説明

電子機器及びその制御方法

【課題】本発明は、バッテリーパックの放電時の温度特性を考慮してバッテリーパックの残容量を精度よく算出及び管理することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器301において、動作モードの動作時間と消費電力データテーブルから実消費電力量を算出し、電子機器の動作温度値と放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する。そして、実消費電力量と放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出し、バッテリーパック128の残容量値から補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する。算出した現在の残容量値を不揮発性メモリ133に書き込んで該残容量値を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びその制御方法に関し、特に、メモリ及び二次電池を備えたバッテリーパックを電源とする電子機器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的な使用量に各種使用量の補正係数を乗算した値をバッテリーの初期容量から減算することにより基準残容量を求め、該基準残容量に各種の残容量補正係数を乗算して実際の残容量を算出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−6901号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術では、電気的使用量を検出するために電流検出手段を有することが必須条件となっている。そのため、ラッシュ電流が頻繁に発生するような電子機器の場合、電流検出手段を有していても正確な電流の検出ができず、残容量精度の誤差要因となっている。
【0004】
また、電流を検出するための素子を電源ラインに設ける必要があり、電圧の低下を招いて電力の効率化を妨げる要因ともなっている。
【0005】
さらに、近年では、電子機器に装着可能な各種バッテリーパックがそれぞれ異なる充電特性、放電特性をもっている場合、各種バッテリーパックに対して適正な残容量の補正を行う必要が生じてきている。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、バッテリーパックの充電時と放電時の温度特性を考慮してバッテリーパックの残容量を精度よく算出及び管理することができる電子機器及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、満充電容量に対する充電進度を表す残容量値を記憶するメモリ、温度検出素子、及び二次電池を備えるバッテリーパックが装着され、前記温度検出素子により動作温度値を検出する温度検出手段を備える電子機器であって、前記電子機器の動作モード毎の消費電力値で構成される消費電力データテーブルと、充電時温度毎の充電容量比率を表す充電温度特性データテーブルと、放電時温度毎の放電効率を表す放電温度負荷特性データテーブルと、前記動作モードの動作時間を計測する動作時間計測手段と、前記計測した動作時間及び前記消費電力データテーブルから実消費電力量を算出する実消費電力量算出手段と、前記検出した動作温度値及び前記放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する放電温度負荷補正係数算出手段と、前記実消費電力量及び前記放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出する補正消費電力量算出手段と、前記メモリより読み出した残容量値から前記補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する残容量値算出手段と、前記算出した現在の残容量値を前記メモリに書き込む書込手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器の制御方法は、満充電容量に対する充電進度を表す残容量値を記憶するメモリ、温度検出素子、及び二次電池を備えるバッテリーパックが装着され、前記温度検出素子により動作温度値を検出する温度検出手段を備える電子機器の制御方法であって、前記動作モードの動作時間を計測する動作時間計測工程と、前記計測した動作時間及び前記電子機器の動作モード毎の消費電力値で構成される消費電力データテーブルから実消費電力量を算出する実消費電力量算出工程と、前記検出した動作温度値及び放電時温度毎の放電効率を表す放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する放電温度負荷補正係数算出工程と、前記実消費電力量及び前記放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出する補正消費電力量算出工程と、前記メモリより読み出した残容量値から前記補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する残容量値算出工程と、前記算出した現在の残容量値を前記メモリに書き込む書込工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリーパックの放電時の温度特性を考慮してバッテリーパックの残容量を精度よく算出及び管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器と電子機器に装着可能なバッテリーパックの回路構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、電子機器301は、繰り返し充電が可能なリチウムイオン二次電池等を備えるバッテリーパック128を電源とするデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等から成る。電子機器301は、バッテリーパック128が着脱可能に構成されている。
【0013】
電子機器301は、+端子302、D(通信)端子303、T(温度)端子304、−端子305、レギュレータ(REG)306、抵抗器307,311,312、制御マイコン308、電子負荷309、トランジスタ310を備える。
【0014】
レギュレータ(REG)306は、バッテリーパック128の出力電圧を制御して制御マイコン308に安定した電圧を供給する。抵抗器307はプルアップ抵抗である。抵抗器311,312は、バッテリーパック128の出力電圧を検出するための分圧抵抗である。
【0015】
制御マイコン308は、CPU(不図示)、RAM、及びROM等で構成される。電子負荷309は、動作モード毎に変化する電子機器301の負荷を表している。動作モードは、通常、ユーザにより設定され、電子機器301がデジタルカメラである場合、撮影モード(RECモード)や再生モード(PLAYモード)等となる。
【0016】
トランジスタ310は、制御マイコン308がバッテリーパック128の出力電圧を検出する際にONするスイッチである。なお、図示では、トランジスタ310を使用しているが、より精度の高い検出が必要な場合にはFETスイッチを使用してもよい。
【0017】
バッテリーパック128は、+端子129、D(通信)端子130、T(温度)端子131、−端子132、不揮発性メモリ133、サーミスタ134、電池保護回路135、充電保護FET136、放電保護FET137を備える。また、バッテリーパック128は、二次電池138を備える。
【0018】
サーミスタ134は、温度変化を抵抗値に変換する温度検出素子である。電池保護回路135は、充電時及び放電時において、電圧/電流を監視して過充電や過放電にならないように二次電池138を保護する。充電保護FET136は、充電時に異常が発生した場合、回路を遮断するスイッチであり、電池保護回路135により制御される。放電保護FET137は、放電時の異常が発生した場合、回路を遮断するスイッチであり、電池保護回路135により制御される。二次電池138はリチウムイオン二次電池等から成る。
【0019】
電子機器301にバッテリーパック128が装着されると、+端子302と−端子305との間に電圧が供給され、電子機器301に電力が供給される。また、電子機器301側のD端子303、T端子304と、バッテリーパック128側のD端子130、T端子131とが各々接触して電気的に接続される。
【0020】
制御マイコン308は、T端子131,304を介してバッテリーパック128内のサーミスタ134によりバッテリーパック128の内部温度を検出することができる。
【0021】
また、制御マイコン308は、動作モード毎に変化する電子負荷309を制御すると共に、動作を行った時間を計測し、計測した動作時間と制御マイコン308内のROMに格納されている動作モード毎の消費電力値により実消費電力量を算出する。
【0022】
また、制御マイコン308は、制御マイコン308内のROMに格納されている充電温度特性データテーブルとバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に格納されている充電温度値により充電温度補正係数を算出する。また、制御マイコン308は、制御マイコン308内のROMに格納されている放電温度負荷特性データテーブルと電子機器動作時の放電温度により放電温度負荷補正係数を算出する。
【0023】
さらに、制御マイコン308は、実消費電力量に、充電温度補正係数と放電温度負荷補正係数とを乗算した値を乗算することにより補正消費電力量を算出する。そして、バッテリーパック128から読み出した残容量値から補正消費電力量を減算することにより、現在の残容量値を算出する。その後、制御マイコン308は、D端子303を介してバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に格納されている残容量値を現在の残容量値に書き換える。残容量値は、バッテリーパック128の満充電容量に対する充電進度を表しており、電子機器301による放電時及び充電装置101による充電時に書き換えられる。
