説明

電子装置

本発明は、電子ビームを発生し集束させる装置を提供し、この装置は、真空チャンバ(4)と、電子の発生源(2)と、ターゲット(6)と、電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へチャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、電子ビームと交差する磁界をもたらす手段(12)とを含み、磁界の磁束がターゲットの方向に漸次に減少することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを発生し集束させる装置、および電子ビームのエネルギーを増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームを使用する多くの種類の電子機器があり、例としては、陰極線管、粒子加速器、およびX線機械がある。
【0003】
電子ビーム装置は一般に、電子の発生源、電子を加速するための電界を発生する手段、および電子ビームのターゲットを含む。しばしば「電子銃」と呼ばれる電子の発生源は通常、陰極素子という形をとり、この素子は、陰極中を流れる電流を用いて直接に、または間接加熱によってのどちらかで加熱され、そのため陰極から電子が放射される。この電子は、陽極によって加速され、次いで集束されてビームを形成し、その後このビームは、真空チャンバ中を進行し、スクリーンやターゲット電極などのターゲットに入射する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電子が既定の経路に沿ってターゲットまで移動するにつれて大きさが変化する、すなわち低減する磁界を電子にかけることによって、ターゲットに入射する電子の流れのエネルギーを増大させる方法を提供する。
【0005】
本発明の方法を用いて、ターゲットによって検出される電子ビーム電圧が著しく増大され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の側面では、本発明は、電子ビームを発生し集束させる装置を提供し、この装置は、真空チャンバと、電子の発生源と、ターゲットと、電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを含み、この磁界の磁束がターゲットの方向に漸次に減少することを特徴とする。
【0007】
もう1つの側面では、本発明は、電子ビームのエネルギーを発生し増強する装置を提供し、この装置は、真空チャンバと、電子の発生源と、ターゲットと、電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを含み、この磁界の磁束がターゲットの方向に漸次に減少し、それによって、電子ビームが磁界中を進行するにつれて電子ビームのエネルギーが増強されることを特徴とする。
【0008】
別の側面では、本発明は、電子ビームの電圧を発生し増大させる装置を提供し、この装置は、真空チャンバと、電子の発生源と、ターゲットと、電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを含み、この磁界の磁束がターゲットの方向に漸次に減少し、それによって、電子ビームが磁界中を進行するにつれて電子ビームの電圧が増大されることを特徴とする。
【0009】
さらに別の側面では、本発明は電源装置を提供し、この電源装置は、真空チャンバと、電子の流れを発生する手段と、電力がターゲットから引き出され得るように出力部に接続されたターゲットと、電子の流れをターゲットの方へ真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを含み、この磁界の磁束がターゲットの方向に漸次に減少することを特徴とする。
【0010】
磁界は一般に、電子ビームに対しほぼ垂直である。
【0011】
磁界の磁束は、連続的に減少することができ、または一連の階段状減少で減少することができる。しかし磁界の磁束は、連続的に減少するのが好ましい。
【0012】
ターゲットに向かう距離に伴う磁界の磁束の変化率は、一般にほぼ一定であり、すなわち磁束は一般に、ターゲットに向かって直線を成すように減少する。
【0013】
代替的に、磁界の磁束の変化率は、ターゲットの方向に増大するように、または減少するように変化してよい。すなわち、この場合には、磁束は、例えばターゲットに向かって曲線を成すように減少してよい。
【0014】
磁界をもたらす手段は、電子の流れの周囲に配置された2つまたはそれを超える(例えば、2つ、4つ、6つ、または8つの)成形磁石のアレイの形をとってよく、この磁石の形は、ターゲットの方向の磁束の減少を決定する。
【0015】
磁石のアレイは、電子の流れの周囲に配置された少なくとも1対(例えば1対、2対、または3対)の対向した磁石、すなわち1つの磁石を電子の流れのどちら側にも含むことができる。
