説明

電子部品とその製造方法及び前記電子部品を用いた電子装置

【課題】絶縁基板に導電パターンを敷設した電子部品において、安定した特性を有する電子部品を提供することを目的としたものである。
【解決手段】本発明の電子部品は、絶縁基板21と、この絶縁基板21上に敷設された導電パターン22とから成り、絶縁基板21から導電パターン22に向って突出部24を設け、この突出部24に対応する導電パターン22に窪み部23が設けられたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波装置等に用いられる電子部品とその製造方法及び前記電子部品を用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の電子部品の製造方法について説明する。従来の電子部品は、以下に示すような方法で製造されていた。即ち、図18において、溝1が形成されたポリイミドフィルム2を用い、このポリイミドフィルム2の溝1に導電ペースト3をスキージ4で充填する充填工程11と、この充填工程11の後で、充填された導電ペースト3で形成された導電パターン5を乾燥させる乾燥工程12と、この乾燥工程12の後で、導電パターン5を接着剤6が塗布されたリジット基板7に転写する転写工程13と、この転写工程13の後で、ポリイミドフィルム2を剥離する剥離工程14と、この剥離工程14の後で、リジット基板7に転写された導電パターン5を約900℃で焼成する焼成工程15と、この焼成工程15の後で、ダイシング装置10でリジット基板7を切断する切断工程16が実施されて電子部品が製造されていた。
【0003】
以上のようにして製造された電子部品は焼成工程15で約900℃で10分間焼成される。このとき、リジット基板7は収縮しない。一方、導電パターン5は収縮して導電パターン5aのようになる。また、導電パターン5間の距離8も夫々の導電パターン5が収縮するので、導電パターン5a間の距離8aは導電パターン5間の距離8よりも広くなる。
【0004】
9は、導電パターン5から導電パターン5aに収縮することにより生ずる残さ(導電ペースト3の残りかす)である。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−320151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのような従来の電子装置の製造方法では、焼成工程15において、900℃の焼成条件で焼成することにより、図19に示す接着剤6が溶融して流動性を帯びることになる。一方、リジット基板7の表面は平面のままで変化しない。従って、導電パターン5は、接着剤6の流動性のために移動することが考えられる。その結果として、導電パターン5間の距離8が、焼成工程15を経ると、接着剤6の流動性のために不規則に変動することになる。そうすると、導電パターン5a間の間隔が不規則に変動し、その結果として電子部品の特性が不規則に変動するという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、この問題を解決したもので、安定した特性を有する電子部品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の電子部品は、絶縁基板から導電パターンに向って突出部を設け、この突出部に対応する前記導電パターンに窪み部が設けられたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、絶縁基板から導電パターンに向って突出部を設け、この突出部に対応する前記導電パターンに窪み部が設けられたものであり、絶縁基板に形成された突出部が、導電パターンに形成された窪み部に浸入して固定されるので、絶縁基板上における導電パターンは移動することはなく固定される。従って、安定した電気性能を有する電子部品を得ることができる。
【0010】
また、この導電パターンを複数個併設すれば、これらの導電パターンは固定されるので、導電パターン間の距離は固定され、結合度は一定となり、安定した電気性能が得られる。
【0011】
更に、導電パターン間の残さは無く、導電パターン間の絶縁品質が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電子部品の要部断面図である。図1において、21はグリーンシートを焼成して形成された絶縁基板である。そして、この絶縁基板21の上面21aには導電ペーストが焼成された導電パターン22が敷設されている。
【0014】
この導電パターン22の底面には窪み部23が形成されており、絶縁基板21の上面21aは、窪み部23に対応した位置に突出部24が設けられている。そして、この窪み部23と突出部24とは密着しており、移動しないように確りと固定されている。
【0015】
