説明

電子放出素子及びこれを用いた画像表示装置並びにこれらの製造方法

【課題】段差形成部材2の上面に設けられたゲート5と、段差形成部材2の側面20におけるゲート5の直下に形成された凹部7と、段差形成部材2の側面20に設けられ、上端に凹部7の下縁から上縁に向かって突起した突起部6aを有するカソード6とを備えた電子放出素子について、電子放出効率を向上させると同時に、素子に流れる電流のバラツキを抑制する電流制限用の抵抗層を素子の構成部材の一部として組み込む。
【解決手段】段差形成部材2の側面20は、凹部7の下縁から高さ方向中間部30までの上段21の傾斜角θ1より、高さ方向中間部30から下端までの下段22の傾斜角θ2が大きくなっており、しかもカソード6の上段21の部分である上段カソード部分6bよりもカソード6の下段22の部分である下段カソード部分6cの電気的抵抗値が大きい電子放出素子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型で垂直型の電子放出素子及びこれを用いた画像表示装置並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次のような電子放出素子とその製造方法が特許文献1で提案されている。
【0003】
即ち、特許文献1に示される電子放出素子は、基板上に配置された、上面と側面を有する絶縁性の段差形成部材と、段差形成部材の上面に設けられたゲートとを備えている。また、段差形成部材の側面におけるゲートの直下には凹部が形成され、凹部の下の段差形成部材の側面には、上端に凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードが設けられている。この電子放出素子は、電界放出型で垂直型の電子放出素子で、カソードとゲートとの間に電圧を印加することで、カソード側から電子を電界放出させることができる。
【0004】
特許文献1に示される上記電子放出素子の製造方法では、まず、基板上に第一の絶縁材料、第二の絶縁材料、第一の導電材料の順に積層し、レジストパターンを形成した後にドライエッチングを施す。これにより、第一の導電材料層が配置された上面と、この上面と基板との間に位置する側面とを備えた絶縁性の段差形成部材(絶縁部材)を形成する。次いで、レジストを剥離した後、ウエットエッチングにより、段差形成部材を構成する第二の絶縁層をエッチングし、段差形成部材の側面における第一の導電材料層の直下に凹部を形成する。その後、側面に対して斜め方向から第二の導電材料を付着させてカソードを形成する一方、第一の導電材料層を単独で又は第一の導電材料層上に積層された第二の導電材料層を一体としてゲートとして電子放出素子とする。
【0005】
更に特許文献1の実施例には、上記ドライエッチングによって得た段差形成部材の側面の角度が基板の水平面に対しておよそ80度の斜面であったことと、側面への第二の導電材料の付着を入射角度を40度又は20度として行ったことも開示されている。
【0006】
一方、電子放出素子は、例えば画像表示装置に用いられるが、画像表示装置の大型化、高精細化による素子数の増加に伴い、素子間の輝度ばらつきの低減が求められる。輝度ばらつきを引き起こす原因となる素子の破壊や劣化を防止するためには、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制することが必要である。このために、電子放出素子の構成部材とは別に、電流制限用の抵抗層(バラスト抵抗層)を設けることで、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制することが特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−289762号公報
【特許文献2】アメリカ特許第5838103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電子放出素子は、少ない消費電力で輝度に優れた画像表示装置を構成することができるよう、更なる電子放出効率の向上が求められている。特許文献1に示されるような電界放出型で垂直型の電子放出素子についても同様である。
【0009】
また、特許文献2のように、電子放出素子の構成部材とは別に電流制限用の抵抗層を設けることは、電子放出素子の設置領域を拡大することになり、更に製造プロセスも複雑となるという問題がある。
【0010】
本発明は、電界放出型で垂直型の電子放出素子について、電子放出効率を向上させると同時に、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制する手段を有した電子放出素子を提供することを目的とする。また、本発明は、この電子放出素子を用いた画像表示装置並びに電子放出素子及び画像形成装置の簡便で効率の良い製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一は、基板上に配置された、上面と側面を有する絶縁性の段差形成部材と、該段差形成部材の前記上面に設けられたゲートと、前記段差形成部材の前記側面における前記ゲートの直下に形成された凹部と、前記段差形成部材の前記側面に設けられ、上端に前記凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードとを備えた電子放出素子において、
前記段差形成部材の前記側面は、前記凹部の下縁から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角が大きくなっており、しかも前記カソードの前記上段部分である上段カソード部分よりも前記カソードの前記下段部分である下段カソード部分の電気的抵抗値が大きいことを特徴とする電子放出素子を提供するものである。
【0012】