【0024】
図2は、図1のバッテリーパック128に充電可能な充電装置の回路構成を示すブロック図である。なお、図1に示す構成要素と同じ構成要素については同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0025】
図2において、充電装置101は、バッテリーパック128に充電を行う充電装置である。充電装置101は、AC入力部102、フィルタ回路103、ブリッジダイオード104、一次電解コンデンサ105、トランス106、スイッチングコントロール部107、フォトカプラ108、整流ダイオード109、整流コンデンサ110を備える。また、レギュレータ111、オペアンプ112,115、抵抗器113,114,116,117、充電制御マイコン118、充電スイッチ回路119、電流検知抵抗120、抵抗器121,122,123を備える。さらに、+端子124、D(通信)端子125、T(温度)端子126、−端子127、表示部139を備える。
【0026】
AC入力部102にACが入力されると、フィルタ回路103、ブリッジダイオード104、一次電解コンデンサ105を介してトランス106に電力が供給される。トランス106の二次側出力電圧は、整流ダイオード109、整流コンデンサ110で整流される。そして、抵抗器113,114、オペアンプ112、フォトカプラ108を介してバッテリーパック128の充電電圧に設定される。
【0027】
充電装置101にバッテリーパック128が装着されると、充電装置側の+端子124、D端子125、T端子126、−端子127と、バッテリーパック128側の+端子129、D端子130、T端子131とが各々接触して電気的に接続される。そして、抵抗器116,117により充電電流が設定され、電流検知抵抗120、オペアンプ115、フォトカプラ108を介して定電圧/定電流充電が行われる。
【0028】
スイッチングコントロール部107は、フォトカプラ108からの信号に基づいてトランス106の二次側出力電圧を安定化させる。充電スイッチ回路119は、充電出力をON/OFFするスイッチ回路である。表示部139は、複数のLEDによって構成され、それらの点灯又は点滅によりバッテリーパック128の充電状態を表す。
【0029】
レギュレータ111は、充電制御マイコン118に安定した電圧を供給すると共に、オペアンプ112,115に基準電圧を供給する。バッテリーパック128への充電は、充電制御マイコン118によって制御される。充電制御マイコン118は、電流検知抵抗120の両端に発生する電位差により充電電流を検出すると共に、抵抗器121,122により充電電圧を検出する。さらに、充電電圧の上昇及び充電電流の低下を検出して充電完了したか否かを判断する。
【0030】
充電装置101は、バッテリーパック128への充電を行うと共に、充電制御マイコン118によりD端子125,130を介してバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に通信可能である。
【0031】
充電制御マイコン118は、バッテリーパック128の残容量値をバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133から読み出すと共に、検出した充電電流と充電電圧から現在の残容量値を決定し、不揮発性メモリ133に送信して書き換えを行う。
【0032】
また、充電制御マイコン118は、T端子126,131を介してバッテリーパック128内のサーミスタ134によりバッテリーパック128の内部温度を検出することができる。そして、検出した内部温度をバッテリーパック128の充電時の充電温度値として不揮発性メモリ133に送信して格納すると共に、温度異常停止等の充電制御を行う。
【0033】
次に、バッテリーパック128の残容量値と充電特性の関係について図3を参照して説明する。
【0034】
図3は、バッテリーパック128の充電特性の一例を示す図である。
【0035】
図3において、501はバッテリーパック128の充電時温度が25℃時の充電電圧特性であり、502はその充電電流特性である。I,Ifは充電電流の設定値、Z,Y,Xは充電電圧の設定値である。
【0036】
充電初期の状態では、充電電流特性502に基づいて、充電装置により制限された電流値が充電電流として充電される。充電電圧がX[V]未満のときは、充電進度が0〜20%であることから充電状態が減電状態となり、残容量値が減電状態に対応する値に書き換えられる。
【0037】
充電電圧がX[V]以上Y[V]未満のときは、充電進度が21〜40%で充電状態が状態1となり、残容量値が状態1に対応する値に書き換えられる。充電電圧がY[V]以上Z[V]未満のときは、充電進度が41〜60%で充電状態が状態2となり、残容量が状態2に対応する値に書き換えられる。
【0038】