【0016】
好ましくは、電子の流れの周囲に配置された少なくとも2対の対向した磁石がある。
【0017】
磁石は、ターゲットの方向に先細りになる細長い条片の形をとることができる。この条片は一般に、その長手方向に沿って均一な厚さである。したがって先細りの角度は、磁石によってもたらされる磁束の減少の大きさを決定することになる。
【0018】
磁石は、平面図として台形で、幅広い端部および狭小端部を有してよく、この狭小端部がターゲットにより近い。真空チャンバが直線形で、電子の発生源、およびターゲットがその直線形チャンバの対向する端部にある場合には、この形状の磁石が一般に使用される。
【0019】
代替的に、成形磁石は、平面図としてらせん形状で、幅広い端部および狭小端部を有してもよく、この狭小端部は、らせんの最も内側にある。真空チャンバが、一方の端部にターゲットがある直線形チャンバではなく、ターゲットを取り巻く環状のチャンバである場合には、この形状を有する磁石が装置中で使用されてもよい。
【0020】
それぞれの場合で、一般に、磁石によってもたらされる磁界強度は、少なくとも0.001テスラ、より通常には少なくとも0.01テスラ、好ましくは少なくとも0.05テスラ、最も好ましくは少なくとも0.1テスラである。
【0021】
磁石は、好ましくはセラミック磁石である。
【0022】
真空チャンバは、例えばテレビジョンやコンピュータ・モニタの陰極線管にあるような、永久封止チャンバ(例えば、封止セラミック管、または他の任意の高真空/超高真空維持材料のチャンバ)とされてよく、または真空ポンプに接続されてもよい。この真空チャンバには、真空ポンプへの接続用の分離弁が備わっていてよく、この分離弁は、真空ポンプを使用して必要な圧力までチャンバが排気されることを可能にし、分離弁の閉鎖が、チャンバを封止してその中の真空を保持し、真空ポンプからチャンバを分離するのに役立つ。
【0023】
真空チャンバは、一般には1×10−7トール以下、より一般には5×10−8トール以下、最も好ましくは1×10−8トール以下の圧力まで排気される。
【0024】
「ゲッタ」が、真空度を高め、または維持するために、または真空チャンバ内への漏入を補償するために使用されてもよい。ゲッタはよく知られており、物理ゲッタまたは化学ゲッタのどちらでもよい。物理ゲッタは、気体を吸着することによって機能するゼオライトなどの材料を含む。化学ゲッタは一般に、酸素、二酸化炭素、窒素、一酸化炭素、および水蒸気などの気体と反応し低蒸気圧固体を生成することによって機能する金属である。ゲッタは例えば、真空チャンバの内面に塗布されてもよい。
【0025】
ゲッタは、ゲッタ・ポンプの形をとることができ、このようなポンプはよく知られている。
【0026】
電子の発生源は、電子放射材料から形成された、またはそれで被覆された陰極(例えば、金属酸化物被覆陰極)を、電子を加速し電子をビームに平行化するための1つまたは複数の集束陽極と一緒に含む従来型の電子銃とされてよく、この陰極は、陰極中を流れる電流によって、または陰極に隣接する加熱素子によって加熱されたときに電子を放射する。
【0027】
金属酸化物被覆陰極は、例えば酸化バリウム陰極とされてもよい。あるいは、六ホウ化ランタン(LaB)陰極が使用されてもよい。六ホウ化ランタン陰極は、広く入手可能であり、とりわけ中国GuangdongのCathay Advanced Materials Limited、または米国New Hampshire州、WiltonのKimball Physics Inc.から得られてよい。
【0028】
本発明の装置は、電子ビームを使用するどんな装置であってもよく、例としては、テレビジョンやコンピュータ・モニタなど陰極線管装置、粒子加速器、X線機械、パワー・エレクトロニクス・システム、および無停電電源装置がある。
【0029】
代替的に、または付加的に、本発明の装置は電源として使用されてもよく、電流/電力がターゲットから引き出されることが可能なように、そのターゲットは出力部に接続される。好ましくは、ターゲットからのDC電流をAC電流に変換するコンバータが、ターゲットと出力部の間に挿入される。装置からの電気的(好ましくはAC)出力は、一連の電子および電気装置に電力を供給するために使用されてもよい。一実施態様では、装置からの電気的出力の一部が、電子ビームを発生するために使用され、かつ/または真空チャンバに接続されたゲッタ・ポンプに電力を供給するために使用されてもよい。
【0030】
本発明の装置は、商用電源への接続を必要としない携帯型または独立型電源として使用されてもよい。このように使用される場合には、電子ビームの発生を起動するのに十分な電力を供給するために電池が含まれてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明を、それだけには限らないが、図1〜8に示された特定の実施形態を参照して説明する。
