説明

電子機器用撓み振動型アクチュエータ

【課題】シム(11)とその表裏両面に取付けられた圧電撓み振動素子(12,13) から成る振動子(10)と、この振動子を保持する振動子保持部(20 ) とを備える撓み振動型アクチュエータの、小型・軽量化・音響特性の改善・励振能率の向上を図る。
【解決手段】振動子保持部(20)を保持しかつ振動子(10)の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレート(30)を備えると共に、振動子(10)の根元側端部に隣接する部分のシム(11)に所定長の高剛性部(11a,11b) が形成されるか、または、振動子(10)の根元側端部に隣接する部分のベースプレート(30)上に、所定長にわたり振動子との間隙を埋める弾性板状体(34)が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの小型電子機器に利用される撓み振動型アクチュエータに関するものであり、特に、小型・軽量で、音響特性に優れ、励振効率の高い電子機器用撓み振動型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの小型電子機器用として、小型の撓み振動型アクチュエータが開発されてきた。このアクチュエータでは、細長い板状体から成るシムの表裏両面に圧電撓み振動素子を取付けることによってバイモルフ型の振動子が形成される。この振動子の一端または長手方向の中央部分が保持部で保持され、この保持部を支える細長いケースの底板が電子機器の表示パネル前面の透明保護板を兼ねる振動板に取付けられる。振動子に励振された撓み振動が、保持部からこれを支えるケースの底板を経て、このケースの底板が取付けられた電子機器の表示パネル前面の透明保護板を兼ねる振動板に伝達される。これにより、撓み振動モード(DM)方式のスピーカが形成される(特許文献1,2)
【特許文献1】特開2005−160028号公報
【特許文献2】特開2006−116399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の撓み振動子型アクチュエータでは、振動子の断面形状など機械的特性が長手方向に沿って一様である。このため、所定の振動板に対する励振効率や振動特性を調整するには、振動子の長さを変更するしかない。長さを変更すると、一定の振動エネルギーを得るには、振動子の幅を増やす必要がある。このように、振動子の簡単な設計変更と調整によって、音響特性や、励振特性などの最適化を図ることが困難になるという問題があった。
【0004】
また、従来の撓み振動型アクチュエータは、全体が細長いケースに収納されていた。このため、ケースの寸法と重量と製造費用がかさみ、小型・軽量化・低廉化が困難という問題があった。さらに、このケースの重量がかさむと、これを小型電子機器の振動板に固定するための固定機構も大型で、重くて、高価になり、振動板への撓み振動の励振効率が低下したり、製造費用が高価になるなどの問題があった。
【0005】
従って、本発明の一つの目的は、音響特性が良好で、励振能率が高い撓み振動型アクチュエータを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、小型、軽量で、安価で、小型電子機器の表示パネル前面の保護板を兼ねる振動板への撓み振動板の励振効率の高い撓み振動型アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決する本第1の発明の撓み振動型アクチュエータは、細長板状体から成るシムおよびこのシムの表裏両面に取付けられた圧電撓み振動素子から成る振動子と、この振動子の片端または長手方向の中央部分を根元側端部として保持する振動子保持部とを備え、前記振動子に励振された撓み振動を前記振動子保持部を介して電子機器の表示パネル前面の透明保護板を兼ねる振動板に撓み振動を励振する撓み振動型アクチュエータである。そして、このアクチュエータは、振動子保持部を保持しかつこの振動子の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレートを備えると共に、この振動子の根元側端部に隣接する部分のシムに、所定長の高剛性部が形成されている。
【0008】
