級アルキル(例えばメチル、トリフルオロメチル);チオアルキル(例えばメチルチオ又はエチルチオ)、具体的には炭素原子数1〜12のもののうちのいずれか;好ましくは炭素原子数2〜12の置換型又は無置換型アルケニル(例えばエテニル、プロペニル、又はブテニル);置換型及び無置換型アリール、具体的には炭素原子数6〜20のもの(例えばフェニル);及び置換型又は無置換型ヘテロアリール、具体的にはN,O,又はSから選択された1〜3つのヘテロ原子を含有する5又は6員環を有するもの(例えばピリジル、チエニル、フリル、ピロリル);酸又は酸性塩基;ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシレート、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、スルホンアミド、スルファモイル、スルホ、スルホネート、又はアルキルアンモニウムのような基;及び当業者に知られている他の基を含むことができる。さらに、いずれのアルキル基又はアルキレン基に関しても、言うまでもなく、これらは分枝状又は非分枝状であってよく、そして環構造を含むことができる。
【0052】
本明細書中の構造I、II、又はIIIのうちのいずれかの構造における置換基に関して言及したアルキル基のうちのいずれかの更なる例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、及び同類のものである。アルキル又は他の有機基は、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8、最も好ましくは1〜4であり、そして分枝状又は線状基を含むように意図されている。アルケニル基は、例えばビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、及び同類のものであり得る。アルキニル基は、例えばエチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、及び同種のものであり得る。アリール基は、例えばフェニル、ナフチル、スチリル、及び同種のものであり得る。アリールアルキル基は例えばベンジル、フェネチル、及び同種のものであり得る。
【0053】
本明細書中で電子供与基に言及する際には、これは、“Physical Organic Chemistry”(McGraw-Hill Book Co., NY, 1940)においてL.P. Hammettによって記載されているようなハメット置換基定数(σp, σm)によって、又は“Steric Effect in Organic Chemistry”(Wiley and Sons, NY, 1956)及び他の標準的な有機テキストにおいてR. W. Taftによって定義されたタフト極性置換基定数(σi)によって示すこと又は評価することができる。その後の研究は元の概念及びデータを拡大して精緻化したが、しかし予測及び相関を目的とした場合には、例えば、C. Hansch他、J. Med. Chem., 17, 1207 (1973)に記載されているような化学文献において、σpの標準集合を幅広く利用することができる。好ましくは、電子供与基のσp又はσmは、ゼロ未満、より好ましくは−0.05未満、最も好ましくは−0.1未満である。上記構造I、II、又はIIIにおけるような本発明による構造内の基の電子供与特性を示すために、σp値を使用することができる。
【0054】
有用なヘテロピレン化合物及び誘導体の具体例を、下記式によって示す:
【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

【0059】
本発明において使用される化合物は、文献に開示された方法によって、又は当業者に利用可能な標準的な有機化学技法によって調製することができる。Buisson及びDemersemanは、1,6−ジオキサピレン(Journal of Heterocyclic Chemistry (1990),27(7), 2213-14)の合成を報告した。改善された手順がその後Mortensen他(Acta Chemica Scandinavica (1997),51(6/7)807-809)によって記載された。種々の1,6−ジオキサピレン誘導体の調製はまた、Christensen及び共同研究者によって文書化された(Journal of Organic Chemistry (1991), 56, 7055-7058)。1,6−ジチアピレンの合成は、化学文献に十分に文書化されており、注目すべき貢献は、Morita他によるものである。ここでは親化合物及びヨウ素化誘導体の両方が調製された(Bulletin of the Chemical Society of Japan (2003), 76(1),205-206)。
【0060】