本発明の第二は、上記本発明の第一に係る電子放出素子の前記カソードが、前記下段カソード部分を介して配線に接続されたリアプレートと、前記ゲートを介して前記カソードの突起部に対向するアノード及び電子の照射によって発光する発光部材を有するフェースプレートとが間隔を開けて対向配置されていることを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【0013】
本発明の第三及び第四は、基板上に第一の絶縁材料、第二の絶縁材料及び第一の導電材料を順次積層した積層体をエッチングして、上面と側面を有し、前記上面に前記第一の導電材料層が設けられた絶縁性の段差形成部材を形成し、更に前記第二の絶縁材料層をエッチングして、前記段差形成部材の前記側面における前記第一の導電材料層の直下に凹部を形成した後、第二の導電材料を付着させることで、前記段差形成部材の前記側面に設けられ、上端に前記凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードを形成する一方、前記第一の導電材料層単独又は前記第一の導電材料層の上に前記第二の導電材料層が積層されたゲートとする電子放出素子の製造方法に関する。
【0014】
本発明の第三は、上記電子放出素子の製造方法において、前記第一の絶縁材料層を複数回に分けて成膜し、前記積層体のエッチング時のエッチングレートを、前記第一の絶縁材料層の上部に比して下部を小さくしておくことにより、前記段差形成部材の前記側面における前記第一の絶縁材料層の上端から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角を大きくし、しかも前記第二の導電材料を前記基板の表面に対する垂直方向から供給して付着させることを特徴とする電子放出素子の製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明の第四は、上記電子放出素子の製造方法において、前記積層体のエッチングを複数の条件で行うことで、前記段差形成部材の前記側面における第一の絶縁材料層の上端から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角を大きくし、しかも前記第二の導電材料を前記基板の表面に対する垂直方向から供給して付着させることを特徴とする電子放出素子の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明の第五は、上記本発明の第三又は第四に係る記載の電子放出素子の製造方法で製造した電子放出素子の前記カソードを、当該カソードの前記下段部分である下段カソード部分を介して配線に接続したリアプレートと、前記ゲートを介して前記カソードの突起部に対向するアノード及び電子の照射によって発光する発光部材を有するフェースプレートとを間隔を開けて対向配置することを特徴とする画像表示装置の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第一に係る電子放出素子におけるカソードは、段差形成部材の側面の上段に設けられた上段カソード部分よりも下段に設けられた下段カソード部分の電気的抵抗値が大きくなっている。この電気的抵抗値の大きな下段カソード部分を介してカソードを駆動回路に接続すると、この下段カソード部分が電流制限用の抵抗層として機能し、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制することができる。加えて、下段カソード部分は、カソードの一部、つまり電子放出素子の構成部材の一部であることから、電流制限用の抵抗層を別部材として設ける場合に比して、電子放出素子の設置領域が大きくなったり、製造プロセスが煩雑化することもない。また、後述する実施例から明らかなように、側面の上段を下段より小さな傾斜角の斜面としていることにより、電子放出効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の第二に係る画像表示装置は、上記本発明の第一に係る電子放出素子を用いたもので、この電子放出素子のカソードが、下段カソード部分を介して配線に接続されている。従って、下段カソード部分が電流制限用の抵抗層として機能するので、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制することができ、素子間の輝度ばらつきが小さい良好な像表示が可能となる。また、電子放出素子の電子放出効率がよいので、消費電力を節減することができる。
【0019】
本発明の第三及び第四に係る電子放出素子の製造方法によれば、上面に第一の導電材料層が設けられた段差形成部材を形成するためのエッチング時に、形成される段差形成部材の側面の上段の傾斜角に比して下段の傾斜角を大きくすることができる。このため、カソードを構成するための第二の導電材料を基板の表面に対して垂直方向から供給して付着させることで、上段カソード部分と下段カソード部分の電気的抵抗値の差を付けることができる。つまり、側面の下段は上段より第二の導電材料の供給方向に対して大きく傾斜しているので、第二の導電材料の付着密度が上段に比して低くなり、電気的抵抗値が高くなる。これにより、本発明の第一に係る電子放出素子を容易に製造することができる。換言すると、本発明の第一に係る電子放出素子は、製造容易な素子であるともいえる。
【0020】
本発明の第五に係る画像表示装置の製造方法によれば、既に説明した利点を有する画像表示装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電子放出素子の一例を示す模式的断面図である。
【図2】段差形成部材の側面の傾斜角と、そこに形成するカソードの抵抗との関係を表す図である。
【図3】本発明に係る電子放出素子を駆動する場合の説明図である。
【図4】本発明に係る画像表示装置の一例を示す模式的一部断面斜視図である。
