説明

電子写真エンドレスベルト、電子写真装置および電子写真エンドレスベルトの製造方法

【課題】転写材搬送ベルトとして用いた場合に高い吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有する電子写真エンドレスベルト、中間転写ベルトとして用いた場合に繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有しかつ再転写が発生しない電子写真エンドレスベルトの提供。
【解決手段】電子写真エンドレスベルトを、(i)ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテルおよびポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂、(ii)ポリフッ化ビニリデン、および(iii)カーボンを含有する樹脂組成物よりなる層から構成する。該樹脂組成物において、成分(iii)の質量(A)と成分(i)の質量(B)との比率(A/B)を4以上50以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる転写材搬送ベルトや中間転写ベルトなどの電子写真エンドレスベルト、電子写真エンドレスベルトを有する電子写真装置、ならびに、電子写真エンドレスベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー電子写真装置には、転写材搬送ベルトや中間転写ベルトなどの電子写真エンドレスベルト(以下単に「ベルト」ともいう)が用いられることが多い。そして、これらのベルトを用いたカラー電子写真装置は、2つのタイプに大別される。
1つは、図1や図2のように、複数の電子写真感光体上に形成した異なる色のトナー像を、転写材搬送ベルト上の転写材あるいは中間転写ベルトに順次転写していく、いわゆるタンデム方式のカラー電子写真装置である。
もう1つは、図3のように、1つの電子写真感光体と中間転写ベルトを用いるものであり、中間転写ベルトが、各色トナー像を重ねるのに必要な回数(トナーが4種の場合4回)回転した後にトナー像を転写材Pに一括して転写する方式のカラー電子写真装置である。
【0003】
近年のカラー電子写真装置では、プリント速度の向上がめざましく、高速化に有利なタンデム方式のカラー電子写真装置を採用する装置が増加している。その中でも、図1のように、転写材搬送ベルトを用い、電子写真感光体を含む画像形成ユニットを、垂直あるいは斜めに並べて配置し、転写材を下方から上方に(重力方向に逆らって)搬送する電子写真装置がすでに市販されている。この形式のカラー電子写真装置は、装置本体の設置スペースを小さくできることから、注目されている。この「省スペース」という特性をさらに際立たせるためには、従来の電子写真装置で用いられていた吸着ローラー25を省略して、さらなる省スペース化と低コスト化を達成することが考えられる。吸着ローラーとは、通常、転写材搬送ベルト24を挟む形で張架ローラー26に対向する位置に設けられるローラーで、このローラーと転写材搬送ベルトとの間に転写材を挟み込むために用いられる。なお、吸着ローラーにバイアスを印加して、紙に電荷を与え、転写材搬送ベルトへの紙の吸着を、より確実に行わせることもできる。
【0004】
これを実現するためには、従来以上に、転写材搬送ベルトの吸着力が必要となる。特に、高温かつ高湿環境で水分を含んだ転写材を転写材搬送ベルトに吸着させるためには、非常に高い吸着力が必要になる。吸着力を向上させるには、転写材搬送ベルトの抵抗値を高くすれば、容易に実現できる。ところが、ベルトの抵抗を高くすると、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が失われるという問題がある。画像濃度の安定性が失われる理由は、以下のように考えられる。
【0005】
図1のようなカラー電子写真装置においては、画像形成に先立って、数ミリから数十ミリ四方の大きさのトナー像を、各色について、濃度(トナー量)を変えて、ベルト上に転写する。ベルト上に転写された、このトナー像を、パッチ画像と称する。そして、パッチ画像のトナー量を、光学的手段によって検知するために、ベルト表面近傍に、センサーが配設されている。該センサーはベルト表面に光(例えば赤外線)を照射し、ベルト表面で反射された光を検知するようにできている。ベルト上のパッチ画像がない部分は、ベルト表面の光沢によって、光が強く反射される。一方、ベルト上のパッチ画像の部分は、パッチの濃度に応じて、反射光量が減少する。したがって、反射光量の変化を読み取ることで、ベルト上のトナー量を知ることができる。得られた情報に従って、転写材への画像形成動作時に、現像バイアスや潜像電位をフィードバック制御する(以後、パッチ検知補正と称する)ことで、転写材への画像出力時の画像濃度を安定化させる。このパッチ検知補正を行うときに、ベルトの抵抗が高いと、ベルトに流れ込んだ電荷が除電されにくくなって、ベルト上の電位が非常に高くなる。すると、ベルトと電子写真感光体の間に異常放電が生じ、均一な濃度であったはずのパッチ画像が乱れ、水玉状の模様(以後、水玉模様と称する)となって現れてしまう。水玉模様が発生すると、パッチ画像の濃度が変わってしまうので、本来のトナー量が検知できなくなる。その結果、本来のフィードバック量とは異なる制御量を与えてしまい、目的の色調からズレてしまう。もし、水玉模様の発生位置、形状、大きさが常に同じであれば、補正も可能であるが、水玉模様は、異常放電により生じるものであるから、発生位置、形状、大きさは一定にならない。その結果、パッチ検知補正のたびに、色調が変わってしまう。
【0006】
以上のように、単純にベルトの抵抗値を高くして吸着力を高めようとすると、パッチ画像に水玉模様が生じて、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が失われるという問題が生じる。したがって、吸着力(特に高温高湿環境における吸着力)と、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を、高次でバランスさせることは非常に困難である。
【0007】
また、ベルトには、トナーのクリーニング性に優れることも要求され、特にパッチ検知補正を行う電子写真装置に用いるベルトでは、重要な特性である。なぜならば、ベルト上のパッチ濃度を読み取った後は、パッチ画像、すなわちトナー像を、ベルト表面から除去(クリーニング)してから、転写材への画像形成工程に入るので、ベルトは、トナーのクリーニング性に優れていることが必要になるからである。
【0008】
トナーのクリーニング性に優れる材料としては、フッ素樹脂が挙げられ、以下のようなベルトが提案されている。
【0009】
特開平2−106530号公報(特許文献1)では、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンとの共重合体からなるフッ素樹脂に、導電剤としてポリエーテルエステルアミド(PEEA)とドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(DBDS)を添加したエンドレスベルトが提案されている。しかし、本発明者らの検討によれば、このベルトは、転写材の吸着力がほとんどなく、タンデム方式の電子写真装置に、転写材搬送ベルトとして組みこんだ場合には、色ズレが非常に悪いことがわかった。また、均一な濃度のハーフトーン画像を出力したときに、転写材の後端付近において、横スジ状の濃い線(後端横スジ)が現れることがわかった。この後端横スジという現象は、転写材の後端で、転写材搬送ベルトと転写材との接触面積が減るため、吸着力がさらに低下することにより、電子写真感光体から転写材への転写工程中に、転写材がスリップすることが原因で発生していると考えられる。
【0010】
特開2000−143918号公報(特許文献2)では、フッ素樹脂にグラフト化カーボン1〜40質量部と、熱可塑性ポリエーテル樹脂1〜15質量部からなるベルトが提案されている。
【0011】
特開平7−113029号公報(特許文献3)では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、導電性フィラー1〜20質量%と、熱可塑性ポリエーテル系樹脂2〜10質量%とからなる樹脂組成物が提案されている。
【0012】
しかし、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立させる上で、カーボンとポリエーテル樹脂の比率の大小が重要であることが、特開2000−143918号公報および特開平7−113029号公報には記載されていない。そして、特開2000−143918号公報および特開平7−113029号公報の実施例に記載されたベルトは、カーボンに対してポリエーテル樹脂の量が多いので、吸着力が乏しい。加えて、体積抵抗率が小さいことも、吸着力をさらに低下させることになる。実際に、特開2000−143918号公報および特開平7−113029号公報の実施例に記載されたベルトを、タンデム方式の電子写真装置に、転写材搬送ベルトとして組みこんでみたが、色ズレが非常に悪く、後端横スジも発生した。
【0013】
以上のように、吸着ローラーがなくても、転写材を十分に吸着し、かつ繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性も有するベルトは、いまだ得られていないと言える。
【0014】
【特許文献1】特開平2−106530号公報(第6頁)
【特許文献2】特開2000−143918号公報(第2頁および第5頁)
【特許文献3】特開平7−113029号公報(第2頁および第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、転写材搬送ベルトとして用いた場合には、高い吸着力と、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有する電子写真エンドレスベルトを提供することである。また、中間転写ベルトとして用いた場合には、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有し、かつ、再転写(一旦中間転写ベルト上に転写されたトナーが電子写真感光体に戻ってしまう現象)が発生しない電子写真エンドレスベルトおよびその製造方法を提供することである。また、このような電子写真エンドレスベルトを有する電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にしたがって、
(i)ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテルおよびポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂、
(ii)ポリフッ化ビニリデン、および
(iii)カーボン
を含有する樹脂組成物からなる層を有する電子写真エンドレスベルトであって、
該樹脂組成物中の該(iii)の質量(A)と該(i)の質量(B)との比率(A/B)が4以上50以下であることを特徴とする電子写真エンドレスベルトが提供される。
また、本発明にしたがって、上記電子写真エンドレスベルトを有する電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転写材搬送ベルトとして用いた場合には、高い吸着力と、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有する電子写真エンドレスベルトを提供することができる。また、中間転写ベルトとして用いた場合には、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を有し、かつ、再転写が発生しない電子写真エンドレスベルトを提供することができる。また、このような電子写真エンドレスベルトを有する電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明に至った経緯を説明する。
先に述べたように、本発明者らは、表面エネルギーが低いために、離型性に優れ、ベルトのクリーニング性が良いことで知られるフッ素樹脂、その中でも、加工温度が低いため、ベルト製造時の取り扱いが容易なポリフッ化ビニリデン(PVDF)に着目した。
【0019】
まず、本発明者らは、ポリフッ化ビニリデンにカーボンを練りこんで、抵抗値の異なるベルトを作製した。次に、作製したベルトを図4に示す電子写真装置に組みこんで、23℃/55%RHの環境で評価した。その結果、カーボンの添加量が少なくてベルトの抵抗が高い場合には、高い吸着力が得られ、色ズレや、後端横スジは発生しなかった。ただし、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性に欠けるという結果が得られた。画像濃度の安定性に欠ける原因を探るため、パッチ画像の濃度をセンサーで読み取っている最中に、電子写真装置の電源を切って動作を止めて、ベルト上のパッチ画像を観察した。すると、パッチ画像に水玉模様が認められた。このことから、抵抗の高いベルトでは、電子写真感光体とベルトの間に異常放電が発生し、パッチ画像が乱れるために、パッチ濃度を正確に検知できなくなっていると考えられる。
【0020】
そこで、カーボンの添加量を増やして、ベルトの抵抗を下げたところ、パッチ画像に水玉模様は発生しなくなり、画像濃度の安定性は保たれるようになった。しかし、高温高湿環境(30℃/80%RH)において、ベルトへの紙の吸着力が低下して、色ズレが悪化し、後端横スジが発生した。
このように、吸着力と、画像濃度の安定性が相反する傾向にあったので、それらを両立できるカーボンの濃度が存在するか、カーボンの添加量を細かく振って、検討した。しかし、吸着力と、水玉模様の防止を両立することはできなかった。
【0021】
次に、導電剤を金属粉末、ポリエーテルエステルアミド、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(スルホン酸金属塩)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどに変えて、カーボンのときと同様の検討を行った。しかし、いずれの導電剤の場合も、カーボンと同様の傾向を示した。すわなち、添加量が少ないと、画像濃度の安定性が悪く、添加量が多いと、吸着力が不十分で、色ズレが悪化して後端横スジが発生した。そして、導電剤の濃度を適宜調節するだけでは、画像濃度の安定性と吸着力を、両立することはできなかった。
【0022】
これに加え、導電剤として、カーボンのみを用いた場合に固有の現象として、繰り返し画像出力すると、パッチ画像上に樹枝状の模様が現れるようになり、正確な濃度検知ができなくなるという現象も見られた。この樹枝状の模様は、ベルト表面近傍に存在するカーボンが微小電極となって、ベルト表面で沿面放電が発生する、一種のトリーイング現象の結果と考えられる。つまり、
1.トリーの発生により、沿面放電発生部分の表面抵抗が極端に低下する。
2.抵抗低下部に存在するトナーに作用する電界強度が強くなりすぎる。
3.電子写真感光体上のトナー(パッチ)をベルトに転写できなくなって、トナーが電子写真感光体に残る。
4.パッチ画像上に樹枝状の模様が現れるようになる。
というメカニズムで樹枝状模様が発生していると考えられる。特に、熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形した後に、PVDFの融点である170℃以上に加熱する工程を経る場合、樹枝状の模様が発生しやすい。これは、以下のように考えられる。
1.フィルム状に加工された後、再度PVDFの融点以上に加熱されることにより、フィルム成形工程で発生したPVDFの結晶が一旦融解する。
2.PVDFの結晶が一旦融解し、再結晶化する際、カーボンが、PVDF樹脂の結晶の外に吐き出されて凝集し、この凝集物が、沿面放電のきっかけ(電極)を作っている。
【0023】
以上のように、PVDFの抵抗調整を行うにあたって、導電剤の種類や添加量を変え、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立するベルトの抵抗値を、適宜選択しようとしたが、両特性を満足するベルトは存在しなかった。特に、導電剤としてカーボンを用いた場合には、樹枝状模様が発生するという欠点もあった。このことから、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立するためには、ベルトの電気抵抗値を適当な値に調節するだけでは不十分で、いまだ解明されていない、別の手段が必要になることがわかる。
【0024】
別の手段といっても、ベルトの抵抗を調節するためには、新規な導電剤を発見しない限り、既存の導電剤を用いるしかない。しかし、添加量に対して同じ傾向(添加量少で水玉模様発生、添加量多で吸着力低下)を示し、水玉模様の防止と吸着力を両立できるポイントが存在しない導電剤を複数組み合わせてみたところで、両立可能になるとは考えられない。つまり、既存の導電剤を適宜組み合わせてみても、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することは、不可能に思える。
【0025】