本発明の別の態様は、半導体構成部分及びこのような構成部分を内蔵する電子デバイスの製造方法に関する。1つの態様の場合、基板を用意し、そして上記半導体材料層を基板に適用することができ、この層によって電気コンタクトが形成される。正確なプロセス順序は、所望の半導体成分の構造によって決定される。このように、有機電界効果トランジスタの製造に際して、例えばゲート電極を可撓性基板、例えば有機ポリマー・フィルム上に先ず堆積させ、次いで、ゲート電極を誘電体で絶縁することができ、次いでソース電極及びドレイン電極と、半導体材料層とを上側に適用することができる。このようなトランジスタの構造、ひいてはその製造順序は、当業者に知られた慣用的な形式で変えることができる。従ってこの代わりに、ゲート電極を先ず堆積させ、続いてゲート誘電体を堆積させ、次いで有機半導体を適用することができ、そして最後にソース電極及びドレイン電極のためのコンタクトを半導体層上に堆積させることもできる。第3の構造では、先ずソース電極及びドレイン電極を堆積させ、次いで有機半導体を堆積させ、そして上側に誘電体及びゲート電極を堆積させることもできる。
【0061】
本発明のさらに別の態様の場合、ソース、ドレイン、及びゲートが全て共通の基板上にあることが可能であり、ゲート誘電体は、ゲート電極がソース電極及びドレイン電極から電気的に絶縁されるように、ゲート電極を取り囲むことができ、そして半導体層は、ソース、ドレイン、及び誘電体上に位置決めすることができる。
【0062】
当業者に明らかなように、薄膜トランジスタの上記構成部分間に、他の構造を構成し、そして/又は、中間表面改質層を挿入することができる。
【0063】
製造中、試験中、及び/又は使用中にTFTを支持するために支持体を使用することができる。当業者に明らかなように、商業的な態様のために選択される支持体は、種々の態様を試験又はスクリーニングするために選択される支持体とは異なっていてもよい。いくつかの態様の場合、支持体は、TFTのためのいかなる所要の電気機能も提供しない。このタイプの支持体は、本明細書において「非関与支持体(non-participating support)」と称される。有用な材料は、有機又は無機材料を含むことができる。例えば、支持体は無機ガラス、セラミック・フォイル、高分子材料、充填高分子材料、被覆金属フォイル、アクリル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(ポリ(エーテルエーテルケトン)又はPEEKと呼ばれることがある)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、及び繊維強化プラスチック(FRP)を含むことができる。
【0064】
本発明のいくつかの態様において、可撓性支持体が使用される。これはロール処理を可能にし、ロール処理は連続的に行われることができ、平らな及び/又は剛性の支持体を凌ぐ、規模の経済性及び製造の経済性を提供する。選択された可撓性支持体は好ましくは、直径約50cm未満、より好ましくは25cm未満、最も好ましくは10cm未満のシリンダーの周面に、素手のような低い力によって、歪み又は破断を生じさせずに巻き付けることができる。好ましい可撓性支持体は、それ自体で巻き上げることができる。
【0065】
本発明のいくつかの態様の場合、支持体は任意選択的である。例えば、図2のトップ形態において、ゲート電極44及び/又はゲート誘電体56が、結果として得られたTFTの意図された用途に十分な支持力を提供するときには、支持体は必要とされない。加えて、支持体は一時的な支持体と組み合わせることができる。このような態様において、一時的な目的、例えば製造、搬送、試験、及び/又は貯蔵のために一時的な支持体が望まれる場合、支持体に一時的な支持体を取り外し可能に付着させるか、又は機械的に固定することができる。例えば、可撓性高分子支持体は剛性ガラス支持体に付着させることができ、剛性ガラス支持体は取り除くことができる。
【0066】
ゲート電極は任意の有用な導電性材料であってよい。金属、縮退ドープ型半導体、導電性ポリマー、及び印刷可能材料、例えばカーボンインク又は銀−エポキシを含む、当業者に知られた種々様々なゲート材料も好適である。例えば、ゲート電極は、ドープ型シリコン、又は金属、例えばアルミニウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、タンタル、及びチタンを含んでよい。導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を使用することもできる。加えて、これらの材料から成る合金、組み合わせ、及び多層が有用であってよい。
【0067】
本発明のいくつかの態様の場合、同じ材料がゲート電極機能を提供し、そして支持体の支持機能も提供する。例えば、ドープ型シリコンは、ゲート電極として機能し、そしてTFTを支持することができる。
【0068】
ゲート誘電体は、ゲート電極上に提供される。このゲート誘電体は、TFTデバイスの残りからゲート電極を電気的に絶縁する。こうして、ゲート誘電体は、電気絶縁材料を含む。ゲート誘電体は、2を超える、より好ましくは5を超える誘電定数を有するべきである。ゲート誘電体の誘電定数は、所望の場合には極めて高い、例えば80〜100又はそれ以上であることが可能である。ゲート誘電体に有用な材料は、例えば無機電気絶縁材料を含んでよい。ゲート誘電体は、高分子材料、例えばポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、シアノセルロース、ポリイミドなどを含むことができる。
【0069】