【図5】本発明に係る電子放出素子の製造工程の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る電子放出素子の製造工程の他の例を示す図である。
【図7】本発明の比較例に係る電子放出素子の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0023】
まず、本発明に係る電子放出素子を説明する。図1は本発明に係る電子放出素子の一例を示すもので、(a)は模式的平面図、(b)は(a)における模式的A−A断面図、(c)は第二の導電材料層を除去した状態の(a)における模式的A−A断面図である。
【0024】
図1中、1は基板、2は絶縁性の段差形成部材、2aは第一の絶縁材料層、2bは第二の絶縁材料層、3は第一の導電材料層、4は第二の導電材料層、5はゲート、6はカソード、7は凹部である。
【0025】
段差形成部材2は、上面と側面20を有する形状、例えばライン状等の形状で基板1上に突設されており、基板1側から第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2bを順次積層した構成となっている。段差形成部材2の上面には第一の導電材料層3が設けられており、本例においては更にその上に第二の導電材料層4が重ねられて、両者が一体となってゲート5を構成している。段差形成部材2の側面20のゲート5直下には、凹部7が形成されている。この凹部7は、後述するように、段差形成部材2における第二の絶縁性材料層2bを側面20側からエッチング除去することで形成されるものである。更に、段差形成部材2の側面20には、第二の導電材料層で形成されたカソード6が設けられている。このカソード6の上端は、凹部7の下縁から上縁に向かって突起した突起部6aを有している。この突起部6aは、段差形成部材2の側面20側のゲート5の端部に対向している。なお、段差形成部材2の側面20は、カソード6が付設されるべき側面をいう。
【0026】
特に図1(c)に示されるように、段差形成部材2の側面20は、凹部7の下縁から高さ方向中間部30までの上段の側面部21と基板1に平行な面に対する傾斜角θ1と、この高さ方向中間部30から下端までの下段の側面部22と基板1に対する傾斜角θ2とが異なるものとなっている。つまり、側面20は、傾斜が異なる二つの斜面が連なって構成されている。また、上段の側面部21の傾斜角θ1は、上段の側面部21の斜面と基板1の表面との交差角をいい、下段の側面部22の傾斜角θ2は、下段の側面部22の斜面と基板1の表面との交差角をいう。本発明における上段の側面部21の傾斜角θ1と下段の側面部22の傾斜角θ2は、θ1<θ2の関係になっている。なお、傾斜角θ1,θ2は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した値をいう。
【0027】
カソード6は、段差形成部材2の側面20の上段の側面部21に設けられている上段カソード部分6b、下段の側面部22に設けられている下段カソード部分6cを有している。また、本例におけるカソード6は、下段カソード部分6cに連なって基板1の表面上に延在した基板上カソード部分6dをも有している。本発明においては、上記上段カソード部分6bよりも下段カソード部分6cの電気的抵抗値が大きくなっている。そして、この下段カソード部分6cが、過剰電流や電流変動が生じた際に素子に流れる電流を抑制する電流制限用の抵抗層として機能するものとなっている。この下段カソード部分6cはカソード6の一部であるので、新たな別部材として電流制限用の抵抗層を設けることによる不都合を解消することができる。上段カソード部分6bに対して、下段カソード部分6cは電流制限用の抵抗層として機能させるために、電気的抵抗値は大きいことが好ましい。下段カソード部分6cの電気的抵抗値は、上段カソード部分6bの電気的抵抗値の15倍以上であることが好ましい。加えて、本発明においては、上段の側面部21の傾斜角θ1が下段の側面部22の傾斜角θ2に比して小さい緩やかな傾斜面となっていることから、段差形成部材2の側面20全体が傾斜角θ2の斜面となっている場合に比して電子放出効率を向上させることができる。
【0028】
更に説明すると、電子放出素子を備える画像表示装置においては、過剰電流や電流変動が生じた際にゲート5とカソード6の間で電気的ショートやリークが発生し、電流の一時的な急激な増大により、周辺領域のエミッタが破壊される可能性がある。その結果、画像表示装置においては、ライン欠陥、点欠陥、更に絶縁破壊が多発する。そのため、過剰電流が生じても、電流のばらつきを抑制できるような抵抗層が必要となる。
【0029】
本発明においては、別構成による電流制限用の抵抗層を設けることなく、素子内に高抵抗部を設けることができる。よって、過剰電流が生じても、電流を抑制できる。つまり、図1に示す本発明に係る電子放出素子の例では、段差形成部材2の側面20は、高さh1と傾斜角θ1からなる上段の側面部21と、高さh2と傾斜角θ2からなる下段の側面部22とを有している。角度θ1とθ2の関係においては、θ1<θ2であり、θ2は70度から90度の範囲内であることが好ましく、80度から90度の範囲内であることがより好ましい。θ2はθ1より10度以上大きいことが好ましく、20度以上大きいことがより好ましい。
【0030】