上記従来技術の課題を解決する本第2の発明の撓み振動型アクチュエータによれば、振動子保持部を保持しかつこの振動子の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレートを備えると共に、振動子の根元側端部に隣接する部分のベースプレート上に、所定長にわたりこの振動子との間隙を埋める弾性板状体が配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本第1,第2の発明の撓み振動型アクチュエータは、振動子保持部を保持しかつこの振動子の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレートを備える構成であるから、従来の箱体が不要になり、全体としての小型化・軽量化・製造費用の低廉化が実現される。また、このアクチュエータの軽量化に伴い、これを電子機器の表示パネル前面の透明保護板を兼ねる振動板に取付けるための取付け機構も簡易化され、この振動板への撓み振動の励振特性も改良される。
【0010】
また、本願第1の発明の撓み振動型アクチュエータは、振動子の根元側端部に隣接する部分に、所定長の高剛性部が形成されているので、振動子の長さを調整することなく、最低次の固有振動数(共振周波数)を、従来の低音域から中音域にまで高めることが可能になる。その結果、中音域の振動エネルギーが増加し、聴感上の音圧レベルが上昇する。また、中音域から高音域の振動特性も平坦化されるため、音圧レベル対周波数特性も平坦化され、音質が向上する。
【0011】
また、本願第2の発明の撓み振動型アクチュエータによれば、振動子の根元側端部に隣接する部分のベースプレート上に、所定長にわたり振動子との間隙を埋める弾性板状体が配置されている。その結果、この根元側端部に隣接する部分については、振動の振幅が抑制され、実質的に、シムに高剛性部が形成されたと同様の結果となり、振動子の長さを調整することなく、最低次の固有振動数を従来の低音域から中音域にまで高めることができる。この結果、中音域の振動エネルギーが増加し、聴感上の音圧レベルが上昇する。また、中音域から高音域の振動特性も平坦化されるため、音圧レベル対周波数特性も平坦化され、音質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一つの好適な実施の形態によれば、シムの根元側端部に隣接する部分に所定長の高剛性部が形成されるという第1の発明の特徴的な構成と、振動子の根元側端部に隣接する部分のベースプレート上に所定長にわたり振動子との間隙を埋める弾性板状体が配置されるとい第2の発明の特徴的な構成を併用することにより、励振効率の一層の向上と、音響特性の改良が行われる。
【0013】
本発明の他の好適な実施の形態によれば、ベースプレートが、離散して配置された両面接着テープなどの取付け機構によって電子機器の振動板に取付けられることにより、ベースプレートから表示パネル前面の保護板を兼ねる振動板への振動伝達特性の改良が図られる。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の第1の実施例の撓み振動型アクチュエータの構成を示す分解斜視図、図2は同じく斜視図、図3は同じく平面図(A)、そのB−B’断面図(B),側面図(C)である。この撓み振動型アクチュエータは、振動子10と、保持部20と、ベースプレート30とを備えている。
【0015】
振動子10は、細長くて薄い矩形状の金属から成るシム11と、このシム11の表裏両面に接着によって固定された圧電撓み振動素子12,13とから構成されている。この撓み振動型アクチュエータは、さらに、圧電撓み振動素子12,13に動作電力を供給するための燐青銅などの弾力性に富んだ金属板を折り曲げて形成した給電用はさみ金具14と、この給電用はさみ金具14を通して圧電撓み振動子12,13に交流の動作電力を供給する入力端子15とを備えている。
【0016】
シム11を構成する金属としては、ステンレス鋼やアルミ合金など、硬めで、内部の摩擦損失が少なく、高Qの素材を選択することが、音響特性の点でも励振効率の点でも、望ましい。圧電撓み振動素子12,13としては、チタン酸バリウムなどの圧電セラミックの薄板を、電極層で挟みながら複数枚積層した構造などが好適である。シム11の根元側端部には、所定長にわたって、L字形状の折り曲げ部分11aと、11bが形成され、撓み振動に対する高剛性部となっている。
【0017】
ベースプレート30は、細長くて薄い矩形状の金属板で構成されており、その根元側には、左右の側部から直立する係止爪31,32が形成されている。ベースプレート30の先端部から直立する折り曲げ部分には、振動抑制用の開口33が形成されている。このような折り曲げの便宜も考慮して、ベースプレート30は、好適には、真鍮などの金属で構成される。振動子保持部20は、樹脂を素材とする柱状体から成り、図3(B)の断面図に示しように、シム11の根元側端部がこの柱状体の内部に形成された矩形断面の細いスリットの内部に圧入されることにより、振動子10が振動子保持部20に片持ち梁(カンチレバー)の状態で保持されている。