それでも本発明者らは、様々な導電剤の組み合わせについて鋭意検討を続けた結果、カーボンとポリエーテルエステルアミドを組み合わせて用いると、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立可能なものと、不可能なものが存在することがわかった。そこで、この組み合わせについて、さらに検討を続けた結果、ポリエーテルエステルアミドの添加量に対して、カーボンの添加量が4〜50倍である場合においてのみ、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立できることがわかった。さらに、ポリエーテルエステルアミドを、ポリオレフィンエーテルやポリエーテルアミドに変更した場合についても、同様の実験を行った。するとやはり、ポリオレフィンエーテルまたはポリエーテルアミドの添加量に対して、カーボンの添加量が4〜50倍である場合においてのみ、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立できることがわかった。そして、ポリエーテルエステルアミドと、ポリオレフィンエーテルと、ポリエーテルアミドの中から任意の2種類を選び出して併用した場合や、それら3種すべてを使用した場合についても同様の実験を行った。そうしたところ、これら3種の合計添加量(B)に対して、カーボンの添加量(A)が4〜50倍である場合においてのみ、良好なベルトが得られることがわかった。すなわち、転写材搬送ベルトとして使用した場合には、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が両立できる。中間転写ベルトとして使用した場合には、後述する再転写防止性と、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が両立できる。
【0026】
この樹脂組成物においては、ポリエーテルエステルアミド(PEEA)、ポリオレフィンエーテル(POE)、ポリエーテルアミド(PEA)よりも、カーボンの方がかなり多いので、繰り返し使用後に、パッチ画像に樹枝状の模様が現れることが懸念された。しかしながら、そのような現象は発生しないこともわかった。そして、熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形した後に、PVDFの融点である170℃以上に加熱(再加熱)する工程を経た場合であっても、樹枝状の模様は現れなかった。
【0027】
樹枝状の模様が現れない理由については、以下の2つが考えられる。
1.ベルトの成形工程においてPVDFが結晶化する際、微量に添加されたPEE、POEおよび/またはPEAが、PVDFの結晶化を阻害する。PVDFの結晶が少なければ、そこに取り込まれているカーボンも少なくなる。したがって、このフィルムを再加熱し、PVDFの再結晶化が起きても、結晶から吐き出されるカーボンは少量なので、カーボンの凝集が抑えられ、沿面放電のきっかけが作られにくくなっている。
2.PEE、POEおよび/またはPEAの抵抗値は、PVDFより低いので、仮に沿面放電が発生したとしても、PVDF(海)に対して、島状に分散したPEE、POEおよび/またはPEAによって電荷が素早く除電され、放電の持続が妨げられる。つまり、沿面放電が発生したとしても、すぐに消滅してしまうため、抵抗低下部は、パッチ画像に影響しないほど、極めて微小な領域で収まる。
【0028】
もし、上記の推定メカニズムが正しいならば、樹枝状模様の防止効果が得られるA/Bの数値に、上限が存在すると予想される。そこで、本発明者らは、この点について検討を行った。その結果、A/Bの値が50以下の場合においてのみ、樹枝状模様の防止効果が得られることがわかった。吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立できるA/Bの上限値と、樹枝状模様の防止効果が得られるA/Bの上限値とが、共に50であったということは偶然ではないと考えている。樹脂組成物の電気特性が、A/B=50を境に変化していることを示していると考えられる。
【0029】
以上述べてきたように、転写材搬送ベルトとして用いた場合には、A/Bが4〜50の場合のみ、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が両立でき、かつ、繰り返し使用後のパッチ画像に、樹枝状の模様が発生しないことを見いだした。さらに、中間転写ベルトとして使用した場合には、A/Bが4〜50の範囲においてのみ、後述する再転写防止性と、繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が両立でき、かつ、繰り返し使用後のパッチ画像に、樹枝状の模様が発生しないことを見いだした。このようにして、本発明に至った。
【0030】
なお、本発明の樹脂組成物において、A/Bの値を特定の範囲(4≦A/B≦50)にすることで、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が両立できた理由は定かでないけれども、本発明者らは、以下のような仮説を持っている。
すなわち、水玉模様を防止するためには、帯電しにくいベルトにするか、除電速度が速いベルトにすると良いと考えられる。一方、吸着力を向上させるには、除電速度の遅いベルトにすると良いと考えられる。
このことから、水玉模様を防止し、かつ、吸着力を高めるには、帯電しにくく、除電速度が遅いベルトが良いと考えられる。
【0031】
本発明に用いられる樹脂組成物には、カーボンが分散されている。カーボンは、その一次粒子径まで、完全にばらばらの状態で分散することはなく、ぶどうの房のように互いに融着した状態(いわゆるアグリゲート)で存在している。そして、よく知られているように、カーボンの房同士が直接接触していなくても、アグリゲート同士が接近していれば、電荷が流れる。このとき電荷は、PVDFを飛び越えて流れなければならないため、いくらかのポテンシャル障壁を乗り越える必要がある。つまり、カーボンのアグリゲート同士の距離と、電界強度によって、電荷移動が行われるか否かが変わってくると考えられる。ここで、カーボンとPEE、POEおよび/またはPEAを混合すると、カーボンのアグリゲート間に、島状に分散されたPEE、POEおよび/またはPEAが入り込む。そして、カーボンの量に対して、PEE、POEおよび/またはPEAの量が所定の比率を満たしたとき、カーボンの隣り合うアグリゲート間のポテンシャル障壁が変化するのではないかと考えられる。その結果、過大な電荷は素早く除去するが、除電がある程度進んだところで、それ以上の電荷の移動が困難となり、適度な電荷が残るような電気特性へと、樹脂組成物の特性が大きく変わっているのではないかと考えられる。本発明のポイントはA/Bの値にある。したがって、カーボンのアグリゲート間に島状に分散されたPEE、POEおよび/またはPEAが入り込んでいても、カーボンに比べてPEE、POEおよび/またはPEAが多すぎる場合(A/B<4)には導電機構は単にPEE、POEおよび/またはPEAのみを添加した場合と同じようになる。そして、過大な電荷は素早く除去するが、適度な電荷が残るような電気特性は得られない。つまり、初めにPEE、POEおよび/またはPEAのみを用いて実験したように、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することはできない。また、カーボンに比べてPEE、POEおよび/またはPEAが少なすぎる場合(A/B>50)も、カーボンのみを配合したときと同じ特性しか得られない。そして、過大な電荷は素早く除去するが、適度な電荷が残るような電気特性は得られない。したがって、この場合も、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することはできない。
【0032】
以上のように、カーボンと、PEE、POEおよび/またはPEAという特定の導電剤を組み合わせ、かつその含有質量比率(A/B)が特定の範囲になったときにのみ、導電機構が変化する。そして、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立になったのではないかと考えられる。
【0033】
以上、転写材搬送ベルトの特性について説明してきたが、本発明のベルトは、中間転写ベルトとして用いた場合でも、パッチ検知補正時の水玉画像が防止でき、かつ再転写が少ないと言う、従来にない効果が得られる。
【0034】
これは、以下のように考えられる。
中間転写ベルトを用いた電子写真装置においても、転写材搬送ベルトを用いた電子写真装置と同様に、パッチ検知補正を行う。このため、パッチ画像の水玉模様が発生しない特性は、中間転写ベルトにも、転写材搬送ベルトにも共通して求められる。そして先に述べたように、パッチ画像の水玉模様を防止するためには、除電速度を速めるために、ベルトの抵抗を下げることが有効である。中間転写ベルトの場合には、紙を吸着する機能は不要であるが、ベルトの抵抗を下げると、再転写が悪化する。
特に、高温高湿環境では、ベルトの抵抗が下がりやすいので、再転写が顕著に現れ、画像濃度が大幅に低下してしまう。このように、中間転写ベルトの場合、パッチ画像の水玉模様の防止と、(特に高温高湿環境における)再転写の防止を両立することが、極めて困難である。
【0035】
しかしながら、本発明のベルトを中間転写ベルトとして用いた場合には、先に述べたように、過大な電荷は素早く除電するが、適度な電荷は保持するという性質が発揮される。そのことにより、パッチ画像の水玉模様の防止と、(特に高温高湿環境における)再転写の防止の両立が可能となる。
さらに、上記配合に、縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどの、多価アルコール型非イオン系界面活性剤を添加すると、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性をさらに高い次元で両立可能である。
【0036】
多価アルコール型非イオン系界面活性剤が、吸着力と、繰り返し画像出力時の画像濃安定性の両立に寄与する真の理由は不明であるが、以下のように推測される。すなわち、PVDFは、その構造上、分子内で大きく分極しており、他の樹脂と比較して、界面活性剤との相性が良い。界面活性剤には、アニオン系、カチオン系、ノニオン系があるが、アニオン系とカチオン系の界面活性剤は、PVDFに添加すると、界面活性剤が電離して、イオン導電剤の働きをする。その結果、吸着力が低下するため、好ましくない。これに対して、ノニオン系の界面活性剤は、イオンに解離しない。その上、多価アルコール型であれば、界面活性剤の酸素原子と、PVDFの水素原子が水素結合しやすく、相溶性に優れる。このため、多価アルコール型非イオン系界面活性剤は、多量に添加しない限り、PVDFから阻害されてベルト表面や裏面に移行するのではなく、ベルトの断面方向において、ほぼ均一な濃度で存在していると思われる。この界面活性剤の存在が、ベルトのポテンシャル障壁を変化させ、過大な電荷は素早く除電するが、適度な電荷は保持できるという性質が、さらに発揮されやすくなっているのではないかと考えられる。
【0037】
さらに、多価アルコール型非イオン系界面活性剤の量(C)とカーボンの量(A)との含有質量比(C/A)について検討したところ、C/Aが0.01未満の場合には、多価アルコール型非イオン系界面活性剤の効果が小さいことがわかった。
また、C/Aが0.3より大きい場合も、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性が、多価アルコール型非イオン系界面活性剤を添加しないときと、あまり差がないことがわかった。
【0038】
多価アルコール型非イオン系界面活性剤の添加量上限が、カーボンの量との比率で決まるという現象は意外であった。おそらく、多価アルコール型非イオン系界面活性剤とカーボンは、共にPVDFの非結晶部に存在している。そのため、カーボンの隣り合うアグリゲートの間に、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が存在することで、アグリゲート間のポテンシャル障壁が変化するためではないかと考えられる。以上の結果から、C/Aの好ましい範囲は、0.01以上0.3以下であることがわかった。
【0039】
次に、本発明のベルトを製造するための、好ましい様態について説明する。
本発明において、ポリフッ化ビニリデンとは、フッ化ビニリデンのホモポリマーおよび、フッ化ビニリデンとコモノマーとを共重合体したコポリマーを指す。共重合に用いるコモノマーとしては、6フッ化プロピレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられ、該コモノマーの含有率は5〜15モル%程度である。ただし、吸着力の強化と水玉模様の防止を両立するためには、ホモポリマーの方が有利であった。ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーにおいては、頭−頭(Head−to−head)結合になっている部分と、頭−尾結合(Head−to−Tail)結合になっている部分が混在する場合が多いが、それらの比率が本発明の効果に影響することはない。
【0040】
本発明で使用されるカーボンとして好ましいのは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックの中でも、ベルトの外観を損なわないために、分散性の良いアセチレンブラックが特に好ましい。また、カーボンとしては前記のカーボンブラックだけを用いても良いが、カーボンブラックと、平均粒子径が1〜20μmの黒鉛粉末を併用すると、画像濃度の安定性がさらに向上して好ましい。
【0041】
黒鉛を併用すると、画像濃度の安定性が向上する理由は定かでない。一般にカーボンブラックの一次粒子径が0.01〜0.1μm程度であるのに対して、本発明で好ましく用いられる黒鉛の粒子径は1〜20μmと大きい。したがって、黒鉛がカーボンブラックのアグリゲートをつなぐ役割を果たし、高電界強度におけるベルトの除電が速くなるためではないかと考えられる。
【0042】
ここで、黒鉛の平均粒子径の求め方について説明する。
まず、ベルトを図11aに示したように、ベルト表面と水平な面でスライスする。スライス面は、ベルトの厚さ方向に対して中央位置とする。スライス面を真上から、走査電子顕微鏡(SEM)で観察する(図11b)。観察倍率は、走査電子顕微鏡の観察視野の中に、黒鉛粒子が50〜100個程度観察される倍率とする。観察された視野の中から、黒鉛粒子をランダムに30個選び出す。選び出した30個の黒鉛粒子の観察面積(走査電子顕微鏡で観察したときの面積)を、それぞれ求める。次に、求められた30個の観察面積を、相加平均する。最後に、該相加平均値と同じ面積を有する円の直径を算出し、これを黒鉛の平均粒子径とする。
【0043】
また、カーボンブラックの一次粒子径の求め方についても説明する。
まず、ベルトを図11aに示したように、ベルト表面と水平な面で、薄く切り出す。切り出す位置は、ベルトの厚み方向に対して中央部とする。
切り出したサンプルのスライス面を、透過電子顕微鏡(TEM)で観察する。観察倍率は、透過電子顕微鏡の観察視野の中に、カーボンブラックの一次粒子が50〜100個程度観察される倍率とする。観察された視野の中から、カーボンブラックの一次粒子をランダムに30個選び出す。選び出した各粒子の観察面積(透過電子顕微鏡で観察したときの面積)を、それぞれ求める。次に、求められた30個の観察面積を、相加平均する。最後に、該相加平均値と同じ面積を有する円の直径を算出し、これをカーボンブラックの一次粒子径とする。
【0044】
カーボンブラックと黒鉛を併用する場合、カーボンブラックと黒鉛の質量比率は、双方の合計を100としたときに、カーボンブラック:黒鉛=10:90から、90:10の範囲にすると良い。カーボンブラックと黒鉛の合計質量に対して、カーボンブラックの質量が10%未満であると、吸着力と画像濃度の安定性を両立することが困難になる。これは、カーボンブラックのアグリゲートが少なすぎて、過大な電荷は素早く除電するが、適度な電荷は保持するという性質が発揮できなくなってくるためではないかと考えられる。カーボンブラックと黒鉛の合計質量に対して、カーボンブラックの質量が90%より多くなると、黒鉛による画像濃度のさらなる安定化効果がなくなる。
【0045】
また、エポキシ基、グリシジル基、オキサゾリン基、アミノ基などの反応性官能基を有するポリマー、オリゴマーあるいはモノマーを、カーボンブラックの表面にグラフト鎖として結合させた、グラフト化カーボンブラックが知られている。カーボンブラックの分散性を向上させるためである。上記反応性官能基を有するポリマー、オリゴマーあるいはモノマーはカーボンブラックの表面に存在するフリーラジカル、カルボキシル基などとの化学反応を利用して、カーボンブラックの表面にグラフト鎖として結合させてある。
【0046】
しかし、本発明者らの検討によれば、グラフト化カーボンブラックは、水玉模様と吸着力を両立させるという観点では、グラフト化していないカーボンブラックと比べ、あまり好ましくなかった。その理由は定かでないが、カーボンブラックの分散状態が変わること、カーボンブラックとポリフッ化ビニリデンの間にグラフト鎖が存在することで、界面エネルギーが変化し、得られる樹脂組成物の電気特性に影響を与えるためではないかと考えられる。
【0047】
本発明で使用されるポリエーテルエステルアミド(PEEA)とは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11またはポリアミド12などのポリアミドブロック単位と、ポリエーテルエステル単位とからなるブロック共重合体である。そして、炭素数6以上のラクタムまたはアミノカルボン酸の塩(a)、ポリエチレングリコール(b)および炭素数4〜20のジカルボン酸(c)から誘導された共重合体である。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸などである。
【0048】