充電電圧がZ[V]以上且つ充電電流が設定値I[mA]以上のときは、充電進度が61〜80%で充電状態が状態3となり、残容量が状態3に対応する値に書き換えられる。充電電圧がZ[V]以上且つ充電電流が設定値I[mA]未満のときは、充電進度が81〜100%で充電状態が満充電状態となり、残容量値が満充電状態に対応する値に書き換えられる。ここで、充電が終了したか否かの判断については、充電電圧がZ[V]以上で且つ充電電流が充電終了検出電流値If[mA]まで垂下したときに充電を終了とする。
【0039】
このように、充電の進行により充電状態が変わると、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に記憶されている残容量値が書き換えられる。残容量値は、満充電容量×充電進度により表すことが可能である。なお、放電の進行により充電状態が変わる場合は、不図示の放電特性に応じて、バッテリーパックの充電状態が遷移し、その都度、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に記憶されている残容量値が書き換えられる。
【0040】
本実施形態では、充電状態を減電状態、状態1〜3、満充電状態という5段階に分けた場合について説明したが、更に充電状態を細分化することにより、より詳細な充電状態を表すことが可能になる。
【0041】
図3には、バッテリーパック128の充電時温度が25℃時の充電特性を例示したが、充電時温度によって充電特性が異なることから、より正確な充電状態を判定するために、充電時の温度毎に複数の充電特性データテーブルを用意してもよい。このとき、充電時温度に該当する充電特性データテーブルが存在しなかった場合は、当該充電時温度に近い充電特性データテーブルを使用したり、補間計算を行って対応してもよい。また、充電特性データテーブルは、制御マイコン308内のROMに記憶されているが、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に記憶されていてもよい。
【0042】
次に、充電装置101によるバッテリーパック128への充電処理の流れについて図4を参照して説明する。
【0043】
図4は、充電制御マイコン118により実行される充電処理を示すフローチャートである。
【0044】
図4において、充電制御マイコン118は、バッテリーパック128の装着を検出すると(ステップS102)、バッテリーパック128の充電を開始する(ステップS103)。
【0045】
次に、充電制御マイコン118は、バッテリーパック128と通信を行い、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に記憶されている残容量値と充電温度値を読み出す(ステップS104,S105)。
【0046】
次に、充電制御マイコン118は、充電電圧及び充電電流を検出すると共に(ステップS106,S107)、バッテリーパック128内のサーミスタ134によりバッテリーパック128の内部温度を検出する(ステップS108)。
【0047】
次に、充電制御マイコン118は、バッテリーパック128の充電特性に応じた充電特性データテーブルを当該充電制御マイコン118内のROMから読み出して参照する(ステップS109)。充電特性データテーブルは、バッテリーパックの種類毎及び/又は充電時の温度毎に作成されたテーブル情報であって、充電電流と充電電圧の状態から充電進度を判断するためのテーブル情報である。
【0048】
次に、充電制御マイコン118は、検出した充電電圧及び充電電流に基づいて、充電特性データテーブルからバッテリーパック128の現在の残容量値を決定する(ステップS110)。
【0049】
次に、充電制御マイコン118は、ステップS105で読み出した充電温度値とステップS108で検出した温度とが一致するか否かにより、不揮発性メモリ133に格納されている充電温度値の書き換えが必要かを判断する(ステップS111)。この結果、ステップS105で読み出した充電温度値とステップS108で検出した温度とが一致したときは、充電温度値の書き換え不要と判断してステップS113に移行する。一方、ステップS105で読み出した充電温度値とステップS108で検出した温度とが一致しないときは、充電温度値の書き換えが必要と判断してステップS112に移行する。
【0050】
ステップS112では、充電制御マイコン118は、ステップS108で検出した温度を新たな充電温度値としてバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に送信し、該不揮発性メモリ133に格納されている充電温度値を書き換える。
【0051】
ステップS113では、充電制御マイコン118は、ステップS104で読み出した残容量値とステップS110で決定した現在の残容量値とが一致するか否かにより、不揮発性メモリ133に格納されている残容量値の書き換えが必要かを判断する。この結果、ステップS104で読み出した残容量値とステップS110で決定した現在の残容量値とが一致したときは、残容量値の書き換えが不要と判断してステップS104へ戻る。一方、ステップS104で読み出した残容量値とステップS110で決定した現在の残容量値とが一致しないときは、残容量値の書き換えが必要と判断してステップS114に移行する。
