説明

電子レンジ加熱用容器及び電子レンジ加熱用包装食品

【課題】 電子レンジで主食材と副食材を均一に加熱でき、出来立てと同様の風味と食感が得られる電子レンジ加熱用包装食品とその包装容器の提供。
【解決手段】 熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器2と、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する内容器3とが、開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器と、該二重容器内に着脱自在に載置された中皿4と、前記内容器に嵌合する蓋5とからなる電子レンジ加熱用容器1。この内容器に主食材を、中皿に副食材をそれぞれ収容し、内容器に蓋を嵌着し包装してなる電子レンジ加熱用包装食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなる内容器とを組み合わせた二重容器と、内容器に着脱自在に載置された中皿と、内容器に嵌合される蓋とからなる電子レンジ加熱用容器と、該内容器と中皿に食品を収容し包装した電子レンジ加熱用包装食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯や麺類等の主食材と汁を含む惣菜やたれなどの副食材を一つの容器に入れて電子レンジ加熱する形態の包装食品は、副食材から出る汁分が主食材に染み込んだり、ふやけたりして調理後の食感が悪くなったり、或いは副食材の昇温が不均一・不十分となる等の問題がある。
この問題を解消するため、従来、主食材と副食材とを分離して収容する形態の容器が種々提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0003】
しかし、特許文献1〜4に開示されている容器は、いずれも単層の容器なので、電子レンジ加熱すると内部の食品の熱が伝わり、容器が熱くなり手で持てなくなる問題がある。これは、容器を樹脂発泡体で製造することによって一応解消されるが、麺類などの熱いまま食する食品では内容物の重さで変形することがある、長時間加熱により熱くなるなどの問題があり、十分ではない。
【0004】
また、電子レンジ加熱用の二重容器も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
特許文献5に開示された容器は、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂を成形した二重容器であり、内容器の口部を折り返して形成したテーパー状のカラー部と外容器の口部に形成したテーパー状のカラー部とを突き合わせ、外容器に内容物の熱が伝わり難くすると共に、内容器を支えて内外容器に間隙を形成した二重容器である。
【特許文献1】特許第2779105号公報
【特許文献2】実開平5−13184号公報
【特許文献3】特開平9−51767号公報
【特許文献4】特開2004−189285号公報
【特許文献5】特開平11−56621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献5に開示された二重容器は、内容物の重量で口部が内側に撓みやすく、さらに、電子レンジ加熱により、内容器の壁から熱を受けた内・外容器間の空間の空気が対流により口部に至り、前記撓みを助長する結果、内容器の垂下を十分に防ぐことができなかった。
この結果、外容器が特に底部で熱くなるため、容器を片手で持ち難く、また、手で持った時に軟化・変形し、内容物がこぼれたりする等の問題を解決するに至っていない。
また、特許文献5に開示された二重容器は、容器口部の断面形状が裾広がりであったり、容器側面上部外周に大きな膨らみがあるなど、それ自体を食器として使用することは考慮されていない。
更に、この容器には中皿に相当するものがないので、主食材と副食材が直接接触するため、電子レンジ加熱時に主食材が汁を吸収してふやけたりして食感が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、電子レンジで主食材と副食材を均一に加熱でき、主食材が副食材の汁分を吸収してふやけたり、食感が落ちるなどの問題を解決し、出来立てと同様の風味と食感をもった電子レンジ加熱用包装食品とその包装容器の提供を目的とする。
また本発明は、加熱したくない食材(薬味、漬物、デザートなど)を除いて加熱できる電子レンジ加熱用包装容器の提供を目的とする。
また本発明は、熱いうちに食する麺類などの食品を十分に加熱しても容器が熱くなったり、軟らかくなったりせず、安定して手で持てる電子レンジ加熱用包装容器の提供を目的とする。