【0018】
振動子保持部20の上面と底面に形成された挿入溝に沿って、バネ性の金属で形成された給電用はさみ金具14が挿入され、その先端部分がこの振動子10の表面と裏面に形成された圧電撓み振動素子12,13の表面に形成された電極に圧接される。これにより、給電用はさみ金具14と、圧電撓み振動素子12,13との間に、接触抵抗の小さな電気的接続が完成される。
【0019】
ベースプレート30の根元側端部に隣接する箇所には、弾性板状体34が接着固定されている。このベースプレート30の先端側端部に隣接する箇所には、板状弾性体35が接着固定されている。振動子10を片持ち梁の状態で保持する振動子保持部20が、ベースプレート30の根元側端部の左右から直立する係止爪31と32との間に挿入された後、係止爪31,32の先端部分を内側に折り曲げられる。これによって、振動子保持部20が、係止爪31,32によるカシメによって、ベースプレート30の根元側端部の上面に固定される。
【0020】
この振動子保持部20をベースプレート30に固定する際、振動子10のシム11の先端部が、ベースプレート30の先端から直立する折り曲げ部分に形成された振動抑制用の開口33内に挿入される。図3(B)の断面図や、同じく(C)の側面図を参照すると、ベースプレート30の根元側端部に配置される弾性板状体34は、このベースプレート30と、その上方の振動子10との間に形成される間隙を完全に塞ぐように、ベースプレート30の上面と、振動子10の底面に接着固定されている。この弾性板状体34は、ポリウレタン、発泡樹脂、軟質ゴムなどの弾性体を素材としている。これに対して、ベースプレート30の先端側端部に配置される板状弾性体35は、ベースプレート30と、その上方の振動子10との間に、小さな間隙を形成しながら、ベースプレート30の上面に接着固定されている。この板状弾性体35の素材としては、弾性板状体34よりも柔らかめものが選択される。
【0021】
このように構成された撓み振動型アクチュエータは、そのベースプレート30が両面接着テープ36,37を介在させながら、携帯電話機など図示しない電子機器の表示パネル前面の透明保護板を兼ねる振動板の裏面に取付けられる。この取付け強度を高める目的から、両面接着テープをベースプレート30の底面の全域にわたって配置することが望ましい。しかしながら、そのように構成すると、ベースプレート30と透明保護板を兼ねる振動板とによって組合せ梁の構造が形成され、撓み振動に対する剛性が強くなり過ぎ、透明保護板を兼ねる振動板への撓み振動の励振能率が低下するおそれがある。このようなおそれを軽減するため、両面接着テープを、ベースプレート30の根元側端部と、先端側端部とに離間させて、少なめに使用する構成が採用されている。
【0022】
入力端子から電力を供給すると、給電用はさみ金具14を通して、振動子10のシム11の表面側と裏面側とに形成された圧電撓み振動素子12,13に交流電力が供給され、これらの撓み振動が開始される。圧電撓み振動素子12と13には、互いに逆極性となるような厚み方向への分極が形成されている。このため、圧電撓み振動素子12と13は、互いに逆相で互いに強め合うような撓み振動子を発生する。
【0023】
振動子10に励振された振動は、振動子保持部20の上下方向の振動に変換され、ベースプレート30を介して、図示しない小型電子機器の振動板に伝達され、この振動板に撓み振動を励振する。このように、振動子10の保護も兼ねてこの振動子10を内部に収容するために、従来使用してきた箱体のかわりに、従来の箱体の底板と類似の機能を果たすベースプレートが設置される。このため、アクチュエータ全体としての小型化・軽量化・製造費用の低廉化が実現される。同時に、アクチュエータが軽量化されたことに伴い、このアクチュエータを小型電子機器の振動板に取付ける機構の負担が軽減され、両面接着テープなどの簡易な機構の適用が可能になる。
【0024】
従来、振動子10を、利用者の手の接触や、電子機器の床への落下などによって発生する過大な衝撃から保護したり、防塵機能を持たせるために、箱体の内部に収容してきた。しかしながら、携帯電話機などの小型電子機器用の透明保護板を兼ねる振動板に取付けて使用する場合には、この保護板を兼ねる振動板の裏側の防塵機能を持つ空間内に収容できるので、手の接触による破壊や防塵機能に関する限り、箱体を除去することにより、振動媒介機能を果たすベースプレートだけにすれば十分である。
【0025】