本発明で使用されるポリエーテルアミド(PEA)とは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11またはポリアミド12などのポリアミドブロック単位と、ポリエーテル単位とからなるブロック共重合体である。そして、実質的には、ポリエチレングリコールジアミンと、ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、ε−カプロラクタムを主たる成分とする共重合体をいう。
【0049】
本発明で使用されるポリオレフィンエーテル(POE)とは、ポリオレフィンのブロックと、ポリオキシエチレン鎖を有するポリマーのブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーである。ポリオレフィンのブロックと、ポリオキシエチレン鎖を有するポリマーのブロックとの結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合およびイミド結合からなる群より選択される少なくとも一種の結合を介している。ポリオレフィンのブロックには、カルボニル基(好ましくはカルボキシル基)、水酸基およびアミノ基を両末端に有するポリオレフィンが使用できる。
【0050】
次に本発明者らは、ポリフッ化ビニリデン、カーボン、ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテル、ポリエーテルアミドの好ましい含有量についてさらに詳細な検討を行い、それぞれについて、好ましい範囲が存在することがわかった。
すなわち、ポリフッ化ビニリデンの含有量Mは、ベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して、50.0〜97.9質量%が好ましい。50.0質量%より少ないと、ポリフッ化ビニリデンの好ましい特性であるクリーニング性が発揮されにくくなる。97.9質量%より多いと、ポリフッ化ビニリデンの持つ結晶性が強く現れ、成形されたベルトの寸法変化が大きくなる。すると、ベルトの張架ユニットの寸法許容範囲を大きくする必要が生じるため、電子写真装置の小型化の観点から好ましくない。
【0051】
カーボンの含有量Aは、ベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して、2〜15質量%が好ましい。2質量%より少ないと、導電経路が不足し、水玉模様の防止効果が薄れる。15質量%より多いと、ベルトが脆くなり、耐久性が低下する。A/Bの好ましい範囲は、6〜20である。
【0052】
ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテル、ポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1つの樹脂の含有量Bは、ベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して0.1〜1.8質量%が好ましい。0.1質量%未満であると、実質的にカーボンのみを配合したベルトに近づく。すると、転写材搬送ベルトの場合には吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することが困難になる。中間転写ベルトの場合には、再転写の防止と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することが困難になる。1.8質量%より多いと、ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテル、ポリエーテルアミドの性質が強く現れ、転写材搬送ベルトの場合には吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することが困難になる。すると、中間転写ベルトの場合には、再転写と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立することが困難になる。ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテル、ポリエーテルアミドの含有量の最も好ましい範囲は、ベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して、0.1〜0.9質量%である。
【0053】
本発明に用いられる多価アルコール型非イオン界面活性剤としては、以下のものが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンと脂肪酸とのエステル反応により得られる化合物)、ペンタエリトリット脂肪酸エステル(ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル反応により得られる化合物),ソルビット脂肪酸エステル(D−ソルビトールと脂肪酸とのエステル反応により得られる化合物),ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンと脂肪酸とのエステル反応により得られる化合物)。
【0054】
これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステルは、PVDFと相溶しやすく、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立しやすい。
【0055】
グリセリン脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルが挙げられる。
【0056】
縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステルは、リシノレイン酸を縮合した縮合リシノレイン酸と、ポリグリセリンとのエステル反応により得られる化合物である。前記ポリグリセリンは、グリセリンを重合して得られるものであるが、その重合度には分布を有しているため、グリセリンや、重合度の低いジグリセリンも含有する混合物となるが、主成分は、重合度3〜10のグリセリン、および環状ポリグリセリンである。
【0057】
ポリグリセリンステアリン酸エステルは、ステアリン酸と、ポリグリセリンとのエステル反応により得られる化合物である。該ポリグリセリンも、グリセリンを重合して得られるものであるが、その重合度には分布を有しているため、グリセリンや、重合度の低いジグリセリンも含有する混合物となるが、主成分は、重合度3〜10のグリセリン、および環状ポリグリセリンである。
【0058】
本発明においては、電解質を少量添加することもできる。好ましい電解質として、パーフロロアルキル基を有する金属塩が挙げられ、最も好ましい電解質として、パーフロロブタンスルホン酸カリウムが挙げられる。電解質を添加する場合には、ベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して、1.0質量%以下とすることが好ましい。1.0質量%より多く添加すると、転写材搬送ベルトの場合には吸着力が低下、中間転写ベルトの場合には再転写防止性が悪化し、再転写防止性と水玉模様防止性(繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性)との両立が困難になる。
【0059】
また、本発明においては、導電処理を施していない酸化亜鉛、導電処理を施していない酸化チタン、タルク、マイカ、シリカなどのフィラーを添加することもできる。ポリフッ化ビニリデンにフィラーを添加すると、脆くなりやすいが、酸化亜鉛は、添加してもベルトが脆くなりにくいため、特に好ましい。さらに酸化亜鉛は、水玉模様の発生防止に効果があった。その理由は、導電処理を施していない酸化亜鉛は絶縁性であるが、酸化亜鉛が有するバリスタ特性によって、高電界が緩和され、ベルト電位の過剰な上昇が抑えられるためではないかと考えられる。そして、導電処理していない酸化亜鉛の表面を、シランカップリング剤や、ジメチルシリコーンオイルなどのシロキサン結合を有する化合物で疎水化処理すると、酸化亜鉛粒子に水が吸着しにくくなるので、ベルト抵抗の環境依存性を低減できる。その結果、高温高湿環境における紙の吸着力の低下を最小限に抑えることができて好ましい。フィラーを添加する場合には、その添加量はベルトに用いられる樹脂組成物の全質量に対して、40質量%以下とすることが好ましい。40質量%より多く添加すると、ベルトが脆くなり、耐久性が低下する。最も好ましいフィラーの添加量範囲は、1〜15質量%である。
【0060】
さらに、発明の効果を阻害しない範囲で、ポリフッ化ビニリデン、PEE、POEおよび/またはPEAの他に、それ以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0061】
例えば、以下のものを挙げることができる。
ポリオレフィン,エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH),ポリスチレン,ポリアクリロニトリル,ABS樹脂,ポリアセタール,メタクリル樹脂,変性ポリフェニレンエーテル,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリアミドイミド,熱可塑性ポリイミド,ポリエーテル・エーテルケトン,脂肪族ポリケトン,ポリメチルペンテン,フッ素樹脂(エチレン−4フッ化エチレン共重合体,4フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体,フッ化エチレンプロピレン共重合体,4フッ化エチレンなど)。
【0062】
本発明のベルトのうち、多価アルコール型非イオン界面活性剤を用いたベルトを得るにあたって、
あらかじめPVDFと、カーボンと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤とを溶融混練(一次混練)し、粉砕して粉砕物を得、
次に該粉砕物と、PVDFと、PEE、POEおよび/またはPEAとを溶融混練(二次混練)して混練物を得、該混練物を溶融成形によってチューブ状に成形するとき、多価アルコール型非イオン系界面活性剤を添加したことによる、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立する効果が高まる。一次混練時において、カーボンと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤とが十分に馴染むことで、最終的に得られる樹脂組成物の電気特性が、過大な電荷は素早く除電するが、適度な電荷は保持するという性質を発揮しやすくなるためではないか、と思われる。
【0063】
上記の一次混練にあたっては、混練装置として、ニーダー、バンバリーミキサなどの装置を用いることが出来る。ニーダーを用いる場合、ニーダーの混合翼の形状は特に限定されないが、Z形(Σ形とも言う)、H形、フィッシュテール形、ディスパージョン形などを用いることができる。一次混練を行うにあたっては、まず、空のニーダーを170〜200℃に加熱しておく。そこにPVDFのペレットを投入して、攪拌混合する。PVDFが融解したところで、カーボンと多価アルコール型非イオン系界面活性剤を少量づつ投入しながら、カーボン濃度が15〜40質量%になるまで、カーボンと多価アルコール型非イオン系界面活性剤との投入を続けると良い。一次混練物中のカーボン濃度が15質量%未満であると、一次混練物の溶融粘度が低すぎて、カーボンの分散が進みにくいため、一次混練工程を経ることによる、繰り返し使用時の画像濃度の安定性と吸着力を高次元でバランスさせる効果が薄れる。また、一次混練物中のカーボン濃度が40質量%を超えると、一次混練時の発熱が大きく、十分に混練が進行する前に、PVDFの熱分解が発生しやすくなる。
【0064】
混練時間は特に限定されるものではないが、30分から5時間程度が好ましい。30分以下であると、一次混練を経ることによる、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立する効果が得られにくい。5時間以上になると、PVDFの熱劣化が進行するため、樹脂組成物の機械強度の低下を招きやすい。なお、ニーダーは、加圧式のニーダーを用いると、溶融混練が促進されて好ましい。
【0065】
このようにして得られた一次混練物を粉砕し、該粉砕物と、PVDFと、PEE、POEおよび/またはPEAとを二次混練する。該二次混練物を、一旦冷却してペレット形状にし、該ペレットを、溶融成形によって、ベルトに加工する。二次混練時に用いる混練装置としては、一般の一軸、あるいは2軸押し出し機を用いることができる。PEE、POEおよび/またはPEAは、二次混練の時点で、初めて添加されるので、樹脂組成物に、PEE、POEおよび/またはPEAを、より均一に分散するためには、二次混練装置としては、1軸押し出し機よりも、2軸押し出し機を使用することが好ましい。
【0066】
二次混練を経て得られたペレットは、環状ダイスを用いた溶融成形によって、チューブ状に成形してベルトを得ることが好ましい。環状ダイスを用いた溶融成形の中でも、とりわけ、インフレーション成形を行うと、本発明の樹脂組成物の特徴である、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立できるという効果を引き出しやすい。インフレーション成形においては、環状ダイスから押し出されたチューブが、周方向と軸方向の双方向に引き伸ばされながら冷却される。そのため、樹脂組成物中で島状に分散しているPEE、POEおよび/またはPEAが、主に軸方向(押し出し方向=MD方向)に、そして適度に周方向(TD方向)に、細長く変形する。このことが、過大な電荷は素早く除電するが、適度な電荷は保持するという性質を引き出すのに有効に働いているのではないかと考えられる。
【0067】
インフレーション成形の成形条件としては、ブロー比(固化した状態のチューブ直径と、環状ダイスのリップの外直径との比率)を1.2以上3.5以下とすると良い。ブロー比を3.5より大きくすると、ベルト内のカーボン間の距離が広がりすぎて、水玉模様が発生しやすくなる。ブロー比が1.2未満であると、周方向に引き伸ばされる量が少なすぎて、インフレーション成形による、適度なPEE、POEおよび/またはPEAの変形効果が発揮されにくい。インフレーション成形では、押し出されたチューブを、ピンチロールで引き取るが、そのときの速度は、3〜20m/分が好ましい。引き取り速度が3m/分より遅くなると、チューブ直径が安定しなくなり、インフレーション成形が極めて不安定になる。引き取り速度が20m/分より速くなると、メルトフラクチャーが発生しやすくなり、カーボン間の距離の一様性が失われ、水玉模様が発生しやすくなる。より好ましい引き取り速度範囲は、5〜15m/分である。成形時のダイス温度は、190〜270℃とする。ダイス温度が190℃未満であると、PEE、POEおよび/またはPEAが低温側で急速に粘度が高くなる性質を有しているため、樹脂組成物中のPEE、POEおよび/またはPEAが、細かな島状に分散しにくくなる。その結果、吸着力と繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を両立しにくくなる。ダイス温度が270℃より高いと、PEE、POEおよび/またはPEAが熱分解しやすくなる。
【0068】
本発明のベルトの平均厚さは、60〜130μmが好ましい。60μm未満であると、ベルトの強度が不足し、耐久中に破断しやすくなる。130μmより厚いと、ベルトの静電容量が増加し、電子写真感光体とのニップ通過時のベルト電位が上昇しやすくなって、水玉模様が発生しやすくなる。これを回避するために導電剤を増量すると、転写材搬送ベルトの場合には吸着力が低下し、中間転写ベルトの場合には再転写が悪化するため、吸着力あるいは再転写防止性と、水玉模様防止性の両立が困難になる。より好ましい厚さの範囲は、70〜120μmである。
【0069】
本発明のベルトの体積抵抗率は、以下に述べる測定方法にて、2×1010(Ω・cm)〜5×1014(Ω・cm)の範囲が好ましい。体積抵抗率が2×1010(Ω・cm)より低いと、転写材搬送ベルトとして用いた場合、吸着力が低下するため、特に吸着ローラーのない電子写真装置に場合には、不利である。また、中間転写ベルトとして使用した場合には、再転写が発生しやすくなり、不利である。5×1014(Ω・cm)よりも体積抵抗率が高いと、水玉模様が発生しやすくなる。転写材搬送ベルト、中間転写ベルトを問わず、より好ましい体積抵抗率の範囲は、5×1010(Ω・cm)〜8×1013(Ω・cm)であり、最も好ましい範囲は、1×1011(Ω・cm)〜8×1013(Ω・cm)である。
【0070】
体積抵抗率は、以下のように測定する。
<測定器>
抵抗計:超高抵抗計R8340A(アドバンテスト社製)
試料箱:超高抵抗計測定用試料箱TR42(アドバンテスト社製)
(主電極はφ22mm厚さ10mmの金属、ガードリング電極は内径41mm、外径49mm厚さ10mmの金属とする)
【0071】
<サンプル>
ベルトから直径56mmの円形の試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極を設ける。もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径25mmの主電極膜と、内径38mm、外径50mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。測定時には、直径22mmの主電極を、直径25mmの主電極膜からはみ出さないように該膜の上に置く。また、内径41mmのガードリング電極を、内径38mm、外径50mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、電極膜の上に置いて測定する。
【0072】
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/50%RH