従って、この導電パターン22は、移動することはなく電気性能は安定する。また、導電パターン22間の距離25も変動することは無く、導電パターン22間の距離は固定されるので、導電パターン22間の結合は安定化し、誘導結合や容量結合等の安定した電気性能を得ることができる。
【0016】
(実施の形態2)
実施の形態2では、電子部品の製造方法を説明する。図2において、26は充填工程であり、35はポリイミドフィルムである。このポリイミドフィルム35には、レーザ光線でパターンが形成された溝36が設けられている。この溝36は、上方に向って広がったテーパを有している。このテーパは導電ペースト(後述)の挿入性を向上させるとともに、剥離工程(後述)における剥離を容易にするために設けられたものである。
【0017】
37は、銀(Ag)と樹脂と溶剤で形成された導電ペーストである。この導電ペースト37はスキージ38を矢印39方向に移動させることにより、溝36に充填させる。このようにして、ポリイミドフィルム35の溝36に導電ペースト37が充填されて導電パターン43となる。
【0018】
次に、凹部形成工程27で、導電パターン43の中央上面側に窪み部40が形成される。即ち、この窪み部40は溝36の開口中央上面側に形成される。また、その窪み深さは約7μmである。
【0019】
この窪み部40は、導電ペースト37を充填したポリイミドフィルム35を遠心分離機で遠心分離するとともに、乾燥させることにより形成される。この遠心分離と乾燥により、導電ペースト37内の銀の密度を高くすることができる。即ち、導電性を向上させることができる。また、この工程により、導電ペースト37が溝36の角まで確りと充填される。
【0020】
なお、このように凹部形成工程(これは乾燥工程でもある)27の後、再び充填工程26を実施して、より完全に導電ペースト37を溝36に充填してもよい。本実施の形態では、この凹部形成工程27と充填工程26とを3回繰り返して、完全な導電ペースト37の充填を行っている。
【0021】
次に、転写工程28を説明する。41は、ペットフィルム42に貼り付けられたグリーンシートである。このグリーンシート41の上面に設けられたペットフィルム42を剥がす。そうすると、このグリーンシート41のペットフィルム42側、この図面において上面側41aは(理由は明確ではないが)バインダーリッチの状態になっており、接着剤の役目をしている。
【0022】
このグリーンシート41の上面側41aにポリイミドフィルム35を載置する。このとき、導電パターン43(溝36の開口部側)はグリーンシート41の上面側41aになっている。
【0023】
そして、以下の条件で転写する。即ち、圧力は1平方cm当たり18kg、温度は170℃、時間は10分の転写条件で導電パターン43をグリーンシート41の上面側41aに転写する。この転写条件で転写することにより、グリーンシート41は軟性を有しているので、このグリーンシート41の上面41aに窪み部40と嵌合するように突出部44が形成される。
【0024】
次に、剥離工程29において、グリーンシート41からポリイミドフィルム35を剥離する。なお、ここまでの工程は電子部品が複数個設けられたシート形状で作業をしている。従って、作業効率が向上する。
【0025】
次に、切断工程30において、グリーンシート41を刃物45で押し切りする。そして、電子部品を個々に分割する。この切断工程30は未焼成状態でのグリーンシート41の状態で切断するので、容易に切断することができる。従って、この切断装置は低価格のものを使用することができる。
【0026】
次に、焼成工程31において、切断工程30で切断された電子部品を焼成する。この焼成工程31では、焼成温度は860℃から900℃で10分間焼成している。この焼成工程31により、グリーンシート41は収縮して絶縁基板21となり、導電パターン43も収縮して導電パターン22となる。また、突出部44は焼成されて突出部24となり、窪み部40は焼成されて窪み部23となる。この場合、高温により導電パターン43を形成する導電ペースト37は溶融するが、絶縁基板21に設けられた突出部24と導電パターン22に設けられた窪み部23とが確りと嵌合しているので、導電パターン22が絶縁基板21上を不規則に遊動することはない。また、高温で焼成されるので、突出部24と窪み部23とは確りと密着している。
【0027】
なお、この焼成工程31では、グリーンシート41が既に切断工程30で切断されて小片の電子部品となっているので、この小片内での中央部と端部における収縮の割合は少なくなる。従って、均一の収縮割合を有した電子部品を形成することができる。
【0028】
以上のように製造されるので、この電子部品は以下のような特徴を有することになる。即ち、焼成工程31以前は、図3に示すように導電パターン43間の距離46であるが焼成工程31を実施すると、グリーンシート41は収縮する。即ち、図4に示すように導電パターン22間の距離25は、焼成前の距離46に比べて短くなる。この収縮により、導電パターン22間に形成される結合は密になり、電子部品の小型化が実現できる。