振動子10を構成する圧電嵌合振動素子12と13は、チタン酸バリウムなどの比較的脆い圧電素子で構成されている。このため、過大な撓み振動の発生によって破損するおそれがある。この過大な振動は、信号よりも、むしろ、このアクチュエータが形成された携帯電話機などの電子機器が、コンクリートなどの硬い床に落下した時の衝撃によって発生する場合が多い。この過大な振動を抑制するため、板状弾性体35と、開口33とが形成されている。
【0026】
図4は、上記第1の実施例の撓み振動型アクチュエータの振動特性を示す実験データである。横軸は振動の周波数、縦軸は1voltの入力電圧で発生する駆動力(ニュートン)である。図中の実線は、上述した実施例のアクチュエータの振動特性である。点線は、シム11の根元側端部に隣接する部分に、L字形状の折り曲げ部分11aと、11bも、弾性板状体34も形成しないことだけが異なる構造を有するアクチュエータについて得られた振動特性である。
【0027】
シムの折り曲げと、弾性板状体の介挿による高剛性化に伴い、振動子の最低次の固有振動数(共振点)が、低域の150Hz 近傍から中域の800H近傍に押上げられている。この結果、聴覚感度の高い800Hz から5000Hz の中・高音域の振動レベルが増加し、励振効率が高められる。同時に、この中・高音域の振動特性が平坦な特性に近づき、音響特性も改善される。振動特性は、シムの折り返し部分の長手方向への長さや、弾性板状体34の長手方向の長さを調整することなどによって、さらに微調整することが可能になる。
【0028】
以上、撓み振動に対する高剛性部分を、L字状の折り曲げによって実現する構成を例示した。しかしながら、折り曲げ部分の先端部を振動子の上方にさらに折り曲げるなど、適宜な変更を加えることができる。
【0029】
図5は、本発明の第2の実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの構成を示す組立て分解斜視図である。本図において、図1、図2、図3と同一の参照符号を付した構成要素は、第1の実施の説明において、各図を参照しながら既に説明したものと同一の構成要素である。これらについては、重複する説明を省略する。
【0030】
この第2の実施例が、第1の実施例と異なる第1の点は、シム11の根元側において、両端部の折り曲げによる高剛性部(11a,11b)の形成が省略されている点である。第1の実施例と異なる第2の点は、弾性板状体34の高さが、これをベースプレート30上に固定する弾性接着剤層38の厚みによって調整可能としている点である。
【0031】
第1の実施例でも、第2の実施例でも、弾性板状体34の表面と、振動子10の底面とは接着固定される。実際には、シム11の厚みや、下側の圧電撓み振動子13の厚みや、あるいは、振動子保持体20の製造・組立て誤差などが存在する。このため、振動子10の下面と弾性板状体34の上面と間に空隙が生じやすい。空隙が生じた状態で両者を無理に接着すると、弾性板状体34が下に引っ張られ、その中心の位置が下にずれる。このため、シム11の先端部の高さが、開口33の上下方向の中心位置からずれてしまうという問題がある。また、下方に引っ張られた弾性板状体34に初期の撓みが発生してしまい、音響特性を劣化させるおそれもある。
【0032】
そこで、この問題を解決する策として、この第2の実施例では、弾性板状体34を、厚手の弾性接着剤層38を介在させながらベースプレート30上に接着固定する構造を採用する。そして、この厚手の弾性接着剤層38の厚みを調整することによって、弾性板状体34の表面の高さを調整し、これが振動子10の底面との間に隙間を形成することなく、この底面に確実に接触するようにしている。
【0033】
この実施例のアクチュエータの組立てに際しては、まず、ベースプレート30の表面の先端側に板状弾性体35が接着固定される。次いで、ベースプレート30の根元側において、裏面に接着剤層が形成された接着フィルム40を、ベースプレート30の表面に貼着することにより、この接着フィルム40をベースプレート30上に固定する。この接着フィルム40は、ポリカーポネート(PC)フィルムや、ボリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムなどで構成される。この接着フィルム40は、その上に貼着しようとする弾性接着剤層34の底面と概略同一形状を有する。この接着フィルム40の表面に、弾性接着剤層38を形成するため、図示しないノズルの先端部から一定量の弾性接着剤が注ぎ出される。この弾性接着剤の注ぎ出しは、好適にはロボットを利用して自動的に行われる。
【0034】
