説明

電子放出素子および電子放出素子のカソード電極の製造方法

【課題】ガス吸着材料が電子放出素子内に均一に分布されて、均一な発光が得られる電子放出素子、該電子放出素子を光源とする照明装置、および該電子放出素子のカソード電極を製造する方法を提供する。
【解決手段】電子放出素子1のカソード電極2は、電子輸送層9の表面に、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を固定して構成されている。カーボンナノ構造体13は、電子放出素子1の動作中に発生するガスや電子放出素子1の製造時に除去出来なかったガスを吸着するガス吸着材料として機能する物質である。カーボンナノ構造体13は、大きさを制御して製造される。電子放出材料14は、その先端がカーボンナノ構造体13の上面から突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両極間にガス吸着材料を配置した電子放出素子、および該電子放出素子のカソード電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子は対向配置されたカソード電極とアノード電極の間に電位差を与えることによって、カソード電極からアノード電極へ電子を放出する素子であり、表示装置や照明装置の光源、あるいはX線発生装置の電子源に用いられる。
【0003】
電子放出素子の動作中にカソード電極から放出された電子が、アノード電極に衝突すると微量のガスが発生する。また、製造時に除去できずに電子放出素子の内部に残留するガスもある。これらのガスは電子放出素子の性能を低下させるので、電子放出素子の内部の空間から除去する必要がある。
【0004】
そこで、電子放出素子のカソード電極とアノード電極の間の空間に、動作中に発生したガスや製造時に残留したガスを捕集して固定するガス吸着材料を配置することが知られている(例えば、特許文献1,2)。
【0005】
ガス吸着材料にはガスを化学的に吸着する物質や、ガスを物理的に吸着する材料(例えば、活性炭のような多孔性材料)が用いられる(特許文献1)。また、活性金属(例えば、バリウム)を含むガス吸着材料が用いられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−124177号公報
【特許文献2】特開2004−63103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、ガス吸着材料は電子放出素子内に均一に分布される必要がある。ガス吸着材料の分布が不均一で、カソード電極表面の高さが不均一だと、カソード電極上での電界集中が不均一になるからである。カソード電極から電子が不均一に放出され、電子放出素子の輝度の分布が不均一になるからである。
【0008】
しかしながら、電子放出素子用のガス吸着材料として従来知られていた物質は、その製造時に粒径をコントロールするのが難しく、粒径の揃ったガス吸着材料を得るのが難しかった。そのため、例えば、カソード電極上にガス吸着材料の層を形成する場合に層の厚さを均一にすることが難しかった。つまり、ガス吸着材料を電子放出素子内に均一に分布させることが難しかった。そして、電子放出素子の輝度の分布を均一にすることが難しかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ガス吸着材料が電子放出素子内に均一に分布されて、均一な発光が得られる電子放出素子を提供することを目的とする。また、該電子放出素子を光源とする照明装置を提供することを目的とする。また、該電子放出素子のカソード電極を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る電子放出素子は、カソード電極とアノード電極を対向配置するとともに、両電極間にガス吸着材料を配置して、前記両電極間に電位差を与えることによって、前記カソード電極から前記アノード電極へ電子を放出する電子放出素子において、前記ガス吸着材料はカーボンナノ構造体であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の観点に係る照明装置は、前記電子放出素子を光源として備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法は、電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、電子放出材料とカーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、前記ペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布するペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の観点に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法は、電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記第1のペーストを塗布する第1のペースト塗布工程と、マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記第1のペーストが塗布されていない領域に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有することを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の観点に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法は、電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記ペーストを塗布するペースト塗布工程と、マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記ペーストが塗布されていない領域に、触媒粒子を担持させる触媒粒子担持工程と、前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、前記電子輸送層の表面に電子放出材料の原料となる気体を接触させて、前記電子輸送層の表面に担持させた前記触媒粒子を起点に、電子放出材料を成長させる電子放出材料成長工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の観点に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法は、電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、前記第1のペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布する第1のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子輸送層の表面に前記カーボンナノ構造体の層を形成する第1の熱処理工程と、前記カーボンナノ構造体の層の表面に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子放出材料を前記カーボンナノ構造体の層の表面に固定する第2の熱処理工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス吸着材料が電子放出素子内に均一に分布される。また、カソード電極上のガス吸着材料の厚さを均一にして、その表面を平坦にすることができるので、カソード電極から電子が均一に放出される。そのため、電気放出素子の輝度の分布が均一になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電子放出素子の全体構成を示す概念図である。