ゲート誘電体にとって有用な材料の具体例は、ストロンチア酸塩、タンタル酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコン酸チタン酸バリウム、セレン化亜鉛、及び硫化亜鉛を含む。加えて、これらの例から成る合金、組み合わせ、及び多層をゲート誘電体のために使用することもできる。これらの材料のうち、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及びセレン化亜鉛が好ましい。加えて、高分子材料、例えばポリイミド、及び高い誘電定数を示す絶縁体も好ましい。このような絶縁体が、米国特許第5,981,970号明細書に論じられている。
【0070】
ゲート誘電体はTFT内に別個の層として提供するか、又は例えばゲート誘電体を形成するためにゲート材料を酸化させることにより、ゲート上に形成することができる。誘電層は、異なる誘電定数を有する2つ又は3つ以上の層を含むことができる。
【0071】
ソース電極及びドレイン電極は、ゲート誘電体によってゲート電極から分離されるのに対して、有機半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の上側又は下側に位置することができる。ソース電極及びドレイン電極は、任意の有用な導電性材料であることが可能である。有用な材料は、ゲート電極に関して上述した材料のうちのほとんど、例えばアルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ポリアニリン、PEDOT:PSS、他の導電性ポリマー、これらの合金、これらの組み合わせ、及びこれらの多層を含む。
【0072】
薄膜電極(例えばゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極)は、任意の有用な手段、例えば物理的蒸着(例えば熱蒸発、スパッタリング)又はインクジェット印刷によって提供することができる。これらの電極のパターン化は、周知の方法、例えばシャドー・マスク、加法的フォトリソグラフィ、減法的フォトリソグラフィ、印刷、マイクロコンタクト印刷、及びパターン塗布によって達成することができる。
【0073】
有機半導体層は、薄膜トランジスタ物品に関して上述したように、ソース電極及びドレイン電極の上側又は下側に提供することができる。本発明はまた、本明細書中に記載された方法によって形成された複数のTFTを含む集積回路を提供する。末端チオフェン基を含有する縮合アセンを基剤とする上記化合物を使用して形成された半導体材料は、任意の好適な基板上に形成することができ、基板は、支持体及び任意の中間層、例えば当業者に知られたものを含む誘電体又は絶縁体材料を含むことができる。
【0074】
本発明の薄膜トランジスタ又は集積回路を形成するプロセス全体を、支持体最大温度約250℃未満、好ましくは約250℃未満、より好ましくは約150℃未満、及びさらにより好ましくは約100℃未満、又は室温付近の温度(約25℃〜70℃)でも、実施することができる。本明細書に含まれる本発明に関する知識を得れば、温度は一般に、支持体、及び当業者に知られた処理パラメータに応じて選択される。これらの温度は、伝統的な集積回路及び半導体の処理温度を十分に下回る。このことは、種々の比較的低廉な支持体、例えば可撓性高分子支持体のいずれかを使用することを可能にする。こうして、本発明は、有意に改善された性能を有する有機薄膜トランジスタを含有する比較的低廉な集積回路の製造を可能にする。
【0075】
本発明において使用される化合物は容易に処理することができ、そして例えばこれらを蒸発させ得る程度に熱安定である。これらの化合物は有意な揮発度を有しているので、所望の場合には気相堆積が容易に達成される。このような化合物は、真空昇華によって、又は、浸漬塗布、ドロップ・キャスティング、スピン塗布、ブレード塗布を含む溶剤処理によって基板上に堆積させることができる。
【0076】
急速昇華法による堆積も可能である。このような1方法は、基板と、化合物を粉末形態で保持する供給源容器とを含有するチャンバに、35mtorrの真空を負荷し、そして化合物が基板上に昇華するまで数分間にわたって容器を加熱することである。一般に、最も有用な化合物は整列膜を形成し、非晶質膜はあまり有用でない。
【0077】
或いは、例えば上記化合物は、基板上の堆積のためのスピン塗布又は印刷の前に、まず溶剤中に溶解することもできる。
【0078】
本発明において使用される半導体膜が有用であるようなデバイスは、特に薄膜トランジスタ(TFT)、特に有機電界効果薄膜トランジスタ(TFT)を含む。また、米国特許出願公開第2004/0021204号明細書(Liu)の第13〜15頁に記載されているような、有機p−n結合を有する種々のタイプのデバイス内に、このような膜を使用することもできる。
【0079】
TFT及びその他のデバイスが有用であるような電子デバイスは、例えば、より複雑な回路、例えばシフト・レジスタ、集積回路、論理回路、スマートカード、メモリー・デバイス、ラジオ周波数識別タグ、アクティブ・マトリックス・ディスプレイのためのバック平面、アクティブ・マトリックス・ディスプレイ(例えば液晶又はOLED)、太陽電池、リング・オシレータ、及び相補回路、例えばインバータ回路を、例えば入手可能なn型有機半導体材料を使用して形成されたその他のトランジスタとの組み合わせにおいて含む。アクティブ・マトリックス・ディスプレイの場合、ディスプレイの画素の電圧保持回路の一部として、本発明によるトランジスタを使用することができる。本発明のTFTを含有するデバイスの場合、このようなTFTは、当業者に知られた手段によって、作用接続される。本発明はさらに、上記電子デバイスのいずれかの製造方法を提供する。このように本発明は、上記TFTのうちの1つ又は2つ以上を含む物品内で具体化される。本発明の薄膜半導体材料は、OLEDを含むその他のデバイス及び光起電デバイスにおいて、これらの半導体特性のために使用することもできる。