ノズルの先端部から注ぎ出された弾性接着剤は、接着フィルム40の周縁を越えて広がろうとしても、接着フィルム40の表面との間に作用する表面張力のため、横方向への拡がりが抑制される。結局、弾性接着剤層38の底面は、接着フィルム40の形状に倣うことになる。この目的を達成するために、弾性接着剤の動粘度が最適の値に設定される。この接着フィルム40は、大きな均一形状の片面接着テープを型抜きするなどして製作される。
【0035】
続いて、ベースプレート30上に貼着固定された接着フィルム40の表面に、表面側に両面接着テープが貼着固定された弾性板状体34が載置される。最後に、この弾性板状体34の表面に振動子10の底面が貼着・固定される。注入直後の弾性接着剤層38の厚みは、多少大きめの値になるように設定される。シム11や、下側の圧電撓み振動子13の厚みが不足する場合であっても、振動子10の底面が弾性板状体34の表面に確実に接触できるようにするためである。
【0036】
振動子10から受ける接触圧によって、弾性板状体34ががわずかに下降する。これによって、硬化前の弾性接着剤層38が少しだけ横に広がり、厚みがわずかに減少する。このとき、振動子10の底面が弾性板状体34の表面に軽く接触しながら接着・固定されるという好適な状態が実現される。この状態で、シム11の先端部分が開口33内のセンターの位置になるように調整される。この一連の組立て作業は、弾性接着剤層38が硬化する前に、迅速に行われる。
【0037】
弾性接着剤層38の素材としては、硬化後もその厚みが変わらないよう、硬化収縮率のなるべく小さな素材が選択される。また、硬化後の弾性接着剤層38が、固すぎることなく適宜な弾力性を発揮できるよう、シリコン系などの材料が選択される。この弾性接着剤の硬化後のショアー硬度としては、50〜70の範囲のものが好適である。具体例としては、セメダインスーパーX(シリコン系)や、スリーボンド1530(シリル基末端ポリマー)などが好適である。弾性接着剤層38の面積は数十平方mm、その厚みは0.1mm〜0.5mmの範囲が好適である。
【0038】
図5に示した第2の実施例のアクチュエータが、第1の実施のアクチュエータと異なる三つ目の点は、シム11の先端部の表面に、小型の矩形板状で、発泡ウレタンなど柔らかな素材の衝撃吸収片39が予め接着固定されている点である。これは、電子機器の落下時に発生する衝撃力や、動作中に発生する過大に振幅によって振動子の先端が開口33の内周部に衝突することにより発生する衝撃を吸収し、破損を回避する。
【0039】
第1の実施例のアクチュエータと異なる四つ目の点は、給電用はさみ金具14に、水平方向に蛇行する湾曲部分が形成されている点である。この湾曲部分は、落下などによって発生し、この給電はさみ金具14を通して脆くて割れやすい磁気性の圧電撓み振動素子12,13に伝達される衝撃力を弱め、破壊から保護する機能を果たす。
【0040】
以上、振動子の一端を保持する片持ち梁の形式の振動子を使用する構造について例示した。しかしながら、片持ち梁の形式の振動子を、振動子保持部の長手方向の両側に形成する構成の撓み振動型アクチュエータや、振動子の長手方向への中央部分を振動子保持部によって固定する形式の撓み振動型アクチュエータにも本発明を適用することができる。
【0041】
以上詳細に説明した第1,第2の実施例において、振動子10の寸法としては、長さ20mm〜50mm、幅3mm〜10mm、厚み0.5mm〜3mmの範囲が好適である。上記最小の寸法以下では、寸法が小さすぎて製造が困難になる。また、上記最大寸法以上では、携帯電話など小型の携帯用機器への応用が困難になる。
【0042】
また、板状弾性体35として、発泡倍率10〜50の範囲のウレタン系の発泡材を素材とする厚み0.3mm〜1mmの範囲のクッション材を形成する。振動子保持部20としては、複雑な形状を実現するため樹脂成形品を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの構成を示す分解斜視電子図である。
【図2】上記実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの構成を示す斜視電子図である。
【図3】上記実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの構成を示す平面図(A)、この平面図(A)のB−B’断面図(B)、側面図(C)である。
【図4】上記実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの振動特性を従来の電子機器用撓み振動型アクチュエータのものと比較して示す実験データである。
【図5】本発明の第2の実施例の電子機器用撓み振動型アクチュエータの構成を示す分解斜視電子図である。
【符号の説明】
【0044】
10 振動子
11 シム