また本発明は、輸送・補完に冷凍設備が不要で、加熱時間が短い電子レンジ加熱用包装食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器と、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する内容器とが、開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器と、該二重容器内に着脱自在に載置された中皿と、前記内容器に嵌合する蓋とからなることを特徴とする電子レンジ加熱用容器を提供する。
【0008】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、熱可塑性樹脂発泡成形体からなり、開口部を外側に向け屈曲させて形成された鍔部を有する外容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなり、開口部を外側に向け屈曲させて形成されたフランジ部と、該フランジ部より先端側を上側に向けて立ち上げ、さらに断面が逆U字状又は逆V字状に折り返して形成された口部と、該口部の先端側を前記フランジ部より下方まで垂下させるとともに、一部を開口部内側方向に膨出させた係止部を持つ垂下部とが形成された内容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなり、側壁部および底部を有し、前記内容器内に載置される中皿と、前記内容器に嵌合する蓋とを有し、前記外容器内に前記内容器を入れ、内容器に内容物を入れた状態で、内容器のフランジ部下面が外容器の鍔部上面に当接することが好ましい。
【0009】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、中皿開口部の下部の側壁部に、内容器支承部に当接して中皿を架設する段部を形成することが好ましい。
【0010】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、内容器の開口部から中皿の厚さ相当下方の周壁部に支承部を形成し、中皿底部を載置して中皿を架設することが好ましい。
【0011】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、中皿に2つ以上の掴み部または指掛け用の孔を形成することが好ましい。
【0012】
本発明の電子レンジ加熱用容器において、内容器口部の内側下部を容器外側方向に傾斜させ、蓋を内嵌合する内嵌合部を形成することが好ましい。
【0013】
また本発明は、前述した本発明に係る電子レンジ加熱用容器の内容器に主食材を、中皿に副食材をそれぞれ収容し、内容器に蓋を嵌着し包装してなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装食品を提供する。
【0014】
本発明の電子レンジ加熱用包装食品において、前記副食材が、液体成分を食品固化剤で固め、加熱時に液体成分が溶融可能に調製されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子レンジ加熱用容器は、熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器と、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する内容器とが、開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器と、該二重容器内に着脱自在に載置された中皿と、前記内容器に嵌合する蓋とからなる構成としたので、内容器に主食材を、中皿に副食材をそれぞれ分離して収容でき、電子レンジ加熱において主食材が副食材の汁分を吸収してふやけたり、食感が落ちるなどの問題がなく、出来立てと同様の風味と食感をもった食品が提供できる。
また、内容器と外容器が二重構造なので、電子レンジ加熱しても外容器が熱くならない。
また、内容器が耐熱性を有するので、電子レンジ加熱しても形状を保持し、中皿を安定して載置することができる。さらに、中皿を耐熱性樹脂で製造すれば、電子レンジ加熱で中皿自体が変形することがない。
また、中皿を着脱自在に載置したので、収容する副食材が薬味、漬物、デザートなどの加熱したくないものの場合は中皿ごと取り出すことができる。
【0016】
また、開口部を外側に向け屈曲させて形成された鍔部を有する外容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなり、開口部を外側に向け屈曲させて形成されたフランジ部と、該フランジ部より先端側を上側に向けて立ち上げ、さらに断面が逆U字状又は逆V字状に折り返して形成された口部と、該口部の先端側を前記フランジ部より下方まで垂下させるとともに、一部を開口部内側方向に膨出させた係止部を持つ垂下部とが形成された内容器とを開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器を用い、内容物の重さや加熱による温度上昇で変形し易い内容器のフランジ部を外容器鍔部で直接支える構造としたので、電子レンジで加熱した時に、内容物の熱や重量による内容器の垂下を抑制して外容器と内容器の接触を防止できる。
