説明

電子写真機器用導電性ロール

【課題】表面が平滑であり、且つ低硬度な導電性ゴム発泡体層を有する電子写真機器用導電性ロールを提供すること。
【解決手段】円筒状金型の成形キャビティ内に軸体と共に同軸的に配置された未加硫未発泡発泡性ゴム層を、所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめることにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が一体的に設けられてなる電子写真機器用導電性ロールにして、前記未加硫未発泡発泡性ゴム層を、発泡剤と、1)体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下、2)平均粒径が6μm〜180μm、3)融点が前記発泡剤の発泡開始温度以上で且つ前記成型温度以下である樹脂粒子とが配合されており、且つかかる樹脂粒子が、ゴム材料の100重量部に対して5〜40重量部の割合において配合されている導電性ゴム組成物を用いて形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールに係り、特に、電子写真方式のプリンタや複写機、ファクシミリ等において、帯電ロールや現像ロール等として好適に用いられ得る導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用したプリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置(電子写真機器)においては、例えば、導電体である軸体(芯金)の外周面上に、ベース層としての導電性弾性体層が設けられ、かかる導電性弾性体層の外周面上に、必要に応じて、抵抗調整層や保護層が順次、積層形成されてなる構造の導電性ロールが、帯電ロール、現像ロールや転写ロール等として用いられている。
【0003】
そのような導電性ロールのうち、特に帯電ロールに対しては、ロール硬度が低いことが要求されるところ、近年、ベース層たる導電性弾性体層として、導電性ゴム組成物を発泡及び加硫せしめてなる導電性ゴム発泡体からなる層を有する導電性ロールが、帯電ロールとして広く用いられている。そして、そのような導電性ゴム発泡体層を有する導電性ロールの製造方法についても、従来より種々の方法が提案されているのであり、例えば、本願出願人は、特許文献1において、以下の如き導電性ロールの製造方法を提案している。即ち、導電性軸体を円筒状金型の成形キャビティ内に配置する一方、かかる導電性軸体の外形より大なる内径と、金型の成形キャビティの内径よりも小なる外形とを有し、内側層が導電性ゴム発泡体層をあたえる未加硫未発泡発泡性ゴム層からなり、外側層が非発泡性半導電性ゴム層を与える未加硫非発泡性ゴム層よりなる円筒状の積層体を成形し、金型の成形キャビティ内に、該積層体を前記導電性軸体と同軸状に配置した後、加硫操作及び発泡操作を同時に行なうことを特徴とする導電性ロールの製造方法である。
【0004】
かかる特許文献1に開示の製造方法のように、未加硫未発泡発泡性ゴム層(及び未加硫非発泡性ゴム層)にて構成される円筒状の積層体を、軸体と共に円筒状金型の成形キャビティ内に同軸的に配置して、或いは、従来のその他の製造方法のように、成形キャビティ内の中心軸上に軸体を配置し、かかる成形キャビティ内の空隙部に未加硫未発泡発泡性ゴム層を与える導電性ゴム組成物を射出乃至は注入等して、その後、加硫操作及び発泡操作を行なう方法においては、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層の表面を平滑にすべく、未加硫未発泡発泡性ゴム層を成形キャビティ内にて安定して発泡させることが課題として挙げられる。なお、導電性ゴム発泡体層の表面に凹凸が生じるのは、成形キャビティ内における発泡及び加硫のバランスや、製品(導電性ロール)の外径や長さ等の要因によって、発泡セルの独泡・連泡の度合いが変化することに起因するものである。そのような課題を解決するための方策として、樹脂粒子等の連通気泡成形剤を用いることが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、電子写真機器用導電性ロールには所定の導電性が要求されるところ、上述の未加硫未発泡発泡性ゴム層を、導電性の低い(抵抗率が高い)樹脂粒子が配合された導電性ゴム組成物を用いて形成せしめると、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層の抵抗が大きくなり、種々の問題を引き起こす恐れがあった。
【0006】
例えば、そのような抵抗が大きい導電性ゴム発泡体層を有する導電性ロールを、帯電ロールとして用いると、出力画像の品質低下を招く。即ち、帯電ロールにおいて、ベース層たる導電性ゴム発泡体層の抵抗が十分に低くない場合、帯電能力が不足し、出力画像において横スジが発生したり、長期間放置した際に、帯電ロール表面に感光体(感光ドラム)の圧接跡が残る等の問題があったのである。
【0007】
なお、導電性の低い(抵抗率が高い)樹脂粒子の配合に伴う抵抗の上昇を、導電剤たるカーボンブラックを増量することにより抑制することも考えられるが、カーボンブラックを増量すると、ロール硬度が上昇し、新たな問題を引き起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3575054号公報