【0032】
図1に示された装置は、真空管4の一方の端に取り付けられた電子銃2を含み、ターゲット電極6が、真空管の他方の端に取り付けられている。この電子銃は、従来のタイプ、例えばテレビジョンやコンピュータ・モニタなど陰極線管装置に一般に使用されているタイプとされてもよい。したがって、この銃は、直径Dの金属酸化物被覆放射源陰極8を有し、この陰極は、加熱フィラメント9によって加熱されたときに電子を放射する。陰極素子によって放射された電子は、例えば1kVの電位を有することができる環状の加速陽極10によって加速される。
【0033】
負荷に接続されてもよい、またはスクリーンの一部を形成できるターゲット6が、真空チャンバの遠端に置かれる。ターゲットがスクリーンの場合には、既知の方法でビームをスクリーンの特定の領域上に向けるために、さらなる偏向または集束装置(図示せず)が使用されてもよい。
【0034】
図1にそのうちの1対が示されている、2対の対向した成形磁石12が真空管4の周囲に配置されている。この実施形態では、磁石は永久磁石であるが、この永久磁石に加えて、またはその代わりに電磁石が使用されてもよい。
【0035】
図2aおよび図2bに示されているように、磁石は概して平坦で、その長手方向に沿って均一な厚さである。平面図として、磁石は台形で、ターゲットの方向に先細になっている。先細りθの角度は様々であってよいが、好ましくは実験的に(対数らせんとしても知られる)理想らせんに基づいており、まっすぐにされ、その寸法は、放射源陰極の直径、およびターゲットの直径によって決まる。磁石の形状が決定され得る方法を図5によって説明する。
【0036】
図5は、1対の曲線SおよびSを示し、それぞれが、らせんの中心に至る理想らせん(対数らせん)軌道に従う。古典的数学理論から知られているように、理想らせんでは、90°間隔で連続する半径(例えばr、r、およびr)は、互いに黄金分割比(φ)になる。らせんの外端での2本の渦巻き線の間の間隔Wは、図2に示された磁石の広い端部の幅Wに相当する。この幅は、放射源陰極8の直径Dに応じて選択され、一般に放射源陰極の直径Dの2.00倍と2.75倍(また、より通常には2.25倍と2.75倍)の間である。好ましくは、幅Wは、放射源陰極8の直径Dの約2.5倍である。らせんの中心に近い間隔Wは、図2に示された磁石の狭小端部の幅Wに相当する。幅Wは、ターゲット電極の直径に応じて選択される。放射源電極およびターゲット電極の各寸法にそれぞれ応じて幅WおよびWが設定されると、次いで磁石の長さが、2つの中間点PとPの間のらせん軌道の長さによって設定される。したがって、磁石の形状は、理想らせんの一部分がまっすぐにされていると見られてよい。
【0037】
成形磁石12は、ターゲット6の方に電子を移動させる電界Eに対し垂直の磁界Bを作り出す。先細になる磁石の形状の結果として、単位面積当たりの磁束が変化するので、磁石の長手方向に沿ってターゲットの方向に磁束が減少する。
【0038】
したがって、真空管中を進行する電子は、管に沿って移動するにつれて、変化する磁束にさらされる。管に沿った様々な点での電子に対する力が図4に概略的に示されており、電界と磁界の組合せの結果は、図3に示されているように、電子銃2からターゲット6の方向に電子が管に沿ってらせん運動を示すというものである。
【0039】
図に示された構成は、電子ビーム中の電子を加速する効果を有し、それによってより高いビーム電圧の発生がターゲットにもたらされる。
【0040】
図に示された装置と、管に沿って一定の磁束をもたらすように平行直線側面の磁石が使用された類似の装置との間で、比較試験が実施された。試験装置では、電子発生源からターゲットまでの距離は460mmであり、台形磁石の寸法は、長さ438mm、厚さ7mm、台形の底幅35mm、狭小端部幅4mmであった。以下の結果が得られた。
【表1】

【0041】
各磁石は、平行側面の磁石も先細の台形磁石も、0.1テスラの磁界強度Bを有するものであった。しかし、磁束Φは、平行部分については一定であったのに対し、台形磁石では磁石の面積が変化するので磁束が変化した。
【0042】
この比較試験は、平行側面磁石の代わりに先細の磁石を利用することによって、ターゲットで検出される電子ビームの電圧が50%増大され得ることを示した。
【0043】
図6は、本発明の第2の実施形態による装置を示す。図1〜5の装置と同様に、図6の装置は、図8にその外観が示されている管104の形の真空チャンバの、一方の端に取り付けられた電子銃102を含む。ターゲット電極106が、真空管104の他方の端に取り付けられている。電子銃は、加熱素子109、および六ホウ化ランタン(LaB)放射源陰極108を含む。LaB陰極の加熱と同時に放射される電子は、図1に関連して上述したように、加速陽極110によって加速される。上述のタイプの成形磁石112が、真空管104の外面に取り付けられる。