【0052】
ステップS114では、充電制御マイコン118は、現在の残容量値をバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に送信し、不揮発性メモリ133内の残容量値を書き換える。
【0053】
次に、充電制御マイコン118は、充電電圧及び充電電流が充電終了条件に一致するかにより充電終了したか否かを判断し(ステップS115)、充電終了条件に一致していないときは、ステップS104に戻る。一方、充電終了条件に一致したときは充電処理を終了する。
【0054】
次に、電子機器301の動作時における制御処理の流れを図5及び図6(a)〜図6(c)を参照して説明する。
【0055】
図5は、電子機器301の動作時の制御処理を示すフローチャートである。図6(a)は動作モード毎の消費電力データテーブルを示す図、図6(b)は充電温度特性データテーブルの一例を示す図、図6(c)は放電温度負荷特性データテーブルの一例を示す図である。
【0056】
図5において、制御マイコン308は、バッテリーパック128の装着を検出すると(ステップS202)、バッテリーパック128と通信を行う。そして、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に記憶されている残容量値と充電温度値を読み出し(ステップS203,S204)、動作を開始する。そして、タイマーをスタートさせて動作時間の計測を開始する(ステップS205)(動作時間計測工程)。開始する動作は、ユーザにより設定された撮影モード等の動作モードに基づくものである。なお、タイマー回路は、制御マイコン308内にあっても電子機器301内にあってもよい。
【0057】
次に、制御マイコン308は、バッテリーパック128内のサーミスタ134によりバッテリーパック128の内部温度を検出した後(ステップS206)、動作が終了したか否かを判断する(ステップS207)。例えば、撮影モードが終了した場合、制御マイコン308は動作が終了したと判断して(ステップS207でYES)、タイマーをストップさせて(ステップS208)、動作時間の計測を終了する。
【0058】
次に、ステップS209では、制御マイコン308は、図6(a)に示すような消費電力データテーブルを制御マイコン308内のROMから読み出す。そして、計測した動作時間と動作モード(ここでは撮影モード:REC)の消費電力値から、実際の消費電力量(実消費電力量:P1)を算出する(実消費電力量算出工程)。消費電力データテーブルは、電子機器の動作モード毎の消費電力値で構成される。P1は下式により算出される。
【0059】
実消費電力量:P1[Wh]=消費電力値[W]×動作時間[h]
次に、ステップS210では、制御マイコン308は、充電温度値と図6(b)に示す充電温度特性データテーブル、電子機器動作時の放電時温度と図6(c)に示す放電温度負荷特性データテーブルにより、補正消費電力量(P2)を算出する。なお、電子機器動作時の放電時温度については、ステップS206で検出されたバッテリーパック128の内部温度とする。
【0060】
ここで、充電温度特性データテーブル及び放電温度負荷特性データテーブルを用いた補正消費電力量の算出方法について説明する。
【0061】
充電温度特性データテーブルは、バッテリーパックの充電時温度25℃における充電容量(残容量)を1としたときの充電時温度毎の充電容量比率を充電温度補正係数として表したものである。図6(b)において、例えば、充電温度0℃では残容量値が(1÷1.2)となり、充電温度が40℃では残容量値が(1÷0.9)となる。
【0062】
放電温度負荷特性データテーブルは、バッテリーパックの放電時温度毎の放電効率を放電温度負荷補正係数として表したものである。図6(c)において、例えば、放電時温度25℃で電子機器の消費電力が1Wのときに、放電効率は(1÷1.1)となる。同様に、放電時温度0℃で電子機器の消費電力が2Wのときに、放電効率は(1÷1.3)となる。
【0063】
本実施形態では、代表的な温度条件と負荷条件におけるデータテーブルの一例を挙げたが、より緻密な温度補正を行うために、複数の温度に対応する充電温度特性データテーブルや複数の負荷状態に対応する放電温度負荷特性データテーブルを用意してもよい。また、必要に応じて補間計算を行ってもよい。
【0064】
図5のステップS210に戻り、制御マイコン308は、当該制御マイコン308内のROMから充電温度特性データテーブルを読み出す。この充電温度特性データテーブルとステップS204で読み出した充電温度値から充電温度補正係数を算出する(充電温度補正係数算出工程)。そして、当該制御マイコン308内のROMから放電温度負荷特性データテーブルを読み出し、この放電温度負荷特性データテーブルとステップS206で検出した温度(動作温度値)により放電温度負荷補正係数を算出する(放電温度負荷補正係数算出工程)。そして、実消費電力量と充電温度補正係数及び放電温度負荷補正係数から下式により補正消費電力量(P2)が算出される(補正消費電力量算出工程)。