製造方法の説明においても述べるが、本発明に係る電子放出素子は、図1(c)の状態において、基板1の表面に対する垂直方向から第二の導電材料を供給し、図1(a),(b)に示されるように、段差形成部材2の側面20に付着した第二の導電材料層4でカソード6を形成することで製造することができる。第二の導電材料の供給方向に対する傾斜が小さい、下段の側面部22に形成される下段カソード部分6cは第二の導電材料の密度が小さくなる。逆に第二の導電材料の供給方向に対する傾斜が大きい上段の側面部21に形成される上段カソード部分6bは第二の導電材料の密度が大きくなる。このため、カソード6の抵抗は、形成される場所の傾斜角θ1,θ2に相関し、当該箇所の長さ(斜面に沿った上下方向の間隔)に比例する。下段の側面部22に設けられた下段カソード部分6cは、傾斜角θ2のような急峻な斜面に形成されるため、膜質が粗となることで、高抵抗となり、電流制限用の抵抗とすることができる。また、上段の側面部21の高さh1と下段の側面部22の高さh2は、下段カソード部分6cの抵抗を大きくする観点からh1<h2とすることが好ましく、h1はh2の1/2以下が好ましく、更に具体的には20〜50nmとすることが好ましい。なお、段差形成部材2の側面20を一律の傾斜角とし、カソード6をMoの膜(厚さは5nm、10nm、20nmの3種類)で形成した際の傾斜角(斜面角)とカソード6の抵抗との関係を図2に示す。
【0031】
本発明に係る電子放出素子においては、段差形成部材2の側面20の上段の側面部21の傾斜角θ1は下段の側面部22の傾斜角θ2より小さくなっている。このため、上段に付着する第二の導電材料の密度は高くなり、側面20全体を傾斜角θ2の斜面とした場合よりも上段カソード部6bを安定して形成することができ、電子放出素子の良好な電子放出特性を得る観点から有利である。また、カソード6の先端に設けられた突起部6aは、凹部7の下面と上段の側面部21とに跨って形成されていることが好ましい。
【0032】
基板1としては、例えば石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラス又はSi基板等にスパッタ法等によりSiO2を積層した積層体、アルミナ等のセラミックスの絶縁性を有する板が用いられる。
【0033】
第一の絶縁材料層2a及び第二の絶縁材料層2bの構成材料としては、SiO2等の酸化物、Si34等の窒化物が挙げられ、高電界に耐えられる耐圧の高い材料が選択される。なお、第二の絶縁材料層2bは、第一の絶縁材料層2aに対し、選択的にエッチングできる材料を適宜選択する。例えば、第一の絶縁材料層2aをSi34等の絶縁性材料で構成した場合、第二の絶縁材料層2bはSiO2等の絶縁性材料で構成する。
【0034】
第一の導電材料層3の構成材料としては、例えばBe,Mg,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Al,Cu,Ni,Cr,Au,Pt,Pd等の金属又は合金材料、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC等の炭化物が挙げられる。また、HfB2,ZrB2,CeB6,YB4,GbB4等の硼化物、TaN,TiN,ZrN,HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導体も挙げられる。更に、有機高分子材料、アモルファスカーボン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドを分散した炭素及び炭素化合物等も挙げられる。第二の導電材料層4の構成材料としては、例えばMo,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pd等の金属や、カーボン、HfC等の仕事関数の低い物質が挙げられる。本例におけるゲート5は、第一の導電材料層3上に第二の導電材料層4が重ねられて、両者が一体となって構成されているが、第一の導電性材料層3の構成材料によっては、第一の導電材料層単独で構成することもできる。但し、ゲート5は、良好な電子放出効率が得やすいことから、本例のように、第一の導電材料層3上に第二の導電材料層4が重ねられた構成とすることが好ましい。
【0035】
図3で図1の電子放出素子の駆動について説明する。図3において、31はアノード、32は電子放出素子の駆動電源、33はアノード31に電圧を印加する高圧電源である。また、図1と同じ符号は同じ構成要素を示す。電子放出素子の駆動に際しては、駆動電源32によりゲート5とカソード6との間に駆動電圧Vfを与える。ゲート5には高電位が、カソード6には低電位が与えられる。また、高圧電源33により、アノード31にアノード電圧Vaが印加され、カソード6の突起部6aから放出された電子をアノード31に向けて加速させる。このように、アノード31をゲート5を介してカソード6の突起部6aと対向するように配置することで、カソード6からより効率よく電子放出させることが可能となる。Ifが素子電流であり、Ieが放出電流である。アノード31に、電子の照射によって発光する発光部材を積層しておけば、これを発光させて画像を表示することが可能となる。
【0036】
次に、本発明に係る画像表示装置について図4で説明する。
【0037】
本発明に係る画像表示装置は、図1で説明したような本発明に係る電子放出素子を用いたものである。図4において、41はリアプレート、42はフェースプレート、43は枠体である。リアプレート41の表面には、図1で説明したような複数の電子放出素子44が設けられた基板1が保持されている。図4には示されていないが、各電子放出素子44は、図1に示されるように、段差形成部材2、ゲート5、カソード6等を備えている。また、基板1の表面には、この複数の電子放出素子44のカソード6(図1参照)を互いに接続するX方向配線45と、ゲート5を互いに接続するY方向配線46も設けられている。カソード6は、図1で説明した下段カソード部6cを介してX方向配線45に接続されているものである。フェースプレート42は、透光性のガラス基板47と、ガラス基板47上に設けられた複数の発光部材(蛍光体)48と、発光部材48上に積層されたアノード49とを有している。発光部材48は、電子放出素子44から放出された電子の照射を受けて発光するものである。上記リアプレレート41とフェースプレート42は、電子放出素子44等の設置面と、アノード49等の設置面とを向き合わせ、両者間の周囲に枠体43を挟み込んで、間隔を開けて対向配置されている。そして、リアプレレート41、フェースプレート42及び枠体43で囲まれて封止された空間内は真空に排気されて、画像表示装置を構成している。また、画像表示装置の大型化に伴って、耐大気圧支持構造であるスペーサ40を、リアプレート41とフェースプレート42との間に介在させることもできる。画像表示装置を駆動させる際には、X方向配線45に走査信号、Y方向配線46に情報信号を入力する。これと共に、アノード49に高電圧を印加して、電子放出素子44から放出された電子をアノード49に向けて加速させ、発光部材48に加速された電子を照射する。これによって所望の発光部材48を選択的に発光させることで画像を表示することができる。