【0044】
ターゲット電極106がDC/ACコンバータ114に接続され、このDC/ACコンバータは、従来の構造のものでよく、あるいは、図7にブロック図の形で概略的に示されたように作製されてもよい。DC/ACコンバータは、ターゲット電極106から引き出されたDC電流を240VのAC電流に変換する。
【0045】
DC/ACコンバータ114は、電源入力部202、および電源出力部204を有する。電源入力部202と電源出力部204の間に、分圧器206、正弦波発生器208、チョッパ回路に配置された光導電体の並列アレイ、またはトランジスタの並列アレイのどちらかを含むコンバータ・アレイ210、コンデンサ212、および変圧器214がある。
【0046】
分圧器206は、4つの高電圧低電流抵抗R1、R2、R3、およびR4を含み、正弦波発生器208に連結されている。この正弦波発生器は、制御信号をコンバータ・アレイ210に送出し、その結果、光導電体またはトランジスタがアクティブ化され、コンバータ・アレイを流れるDC電流に50Hz正弦波形を重畳するようになる。コンバータ・アレイ210は、例えば0.1μF、2500Vのコンデンサでよいコンデンサ212に接続される。コンデンサ212は、電流のDC成分の通過を阻止するが、正弦波(AC)成分は通過させる。その結果得られる50HzAC電流は、変圧器214を通るように導かれて、そこで1500Vから240Vに降圧される。
【0047】
図7に示されたタイプのDC/ACコンバータは、典型的には1500Vで0.33AのDC電流(500ワット)を240Vで1.97AのAC電流(473ワット)に変換することができる。このコンバータには、一連の電力消費型の電気および電子装置に装置が接続されることを可能にする出力部が備わっている。
【0048】
コンバータ114からの電気的出力の一部はまた、結線116を介して12VDC電源118に向けられてもよく、この電源は、電子銃およびゲッタ・ポンプ(図8参照)に電力を供給するために使用される。DC電源118は、結線120を介してヒータ109に連結され、また結線121を介してコッククロフト・ウォルトン高電圧倍率器に連結され、この倍率器は、12VDC電圧を加速電極110用の1kVを超えるまでの電圧に変圧する。
【0049】
真空管104の外観が図8に示されている。図8に示されているように、真空管104は、ある長さのステンレス鋼管を含み、これは、例えば長さ約320mm、直径約38mmであり、1.68mmの壁厚を有するものでよい。
【0050】
この管の一方の端に、電子銃(図示せず)の入力ポートを形成するためにフランジ130が設けられる。管104の他方の端にフランジ132が設けられ、それに4方向フランジ・コネクタ・マニホルド134がボルト留めされる。出口フランジ136は、それに取り付けられた2方向分離弁(図示せず)を有し、この分離弁は真空ポンプに接続されてよい。出口フランジ138は、管内の真空の維持を補助するゲッタ・ポンプ(図示せず)に取り付けられる。このゲッタ・ポンプは、その目的に適したどんな市販のポンプでもよく、このようなポンプの一例として、イタリアのミラノのSAES Gettersから入手可能なSorb AC(登録商標)Appendageのゲッタ・ポンプがある。出口フランジ138は、それに接続されたターゲット電極106を有し、この電極は、フランジ132を越えて管104内に約10mm延びるように接続されている。例として、コネクタ・マニホルド134の各フランジは、外径70mm、内径38mm、奥行き8mmであってよい。各フランジには、関連する部材をフランジに接続するための複数の固定ボルト(一般にフランジ当たり6本)が備わっている。132での接続の点から出口フランジ138の外面までのフランジ・コネクタ・マニホルドの全長は、好都合には126mm程度でよい。真空度の低下を防止するために、封止ガスケット(一般に銅製)が対向するフランジ面間に設けられる。
【0051】
本発明の装置は、電子銃、ターゲット電極、ゲッタ・ポンプ、および分離弁をそれぞれのフランジに接続し、次いで分離弁を真空ポンプに連結することによって組み立てられる。真空ポンプを使用すると、管内のあらゆる気体分子および水蒸気を除去するための加熱とともに、管内の圧力が最初に約10−9トールの値まで低減される。電子銃の陰極が加熱されて、そこに吸着したあらゆる気体分子または水蒸気を除去できる適切な期間(例えば72時間)の後、分離弁が閉じられ、真空ポンプが取り外される。その後、真空度は、フランジ接続部での封止の保全性によって約10−8トールのレベルに維持され、どんな軽微な漏入もゲッタ・ポンプによって補償される。
【0052】
好ましくはセラミック磁石である(図8に示されていない)磁石は、保持クリップ(図示せず)によって取外し可能なように管104の外面に取り付けられる。
【0053】