【図2】第1の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極を示す概念図である。
【図3】第2の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極を示す概念図である。
【図4】第3の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極を示す概念図である。
【図5】ガス吸着材料の表面を開口した状態を示す概念図である。
【図6】ガス吸着材料にゲッター粒子を担持した状態を示す概念図である。
【図7】第1の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法を説明する図である。
【図8】第2の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法を説明する図である。
【図9】第3の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法を説明する図である。
【図10】第4の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法を説明する図である。
【図11】第5の実施形態に係る電子放出素子のカソード電極の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施形態について説明するが、本発明の具体的実施形態はいずれも電子放出素子のガス吸着材料としてカーボンナノ構造体を使用する点で共通する。そこで、最初にカーボンナノ構造体について概説する。
【0019】
さて、本明細書では、「カーボンナノ構造体」を「カーボンナノチューブ」および「カーボンナノホーン」を包括する上位概念を示す用語として使用している。
【0020】
カーボンナノチューブは、炭素の同素体であり、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。カーボンナノチューブのサイズは典型的に、外径が1nm〜数10nm程度、長さが100nm〜1mm程度である。また、カーボンナノチューブの比表面積は1000m/gにもなるので、ガスを物理的に吸着する能力が高い。また、カーボンナノチューブはメタンやアセチレンなどの炭化水素やメタノール、エタノールなどのアルコールなどを原料にして、化学気相成長法(CVD法)などで作成され、外径や長さの制御は容易である。つまり、所望の外径や長さを有するカーボンナノチューブを容易に得ることができる。
【0021】
また、カーボンナノホーンも、炭素の同素体の一つであり、六員環ネットワーク(グラフェンシート)を円錐形に丸めた構造をしている。カーボンナノホーンも、部分的にはカーボンナノチューブと同じ構造を取るため、カーボンナノチューブに含められることがある。カーボンナノホーンの外径は1nm〜5nm程度、長さは50nm程度である。また、多数のカーボンナノホーンが、ラッパ状に広がった端部を内側にして放射状に集合して、全体として直径100nm程度の海栗の殻のような形態をなすカーボンナノホーン凝集体を形成する。カーボンナノホーンも、比表面積300〜400m/g、細孔容積0.2ml/g程度を有するので、ガスを物理的に吸着する能力が高い。また、カーボンナノホーンは、グラファイトなどの固体材料を原料として、レーザーアブレーション法により作成され、外径や長さを制御することが可能である。また、カーボンナノホーン凝集体を、直径を揃えて製造することができる。
【0022】
本願発明者らは、カーボンナノチューブおよびカーボンナノホーンのガス吸着能力の高さと、外径や長さが制御できること、つまり、外径や長さを所望の大きさに揃えたカーボンナノチューブおよびカーボンナノホーンが得られる点に着目して、鋭意研究した結果、カーボンナノチューブあるいはカーボンナノホーン、すなわちカーボンナノ構造体を電子放出素子のガス吸着材料として使用すると、輝度分布に偏りが生じにくい電子放出素子が得られることを発見した。
【0023】
以下、カーボンナノ構造体をガス吸着材料として使用する電子放出素子の具体的な構成と、製造方法を説明する。
【0024】
図1は、電子放出素子1の全体構成を示す図であり、この構成は以下に示す本発明の実施形態の全てに共通する。
【0025】
図1に示すように、電子放出素子1はカソード電極2とアノード電極3を対向配置してなる素子である。電子放出素子1を電源装置4に接続して、両電極間に電位差を与えて、カソード電極2から電子を放出させて、アノード電極3上の蛍光体層5に衝突させると、発光を得ることができる。なお、カソード電極2とアノード電極3の間の間隔は、0.1mm〜200mmの範囲にすると好ましく、1mm〜10mmの範囲にするとさらに好ましい。
【0026】
なお、両電極間の空間6はシール部材7で大気から隔離されて、真空に保たれる。また、シール部材7の素材には、例えば、ガラスが用いられる。また、空間6の真空度は1×10−3Pa以下にすると好ましく、1×10−4Pa以下にするとさらに好ましい。
【0027】
カソード電極2は、カソード基板8の表面に電子輸送層9を形成し、電子輸送層9の上に電子放出部10を固定して構成される。
【0028】
カソード基板8は電子輸送層9と電子放出部10を保持するとともに、電子輸送層9と電子放出部10を外部から電気的に絶縁する基板である。なお、カソード基板8の素材には、ガラス、石英、非ドープのシリコンなどの絶縁材料が使用される。
【0029】
電子輸送層9は電源装置4の負極に接続されて、電源装置4の負極から供給される電子を電子放出部10に輸送する物質である。なお、電子輸送層9の素材には、導電性材料、例えば、アルミニウム、銅などの金属材料、ITO(Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛、二酸化チタンなどの金属酸化物材料、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどの炭素材料が使用される。また、電子放出部10が十分に面内の導電性を持つ場合には、電子輸送層9を省略することもできる。
【0030】
電子放出部10は、電子輸送層9から供給された電子をアノード電極3に向けて放出する物質である。電子放出部10の詳細な構成については後述する。
【0031】
アノード電極3は、アノード基板11の表面に電子輸送層12を形成し、電子輸送層12の上に前述の蛍光体層5を固定して構成される。なお、電子輸送層12の素材には、導電性材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛、二酸化チタンなどの金属酸化物材料、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどの炭素材料が使用される。これらは透明電極として機能する素材である。電子放出素子1をX線発生装置に使用する場合、電子輸送層12は必ずしも透明電極である必要はなく、例えば、アルミニウム、銅などの金属材料も用いることができる。またこの場合、蛍光体層5は必ずしも必要ではなく、素材は蛍光体以外の物質、例えば銅などの金属であってもよい。
【0032】
アノード基板11は、電子輸送層12と蛍光体層5を保持するとともに、電子輸送層12と蛍光体層5を外部から電気的に絶縁する基板である。なお、アノード基板11の素材には、カソード基板8と同様に、ガラス、石英などの絶縁材料が使用される。
