電子部品の製造方法
【課題】 半導体基板を薄くすることにより更に電子部品の小型化を図るとともに、電子回路として何らの問題もなく動作し、更に携帯電子機器に用いられた場合でも充分耐えうる堅牢性を有するとともに高い信頼性を有する電子部品を製造することのできる電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程(工程S11)と、上記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程(工程S12)と、上記半導体基板の裏面を研磨する裏面研磨工程(工程S18)と、研磨後の上記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程(工程S20)と、上記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有する。
【解決手段】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程(工程S11)と、上記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程(工程S12)と、上記半導体基板の裏面を研磨する裏面研磨工程(工程S18)と、研磨後の上記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程(工程S20)と、上記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイオード、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の電子部品の製造方法に係り、特に携帯電話、パソコン(パーソナルコンピュータ)、ノート型パソコン、コンピューターゲーム機、腕時計、電子オルゴール、ナビゲーションシステム、小型テレビ、カメラモジュール等の軽薄短小化を求められる用途に使用される電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般的に用いられていたIC等の電子部品は、電子回路が形成された半導体素子をリードフレーム上に搭載し、その電子回路の電極と外部接続用の接続端子とをワイヤーボンド等によって接続し、その後に金型内にて溶融した固形のエポキシ樹脂封止材を硬化させることにより成型される。近年、携帯電話等のような小型・軽量が求められる機器の普及率が高くなっている。このような機器では、まず筐体のサイズ、重量、デザイン等の仕様が決められてから、その仕様に収まるように電子回路、アンテナ等のを設計するのが一般化している。このような用途を有する機器に用いられる電子部品は、その外形寸法や重量が極めて制限される。
【0003】このように、近年の電子部品の軽薄短小化につれて、当該電子部品の封止を行う際に、電子回路が形成された半導体素子やフィルムをインターポーザとして用い、このインターポーザ上にワイヤーボンド又はバンプにより接続搭載した後に上記の金型成型により封止したり、液状のエポキシ樹脂封止材で封止する技術が案出されている。この技術により作成された電子回路には、内部に形成された電子回路とマザーボードに形成された電子回路とを接続するために、電子部品に形成された電子回路と電気的に導通したハンダボールを形成した形態のBGA(Ball Grid Array)や更に電子部品の小型化を進めたCSP(Chip Size Package)のパッケージ形態へと移行している。
【0004】更に、近年、電子部品の小型化を進歩させたウェハサイズレベルのパッケージを得る技術が案出されている。この技術では、ウェハそのものにポストを形成して、ウェハ表面にプレーナ技術により形成された配線上に樹脂で保護コートを行い、上記ポスト上にハンダボールを形成させた後、ダイシングにより個々に切断してウェハサイズレベルのパッケージを得ている。尚、本明細書中で用いる用語「ポスト」とは、電子部品に形成された電子回路と、外部のマザーボード等に形成された電子回路とを電気的に接続するものをいう。
【0005】この技術によれば、電子部品のパッケージの大きさは半導体素子そのものの大きさになり、電子部品の外形寸法は最小となる。また、電子部品の厚さも封止樹脂層がポストの高さ及び半導体基板の厚みを合わせた厚さに制限されるため極めて薄くなり、接続用のハンダボールと合わせた全体の厚さも従来の電子部品の厚さよりも極めて小さく抑えられる。この技術の詳細については、例えば特開平10−79362号公報を参照されたい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年ウェアラブルコンピュータなるものが考えられている。このウェアラブルコンピュータは、小型化されたコンピュータを衣服のように人間に取り付けて使用するコンピュータである。このような電子機器を実現するために、今後、更に電子機器の小型・軽量化が要求されると考えられる。この小型・軽量化の要請に対して、更に電子部品の小型化を図るためには、ウェハ自体の厚みを薄くするのが1つの方法であると考えられる。
【0007】現在の半導体素子は、シリコン等のウェハを用いるのが一般的である。このウェハの厚さは400ミクロン(0.4mm)以上ある。一般には、6インチのウェハでは厚さは625ミクロン、8インチのウェハでは厚さは725ミクロンである。この程度の厚さを有するウェハを用いるのは、シリコン等は厚さが薄いとガラスのように脆い物質であるためである。つまり、プレーナ技術では、半導体基板の一部をn型又はp型不純物を添加する工程、電子回路のパターンを形成するためにレジストを塗布してレジストを現像する工程、配線工程等の種々の工程を経て半導体基板上に電子回路を形成するが、あまり薄いウェハを用いると、これらの工程作業中にウェハが割れてしまうからである。従って、厚さが0.4mmより薄いウェハを取り扱うことは実質的に不可能である。更に、プレーナ技術によりウェハ表面に電子回路を形成した後、ウェハ裏面を研磨して、厚さが400ミクロンより薄いウェハを作成し、これにバンプの形成及び封止材を塗布する試みもあるが、これらの工程においてもやはり薄いウェハを取り扱うことは困難である。
【0008】しかし、ウェハは一般に実質的には、電子回路が形成されたウェハ表面から20ミクロン(0.02mm)程度の厚みがあれば、電子回路として問題なく機能するといわれている。従って、電子回路が形成されたウェハの厚さを0.4mmより薄くすることができれば、電子部品を更に小型化する際に極めて有利である。
【0009】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体基板を薄くすることにより更に電子部品の小型化を図るとともに、電子回路として何らの問題もなく動作し、更に携帯電子機器に用いられた場合でも充分耐えうる堅牢性を有するとともに高い信頼性を有する電子部品を製造することのできる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の第1の観点は、ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を前記溝が露出するまで研磨する裏面研磨工程と、研磨後の前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴している。また、本発明の第1の観点は、前記第1塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴としている。更に、本発明の第2の観点は、ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を、前記半導体基板が所定の厚みとなるまで研磨する裏面研磨工程と、研磨を行った前記半導体基板の裏面から、前記第1塗布工程で塗布した封止樹脂に至る溝を形成する溝形成工程と、前記溝を形成した前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電子回路の製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【0012】まず、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハ上にポストを形成する工程が行われる(工程S10)。図2は、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハの一例を示す斜視図である。図2に示されたように、ウェハ10の表面には、半導体素子12が形成されている。通常、1つのウェハ10上には同一の電子回路が形成された半導体素子12が複数形成されている。ウェハ10の厚みは、0.4mm以上である。半導体素子12各々の表面は、例えばシリコン酸化膜等による絶縁膜が形成されているが、半導体素子12に形成された電子回路と外部の電子回路とを接続する電極パッドが形成された箇所は、シリコン酸化膜がエッチング等により除去されて剥き出しになっている。
【0013】上記ポストはシリコン酸化膜がエッチング等に除去されて剥き出しになっている箇所に形成される。図3は、ウェハ10の断面図である。図3に示されたように、ウェハ10の半導体素子12には複数のポスト14が形成されている。ポスト14の形成方法は、特に制限はないが、例えば半田ボールを転写法を用いて配設する。