【0029】
なお、ポリイミドフィルム35に形成される溝36と、この溝36に隣接する他の溝36との壁の厚さで、導電パターン22間の距離25が決定されるが、この壁の厚さは10μmより狭くすることはできない。しかし、導電パターン43の距離46は焼成されて10μmより狭くすることができる。即ち、焼成されて、導電パターン22間の間隔は、グリーンシート41の収縮により距離46から距離25と狭くなる。このように導電パターン22間の距離が短くなるので、結合度を高くすることができる。即ち、小型化に貢献する。これに対して、焼成により従来の技術では、図18に示すように、導電パターン5a間の距離8aは広くなる。
【0030】
また、従来の技術では、図5に示すようにリジット基板7を用いていたので、焼成工程15を経てもこのリジット基板7は収縮しない。従って、このリジット基板7の上面に転写された導電パターン5も相似形に縮小されるので、その側面の角47も変わらない。
【0031】
これに対して、本実施の形態における電子部品は、図6に示すように、グリーンシート41が収縮して絶縁基板21となるので、導電パターン22の側面22aは垂直に近づくことになる。従って、図5に示す従来の技術による導電パターン5aの高さ5bと比べて、図6のように本実施の形態における導電パターン22の高さ22bの方が高くなり、対向する断面積が増大する。これらのことより、導電パターン22間の結合度が増加することになり、誘導結合や容量結合は増大する。従って、電子部品の小型化が実現できる。
【0032】
また、導電パターン22の側面22aは垂直に近づくことになるので、溝36のテーパを大きくしても従来のテーパの小さいものと同等になる。逆に言えば、テーパを大きくすることも可能となり、充填工程26における導電ペースト37の充填や、剥離工程29におけるポリイミドフィルム35の剥離が容易になる。
【0033】
更に、本実施の形態では、溝36に導電ペースト37を充填する所謂凹版技術を用いているので、導電パターン22の高さはスクリーン印刷技術を用いるより高くすることができる。従って、大きな断面積を実現することができ、電気抵抗が小さくなるので、キュー(Q)の高い電子部品を得ることができる。
【0034】
なお、本実施の形態によれば、グリーンシート41も収縮するので、従来の技術において問題となった残さ9は生じない。従って、電子部品の導電パターン22間の絶縁品質が向上する。
【0035】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3における電子部品51の平面図である。なお、この電子部品51の製造方法は、実施の形態2で説明した電子部品の製造方法を用いるものである。
【0036】
図7において、52は絶縁基板(実施の形態2の絶縁基板21に該当)である。この絶縁基板52の上面には近接するとともに、且つ平行に敷設された導電パターン(実施の形態2の導電パターン22に該当)53a、53bが設けられている。
【0037】
そして、この導電パターン53aの一方の端からは絶縁基板52の一方の側面(裏面であっても良い)に設けられた外部との接続端子54aに接続されている。同様に、この導電パターン53aの他方の端からも絶縁基板52の他方の側面(裏面であっても良い)に設けられた外部との接続端子54bに接続されている。
【0038】
また、この導電パターン53bの一方の端からは絶縁基板52の一方の側面(裏面であっても良い)に設けられた外部との接続端子54cに接続されている。同様に、この導電パターン53bの他方の端からも絶縁基板52の他方の側面(裏面であっても良い)に設けられた外部との接続端子54dに接続されている。
【0039】
このようにして、この電子部品51はカプラを形成している。即ち、接続端子54aから接続端子54bに信号を通過させると、その信号は導電パターン53bに誘導されて接続端子54c、54dが現われる。
【0040】
この電子部品51は、実施の形態2の技術を用いているので、導電パターン53a、53bに形成された窪み部が絶縁基板52に形成された突出部に嵌合して、確りと固定されている。また、導電パターン53a、53b間は近接させることができるので、結合度が大きくなり、小型化された電子部品51を実現することができる。更に、導電パターン53a、53bの高さはスクリーン印刷に比べて高くすることができるので、断面積が大きくなり、Qの高い電子部品51が実現できる。
【0041】
図8は、その等価回路図である。55aは導電パターン53aのインダクタンスであり、55bは導電パターン53bのインダクタンスである。
【0042】