【0033】
さて、電子放出素子1はカソード電極2に特徴がある。さらに詳しく言えば、カソード電極2上のガス吸着材料に特徴がある。その他の構成、つまり、アノード電極3やシール部材7の構成は上記と変わることがない。そこで、以下に、電子放出素子1のカソード電極2の具体的構成例を詳述する。
【0034】
[第1の実施形態]
図2は本発明の第1の実施形態に係る電子放出素子1のカソード電極2の構成を示す概念図である。図2に示すように、カソード電極2は電子輸送層9上にカーボンナノ構造体13と電子放出材料14を固定して構成されている。図2では、電子放出材料14を電子輸送層9の表面に直接固定された状態を示しているが、電子放出材料14が、電子輸送層9から多少離れる場合もある。
【0035】
カーボンナノ構造体13は、電子放出素子1の動作中に発生するガスや電子放出素子1の製造時に除去出来なかったガスを吸着するガス吸着材料として機能する物質である。また、前述したように、本明細書では、「カーボンナノ構造体」は「カーボンナノチューブ」と「カーボンナノホーン」を包括する上位概念を示す用語であり、図2(a)はカーボンナノホーンをガス吸着材料としてカソード電極2に備えた状態を示し、図2(b)はカーボンナノチューブをガス吸着材料としてカソード電極2に備えた状態を示している(図3以降についても同様である)。なお、図2(b)ではガス吸着材料としてのカーボンナノチューブが基板に垂直に配向した場合を例示しているが、カーボンナノチューブの方向は水平であっても、ランダムであってもよい。ただし、表面の凹凸が少ないほうがよい(これも図3以降についても同様である)。
【0036】
また、前述したように、カーボンナノ構造体13は、製造時に大きさ(長さ、径)を制御できるので、大きさの揃ったカーボンナノ構造体13を製造することができる。この大きさの揃ったカーボンナノ構造体13を使用すれば、カソード電極2上にカーボンナノ構造体13を均一に分布させることができる。また、カソード電極2上のカーボンナノ構造体13の層の高さ(厚さ)を揃えることができる。
【0037】
なお、空間6を真空引きする際に、カーボンナノ構造体13を100℃〜300℃の温度で熱処理すれば、カーボンナノ構造体13に付着していたガスが取り除かれるので、カーボンナノホーン構造体13のガス吸着材料としての能力が向上する。
【0038】
電子放出材料14は電子放出部10を構成する物質であり、その先端がカーボンナノ構造体13の上面から突出している。つまり、その先端はカーボンナノ構造体13の先端を超えて、アノード電極3の方に延びている。また、電子放出材料14の素材には、その先端に電界が集中するような形状を取り得る物質、つまりアスペクト比の大きい形状を取り得る物質(後述)が選ばれる。
【0039】
電子放出材料14の形状は、図2中の突出部15(カーボンナノ構造体13の先端を超えて、アノード電極3の方に延びている部分)のアスペクト比が5〜1000の範囲になるようにするのが望ましい。アスペクト比が5よりも小さいと電子放出材料14の先端への電界集中が弱くなり、また、アスペクト比が1000よりも大きいと電子放出材料14が直立した状態を保つのが困難となる。
【0040】
また、電子放出材料14は、電子輸送層9の表面に所定の間隔を空けて固定される。間隔16は、間隔16と突出部15の長さの比(間隔/突出部の長さ)が、0.5〜100の範囲になるようにすると好ましい。
【0041】
この比が0.5よりも小さいと、隣り合う電子放出材料14が互いに電界を遮蔽し合って先端部への電界集中が弱くなり、また、この比が100よりも大きいと、電子輸送層9上の電子放出材料14の分布密度が疎になり、電子放出素子1の輝度が低下するからである。この比を1〜3の範囲にするとさらに好ましい。こうすると、電子放出材料14の先端部への電界集中が強くなり、かつ、電子放出素子の輝度の低下を防止できる。
【0042】
前述したように、電子放出材料14にはアスペクト比の大きい形状を取り得る物質、例えば、繊維状カーボン、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブなどを使用する。
【0043】
繊維状カーボンとは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン凝集体とカーボンナノチューブから構成されるカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン凝集体、カーボンファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノスティックなどである。
【0044】
金属ナノワイヤーとは、ニッケル、コバルト、鉄、金などの金属を繊維状に形成した材料である。
【0045】
金属ナノチューブとは、金、銀、白金、ロジウム、イリジウムなどの金属を管状に形成した材料である。
【0046】
中でも、カーボンナノチューブは、特にアスペクト比の大きい形状、つまり、先端に電界が集中するような形状を取り得、また許容電流密度が高いので、電子放出材料14として好ましい。カーボンナノチューブは、単層、二層、多層のいずれであっても良いが、低電圧で電界集中を発生させるためには単層が望ましい。耐久性を求めるならば多層を選ぶと良い。低電圧での電界集中と耐久性の両立を求めるならば、二層を選ぶ。
【0047】
[第2の実施形態]
カソード電極2は、図3に示すように構成されても良い。すなわち、電子輸送層9の表面を、カーボンナノ構造体が固定された領域17と電子放出材料が固定された領域18に区画するようにしても良い。
【0048】
このように、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を区画して別個に配置するので、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を別個のプロセスで固定できる。そのため、各材料を固定するプロセスをそれぞれ別個に最適化することができる。例えば、インクジェット印刷やスプレー印刷のインク化条件、スクリーン印刷のペースト化条件、あるいはその他の印刷の塗布条件を最適に選ぶことができる。また、化学気相成長法で電子輸送層9の表面からカーボンナノチューブを成長させるときの合成条件を最適に選ぶことができる。
【0049】
[第3の実施形態]
また、カソード電極2は、図4に示すように構成されても良い。すなわち、電子輸送層9の表面にカーボンナノ構造体13を固定してカーボンナノ構造体13の層を形成し、その層の表面に電子放出材料14を固定してもよい。
【0050】
第2の実施形態と同様にこの場合も、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を別個のプロセスで固定するので、インク化条件、ペースト化条件あるいは塗布条件などを最適に選ぶことができる。また、化学気相成長法でカーボンナノ構造体13の層の表面からカーボンナノチューブを成長させるときの合成条件を最適に選ぶことができる。
【0051】
[第4の実施形態]
図5に示すように、カーボンナノ構造体13の表面に開孔部19を設けても良い。
【0052】
図5(a)は、カーボンナノ構造体13の一種であるカーボンナノホーン20が球状に集合したカーボンナノホーン凝集体21をガス吸着材料として使用する例を示す図であり、カーボンナノホーン20の側面が開口されて、開孔部19が形成される状態を示している。開孔部19はカーボンナノホーン20の先端に形成されてもよい。
【0053】
このように開孔部19を形成すれば、カーボンナノホーン20の比表面積は1300m/g〜1400m/g、細孔容積は0.9mL/gまで大きくなるので、未開孔のカーボンナノホーン20と比べてガス吸着能力は高くなる。