【実施例】
【0080】
一例であることが意図される下記例によって、本発明の利点を実証する。
【0081】
A. 材料
本発明において使用される化合物は、概ね上記のように、文献に開示された方法によって、又は当業者に利用可能な標準的な有機化学技法によって調製することができる。
【0082】
シクロヘキシルエステル基を含有する下記1,6−ジオキサピレン化合物(SC−3)を調製し、試験した。
【0083】
【化8】

【0084】
SC−3の合成手順:
SC−3半導体化合物を下記のように調製した。エチル1,6−ジオキサピレン−2,7−ジカルボキシレート(SC−15;CAS 193902−20−4;1.76g、5.00mmol)を、濃硫酸(0.25mL)を含むシクロヘキサノール(50mL)中で7時間にわたって160℃で攪拌した。混合物を周囲温度まで冷却し、そして数体積のキシレン及び塩化メチレンで希釈し、続いて2mLのトリエチルアミンを添加した。混合物全体を真空で濃縮した。キシレンのポーション(3×200mL)を添加し、真空で蒸留することにより、残留シクロヘキサノールを除去した。結果として生じた粗材料をシリカゲルに通し、塩化メチレンで溶出することにより、赤みを帯びたオレンジ色の固形物(1.95g、85%)を提供した。この固形物をプロピオニトリルから再結晶化することにより、赤みを帯びたオレンジ色(1.76g、76%)を提供した。この材料は、クロマトグラフィ的に均質であることが判り、また、その指定構造と合致するスペクトル特性を示した。
【0085】
下記1,6−ジチアピレン化合物(SC−5)を調製し、試験した。
【0086】
【化9】

【0087】
SC−5の合成手順:
SC−5半導体化合物、1,6−ジチアピレン化合物を、事実上Morita他の方法(上記参照)を用いて調製した。
【0088】
下記末端ケトシクロヘキシル基を含有する1,6−ジチアピレン化合物(SC−4)を調製した。
【0089】
【化10】

【0090】
SC−4の合成手順:
SC−4半導体化合物を下記のように調製した。1,5−ジヒドロキシ−ナフタレン−4,8−ジカルボキサルデヒド(CAS 128038−46−0;1.34g、6.2mmol)、2−ブロモ−1−シクロヘキシルエタノン(CAS 56077−28−2;3.67g、17.9mmol)、炭酸セシウム(8.0g、12mmol)、及び50mLのテトラヒドロフランの混合物を4日間にわたって25℃でアルゴン下で攪拌し、次いで18時間にわたって還流させながら攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却し、濾過し、そして濃縮することにより、赤色のペーストを堆積させた。生成物をカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、トルエンとヘプタンとの混合物から再結晶させることにより、標題化合物を精製した。質量及びNMRスペクトルが、指定構造と合致した。
【0091】
下記末端ケトメチルシクロヘキシル基を含有する1,6−ジオキサピレン化合物(SC−15)を調製した。
【0092】
【化11】

【0093】
SC−15の合成手順:
SC−15半導体化合物を下記のように調製した。1,5−ジヒドロキシ−ナフタレン−4,8−ジカルボキサルデヒド(CAS 128038−46−0;1.28g、5.9mmol)、1−ブロモ−3−シクロヘキシル−2−プロパノン(CAS 152757−52−3;3.72g、17.0mmol)、炭酸セシウム(4.8g、15mmol)、及び50mLのテトラヒドロフランの混合物を4日間にわたって25℃でアルゴン下で攪拌し、次いで18時間にわたって還流させながら攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却し、濾過し、そして濃縮することにより、赤色の固形物を堆積させた。生成物をカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、トルエンとヘプタンとの混合物から再結晶させることにより、標題化合物を精製した。質量及びNMRスペクトルが、指定構造と合致した。
【0094】
B. デバイスの調製
本発明の種々の材料の電気特性を試験するために、トップ・コンタクト・ジオメトリーを使用して、電界効果トランジスタを典型的な形式で形成した。使用される基板は、トランジスタのゲートとしても役立つ、重度にドープされたシリコン・ウェハーである。ゲート誘電体は、厚さ185nmの熱成長させられたSiO2層である。
【0095】
ヘテロピレンから成るアクティブ層を、熱蒸発器内で真空蒸着によって堆積させた。堆積速度は1秒当たり0.1オングストロームである一方、基板温度は大抵の試験に関しては22℃に保持した。アクティブ層の厚さはいくつかの試験において種々様々であったが、しかし典型的には17〜20nmであった。厚さ50nmの銀コンタクトを、シャドー・マスクを通して堆積させた。チャネル幅を650ミクロンで保持する一方、チャネル長は50〜150ミクロンで変化させた。他のコンタクト材料の効果を見るために、いくつかの試験を実施した。いくつかのデバイスを、アクティブ材料の前にコンタクトが堆積されるボトム・コンタクト・ジオメトリーで形成した。