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4における電子部品56の回路図である。なお、この電子部品56の製造方法は、実施の形態2で説明した電子部品の製造方法を用いたものである。
【0043】
即ち、導電パターンで形成されたインダクタ57に近接するとともに平行に敷設されたインダクタ58(導電パターンで形成されている)と、インダクタ59(導電パターンで形成されている)が設けられており、このインダクタ57の両端からは夫々外部との接続端子60a、60bに接続されている。また、インダクタ58の両端からは夫々外部との接続端子60c、60dに接続されており、インダクタ59の両端からも夫々外部との接続端子60e、60fに接続されている。
【0044】
以上のように接続された電子部品56はバランを構成している。即ち、インダクタ57側の接続端子60a、60bに不平衡信号を入力させれば、インダクタ58側の接続端子60c、60dと、インダクタ59側の接続端子60e、60fに平衡信号が出力される。
【0045】
逆に、インダクタ58側の接続端子60c、60dと、インダクタ59側の接続端子60e、60fに平衡信号を入力すれば、インダクタ57側の接続端子60a、60bに不平衡信号が出力される。
【0046】
なお、この電子部品56も実施の形態2の技術を用いているので、実施の形態3の電子部品51と同様の効果を奏するものである。
【0047】
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5における電子部品61の平面図である。なお、この電子部品61の製造方法は、実施の形態2で説明した電子部品の製造方法を用いたものである。
【0048】
絶縁基板62の上面には、渦巻き形状の導電パターン63が形成されている。そして、この導電パターン63の一方の端は、絶縁基板62の一方の側面(裏面であっても良い)に形成された外部との接続端子64aに接続されている。また、導電パターン63の他方の端は、インナービア65を介して絶縁基板62の裏面に導出され、この裏面から絶縁基板62の他方の側面(裏面であっても良い)に形成された外部との接続端子64bに接続されている。
【0049】
このように、渦巻き形状の導電パターン63でインダクタを形成しているので、インダクタの小型化が可能となる。また、図10では渦巻き形状として円形のものを用いたが、これは三角形、四角形、多角形であっても良い。
【0050】
なお、この電子部品61も実施の形態2の技術を用いているので、実施の形態3の電子部品51と同様の効果を奏するものである。
【0051】
(実施の形態6)
図11は、実施の形態6における電子部品66の平面図である。なお、この電子部品66の製造方法は、実施の形態2で説明した電子部品の製造方法を用いたものである。
【0052】
絶縁基板67の上面には、櫛形をした導電パターン68aと68bが歯合するように形成されている。また、この導電パターン68aと68bとの間は、微小間隔の絶縁部を有している。そして、この導電パターン68aは、絶縁基板67の一方の側面(裏面であっても良い)に形成された外部との接続端子69aに接続されている。また、導電パターン68bは、絶縁基板67の他方の側面(裏面であっても良い)に形成された外部との接続端子69bに接続されている。
【0053】
このようにして、導電パターン68aと68bとでコンデンサを形成している。導電パターン68aと68bとは、凹版印刷技術で形成されているので、導電パターン68aと68bの高さ寸法を大きくとることができ、静電容量の大きなコンデンサを実現することができる。
【0054】
また、導電パターン68aと68bとは、歯合するように形成されているので、コンデンサでありながら同一層内に形成することができる。従って、1層のみの絶縁基板であっても単一面上に形成することができる。
【0055】
なお、この電子部品66も実施の形態2の技術を用いているので、実施の形態3の電子部品51と同様の効果を奏するものである。
【0056】
(実施の形態7)
図12は、実施の形態7における電子部品71の分解斜視図である。なお、この電子部品71の製造方法は、多層基板技術を用いているが基本的には実施の形態2で説明した製造方法と同様である。切断工程30(図2)以前に複数のグリーンシートを積層する点でのみ相違する。
【0057】
72はグリーンシートであり、このグリーンシート72の上面には、凹版印刷技術を用いた導電パターン73が載置される。そして、この導電パターン73の上には誘電体ガラス74と、保護ガラス75が積層される。
【0058】
また、グリーンシート72の裏面には、グリーンシート77が積層されており、このグリーンシート77は、スクリーン印刷技術(凹版印刷技術であっても良い)で形成された引き出し電極76が形成されている。そして、導電パターン73の一方の端は、インナービア78を介して、引き出し電極76に接続されている。また、導電パターン73の他方の端は、直接側面電極に導出されている。