【0054】
開孔部19の形成は、カーボンナノホーン20を酸化処理または酸処理して行う。酸化処理は、カーボンナノホーン20を酸素雰囲気中で350℃〜550℃に加熱して行う。この処理によれば、0.3nm〜1.0nmの大きさの開孔部19を形成できる。
【0055】
酸処理は、カーボンナノホーン20を110℃の硝酸溶液に15分間浸漬して行う。この処理によれば、1nmの大きさの開孔部19を形成できる。あるいは、100℃の過酸化水素溶液にカーボンナノホーン20を2時間浸漬しても、同程度の大きさの開孔部19を形成できる。
【0056】
また、カーボンナノチューブ22をガス吸着材料とする場合も、酸処理または酸化処理を行って、図5(b)に示すように開孔部19を形成することができる。開孔部19の形成により、カーボンナノチューブ22の比表面積は、2000m/gまで大きくなる。
【0057】
[第5の実施形態]
また、図6に示すように、カーボンナノ構造体13にゲッター粒子23を担持させて、カーボンナノ構造体13のガス吸着能力を高くすることもできる。カーボンナノ構造体13に担持することで、ゲッター粒子23は微粒子化し、その比表面積が上がるため、ゲッター粒子23自身のガス吸着能力も通常より高くなる。
【0058】
ゲッター粒子23は、気体と親和性のある物質、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、トリウム、アルミニウム、バリウム、銀からなる金属の群、これらの金属の合金または前駆体、あるいはこれらの金属の酸化物の粒子である。
【0059】
「担持」とは、ゲッター粒子23をカーボンナノホーン20と接触させて、何らかの力(例えば、ファンデルワールス力)でカーボンナノホーン20に付着させることを言い、表面、開孔部19など、どのような場所に付着させてもよい。ゲッター粒子23を担持させるには、例えば、次のプロセスを用いる。また、ゲッター粒子23は、未開孔のカーボンナノ構造体13の表面にも担持させることができるが、開孔部19を有するカーボンナノ構造体13に担持させると、より大きなガス吸着効果が得られる。
【0060】
例えば、ゲッター粒子23を溶かした溶媒を含む浸漬槽にカーボンナノ構造体13を浸漬させれば、ゲッター粒子23がカーボンナノ構造体13の外表面あるいは内表面に付着する。
【0061】
また、ゲッター粒子23を所定の温度で昇華させたゲッター粒子23の気体を含む雰囲気にカーボンナノ構造体13を曝して、カーボンナノ構造体13の外表面または内表面にゲッター粒子23を付着させる。
【0062】
また、カーボンナノ構造体13の内部に導入したゲッター粒子23を互いに凝集させて、ゲッター粒子23の凝集体の一部が開孔部19から露出するようにしてもよい。
【0063】
このような電子放出素子1は、例えば、電界放出ディスプレイ装置やバックライト装置などの照明装置の光源として用いることができる。電界放出ディスプレイ装置の場合には、カソード基板8に表示画素に対応する電子放出部10をマトリックス状に配列し、このカソード基板8に、同じく表示画素ごとに蛍光体をマトリックス状に配列したアノード基板11を対向配置する。また、バックライト装置の場合には、アノード基板11あるいはカソード基板8のいずれかを透明にする。
【0064】
以下、カソード電極2を製造する方法を説明する。なお、カソード基板8の表面に電子輸送層9を形成するプロセスは各種公知のプロセスを選択すればよいので、ここでは説明を省略する。つまり、以下では、カソード基板8の表面に形成された電子輸送層9の表面に、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を固定するプロセスを説明する。なお、以下のプロセスの説明においては、カーボンナノホーン凝集体をカーボンナノ構造体13の代表例として図示しているが、カーボンナノチューブの場合も同様のプロセスを実行できる。
【0065】
[第1の実施形態]
前記第1の実施形態に係るカソード電極2(図2参照)は、以下に示すように、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を同一の媒体に混合分散させてなる単一のペーストをカソード基板8の電子輸送層9の表面に塗布して製造する。
【0066】
(ペースト調製工程)
まず、有機バインダを混ぜたαテルピオネール溶液(以下、「混合溶液」と言う)に、カーボンナノ構造体13と電子放出材料14を分散してペーストを調製する。
【0067】
なお、αテルピオネールに代えて、トルエンなどの炭化水素、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、水などを溶媒として混合溶液を調製してもよい。
【0068】
また、有機バインダには、ニトロセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂などを用いる。
【0069】
また、前述のペーストに結着剤を添加してもよい。結着剤には、ガラスフリット、金属錯体、導電性微粒子などを用いる。
【0070】
(ペースト塗布工程)
次に、前記ペーストを、カソード基板8の電子輸送層9の表面に塗布する(図7(a)参照)。
【0071】
(熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱装置(不図示)で加熱して、αテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去すると、残ったカーボンナノ構造体13と電子放出材料14が固定されて、カソード電極2が完成する(図7(b)参照)。
【0072】
なお、熱処理は、大気中、窒素などの不活性ガス雰囲中、あるいは真空中などで行うことができる。
【0073】
また、粘着テープを用いたピーリング、電界印加、プラズマ照射、レーザー照射、サンドブラスト、ドライアイスブラストなどの各種公知の処理を施せば、電子放出材料14をカーボンナノ構造体13から、さらに突出させることができる。
【0074】
[第2の実施形態]
前記第2の実施形態に係るカソード電極2(図3参照)は、以下に示すように、カソード基板8の電子輸送層9の表面をマスクで覆って、カーボンナノ構造体13を媒体に分散させてなる第1のペーストと、電子放出材料14を別の媒体に分散させてなる第2のペーストを、それぞれ電子輸送層9の表面の異なる領域に塗布して製造する。
【0075】
(第1のペースト調製工程)
まず、カーボンナノ構造体13を、混合溶液に分散させて第1のペーストを調製する。
【0076】
(第2のペースト調製工程)
次に、電子放出材料14を、別の混合溶液に分散させて第2のペーストを調製する。
【0077】
(第1のペースト塗布工程)
次に、開口25と閉口26を交互に並べたマスク24で電子輸送層9を覆って、マスク24の上から、第1のペーストを塗布する(図8(a)参照)と、電子輸送層9の表面の開口25の直下にある領域に第1のペーストが付着する。
【0078】
(第2のペースト塗布工程)
次に、別のマスク27で電子輸送層9を覆って、マスク27の上から第2のペーストを塗布して、電子輸送層9の第1のペーストが付着していない領域に、第2のペーストを付着させる(図8(b)参照)。ただし、第2のペーストの塗布前に、熱処理を行い、溶媒や有機バインダなどを除去しても良い。
【0079】
(熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱して、αテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去する。残ったカーボンナノ構造体13と電子放出材料14は、電子輸送層9の表面に区画された、それぞれ別の領域に固定され、カソード電極2が完成する(図8(c)参照)。