【0038】
次に、図5に基づいて、本発明に係る電子放出素子の製造方法の一例を説明する。
【0039】
予め、その表面を十分に洗浄した基板1上に第一の絶縁材料層2aを複数回に分けて、スパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法等で成膜して形成する[図5(a)]。この場合、後のエッチング工程において、互いに異なるエッチングレートになるような成膜条件で成膜する。具体的には、第一の絶縁材料層2aの下部が上部に比してエッチングレートが小さくなるように、成膜条件を変えて積層する。図中51が1回目に堆積させた第一層、52が2回目に堆積させた第二層である。
【0040】
続いて、第一の絶縁材料層2aに続き、第二の絶縁材料層2bをスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法等で形成する[図5(b)]。この成膜は1回で行う。
【0041】
第二の絶縁材料層2bの形成に続き、第一の導電材料層3を堆積する。この第一の導電材料層3は、真空蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術により形成することができる[図5(c)]。
【0042】
次に、所望の部分にフォトレジストのスピンコーティング等による塗布、マスクパターン露光及び現像によるフォトリソグラフィーでレジストパターン53を形成する[図5(d)]。
【0043】
次に、エッチングにより、第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2b及び第一の導電材料層3の積層体の一部を取り除き、上面と側面20を有し、上面に第一の導電材料層3が設けられた絶縁性の段差形成部材2を形成する。本工程は、具体的には、ウェットエッチング又はドライエッチングで、積層された第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2b、第一の導電材料層3の一部を取り除く工程である。このエッチング工程においては、平滑なエッチング面が望ましく、それぞれの材料に応じて、エッチング方法を選択すれば良い。例えば第一の絶縁材料層2aにSi34、第二の絶縁材料層2bにSiO2、第一の導電材料層3にTaNを選択し、第一の絶縁材料層2aを異なる成膜条件で2回以上に分けて堆積した場合、CF4、Ar及びSF6ガスでドライエッチングすると良い。この場合、第一の絶縁材料層2a内の膜質の違いにより、基板1の表面に対する傾斜が異なる上段の側面部21と下段の側面部22を第一の絶縁材料層2aの側面に形成することができる[図5(e)]。
【0044】
続いて、ウェットエッチング等により、段差形成部材2の側面20の第一の導電材料層3直下に凹部7を形成する。エッチング方法としては、例えば、第一の導電材料層3にTaN、第一の絶縁材料層2aにSi34、第二の絶縁材料層2bにSiO2を選択した場合、エッチャントにバッファードフッ酸を用いてエッチングをする。これにより、第二の絶縁材料層2bが選択的にエッチングされ、段差形成部材2の側面20側から第二の絶縁材料層2bのみが後退し、側面20に開口部を有する凹部7が形成される[図5(f)]。
【0045】
凹部7を形成した後、第二の導電材料を少なくとも段差形成部材2の側面20に付着させ、第二の導電材料層4によりカソード6を形成する。第二の導電材料の供給は、基板1の表面に対して垂直方向から行う。これにより、前述した突起部6a、上段カソード部分6b下段カソード部分6cを有するカソード6を付設することができる[図5(g)]。第二の導電材料層4の成膜は、真空蒸着法、スパッタ法等で行うことができる。この時、段差形成部材2の上面の第一の導電層3上にも第二の導電材料層4が積層される。この第一の導電層3上の第二の導電材料層4は、予め第一の導電層3に剥離層を形成しておくことで剥離除去しても良い。
【0046】
次に、図6に基づいて、本発明に係る電子放出素子の製造方法の他の例を説明する。
【0047】
予め、その表面を十分に洗浄した基板1上に第一の絶縁材料層2aをスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法等で1回の成膜で形成する[図6(a)]。
【0048】
続いて、第一の絶縁材料層2aに続き、第二の絶縁材料層2bをスパッタ法等の一般的な真空成膜法、CVD法、真空蒸着法等で形成する[図6(b)]。
【0049】
更に、第二の絶縁材料層2bの形成に続き、第一の導電材料層3を堆積する。この第一の導電材料層3は、真空蒸着法、スパッタ法等の一般的な真空成膜技術により形成することができる[図6(c)]。
【0050】
次に、所望の部分にフォトレジストのスピンコーティング等による塗布、マスクパターン露光及び現像によるフォトリソグラフィーでレジストパターン53を形成する[図6(d)]。
【0051】