図に示された磁石は、管の長手方向に一律に先細になっており、したがって、管に沿った磁束の変化は本質的に直線的である。しかし、一代替形態として、類似の非直線的変化を磁束に与えるために、磁石の縁部が曲げられてもよい。さらに別の一代替形態として、磁石の縁部が、例えば一連の部分環状磁石を使用することによって階段状にされてもよい。
【0054】
図に示された各磁石は一般にそれぞれ、なめらかな側面の台形を形成するために、互いに接着された磁石合金の複数(例えば7つ)の部分から形成される。しかし、長さと幅が減少するいくつかの長方形磁石を互いに接着することによって、理想らせんに基づく、縁部が階段状の先細の磁石が実現され得る。
【0055】
さらなる一変形形態では、磁石は、らせんの中心に向かって磁石が先細になるらせん、例えば理想らせんを形成するように曲げられてよい。電子の流れがその中を通る真空チャンバが、中心のターゲット電極を取り囲む環状チャンバの場合には、らせん形磁石が使用される。この実施形態では、電子の流れは、真空環状チャンバの放射状外壁に接線方向に取り付けられた電子銃によって発生される。
【0056】
本発明の装置は、電源、例えば万一の電源障害の場合の携帯型補助電源として使用されてもよい。電子銃を動作させ、ゲッタ・ポンプを動作させるために、電気的入力が最初に必要とされるが、この入力は電池を用いて供給されてもよい。ひとたび装置が作動すれば、装置を動作させ続けるために電力出力の一部が電子銃およびゲッタ・ポンプに転用されてもよい。試験は、装置がそれ自体の電力のもとに長期間、動作を維持できることを確認した。
【0057】
等価物
上述の本発明の特定の実施形態に、本発明の根底にある原理から逸脱することなく多くの改変および変更が加えられてよいことは容易に明らかになるであろう。すべてのこのような改変および変更は、本願によって包含されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態による装置の概略図である。
【図2a】図1の装置の一部を形成する成形磁石を示す図である。
【図2b】図2aに示された磁石の平面図である。
【図3】図1の装置を通る電子の動きの概略図である。
【図4】電子が図1の装置を進行するときに電子に作用する力を示す概略図である。
【図5】成形磁石の形状がどのようにして理想らせんに実験的に基づくことができるかを示す図である。
【図6】図1に示された装置であるが、電源フィードバック・ループを組み込んでいるものの概略図である。
【図7】図1〜6の装置に使用されるDC/ACコンバータの構成要素のブロック図である。
【図8】図1および図6に示された装置の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを発生し集束させる装置であって、
真空チャンバと、
電子の発生源と、
ターゲットと、
電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ前記チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、
電子ビームと交差する磁界をもたらす手段と、
を備え、
前記磁界の磁束が前記ターゲットの方向に漸次に減少することを特徴とする、装置。
【請求項2】
電子ビームのエネルギーを発生し増強させる装置であって、
真空チャンバと、
電子の発生源と、
ターゲットと、
電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ前記真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、
電子ビームと交差する磁界をもたらす手段と、
を備え、
前記磁界の磁束が前記ターゲットの方向に漸次に減少し、それによって、前記電子ビームが前記磁界中を進行するにつれて前記電子ビームのエネルギーが増強されることを特徴とする、装置。
【請求項3】
電子ビームの電圧を発生し増大させる装置であって、
真空チャンバと、
電子の発生源と、
ターゲットと、
電子ビームを構成する電子の流れをターゲットの方へ前記真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、
電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを備え、
前記磁界の磁束が前記ターゲットの方向に漸次に減少し、それによって、前記電子ビームが磁界中を進行するにつれて前記電子ビームの電圧が増大されることを特徴とする、装置。
【請求項4】
真空チャンバと、電子の流れを発生する手段と、電力がターゲットから引き出され得るように出力部に接続された前記ターゲットと、前記電子の流れを前記ターゲットの方へ前記真空チャンバ中を通して加速するための電界を作り出す手段と、前記電子ビームと交差する磁界をもたらす手段とを備える電源装置であって、
前記磁界の磁束が前記ターゲットの方向に漸次に減少することを特徴とする、電源装置。