【0080】
[第3の実施形態]
前記第2の実施形態に係るカソード電極2(図3参照)は、以下に示すように、カソード基板8の電子輸送層9の表面をマスクで覆って、カーボンナノ構造体13を媒体に分散させてなるペーストを電子輸送層9の表面の所定の領域に塗布し、さらに前記ペーストが塗布された領域とは異なる領域に触媒粒子28を担持させて、触媒粒子28を起点にして電子放出材料14の結晶を成長させても製造できる。
【0081】
(ペースト調製工程)
まず、カーボンナノ構造体13を、混合溶液に分散させてペーストを調製する。
【0082】
(ペースト塗布工程)
次に、マスク24で電子輸送層9を覆って、マスク24の上から、ペーストを塗布する(図9(a)参照)。
【0083】
(触媒粒子担持工程)
次に、別のマスク27で電子輸送層9を覆って、マスク27の上から、電子輸送層9の第1のペーストが付着していない領域に、触媒粒子28を担持させる(図9(b)参照)。ただし、触媒粒子28の担持前に、熱処理を行い、溶媒や有機バインダなどを除去しても良い。
【0084】
また、触媒粒子28の担持は、例えば、公知の蒸着法を用いて行う。また、触媒粒子28には、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどを用いる。
【0085】
(熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱して、αテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去すると、残ったカーボンナノ構造体13と触媒粒子28は、電子輸送層9の表面に区画されて固定される(図9(c)参照)。
【0086】
(電子放出材料成長工程)
次に、電子放出材料の原料となる気体を、キャリアガスを用いて電子輸送層9の表面に接触させ、触媒粒子28を起点にカーボンナノ構造体13を超える長さまで電子放出材料14の結晶を成長させると、カソード電極2が完成する(図9(d)参照)。
【0087】
電子放出材料14の原料には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、メタノールまたはエタノールなどの炭素化合物のガス、あるいはCOガスなどを用いる。また、キャリアガスには、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いる。
【0088】
[第4の実施形態]
前記第3の実施形態に係るカソード電極2(図4参照)は、以下に示すように、カーボンナノ構造体13を媒体に分散させてなる第1のペーストを電子輸送層9の表面に塗布して、カーボンナノ構造体13を固定し、カーボンナノ構造体13の表面に電子放出材料14を分散させてなる第2のペーストをさらに塗布して製造する。
【0089】
(第1のペースト調製工程)
まず、カーボンナノ構造体13を、混合溶液に分散させて第1のペーストを調製する。
【0090】
(第2のペースト調製工程)
次に、電子放出材料14を、別の混合溶液に分散させて第2のペーストを調製する。
【0091】
(第1のペースト塗布工程)
次に、第1のペーストを、電子輸送層9の表面に塗布する(図10(a)参照)。
【0092】
(第1の熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱してαテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去すると、残ったカーボンナノ構造体13が電子輸送層9に固定されて、カーボンナノ構造体13の層が形成される(図10(b)参照)。
【0093】
(第2のペースト塗布工程)
次に、第2のペーストを、カーボンナノ構造体13の層の表面に塗布する(図10(c)参照)。
【0094】
(第2の熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱してαテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去すると、残った電子放出材料14がカーボンナノ構造体13の層の表面に固定されて、カソード電極2が完成する(図10(d)参照)。
【0095】
[第5の実施形態]
前記第3の実施形態に係るカソード電極2(図4参照)は、以下に示すように、触媒粒子28を担持させたカーボンナノ構造体13を媒体に分散させてなるペーストを電子輸送層9の表面に塗布して、カーボンナノ構造体13を固定し、触媒粒子28を起点にして電子放出材料14の結晶を成長させても製造できる。
【0096】
(触媒粒子担持工程)
まず、カーボンナノ構造体13に触媒粒子28を担持させる。
【0097】
触媒粒子28を担持するプロセスは、前述のゲッター粒子23をカーボンナノ構造体13に担持させたプロセスと同様である、つまり、触媒粒子28を含む溶液あるいは触媒粒子28の気体を含む雰囲気中にカーボンナノ構造体13を置いて行う。なお、触媒粒子28は、カーボンナノ構造体13の表面あるいは開孔部に担持される。
【0098】
(ペースト調製工程)
次に、触媒粒子28を担持させたカーボンナノ構造体13を、混合溶液に分散させてペーストを調製する。
【0099】
(ペースト塗布工程)
次に、ペーストを、電子輸送層9の表面に塗布する(図11(a)参照)。
【0100】
(熱処理工程)
次に、カソード基板8を加熱してαテルピオネールと有機バインダおよびその他の有機物(カーボンナノチューブやカーボンナノホーン以外の不純物)を除去する。残ったカーボンナノ構造体13が電子輸送層9に固定されて、カーボンナノ構造体13の層が形成される(図11(b)参照)。
【0101】
(電子放出材料成長工程)
次に、電子放出材料14の原料となる気体を、キャリアガスを用いてカーボンナノ構造体13の層の表面に接触させ、触媒粒子28を起点に所望の長さまで電子放出材料14の結晶を成長させると、図11(c)に示すようなカソード電極2が完成する。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を示し、さらに詳しく本発明について例示する。以下の例は、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0103】
[実施例1]
前記第1の実施形態に係る製造方法で電子放出素子のカソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。電子放出材料にはカーボンナノチューブを、ガス吸着材料にはカーボンナノホーンを用いた。
【0104】
(ペーストの調製)
カーボンナノチューブ10mg、カーボンナノホーン150mg、セルロース系有機バインダ100mgを、αテルピオネール5mLに加えて混合して混合液を調製した後、その混合液を30分間超音波処理し、機械的混練を5時間行ってペーストを調製した。
【0105】
(ペーストの塗布)
次に、調製したペーストを、ITOをスパッタしたガラス基板上に、厚さが1μm程度になるようにスクリーン印刷によって塗布した。
【0106】
(カソード基板の熱処理)
ガラス基板にペーストを塗布した後、窒素雰囲気下500℃で1時間熱処理して、有機バインダとαテルピオネールを除去して、ITOの表面にカーボンナノチューブとカーボンナノホーンを固定した。なお、比較のため、上記と同じ手順でカーボンナノチューブのみをITOの表面に固定したカソード電極を作製した。
【0107】
(電界放出特性の評価)