【特許文献2】特開2005-89715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、表面が平滑であり、且つ低硬度な導電性ゴム発泡体層を有する電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、そのような課題を解決すべく、円筒状金型の成形キャビティ内に軸体と共に同軸的に配置された未加硫未発泡発泡性ゴム層を、所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめることにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が一体的に設けられてなる電子写真機器用導電性ロールにして、前記未加硫未発泡発泡性ゴム層が、発泡剤と、1)体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下、2)平均粒径が6μm〜180μm、3)融点が前記発泡剤の発泡開始温度以上で且つ前記成型温度以下である樹脂粒子とを配合してなる導電性ゴム組成物にて形成せしめられており、且つ、該樹脂粒子が、該導電性ゴム組成物中のゴム材料の100重量部に対して5〜40重量部の割合において配合されていることを特徴とする電子写真機器用導電性ロールを、その要旨とするものである。
【0011】
なお、そのような本発明に従う電子写真機器用導電性ロールにおいては、好ましくは、前記樹脂粒子が、導電処理が施された樹脂粒子である。
【0012】
また、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールにおいて、より好ましくは、前記導電処理が施された樹脂粒子が、イオン導電性ゴム及びイオン導電剤の混合物からなる層にて表面が被覆された樹脂粒子である。
【0013】
さらに、本発明の電子写真機器用導電性ロールにおいて、更に好ましくは、前記イオン導電性ゴムがエピクロルヒドリンゴムである。
【0014】
さらにまた、本発明の電子写真機器用導電性ロールにおいて、有利には、前記樹脂粒子がポリエチレン樹脂粒子である。
【0015】
加えて、本発明の電子写真機器用導電性ロールにおいては、望ましくは、前記導電性ゴム発泡体層の外周面上に抵抗調整層が設けられている。
【0016】
さらに、上述の如き本発明の電子写真機器用導電性ロールの各態様においては、更に望ましくは、最外層として保護層が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明に従う電子写真機器用導電性ロールにあっては、最終的に導電性ゴム発泡体層を与える未加硫未発泡発泡性ゴム層が、発泡剤と、1)体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下、2)平均粒径が6μm〜180μm、3)融点が共に配合される発泡剤の発泡開始温度以上で且つ成型温度(後述)以下である樹脂粒子とを配合してなる導電性ゴム組成物であって、かかる樹脂粒子が、導電性ゴム組成物中に、ゴム材料に対して所定の割合において配合されてなるものによって形成されている。そして、そのような所定の樹脂粒子を配合してなる導電性ゴム組成物にて形成された未加硫未発泡発泡性ゴム層を、円筒状金型の成形キャビティ内に軸体と共に同軸的に配置し、所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめると、発泡及び加硫の過程において溶融した樹脂粒子が気泡を連結し、安定した連続気泡群を形成せしめるところから、得られる導電性ロールの表面(導電性ゴム発泡体層の表面)が平滑なものとなるのである。
【0018】
また、所定の樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層の抵抗の上昇も効果的に抑制され、必要以上にカーボンブラック等の導電剤を配合する必要がないことから、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、導電性ゴム発泡体層の硬度が低く、ロール全体の硬度(ロール硬度)も十分に低いものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従う電子写真機器用導電性ロールの一例を示す軸直角断面説明図である。
【図2】実施例における電子写真機器用導電性ロールの抵抗値(ロール抵抗)の測定方法を、模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を適宜参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、図1には、本発明に従う電子写真機器用導電性ロール(以下、単に導電性ロールともいう)の代表的な実施形態の一つが、ロールの軸心に直角な方向の断面において、概略的に示されている。かかる図1において、電子写真機器用導電性ロール10は、金属製の導電性軸体(芯金)12の外周面上に、ロール径方向の内側から外側に向かって、順に、ベース層である導電性ゴム発泡体層14、抵抗調整層16、及び最外層である保護層18が、各々、所定の厚さで一体的に積層形成されている。