次に、エッチングにより、第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2b及び第一の導電材料層3の積層体の一部を取り除き、上面と側面20を有し、上面に第一の導電材料層3が設けられた絶縁性の段差形成部材2を形成する。このエッチングは、複数の条件で行うことで、段差形成部材2の側面20における上段の側面部21の傾斜角より下段の側面部22の傾斜角が大きくなるように行う。例えば、第一の絶縁材料層2aの途中までは、エッチングガスにCF4、Ar及びSF6ガスを用いてドライエッチングし、残りをCF4、Arガスを用いてドライエッチングすると良い。この場合、ドライエッチング時のガス流量比の違いから、基板1の表面に対する傾斜が異なる上段の側面部21と下段の側面部22を第一の絶縁材料層2aの側面に形成することができる[図6(e)]。
【0052】
続いて、図5(f)での説明と同様にして凹部7を形成し、更に図5(g)での説明と同様にしてカソード6を形成する[図6(f),(g)]。
【0053】
本発明に係る画像表示装置の製造方法を図4及び図1を参照して説明する。上記のようにして製造した電子放出素子のカソード6を、当該カソード6の下段の側面部22の部分である下段カソード部分6cを介して配線に接続したリアプレート41作成する。また、アノード49及び電子の照射によって発光する発光部材48を有するフェースプレート42を作成する。そして、この両者を、枠体43を挟んで間隔を開けて対向配置し、内部を密封された真空空間とすることで製造することができる。
【実施例】
【0054】
実施例1〜3
図1に示される構成の電子放出素子を作成し、その電子放出素子を図3に示すように電源に接続すると共にアノード31と対向させて駆動した。電子放出素子の製造は、図5に示される手順で行った。
【0055】
(工程1)
基板1に青板ガラスを用い、十分洗浄を行った後、CVD法により、第一の絶縁材料層2aとして厚さ150nmのSi34膜を、SiH4の供給量を変えて2回に分けて異堆積した[図5(a)]。いずれにおいても、第一の絶縁材料層2aの下層である第一層51の厚さは100nm、上層である第二層52の厚さは50nmとした。第一層51形成時と第二層52形成時のSiH4の供給量を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(工程2)
次に、スパッタ法により第二の絶縁材料層2bとして、厚さ25nmのSiO2、第一の導電材料層3として、40nmのTaNをこの順で堆積した[図5(b),(c)]。
【0058】
(工程3)
次に、フォトリソグラフィー工程でポジ型フォトレジストをスピンコーティングし、フォトマスクパターンを用いて露光、現像し、レジストパターン53を形成した[図3(d)]。
【0059】
(工程4)
その後、パターニングしたレジストパターン53をマスクとして、第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2b及び第一の導電材料層3を、CF4、Ar、SF6の各ガスを用いてドライエッチングした[図5(e)]。エッチングガスの流量比は、実施例1及び2、参考例1いずれにおいても、CF4/Ar/SF6=800sccm/800sccm/100sccmとした。その結果、第一の絶縁材料層2a内の膜質の違いから、第一の絶縁材料層2aの側面である段差形成部材2の側面20に2種類の角度の異なる傾斜が形成された。断面形状を走査型電子顕微鏡にて確認して測定した上段の側面部21の傾斜角θ1と下段の側面部22の傾斜角θ2を表2に示す。
【0060】
(工程5)
バッファードフッ酸をエッチング液として、7分間エッチングを施し、第二の絶縁材料層2bを選択的にエッチングした。これにより、段差形成部材2の側面20から100nm程度第二の絶縁材料層2bを後退させ、凹部7を形成した[図5(f)]。
【0061】
(工程6)
次に、基板1の表面に対して垂直方向からの蒸着によりMoを選択的に10nm付着させ、幅200μmでカソード6を形成した。これと共に、段差形成部材2の上面の第一の導電材料層3上にもMoを付着させ、第一の導電材料層3であるTaN層と第二の導電材料層4であるMoが一体となったゲート5を形成した。
【0062】
以上のようにして作製された電子放出素子について、下段カソード部分6cのMo密度及び抵抗値と、上段カソード部分6bのMo密度及び抵抗値と、電子の放出効率比と、耐放電性能と、抵抗比を測定した。Mo密度(膜密度)の測定は、一般にはXRR(X線反射率法)が用いられるが、実際の電子放出素子では測定が困難な場合がある。そのような場合には、膜密度の測定手法として、例えば、以下の方法を採用することができる。即ち、TEM(透過電子顕微鏡)とEELS(電子エネルギー損失分光)を組み合わせた高分解能電子エネルギー損失分光電子顕微鏡で、元素の定量分析を行い、膜密度が既知の膜と比較することで、検量線を作成して、密度を算出することができる。本実施例においては、上記高分解能電子エネルギー損失分光電子顕微鏡を用いた測定手法でMo密度を測定した。抵抗比は、(下段カソード部分の抵抗値)/(上段カソード部分の抵抗値)で求めた。これらを上段の側面部21の傾斜角θ1と下段の側面部22の傾斜角θ2と共に表2に示す。なお、放出効率比は後述する比較例1の電子放出効率を1とした場合の比率である。耐放電性能の評価方法は、電子放出素子のカソードとゲート間に印加する駆動電圧Vfに意図的に放電を誘発するパルス(以下、放電誘発パルスと記載する)を重々させて駆動し、当該電子放出素子が破壊されるかどうかで評価した。放電誘発パルスとしては、パルス幅が100nsec、波高値が駆動電圧の0.5倍、矩形パルスとした。駆動電圧に放電誘発パルスを重々させ、60Hzで10時間駆動した時に、電子放出素子が破壊されなかった場合を○、破壊された場合を×とした。抵抗比は、(抵抗比)=(下段カソード部分の抵抗値)/(上段カソード部分の抵抗値)で求めた。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例4〜6
工程1における第一層51形成時と第二層52形成時のSiH4の供給量を表3に示す通りとした以外は実施例1〜3と同様にして電子放出素子を作製し、同様の項目についての測定を行った。結果を表4に示す。なお、放出効率比は後述する比較例1の電子放出効率を1とした場合の比率である。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