【0096】
ゲート電極として役立つ重度にドープされたn−Si上の、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)処理された185nm厚のSiO2誘電体上で、各ヘテロピレン半導体材料から成る薄膜フィルムを蒸発させた。ソース及びドレインとして、金トップ・コンタクトを使用した。精製された半導体材料SC−3を、5×10-7 Torrの圧力及び1秒当たり0.1オングストロームの速度の真空昇華により、石英結晶によって測定して20nmの厚さまで堆積させた。堆積中に基板を一定温度22℃で保持した。短時間にわたって試料を空気に曝露したあと、続いて、シャドー・マスクを通して50nmの厚さまで金(Au)ソース及びドレイン電極を堆積させた。形成されたデバイスのチャネル幅は650ミクロンであり、チャネル長は50〜150ミクロンで変化した。
【0097】
C. デバイス測定及び分析
製作されたデバイスの電気的特徴付けを、HEWLETT-PACKARD HP 4145B(登録商標)パラメータ分析器で実施した。空気中のデバイスの安定性を意図的に試験することを除けば、プローブ測定ステーションは、全ての測定に対して正のN2環境内で保持した。白色光に対する感受性を検査する場合を除いては、測定を硫黄光下で実施した。デバイスを試験前に空気に曝露した。
【0098】
各デバイス毎に、ゲート電圧(Vg)の種々の値に対するソース−ドレイン電圧(Vd)の関数として、ドレイン電流(Id)を測定した。たいていのデバイスの場合、測定されるゲート電圧のそれぞれに対して、Vdを典型的には0から−50Vまで掃引した。この測定のためのゲート電圧は典型的には0から−50Vまで、10V単位のステップ状であった。これらの測定において、デバイスを通る漏れ電流を検出するために、ゲート電流(Ig)も記録した。さらに、各デバイスに関して、ソース−ドレイン電圧の種々の値に対するゲート電圧の関数として、ドレイン電流を測定した。たいていのデバイスの場合、測定されるドレイン電圧のそれぞれに対して、Vgを5Vから−50Vまで、典型的には−30V、−40V、及び−50Vで掃引した。
【0099】
データから抽出されたパラメータは、電界効果移動度(μ)、閾値電圧(Vth)、閾値下勾配(S)、及び測定されたドレイン電流のIon/Ioffの比を含む。電界効果移動度は飽和領域(Vd>Vg−Vth)において抽出した。この領域内では、ドレイン電流は、下記等式によって提供される(Sze“Semiconductor Devices--Physics and Technology”, John Wiely & Sons (1981)参照):
【0100】
【数1】

【0101】
上記式中、Wはチャネル幅、そしてLはチャネル長であり、Coxは酸化物層のキャパシタンスであり、これは、酸化物厚及び材料の誘電定数の関数である。この等式から、飽和電界効果移動度を、√Id対Vg曲線の線形部分に対する直線適合部分から抽出した。閾値電圧Vthは、この直線適合部分のx切片である。移動度は、線形領域(Vd ≦ Vg−Vth)から抽出することもできる。この場合、ドレイン電流は下記等式:
【0102】
【数2】

【0103】
によって提供される(Sze“Semiconductor Devices--Physics and Technology”, John Wiely & Sons (1981)参照)。
【0104】
これらの試験の場合には、線形領域における移動度は抽出しなかった。それというのも、このパラメータはコンタクトにおける注入の問題点によって著しく多くの影響を受けるからである。一般に、低VdにおけるId対Vdの曲線が非線形であることは、デバイスの性能がコンタクトによる電荷の注入によって限られることを示す。所与のデバイスのコンタクトの不完全性とはほとんど無関係な結果を得るために、線形移動度ではなく飽和移動度を、デバイス性能の特性パラメータとして抽出した。
【0105】
ドレイン電流の対数を、ゲート電圧の関数としてプロットした。log Idプロットから抽出されたパラメータは、Ion/Ioff比、及び閾値下勾配(S)を含む。Ion/Ioff比は単純に、最小ドレイン電流に対する最大ドレイン電流の比であり、Sは、ドレイン電流が増大しつつある(すなわちデバイスがオンになりつつある)領域内のId曲線の勾配の逆数である。
【0106】
D. 結果
下記例は、本発明によるヘテロピレンを含む有機薄膜トランジスタ・デバイスが、有用な移動度及びオン/オフ比を有する、p−チャネル半導体材料として挙動することを実証する。飽和領域内で計算された移動度は、0.001〜0.2cm2/Vsであり、オン/オフ比は104〜105であった。改善された性能に加えて、デバイスはまた、優れた再現性を示す。
【0107】
例1