また、内容器と外容器の間の空気がフランジ部で遮断されて口部に至らないので、口部が熱くならず、口部の加熱変形が起こり難く、内容器の垂下が低減される。
また、外容器が熱可塑性樹脂発泡成形体からなるものなので、電子レンジ加熱後も容器外側は熱くならず、容器を手で持っても熱くない。また、発泡体は、熱伝導性が低く曲げ強度が高いので、電子レンジ加熱後に手で持って変形し難い。
また、口部が断面逆U字状又は逆V字状で食器に似た形状なので汁を飲みやすく、食器と同じ感覚で取り扱うことができる。
【0017】
また、内容器の支承部で中皿の段部を支承する構造とすることで、中皿を安定して載置でき、取り外しも容易になる。
また、中皿の底を支承する構造とすることで、中皿の面積を広くすることができる。
【0018】
また、中皿に2つ以上の掴み部または指掛け用の孔を形成することによって、中皿の着脱が容易になる。
また、掴み部を形成すると、加熱後に中皿を取り外すときに熱くない。さらに、内容器からの蒸気抜きをこの掴み部の下部に形成してもよい。
また、指掛け用の孔は内容器からの蒸気抜きを兼ねることができる。
【0019】
また、内容器口部の内側下部を容器外側方向に傾斜させ、蓋を内嵌合する内嵌合部を形成することによって、蒸気が凝縮した水滴が外に漏れ出すことがない。
【0020】
本発明の電子レンジ加熱用包装食品は、前述した本発明に係る電子レンジ加熱用容器の内容器に主食材を、中皿に副食材をそれぞれ収容し、内容器に蓋を嵌着し包装してなるものなので、電子レンジ加熱時、主食材が副食材の汁分を吸収してふやけたり、食感が落ちるなどの問題がなく、出来立てと同様の風味と食感をもった食品を提供できる。
また、副食材の液体成分を食品固化剤で固め、加熱時に液体成分が溶融可能に調製したことによって、液体を含んでいても運搬、保管が容易である。また、電子レンジ調理に際し、スープ等を収容した袋を破って主食材に振りかけたり、水を加えたりする手間が必要ないので、老人や子供でも簡単に調理できる。また、冷凍固化に比べて加熱時間が短くて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1〜4は、本発明の電子レンジ加熱用容器の第1実施形態を示す図であり、図1は電子レンジ加熱用容器1の断面図、図2は中皿4の斜視図、図3は内容器3の要部斜視図、図4は電子レンジ加熱用容器1の断面図である。これらの図中、符号1は電子レンジ加熱用容器、2は外容器、3は内容器、4は中皿、5は蓋、6は鍔部、7はフランジ部、8は口部、9は係止部、10は垂下部、11は支承部、12は中皿の側壁部、13は中皿の底部、14は掴み部、15は台部、16は段部、17及び17Aは蒸気抜きスリット、18は内容器の周壁部、19は蓋の嵌合凸部、20は蓋ツマミ片、21は内嵌合部である。
【0022】
本実施形態の電子レンジ加熱用容器1は、熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器2と、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する内容器3とが、開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器と、該二重容器内に着脱自在に載置された中皿4と、内容器3に嵌合する蓋5とからなっている。
【0023】
前記外容器2は、開口部を外側に向け屈曲させて形成された鍔部6を有している。
また内容器3は、開口部を外側に向け屈曲させて形成されたフランジ部7と、該フランジ部7より先端側を上側に向けて立ち上げ、さらに断面が逆U字状又は逆V字状に折り返して形成された口部8と、該口部8の先端側をフランジ部7より下方まで垂下させるとともに、一部を開口部内側方向に膨出させた係止部9を持つ垂下部10とを有している。外容器2内に前記内容器3を入れ、内容器3に内容物を入れた状態で、内容器3のフランジ部7下面は、外容器の鍔部6上面に当接するようになっている。
【0024】
本発明において、電子レンジ加熱用容器1の全体形状は特に限定されないが、鍋物、麺類、おかゆ、スープ、煮物、汁物等の食品に好適な形状として、丼や鍋の形状が好適に使用できる。容器開口部の形状は、円形、楕円形が好ましいが、矩形や多角形も使用できる。容器の開口と深さの関係で言えば、内容器3の短径aが75〜180mm程度、及びaと深さbとの比b/aが0.2〜1の範囲であることが好ましい。比b/aが0.2未満であると、浅すぎて前記の食品用の容器として好ましくない。比b/aが1を超えると、コップ状になり、やはり前記食品に適さない。また本実施形態では、容器開口部が円形であり、蓋及び中皿付きの丼形状をなす電子レンジ加熱用容器1を例示している。