【0065】
補正消費電力量:P2[Wh]=P1[Wh]×(充電温度補正係数×放電温度負荷補正係数)
次に、ステップS211では、制御マイコン308は、ステップS203で読み出した残容量値から補正消費電力量(P2)を減算することにより、現在の残容量値(P3)を算出する(残容量値算出工程)。
【0066】
現在の残容量値:P3[Wh]=残容量値[Wh]−P2[Wh]
次に、制御マイコン208は、算出した現在の残容量値をバッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に送信し(ステップS212)、現在の残容量値を不揮発性メモリ133に書き込む(書込工程)。その後、バッテリーパック128の脱却検出を行い(ステップS213)、電子機器301からバッテリーパック128が外されると、本処理を終了する。
【0067】
上記実施形態によれば、電子機器301において、動作モードの動作時間と消費電力データテーブルから実消費電力量を算出し、不揮発性メモリ133から読み出した充電温度値と充電温度特性データテーブルから充電温度補正係数を算出する。また、電子機器の動作温度値と放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する。そして、実消費電力量と充電温度補正係数及び放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出し、バッテリーパック128の残容量値から補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する。算出した現在の残容量値を不揮発性メモリ133に書き込んで該残容量値を更新する。これにより、バッテリーパックの充電時及び放電時の温度特性を考慮してバッテリーパックの残容量を精度よく算出及び管理することができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、充電温度補正係数及び放電温度負荷補正係数が、25℃時の1に対して除算する方式の値について説明した。一方、充電温度補正係数及び放電温度負荷補正係数が、25℃時の1に対して乗算する方式の値の場合には下式となる。
【0069】
補正消費電力量:P2[Wh]=P1[Wh]÷(充電温度補正係数×放電温度負荷補正係数)
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の回路構成を示すブロック図である。
【0070】
本第2の実施形態に係る電子機器401は、上記第1の実施形態に係る電子機器301に表示部413を付加したものであり、図7に示す401〜412は、図1の301〜312に対応しているため、それらの説明は省略する。
【0071】
図7において、電子機器401は、LCD(Liquid Crystal Display)、CVF(Color View Finder)、LED(Light Emitting Diode)等から成る表示部413を備える。表示画面414は、表示部413に表示される画面の一例である。
【0072】
図8は、図7の電子機器動作時の制御処理を示すフローチャートである。
【0073】
図8において、ステップS302〜ステップS306は図5のステップS202〜ステップS206に対応しており、その説明を省略する。
【0074】
ステップS307では、制御マイコン408は、動作モードの消費電力値を図6(a)の消費電力データテーブルから求め、ステップS303で読み出した残容量値を消費電力値で除算することにより動作可能時間を算出する(動作可能時間算出工程)。
【0075】
次に、ステップS308では、制御マイコン408は、ステップS307で算出した動作可能時間を表示部414に表示する。ここでは、動作可能時間を表示部413に表示しているが、動作可能時間と共に又は単独で動作モード毎の実使用時間を表示してもよい。
【0076】
また、表示したい動作モードを設定するための機能を設けることにより、所望の動作モードでの動作可能時間を表示部413に表示することも可能である。また、各動作モードに応じた一般的な操作(例えば、REC状態におけるズーム操作等)による負荷の変動を定数化し、動作可能時間に乗じることにより実動作時間の推定を行って、実動作時間を表示部413に表示することも可能である。
【0077】
ステップS309〜ステップS312は図5のステップS209〜ステップS212に対応し、ステップS313,S314,S315は、図5のステップS207,S208,S213に対応しており、それらの説明は省略する。
【0078】
上記第2の実施形態によれば、現在の残容量値を動作モードの消費電力値で除算して動作可能時間を算出し、該動作可能時間を表示する。これにより、ユーザはバッテリーパックの充電状態を随時確認することが可能になり、また現在の動作可能時間を認知することが可能になる。その結果、使い勝手を向上させることができる。