カソード電極の表面を、粘着テープを用いてピーリング処理し、カソード電極上にカーボンナノチューブをそれぞれ直立させた。そして、ITOを表面に固定したアノード電極を、カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、カーボンナノホーンを含まないカソード電極の場合、放出電流が10〜15%低下したのに対し、カーボンナノホーンを含むカソード電極の場合は、放出電流の低下が5〜8%に抑えられることが確認された。また、電子線励起用蛍光体をITOの表面に固定したアノード電極を、前述と同様に各カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えたところ、カーボンナノホーンを含むカソード電極の場合は、カーボンナノホーンを含まないカソード電極の場合と比べて、輝度の分布が均一になることが確認された。また、カソード電極の表面を、電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノチューブの先端は、カーボンナノホーンの先端から突出していることが確認された。その突出部は、高さ1〜1.5μm、アスペクト比が100〜200程度であり、その間隔と高さの比(間隔/長さ)は、1〜3程度であった。また、突出部周辺のカーボンナノホーンの高さの差は、典型的に200nm以下と小さく、ガラス基板上にほぼ均一に配置されていることが確認された。
【0108】
[実施例2]
電子放出材料にカーボンナノチューブを、ガス吸着材料に開孔処理したカーボンナノホーンを用いて、カソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。
【0109】
(カソード電極の作製)
カーボンナノホーンを開孔処理する以外は、実施例1と同じ手順でカソード電極を作製した。開孔処理は、ペースト調製前に処理する場合と、窒素雰囲気下でのカソード基板の熱処理前に処理する場合の2通り行い、いずれも大気中500℃で10分間酸化処理した。カソード電極は、2通りの開孔処理したカーボンナノホーンを用いて作製した。
【0110】
(電界放出特性の評価)
実施例1と同様に、ITOを表面に固定したアノード電極を、カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、ペースト調製前に開孔処理したカーボンナノホーンを備えるカソード電極を用いた場合は、放出電流の低下が3〜5%に抑えられ、熱処理前に開孔処理したカーボンナノホーンを備えるカソード電極を用いた場合は、放出電流の低下が3〜6%に抑えられることを確認した。
【0111】
[実施例3]
電子放出材料にカーボンナノチューブを、ガス吸着材料に金属を担持したカーボンナノホーンを用いて、カソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。
【0112】
(カソード電極の作製)
カーボンナノホーンに金属を担持する以外は、実施例1と同じ手順でカソード電極を作製した。金属の担持は、1重量%の酢酸チタン溶液に、開孔処理したカーボンナノホーンを含むガラス基板を10分間浸漬させた後、酸素雰囲気下300℃で酢酸チタンを酸化し、続いて、水素雰囲気下400℃で酸化チタンを還元することにより行った。なお、開孔処理は、金属を担持する前に、大気中500℃で10分間酸化処理して行った。
【0113】
(電界放出特性の評価)
実施例1と同様に、ITOを表面に固定したアノード電極を、カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、放出電流の低下が1〜3%に抑えられることを確認した。
【0114】
[実施例4]
電子放出材料およびガス吸着材料にカーボンナノチューブを用いて、カソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。
【0115】
(ペーストの調製)
長さ3〜4μmのカーボンナノチューブ10mgと長さ長さ0.2〜0.3μmのカーボンナノチューブ100mgを、セルロース系有機バインダとともにαテルピオネール溶液10mlに加えて、実施例1の場合と同様の処理を行ってペーストを調製した。
【0116】
(ペーストの塗布)
次に、調製したペーストを、ITOをスパッタしたガラス基板上に、厚さが1μm程度になるようにスクリーン印刷した。
【0117】
(カソード基板の熱処理)
ガラス基板にペーストを塗布した後、窒素雰囲気下500℃で1時間熱処理して、有機バインダとαテルピオネールを除去して、ITOの表面に長さの異なる2種類のカーボンナノチューブを固定してカソード電極を作製した。
【0118】
(電界放出特性の評価)
各カソード電極の表面を、粘着テープを用いてピーリング処理し、カソード電極上にカーボンナノチューブを直立させた。そして、ITOを表面に固定したアノード電極を、各カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、放出電流の低下が6〜9%に抑えられることを確認した。カソード電極の表面を、電子顕微鏡で観察したところ、電子放出材料用のカーボンナノチューブの先端は、ガス吸着材料用のカーボンナノチューブの先端から突出していることが確認された。その突出部は、高さ1.5〜2μm、アスペクト比が100〜200程度であり、その間隔と高さの比(間隔/長さ)は、1〜3程度であった。また、突出部周辺のガス吸着材料用のカーボンナノチューブの高さの差は、典型的に300nm以下と小さく、ガラス基板上にほぼ均一に配置されていることが確認された。
【0119】
[実施例5]
前記第2の実施形態に係る製造方法で電子放出素子のカソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。電子放出材料にはカーボンナノチューブを、ガス吸着材料には開孔処理したカーボンナノホーンを用いた。
【0120】
(ペーストの調製)
まず、開孔処理したカーボンナノホーンを含むペースト(以下、第1のペーストと言う)とカーボンナノチューブを含むペースト(以下、第2のペーストと言う)を調製した。第1のペーストは、開孔処理したカーボンナノホーン200mgを、セルロース系有機バインダ200mgとともにαテルピオネール10mlに加えて、分散・混練して調製した。また第2のペーストは、カーボンナノチューブ10mgを、セルロース系有機バインダ100mgとともにαテルピオネール10mlに加えて、分散・混練して調製した。分散・混練は実施例1の場合と同様に行った。なお、カーボンナノホーンの開孔処理は、第1のペーストを調製する前に、大気中500℃で10分間熱処理して行った。
【0121】
(ペーストの塗布)
ITOをスパッタしたガラス基板の上方に、直径50μmの開口が正方格子状に並んだメッシュを配置して、開口の上から、第1のペーストをガラス基板にスクリーン印刷した。そして、別のメッシュ(開口の位置が逆になっている)をガラス基板の上方に配置して、開口の上から第1のペーストが塗布されていないガラス基板上の領域に、第2のペーストをスクリーン印刷した。
【0122】
(カソード基板の熱処理)
ガラス基板にペーストを塗布した後、窒素雰囲気下500℃で1時間熱処理して、有機バインダとαテルピオネールを除去して、カーボンナノチューブと開孔処理したカーボンナノホーンを、ITOの表面に区画したカソード電極を作製した。
【0123】
(電界放出特性の評価)
実施例1と同様に、ITOを表面に固定したアノード電極を、カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、放出電流の低下を3〜5%に抑えられることを確認した。
【0124】
[実施例6]