【0014】ポスト14が形成されると、次にポスト14が形成された面に溝を形成する工程が行われる(工程S11)。図4は、ポスト14が形成された面に溝を形成する工程を説明するための図であり、ウェハ10に関しては図3と同様に断面を示している。図4において、15は溝を形成するためのダイシング装置であり、本実施形態においては、例えば0.05〜0.4mmの幅を有する溝を形成するものが用いられる。前述したように、1つのウェハ10上には半導体素子12が多数形成されているため、上記溝は個々の半導体素子の周囲を取り囲むように形成される。図4において、13,13,…はポスト14が形成されたウェハ10の面に形成された溝を示している。この溝13,13,…の深さはウェハ10の厚みの半分程度からウェハを完全に切断するまで(この場合は、裏面に樹脂硬化温度に耐え得る粘着性のシートに貼りつけられている)に設定され、例えば、ウェハ10の厚みが0.6mmである場合には、幅が0.05〜0.4mmであって、深さが0.3〜0.6mmの溝が形成される。ただし、図面では半分の場合で説明する。
【0015】溝13,13,…が形成されると、次にポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程が行われる(工程S12)。図5は、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。図5において、16は、孔版印刷を行うための孔版であり、この孔版には、ウェハ10に形成された半導体素子12を一度に印刷するための孔が形成されている。この孔の直径は、ウェハ10の直径よりも僅かに小さい径である。18は、封止を行う際に用いられる液状の封止樹脂である。この液状の封止樹脂18は、硬化後にウェハ10の反りが極めて少なくなるよう抑えられるものが好ましい。
【0016】例えば、直径が8インチであり、厚さが400μmのウェハの表面に液状の封止樹脂を塗布し、この液状の封止樹脂を硬化させたときに、ウェハ10の反りが1mm以下であることが好ましい。液状の封止樹脂18としては、樹脂硬化成分中にシリカ粉末が80重量%以上含まれ、硬化収縮率が0.1%以下であり、熱膨張係数が12ppm以下である日本レック(株)のNPR−785Nが最良である。また、20は、孔版16の面内に往復運動が可能なスキージである。
【0017】印刷を行う際には、まず、ウェハ10の上面に孔版16を接触させて配置する。このとき、孔版16に形成された孔が半導体素子12の上方に位置するよう孔版16を配置する。つまり、孔版16が半導体素子12を覆わないよう孔版16を配置する。次に、孔版16上に液状の封止樹脂18を滴下し、スキージ20を孔版16に沿って図中符号D1が付された方法へ移動させる。スキージ20を孔版16に沿って移動させることにより、液状の封止樹脂18が孔版16に形成された孔内に流入するとともに、孔内に流入した液状の封止樹脂18の上面が孔版16と同一の高さになり、且つ上面が平坦となる。
【0018】次に、液状の封止樹脂18の上面の位置を規定する孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係について説明する。図6は、孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係を説明するための図である。本実施形態では、孔版16の厚さがポスト14の高さよりも厚いものに制限されない。例えば図6(a)は、ポスト14の高さより厚さが厚い孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図であり、図6(b)は、ポスト14の高さと同程度の厚さを有する孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図であり、図6(c)は、ポスト14の高さより厚さが薄い孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図である。
【0019】図6(c)に示したように、ポスト14の高さよりも厚さが薄い孔版16を用いる場合には、スキージ20は弾性変形するもの(例えばゴム製のもの)を用いることによりポスト14が突出し、しかもポストの周囲に封止樹脂が塗られるようにする。尚、工程S12の工程でなされる印刷は、1回の印刷のみに制限される訳ではなく、1つのウェハに対して複数回行っても良い。また、封止樹脂18の印刷は、大気圧下で行うものでも真空状態におけるものでも良いが、真空状態において印刷する方が好ましい。大気圧下で印刷を行う場合には、加熱しながら印刷を行うことが好ましい。なぜならば、印刷を行う際に封止樹脂18に巻き込まれる気泡が抜け易くなるからである。また、液状の封止樹脂18の印刷を行う際には、圧力差を用いて封止樹脂18を溝13,13,…内に充填することができる真空印刷機を用いるのが好ましい。その理由は、ウェハ10に形成された溝13,13,…は前述したように、例えば幅が0.05〜0.4mmであって、深さが0.3〜0.6mmであり、液状の封止樹脂18の印刷のためには幅が狭く、しかも深さが深い。よって、大気圧下において印刷を行った場合には、溝の底部に封止樹脂18の未充填部分が生ずる可能性が高いためである。
【0020】次に、工程S12において印刷した樹脂を硬化する工程が行われる(工程S14)。この工程は、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂18を乾燥することにより硬化させる。尚、印刷時には上述のように圧力差を用いて封止樹脂18を印刷することが好ましいが、溝13,13,…内における封止樹脂18の充填性をより高いものとするために、印刷後に行われるこの工程において、大気圧よりも高い圧力をかけて封止樹脂18を硬化させる、いわゆる加圧硬化を行うことが好ましい。封止樹脂18を硬化させる場合には、熱風乾燥機の温度を100〜150℃に設定するとともに、乾燥時間を1〜3時間に設定して開始するが、乾燥を開始する際に、加える圧力を5×105〜2×106paに設定して少なくとも封止樹脂18がゲル化するまでの間加圧硬化を行う。以上の工程を経ることにより、封止樹脂18の硬化した皮膜によって回路の保護が図れるとともにポストが補強され、更にウェハ10の強度が高まる。
【0021】次に、ウェハ10に対して封止樹脂18が印刷された面を研磨して、封止樹脂18に埋もれたポスト14を磨き出す工程が行われる(工程S16)。図7は、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。尚、図7においては理解を容易にするために、工程S14迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号50を付している。
【0022】図7に示したように、電子部品50は、封止樹脂18の印刷された面が上面となるよう固定平板24上に固定して載置される。この固定平板24は、研磨の際に固定平板24上で電子部品50が動かないよう、電子部品50を真空吸着するものが好ましい。図7中において、26は研磨装置である。この研磨装置は、通常のウェハ研磨装置が使用できる。この工程では、電子部品50を固定平板24に固定してから、研磨装置26によって封止樹脂18を研磨して、また必要であればポスト14も含めて研磨して平滑表面を形成する。
【0023】次に、封止樹脂18の研磨が終了すると、電子部品50の裏面、つまりウェハ10の裏面を研磨する工程が行われる(工程S18)。図8は、電子部品50の裏面を研磨する工程を説明するための図である。この工程では、図8に示したように、工程S16で研磨が行われた面を下側にして固定治具30に固定する。この固定治具30は図7中の固定平板24と同様に真空吸着するものが好ましい。また、固定治具30は、図7中の固定平板24と同一であってもよい。また、32は研磨装置である。この研磨装置32は、工程S16において封止樹脂18の研磨を行った際に用いた研磨装置26を用いて研磨を行うことができる。
【0024】尚、図8において、理解を容易にするために、工程S16迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号52を付している。この工程では、電子部品52の封止樹脂が印刷された面を下側にして固定治具30に固定してから、研磨装置32によって電子部品52の裏面、つまりウェハ10の裏面を、ウェハ10がほぼ半分の厚さ若しくは任意の厚さになるまで研磨する。
【0025】以上の工程が終了すると、研磨後の電子部品を固定治具30から取り外す訳であるが、研磨後の電子部品は図9に示したようになる。図9は、両面研磨後の電子部品を示す図である。尚、図9においては、両面研磨された電子部品を断面図で示すとともに、符号54を付している。両面研磨された電子部品54は、上述した構成でウェハ10がほぼ半分の厚さになるまで研磨すると、工程S11で形成した溝13が研磨面に現れ、その結果溝13内に充填した封止樹脂18が研磨面に現れる。
【0026】また、電子部品54を図8中の固定治具30から離すと反りが生ずる。この反りは、ポスト14が形成された面に印刷した封止樹脂が硬化する際の収縮に起因するものである。
【0027】次に、上記反りの緩和及び電子部品54を強化するために、工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程が行われる(工程S20)。図10は、工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。図10において、36は、電子部品54を固定する吸着固定平板である。この吸着固定平板36は、両面研磨後の電子部品54には反りが生じており、電子部品54を平坦化するため、及び印刷時に電子部品54動かないよう固定するために用いられる。