(測定サンプルは、あらかじめ測定雰囲気に24時間放置しておく)
測定モード:プログラムモード5
(チャージおよびメジャー30秒、ディスチャージ10秒)
印加電圧:100(V)
その他の条件および体積抵抗率の計算は、ASTM−D257−78に準拠する。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
2軸押し出し機を利用して、表1の配合からなるペレットを作製した。次に、該ペレットを、図5に示すインフレーション成形装置を用いてインフレーション成形した。ここで、図6に示すように、エアリング200には、一本200(W)のカートリッジヒーターが、直径700mmのピッチ円(PCD700)上に40本内蔵されている。各ヒーターを挟みこむように、銅板(ヒートシンク)2枚を1対として、各カートリッジヒーターに取り付けた(図7および図8参照)。
なお、図6から明らかなように、エアリング内部は周方向に仕切られていない。また、エアリング200へのエア供給口210は、不図示の送風手段(ブロワ)に接続されており、ここを通じて送風されたエアが、エアリング200の内部で周方向の流量が均一化され、図6の噴出し口から出てくる。
【0074】
インフレーション成形開始時、図6のカートリッジヒーターの出力はすべてゼロである。この状態でインフレーション成形を開始し、得られたチューブの周方向の膜厚を測定した。そして、該測定位相に対応する位置のカートリッジヒーターへの投入電力(発熱量)が、膜厚測定値と直線関係になるように、つまり、各測定位相におけるチューブの厚さから、一定の値(切片B)を減算した。そして、これに比例係数Aを乗算した値を、各測定位相に対応する位置のヒーター出力として、ヒーターを発熱させた(フィードバック制御)。この操作により、インフレーション成形により得られるチューブの周方向の膜厚精度を向上させた。本実施例では、5秒を1サイクルとして、ヒーターONの時間を変えることで、ヒーターへの投入電力を制御した。例えば、出力30%の場合は、1.5秒間ONで、3.5秒間OFF、の繰り返しになる。もちろん、ヒーターに供給する電圧を可変にすることで、ヒーターへの投入電力を制御しても良い。
【0075】
安定板(安定部材)170は、その下端が、押し出されたチューブが固化した後にチューブに触れるような高さに調整した。環状ダイス140のダイリップは、外径100mm、内径98.4mmである。溶融した樹脂組成物は、ダイリップから環状(チューブ状)に押し出され、チューブの内部にエアを導入することで、引き取り過程において、直径約153mmに膨張させた。したがって、本実施例におけるブロー比は、1.53(153mm÷100mm)である。また、ピンチロール180によるチューブの引き取り速度は、9m/分にした。引き取ったチューブを、カッター190で所定の長さにカットした。
【0076】
インフレーション成形により得られたチューブ(インフレーションチューブ)には、折り目があるので、これを除去する必要がある。まず、外周面にPFA製のチューブ(PFAチューブ)を有し、該PFAチューブの両端を封止してPFAチューブ内を密封可能な構造とした内型を準備し、その外周にインフレーションチューブを被せた。さらにその外周に、厚さ0.5mmのニッケル製の筒(外型)を被せた。なお、該外型の外周面には、黒色の耐熱塗料が塗られており、遠赤外線を吸収し、素早く加熱できるようになっている。
【0077】
内型の外側に、インフレーションチューブを被せた後、内型の内部に0.4(MPa)の圧縮空気を送り込んで、内型外周面のPFAチューブを膨らませることで、インフレーションチューブの内周面をPFAの外周面と密着させた。かつ、インフレーションチューブの外周面をニッケル製外型の内周面と密着させた。この状態で、外型外周面をハロゲンヒーターで175℃になるまで加熱(再加熱)し、その後、30℃まで冷却した。この操作により、インフレーション成形工程で形成されたPVDFの結晶を一旦溶かし、PVDFを再結晶化させた。
【0078】
冷却終了後、内型内部に密封していた圧縮空気を排出して、インフレーションチューブの内型と外型への密着を解除し、インフレーションチューブを取り出した。
該操作により、インフレーションチューブの折り目は消失した。次に、蛇行防止ガイドを内周面に取り付け、幅をカットして、周長480mm、幅245mm、厚さ100μmのベルトを得た。
得られたベルトを、転写材搬送ベルト24として、図4のような電子写真装置に組み込んだ。
【0079】
図4において、1−Y、1−M、1−C、1−BKは、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下「感光ドラム」ともいう)であり、矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。感光ドラムの外径は、4本とも24mmであり、4本の感光ドラムの回転軸は、ほぼ一直線上に配置され、隣あう感光ドラムの回転軸の中心は、互いに45mm離れている。
【0080】
図4の電子写真装置は、吸着ローラーを有していないが、本発明のベルトは、転写材の吸着力に優れるので、1色目の感光ドラム(図4の場合は、1−Y)の回転軸と、4色目の感光ドラム(図4の場合は、1−Bk)の回転軸とを結ぶ直線が、水平線に対して45〜135°の角度を有していても、色ズレを悪化させることがない。本実施例では、その角度を80°とした。
【0081】
転写ローラー22の抵抗値は、1D10〜1D10(Ω)のものを用いることができる。(注:抵抗値の単位はΩであって、Ωcmではない。)本実施例では、5D10(Ω)の転写ローラーを用いた。なお、転写ローラーの抵抗測定には、図9に示す装置を用いた。
【0082】
図9において、アルミシリンダーは外径24mmであり、周速度が50mm/秒になるように回転駆動される。その上に転写ローラー22が置かれ、転写ローラー22の軸の両端には、500gfずつの荷重をかけられている。これによって、転写ローラー22はアルミシリンダーに当接され、アルミシリンダーの回転に従動して回転する。この回転状態で、高圧電源から、転写ローラー22の芯金に、+1000Vの直流を印加する。次に、アルミシリンダーの下流に接続された電圧計で、検出抵抗(1kΩ)の両端の電位差を読み取る。この電位差から、回路に流れる電流値(アルミシリンダーに流れ込んだ電流値)を計算し、印加電圧(1000V)を該電流値で除して、転写ローラー22の抵抗を算出する。なお、抵抗測定は、図9の装置および被測定物を23℃/55%RHの環境に24時間以上放置した後に、23℃/55%RHの環境で行う。
【0083】
以下に、図1について、第1の色成分像(例えばイエロー色成分像)が形成される過程を説明する。
感光ドラム1−Yは回転過程で、1次帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段による像露光3を受ける。このようにしてカラー画像の第1の色成分像(この例ではイエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成される。
次いで、その静電潜像が第1の現像器(イエロー色現像器41)によりイエロー成分トナー像に現像される。このようにして感光ドラム1−Y上に第1色(イエロー)のトナー像が形成される。そして、所定のタイミングで、感光ドラム1−M、1−C、1−BK上にも第2色〜第4色のトナー像が形成される。
【0084】
一方、転写材搬送ベルト24は矢印の方向に感光ドラムとほぼ同じ周速度あるいは感光ドラムに対して所定の周速差(多くの場合、転写材搬送ベルトの方が感光ドラムよりも速い)を有して回転駆動されている。そして、所定のタイミングで、給紙ローラー11から転写材搬送ベルト24に転写材Pが給送され、転写材Pは転写材搬送ベルト24に吸着され、転写材搬送ベルトの回転に伴って転写材Pが搬送されていく。
【0085】
ベルトの転写ニップ(感光ドラムと転写ローラー22が転写材搬送ベルト24を介して対峙する部分)を、転写材Pが通過する際、バイアス電源28を通じて転写ローラー22に転写バイアスが印加される。これによって、電子写真感光体上のトナー像は転写材Pに転写されてゆく。つまり、まず第1色成分であるイエロートナー像が、続いて第2色成分であるマゼンタトナー像が、続いて第3色成分であるシアントナー像が、そして最後に第4色成分であるブラックトナー像が、転写材Pの搬送過程で、転写材Pの上に順次積層転写さてゆく。このときの転写バイアスは、トナーの極性によって異なるが、例えば−3kV〜+3kV程度である(転写バイアスは、トナーの極性とは異なる極性にする)。転写材搬送ベルト24のクリーニングは、転写ローラー22にトナーと同極性のバイアスを印加することで、転写材搬送ベルト24上のトナーを電子写真感光体に戻す、いわゆる静電クリーニング方式とした。なお、電子写真感光体1−Y〜1−BKは、20μmの電荷輸送層を持ち、像露光前の電位(Vd)が−600(V)、像露光後の電位(Vl)が−150(V)となるように一次帯電および露光を行った。転写材搬送ベルトの移動速度は50mm/秒である。トナーは、非磁性一成分のネガトナーを用いた。
以上が、電子写真装置の動作概略である。
【0086】
次に、以下に示すようにして、水玉模様、色ズレ、後端横スジの評価を行った。
<水玉模様の評価>
繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を直接測定する代わりに、水玉模様の評価を行った。試験環境は、23℃/55%RHとした。なお、あらかじめ、転写材搬送ベルトを組み込んだ電子写真装置を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。
まず、各色について、20mm四方の大きさのトナー像(パッチ画像)を、ベルト上に並べて転写した。もちろん、このときには転写材を使用していない。つまり、電子写真感光体に形成されたトナー像を直接、転写材搬送ベルト上に転写した。なお、4色のパッチの、ベルト上の濃度(ベルト上のトナー載り量)が、0.3±0.1(mg/cm)になるように、現像バイアスを調節した。転写バイアスは、全色とも+1300(V)とした。
【0087】
4色のパッチを、転写材搬送ベルト上に転写し終えた直後に、電子写真装置の電源をOFFにして、転写材搬送ベルト上に掲載されたパッチ画像の濃度の均一性を、目視で確認した。水玉模様の評価基準は以下の通り。評価結果を表7に示す。
A:水玉模様は、まったく発生していない。
B:かすかに水玉模様の発生が認められるが、凝視しないと判別できない。パッチ画像濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチを読み取ったときと、同等の出力が得られた。
C:凝視しなくても判別できる水玉模様が認められる。ただし軽微であり、パッチ画像濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチ画像を読み取ったときと、同等の出力が得られた。
D:水玉模様が、はっきりと認められる。パッチ画像濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチを読み取ったときとは異なる出力が得られた。
【0088】
<色ズレの評価>
紙の吸着力が、直接画質に影響する1つ目の項目として、色ズレの評価を行った。
試験環境は、30℃/80%RHとした。なお、あらかじめ、転写材搬送ベルトを組み込んだ電子写真装置と下記2種類の転写材を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。
なお、転写材は、250枚あるいは500枚で一冊として包装されているが、紙を十分に吸湿させるため、該包装を解き、紙が10枚以上重ならないようにして、放置したものを用いた。
【0089】
まず、図10に示すように、転写材の中央部に、線幅(線の太さ)100μm、長さ5mmの横線を、4色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)横一列に、5mmの間隔をおいて並べた。これを1行とするとき、該行を用紙の縦方向に2mmづつずらし、合計130行描画した画像を出力した。(A4用紙の上下両端部約20mmを空白とし、中央部258mmに画像を出力。左右方向に対する描画位置は、紙幅の中央とする。)次に、各行において、ブラックの横線を基準として、シアン、マゼンタ、イエローの横線が、縦方向にどれだけずれているか、その絶対値を測定し、その絶対値の最大値を、その行における色ズレ値とした。そして、1行目から130行目までの各行における色ズレ値の最大値を、そのページ内における色ズレ量(μm)とした。本発明において、単に「色ズレ」と称するときは、この「ページ内における色ズレ量(μm)」を指す。
このような評価を、下記2種類の紙について行った。
紙1:CLC(カラーレーザーコピア)用紙(キヤノン社製、A4サイズ、坪量=81.4g/m
紙2:CLC用厚口用紙NS700(キヤノン社製、A4サイズ、坪量=157g/m2)
【0090】
なお、転写バイアスは、用いる紙によって、下記のように値を変えた。
CLC用紙(坪量=81.4g/m)を用いる場合:4色共に+800(v)
CLC用厚口用紙(坪量=157g/m)を用いる場合:4色共に+900(V)
厚口用紙の場合に、転写バイアスを高めにしたのは、紙が厚い分、紙の抵抗が高いので、トナーを良好に転写するためには、より高い転写バイアスが必要となるからである。
【0091】
色ズレ量による判定基準は、紙によらず、以下の通り。評価結果を表7に示す。
200μm以下:A
200μmより大きく220μm以下:B
220μmより大きく240μm以下:C
240μmより大きく260μm以下:D
260μmより大きい:DD
【0092】
<後端横スジ>
紙の吸着力が、直接画質に影響する二つ目の項目として、後端横スジの評価を行った。
試験環境は、30℃/80%RHとした。なお、あらかじめ、転写材搬送ベルトを組み込んだ電子写真装置と上記2種類の転写材を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。
なお、転写材は、250枚あるいは500枚で一冊として包装されているが、紙を十分に吸湿させるため、該包装を解き、紙が10枚以上重ならないようにして、放置したものを用いた。
【0093】
まず、600dpiで横線状に1ドット露光ONし、横線状に2ドット露光OFFを繰り返す潜像パターンを、感光ドラム1−Bkに露光により形成し、これを通常の画像出力条件でプリントし、黒のハーフトーン画像を出力した。後端横スジは、紙の後端が、3つめの感光ドラム1−Cとのニップを通過し、転写材が4つ目の感光ドラム1−BKのみでニップされる状態になったときに、転写材搬送ベルトの吸着力が弱いと、黒画像の転写中に紙の後端がばたつき、出現する(横スジ状の濃度ムラとして)。本実施例では、隣り合う電子写真感光体の回転軸の距離は45mmであるから、後端横スジは、転写材の後端から、約45mmの位置に発生する。
なお、転写バイアスは、色ズレの評価と同様に、用いる紙によって、値を変えた。
CLC用紙(坪量=81.4g/m)を用いる場合:4色共に+800(v)
CLC用厚口用紙(坪量=157g/m)を用いる場合:4色共に+900(V)
厚口用紙の場合に、転写バイアスを高めにした理由は、色ズレの評価において述べた理由と同じである。
【0094】
転写材上に現れた横スジ状の濃度ムラを、目視評価した。
評価基準は、紙によらず、以下の通りとした。評価結果を表7に示す。
A:後端横スジは、まったく発生していない。
B:かすかに後端横スジの発生が認められるが、凝視しないと判別できない。
C:凝視しなくても判別できる程度の後端横スジの発生が認められるが、軽微である。
D:後端横スジが、はっきりと認められる。
【0095】
[実施例2]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例では、A/B=50であるので、実施例1と比較すると、水玉模様防止と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)のレベルが劣った。
また、10000枚耐久後、パッチ画像に極めて軽微な樹枝状の模様が認められたが、パッチ濃度を誤って読み取るほどのレベルではなかったため、画像濃度の安定性は、初期と同等であった。
【0096】
[実施例3]
配合を表1のように変え、厚みを100μmから60μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0097】
[実施例4]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例では、PEEAの量が1.8質量%と多めである上に、PEEAに対するカーボンの量(A/B)が4と少なめであるので、実施例3と比較すると、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)のレベルが劣った。
【0098】
[実施例5]
配合を表1のように変え、厚みを100μmから130μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0099】
[実施例6]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0100】
[実施例7]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0101】
[実施例8]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例では、A/Bが20であるため、10000枚耐久後のパッチ画像に、樹枝状の模様は、全く認められなかった。
【0102】