【0079】
上記第2の実施形態では、動作モード中に動作可能時間を随時更新する必要があるため、動作中にも残容量値の算出を行っている。この際、動作中の残容量計算の精度を確保するため、動作中において負荷が安定(撮影確認画面、停止モード等)している状態で行う。
【0080】
また、デジタルカメラの撮影後の確認画面等、予めユーザ表示時間の設定が行われている場合、その状態の持続時間を予測して現在の残容量値の送信を行う方法も可能である。
【0081】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る電子機器は、その構成が上記第2の実施形態に係る電子機器と同じであり、上記第2の実施形態と同様の部分については、同一の符号を用いてその説明を省略する。また、上記第1の実施形態で説明した構成要素についても同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
本第3の実施形態では、充電温度特性データテーブル及び放電温度負荷特性データテーブルが制御マイコン408内のROMではなく、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133に格納されている。本来、充電温度特性データテーブル及び放電温度負荷特性データテーブルは、バッテリーパック固有の情報であり、例えば、新規にバッテリーパックが市販された場合、電子機器側よりもバッテリーパック側に格納されている方が対応面で有利である。
【0083】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器の動作時の制御処理を示すフローチャートである。
【0084】
図9において、ステップS402〜ステップS404は、図5のステップS201〜ステップS204に対応し、その説明は省略する。
【0085】
ステップS405では、制御マイコン408は、バッテリーパック128内の不揮発性メモリ133から充電温度特性データテーブルを読み出す。ステップS406では、同様に、不揮発性メモリ133から放電温度負荷特性データテーブルを読み出す。充電温度特性データテーブル及び放電温度負荷特性データテーブルは電子機器401内のRAMに一時保存される。
【0086】
ステップS412,S413では、ステップS405,S406で読み出されたデータを用いて、制御マイコン408が補正消費電力量(P2)及び現在の残容量値(P3)を算出する。
【0087】
上記第3の実施の形態によれば、上記第1、第2の実施形態の効果に加え、充電特性が異なるバッテリーパックの開発やバッテリーパック内の二次電池の充電特性が変更された場合でも電子機器側の構成を変更せずに対応でき、低コスト化、汎用化が可能となる。
【0088】
上記第1〜第3の実施形態では、バッテリーパック128の専用の充電装置を有するシステムについて説明した。しかしながら、電子機器とバッテリーパックが接続された状態でACアダプタから充電電流を供給するモードとバッテリーパックから電子機器に電力を供給するモードを有するシステムであってもよい。また、電子機器の一例としてデジタルカメラで説明を行ったが、どのような電子機器であっても本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、上記第1〜第3の実施形態では、制御マイコン308,408が動作モードを検出し、検出した動作モードに対応する消費電力値に基づいて、実消費電力量を算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器と電子機器に装着可能なバッテリーパックの回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1のバッテリーパックに充電可能な充電装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】バッテリーパックの充電特性の一例を示す図である。
【図4】充電制御マイコンにより実行される充電処理を示すフローチャートである。
【図5】電子機器の動作時の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)は動作モード毎の消費電力データテーブルを示す図、(b)は充電温度特性データテーブルの一例を示す図、(c)は放電温度負荷特性データテーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の回路構成を示すブロック図である。
【図8】図7の電子機器動作時の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る電子機器の動作時の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
101 充電装置
118 充電制御マイコン
128 バッテリーパック
133 不揮発性メモリ
134 サーミスタ(温度検出素子)