実施例7〜11
工程1における第一層51形成時と第二層52形成時のSiH4の供給量を2500sccmと2875sccmで一定とした。加えて、第一の絶縁材料層2aの下層である第一層51の厚さ(下段の側面部22の高さh2)は100nmで一定とし、上層である第二層52の厚さ(上段の側面部21の高さh1)を変化させた。これら以外は実施例1〜3と同様にして電子放出素子を作製し、抵抗比以外の同様の項目についての測定を行った。第一層51の厚さと第二層52の厚さ表5に示す。また、結果を表6に示す。なお、放出効率比は後述する比較例1の電子放出効率を1とした場合の比率である。
【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
比較例1〜4
工程1における第一の絶縁材料層の形成時のSiH4の供給量を表7に示す通りとし、連続した1回の成膜で行った以外は実施例1〜3と同様にして電子放出素子を作製した。工程6のドライエッチングは、一定の条件で行われており、しかも第一の絶縁材料層一定の条件での1回の成膜で形成されている。このため、図7に示されるように、得られた電子放出素子の段差形成部材2の側面20は全体がほぼ等しい傾斜の斜面で、本発明のような上段と下段は生じなかった。比較例1〜4における傾斜角θはこの側面20の基板1の表面に対する角度である。また、側面20に形成されたカソード6におけるMo密度と抵抗値は、全体がほぼ均一であった。実施例1と同様の項目についての測定を行った結果を表7に示す。なお、放出効率比は比較例1の電子放出効率を1とした場合の比率である。
【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
実施例12
図1に示される構成の電子放出素子を作成した。電子放出素子の製造は、図6に示される手順で行った。以下に実施例1〜3と異なる工程を主に説明する。
【0074】
(工程1)
基板1に青板ガラスを用い、十分洗浄を行った後、CVD法により、第一の絶縁材料層2aとして厚さ150nmのSi34膜を条件を変えることなく1回の成膜で形成した。[図6(a)]。
【0075】
(工程2)〜(工程3)
実施例1〜3と同じ作業を行った。
【0076】
(工程4)
その後、パターニングしたレジストパターン53をマスクとして、第一の絶縁材料層2a、第二の絶縁材料層2b及び第一の導電材料層3を、CF4、Ar、SF6の各ガスを用いてドライエッチングした[図6(e)]。その際に、ドライエッチングの条件を第二の絶縁材料層2aの50nmまでは、CF4、Ar、SF6ガスを用いて、ガス流量比をCF4/Ar/SF6=700sccm/800sccm/100sccmの条件とした。一方、残りのエッチング時は、CF4、Arガスを用いて、ガス流量比をCF4/Ar=800sccm/800sccmとしてエッチングした。その結果、エッチング条件の違いガス種の違い)から、第一の絶縁材料層2aの側面である段差形成部材2の側面20に2種類の角度の異なる傾斜が形成された。断面形状を走査型電子顕微鏡にて確認して測定した上段の側面部21の傾斜角θ1は50度、下段の側面部22の傾斜角θ2は90度であった。また、上段の側面部21の高さh1は50nm、下段の側面部22の高さh2は100nmであった。
【0077】
(工程5)〜(工程6)
実施例1〜3と同じ作業を行った。
【0078】
以上により、図6に示される手順によっても上段の側面部21と下段の側面部22を有する段差形成部材2の側面20にカソード6を設けた電子放出素子を製造できることが確認された。
【0079】
実施例13
実施例2の手順で作製された電子放出素子を用いて、図4に示される画像表示装置を作製した。
【0080】
まず、X方向配線45の幅を320μm、Y方向配線46の幅を25μm、絵素の大きさを210μm×630μmとして、基板1上に320×240の電子放出素子44をマトリクス状に配置した。
【0081】
次に、リアプレート46に設けられた基板1の2mm上方にフェースプレート42を枠体43を介して真空中で封着し、気密容器を形成した。リアプレート46とフェースプレート42との間には、X方向長さ64mm、Y方向長さ200μmの板状スペーサー40を配置し、大気圧に耐えられる構造とした。使用したスペーサー40の本数は5本である。リアプレート46、フェースプレート42及び枠体43で囲まれた空間内には、この空間の高真空を保つためのゲッター(不図示)を配置した。リアプレート46と枠体43及び枠体43とフェースプレート42の接合にはインジウムを用いた。
【0082】
次に、X方向配線45に情報信号を印加し、Y方向配線46に走査信号を印加しながら電子放出素子44を駆動した。情報信号として+6Vのパルス電圧を用い、走査信号として−10Vのパルス電圧を用いた。アノード49に6kVの電圧を印加して、放出電子を発光部材48に衝突させ、励起、発光させて画像を表示したところ、輝度ばらつきの少ない明るい画像を表示することができた。
【符号の説明】
【0083】
1:基板、2段差形成部材、2a:第一の絶縁材料層、2b:第二の絶縁材料層、3:第一の導電材料層、4:第二の導電材料層、5:ゲート、6:カソード、6a:突起部、6b:上段カソード部分、6c:下段カソード部分、7:凹部、20:側面、21:上段の側面部、22:下段の側面部、41:リアプレート、42:フェースプレート、44:電子放出素子、48:発光部材、49:アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された、上面と側面を有する絶縁性の段差形成部材と、該段差形成部材の前記上面に設けられたゲートと、前記段差形成部材の前記側面における前記ゲートの直下に形成された凹部と、前記段差形成部材の前記側面に設けられ、上端に前記凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードとを備えた電子放出素子において、