【請求項5】
前記磁界が前記電界に対しほぼ垂直である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記磁束が連続的に減少する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記磁束が一連の階段状減少で減少する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記磁束の変化率がほぼ一定である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
磁界をもたらす前記手段が2つまたは3つ以上の成形磁石のアレイを含み、前記磁石の形が前記ターゲットの方向に磁束の減少を決定する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記成形磁石が、平面図として台形であり、幅広い端部および狭小端部を有し、前記狭小端部がターゲットにより近い、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記成形磁石の長さが、理想らせんをそれぞれ形成する2本の線SとSの間の中線上の2つの点PとPの間の経路の長さと等しく、前記理想らせん上の最も外側の点Pでの前記線SとSの間の間隔Wが、前記台形磁石の前記幅広い端部の幅に相当し、前記理想らせん上の最も内側の点Pでの前記線SとSの間の間隔Wが、前記台形磁石の前記狭小端部の幅に相当する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記成形磁石が平面図としてらせん形であり、幅広い端部および狭小端部を有し、前記狭小端部が前記らせんの最も内側の点にあり、前記真空チャンバが、前記ターゲットを取り囲む環状チャンバである、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記成形磁石が、その長手方向に沿ってほぼ均一の厚さである、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記磁石のアレイが、電子の流れの周囲に配置された少なくとも1対の対向した磁石を含む、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
電子の流れの周囲に配置された少なくとも2対の対向した磁石がある、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記磁石が、前記ターゲットの方向に先細になる細長い条片の形をとる、請求項9乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記磁石によってもたらされる磁界強度が、少なくとも0.001テスラ、より通常には少なくとも0.01テスラ、好ましくは少なくとも0.05テスラ、最も好ましくは少なくとも0.1テスラである、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記磁石がセラミック磁石である、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記真空チャンバが、1×10−7トール以下、より一般には5×10−8トール以下、最も好ましくは1×10−8トール以下の圧力まで排気される、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
ゲッタ・ポンプが、前記真空チャンバ内の真空度の維持を補助するために設けられる、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
実質的に、添付の図面を参照して本明細書で説明されたような装置。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の装置の使用を含む、電子ビームを集束する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−507811(P2008−507811A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522029(P2007−522029)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002878
【国際公開番号】WO2006/008541
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507023522)ステンゼル、セキュリティ、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】STENZEL SECURITY LIMITED
【Fターム(参考)】