【0059】
以上のように構成された電子部品71は焼成工程31(図2)で焼成されてカプラ機能を有する電子部品となる。
【0060】
(実施の形態8)
図13は、実施の形態8における電子部品79の断面図である。なお、この電子部品79の製造方法は、実施の形態7で説明した電子部品71を背中合わせに2個を貼り合わせて電子部品79を形成したものである。
【0061】
即ち、電子部品71のグリーンシート77の裏面にも以下のシートが積層されている。即ち、引き出し電極76aがスクリーン印刷技術で形成されたグリーンシート77aと、インナービア78aが設けられるとともに導電パターン73aが凹版印刷技術で形成されたグリーンシート72aと、誘電体ガラス74aと、保護ガラス75aとがこの順に積層されたものである。なお、ここで、引き出し電極76aは凹版印刷技術で形成しても良い。
【0062】
また、グリーンシート77や、77aに板体状の第1の導電パターン(凹版印刷でもスクリーン印刷でも良い)を設けるとともに、グリーンシート72や72aに板体状の第2の導電パターン(凹版印刷でもスクリーン印刷でも良い)を設け、この第1、第2の導電パターンを対向させることによりコンデンサを形成することができる。また、内層に導電パターンで電子回路を形成することもできる。
【0063】
(実施の形態9)
図14は、実施の形態9における電子部品81の回路図である。なお、この電子部品81の製造方法は、実施の形態1と2を基本に用いつつ、なお具体的には実施の形態5、6で説明した電子部品61、66或いは実施の形態8で説明した積層基板における電子部品79の製造方法を用いたものである。
【0064】
図14において、入力端子82aと出力端子83aとの間には、インダクタ84が接続されている。また、グランド電位の入力端子82bとグランド電位の出力端子83bとはそのまま直接接続されている。そして、入力端子82aと入力端子82bとの間には、コンデンサ85が接続されてローパスフィルタ機能を有する電子部品81を形成している。
【0065】
従って、実施の形態1と2の特徴を有する電子部品81を得ることができる。
【0066】
(実施の形態10)
図15は、実施の形態10における電子部品86の回路図である。なお、この電子部品86の製造方法は、実施の形態1と2を基本に用いつつ、なお具体的には実施の形態5、6で説明した電子部品61、66或いは実施の形態8で説明した積層基板における電子部品79の製造方法を用いたものである。
【0067】
図15において、入力端子87aと出力端子88aとの間には、コンデンサ89が接続されている。また、グランド電位の入力端子87bとグランド電位の出力端子88bとはそのまま直接接続されている。そして、入力端子87aと入力端子87bとの間には、インダクタ90が接続されてハイパスフィルタ機能を有する電子部品86を形成している。
【0068】
従って、実施の形態1と2の特徴を有する電子部品86を得ることができる。
【0069】
(実施の形態11)
図16は、実施の形態11における電子部品91の回路図である。なお、この電子部品91の製造方法は、実施の形態1と2を基本に用いつつ、なお具体的には実施の形態5、6で説明した電子部品61、66或いは実施の形態8で説明した積層基板における電子部品79の製造方法を用いたものである。
【0070】
図16において、入力端子92aと出力端子93aとは直接接続されている。また、グランド電位の入力端子92bとグランド電位の出力端子93bも直接接続されている。そして、入力端子92a(出力端子93aでも良い)と入力端子92b(出力端子93bでも良い)との間には、インダクタ94とコンデンサ95の並列接続体が接続されてバンドパスフィルタ機能を有する電子部品91を形成している。
【0071】
従って、実施の形態1と2の特徴を有する電子部品91を得ることができる。
【0072】
(実施の形態12)
図17は、実施の形態12における電子装置101のブロック図である。本発明の電子装置101は、送信系と受信系とからなり、これらを構成する要素部品に本発明の電子部品を用いたものである。本実施の形態では、送信系と受信系とは同一の筐体に収納した所謂携帯電話を説明しているが、これは夫々独立した送信機或いは受信機であっても良い。
【0073】
なお、この電子装置101の要素部品である電子部品の製造方法は、実施の形態1と2を基本に用いつつ、なお具体的には実施の形態3、4、5、6、9、10、11で説明した電子部品51、56、61、66、81、86、91或いは実施の形態8で説明した積層基板における電子部品79の製造方法を用いたものである。
【0074】