【0028】38は、孔版印刷を行うための孔版であり、この孔版38には、電子部品54の裏面を印刷するための孔が形成されている。この孔の直径は、ウェハ10の直径よりも僅かに小さい径である。40は、封止を行う際に用いられる液状の封止樹脂である。この封止樹脂40は硬化後に電子部品54の反りを矯正させるだけの収縮応力をもつものが用いられる。例えば、工程S12でポスト14が形成されたウェハ10の表面を封止する際に用いた封止樹脂18と同一の樹脂を用いる。また、電子部品54の反りは、塗布する封止樹脂40の塗布厚を制御することによっても行える。
【0029】また、電子部品54の反りが矯正できるのであれば、封止樹脂40は封止樹脂18と異なる樹脂を用いても良い。42は、孔版38の面内に往復運動が可能なスキージである。印刷は、工程S12と同様に大気圧下又は真空状態の下で行われるが、パッケージングの信頼性を考えた場合には真空状態の下で行われるのが好ましい。
【0030】印刷を行う際には、まず、ポスト14が形成され、封止樹脂18が印刷されている面を下側にして吸着固定平板36の所定位置に電子部品54を配置する。電子部品54が吸着固定平板36に配置されると、電子部品54は平坦化される。次に、電子部品54の裏面、つまりウェハ10の裏面に孔版38を接触させて配置する。孔版38が所定位置に配置されると、孔版38上に液状の封止樹脂40を滴下し、スキージ42を孔版38に沿って図中符号D2が付された方向へ移動させる。スキージ42を孔版38に沿って移動させることにより、液状の封止樹脂40が孔版38に形成された孔内に流入するとともに、孔内に流入した液状の封止樹脂40の上面が孔版38と同一の高さになり、且つ上面が平坦となる。尚、電子部品54の裏面への封止樹脂40の塗布方法は、孔版印刷に限定されず、他の方法によっても行うことができる。例えば、スプレーコート、スピンコート、金型成型等が挙げられる。
【0031】次に、工程S20で塗布した封止樹脂40を硬化させる工程が行われる(工程S22)。この工程は、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂40を乾燥することにより硬化させる。この封止樹脂40を硬化させると、電子部品34に生じていた反りを矯正することができる。以上の工程を経ることにより、電子部品の表面及び裏面に硬化した封止樹脂18及び封止樹脂40が形成されるのでウェハ10の強度が高まる。工程S22迄の工程を経ることにより、ポスト14が形成された面に封止樹脂18が、裏面に封止樹脂40がそれぞれ印刷された半導体素子12が、複数形成されたウェハ10を得ることができる。
【0032】次に、半導体素子12内部に形成された電子回路と、外部のマザーボード(図示省略)に形成された電子回路とを電気的に接続するための接続ボールを形成する工程が行われる(工程S24)。この工程においては、所定の径を有するハンダボールを、封止樹脂18表面に表れているポスト14上に搭載する(図11参照)。ハンダボール44をポスト14上に搭載するためには、ボールマウンタ(図示省略)を用いて搭載しても良いが、ポスト14のピッチが0.5mm以下になった場合、径が0.3mmより小さいボールが必要となる。従って、この程度にピッチが狭くなった場合には、ボールマウンタを用いてハンダボールを搭載するよりも、所定量のハンダペーストを精度良くポスト14上に積載し、リフロー(図示省略)を通してハンダボール44を形成させた方がより好ましい。この場合、ハンダペーストをポスト14上に搭載するには、所定の孔版及びスキージを用いて印刷により搭載することが好ましい。この際に、ウェハが平滑に維持されていることによってこの工法が可能となるる。
【0033】最後に、電子部品を切断することにより半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程が行われる(工程S26)。図11は、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。図11において、46は、ダイシング装置であり、電子部品56を形成するには、ダイシング装置46を用いて切断によって半導体素子12を個々に分離する。ダイシング装置46によって切断を行う際には、工程S11において形成した溝13のほぼ中央部を切断する。つまりこの工程においては、封止樹脂18のみを切断することによって電子部品56を得ている。このようにして得られた電子部品は、上下及び4側面が全て封止樹脂18と40によって封止されたものとなる。尚、切断は通常のダイシング装置を用いることができるが、レーザを用いたレーザ切断装置を用いても良い。尚、ダイシング装置46の切断刃の厚みは5〜200μm程度であって、溝の幅より薄いものである。図12は、電子部品56の斜視透視図である。
【0034】以上、本発明の一実施形態による電子部品の製造方法について説明した。工程S12及び工程S20においては、封止樹脂18及び封止樹脂40を印刷しているが、これらの工程の後に、印刷した封止樹脂18及び封止樹脂40に混入している気泡を除去する工程を設けても良い。
【0035】以上説明した実施形態によれば、半導体基板の周囲全体が封止樹脂18によって囲まれた電子部品を安価な設備を用いて簡素な工程によって製造することができるため、生産効率が極めて高い。また、半導体基板の周囲全体が封止樹脂18によって囲まれているため、吸湿等の要因の影響を受けないため信頼性が極めて高い。更に、ウェハ10を研磨しているため、極めて薄型であって、全体的に小型のパッケージの電子部品を得ることができる。また、製造される電子部品は直方体の形状であって、6面を平坦化することができるため、マーキングも容易となる。更に、本実施形態によって製造された電子部品は堅牢であるため自動マウンターによってマザーボードに実装することができる。また、ダイシング装置を用いる工程S11においては、ウェハ10のみのダイシングを行い、工程S26においては封止樹脂18,40のみのダイシングを行っている。つまり、ダイシング装置は単一の材料のみを切断しているため、切断刃の損耗が少ない上に、複合材(ウェハ10と封止樹脂18,40)を切断する際に生ずる剥離等の問題が全くない。
【0036】次に、本発明の他の実施形態について説明する。図13は、本発明の他の実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。図13に示した本発明の他の実施形態による電子部品の製造方法と図1に示した本発明の一実施形態による電子部品の製造方法とが異なる点は、図13においては図1に示した工程S11が省略され、図1中の工程S18の次の工程に工程S19を設けた点が異なる。尚、図13と図1とを比較すると、図13には工程S21の処理が設けられ、図1には工程S20の処理が設けられているが、これらの処理は実質的に同一の処理である。
【0037】以下、本発明の他の実施形態について詳細に説明する。尚、以下の説明においては、図1に示した処理と重複する部分については説明を省略する。まず、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハ10(図2参照)上にポスト14を形成する工程が行われる(工程S10)。ポスト14が形成された後のウェハ10の断面は図2に示したものと同様である。
【0038】次に、ポスト14を形成した面を封止樹脂を用いて印刷する処理が行われる(工程S12)。図14は、本発明の他の実施形態において、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。図14と図5とを比較すると、ウェハ10に溝が形成されているか否かにおいてのみ異なる。また、封止樹脂18の上面の位置を規定する孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係は、図6を用いて説明した関係と同様である。
【0039】次に、工程S12において印刷した樹脂を硬化する工程が行われ(工程S14)、次いで、ウェハ10に対して封止樹脂18が印刷された面を研磨して、封止樹脂18に埋もれたポスト14を磨き出す工程が行われる(工程S16)。図15は、本発明の他の実施形態において、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。尚、図15においては理解を容易にするために、工程S14迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号60を付している。
【0040】次に、封止樹脂18の研磨が終了すると、電子部品60の裏面、つまりウェハ10の裏面を研磨する工程が行われる(工程S18)。図16は、本発明の他の実施形態において、電子部品60の裏面を研磨する工程を説明するための図である。尚、図16において、理解を容易にするために、工程S16迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号62を付している。この工程では、電子部品62の封止樹脂が印刷された面を下側にして固定治具30に固定してから、研磨装置32によって電子部品62の裏面、つまりウェハ10の裏面を、ウェハ10がほぼ半分の厚さ若しくは任意の厚さになるまで研磨する。
【0041】以上の工程が終了すると、研磨後のウェハ10の裏面側からポスト14が形成された面に印刷した封止樹脂18に至る溝を形成する工程が行われる(工程S19)。本発明の他の実施形態による電子部品の製造方法を示す図13と本発明の一実施形態による電子部品の製造方法を示す図1とを単純に比較すると、図1中の工程S11を工程S18の次に移動したものが、図13に示したものとなる。図1に示した製造方法では全工程の内の先の方の工程において溝を形成しているため、ウェハ10の厚みが部分的に薄くなり、溝を形成した後の工程の処理を行う際にウェハ10が割れてしまう虞がある。本実施形態では、この不具合を解消するために、ウェハ10に溝を形成する工程をなるべる後工程となるようにしている。