[実施例9]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。本実施例では、PEEAとPOEを配合した。また、カーボンも2種類使用した。結果を表7に示す。
【0103】
[実施例10]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例では、フィラーの添加量が多いため、10000枚耐久後に、ベルトに軽微なひび割れが認められた。
【0104】
[実施例11]
配合を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例のフィラー添加量は、実施例10より少ないため、10000枚耐久後に、ベルトにひび割れは認められなかった。
【0105】
[製造例1]グラフト化カーボンの製造
グラフト鎖用モノマーとしてスチレン70質量部、
ブチルメタクリレート20質量部、
グリシジルメタクリレート8.5質量部、
連鎖移動剤として4臭化炭素0.5質量部、
ラジカル発生剤としてアゾビスイソブチロニトリル1質量部、
の混合物に対して、ポりビニルアルコールの1%水溶液100質量部を加え、攪拌装置と窒素ガス導入管を取り付けた反応容器に仕込み、反応容器内を窒素気流下で80℃に保って、激しく攪拌しながら、10時間重合させた。重合生成物をろ過、洗浄、乾燥して、グラフト鎖用ポリマーを得た。該グラフト鎖用カーボン100質量部と、ファーネスブラック(MA100R三菱化学製)15質量部とを180℃のニーダーで30分間混練して、グラフト化カーボンを得た。
【0106】
[実施例12]
製造例1で得られたグラフト化カーボンを用いて、表1に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、ベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
本実施例では、グラフト化カーボンを用いているため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)のレベルが、他の実施例と比較して劣った。
これは、カーボンの表面がグラフト鎖で覆われたことで、カーボンとポリフッ化ビニリデンとの界面エネルギーが変化し、このことがベルトの電気特性に影響を与えて、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)の両立が困難になったものと思われる。
【0107】
[実施例13]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本実施例では、A/Bが20であるため、10000枚耐久後のパッチ画像に、樹枝状の模様は、全く認められなかった。
【0108】
[実施例14]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。本実施例では、A/B=50であるので、10000枚耐久後、パッチ画像に極めて軽微な樹枝状の模様が認められた。ただし、パッチ濃度を誤って読み取るほどのレベルではなかった。結果を表7に示す。
【0109】
[実施例15]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0110】
[実施例16]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0111】
[実施例17]
厚みを150μmに変更した以外は、実施例5と同様にして、ベルトを製造、評価した。本実施例では、ベルトの厚みが150μmと厚いため、ベルトの静電容量が小さい。このため、実施例5よりも水玉模様が悪かった。結果を表7に示す。
【0112】
[実施例18]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0113】
[実施例19]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
【0114】
[実施例20]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。
以上、本発明のベルトが、吸着ローラーを持たない図4の電子写真装置に好適であることを説明してきたが、もちろん、図1のように吸着ローラーを有する電子写真装置に用いることも可能である。
【0115】
[実施例21]
実施例1で得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図3に示す電子写真装置に組み込んだ。電子写真感光体1の外径は、直径46.7mmである。電子写真感光体は、20μmの電荷輸送層を持ち、像露光前の電位(Vd)が−600(V)、像露光後の電位(Vl)が−150(V)となるように一次帯電および露光を行った。中間転写ベルトの移動速度は51mm/秒、電子写真感光体の表面速度は、50mm/秒とした。トナーは、非磁性1成分のネガトナーを用いた。一次転写ローラー6および2次転写ローラー7は、実施例1で用いた転写ローラー22と同じものを使用した。ベルトクリーニング部材9は、図9の装置を用いた転写ローラーの抵抗測定方法と同一の測定方法にて、1×10(Ω)の抵抗値を示す、外径12mmのゴムローラーを用いた。該ローラーに、交流電圧と、電子写真感光体の表面電位と逆極性の直流電圧を重畳した電圧(ここでは、2kHz、2kVppの正弦波交流電圧と、+1kVの直流電圧)を印加し、中間転写ベルト5上のトナーを、電子写真感光体と逆極性に帯電させた。これによって、トナーが電子写真感光体1と中間転写ベルト5との当接部(ニップ部)およびその近傍において、中間転写ベルト5から電子写真感光体1に静電的に転写されるようにした(静電クリーニング)。上記の静電クリーニングによって、中間転写ベルト5をクリーニングし、水玉模様評価用の画像形成動作および再転写評価用の画像形成動作に備えた。なお、水玉模様評価用の画像形成動作時および再転写評価用の画像形成動作時には、ベルトクリーニング部材9は中間転写ベルト5から離間している。
【0116】
以下に示すようにして、水玉模様と再転写の評価を行った。
<水玉模様の評価>
繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を直接測定する代わりに、水玉模様の評価を行った。試験環境は、23℃/55%RHとした。なお、あらかじめ、中間転写ベルトを組み込んだ電子写真装置を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。
まず、各色について、20mm四方の大きさのトナー像(パッチ)を、中間転写ベルト上に、並べて転写した。なお、4色のパッチの、ベルト上の濃度(ベルト上のトナー載り量)が、0.3±0.1(mg/cm)になるように、現像バイアスを調節した。転写バイアスは、全色とも+1300(V)とした。
【0117】
4色のパッチを、中間転写ベルト上に転写し終えた直後、2次転写工程に入る前に、電子写真装置の電源をOFFにして、中間転写ベルト上に掲載されたパッチ画像の濃度の均一性を、目視で確認した。水玉模様の評価基準は以下の通り。評価結果を表8に示す。
A:水玉模様は、まったく発生していない。
B:かすかに水玉模様の発生が認められるが、凝視しないと判別できない。パッチ濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチを読み取ったときと、同等の出力が得られた。
C:凝視しなくても判別できる水玉模様が認められる。ただし軽微であり、パッチ濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチを読み取ったときと、同等の出力が得られた。
D:水玉模様が、はっきりと認められる。パッチ濃度を読み取るセンサーの出力を測定したところ、正常なパッチを読み取ったときとは異なる出力が得られた。
【0118】
<再転写の評価>
試験環境は、30℃/80%RHとした。なお、あらかじめ、中間転写ベルトを組み込んだ電子写真装置と、実施例1で用いた用紙1を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。転写材は、500枚で一冊として包装されているが、紙を十分に吸湿させるため、該包装を解き、紙が10枚以上重ならないようにして、放置したものを用いた。
【0119】
再転写の評価は、2通りの評価モードで行った。
評価モード1:過去1時間以上、画像出力を行っていない状態から評価を開始する。まず、電子写真装置をフルカラーモード(中間転写ベルトが4回転してから転写材への2次転写に移るモード)で、第一色であるイエローのベタ画像を、電子写真感光体から中間転写ベルトに転写させた(一回転目)。なお、電子写真感光体上のトナー載り量が、0.6±0.1(mg/cm)になるように、イエロートナーの現像バイアスを調節した。一次転写バイアスは+800(v)とした。イエロートナーの一次転写を終え、中間転写ベルトが二回転目(2色目の一次転写工程)に入ったときに、電子写真装置の電源をOFFにして、すべての動作を止めた。なお、2色目は、電子写真感光体上に、像露光を行っていない。電子写真感光体上に再転写されたイエロートナーを、無色透明の粘着剤つきポリエステルテープに写し取り、用紙1に貼り付けた。再転写トナー濃度を知るための比較対照として、トナーが全く付着していない状態の、前記ポリエステルテープも、用紙1に貼り付けた。イエロートナーが付着したポリエステルテープと、トナーが付着していないポリエステルテープの画像濃度を、マクベス濃度計(RD914、グレタグマクベス社製)で読み取り、両者の濃度差を、再転写の指標とした。
【0120】
評価モード2:フルカラーモードで11枚の連続プリントを行った。最初の10枚は、どの色も、電子写真感光体に全く像露光を行わない状態で、プリントした(ベタ白画像)。11枚目の1色目(イエロー)は、電子写真感光体に全露光して、電子写真感光体上のトナー載り量が、0.6±0.1(mg/cm)になるように、イエロートナーの現像バイアスを調節し、ベタ画像を電子写真感光体から中間転写ベルトに転写させた(一回転目)。2色目は、全く露光しなかった。イエロートナーの一次転写を終え、中間転写ベルトが二回転目(2色目の一次転写工程)に入ったときに、電子写真装置の電源をOFFにして、すべての動作を止めた。
なお、評価モード2の一次転写バイアスは、すべて+800(v)、二次転写バイアスは、+1500(v)とした。電子写真感光体上に再転写されたイエロートナーの濃度を、評価モード1と同様の方法で測定し、評価した。
【0121】
評価結果を表8に示す。
なお、表8の評価基準は以下のようである。
A:濃度0.02未満。
B:濃度0.02以上0.05未満。
C:濃度0.05以上0.1未満。
D:濃度0.1以上。画像濃度、色調への影響が大きい。
【0122】
[実施例22]
実施例1で得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図2に示す電子写真装置に組み込んだ。なお、電子写真感光体1−Y〜1−BKは、20μmの電荷輸送層を持ち、像露光前の電位(Vd)が−600(V)、像露光後の電位(Vl)が−150(V)となるように一次帯電および露光を行った。1−Y〜1−BKの外径は、いずれも直径24mmである。中間転写ベルトの移動速度は51mm/秒、電子写真感光体の表面速度は、50mm/秒である。トナーは、非磁性1成分のネガトナーを用いた。一次転写ローラー6および2次転写ローラー7は、実施例1で用いた転写ローラー22と同じものを使用した。ベルトクリーニング部材9は、実施例21と同じものを用いた。該ローラーに印加する電圧も、実施例21と同様にして、中間転写ベルト5の静電クリーニングを行うようにした。なお、実施例21と同様に、水玉模様評価用の画像形成動作時および再転写評価用の画像形成動作には、ベルトクリーニング部材9は中間転写ベルト5から離間している。
以下のようにして、水玉模様および再転写の評価を行った。
【0123】
<水玉模様の評価>
繰り返し画像出力時の画像濃度の安定性を直接測定する代わりに、水玉模様の評価を行った。試験環境は、23℃/55%RHとした。なお、あらかじめ、中間転写ベルトを組み込んだ電子写真装置を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。
まず、各色について、20mm四方の大きさのトナー像(パッチ)を、中間転写ベルト上に、並べて転写した。なお、4色のパッチの、ベルト上の濃度(ベルト上のトナー載り量)が、0.3±0.1(mg/cm)になるように、現像バイアスを調節した。転写バイアスは、全色とも+1300(V)とした。
4色のパッチを、中間転写ベルト上に転写し終えた直後、2次転写工程に入る前に、電子写真装置の電源をOFFにして、中間転写ベルト上に掲載されたパッチ画像の濃度の均一性を、目視で確認した。水玉模様の評価基準は、実施例21と同じである。評価結果を表8に示す。
【0124】
<再転写の評価>
試験環境は、30℃/80%RHとした。なお、あらかじめ、中間転写ベルトを組み込んだ電子写真装置と、実施例1で用いた用紙1を、該環境に24時間以上放置してから、評価を行った。転写材は、500枚で一冊として包装されているが、紙を十分に吸湿させるため、該包装を解き、紙が10枚以上重ならないようにして、放置したものを用いた。
【0125】
再転写の評価は、2通りの評価モードで行った。
評価モード1:過去1時間以上、画像出力を行っていない状態から評価を開始する。1色目(イエロー)は、電子写真感光体に全露光してベタ画像とし、2色目(マゼンタ)は、露光しなかった。なお、電子写真感光体上のトナー載り量が、0.6±0.1(mg/cm)になるように、イエロートナーの現像バイアスを調節した。一次転写バイアスは+800(v)とした。
イエロートナーの一次転写を終え、中間転写ベルトが二回転目(2色目の一次転写工程)に入ったときに、電子写真装置の電源をOFFにして、すべての動作を止めた。なお、2色目は、電子写真感光体上に、像露光を行っていない。電子写真感光体上に再転写されたイエロートナーの濃度を、実施例21と同様の方法で測定、評価した。
【0126】
評価モード2:フルカラーモードで11枚の連続プリントを行った。最初の10枚は、どの色も、電子写真感光体に全く像露光を行わない状態で、プリントした(ベタ白画像)。11枚目の1色目(イエロー)は、電子写真感光体に全露光して、ベタ画像を電子写真感光体から中間転写ベルトに転写させた。(一回転目)なお、電子写真感光体上のトナー載り量が、0.6±0.1(mg/cm)になるように、イエロートナーの現像バイアスを調節した。2色目は、全く露光しなかった。イエロートナーの一次転写を終え、中間転写ベルトが二回転目(2色目の一次転写工程)に入ったときに、電子写真装置の電源をOFFにして、すべての動作を止めた。
評価モード2の一次転写バイアスは、すべて+800(v)、二次転写バイアスは、+1500(v)とした。電子写真感光体上に再転写されたイエロートナーの濃度を、評価モード1と同様の方法で測定、評価した。
評価結果を表8に示す。
【0127】
[比較例1]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例では、導電剤としてPEEAのみを使用しているため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。
【0128】
[比較例2]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例では、導電剤としてカーボンのみを使用しているため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像には、樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。
【0129】
[比較例3]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例の体積抵抗率は、実施例4と同じであったが、A/Bが3と小さいために、PEEAのみを添加した比較例1と同様の特性しか得られなかった。
【0130】
[比較例4]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例の体積抵抗率は、実施例4と同じであったが、A/Bが55と大きいために、カーボンのみを添加した比較例2と同様の特性しか得られなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像に樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。
【0131】
[比較例5]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例の評価結果は、PEEAのみを添加した比較例1の評価結果と同等になった。これは、本比較例のA/Bが1.43と小さいために、実質的にPEEAの効果が支配的になったためと考えられる。
【0132】
[比較例6]
配合を表2のように変えた以外は、実施例1と同様にしてベルトを製造、評価した。結果を表7に示す。本比較例の評価結果は、PEEAのみを添加した比較例1の評価結果と同等になった。これは、本比較例のA/Bが1.43と小さいために、実質的にPEEAの効果が支配的になったためと考えられる。
【0133】
[比較例7]
比較例3のベルトを、中間転写ベルトとして、図3の電子写真装置に組みこんで、実施例21と同様に評価した。評価結果を表8に示す。
【0134】
[比較例8]
比較例4のベルトを、中間転写ベルトとして、図3の電子写真装置に組みこんで、実施例21と同様に評価した。評価結果を表8に示す。また、10000枚耐久後のパッチ画像に樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。