【0025】
本実施形態において、外容器2は、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の樹脂を1.5倍以上の発泡倍率で発泡させた、厚さ0.3mm以上の発泡樹脂シートを真空成形、圧空成形、或いは真空・圧空成形等で容器の形状に成形したものが好ましく使用できる。また、前記成形時又は成形後に追加の発泡をさせて発泡倍率を高めることもできる。発泡樹脂シートの厚さが0.3mm未満であると、容器として形状を保持するのに必要な強度が不足し、断熱性・保温性も不十分となる。
【0026】
この外容器2の開口部に形成した鍔部6は、上面が略水平面になっており、且つ鍔部基端から突端までの長さが3mm以上であることが好ましい。鍔部6の上面を略水平面とし、前記長さを3mm以上とすれば、この鍔部6の上面に内容器3のフランジ部7を安定な状態で載せ、内容器3を安定に支持することができる。一方、前記長さが大きすぎると、取り扱い難くなり、また見栄えも悪くなることから、前記長さは3〜10mm程度とすることが好ましい。この鍔部6の突端は、内容器3の垂下部10に当接し、係止部9に係合することで、内容器3が外容器2から抜け出し難くなっている。
【0027】
この外容器2には、表面硬度の低い発泡体からなる外容器2表面を傷付き難くするため、外容器2外面に意匠や着色を施して商品価値を高めるため、或いは内容物・製造業者その他を表示する等の目的で、外容器2の外面および/または内面に、透明、着色或いは印刷した熱可塑性フィルムを貼り付けてもよい。熱可塑性フィルムの材質は、特に限定されないが、外容器の材質に合わせて選択することが望ましい。例えば、外容器2が発泡ポリスチレンの場合は、印刷性、基材との接着性等からポリスチレン系樹脂が好ましい。熱可塑性フィルムの貼付方法は、限定されないが、容器成形前のシートに熱や接着剤等で貼付し、その後容器に成形する等、包装用容器において一般に行われている方法を適用することができる。
【0028】
本発明において、内容器3は、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する。なお、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験とは、表示温度110℃以下の場合には、食器を表示温度±2℃、110℃を超える場合には、表示温度±3℃に調整したエアーオーブン中に、スレート板の上に乗せて1時間保持した後、食器をスレート板に乗せたまま取り出し、そのまま常温で30分間放冷後、以上の有無を調べる試験である。
【0029】
前記耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する容器をもたらす熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂(130℃)、ポリプロピレンとポリエチレンのアロイ(110℃)、或いはポリスチレンにポリフェニレンエーテルを混合した樹脂、或いはこれらの樹脂にタルクなどの充填剤を配合した組成物からなる厚さ0.2〜1mmのシートを真空成形、圧空成形、或いは真空・圧空成形等で容器の形状に成形したものが好ましく使用できる。また、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステル樹脂(220℃)からなり、未結晶状態のシートを前記と同様の方法で容器に成形後、熱処理により結晶化させて耐熱性を付与した材料も使用できる。このシート厚さが0.2mm未満であると、容器として形状を保持するのに必要な強度が不足する上、電子レンジ加熱後の容器の垂下が大きくなり過ぎる。一方、シート厚さが1mmを超えると、容器が硬くなり過ぎて外容器や蓋との嵌合作業がやり難くなる上、重さやコストが過大になる。
【0030】
内容器3のフランジ部7は、食品の収容時に外容器2の鍔部6に当接して内容器3を支えるとともに、蓋5を垂直方向に支える部分でもある。フランジ部7の幅は特に限定されないが、1mm〜8mm程度とするのが好ましい。このフランジ部7は略水平面に形成しても良いが、口部8側を上り勾配5〜30度程度の角度で傾斜させておくことにより、加熱食品の飲食時にフランジ部7に液体が溜まらないので、好ましい。
【0031】
内容器3の口部8は、内容器3内の食品を飲食する際に口を付け易いように内容器3が上方に突出した部分である。その逆U字状または逆V字状断面の寸法は、幅(太さ)が1〜10mm、好ましくは2〜7mmで、高さが5〜30mmの範囲が好適である。