【0042】図17は、本発明の他の実施形態において、ウェハ10の裏面側から溝を形成する様子を説明する断面図である。溝13,13,…を形成するには、図4に示したダイシング装置15と同様の装置が用いられる。この溝13,13,…は、工程S12において塗布した封止樹脂に至るまで形成される。ここで、ウェハ10の厚みを薄くしてからダイシング装置15によって溝を形成しているので、ダイシング装置15の刃の摩耗が少ない。また、溝13,13,…が形成されたウェハ10は、図17においては封止樹脂18が塗布されているため、図4に示したウェハ10よりも全体として強度が増している。よって、ウェハ10が割れにくく、後工程の処理において好適である。尚、図17においては、理解を容易にするために、工程S19迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号64を付している。
【0043】工程S19において、溝13,13,…が形成されると、次に、溝13,13,…を形成した面に樹脂を塗布する工程が行われる(工程S21)。図18は、本発明の他の実施形態において、工程S19で溝が形成された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。樹脂を塗布する場合には、図10を用いて説明した場合と同様に、吸着固定平板36によって電子部品64を吸着固定し、孔版38及びスキージ42を用いて封止樹脂40の印刷を行う。尚、電子部品64の裏面への封止樹脂40の塗布方法は、孔版印刷に限定されず、他の方法によっても行うことができる。例えば、スプレーコート、スピンコート、金型成型等が挙げられる。
【0044】次に、工程S21で塗布した封止樹脂40を、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂40を乾燥することにより硬化させる工程が行われる(工程S22)。尚、上記工程S21の印刷時には圧力差を用いて封止樹脂18を印刷することが好ましいが、溝13,13,…内における封止樹脂18の充填性をより高いものとするために、印刷後に行われるこの工程において、大気圧よりも高い圧力をかけて封止樹脂18を硬化させる、いわゆる加圧硬化を行うことが好ましい。封止樹脂18を硬化させる場合には、熱風乾燥機の温度を100〜150℃に設定するとともに、乾燥時間を1〜3時間に設定して開始するが、乾燥を開始する際に、加える圧力を5×105〜2×106paに設定して少なくとも封止樹脂18がゲル化するまでの間加圧硬化を行う。
【0045】以上の工程を行うことにより、電子部品の表面及び裏面に硬化した封止樹脂18及び封止樹脂40が形成されるのでウェハ10の強度が高まる。次に、半導体素子12内部に形成された電子回路と、外部のマザーボード(図示省略)に形成された電子回路とを電気的に接続するための接続ボールを形成する工程が行われる(工程S24)。この工程は前述した本発明の一実施形態と同様である。
【0046】最後に、電子部品を切断することにより半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程が行われる(工程S26)。図19は、本発明の他の実施形態において、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。この工程では、図11に示したダイシング装置46と同様の装置を用いて切断によって半導体素子12を個々に分離する。図19から分かるように、最終的に形成される電子部品56は、図11及び図12に示した電子部品と同様の電子部品である。
【0047】以上説明した本発明の他の実施形態によれば、前述した本発明の一実施形態と同様の作用効果が得られる上に、ポスト14を形成した面に封止樹脂18を塗布し、ウェハ10の裏面を研磨した後に溝を形成しているので、ウェハ10の全体の強度が高まり、後の工程においてウェハ10が割れてしまうことを防止することができる。
【0048】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば、ウェハを研磨する工程を有しているので、より厚さの薄い電子部品を製造することができるという効果がある。更に、電子回路を半導体基板内に作り込み、封止する際に研磨するようにしているので、半導体基板が割れてしまうことがなく薄い電子回路を製造することができるという効果がある。また、ポストが形成された面のみならず、半導体基板の裏面にも封止樹脂を塗布するようにしているので、半導体基板に反りが生じていない状態で分離工程を行えるので、工程不良率を飛躍的に改善できる。また、ポストが形成された面のみならず、半導体基板の裏面にも封止樹脂を塗布するようにしているので、電子回路が形成された面の保護はもとより、裏面も保護されており、表面実装時の外的圧力にも充分耐え得ることのできる高い信頼性を有する電子部品を製造することができるという効果がある。更に、電子回路が形成されている半導体基板の周囲全てを封止樹脂によって封止された電子部品を製造することができるため、吸湿等の周囲の雰囲気の影響を受けないため、電子部品の信頼性を極めて高くすることができるという効果がある。また、封止樹脂を半導体基板の一方の面に塗布した後に半導体基板の裏面から溝を形成しているので、封止樹脂が塗布されている分半導体基板全体の強度が高まり、後の工程において半導体基板割れの虞がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【図2】 プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハの一例を示す斜視図である。
【図3】 ウェハ10の断面図である。
【図4】 ポスト14が形成された面に溝を形成する工程を説明するための図である
【図5】 ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。
【図6】 孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係を説明するための図である。
【図7】 ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。
【図8】 電子部品50の裏面を研磨する工程を説明するための図である。
【図9】 両面研磨後の電子部品を示す図である。
【図10】 工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。
【図11】 半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。
【図12】 電子部品56の斜視透視図である。
【図13】 本発明の他の実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【図14】 本発明の他の実施形態において、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。
【図15】 本発明の他の実施形態において、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。
【図16】 本発明の他の実施形態において、電子部品60の裏面を研磨する工程を説明するための図である。
【図17】 本発明の他の実施形態において、ウェハ10の裏面側から溝を形成する様子を説明する断面図である。
【図18】 本発明の他の実施形態において、工程S19で溝が形成された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。
【図19】 本発明の他の実施形態において、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。
【符号の説明】
10 ウェハ(半導体基板)
13 溝
14 ポスト
18 封止樹脂
38 孔版
40 封止樹脂
44 ハンダボール(接続ボール)
56 電子部品
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイオード、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の電子部品の製造方法に係り、特に携帯電話、パソコン(パーソナルコンピュータ)、ノート型パソコン、コンピューターゲーム機、腕時計、電子オルゴール、ナビゲーションシステム、小型テレビ、カメラモジュール等の軽薄短小化を求められる用途に使用される電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般的に用いられていたIC等の電子部品は、電子回路が形成された半導体素子をリードフレーム上に搭載し、その電子回路の電極と外部接続用の接続端子とをワイヤーボンド等によって接続し、その後に金型内にて溶融した固形のエポキシ樹脂封止材を硬化させることにより成型される。近年、携帯電話等のような小型・軽量が求められる機器の普及率が高くなっている。このような機器では、まず筐体のサイズ、重量、デザイン等の仕様が決められてから、その仕様に収まるように電子回路、アンテナ等のを設計するのが一般化している。このような用途を有する機器に用いられる電子部品は、その外形寸法や重量が極めて制限される。