【0022】
なお、導電性軸体12としては、導電性を有する金属からなるものであれば特に限定されるものではなく、鉄、ステンレス鋼(SUS)や快削鋼(SUM)等からなるものを例示することが出来る。また、かかる導電性軸体12には、メッキ処理等が施されていてもよく、更に必要に応じて、接着剤やプライマー等が外周面に塗布されていてもよい。加えて、導電性軸体12の形状も、図1に示される如きロッド状の中実体以外にも、パイプ状の中空円筒体であっても、何等差し支えない。
【0023】
そして、本発明に従う電子写真機器用導電性ロール10においては、導電性軸体12の外周面上に一体的に形成された導電性ゴム発泡体層14が、発泡剤及び所定の樹脂粒子が配合されてなる導電性ゴム組成物を用いて未加硫未発泡発泡性ゴム層を形成し、かかる未加硫未発泡発泡性ゴム層を所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめることにより形成されたものであるところに、大きな特徴を有するのである。即ち、本発明において用いられる樹脂粒子は、1)体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下、2)平均粒径が6μm〜180μm、3)融点が共に配合される発泡剤の発泡開始温度以上で且つ成型温度以下のものである。
【0024】
ここで、樹脂粒子の抵抗率が大き過ぎると、導電性ゴム発泡体層(14)の抵抗、引いては導電性ロール(10)全体の抵抗が大きくなることから、本発明においては、体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下の樹脂粒子が用いられる。本明細書及び特許請求の範囲において、樹脂粒子の体積抵抗率は、樹脂粒子を押し固めて作製されたサンプルを用いて、JIS−K−6911:1995に規定されている抵抗率の測定方法に準じて測定されたものである。
【0025】
また、平均粒径が非常に小さい樹脂粒子を製造することは困難であり、一方、平均粒径が180μmを超える樹脂粒子を用いると、そのような樹脂粒子は平均的な発泡セルの大きさより大きいことから、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層(14)の表面にうねりが発生し、表面形状が悪化する恐れがある。従って、本発明においては、平均粒径が6μm〜180μmの樹脂粒子が用いられるのである。なお、樹脂粒子の平均粒径とは、測定対象の樹脂粒子を所定量の溶剤(メチルエチルケトン)に混合し、撹拌してなるものを試料として、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラックMT)を用いて、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)に従って測定されたものである。
【0026】
さらに、本発明において用いられる樹脂粒子は、共に配合される発泡剤の発泡開始温度以上であり、且つ、後述する成型温度以下の融点を有するものである。けだし、融点が発泡剤の発泡開始温度より低い場合や、成型温度より高い場合には、樹脂粒子の配合効果が有利に得られない恐れがあるからである。ここで、樹脂粒子の融点とは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された融点を意味する。また、発泡剤の発泡開始温度とは、所定量の発泡剤を昇温加熱し、形状や色等の形態の変化が発生した温度を意味するものであり、市販されている発泡剤については、通常、カタログに記載されている。更に、成型温度は、導電性ゴム組成物の主成分たるゴム材料の種類等に応じて適宜に決定される。通常、本発明においては、上述した体積抵抗率及び所定の平均粒径を有するものであって、100〜160℃程度の融点を有する樹脂粒子が用いられることとなる。
【0027】
本発明においては、上述の如き特性を有する樹脂粒子であれば、如何なるものであっても用いることが可能である。樹脂粒子を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂等を例示することが出来、それらの中でもポリエチレン樹脂が好ましい。特に、本発明においては、導電処理が施されたポリエチレン樹脂粒子が有利に用いられ得る。かかる導電処理とは、ポリエチレン樹脂粒子に対して、その表面に、一般的な金属メッキ方法や特開2003−34727号公報に開示の手法等に従って金属を被覆せしめる処理方法や、粒子を構成する樹脂より抵抗が低い化合物等を被覆せしめる処理方法を意味するものである。そのような種々の導電処理が施されたポリエチレン樹脂粒子の中でも、1)エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムと、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート等のイオン導電剤とを所定の溶媒(メチルエチルケトン等)に溶解せしめ、2)得られた溶液内にポリエチレン樹脂粒子を投入し、所定時間撹拌することによって樹脂粒子を分散させ、3)撹拌後の溶液を乾燥させて得られる固形物を、乳鉢等を用いてほぐすことによって得られる、イオン導電性ゴム及びイオン導電剤の混合物からなる層にて表面が被覆されたポリエチレン樹脂粒子が、特に有利に用いられる。