この例は、化合物SC−3から形成されたp型TFTデバイスを実証する。厚さ185nmの熱成長させられたSiO2層を有する重度ドープ型シリコン・ウェハーを、基板として使用した。ウェハーをピラニア溶液中で10分間にわたって洗浄し、続いてUV/オゾン・チャンバ内に6分間にわたって曝露した。次いで、洗浄された表面を、湿度制御環境下でヘプタン溶液から形成されたオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己組織化単分子層で処理した。処理された表面の品質を保証するために水接触角及び層厚を測定した。良好な品質のOTS層を有する表面の水接触角は>90°であり、偏光解析法から測定された厚さは27Å〜35Åであった。
【0108】
精製されたSC−3化合物を、2×10-7Torrの圧力及び1秒当たり0.1オングストロームの速度の真空昇華により、石英結晶によって測定して17nmの厚さまで堆積させた。堆積中に基板を一定温度22℃で保持した。短時間にわたって試料を空気に曝露したあと、続いて、シャドー・マスクを通して50nmの厚さまでAuソース及びドレイン電極を堆積させた。形成されたデバイスのチャネル幅は650ミクロンであり、チャネル長は50〜150ミクロンで変化した。複数TFTを調製し、そして4〜12個のTFTの代表試料を、それぞれの堆積作業に関して試験した。
【0109】
HEWLETT-PACKARD HP 4145B半導体パラメータ分析器を使用してアルゴン雰囲気中で測定する前に、デバイスを空気に曝露した。各トランジスタ毎に、電界効果移動度μを、(ID1/2対VGプロットの勾配から計算した。平均移動度は、飽和領域において0.05cm2/Vsであることが判った。平均オン/オフ比は1×104であり、そして平均閾値電圧は15.1Vであった。こうして調製されたデバイスに関して、最大0.1cm2/Vsの飽和移動度が測定された。
【0110】
例2
この例は、SC−5化合物から形成されたp型TFTデバイスを実証する。厚さ185nmの熱成長させられたSiO2層を有する重度ドープ型シリコン・ウェハーを、基板として使用した。ウェハーをピラニア溶液中で10分間にわたって洗浄し、続いてUV/オゾン・チャンバ内に6分間にわたって曝露した。次いで、洗浄された表面を、湿度制御環境下でヘプタン溶液から形成されたオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己組織化単分子層で処理した。処理された表面の品質を保証するために水接触角及び層厚を測定した。良好な品質のOTS層を有する表面の水接触角は>90°であり、偏光解析法から測定された厚さは27Å〜35Åであった。
【0111】
精製されたSC−5化合物を、2×10-7Torrの圧力及び1秒当たり0.1オングストロームの速度の真空昇華により、石英結晶によって測定して17nmの厚さまで堆積させた。堆積中に基板を一定温度22℃で保持した。短時間にわたって試料を空気に曝露したあと、続いて、シャドー・マスクを通して50nmの厚さまでAuソース及びドレイン電極を堆積させた。形成されたデバイスのチャネル幅は650ミクロンであり、チャネル長は50〜150ミクロンで変化した。複数TFTを調製し、そして4〜12個のTFTの代表試料を、それぞれの堆積作業に関して試験した。
【0112】
HEWLETT-PACKARD HP 4145B半導体パラメータ分析器を使用してアルゴン雰囲気中で測定する前に、デバイスを空気に曝露した。各トランジスタ毎に、電界効果移動度μを、(ID1/2対VGプロットの勾配から計算した。平均移動度は、飽和領域において0.002cm2/Vsであることが判った。平均オン/オフ比は1×105であり、そして平均閾値電圧は17.1Vであった。こうして調製されたデバイスに関して、最大0.1cm2/Vsの飽和移動度が測定された。
【0113】
言うまでもなく、これらの例において、我々はこの新しい材料クラスの半導体特性を実証している。上記例において、我々は、本発明のヘテロピレンがp型半導体挙動を示し、そして正孔を輸送できることを明示した。TFT用途の場合、1×10-6を超える移動度で電荷輸送できる材料が有用と考えられる。さらに、活性トランジスタ材料の移動度は、プロセス最適化によってさらに高い値に最適化することができる。
【0114】
例3
この例は、SC−4化合物から形成されたp型TFTデバイスを実証する。厚さ185nmの熱成長させられたSiO2層を有する重度ドープ型シリコン・ウェハーを、基板として使用した。ウェハーをピラニア溶液中で10分間にわたって洗浄し、続いてUV/オゾン・チャンバ内に6分間にわたって曝露した。次いで、洗浄された表面を、湿度制御環境下でヘプタン溶液から形成されたオクタデシルトリクロロシラン(OTS)の自己組織化単分子層で処理した。処理された表面の品質を保証するために水接触角及び層厚を測定した。良好な品質のOTS層を有する表面の水接触角は>90°であり、偏光解析法から測定された厚さは27Å〜35Åであった。
【0115】
精製されたSC−4化合物を、2×10-7Torrの圧力及び1秒当たり0.5オングストロームの速度の真空昇華により、石英結晶によって測定して40nmの厚さまで堆積させた。堆積中に基板を一定温度22℃で保持した。短時間にわたって試料を空気に曝露したあと、続いて、シャドー・マスクを通して50nmの厚さまでAuソース及びドレイン電極を堆積させた。形成されたデバイスのチャネル幅は650ミクロンであり、チャネル長は50〜150ミクロンで変化した。複数TFTを調製し、そして4〜12個のTFTの代表試料を、それぞれの堆積作業に関して試験した。
【0116】