前記第4の実施形態に係る製造方法で電子放出素子のカソード電極を作製し、電界放出特性を評価した。電子放出材料にはカーボンナノチューブを、ガス吸着材料には開孔処理したカーボンナノホーンを用いた。
【0125】
(ペーストの調製)
まず、開孔処理したカーボンナノホーンを含むペースト(以下、第1のペーストと言う)とカーボンナノチューブを含むペースト(以下、第2のペーストと言う)を調製した。第1のペーストは、開孔処理したカーボンナノホーン200mgを、セルロース系有機バインダ200mgとともにαテルピオネール5mlに加えて、分散・混練して調製した。また第2のペーストは、カーボンナノチューブ10mgを、セルロース系有機バインダ30mgとともにαテルピオネール5mlに加えて、分散・混練して調製した。分散・混練は実施例1の場合と同様に行った。なお、カーボンナノホーンの開孔処理は、第1のペーストを調製する前に、大気中500℃で10分間熱処理して行った。
【0126】
(ペーストの塗布)
ITOをスパッタしたガラス基板の表面に第1のペーストをスクリーン印刷し、ガラス基板を100℃で加熱してαテルピオネールを除去してカーボンナノホーンの層を形成し、次いで、カーボンナノホーンの層の表面に第2のペーストをスクリーン印刷した。
【0127】
(カソード基板の熱処理)
第2のペーストを塗布した後、窒素雰囲気下500℃で1時間熱処理して、有機バインダとαテルピオネールを除去して、カーボンナノホーンの層の表面にカーボンナノチューブが固定されたカソード電極を作製した。
【0128】
(電界放出特性の評価)
実施例1と同様に、ITOを表面に固定したアノード電極を、カソード電極に対向配置し、両極間に一定電圧を与えて100時間作動させたところ、放出電流の低下を3〜5%に抑えられることを確認した。
【0129】
本明細書の実施形態および実施例は、本発明の具体的実施態様の例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自在に変形、応用あるいは改良して実施できる。
【0130】
例えば、上記実施形態および実施例では、カーボンナノ構造体あるいは電子放出材料を溶媒に溶かしてペーストを調製する際に、バインダや結着剤を添加する例を示しているが、バインダや結着剤あるいはその他の物質の添加の有無は、本発明の技術的範囲の解釈には影響しない。つまり、カーボンナノ構造体あるいは電子放出材料のみでペーストを調製するものであっても良いし、あるいは、これらにバインダや結着剤を添加するものであっても良い。いずれの場合も、本発明の技術的範囲に属する。また、熱処理工程において、溶媒以外の物質の除去が行われるか否かも本発明の技術的範囲の解釈には影響しない。熱処理工程は溶媒のみを除去するものであっても良いし、溶媒と他の物質を除去するものであっても良い。いずれの場合も、本発明の技術的範囲に属する。
【0131】
また、上記実施形態および実施例では、カソード電極とアノード電極のみを備える2極構造の電子放出素子の例を示したが、本発明に係る電子放出素子は2極構造のものには限定されない。例えば、カソード電極とアノード電極に加えて、ゲート電極を備えて3極構造の電子放出素子を構成しても良い。
【0132】
また、上記実施形態および実施例では、カーボンナノ構造体や電子放出材料を含むペーストの塗布をスクリーン印刷法で行ったが、塗布方法はこれに限られない。例えば、カーボンナノ構造体や電子放出材料を含むインクを調製して、そのインクをスプレー印刷やインクジェット印刷により塗布しても良い。
【0133】
また、上記実施形態では、カソード基板の表面をマスクで覆って、カソード基板の表面の所定に領域にカーボンナノ構造体を含むペーストを塗布した後で、カソード基板の表面を別のマスクで覆って、カソード基板の表面の別の領域に電子放出材料を含むペーストあるいは触媒粒子を塗布、担持させる例を示したが、別のマスクを用いる代わりに、カーボンナノ構造体の塗布に用いたものと同じマスクのカソード基板に対する相対的な位置をずらして、電子放出材料を含むペーストあるいは触媒粒子の塗布、担持を行うようにしても良い。
【0134】
以上説明したように、本発明によれば、電子放出素子のガス吸着材料としてカーボンナノ構造体を使用するので、電子放出素子にガス吸着材料を偏りなく均一に分布させることができる。そのため、電子放出素子の劣化や輝度分布の偏りを抑制できる。
【0135】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0136】
(付記1)カソード電極とアノード電極を対向配置するとともに、両電極間にガス吸着材料を配置して、前記両電極間に電位差を与えることによって、前記カソード電極から前記アノード電極へ電子を放出する電子放出素子において、前記ガス吸着材料はカーボンナノ構造体である、
ことを特徴とする電子放出素子。
【0137】
(付記2)前記カソード電極は、電子輸送層が固定されたカソード基板を有し、前記電子輸送層の表面に電子放出材料と前記カーボンナノ構造体を固定して構成されて、前記電子放出材料の先端は、前記カーボンナノ構造体の先端を超えて、前記アノード電極の方向に延びている、
ことを特徴とする付記1に記載の電子放出素子。
【0138】
(付記3)前記電子輸送層の表面は、前記電子放出材料が固定された領域と前記カーボンナノ構造体が固定された領域に区画される、
ことを特徴とする付記2に記載の電子放出素子。
【0139】
(付記4)前記カソード電極は、電子輸送層が固定されたカソード基板を有し、前記電子輸送層の表面には前記カーボンナノ構造体の層が形成され、前記カーボンナノ構造体の層の表面に電子放出材料が固定されている、
ことを特徴とする付記1に記載の電子放出素子。
【0140】
(付記5)前記カーボンナノ構造体は、その表面に開孔部を有するか、表面あるいは前記開孔部にゲッター粒子を担持している、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の電子放出素子。
【0141】
(付記6)ゲッター粒子は、チタンジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、トリウム、アルミニウム、バリウム、銀からなる金属の群、前記金属の合金、前記金属の前駆体、あるいは前記金属の酸化物のいずれかである、
ことを特徴とする付記5に記載の電子放出素子。
【0142】
(付記7)付記1乃至6のいずれか1つに記載の電子放出素子を光源として備える、
ことを特徴とする照明装置。
【0143】
(付記8)電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、電子放出材料とカーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、前記ペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布するペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【0144】
(付記9)電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記第1のペーストを塗布する第1のペースト塗布工程と、マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記第1のペーストが塗布されていない領域に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【0145】