【0003】このように、近年の電子部品の軽薄短小化につれて、当該電子部品の封止を行う際に、電子回路が形成された半導体素子やフィルムをインターポーザとして用い、このインターポーザ上にワイヤーボンド又はバンプにより接続搭載した後に上記の金型成型により封止したり、液状のエポキシ樹脂封止材で封止する技術が案出されている。この技術により作成された電子回路には、内部に形成された電子回路とマザーボードに形成された電子回路とを接続するために、電子部品に形成された電子回路と電気的に導通したハンダボールを形成した形態のBGA(Ball Grid Array)や更に電子部品の小型化を進めたCSP(Chip Size Package)のパッケージ形態へと移行している。
【0004】更に、近年、電子部品の小型化を進歩させたウェハサイズレベルのパッケージを得る技術が案出されている。この技術では、ウェハそのものにポストを形成して、ウェハ表面にプレーナ技術により形成された配線上に樹脂で保護コートを行い、上記ポスト上にハンダボールを形成させた後、ダイシングにより個々に切断してウェハサイズレベルのパッケージを得ている。尚、本明細書中で用いる用語「ポスト」とは、電子部品に形成された電子回路と、外部のマザーボード等に形成された電子回路とを電気的に接続するものをいう。
【0005】この技術によれば、電子部品のパッケージの大きさは半導体素子そのものの大きさになり、電子部品の外形寸法は最小となる。また、電子部品の厚さも封止樹脂層がポストの高さ及び半導体基板の厚みを合わせた厚さに制限されるため極めて薄くなり、接続用のハンダボールと合わせた全体の厚さも従来の電子部品の厚さよりも極めて小さく抑えられる。この技術の詳細については、例えば特開平10−79362号公報を参照されたい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年ウェアラブルコンピュータなるものが考えられている。このウェアラブルコンピュータは、小型化されたコンピュータを衣服のように人間に取り付けて使用するコンピュータである。このような電子機器を実現するために、今後、更に電子機器の小型・軽量化が要求されると考えられる。この小型・軽量化の要請に対して、更に電子部品の小型化を図るためには、ウェハ自体の厚みを薄くするのが1つの方法であると考えられる。
【0007】現在の半導体素子は、シリコン等のウェハを用いるのが一般的である。このウェハの厚さは400ミクロン(0.4mm)以上ある。一般には、6インチのウェハでは厚さは625ミクロン、8インチのウェハでは厚さは725ミクロンである。この程度の厚さを有するウェハを用いるのは、シリコン等は厚さが薄いとガラスのように脆い物質であるためである。つまり、プレーナ技術では、半導体基板の一部をn型又はp型不純物を添加する工程、電子回路のパターンを形成するためにレジストを塗布してレジストを現像する工程、配線工程等の種々の工程を経て半導体基板上に電子回路を形成するが、あまり薄いウェハを用いると、これらの工程作業中にウェハが割れてしまうからである。従って、厚さが0.4mmより薄いウェハを取り扱うことは実質的に不可能である。更に、プレーナ技術によりウェハ表面に電子回路を形成した後、ウェハ裏面を研磨して、厚さが400ミクロンより薄いウェハを作成し、これにバンプの形成及び封止材を塗布する試みもあるが、これらの工程においてもやはり薄いウェハを取り扱うことは困難である。
【0008】しかし、ウェハは一般に実質的には、電子回路が形成されたウェハ表面から20ミクロン(0.02mm)程度の厚みがあれば、電子回路として問題なく機能するといわれている。従って、電子回路が形成されたウェハの厚さを0.4mmより薄くすることができれば、電子部品を更に小型化する際に極めて有利である。
【0009】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体基板を薄くすることにより更に電子部品の小型化を図るとともに、電子回路として何らの問題もなく動作し、更に携帯電子機器に用いられた場合でも充分耐えうる堅牢性を有するとともに高い信頼性を有する電子部品を製造することのできる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の第1の観点は、ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を前記溝が露出するまで研磨する裏面研磨工程と、研磨後の前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴している。また、本発明の第1の観点は、前記第1塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第1の観点は、前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴としている。更に、本発明の第2の観点は、ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を、前記半導体基板が所定の厚みとなるまで研磨する裏面研磨工程と、研磨を行った前記半導体基板の裏面から、前記第1塗布工程で塗布した封止樹脂に至る溝を形成する溝形成工程と、前記溝を形成した前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴としている。また、本発明の第2の観点は、前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電子回路の製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【0012】まず、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハ上にポストを形成する工程が行われる(工程S10)。図2は、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハの一例を示す斜視図である。図2に示されたように、ウェハ10の表面には、半導体素子12が形成されている。通常、1つのウェハ10上には同一の電子回路が形成された半導体素子12が複数形成されている。ウェハ10の厚みは、0.4mm以上である。半導体素子12各々の表面は、例えばシリコン酸化膜等による絶縁膜が形成されているが、半導体素子12に形成された電子回路と外部の電子回路とを接続する電極パッドが形成された箇所は、シリコン酸化膜がエッチング等により除去されて剥き出しになっている。
【0013】上記ポストはシリコン酸化膜がエッチング等に除去されて剥き出しになっている箇所に形成される。図3は、ウェハ10の断面図である。図3に示されたように、ウェハ10の半導体素子12には複数のポスト14が形成されている。ポスト14の形成方法は、特に制限はないが、例えば半田ボールを転写法を用いて配設する。
【0014】ポスト14が形成されると、次にポスト14が形成された面に溝を形成する工程が行われる(工程S11)。図4は、ポスト14が形成された面に溝を形成する工程を説明するための図であり、ウェハ10に関しては図3と同様に断面を示している。図4において、15は溝を形成するためのダイシング装置であり、本実施形態においては、例えば0.05〜0.4mmの幅を有する溝を形成するものが用いられる。前述したように、1つのウェハ10上には半導体素子12が多数形成されているため、上記溝は個々の半導体素子の周囲を取り囲むように形成される。図4において、13,13,…はポスト14が形成されたウェハ10の面に形成された溝を示している。この溝13,13,…の深さはウェハ10の厚みの半分程度からウェハを完全に切断するまで(この場合は、裏面に樹脂硬化温度に耐え得る粘着性のシートに貼りつけられている)に設定され、例えば、ウェハ10の厚みが0.6mmである場合には、幅が0.05〜0.4mmであって、深さが0.3〜0.6mmの溝が形成される。ただし、図面では半分の場合で説明する。
【0015】溝13,13,…が形成されると、次にポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程が行われる(工程S12)。図5は、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。図5において、16は、孔版印刷を行うための孔版であり、この孔版には、ウェハ10に形成された半導体素子12を一度に印刷するための孔が形成されている。この孔の直径は、ウェハ10の直径よりも僅かに小さい径である。18は、封止を行う際に用いられる液状の封止樹脂である。この液状の封止樹脂18は、硬化後にウェハ10の反りが極めて少なくなるよう抑えられるものが好ましい。
【0016】例えば、直径が8インチであり、厚さが400μmのウェハの表面に液状の封止樹脂を塗布し、この液状の封止樹脂を硬化させたときに、ウェハ10の反りが1mm以下であることが好ましい。液状の封止樹脂18としては、樹脂硬化成分中にシリカ粉末が80重量%以上含まれ、硬化収縮率が0.1%以下であり、熱膨張係数が12ppm以下である日本レック(株)のNPR−785Nが最良である。また、20は、孔版16の面内に往復運動が可能なスキージである。
【0017】印刷を行う際には、まず、ウェハ10の上面に孔版16を接触させて配置する。このとき、孔版16に形成された孔が半導体素子12の上方に位置するよう孔版16を配置する。つまり、孔版16が半導体素子12を覆わないよう孔版16を配置する。次に、孔版16上に液状の封止樹脂18を滴下し、スキージ20を孔版16に沿って図中符号D1が付された方法へ移動させる。スキージ20を孔版16に沿って移動させることにより、液状の封止樹脂18が孔版16に形成された孔内に流入するとともに、孔内に流入した液状の封止樹脂18の上面が孔版16と同一の高さになり、且つ上面が平坦となる。