【0135】
[比較例9]
比較例3のベルトを、中間転写ベルトとして、図2の電子写真装置に組みこんで、実施例22と同様に評価した。評価結果を表8に示す。
【0136】
[比較例10]
比較例4のベルトを中間転写ベルトとして、図2の電子写真装置に組みこんで、実施例22と同様に評価した。評価結果を表8に示す。また、10000枚耐久後のパッチ画像に樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。
【0137】
[実施例23]
あらかじめカーボンと多価アルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0138】
粉砕物1:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット69.7kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(デンカブラック粉状品)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)50gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて6分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが69.7kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が300gである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、52分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。これ以上の温度にすると、PVDFの分解が始まるため、これを用いたベルトの機械強度が低下する。上記のように、カーボンブラックは一度に投入するのではなく、複数回に分けて投入した方がよい。一回に投入するカーボンブラックの質量の目安は、ニーダーに投入されているPVDFの質量の、15%以下である。以上のようにして得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物1を得た。
【0139】
粉砕物2:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット69.7kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛粉末(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)50gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて7分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが69.7kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が300gである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、9分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、9分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、60分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。これ以上の温度にすると、PVDFの分解が始まるため、これを用いたベルトの機械強度が低下する。上記のように、黒鉛は一度に投入するのではなく、複数回に分けて投入した方がよい。一回に投入する黒鉛の質量の目安は、ニーダーに投入されているPVDFの質量の、15%以下である。以上のようにして得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物2を得た。
【0140】
粉砕物1と、粉砕物2と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0141】
本実施例では、多価アルコール型非イオン系界面活性剤として、縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステルが、カーボンに対して、質量比で1%(0.072÷7.2×100)配合されている。このため、該界面活性剤を含有しないベルトと比較して、さらに水玉模様が発生しにくく、かつ高い吸着力が得られる。例えば、本実施例と、実施例4において、坪量81.4g/mの紙を用いた評価結果を比較すると、水玉が(BからAレベルに)1ランク向上し、色ズレと後端横スジは(CからAレベルに)、2ランクも改良されていることがわかる。
【0142】
ここで、評価に用いる紙が厚い場合には、色ズレと、後端横スジが悪化する。その理由について述べる。まず、紙が厚いと、紙の自重が重くなる。このため、紙をより強くベルトに吸着しながら搬送しないと、色ズレが悪化しやすい。この傾向は、紙を重力に逆らって上方向に搬送する場合に顕著である。さらに、通常の電子写真装置においては、転写終了位置から定着部開始位置までの間において、紙が真っ直ぐの姿勢で移動するのではなく、若干曲がった状態(ループ)を保ちながら移動するようにしている。これは、ループがない場合、定着器の速度が、転写の速度よりも僅かに速くなっただけで、定着器が転写工程実行中の紙を引っ張ってしまい、画像にブレが発生するためである。上記ループを作っておけば、転写と定着の速度が完全には同期していない場合でも、該ループがバッファーとして働くため、画像のブレを防止できる。しかし紙が厚い場合、紙の曲げ剛性が強いため、ループを作った場合に、紙が真っ直ぐに伸びようとする力が大きくなり、この力が、ベルト上の転写材をスリップさせる(押し戻す)作用をする。その結果、色ズレと後端ブレが発生しやすくなる。
それにも拘わらず、本実施例のベルトにおいては、157g/mの厚紙においても、水玉、色ズレ、後端横スジのすべてにおいて、良好な結果を得ることが出来た。結果を表9に示す。
【0143】
[実施例24]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0144】
粉砕物3:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット64kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(シーストSP SRF−LS)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)1kgとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて12分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが64kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が6kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、98分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物3を得た。
【0145】
粉砕物4:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット64kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)1kgとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて13分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが64kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が6kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、108分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物4を得た。
【0146】
粉砕物3と、粉砕物4と、PVDFと、POEと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。ただし、本実施例では、ベルトの厚さを130μmとした。評価結果を、表9に示す。
【0147】
[実施例25]
まず、下記のようにして、粉砕物5(一次混練物)を作った。
粉砕物5:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット79.8kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD)2.5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)25gとをニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて6分間混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および混練)を、合計8回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが79.8kg、カーボンブラックが20kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が200gである。8回目の投入および混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。このとき、混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、64分である。混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物5を得た。
実施例23で用いた粉砕物2と、粉砕物5と、PVDFと、PEAとを混合し、2軸押し出し機を用いて溶融混練(二次混練)し、表4の配合のペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0148】
[実施例26]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0149】
粉砕物6:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット67kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(デンカブラック粉状品)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールP−4)500gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて12分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが67kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が3kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、98分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物6を得た。
【0150】
粉砕物7:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット67kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールP−4)500gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて15分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが67kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が3kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、17分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、17分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、124分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物7を得た。
【0151】
粉砕物6と、粉砕物7と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0152】
[実施例27]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0153】
粉砕物8:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット69.4kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(シーストSPSRF−LS)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールP−4)100gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて12分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが69.4kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が600gである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、13分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、98分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物8を得た。
【0154】
粉砕物9:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット69.4kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールP−4)100gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて13分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが69.4kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が600gである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、108分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物9を得た。
【0155】
粉砕物8と、粉砕物9と、PVDFと、POEと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0156】
[実施例28]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0157】
粉砕物10:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット61kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)1.5kgとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて8分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが61kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が9kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、68分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物10を得た。
【0158】
粉砕物11:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット61kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)7.5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)2.25kgとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて17分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計4回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが61kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が9kgである。4回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、15分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、98分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物11を得た。