(付記10)電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記ペーストを塗布するペースト塗布工程と、マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記ペーストが塗布されていない領域に、触媒粒子を担持させる触媒粒子担持工程と、前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、前記電子輸送層の表面に電子放出材料の原料となる気体を接触させて、前記電子輸送層の表面に担持させた前記触媒粒子を起点に、電子放出材料を成長させる電子放出材料成長工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【0146】
(付記11)電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、前記第1のペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布する第1のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子輸送層の表面に前記カーボンナノ構造体の層を形成する第1の熱処理工程と、前記カーボンナノ構造体の層の表面に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子放出材料を前記カーボンナノ構造体の層の表面に固定する第2の熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【符号の説明】
【0147】
1 電子放出素子
2 カソード電極
3 アノード電極
4 電源装置
5 蛍光体層
6 空間
7 シール部材
8 カソード基板
9 電子輸送層
10 電子放出部
11 アノード基板
12 電子輸送層
13 カーボンナノ構造体
14 電子放出材料
15 突出部
16 間隔
17 カーボンナノ構造体が固定された領域
18 電子放出材料が固定された領域
19 開孔部
20 カーボンナノホーン
21 カーボンナノホーン凝集体
22 カーボンナノチューブ
23 ゲッター粒子
24 マスク
25 開口
26 閉口
27 マスク
28 触媒粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極とアノード電極を対向配置するとともに、両電極間にガス吸着材料を配置して、前記両電極間に電位差を与えることによって、前記カソード電極から前記アノード電極へ電子を放出する電子放出素子において、
前記ガス吸着材料はカーボンナノ構造体である、
ことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
前記カソード電極は、電子輸送層が固定されたカソード基板を有し、前記電子輸送層の表面に電子放出材料と前記カーボンナノ構造体を固定して構成されて、
前記電子放出材料の先端は、前記カーボンナノ構造体の先端を超えて、前記アノード電極の方向に延びている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
前記電子輸送層の表面は、前記電子放出材料が固定された領域と前記カーボンナノ構造体が固定された領域に区画される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子放出素子。
【請求項4】
前記カソード電極は、電子輸送層が固定されたカソード基板を有し、前記電子輸送層の表面には前記カーボンナノ構造体の層が形成され、前記カーボンナノ構造体の層の表面に電子放出材料が固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項5】
前記カーボンナノ構造体は、その表面に開孔部を有するか、表面あるいは前記開孔部にゲッター粒子を担持している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子を光源として備える、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、
電子放出材料とカーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、
前記ペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布するペースト塗布工程と、
前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【請求項8】
電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、
カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、
電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、
マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記第1のペーストを塗布する第1のペースト塗布工程と、
マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記第1のペーストが塗布されていない領域に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、
前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【請求項9】
電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、
カーボンナノ構造体を溶媒と混合してペーストを調製するペースト調製工程と、
マスクでカソード基板の電子輸送層の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の所定の領域に前記ペーストを塗布するペースト塗布工程と、
マスクで前記カソード基板の表面を覆って、前記電子輸送層の表面の前記ペーストが塗布されていない領域に、触媒粒子を担持させる触媒粒子担持工程と、
前記カソード基板を加熱して、前記溶媒を除去する熱処理工程と、
前記電子輸送層の表面に電子放出材料の原料となる気体を接触させて、前記電子輸送層の表面に担持させた前記触媒粒子を起点に、電子放出材料を成長させる電子放出材料成長工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。
【請求項10】
電子放出素子のカソード電極を製造する方法において、
カーボンナノ構造体を溶媒と混合して第1のペーストを調製する第1のペースト調製工程と、
電子放出材料を溶媒と混合して第2のペーストを調製する第2のペースト調製工程と、
前記第1のペーストをカソード基板の電子輸送層の表面に塗布する第1のペースト塗布工程と、
前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子輸送層の表面に前記カーボンナノ構造体の層を形成する第1の熱処理工程と、
前記カーボンナノ構造体の層の表面に、前記第2のペーストを塗布する第2のペースト塗布工程と、
前記カソード基板を加熱し前記溶媒を除去して、前記電子放出材料を前記カーボンナノ構造体の層の表面に固定する第2の熱処理工程と、を有する、
ことを特徴とする電子放出素子のカソード電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−181351(P2011−181351A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44781(P2010−44781)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】