口部8に口を付けて液体を飲む時に、幅が1mm未満では薄すぎて紙を噛んでいるような感触となり、また幅が10mmを超えると、厚すぎて違和感を生じると共に、口の端から液体が漏れ易い。また、幅が1mm以下で高さが5mm以上の逆U字状口部は成形が困難である。逆U字状又は逆V字状の頂部は、断面が鋭角でないことが好ましく、半円形、楕円形、或いはRのついた多角形が好適である。
【0032】
口部8内面の上部には、蓋5を案内するために、容器内側方向に傾斜させたテーパー状の案内部21aが形成されている。この案内部21aを形成したことにより、内容器3の口部8に蓋5をスムーズに案内し、この蓋5を内嵌合してしっかり固定できるので、誤って容器を傾けても内容物がこぼれることを防止できる。
口部8内面の下部を容器外側方向に傾斜させた内嵌合部21bとし、蓋5が内嵌合できるようにしてもよい。
【0033】
口部8に連続して設けられた垂下部10は、外容器2の鍔部6を覆い、その下部に容器内側方向に膨出する係止部9が設けられた構造になっている。本例示において、この係止部9は、垂下部10の周方向に沿って複数の島状に設けられている。この係止部9は、外容器2の鍔部6下側に位置しており、外容器2の鍔部6突端に係止するようになっている。この垂下部10には、容器を手で持つための一対の図示していない把手が、内容器3の外側に向けて形成されている。
【0034】
内容器3の周壁部18には、図3に示すように、径方向内側に向けて膨出した複数の支承部11が設けられている。これらの支承部11の個数および寸法(膨出量や幅)は特に限定されず、中皿4をこれらの支承部11で確実に支承できるとともに、内容物を食する際に邪魔にならないような個数と寸法に適宜設計することができる。
【0035】
中皿4の材質は、ポリスチレン系樹脂、アモルファスポリエステル等の透明性が高く成形の容易な樹脂シートからなるものが好ましいが、耐熱性のよいポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂などであってもよく、特に制限されない。
【0036】
中皿4は、図2に示すように、略円板状の底部13とその周縁から立設された側壁部12とからなり、側壁部12の対向する2箇所に台部15が設けられ、これらの台部15の頂上部には上方に突出した掴み部14が設けられている。また、側壁部12には、内容器3の支承部11に係合する段部16が形成されている。台部15の外周には、台部以外の外周部分よりも径方向に若干短い蒸気抜きスリット17が形成され、この中皿4を内容器3内に載置し、電子レンジ加熱した際に、この蒸気抜きスリット17の外周部分と内容器3の周壁部18の間を通して内容器3内の蒸気を逃がすようになっている。
【0037】
蓋5の材質は、ポリスチレン系樹脂、アモルファスポリエステル等の透明性が高く成形の容易な樹脂シートからなるものが好ましいが、耐熱性のよいポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂などであってもよく、特に制限されない。
【0038】
蓋5の形状は特に限定されない。蓋5の中央天板部は、平面、ドーム状その他用途に合わせて任意の形状とすることができる。
蓋5を内容器3に装着する方法は限定されないが、蓋に凝縮した水分などが外に漏れないようにするために、内容器3に内嵌合する方法が好ましい。この場合、蓋5の外周部に内容器3の口部8に内嵌合される凹字状或いは逆U字状の凹部を形成することが好ましい。図1の例示では、平面状の中央天板部を有し、その周縁に下方に向けて伸びる断面U字状の嵌合凸部19が形成され、該嵌合凸部19の外周には蓋ツマミ片20が形成されている。この嵌合凸部19は、内容器3の口部8に内嵌合され、嵌合された蓋5は蓋ツマミ片20を摘んで引き上げることで口部8から外せるようになっている。蓋5の装着方法はこれ以外にも、例えば、単に内容器3のフランジ部7に載せるだけ、或いは、天板に凝縮した水分が容器内に落ちるように誘導する下向きの凹条部を設けた上で内容器3の口部8外面或いは垂下部10等に外嵌合する方法であっても良い。蓋5には、V字状やU字状などの任意の蒸気抜きスリット17Aが設けられ、電子レンジ加熱により膨張した空気や発生した蒸気を外に逃がすようになっている。
【0039】
本実施形態の電子レンジ加熱用容器1は、内容器3に主食材を、中皿4に副食材をそれぞれ分離収容でき、電子レンジ加熱において、主食材が副食材の汁分を吸収してふやけたり、食感が落ちるなどの問題がなく、出来立てと同様の風味と食感をもった食品が提供できる。
また、内容器3と外容器2が二重構造なので、電子レンジ加熱しても外容器2が熱くならない。
また、内容器3が耐熱性を有するので、電子レンジ加熱しても形状を保持し、中皿4を安定して載置することができる。さらに、中皿4を耐熱性樹脂で製造すれば、電子レンジ加熱で中皿4自体が変形することがない。