【0018】次に、液状の封止樹脂18の上面の位置を規定する孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係について説明する。図6は、孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係を説明するための図である。本実施形態では、孔版16の厚さがポスト14の高さよりも厚いものに制限されない。例えば図6(a)は、ポスト14の高さより厚さが厚い孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図であり、図6(b)は、ポスト14の高さと同程度の厚さを有する孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図であり、図6(c)は、ポスト14の高さより厚さが薄い孔版16を用いて液状の封止樹脂18を封止した後の様子を示す断面図である。
【0019】図6(c)に示したように、ポスト14の高さよりも厚さが薄い孔版16を用いる場合には、スキージ20は弾性変形するもの(例えばゴム製のもの)を用いることによりポスト14が突出し、しかもポストの周囲に封止樹脂が塗られるようにする。尚、工程S12の工程でなされる印刷は、1回の印刷のみに制限される訳ではなく、1つのウェハに対して複数回行っても良い。また、封止樹脂18の印刷は、大気圧下で行うものでも真空状態におけるものでも良いが、真空状態において印刷する方が好ましい。大気圧下で印刷を行う場合には、加熱しながら印刷を行うことが好ましい。なぜならば、印刷を行う際に封止樹脂18に巻き込まれる気泡が抜け易くなるからである。また、液状の封止樹脂18の印刷を行う際には、圧力差を用いて封止樹脂18を溝13,13,…内に充填することができる真空印刷機を用いるのが好ましい。その理由は、ウェハ10に形成された溝13,13,…は前述したように、例えば幅が0.05〜0.4mmであって、深さが0.3〜0.6mmであり、液状の封止樹脂18の印刷のためには幅が狭く、しかも深さが深い。よって、大気圧下において印刷を行った場合には、溝の底部に封止樹脂18の未充填部分が生ずる可能性が高いためである。
【0020】次に、工程S12において印刷した樹脂を硬化する工程が行われる(工程S14)。この工程は、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂18を乾燥することにより硬化させる。尚、印刷時には上述のように圧力差を用いて封止樹脂18を印刷することが好ましいが、溝13,13,…内における封止樹脂18の充填性をより高いものとするために、印刷後に行われるこの工程において、大気圧よりも高い圧力をかけて封止樹脂18を硬化させる、いわゆる加圧硬化を行うことが好ましい。封止樹脂18を硬化させる場合には、熱風乾燥機の温度を100〜150℃に設定するとともに、乾燥時間を1〜3時間に設定して開始するが、乾燥を開始する際に、加える圧力を5×105〜2×106paに設定して少なくとも封止樹脂18がゲル化するまでの間加圧硬化を行う。以上の工程を経ることにより、封止樹脂18の硬化した皮膜によって回路の保護が図れるとともにポストが補強され、更にウェハ10の強度が高まる。
【0021】次に、ウェハ10に対して封止樹脂18が印刷された面を研磨して、封止樹脂18に埋もれたポスト14を磨き出す工程が行われる(工程S16)。図7は、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。尚、図7においては理解を容易にするために、工程S14迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号50を付している。
【0022】図7に示したように、電子部品50は、封止樹脂18の印刷された面が上面となるよう固定平板24上に固定して載置される。この固定平板24は、研磨の際に固定平板24上で電子部品50が動かないよう、電子部品50を真空吸着するものが好ましい。図7中において、26は研磨装置である。この研磨装置は、通常のウェハ研磨装置が使用できる。この工程では、電子部品50を固定平板24に固定してから、研磨装置26によって封止樹脂18を研磨して、また必要であればポスト14も含めて研磨して平滑表面を形成する。
【0023】次に、封止樹脂18の研磨が終了すると、電子部品50の裏面、つまりウェハ10の裏面を研磨する工程が行われる(工程S18)。図8は、電子部品50の裏面を研磨する工程を説明するための図である。この工程では、図8に示したように、工程S16で研磨が行われた面を下側にして固定治具30に固定する。この固定治具30は図7中の固定平板24と同様に真空吸着するものが好ましい。また、固定治具30は、図7中の固定平板24と同一であってもよい。また、32は研磨装置である。この研磨装置32は、工程S16において封止樹脂18の研磨を行った際に用いた研磨装置26を用いて研磨を行うことができる。
【0024】尚、図8において、理解を容易にするために、工程S16迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号52を付している。この工程では、電子部品52の封止樹脂が印刷された面を下側にして固定治具30に固定してから、研磨装置32によって電子部品52の裏面、つまりウェハ10の裏面を、ウェハ10がほぼ半分の厚さ若しくは任意の厚さになるまで研磨する。
【0025】以上の工程が終了すると、研磨後の電子部品を固定治具30から取り外す訳であるが、研磨後の電子部品は図9に示したようになる。図9は、両面研磨後の電子部品を示す図である。尚、図9においては、両面研磨された電子部品を断面図で示すとともに、符号54を付している。両面研磨された電子部品54は、上述した構成でウェハ10がほぼ半分の厚さになるまで研磨すると、工程S11で形成した溝13が研磨面に現れ、その結果溝13内に充填した封止樹脂18が研磨面に現れる。
【0026】また、電子部品54を図8中の固定治具30から離すと反りが生ずる。この反りは、ポスト14が形成された面に印刷した封止樹脂が硬化する際の収縮に起因するものである。
【0027】次に、上記反りの緩和及び電子部品54を強化するために、工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程が行われる(工程S20)。図10は、工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。図10において、36は、電子部品54を固定する吸着固定平板である。この吸着固定平板36は、両面研磨後の電子部品54には反りが生じており、電子部品54を平坦化するため、及び印刷時に電子部品54動かないよう固定するために用いられる。
【0028】38は、孔版印刷を行うための孔版であり、この孔版38には、電子部品54の裏面を印刷するための孔が形成されている。この孔の直径は、ウェハ10の直径よりも僅かに小さい径である。40は、封止を行う際に用いられる液状の封止樹脂である。この封止樹脂40は硬化後に電子部品54の反りを矯正させるだけの収縮応力をもつものが用いられる。例えば、工程S12でポスト14が形成されたウェハ10の表面を封止する際に用いた封止樹脂18と同一の樹脂を用いる。また、電子部品54の反りは、塗布する封止樹脂40の塗布厚を制御することによっても行える。
【0029】また、電子部品54の反りが矯正できるのであれば、封止樹脂40は封止樹脂18と異なる樹脂を用いても良い。42は、孔版38の面内に往復運動が可能なスキージである。印刷は、工程S12と同様に大気圧下又は真空状態の下で行われるが、パッケージングの信頼性を考えた場合には真空状態の下で行われるのが好ましい。
【0030】印刷を行う際には、まず、ポスト14が形成され、封止樹脂18が印刷されている面を下側にして吸着固定平板36の所定位置に電子部品54を配置する。電子部品54が吸着固定平板36に配置されると、電子部品54は平坦化される。次に、電子部品54の裏面、つまりウェハ10の裏面に孔版38を接触させて配置する。孔版38が所定位置に配置されると、孔版38上に液状の封止樹脂40を滴下し、スキージ42を孔版38に沿って図中符号D2が付された方向へ移動させる。スキージ42を孔版38に沿って移動させることにより、液状の封止樹脂40が孔版38に形成された孔内に流入するとともに、孔内に流入した液状の封止樹脂40の上面が孔版38と同一の高さになり、且つ上面が平坦となる。尚、電子部品54の裏面への封止樹脂40の塗布方法は、孔版印刷に限定されず、他の方法によっても行うことができる。例えば、スプレーコート、スピンコート、金型成型等が挙げられる。
【0031】次に、工程S20で塗布した封止樹脂40を硬化させる工程が行われる(工程S22)。この工程は、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂40を乾燥することにより硬化させる。この封止樹脂40を硬化させると、電子部品34に生じていた反りを矯正することができる。以上の工程を経ることにより、電子部品の表面及び裏面に硬化した封止樹脂18及び封止樹脂40が形成されるのでウェハ10の強度が高まる。工程S22迄の工程を経ることにより、ポスト14が形成された面に封止樹脂18が、裏面に封止樹脂40がそれぞれ印刷された半導体素子12が、複数形成されたウェハ10を得ることができる。