【0028】
そのような樹脂粒子は、本発明において、最終的に導電性ゴム発泡体層(14)を与える未加硫未発泡発泡性ゴム層を形成する際に用いられる導電性ゴム組成物中に、ゴム材料の100重量部に対して5〜40重量部の割合において配合される。ゴム材料の100重量部に対して5重量部未満の配合割合では、樹脂粒子の配合効果を享受することが出来ない恐れがあり、一方、配合割合が40重量部を超えると、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層(14)の硬度が悪化(上昇)する恐れがあるからである。
【0029】
そして、上述の如き樹脂粒子が所定割合にて配合された導電性ゴム組成物を用いて、未加硫未発泡発泡性ゴム層を形成し、そしてかかる未加硫未発泡発泡性ゴム層を発泡及び加硫せしめると、得られる導電性ゴム発泡体層(14)においては、発泡及び加硫の進行と共に、溶融した樹脂粒子により気泡が連結せしめられ、安定した連続気泡群が形成されるのであり、以て、導電性ゴム発泡体層(14)の表面、引いては導電性ロール(10)の表面が、平滑なものとなるのである。また、本発明において用いられる樹脂粒子は、一般的に用いられる樹脂粒子より体積抵抗率が小さい(導電性が良好な)ものであることから、導電性ゴム発泡体層14における導電性の悪化(体積抵抗率の悪化)が抑制される。従って、要求される導電性を発揮するためには、比較的少量の導電剤の配合で十分であることから、多量の導電剤の配合による導電性ゴム発泡体層14、引いては導電性ロール10の硬度の悪化(上昇)を招く恐れはないのである。
【0030】
一方、上述の如き樹脂粒子と共に導電性ゴム組成物中に配合される発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤や、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤等、従来より公知の発泡剤を例示することが出来る。そのような発泡剤が配合されて、一般に5倍以内、好ましくは1.1〜3.0倍程度の発泡倍率となるように発泡せしめられる。
【0031】
なお、上記発泡剤の配合量としては、ゴム材料の種類等に応じて適宜に設定され得るものの、好ましくは、導電性ゴム組成物中のゴム材料の100重量部に対して0.1〜30重量部、より好ましくは3〜15重量部となるような量的割合において、配合される。けだし、発泡剤の配合量が少な過ぎると、十分に発泡しない恐れがある一方、発泡剤の配合量が多過ぎると、発泡が過剰となる恐れがあるからである。
【0032】
本発明において、上記樹脂粒子や発泡剤が配合されてなる導電性ゴム組成物は、従来と同様のゴム材料を主成分とするものである。かかるゴム材料としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムや、天然ゴム等を挙げることが出来、これらのうちの一種が単独で、若しくは二種以上がブレンドされて、用いられる。これらの中でも、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、及びシリコーンゴムにあっては、低硬度で耐ヘタリ性に優れているところから、特に好適に採用される。
【0033】
また、そのようなゴム材料に、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物(例えば、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛)、更には各種のイオン導電剤、例えば、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩や、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩等の従来から公知の各種導電剤が、従来と同様な配合割合で配合されて、導電性ゴム発泡体層(14)が、所定の体積抵抗率(一般に、1×103 〜1×108 Ω・cm程度)に調整され得るようになっており、この導電剤によって、電子写真機器用導電性ロール(10)に導電性が付与せしめられる。
【0034】
なお、最終的に導電性ゴム発泡体層(14)を与える導電性ゴム組成物には、上述せる如き導電剤以外にも、ゴム材料の硬化と発泡のタイミングを調整するための遅延剤や触媒、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤等の各種の添加剤が、必要に応じて適宜に選択され、それぞれ適量において添加、混合される。そして、このような導電性ゴム組成物を、所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめることによって、導電性ゴム発泡体層(14)が形成されるのである。
【0035】
ところで、本発明に従う電子写真機器用導電性ロールにおいては、図1に示されているように、導電性ゴム発泡体層14の外周面上に抵抗調整層16が設けられ、更にかかる抵抗調整層16の外周面上に、最外層として保護層18が設けられることが好ましい。