138 二次電池
139,313 表示部
301 電子機器
308 制御マイコン
309 電子負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
満充電容量に対する充電進度を表す残容量値を記憶するメモリ、温度検出素子、及び二次電池を備えるバッテリーパックが装着され、前記温度検出素子により動作温度値を検出する温度検出手段を備える電子機器であって、
前記電子機器の動作モード毎の消費電力値で構成される消費電力データテーブルと、
放電時温度毎の放電効率を表す放電温度負荷特性データテーブルと、
前記動作モードの動作時間を計測する動作時間計測手段と、
前記計測した動作時間及び前記消費電力データテーブルから実消費電力量を算出する実消費電力量算出手段と、
前記検出した動作温度値及び前記放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する放電温度負荷補正係数算出手段と、
前記実消費電力量及び前記放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出する補正消費電力量算出手段と、
前記メモリより読み出した残容量値から前記補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する残容量値算出手段と、
前記算出した現在の残容量値を前記メモリに書き込む書込手段とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記算出した現在の残容量値を前記動作モード毎の消費電力値で除算して動作可能時間を算出する動作可能時間算出手段と、
前記算出された動作可能時間を表示する表示手段とを更に備えることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記放電温度負荷特性データテーブルは、前記メモリに記憶されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記メモリには充電時の充電温度値が記憶されていると共に、前記電子機器は、充電時温度毎の充電容量比率を表す充電温度特性データテーブルと、前記メモリより読み出した充電温度値及び前記充電温度特性データテーブルから充電温度補正係数を算出する充電温度補正係数算出手段とを有し、前記補正消費電力量算出手段は前記充電温度補正係数から前記補正消費電力量を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
満充電容量に対する充電進度を表す残容量値を記憶するメモリ、温度検出素子、及び二次電池を備えるバッテリーパックが装着され、前記温度検出素子により動作温度値を検出する温度検出手段を備える電子機器の制御方法であって、
前記動作モードの動作時間を計測する動作時間計測工程と、
前記計測した動作時間及び前記電子機器の動作モード毎の消費電力値で構成される消費電力データテーブルから実消費電力量を算出する実消費電力量算出工程と、
前記検出した動作温度値及び放電時温度毎の放電効率を表す放電温度負荷特性データテーブルから放電温度負荷補正係数を算出する放電温度負荷補正係数算出工程と、
前記実消費電力量及び前記放電温度負荷補正係数から補正消費電力量を算出する補正消費電力量算出工程と、
前記メモリより読み出した残容量値から前記補正消費電力量を減算して現在の残容量値を算出する残容量値算出工程と、
前記算出した現在の残容量値を前記メモリに書き込む書込工程とを備えることを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項6】
前記算出した現在の残容量値を前記動作モード毎の消費電力値で除算して動作可能時間を算出する動作可能時間算出工程と、
前記算出された動作可能時間を表示する表示工程とを更に備えることを特徴とする請求項5記載の電子機器の制御方法。
【請求項7】
前記放電温度負荷特性データテーブルは、前記メモリに記憶されていることを特徴とする請求項5又は6記載の電子機器の制御方法。
【請求項8】
前記メモリには充電時の充電温度値が記憶されていると共に、前記電子機器の制御方法は前記メモリより読み出した充電温度値及び充電時温度毎の充電容量比率を表す充電温度特性データテーブルから充電温度補正係数を算出する充電温度補正係数算出工程を有し、前記補正消費電力量算出工程は前記充電温度補正係数から前記補正消費電力量を算出することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の電子機器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292255(P2008−292255A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137097(P2007−137097)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】