11a,11b 所定長の折り返し部分
12,13 圧電撓み振動素子
14 給電用はさみ金具
15 入力端子
20 振動子保持部
30 ベースプレート
31,32 係止爪
33 開口
34 弾性板状体
35 板状弾性体
36,37 両面接着テープ
38 弾性接着剤層
39 衝撃吸収片
40 接着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長板状体から成るシムおよびこのシムの表裏両面に取付けられた圧電撓み振動素子から成る細長板状体の振動子と、この振動子の長手方向の片端または中央部分を根元側端部として保持する振動子保持部とを備え、前記振動子に励振された撓み振動を前記振動子保持部を介して電子機器の表示パネル前面の保護板を兼ねる振動板に伝達することによってこの振動板に撓み振動を励振する撓み振動型アクチュエータにおいて、
前記振動子保持部を保持しかつ前記振動子の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレートを備えたことと、
前記振動子の前記根元側端部に隣接する部分のシムに、所定長の高剛性部が形成されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記シムに形成される所定長の高合成部は、このシムの幅方向の両端部から直角に折り曲げられた所定高さの折り曲げ部分から成ることを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかにおいて、
前記振動子の前記先端側のベースプレート上に、前記振動子の過大な振動を抑制する所定長の板状弾性体が配置されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項4】
細長板状体から成るシムおよびこのシムの表裏両面に取付けられた圧電撓み振動素子から成る細長板状体の振動子と、この振動子の長手方向の片端または中央部分を根元側端部として保持する振動子保持部とを備え、前記振動子に励振された撓み振動を前記振動子保持部を介して電子機器の表示パネル前面の保護板を兼ねる振動板に伝達することによってこの振動板に撓み振動を励振する撓み振動型アクチュエータにおいて、
前記振動子保持部を保持しかつ前記振動子の下方に離間して配置され、この振動子の長手方向に延長される細長板状体のベースプレートを備えたことと、
前記振動子の前記根元側端部に隣接する部分のベースプレート上に、所定長にわたり前記振動子との間隙を埋める弾性板状体が配置されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記ベースプレートは、前記振動子の長手方向に離散して配置された取付け機構によって前記電子機器の表示パネル前面の保護板を兼ねる振動板に取付けられたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5において、
前記取付け機構は、両面接着テープであることを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記振動子の前記根元側端部に隣接する部分のベースプレート上に、所定長にわたり前記振動子との間隙を埋める弾性板状体が配置されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記ベースプレートの先端部に、前記振動子の先端の過大な振幅を抑制する振動抑制機構が形成されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項9】
請求項8において、
前記振動抑制機構は、前記ベースプレートの先端部からほぼ直角に折り曲げられ前記振動子の先端部分を収容する開口を有する板状体と、前記振動子の先端部の表裏一方の面に固定される板状の干渉材とから形成されることを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記弾性板状体は、高さの調節を兼ねた接着剤の層を介在させながら前記ベースプレートの上に固定されたことを特徴とする電子機器用撓み振動型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−252878(P2008−252878A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41253(P2008−41253)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(595077418)株式会社オーセンティック (25)
【Fターム(参考)】