【0159】
粉砕物10と、粉砕物11と、PVDFと、POEと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0160】
[実施例29]
まず、下記のようにして、粉砕物12(一次混練物)を作った。
粉砕物12:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット69.7kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(シーストSPSRF−LS)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)50gとをニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて6分間混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが69.7kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が300gである。6回目の投入および混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。このとき、混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、52分である。混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物12を得た。
実施例23で用いた粉砕物2と、粉砕物12と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを混合し、2軸押し出し機を用いて溶融混練(二次混練)し、表4の配合のペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0161】
[実施例30]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0162】
粉砕物13:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット84.25kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD)3kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)150gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて8分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計5回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが84.25kg、カーボンブラックが15kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が750gである。5回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、9分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、9分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、58分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物13を得た。
【0163】
粉砕物14:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット68.5kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)250gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて11分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが68.5kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が1.5kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、86分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物14を得た。
【0164】
粉砕物13と、粉砕物14と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0165】
[実施例31]
実施例24で用いた粉砕物3と、実施例24で用いた粉砕物4と、PVDFと、POEと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを表4の配合になるように混合し、該混合物を2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)してペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0166】
[実施例32]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0167】
粉砕物15:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット82.4kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD)4kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)400gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて10分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計4回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが82.4kg、カーボンブラックが16kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が1.6kgである。4回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、54分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物15を得た。
【0168】
粉砕物16:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット67kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)500gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて15分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが67kg、黒鉛が30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が3kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、17分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、17分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、124分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物16を得た。
【0169】
粉砕物15と、粉砕物16と、PVDFと、PEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0170】
[実施例33]
あらかじめカーボンとアルコール型非イオン系界面活性剤とをPVDFに練り込んで粉砕した粉砕物(一次混練物)を、2種類作った。
【0171】
粉砕物17:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット63.2kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(シーストSPSRF−LS)4kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)600gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて8分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計8回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが63.2kg、カーボンブラックが32kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が4.8kgである。8回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、78分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物17を得た。
【0172】
粉砕物18:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット54kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、黒鉛(UF−G10)5kgと多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)750gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて10分間溶融混練した。この操作(黒鉛と多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計8回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが54kg、黒鉛が40kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が6kgである。8回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、10分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初に黒鉛を投入してからの総混練時間は、100分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物18を得た。
【0173】
粉砕物17と、粉砕物18と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0174】
[実施例34]
まず、下記のようにして、粉砕物19(一次混練物)を作った。
粉砕物19:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット67kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(デンカブラック粉状品)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)500gとをニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて8分間混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが67kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が3kgである。6回目の投入および混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間混練した。このとき、混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、64分である。混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物19を得た。
次に粉砕物19と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛とを混合し、2軸押し出し機を用いて、表4の配合のペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。ただし、ベルトの厚さは60μmとした。評価結果を、表9に示す。
【0175】
[実施例35]
まず、下記のようにして、粉砕物20(一次混練物)を作った。
粉砕物20:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット67kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)500gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて6分間溶融混練した。この操作(グラフト化カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが67kg、グラフト化カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が3kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間溶融混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、8分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にグラフト化カーボンブラックを投入してからの総混練時間は、52分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。以上のようにして得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物20を得た。
【0176】
次に粉砕物20と、PVDFと、PEEAと、酸化亜鉛とを混合し、2軸押し出し機を用いて溶融混練(二次混練)し、表4の配合のペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本実施例では、A/Bが10であり、C/Aが0.1であり、カーボンと多価アルコール型非イオン系界面活性剤とPVDFとの一次混練物を用いている点において、実施例34と同一であるが、グラフト化カーボンブラックを用いているため、評価結果は実施例34より悪かった。評価結果を、表9に示す。
【0177】
[実施例36]
まず、下記のようにして、粉砕物21(一次混練物)を作った。
粉砕物21:空にした加圧式のニーダーを200℃に加熱しておき、そこにPVDFのペレット68.5kgを投入して、攪拌混合し、PVDFを融解させた。次に、カーボンブラック(シーストSPSRF−LS)5kgと、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(チラバゾールH−818)250gとを、ニーダーに投入し、ニーダーの蓋を閉じて8分間溶融混練した。この操作(カーボンブラックと多価アルコール型非イオン系界面活性剤の投入および溶融混練)を、合計6回行った。したがって、最終的にニーダーに投入された物質は、PVDFが68.5kg、カーボンブラックが30kg、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が1.5kgである。6回目の投入および溶融混練が終了後、ニーダーの蓋を開けて、溶融混練物が230℃になるまで、室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間混練した。そして再び、ニーダーの蓋を開け、溶融混練物が230℃になるまで室温で冷ました。その後、ニーダーの蓋を閉じ、7分間溶融混練した。このとき、溶融混練物の温度は270℃になっていた。最初にカーボンブラックを投入してからの総混練時間は、62分である。溶融混練物の温度は270℃より高くならないようにした。得られた溶融混練物を、ギロチンカッターと粉砕機を用いて、2〜5mm程度の大きさに粉砕し、粉砕物21を得た。
実施例30で用いた粉砕物14と、粉砕物21と、PVDFと、POEと、酸化亜鉛と、ジメチルシリコーンオイルで処理した酸化亜鉛とを、表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を、表9に示す。
【0178】
[比較例11]
実施例34で用いた粉砕物19と、PVDFを表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本比較例では、導電剤としてカーボンのみを使用しているため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像には、樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。評価結果を、表9に示す。