前記段差形成部材の前記側面は、前記凹部の下縁から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角が大きくなっており、しかも前記カソードの前記上段の部分である上段カソード部分よりも前記カソードの前記下段の部分である下段カソード部分の電気的抵抗値が大きいことを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
前記下段の傾斜角が前記上段の傾斜角より10度以上大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
前記下段カソード部分の電気的抵抗値が前記上段カソード部分の電気的抵抗値の15倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子放出素子。
【請求項4】
前記下段の傾斜角が70度から90度の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子放出素子。
【請求項5】
前記上段の高さより前記下段の高さが高いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子放出素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子放出素子の前記カソードが、前記下段カソード部分を介して配線に接続されたリアプレートと、前記ゲートを介して前記カソードの突起部に対向するアノード及び電子の照射によって発光する発光部材を有するフェースプレートとが間隔を開けて対向配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
基板上に第一の絶縁材料、第二の絶縁材料及び第一の導電材料を順次積層した積層体をエッチングして、上面と側面を有し、前記上面に前記第一の導電材料層が設けられた絶縁性の段差形成部材を形成し、更に前記第二の絶縁材料層をエッチングして、前記段差形成部材の前記側面における前記第一の導電材料層の直下に凹部を形成した後、第二の導電材料を付着させることで、前記段差形成部材の前記側面に設けられ、上端に前記凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードを形成する一方、前記第一の導電材料層単独又は前記第一の導電材料層の上に前記第二の導電材料層が積層されたゲートとする電子放出素子の製造方法において、
前記第一の絶縁材料層を複数回に分けて成膜し、前記積層体のエッチング時のエッチングレートを、前記第一の絶縁材料層の上部に比して下部を小さくしておくことにより、前記段差形成部材の前記側面における前記第一の絶縁材料層の上端から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角を大きくし、しかも前記第二の導電材料を前記基板の表面に対する垂直方向から供給して付着させることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項8】
基板上に第一の絶縁材料、第二の絶縁材料及び第一の導電材料を順次積層した積層体をエッチングして、上面と側面を有し、前記上面に前記第一の導電材料層が設けられた絶縁性の段差形成部材を形成し、更に前記第二の絶縁材料層をエッチングして、前記段差形成部材の前記側面における前記第一の導電材料層の直下に凹部を形成した後、第二の導電材料を付着させることで、前記段差形成部材の前記側面に設けられ、上端に前記凹部の下縁から上縁に向かって突起した突起部を有するカソードを形成する一方、前記第一の導電材料層単独又は前記第一の導電材料層の上に前記第二の導電材料層が積層されたゲートとする電子放出素子の製造方法において、
前記積層体のエッチングを複数の条件で行うことで、前記段差形成部材の前記側面における第一の絶縁材料層の上端から高さ方向中間部までの上段の傾斜角より、前記高さ方向中間部から下端までの下段の傾斜角を大きくし、しかも前記第二の導電材料を前記基板の表面に対する垂直方向から供給して付着させることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項9】
前記下段の傾斜角を前記上段の傾斜角より10度以上大きくすることを特徴とする請求項7又は8に記載の電子放出素子の製造方法。
【請求項10】
前記下段の傾斜角を70度から90度の範囲内とすることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の電子放出素子。
【請求項11】
前記上段の高さより前記下段の高さを高くすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の電子放出素子。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載の電子放出素子の製造方法で製造した電子放出素子の前記カソードを、当該カソードの前記下段の部分である下段カソード部分を介して配線に接続したリアプレートと、前記ゲートを介して前記カソードの突起部に対向するアノード及び電子の照射によって発光する発光部材を有するフェースプレートとを間隔を開けて対向配置することを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−3939(P2012−3939A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137888(P2010−137888)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】