【0032】次に、半導体素子12内部に形成された電子回路と、外部のマザーボード(図示省略)に形成された電子回路とを電気的に接続するための接続ボールを形成する工程が行われる(工程S24)。この工程においては、所定の径を有するハンダボールを、封止樹脂18表面に表れているポスト14上に搭載する(図11参照)。ハンダボール44をポスト14上に搭載するためには、ボールマウンタ(図示省略)を用いて搭載しても良いが、ポスト14のピッチが0.5mm以下になった場合、径が0.3mmより小さいボールが必要となる。従って、この程度にピッチが狭くなった場合には、ボールマウンタを用いてハンダボールを搭載するよりも、所定量のハンダペーストを精度良くポスト14上に積載し、リフロー(図示省略)を通してハンダボール44を形成させた方がより好ましい。この場合、ハンダペーストをポスト14上に搭載するには、所定の孔版及びスキージを用いて印刷により搭載することが好ましい。この際に、ウェハが平滑に維持されていることによってこの工法が可能となるる。
【0033】最後に、電子部品を切断することにより半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程が行われる(工程S26)。図11は、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。図11において、46は、ダイシング装置であり、電子部品56を形成するには、ダイシング装置46を用いて切断によって半導体素子12を個々に分離する。ダイシング装置46によって切断を行う際には、工程S11において形成した溝13のほぼ中央部を切断する。つまりこの工程においては、封止樹脂18のみを切断することによって電子部品56を得ている。このようにして得られた電子部品は、上下及び4側面が全て封止樹脂18と40によって封止されたものとなる。尚、切断は通常のダイシング装置を用いることができるが、レーザを用いたレーザ切断装置を用いても良い。尚、ダイシング装置46の切断刃の厚みは5〜200μm程度であって、溝の幅より薄いものである。図12は、電子部品56の斜視透視図である。
【0034】以上、本発明の一実施形態による電子部品の製造方法について説明した。工程S12及び工程S20においては、封止樹脂18及び封止樹脂40を印刷しているが、これらの工程の後に、印刷した封止樹脂18及び封止樹脂40に混入している気泡を除去する工程を設けても良い。
【0035】以上説明した実施形態によれば、半導体基板の周囲全体が封止樹脂18によって囲まれた電子部品を安価な設備を用いて簡素な工程によって製造することができるため、生産効率が極めて高い。また、半導体基板の周囲全体が封止樹脂18によって囲まれているため、吸湿等の要因の影響を受けないため信頼性が極めて高い。更に、ウェハ10を研磨しているため、極めて薄型であって、全体的に小型のパッケージの電子部品を得ることができる。また、製造される電子部品は直方体の形状であって、6面を平坦化することができるため、マーキングも容易となる。更に、本実施形態によって製造された電子部品は堅牢であるため自動マウンターによってマザーボードに実装することができる。また、ダイシング装置を用いる工程S11においては、ウェハ10のみのダイシングを行い、工程S26においては封止樹脂18,40のみのダイシングを行っている。つまり、ダイシング装置は単一の材料のみを切断しているため、切断刃の損耗が少ない上に、複合材(ウェハ10と封止樹脂18,40)を切断する際に生ずる剥離等の問題が全くない。
【0036】次に、本発明の他の実施形態について説明する。図13は、本発明の他の実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。図13に示した本発明の他の実施形態による電子部品の製造方法と図1に示した本発明の一実施形態による電子部品の製造方法とが異なる点は、図13においては図1に示した工程S11が省略され、図1中の工程S18の次の工程に工程S19を設けた点が異なる。尚、図13と図1とを比較すると、図13には工程S21の処理が設けられ、図1には工程S20の処理が設けられているが、これらの処理は実質的に同一の処理である。
【0037】以下、本発明の他の実施形態について詳細に説明する。尚、以下の説明においては、図1に示した処理と重複する部分については説明を省略する。まず、プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハ10(図2参照)上にポスト14を形成する工程が行われる(工程S10)。ポスト14が形成された後のウェハ10の断面は図2に示したものと同様である。
【0038】次に、ポスト14を形成した面を封止樹脂を用いて印刷する処理が行われる(工程S12)。図14は、本発明の他の実施形態において、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。図14と図5とを比較すると、ウェハ10に溝が形成されているか否かにおいてのみ異なる。また、封止樹脂18の上面の位置を規定する孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係は、図6を用いて説明した関係と同様である。
【0039】次に、工程S12において印刷した樹脂を硬化する工程が行われ(工程S14)、次いで、ウェハ10に対して封止樹脂18が印刷された面を研磨して、封止樹脂18に埋もれたポスト14を磨き出す工程が行われる(工程S16)。図15は、本発明の他の実施形態において、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。尚、図15においては理解を容易にするために、工程S14迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号60を付している。
【0040】次に、封止樹脂18の研磨が終了すると、電子部品60の裏面、つまりウェハ10の裏面を研磨する工程が行われる(工程S18)。図16は、本発明の他の実施形態において、電子部品60の裏面を研磨する工程を説明するための図である。尚、図16において、理解を容易にするために、工程S16迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号62を付している。この工程では、電子部品62の封止樹脂が印刷された面を下側にして固定治具30に固定してから、研磨装置32によって電子部品62の裏面、つまりウェハ10の裏面を、ウェハ10がほぼ半分の厚さ若しくは任意の厚さになるまで研磨する。
【0041】以上の工程が終了すると、研磨後のウェハ10の裏面側からポスト14が形成された面に印刷した封止樹脂18に至る溝を形成する工程が行われる(工程S19)。本発明の他の実施形態による電子部品の製造方法を示す図13と本発明の一実施形態による電子部品の製造方法を示す図1とを単純に比較すると、図1中の工程S11を工程S18の次に移動したものが、図13に示したものとなる。図1に示した製造方法では全工程の内の先の方の工程において溝を形成しているため、ウェハ10の厚みが部分的に薄くなり、溝を形成した後の工程の処理を行う際にウェハ10が割れてしまう虞がある。本実施形態では、この不具合を解消するために、ウェハ10に溝を形成する工程をなるべる後工程となるようにしている。
【0042】図17は、本発明の他の実施形態において、ウェハ10の裏面側から溝を形成する様子を説明する断面図である。溝13,13,…を形成するには、図4に示したダイシング装置15と同様の装置が用いられる。この溝13,13,…は、工程S12において塗布した封止樹脂に至るまで形成される。ここで、ウェハ10の厚みを薄くしてからダイシング装置15によって溝を形成しているので、ダイシング装置15の刃の摩耗が少ない。また、溝13,13,…が形成されたウェハ10は、図17においては封止樹脂18が塗布されているため、図4に示したウェハ10よりも全体として強度が増している。よって、ウェハ10が割れにくく、後工程の処理において好適である。尚、図17においては、理解を容易にするために、工程S19迄の工程が行われて製造された電子部品のみを断面図で表し、符号64を付している。
【0043】工程S19において、溝13,13,…が形成されると、次に、溝13,13,…を形成した面に樹脂を塗布する工程が行われる(工程S21)。図18は、本発明の他の実施形態において、工程S19で溝が形成された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。樹脂を塗布する場合には、図10を用いて説明した場合と同様に、吸着固定平板36によって電子部品64を吸着固定し、孔版38及びスキージ42を用いて封止樹脂40の印刷を行う。尚、電子部品64の裏面への封止樹脂40の塗布方法は、孔版印刷に限定されず、他の方法によっても行うことができる。例えば、スプレーコート、スピンコート、金型成型等が挙げられる。
【0044】次に、工程S21で塗布した封止樹脂40を、例えば熱風乾燥機(図示省略)によって封止樹脂40を乾燥することにより硬化させる工程が行われる(工程S22)。尚、上記工程S21の印刷時には圧力差を用いて封止樹脂18を印刷することが好ましいが、溝13,13,…内における封止樹脂18の充填性をより高いものとするために、印刷後に行われるこの工程において、大気圧よりも高い圧力をかけて封止樹脂18を硬化させる、いわゆる加圧硬化を行うことが好ましい。封止樹脂18を硬化させる場合には、熱風乾燥機の温度を100〜150℃に設定するとともに、乾燥時間を1〜3時間に設定して開始するが、乾燥を開始する際に、加える圧力を5×105〜2×106paに設定して少なくとも封止樹脂18がゲル化するまでの間加圧硬化を行う。