先ず、受信系を説明する。図17において、102は高周波信号(携帯電話やTV放送等)が入力されるアンテナであり、このアンテナ102はアンテナ切り替えスイッチ103の共通端子に接続されている。このアンテナ切り替えスイッチ103の一方の端子は、バンドパスフィルタ104に接続されている。このバンドパスフィルタ104は、DCS(1.9GHz)とGSM(800MHz)を夫々分離して通過させるため、本実施の形態11で述べた電子部品91が2個挿入されて構成されたものである。
【0075】
バンドパスフィルタ104のGSMの出力は、SAWフィルタ105aと、LNA(低雑音増幅器)106aと、SAWフィルタ107aとを介してバラン(実施の形態4で述べた電子部品56に該当)108aに入力される。このバラン108aで不平衡/平衡変換されて、その出力は高周波回路109に接続されている。また、この高周波回路109はベースバンド回路110に接続されており、このベースバンド回路110の出力はスピーカ(出力部の一例として用いた)111に接続されている。112はマイクロフォンであり、送信・受信回路110に接続されている。
【0076】
また、バンドパスフィルタ104のDCSの出力は、SAWフィルタ105bと、LNA106bと、SAWフィルタ107bとを介してバラン108bに入力される。このバラン108bで不平衡/平衡変換されて、その出力は高周波回路109に接続されている。
【0077】
113は、発振器であり、バラン114を介して不平衡/平衡変換されて、その出力は高周波回路109に接続されている。なお、この発振器113の共振器を構成するインダクタは実施の形態5における電子部品61を使用することができる。
【0078】
次に送信系を説明する。112はマイクロフォン(入力部の一例として用いた)であり、このマイクロフォン112の出力は、ベースバンド回路110を介して、高周波回路109に接続されている。なお、発振器113とバラン114は、受信系と共用している。もちろんこれは別々に設けても良い。
【0079】
高周波回路109のGSM出力は、バラン115aに接続されている。このバラン115aで平衡/不平衡変換を行っている。そして、このバラン115aの出力は、SAWフィルタ116aと、電力増幅器117aと、GSMの周波数以上の通過を阻止するローパスフィルタ(実施の形態9の電子部品81を使用することができる)118aを介してカプラ(実施の形態3の電子部品51を使用することができる。なお、このカプラは実施の形態3のカプラが2個で構成されている)119に入力される。このカプラ119の出力はGSMとDCSを分離するバンドパスフィルタ120を介してアンテナ切り替えスイッチ103の他方の端子に接続されている。そして、アンテナ102から高周波信号が送信される。
【0080】
また、高周波回路109のDCS出力は、バラン115bに接続されている。このバラン115bで平衡/不平衡変換を行っている。そして、バラン115bの出力は、SAWフィルタ116bと、電力増幅器117bと、DCSの周波数以上の通過を阻止するローパスフィルタ118bを介してカプラ119に入力される。
【0081】
また、カプラ119のピックアップ出力は、検波回路121を介して高周波回路109に接続されている。
【0082】
以上のように接続されて、携帯電話機能を有する電子装置101が構成されている。ここで、バンドパスフィルタ104、120と、カプラ119と、ローパスフィルタ118a、118bと、バラン108a、108b、114、115a、115bと、発振器113に用いるインダクタは、本発明の電子部品を用いることにより、導電パターンと絶縁基板とが確りと装着されているので、振動に強い携帯電話機としての電子装置101を実現することができる。
【0083】
また、電力増幅器117a、117bの出力以降に本発明の電子部品を用いることにより、電気抵抗を小さくすることができるので、電子装置101の送信電力の向上と、省電力化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の電子部品は、電気性能が安定しているので、各種電子装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1における電子部品の要部断面図
【図2】同、実施の形態2における電子部品の製造工程図
【図3】同、焼成工程前の電子部品の要部断面図
【図4】同、焼成工程後の電子部品の要部断面図
【図5】同、リジット基板を用いた場合の参考断面図
【図6】同、焼成工程後の電子部品の要部拡大断面図
【図7】同、実施の形態3における電子部品の平面図
【図8】同、回路図
【図9】同、実施の形態4における電子部品の回路図
【図10】同、実施の形態5における電子部品の平面図
【図11】同、実施の形態6における電子部品の平面図
【図12】同、実施の形態7における電子部品の分解斜視図
【図13】同、実施の形態8における電子部品の要部断面図
【図14】同、実施の形態9における電子部品の回路図