HEWLETT-PACKARD HP 4145B半導体パラメータ分析器を使用してアルゴン雰囲気中で測定する前に、デバイスを空気に曝露した。各トランジスタ毎に、電界効果移動度μを、(ID1/2対VGプロットの勾配から計算した。平均移動度は、飽和領域において0.25cm2/Vsであることが判った。平均オン/オフ比は1×106であり、そして平均閾値電圧は−5.2Vであった。こうして調製されたデバイスに関して、最大0.5cm2/Vsの飽和移動度が測定された。
【符号の説明】
【0117】
20 ソース電極
28 基板
30 ドレイン電極
44 ゲート電極
56 ゲート誘電体
70 半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物中の1,6位に、酸素及び硫黄から成る群から選択されたヘテロ原子を含む1,6−ヘテロピレン化合物を含む有機半導体材料の薄膜を含む物品であって、該化合物のヘテロピレン芳香核上の位置のうちのいずれかは、置換されていてもよく又は置換されていなくてもよく、該置換基のいずれか2つは結合して環となることができ、飽和環、不飽和環、又は芳香族縮合環となることができる。
【請求項2】
該物品は、誘電層、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を含む薄膜電界効果トランジスタであり、そして該ゲート電極と該有機半導体材料薄膜との両方が該誘電層と接触し、そして該ソース電極と該ドレイン電極との両方が該有機半導体材料薄膜と接触している限り、該誘電層、該ゲート電極、該有機半導体材料薄膜、該ソース電極、及び該ドレイン電極が任意の配列を成している、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
該有機半導体材料薄膜が、下記構造I:
【化1】

(上記式中、各Xは独立して、O又はSから選択され、A、B、C、D、E、F、G、及びHは独立して、水素、又は薄膜内での当該化合物の有効な半導体特性と合致する置換基であり、そして該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHのうちのいずれか2つは任意選択的に、該ヘテロピレン核に縮合された非芳香族環を形成することができ、そしてA及びB、並びに/又はE及びFは、任意選択的に、構造I内の該ヘテロピレン核に縮合された芳香族環を形成することができる)
によって表されるヘテロピレン化合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHが独立して、水素、及び炭素原子数1〜12の有機基から選択され、該基が、酸素、硫黄、窒素、リン、又はフッ素等から成る群から選択された他の原子を含有していてもよく、該有機基が、該ヘテロピレン化合物の有効な半導体特性に過度の悪影響を及ぼさないように選択される、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHがそれぞれ、水素又は置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアルキルアリール置換基であり、そして任意選択的に、組み合わさるいずれか2つの置換基が、シクロアルキル又は不飽和の環もしくは複数の環を形成していてもよく、そして/又は、AとB、及び/又はDとF、のいずれか2つが任意選択的に、縮合ベンゾ環を形成することができる、請求項3に記載の物品。
【請求項6】
該ヘテロピレン化合物が、少なくとも1つの電子供与基で置換されている、請求項3に記載の物品。
【請求項7】
該ヘテロピレン核上の置換基が、存在する場合は、全て電子供与有機置換基である、請求項3に記載の物品。
【請求項8】
該少なくとも1つの電子供与基が、アルキル基である、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記構造内で、A、B、C、D、E、F、G、及びHが独立して、H、CH3、線状もしくは分枝状のC2−C4アルキル、アルケニル、アルコキシ、又は炭素原子数1〜12の他の電子供与有機基から選択されており、該基が、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい、請求項3に記載の物品。
【請求項10】
該ヘテロピレン化合物が、下記2つの構造、構造II及びIII:
【化2】

(上記式中、いずれの構造II及びIIIの場合でも、A、B、C、D、E、F、G、及びHはそれぞれ独立して、水素又は置換基であり、そして該置換基は上記規定の環又は複数の環を形成していてもよい)
のうちの一方によって表される、請求項3に記載の物品。
【請求項11】