また、中皿4を着脱自在に載置したので、収容する副食材が薬味、漬物、デザートなどの加熱したくないものの場合は中皿4ごと取り出すことができる。
また、内容物の重さや加熱による温度上昇で変形し易い内容器3のフランジ部7を外容器2の鍔部6で直接支える構造としたことによって、電子レンジで加熱した時に、内容物の熱や重量による内容器3の垂下を抑制して外容器2と内容器3の接触を防止できる。
また、内容器3と外容器2の間の空気がフランジ部7で遮断されて口部8に至らないので、口部8が熱くならず、口部8の加熱変形が起こり難く、内容器3の垂下が低減される。
また、外容器2が熱可塑性樹脂発泡成形体からなるものなので、電子レンジ加熱後も容器外側は熱くならず、外容器2を手で持っても熱くない。また、発泡体は、熱伝導性が低く曲げ強度が高いので、電子レンジ加熱後に手で持って変形し難い。
また、口部8が断面逆U字状又は逆V字状で食器に似た形状なので汁を飲みやすく、食器と同じ感覚で取り扱うことができる。
また、内容器3の支承部11で中皿4の段部16を支承する構造とすることで、中皿4を安定して載置でき、取り外しも容易になる。
また、中皿4に2つの掴み部14を形成したので、中皿4の着脱が容易になる。また、掴み部14を形成したので、加熱後に中皿14を取り外すときに熱くない。
また、内容器3の口部8の内側下部を容器外側方向に傾斜させ、蓋5を内嵌合する内嵌合部21を形成することによって、蒸気が凝縮した水滴が外に漏れ出すことがない。
【0040】
この電子レンジ加熱用容器1は、図4に示すように、外容器2に内容器3を入れ、外容器2の鍔部6を垂下部10の内側に挿入し、鍔部6の上面をフランジ部7と接触又は近接させると共に、鍔部6の突端を垂下部10の係止部9に係合させた状態とし、内容器3内に主食材を収容し、さらに副食材を乗せた中皿4を内容器3に載置した後、蓋5を内容器3に内嵌合し、必要に応じてフィルム等で包み、電子レンジ加熱用包装食品として利用される。
【0041】
電子レンジ加熱用容器1に収容される食品は、運搬・保管が容易で、電子レンジで加熱調理又は解凍するだけで簡単に食べることができる調理食品である。内容器3に収容する主食材としては米飯、麺類、パスタ等が挙げられ、また中皿4に収容される副食材としては肉類、魚、貝、海老、揚げ物、ワンタン、野菜などの具、汁、スープ、つゆなどの液状物、香辛料、漬物、デザート等が挙げられる。
【0042】
食品に使用されるソース、スープ、つゆなどの液体成分は、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム等の食品固化剤又はそれらの混合物等で固化したものが使用できる。食品固化剤の中でも、ゼラチンで液体成分を固化した食品が好適に使用できる。ゼラチン等の食品固化剤で固化した液体成分は、電子レンジ加熱調理時に液状化し、麺などの主食品と混ぜることができる。
また、ご飯やパスタ、麺類等の主食材は、ゼラチンゼリーなどで被覆し、電子レンジで加熱調理又は解凍する際に水分が蒸散してパサパサにならないようにすることができる。
【0043】
本発明の電子レンジ加熱用包装食品は、前述した本発明に係る電子レンジ加熱用容器1に食品を収容、包装したものなので、内容器3に主食材を、中皿4に副食材をそれぞれ収容し、内容器3に蓋を嵌着し包装してなるものなので、電子レンジ加熱時、主食材が副食材の汁分を吸収してふやけたり、食感が落ちるなどの問題がなく、出来立てと同様の風味と食感をもった食品を提供できる。
また、副食材の液体成分を食品固化剤で固め、加熱時に液体成分が溶融可能に調製したことによって、液体を含んでいても運搬、保管が容易である。また、電子レンジ調理に際し、スープ等を収容した袋を破って主食材に振りかけたり、水を加えたりする手間が必要ないので、老人や子供でも簡単に調理できる。また、冷凍固化に比べて加熱時間が短くて済む。
【0044】
図5は、本発明の第2実施形態を示す図である。
本実施形態の電子レンジ加熱用容器1は、前述した第1実施形態の電子レンジ加熱用容器1とほぼ同様の構成要素を備えて構成され、同一の構成要素には同一符号を付してある。本実施形態では、内容器3の支承部11の上端位置を下げるとともに、支承部11の上面で中皿4の底部13を支承できるようにし、中皿4の側壁部12に段部を設けない構成としている。
【0045】
本実施形態の電子レンジ加熱用容器1は、前述した第1実施形態の電子レンジ加熱用容器1とほぼ同様の効果を得ることができ、さらに、支承部11の上面で中皿4の底部13を支承できるようにし、中皿4の側壁部12に段部を設けない構成としたことによって、中皿4の面積を広くすることができ、中皿4の収容量を増加することができる。
【0046】
図6は、本発明の第3実施形態を示す図である。