【図15】同、実施の形態10における電子部品の回路図
【図16】同、実施の形態11における電子部品の回路図
【図17】同、実施の形態12における電子装置のブロック図
【図18】従来の製造工程図
【図19】同、要部断面図
【符号の説明】
【0086】
21 絶縁基板
22 導電パターン
23 窪み部
24 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板上に敷設された導電パターンとから成り、前記絶縁基板から前記導電パターンに向って突出部を設け、この突出部に対応する前記導電パターンに窪み部が設けられた電子部品。
【請求項2】
突出部と窪み部とは密着した請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
導電パターンは、第1の導電パターンと第2の導電パターンが平行に敷設されるとともに、夫々の前記導電パターンの端部は絶縁基板の側面或いは裏面に形成された接続端子に接続されてカプラを形成する請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
導電パターンは、第1の導電パターンに第2の導電パターンと第3の導電パターンが夫々平行に敷設されるとともに、夫々の前記導電パターンの端部は絶縁基板の側面或いは裏面に形成された接続端子に接続されてバランを形成する請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
導電パターンは、渦巻き形状に敷設されるとともに、夫々の前記導電パターンの端部は絶縁基板の側面或いは裏面に形成された接続端子に接続されてインダクタを形成する請求項2に記載の電子部品。
【請求項6】
導電パターンは、第1の導電パターンと第2の導電パターンが歯合するように敷設されるとともに、夫々の前記導電パターンの端部は絶縁基板の側面或いは裏面に形成された接続端子に接続されてコンデンサを形成する請求項2に記載の電子部品。
【請求項7】
絶縁基板に多層基板を用い、この多層基板の層間には板体状の導電パターンが敷設されるとともに、夫々の前記導電パターンの端部は前記絶縁基板の側面或いは裏面に形成された接続端子に接続されてコンデンサを形成する請求項2に記載の電子部品。
【請求項8】
第1の端子と第2の端子との間に、請求項5に記載のインダクタを接続し、第3の端子と第4の端子との間を直接接続するとともに、この第3の端子と前記第1の端子との間に請求項6或いは請求項7に記載のコンデンサを接続してローパスフィルタを形成する電子部品。
【請求項9】
第1の端子と第2の端子との間に、請求項6或いは請求項7に記載のコンデンサを接続し、第3の端子と第4の端子との間を直接接続するとともに、この第3の端子と前記第1の端子との間に請求項5に記載のインダクタを接続してハイパスフィルタを形成する電子部品。
【請求項10】
第1の端子と第2の端子を直接接続するとともに、第3の端子と第4の端子を直接接続し、前記第1の端子と前記第3の端子との間に請求項5に記載のインダクタと請求項6或いは請求項7に記載のコンデンサとの並列接続体を接続してバンドパスフィルタを形成する電子部品。
【請求項11】
溝が形成されたポリイミドフィルムの前記溝に導電ペーストを充填する充填工程と、この充填工程の後で、前記導電ペーストが充填されて形成された導電パターンの中央上面側に窪み部を形成する窪み形成工程と、この窪み形成工程の後で、前記導電パターンをグリーンシートに転写する転写工程と、この転写工程の後で、前記ポリイミドフィルムを剥離する剥離工程と、この剥離工程の後で、前記グリーンシートを高温で焼成する焼成工程とを有する電子部品の製造方法。
【請求項12】
剥離工程と焼成工程との間にグリーンシートを切断する切断工程を有した請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
切断工程における切断は押し切り切断とした請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
充填工程で用いられるポリイミドフィルムに形成された溝は、開口部に向って広がったテーパを有する請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項15】
転写工程では、グリーンシートに貼られたペットフィルムを剥離し、このペットフィルムの剥離面に導電パターンを転写する請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項16】
窪み部の形成は、導電ペーストが充填されたポリイミドフィルムを乾燥する乾燥工程とした請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項17】
充填工程と乾燥工程とは複数回繰り返す請求項16に記載の電子部品の製造方法。