【0045】以上の工程を行うことにより、電子部品の表面及び裏面に硬化した封止樹脂18及び封止樹脂40が形成されるのでウェハ10の強度が高まる。次に、半導体素子12内部に形成された電子回路と、外部のマザーボード(図示省略)に形成された電子回路とを電気的に接続するための接続ボールを形成する工程が行われる(工程S24)。この工程は前述した本発明の一実施形態と同様である。
【0046】最後に、電子部品を切断することにより半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程が行われる(工程S26)。図19は、本発明の他の実施形態において、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。この工程では、図11に示したダイシング装置46と同様の装置を用いて切断によって半導体素子12を個々に分離する。図19から分かるように、最終的に形成される電子部品56は、図11及び図12に示した電子部品と同様の電子部品である。
【0047】以上説明した本発明の他の実施形態によれば、前述した本発明の一実施形態と同様の作用効果が得られる上に、ポスト14を形成した面に封止樹脂18を塗布し、ウェハ10の裏面を研磨した後に溝を形成しているので、ウェハ10の全体の強度が高まり、後の工程においてウェハ10が割れてしまうことを防止することができる。
【0048】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれば、ウェハを研磨する工程を有しているので、より厚さの薄い電子部品を製造することができるという効果がある。更に、電子回路を半導体基板内に作り込み、封止する際に研磨するようにしているので、半導体基板が割れてしまうことがなく薄い電子回路を製造することができるという効果がある。また、ポストが形成された面のみならず、半導体基板の裏面にも封止樹脂を塗布するようにしているので、半導体基板に反りが生じていない状態で分離工程を行えるので、工程不良率を飛躍的に改善できる。また、ポストが形成された面のみならず、半導体基板の裏面にも封止樹脂を塗布するようにしているので、電子回路が形成された面の保護はもとより、裏面も保護されており、表面実装時の外的圧力にも充分耐え得ることのできる高い信頼性を有する電子部品を製造することができるという効果がある。更に、電子回路が形成されている半導体基板の周囲全てを封止樹脂によって封止された電子部品を製造することができるため、吸湿等の周囲の雰囲気の影響を受けないため、電子部品の信頼性を極めて高くすることができるという効果がある。また、封止樹脂を半導体基板の一方の面に塗布した後に半導体基板の裏面から溝を形成しているので、封止樹脂が塗布されている分半導体基板全体の強度が高まり、後の工程において半導体基板割れの虞がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【図2】 プレーナ技術により電子回路が形成されたウェハの一例を示す斜視図である。
【図3】 ウェハ10の断面図である。
【図4】 ポスト14が形成された面に溝を形成する工程を説明するための図である
【図5】 ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。
【図6】 孔版16の厚さとポスト14の高さとの関係を説明するための図である。
【図7】 ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。
【図8】 電子部品50の裏面を研磨する工程を説明するための図である。
【図9】 両面研磨後の電子部品を示す図である。
【図10】 工程S18で研磨された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。
【図11】 半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。
【図12】 電子部品56の斜視透視図である。
【図13】 本発明の他の実施形態による電子回路の製造方法の工程手順を示す図である。
【図14】 本発明の他の実施形態において、ポスト14が形成された面側に封止樹脂層を形成する工程を説明するための図である。
【図15】 本発明の他の実施形態において、ポスト14を研磨により磨き出す工程を説明する図である。
【図16】 本発明の他の実施形態において、電子部品60の裏面を研磨する工程を説明するための図である。
【図17】 本発明の他の実施形態において、ウェハ10の裏面側から溝を形成する様子を説明する断面図である。
【図18】 本発明の他の実施形態において、工程S19で溝が形成された面に対して樹脂を塗布する工程を説明するための図である。
【図19】 本発明の他の実施形態において、半導体素子12を個々に分離して電子部品56を形成する工程を説明する図である。
【符号の説明】
10 ウェハ(半導体基板)
13 溝
14 ポスト
18 封止樹脂
38 孔版
40 封止樹脂
44 ハンダボール(接続ボール)
56 電子部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を前記溝が露出するまで研磨する裏面研磨工程と、研磨後の前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】 前記第1塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】 前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】 前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】 前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を、前記半導体基板が所定の厚みとなるまで研磨する裏面研磨工程と、研磨を行った前記半導体基板の裏面から、前記第1塗布工程で塗布した封止樹脂に至る溝を形成する溝形成工程と、前記溝を形成した前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】 前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項6記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】 前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】 前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項1】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝が形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を前記溝が露出するまで研磨する裏面研磨工程と、研磨後の前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】 前記第1塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】 前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】 前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】 前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】 ポストが形成された半導体基板の、当該ポストが形成された面に封止樹脂を塗布する第1塗布工程と、前記半導体基板の裏面を、前記半導体基板が所定の厚みとなるまで研磨する裏面研磨工程と、研磨を行った前記半導体基板の裏面から、前記第1塗布工程で塗布した封止樹脂に至る溝を形成する溝形成工程と、前記溝を形成した前記半導体基板の裏面に封止樹脂を塗布する第2塗布工程と、前記溝の部分に充填された前記封止樹脂を切断して個々の電子部品に分離する分離工程とを有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】 前記第2塗布工程によって塗布された封止樹脂を加圧硬化させる硬化工程を更に有することを特徴とする請求項6記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】 前記裏面研磨工程前に前記封止樹脂が塗布された面を研磨する表面研磨工程を更に有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】 前記分離工程前に前記ポストに対して接続ボールを形成する接続ボール形成工程を更に有することを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図13】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図13】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2001−274182(P2001−274182A)
【公開日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−92316(P2000−92316)
【出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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