本実施形態の電子レンジ加熱用容器は、中皿22以外は前述した第1実施形態の電子レンジ加熱用容器1とほぼ同様の構成要素を備えて構成されている。本実施形態では、中皿22として、略円板状の底部24とその周縁から立設された側壁部23とからなり、側壁部23には内容器3の支承部11に載置するための段部25が設けられていると共に、対向する2箇所に指掛け用の孔26が設けられている。この中皿22は、内容器3に着脱する際に、これらの孔26に指をかけて容易に着脱でき、またこれらの孔26は内容器3からの蒸気抜きを兼ねている。
【0047】
本実施形態の電子レンジ加熱用容器は、前述した第1実施形態の電子レンジ加熱用容器1とほぼ同様の効果を得ることができ、さらに、中皿22の構造が簡略化できるので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の電子レンジ加熱用容器の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】中皿の斜視図である。
【図3】内容器の要部斜視図である。
【図4】電子レンジ加熱用容器の第1実施形態を示す断面図である。
【図5】電子レンジ加熱用容器の第2実施形態を示す断面図である。
【図6】電子レンジ加熱用容器の第3実施形態における中皿の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1…電子レンジ加熱用容器、2…外容器、3…内容器、4,22…中皿、5…蓋、6…鍔部、7…フランジ部、8…口部、9…係止部、10…垂下部、11…支承部、12,23…側壁部、13,24…底部、14…掴み部、15…台部、16,25…段部、17,17A…蒸気抜きスリット、18…周壁部、19…嵌合凸部、20…蓋ツマミ片、21a…案内部、21b…内嵌合部、26…指掛け用の孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡成形体からなる外容器と、熱可塑性樹脂からなり、JIS S2029・6.5で規定された耐熱性試験において100℃以上の耐熱性を有する内容器とが、開口周縁部において互いに嵌合して固定された二重容器と、該二重容器内に着脱自在に載置された中皿と、前記内容器に嵌合する蓋とからなることを特徴とする電子レンジ加熱用容器。
【請求項2】
熱可塑性樹脂発泡成形体からなり、開口部を外側に向け屈曲させて形成された鍔部を有する外容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなり、開口部を外側に向け屈曲させて形成されたフランジ部と、該フランジ部より先端側を上側に向けて立ち上げ、さらに断面が逆U字状又は逆V字状に折り返して形成された口部と、該口部の先端側を前記フランジ部より下方まで垂下させるとともに、一部を開口部内側方向に膨出させた係止部を持つ垂下部とが形成された内容器と、熱可塑性樹脂シート成形体からなり、側壁部および底部を有し、前記内容器内に載置される中皿と、前記内容器に嵌合する蓋とを有し、前記外容器内に前記内容器を入れ、内容器に内容物を入れた状態で、内容器のフランジ部下面が外容器の鍔部上面に当接することを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項3】
中皿開口部の下部の側壁部に、内容器支承部に当接して中皿を架設する段部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項4】
内容器の開口部から中皿の厚さ相当下方の周壁部に支承部を形成し、中皿底部を載置して中皿を架設したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項5】
中皿に2つ以上の掴み部または指掛け用の孔を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項6】
内容器口部の内側下部を容器外側方向に傾斜させ、蓋を内嵌合する内嵌合部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電子レンジ加熱用容器の内容器に主食材を、中皿に副食材をそれぞれ収容し、内容器に蓋を嵌着し包装してなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装食品。
【請求項8】
前記副食材が、液体成分を食品固化剤で固め、加熱時に液体成分が溶融可能に調製されたことを特徴とする請求項7に記載の電子レンジ加熱用包装食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−103733(P2006−103733A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291487(P2004−291487)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】