【0036】
抵抗調整層16は、ロール全体が所望とする電気特性(抵抗)を発揮するために設けられるものであり、そのような抵抗調整層16を形成せしめる際には、従来と同様の材料が用いられる。具体的には、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴム材料に、導電剤や帯電防止剤等が配合されて、体積抵抗率が一般に1×106 〜1×1010Ω・cm程度となるように調整され、更には公知の各種配合剤や添加剤等が各々、配合されてなる材料が、抵抗調整層(16)形成用材料として用いられるのである。なお、かかる抵抗調整層(16)形成用材料に配合される導電剤としては、上述したような、導電性ゴム発泡体層(14)を与える導電性ゴム組成物に配合される導電剤と同様のものが用いられる。
【0037】
また、保護層18は、導電性ロール10の表面にトナー等が付着、堆積することを防止するために設けられる。かかる保護層18を形成せしめる際には、従来と同様の材料、例えば、フッ素変性アクリレート樹脂等のフッ素系樹脂を含む樹脂組成物材料や、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系材料等に、カーボンブラックや金属酸化物等の導電剤が配合されて、その体積抵抗率が一般に1×105 〜1×1013Ω・cm程度となるように調製された材料(保護層形成用材料)が用いられる。
【0038】
本発明に従う電子写真機器用導電性ロール10を作製するに際しては、例えば、先に示した特許文献1(特許第3575054号公報)にて開示された手法等に従って作製される。具体的には、共押出が可能な押出成形機を用いて、未加硫未発泡発泡性ゴム層を与える導電性ゴム組成物と、未加硫の抵抗調整層を与える抵抗調整層形成用材料とを同時に押し出して、未加硫未発泡発泡性ゴム層からなる内側層と、未加硫の抵抗調整層からなる外側層とを有する、連続した円筒状の成形体を成形する。かかる成形体を所定の長さに切断し、得られた所定長さの円筒状成形体に、導電性軸体12を挿入する。なお、上記導電性ゴム組成物及び抵抗調整層形成用材料を、軸体12の外周面上に直接、共押出しすることも可能である。軸体12が挿入された状態の円筒状成形体を、円筒状金型の成形キャビティ内に、軸体12の中心軸が成形キャビティの軸中心と一致するように配置せしめる。そして、円筒状金型を所定の成型温度に加熱して、未加硫未発泡発泡性ゴム層を発泡及び加硫せしめると共に、未加硫の抵抗調整層を加硫せしめることにより、軸体12の外周面上に導電性ゴム発泡体層14が設けられ、更にその外側に抵抗調整層16が一体的に設けられてなる導電性ロール10の前駆体が得られる。そして、かかるロール前駆体の外周面に、上述の保護層形成用材料を、従来より公知のコーティング手法に従って塗布して、得られる塗布層を乾燥(及び加熱)せしめて保護層18とすることにより、導電性ロール10が得られるのである。なお、保護層18の厚さは、導電性ロールの大きさ(直径、長さ)に応じて適宜に設定されることとなるが、通常、1〜20μm程度とされる。
【0039】
そして、このようにして得られた電子写真機器用導電性ロール10にあっては、導電性ゴム発泡体層14の表面が平滑であることから、ロール表面(保護層18の表面)も平滑となり、また、導電性ゴム発泡体層14の硬度は十分に低いものとなっているのである。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0041】
先ず、以下の手法に従って、樹脂粒子の導電処理を行なった。具体的には、エピクロルヒドリンゴム(ダイソー株式会社製、商品名:エピクロマーCG102 ):100重量部と、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート:10重量部とを、500倍量のメチルエチルケトンに溶解し、この溶液に、ポリエチレン樹脂粒子(住友精化株式会社製、商品名:フロービーズ):100重量部を投入して、撹拌羽根にて6時間、撹拌することにより、ポリエチレン樹脂粒子を分散させた。その後、溶液を乾燥させ、得られた固形物を乳鉢を用いてほぐすことにより、導電処理が施された樹脂粒子を得た。
【0042】
同種のポリエチレン樹脂粒子であって平均粒径が異なるものについても同様の処理を行ない、合計5種類の導電処理が施された樹脂粒子を得た。なお、下記表1に、以下に説明する実施例及び比較例において用いた樹脂粒子について、導電処理の有無、体積抵抗率、平均粒径及び融点を、それぞれ示す。体積抵抗率等の測定は、先に述べた各手法に従って実施し、測定された値である。
【0043】
−導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成用材料)の調製−