前記構造II及びIII内で、置換基B、C、D、F、G、及びHが独立して水素であるか、又は置換型もしくは無置換型のアルキル、シクロアルキル、又はアリール置換基を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記構造II及びIIIにおいて、置換基C、D、G、及びHが水素であり、そしてA、B、E、及びFが独立して置換基であり、該置換基AとB、及び/又は置換基EとFとが、各環において炭素原子5〜7を有する芳香族又は非芳香族縮合環もしくは複数の環を形成することができる、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記構造II及びIIIにおいて、該置換基A、B、C、D、E、F、G、及びHが独立して、水素並びに酸素含有有機置換基及び/又は炭素含有置換基から成る群から選択された有機置換基から選択されることができ、酸素含有置換基は、炭素原子数が1〜12であり、アルコキシ、アリールオキシ、カルボアルキル(−C(=O)R)、カルボアリール(−C(=O)Ar)、カルボアルコキシ(−C(=O)OR)、カルボアリールオキシ(−C(=O)OAr)、アリール又はアルキルケトン(−RC(=O)R)又は(−ArC(=O)Ar)から成る群から選択されており、そして全て置換型又は無置換型であり、Rは、炭素原子数1〜11の置換型又は無置換型アルキル基であり、そしてArは、炭素原子数1〜11の置換型又は無置換型芳香族基であり、そして炭素含有置換基は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数6〜12のアルカリール基、及びヘテロ原子数が少なくとも1であり炭素原子数が2〜12の複素環式基から成る群から選択されており、そして全て置換型又は無置換型であり、任意選択的に、該ヘテロピレン核上の2つの最隣接基は、一緒になって、脂肪族又は不飽和の縮合環を形成していてもよく、そしてA、B、E、及びFは任意選択的に、いずれの環の形成も当該化合物から成る半導体薄膜の機能を過度に妨害しないことを条件として、芳香族である縮合環であってよい、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
該有機半導体材料薄膜が、0.001cm2/Vsを超える電子移動度を示すことができる、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
該薄膜トランジスタのソース/ドレイン電流のオン/オフ比が、少なくとも104である、請求項2に記載の物品。
【請求項16】
該ゲート電極が、該有機半導体材料薄膜を通る該ソース電極と該ドレイン電極との間の電流を、該ゲート電極に印加される電圧によって制御するように適合されている、請求項2に記載の物品。
【請求項17】
該ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極がそれぞれ独立して、ドープ型シリコン、金属、及び導電性ポリマーから選択された材料を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項18】
請求項2に記載の複数の薄膜トランジスタを含む、集積回路、アクティブ・マトリックス・ディスプレイ、及び太陽電池から成る群から選択される、電子デバイス。
【請求項19】
該複数の薄膜トランジスタが、任意選択的に可撓性である非関与支持体上にある、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項20】
薄膜半導体デバイスの製作方法であって、当該方法は、
(a) 請求項1に記載の1,6−ヘテロピレン化合物を実質的に含み、そして0.01cm2/Vsを超える電界効果電子移動度を示すp−チャネル有機半導体材料の薄膜を、基板上に堆積する工程;
(b) 離隔されたソース電極とドレイン電極とを形成する工程、ここで該ソース電極及び該ドレイン電極は、p−チャネル半導体膜によって分離され、そして該p−チャネル半導体膜と電気的に接続されている;及び
(c) 該有機半導体材料から離隔されたゲート電極を形成する工程
を必ずしも上記順序通りではなく含んで成る。
【請求項21】
前記化合物が、昇華によって、又は溶液相堆積によって該基板上に堆積され、そして該基板が、堆積中に250℃以下の温度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a) 基板を用意する工程;
(b) 該基板上にゲート電極材料を提供する工程;
(c) 該ゲート電極材料上にゲート誘電体を提供する工程;
(d) 該ゲート誘電体上に、p−チャネル有機半導体材料薄膜を堆積させる工程;
(e) 該p−チャネル有機半導体材料薄膜に隣接して、ソース電極及びドレイン電極を提供する工程
を必ずしも上記順序通りではなく含んで成る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記各工程が、請求項22に記載の順序で行われ、そして該基板が可撓性である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該方法が、全体として100℃のピーク温度未満で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法によって製造された複数の薄膜トランジスタを含む集積回路。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−531551(P2010−531551A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514757(P2010−514757)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/007386
【国際公開番号】WO2009/002405
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】