本比較例と、比較例2との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表7と表9の評価結果を比べるとわかるように、比較例2と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、PEEAまたはPOAまたはPEAがないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0179】
[比較例12]
実施例34で用いた粉砕物19と、PVDFとPEEAとを表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本比較例では、A/Bが3と小さいため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。評価結果を、表9に示す。
また、本比較例と比較例3との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表7と表9の評価結果を比べるとわかるように、比較例3と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0180】
[比較例13]
実施例34で用いた粉砕物19と、PVDFとPEEAとを表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本比較例では、A/Bが55と大きいため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像には、樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。評価結果を、表9に示す。
また、本比較例と比較例4との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表7と表9の評価結果を比べるとわかるように、比較例4と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0181】
[比較例14]
実施例34で用いた粉砕物19と、PVDFとPEEAとを表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本比較例では、A/Bが1.43と小さいため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。評価結果を、表9に示す。
また、本比較例と比較例5との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表7と表9の評価結果を比べるとわかるように、比較例5と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0182】
[比較例15]
実施例35で用いた粉砕物20と、PVDFとPEEAとを表4の配合になるように混合し、該混合物を、2軸押し出し機にて溶融混練(二次混練)して、ペレットを得た。該ペレットを用いて、実施例1と同様にして溶融成形することによって、転写材搬送ベルトを作成し、実施例1と同様の評価を行った。本比較例では、A/Bが1.43と小さいため、水玉模様と吸着力(色ズレおよび後端横スジ)が両立できなかった。評価結果を、表9に示す。
また、本比較例と比較例6との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表7と表9の評価結果を比べるとわかるように、比較例6と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0183】
[実施例37]
実施例26と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図3に示す電子写真装置に組み込み、実施例21と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
本実施例では、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が添加されているので、CLC厚口用紙を用いた場合でも、再転写が悪化しなかった。多価アルコール型非イオン系界面活性剤の添加によって過大な電荷を素早く除去する性質が強く現れたため、2次転写ローラーに高い電圧を印加した場合でも2次転写ローラーによって中間転写ベルトに与えられたプラス電荷が残りにくくなっている。すなわち、中間転写ベルトに過大なプラス電荷が残っていると、次色の一次転写時工程において、電子写真感光体と中間転写ベルトとの電位差が大きくなりすぎて、過大な転写電流が流れて、再転写が悪化するが、本実施例の場合には、そのようなことがない。
【0184】
[実施例38]
実施例26と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図2に示す電子写真装置に組み込み、実施例22と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
本実施例では、多価アルコール型非イオン系界面活性剤が添加されているので、CLC厚口用紙を用いた場合でも、再転写が悪化しなかった。多価アルコール型非イオン系界面活性剤の添加によって過大な電荷を素早く除去する性質が強く現れたため、転写ローラーに高い電圧を印加した場合でも転写ローラーによって中間転写ベルトに与えられたプラス電荷が残りにくくなっている。すなわち、中間転写ベルトに過大なプラス電荷が残っていると、次色の転写時工程において、電子写真感光体と中間転写ベルトとの電位差が大きくなりすぎて、過大な転写電流が流れて、再転写が悪化するが、本実施例の場合には、そのようなことがない。
【0185】
[比較例16]
比較例12と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図3の装置に組み込んで、実施例21と同様に評価を行った。
本比較例では、A/Bが3と小さいため、、水玉模様と再転写が両立できなかった。評価結果を、表10に示す。
また、本比較例と比較例7との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表8と表10の評価結果を比べるとわかるように、比較例7と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0186】
[比較例17]
比較例13と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図3の装置に組み込んで、実施例21と同様に評価を行った。本比較例では、A/Bが55と大きいため、水玉模様と再転写が両立できなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像には、樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。評価結果を、表10に示す。
また、本比較例と比較例8との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表8と表10の評価結果を比べるとわかるように、比較例8と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0187】
[比較例18]
比較例12と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図2の装置に組み込んで、実施例22と同様に評価を行った。
本比較例では、A/Bが3と小さいため、、水玉模様と再転写が両立できなかった。評価結果を、表10に示す。
また、本比較例と比較例9との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表8と表10の評価結果を比べるとわかるように、比較例9と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0188】
[比較例19]
比較例13と同様にして得られたベルトを、中間転写ベルトとして、図2の装置に組み込んで、実施例22と同様に評価を行った。本比較例では、A/Bが55と大きいため、水玉模様と再転写が両立できなかった。また、10000枚耐久後のパッチ画像には、樹枝状の模様が認められ、初期と比較して、画像濃度の安定性が悪化していた。評価結果を、表10に示す。
また、本比較例と比較例10との違いは、多価アルコール型非イオン系面活性剤の有無にあるが、表8と表10の評価結果を比べるとわかるように、比較例10と本比較例の評価結果は同等であった。つまり、A/Bが本発明の範囲にないときには、多価アルコール型非イオン系面活性剤を添加しても、何ら有益な効果は認められなかった。
【0189】
【表1】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
【0190】
【表2】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
【0191】
【表3】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
【0192】
【表4】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
L:黒鉛(UF−G10、平均粒子径4μm、昭和電工製)
M:ジメチルシリコーンオイルで表面処理した酸化亜鉛
(ピグモライト微細亜鉛華B 平均粒子径0.2μm、大東化成工業製)
N:縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル(チラバゾールH−818、太陽化学製)
P:ポリグリセリンステアリン酸エステル(チラバゾールP−4、太陽化学製)
【0193】
【表5】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
L:黒鉛(UF−G10、平均粒子径4μm、昭和電工製)
M:ジメチルシリコーンオイルで表面処理した酸化亜鉛
(ピグモライト微細亜鉛華B 平均粒子径0.2μm、大東化成工業製)
N:縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル(チラバゾールH−818、太陽化学製)
P:ポリグリセリンステアリン酸エステル(チラバゾールP−4、太陽化学製)
【0194】
【表6】

A:PVDFホモポリマー(カイナー720 アルケマ製)
B:ポリエーテルエステルアミド(PEEA)樹脂(ペレスタットNC63 三洋化成製)
C:ポリオレフィンエーテル(POE)樹脂(ペレスタット300 三洋化成製)
D:ポリエーテルアミド(PEA)樹脂(ペバックス2533 アルケマ製)
E:カーボンブラック(デンカブラック粉状品 一次粒子径35nm 電気化学工業製)
F:カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD 一次粒子径34nm ライオン工業製)
G:カーボンブラック(シーストSP SRF-LS 一次粒子径95nm 東海カーボン製)
H:グラフト化カーボンブラック(製造例1参照)
I:パーフロロブタンスルホン酸カリウム(KFBS 三菱マテリアル製)
J:パーフロロオクタンスルホン酸ナトリウム(エフトップEF-103 ジェムコ製)
K:酸化亜鉛(酸化亜鉛一種 平均粒子径0.6μm堺化学工業製)
Kは導電処理の施されていない酸化亜鉛である。
L:黒鉛(UF−G10、平均粒子径4μm、昭和電工製)
M:ジメチルシリコーンオイルで表面処理した酸化亜鉛
(ピグモライト微細亜鉛華B 平均粒子径0.2μm、大東化成工業製)
N:縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル(チラバゾールH−818、太陽化学製)
P:ポリグリセリンステアリン酸エステル(チラバゾールP−4、太陽化学製)
【0195】
【表7】

【0196】
【表8】

【0197】
【表9】

【0198】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】転写材搬送ベルトと複数の電子写真感光体と吸着ローラーを有する電子写真装置を示す図である。
【図2】中間転写ベルトと複数の電子写真感光体を有する電子写真装置を示す図である。
【図3】中間転写ベルトを有する4パス式電子写真装置を示す図である。
【図4】転写材搬送ベルトと複数の電子写真感光体を有し、吸着ローラーを有さない電子写真装置を示す図である。
【図5】インフレーション成形機の概略図である。
【図6】エアリング概略図である。
【図7】エアリング内部に設置したヒーター、ヒートシンク、インシュレータの拡大図である。
【図8】ヒートシンクでヒーターを挟み込む様子を示す図である。
【図9】転写ローラーの抵抗測定方法を示す図である。
【図10】色ズレ計測用画像出力パターンを示す図である。
【図11】黒鉛の平均粒子径を求める際の観察方向を示す図である。
【符号の説明】
【0200】
1 電子写真感光体
1−Y イエロー色用電子写真感光体
1−M マゼンタ色用電子写真感光体
1−C シアン色用電子写真感光体
1−BK ブラック色用電子写真感光体
21 次帯電器
3 露光光
41 イエロー色現像器
42 マゼンタ色現像器
43 シアン色現像器
44 ブラック色現像器
5 中間転写ベルト
61 次転写部材
72 次転写ローラー
82 次転写対向ローラー
9 ベルトクリーニング部材
11 給紙ローラー
13 電子写真感光体クリーニング部材
15 定着器
21 駆動ローラー
22 転写ローラー
23 コロナ除電器
24 転写材搬送ベルト
25 吸着ローラー
26 張架ローラー
27,28,29,30,31,33 バイアス電源
1001 軸押し出し機
110 ホッパー
140 ダイス
150 チューブ直径調節用エア吸排気路
160 チューブ
170 安定板
180 ピンチロール
190 カッター
200 エアリング
210 エア供給口
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテルおよびポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂、
(ii)ポリフッ化ビニリデン、および
(iii)カーボン
を含有する樹脂組成物からなる層を有する電子写真エンドレスベルトであって、
該樹脂組成物中の該(iii)の質量(A)と該(i)の質量(B)との比率(A/B)が4以上50以下であることを特徴とする電子写真エンドレスベルト。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、前記(i)を0.1質量%以上1.8質量%以下含有し、前記(ii)を50.0質量%以上97.9質量%以下含有し、かつ、前記(iii)を2.0質量%以上15.0質量%以下含有する請求項1に記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記(i)を0.1質量%以上0.9質量%以下含有する請求項2に記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、さらに
(iv)多価アルコール型非イオン界面活性剤
を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項5】
該樹脂組成物中の前記(iv)の質量(C)と前記(iii)の質量(A)との比率(C/A)が0.01以上0.30以下である請求項4に記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項6】
前記(iv)多価アルコール型非イオン界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステルである請求項5に記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項7】
前記グリセリン脂肪酸エステルが、縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステルおよびポリグリセリンステアリン酸エステルの少なくとも一方である請求項6に記載の電子写真エンドレスベルト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真エンドレスベルトを有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれかに記載の電子写真エンドレスベルトの製造方法であって、
あらかじめ、ポリフッ化ビニリデンと、カーボンと、多価アルコール型非イオン界面活性剤と、を溶融混練し、これを粉砕することによって粉砕物を得る工程と、
ポリエーテルエステルアミド、ポリオレフィンエーテルおよびポリエーテルアミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、該粉砕物と、ポリフッ化ビニリデンと、を溶融混練することによって得られた樹脂組成物を溶融成形することによってチューブ状フィルムを得る工程と、
を有することを特徴とする電子写真エンドレスベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−313308(P2006−313308A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370396(P2005−370396)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】