スチレン−ブタジエンゴム(SBR):100重量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC-300J ):20重量部と、酸化亜鉛:5重量部と、ステアリン酸:1重量部と、プロセスオイル(出光興産株式会社製、商品名:ダイアナプロセスPW380 ):30重量部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤):15重量部と、硫黄:1重量部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(加硫促進剤):2重量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(加硫促進剤):1重量部と、更にポリエチレン樹脂粒子を、下記表1に示す各配合量にて配合することにより、13種類の導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成用材料)を調製した。なお、後述する比較例1において用いた導電性ゴム組成物には、樹脂粒子が配合されておらず、また、、比較例2において用いた導電性ゴム組成物には、導電処理が施されていないポリエチレン樹脂粒子をそのまま配合した。また、発泡剤であるジニトロソペンタメチレンテトラミンの発泡開始温度は105℃であった。
【0044】
得られた13種類の導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成用材料)のそれぞれを用いて、40mm×40mm×3mmのシート状成形体を作製した。かかるシート状成形体に対して、160℃で30分間、熱処理を施した後、シート状成形体の両面に所定の導電化処理を施した。ハイテスタ(日置電機株式会社製)を用いてシート状成形体の体積抵抗(Ω)を測定し、成形体の厚さ(3mm)より、体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。なお、以下の実施例及び比較例において用いられた導電性ゴム組成物について算出された体積抵抗率を、下記表1において「発泡体の体積抵抗率」として示す。
【0045】
−抵抗調整層形成用材料の調製−
エピクロルヒドリンゴム(ダイソー株式会社製、商品名:エピクロマーCG102 ):100重量部と、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート:1重量部と、シリカ(東ソー・シリカ株式会社製、商品名:Nipsil ER ):10重量部と、酸化亜鉛(三井金属工業株式会社製):5重量部と、ステアリン酸(花王株式会社製、商品名:ルナックS-30):1重量部と、ノクセラーDM(商品名、加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製):0.5重量部と、ノクセラーTT(商品名、加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製):0.5重量部とを配合し、ロールを用いて混練することにより、抵抗調整層形成用材料を調製した。
【0046】
−保護層形成用材料の調製−
フッ素化オレフィン系樹脂(アトフィナジャパン株式会社製、商品名:カイナーSL):100重量部と、導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:タイペークET-300W ):100重量部とを、メチルエチルケトン:200重量部に溶解し、サンドミルを用いて分散させることにより、保護層形成用材料を調製した。
【0047】
−導電性ロールの作製−
先ず、外径:6mm、長さ:252.5mmの、表面にNiメッキが施された鉄製の中実円柱状の導電性軸体を準備した。この軸体の外周面上に、接着剤を塗布した後、上述した導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成用材料)及び抵抗調整層形成用材料を、押出機を用いて共押出成形した。このようにして得られた、軸体の外周面上に導電性ゴム組成物からなる未加硫未発泡発泡性ゴム層を有し、更にその外側に未加硫の抵抗調整層を有するロール前駆体を、円筒状金型の成形キャビティ内に配置し、180℃で40分間、同時加硫、及び発泡せしめた。これにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層(厚さ:1.0mm)を有し、その外側に抵抗調整層(厚さ:0.5mm)を有するロールが得られた。そして、得られた各ロールの表面に、上述の保護層形成用材料をロールコーティング法によって塗布し、乾燥させた後に、150℃×60分の条件において加熱架橋せしめることにより、図1に示す如き構造の導電性ロールを13種類、作成した(実施例1〜8、比較例1〜5)。なお、得られた導電性ロールは、後述するロール形状の評価、及びロール硬度の評価において用いた。
【0048】
また、ロール抵抗を評価することを目的として、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層を有し、その外側には抵抗調整層及び保護層を有さない導電性ロールを作製した。具体的には、軸体の外周面上に、導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成用材料)を押出機を用いて押出成形する点、及び保護層形成用材料を塗布せしめる点以外は上述と同様の手法に従うことにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層(厚さ:1.0mm)を有する導電性ロールを13種類、作製した。なお、そのようにして得られた導電性ロールにあっても、説明の都合上、用いた導電性ゴム組成物に応じて実施例1〜8、比較例1〜5と表現する。