【請求項18】
高周波信号が入力されるアンテナと、このアンテナに入力された信号が供給されるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタの出力が供給される低雑音増幅器と、この低雑音増幅器の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される出力部とを備え、前記バンドパスフィルタは請求項10に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項19】
高周波信号が入力されるアンテナと、このアンテナに入力された信号が供給されるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタの出力が供給される低雑音増幅器と、この低雑音増幅器の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される出力部とを備え、前記低雑音増幅器の出力と前記高周波回路の一方の入力との間には請求項4に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項20】
高周波信号が入力されるアンテナと、このアンテナに入力された信号が供給されるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタの出力が供給される低雑音増幅器と、この低雑音増幅器の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される出力部とを備え、前記発振器を構成する共振器のインダクタには請求項5に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項21】
高周波信号が入力されるアンテナと、このアンテナに入力された信号が供給されるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタの出力が供給される低雑音増幅器と、この低雑音増幅器の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される出力部とを備え、前記発振器と前記高周波回路との間には請求項4に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項22】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記電力増幅器と前記カプラとの間に請求項8に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項23】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記カプラは請求項3に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項24】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記電力増幅器と前記アンテナとの間に請求項10に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項25】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記電力増幅器と前記高周波回路との間に請求項4に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項26】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記発振器を構成する共振器のインダクタに請求項5に記載の電子部品を用いた電子装置。
【請求項27】
信号が入力される入力部と、この入力部に入力された信号が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には発振器の出力が供給される高周波回路と、この高周波回路の出力が供給される電力増幅器と、この電力増幅器の出力が供給されるカプラと、このカプラの出力が供給されるアンテナと、前記カプラのピックアップ出力と前記高周波回路との間に接続された検波回路とを備え、前記発振器と前記高周波回路との間に請求項4に記載の電子部品を用いた電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−319167(P2006−319167A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140922(P2005−140922)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】