【0049】
以上のようにして得られた各種導電性ロールについて、以下の評価を行なった。
【0050】
−ロール形状の評価−
得られた導電性ロールを、帯電ロールとして実機(ヒューレットパッカード社製、商品名:CLJ3800 )に組み込み、所定の画像を出力した。画像を目視で観察し、ロール表面の凹凸に起因する画像の不具合が認められないものを○とする一方、ロール表面の凹凸に起因する画像の不具合が認められるものを×と評価した。各導電性ロールに対する評価を、下記表1に示す。
【0051】
−ロール抵抗の評価−
図2に示すように、得られた導電性ロール(導電性ゴム発泡体層のみを有する導電性ロール)の両端を所定の荷重にて金属ロールに押圧した状態で、かかる金属ロールを所定の回転数にて図中の矢印方向に回転させることにより、導電性ロールを連れ回りさせた。かかる状態を保ちながら(金属ロール及び導電性ロールを共に回転させながら)、導電性ロールと金属ロールの端部間に10Vの直流電圧を印加して、流れる電流値を測定して、各導電性ロールのロール抵抗を算出した。樹脂粒子が配合されていない導電性ゴム組成物を用いて作製された導電性ロール(比較例1)におけるロール抵抗と比較して、抵抗値に大きな差が認められない場合は○とし、抵抗値に大きな差が認められる場合は×と評価した。各導電性ロールに対する評価を、下記表1に示す。
【0052】
−ロール硬度の評価−
スプリング式硬さ試験機(ゴム・プラスチック硬度計・アスカーC型、高分子計器株式会社製)を用いて、かかる試験機を、Vブロックにて両端が支持された状態で水平に保持された導電性ロールの軸方向中央部の表面に対して、1000gの荷重(試験機を含む全荷重)で垂直に加圧して、各導電性ロールのロール硬度を測定した。樹脂粒子が配合されていない導電性ゴム組成物を用いて作製された導電性ロール(比較例1)におけるロール硬度と比較して、大きな硬度の上昇が認められない場合は○とし、著しい硬度の上昇が認められる場合は×と評価した。各導電性ロールに対する評価を、下記表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明に従う導電性ロールにあっては、ロール表面が平滑であることが、また、導電性ゴム発泡体層が低硬度なものであることから、ロール全体の硬度も低いものであることが、認められたのである。
【符号の説明】
【0055】
10 電子写真機器用導電性ロール 12 導電性軸体
14 導電性ゴム発泡体層 16 抵抗調整層
18 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状金型の成形キャビティ内に軸体と共に同軸的に配置された未加硫未発泡発泡性ゴム層を、所定の成型温度にて発泡及び加硫せしめることにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が一体的に設けられてなる電子写真機器用導電性ロールにして、
前記未加硫未発泡発泡性ゴム層が、発泡剤と、1)体積抵抗率が1×106 Ω・cm以下、2)平均粒径が6μm〜180μm、3)融点が前記発泡剤の発泡開始温度以上で且つ前記成型温度以下である樹脂粒子とを配合してなる導電性ゴム組成物にて形成せしめられており、且つ、該樹脂粒子が、該導電性ゴム組成物中のゴム材料の100重量部に対して5〜40重量部の割合において配合されていることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項2】
前記樹脂粒子が、導電処理が施された樹脂粒子である請求項1に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項3】
前記導電処理が施された樹脂粒子が、イオン導電性ゴム及びイオン導電剤の混合物からなる層にて表面が被覆された樹脂粒子である請求項2に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項4】
前記イオン導電性ゴムがエピクロルヒドリンゴムである請求項3に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項5】
前記樹脂粒子がポリエチレン樹脂粒子である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項6】
前記導電性ゴム発泡体層の外周面上に抵抗調整層が設けられている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項7】
最外層として保護層が設けられている請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−255714(P2010−255714A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105106(P2009−105106)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】