説明

電子部品の製造方法

【課題】 電子部品を破壊することなく内部クラックを簡便に検出することができ、製造歩留まりを向上させることができる電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の電子部品の製造方法は、誘電体層と電極層とが積層されてなる略直方体の積層体に端子電極が形成されて得られる被検査体7のクラックを検査するクラック検査工程を有し、クラック検査工程は、被検査体7に電圧を印加しながら被検査体7の上面の所定位置における積層方向の変位量を測定する工程と、基準電子部品を準備して、当該基準電子部品に被検査体7と同一条件で電圧を印加しながら基準電子部品の被検査体7の測定位置に対応する位置における積層方向の変位量を測定する工程と、被検査体7の変位量と基準電子部品の変位量とを比べることによりクラックの有無を判断しスクリーニングする工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品の製造方法として、絶縁層と導体層とを積層し焼成一体化したペレットを有する積層型電子部品の、ペレットの内部構造の良否を超音波顕微鏡で検査する超音波検査工程を含む積層型電子部品の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−36567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載された超音波検査工程は、積層型電子部品に超音波を照射して、反射した音波の強度や時間などを検出することにより、積層型電子部品を破壊することなく、内部に発生したクラックを発見するものである。
【0004】
しかしながら、このように超音波顕微鏡を用いて内部クラックの検査を行う場合、クラックの面に対して略垂直に超音波が当たって反射した音波をもとにクラックを検出するので、サンプルに対して複数方向から超音波を当てて測定することとなり測定時間が必然的に長くなる。また、クラックの面方向や面の凹凸状態によっては、反射した音波を検出できない場合もある。
【0005】
そこで本発明では、電子部品を破壊することなく内部クラックを簡便に検出することができ、製造歩留まりを向上させることができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討をした結果、誘電体層と電極層とが積層されてなる積層体を有する電子部品は、内部にクラックが存在する場合、電圧を印加したときの積層体の積層方向の変位量が、積層体の場所により大きく異なることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の電子部品の製造方法は、誘電体層と電極層とが積層されてなる略直方体の積層体と、当該積層体の外部に形成された端子電極とを有する電子部品の製造方法であって、積層体に端子電極が形成されて得られる被検査体のクラックを検査するクラック検査工程を有し、クラック検査工程は、被検査体に電圧を印加しながら被検査体の積層方向に交わる一面の所定位置における積層方向の変位量を測定する工程と、基準電子部品を準備して、当該基準電子部品に被検査体と同一条件で電圧を印加しながら基準電子部品の被検査体の測定位置に対応する位置における積層方向の変位量を測定する工程と、被検査体の変位量と基準電子部品の変位量とを比べることによりクラックの有無を判断しスクリーニングする工程とを有することを特徴とする。
【0008】
この電子部品の製造方法によれば、クラック検査工程は、被検査体に電圧を印加しながら被検査体の積層方向に交わる一面の所定位置における積層方向の変位量を測定し、基準電子部品を準備して、当該基準電子部品に被検査体と同一条件で電圧を印加しながら基準電子部品の被検査体の測定位置に対応する所定位置における積層方向の変位量を測定し、この基準電子部品の変位量と、被検査体の変位量とを比べてクラックの有無を判断しスクリーニングしている。このため、被検査体を破壊することなくクラックが存在する被検査体を簡便に検出し取り除くことができ、製造歩留まりを向上させることができる。
【0009】
また、本発明の電子部品の製造方法は、基準電子部品としてクラックが存在する電子部品及び/又はクラックが存在しない電子部品を用いることが好ましい。この電子部品の製造方法によれば、より確実にクラックの有無を判断することができる。
【0010】
また、本発明の電子部品の製造方法は、変位量の測定には、レーザ変位計を用いることが好ましい。この電子部品の製造方法によれば、より正確に変位量を測定できるので、さらに確実にクラックの有無を判断することができる。
【0011】
また、本発明の電子部品の製造方法は、被検査体及び基準電子部品の変位量を測定する位置をそれぞれ複数箇所設定することが好ましい。この電子部品の製造方法によれば、比較する測定位置が多くなるので、さらに確実にクラックの有無を判断することができる。
【0012】
また、本発明の電子部品の製造方法は、誘電体層が、電歪効果を有する誘電体材料からなることが好ましい。この電子部品の製造方法によれば、積層方向の変位量が大きくなり、さらに確実にクラックの有無を判断することができる。
【0013】
また、本発明の電子部品の製造方法は、クラック検査工程の前に被検査体に電圧を印加して耐電圧を検査する耐電圧検査工程を有することが好ましい。この電子部品の製造方法によれば、耐電圧検査の基準に満たない被検査体を確実に取り除くことができる。さらに、耐電圧検査により新たに発生した被検査体の電歪クラックをクラック検査工程において検出することができるので、さらに歩留まりが向上する。また、クラック検査工程での被検査体に印加する電圧は、耐電圧検査工程での印加電圧よりも低いことが好ましい。これによりクラック検査工程で電圧を印加することによる被検査体の故障を確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子部品を破壊することなく内部クラックを簡便に検出することができ、製造歩留まりを向上させることができる電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の電子部品の製造方法の好適な実施形態として、積層セラミックスコンデンサの製造方法について説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る製造方法が適用される積層セラミックスコンデンサの断面図である。この積層セラミックスコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された略直方体の積層体4と、この積層体4の積層方向に交わる方向の両端面に形成された各端子電極5,6とを備える。
【0017】
誘電体層2は、電歪特性を有する例えば、BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系などの誘電体材料からなり、内部電極層3に挟まれる誘電体層2の厚みは、例えば、18.5μmに薄層化されている。また、内部電極層3は、誘電体材料の種類により異なるが、Ni、Cuなどの卑金属材料やPt,Agなどの貴金属材料からなり、誘電体層2を介して対向配置される。この対向配置される各内部電極層3は、各々別々の各端面に引き出され各端子電極5,6に電気的に接続される。各端子電極5,6は多層化されており、積層体4に接する部分では、例えば、Cu,Ni、Ag−Pdなどを用い、その外側にはNi−Snなどのめっきが施される。
【0018】
続いて、図2を参照して、本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法のフローを示す図である。
【0019】
積層セラミックスコンデンサ1の製造においては、まず、誘電体層2を形成するためのセラミックスペースト、内部電極層3を形成するための内部電極ペーストをそれぞれ準備する。
【0020】
セラミックスペーストは、誘電体層2を構成する誘電体材料の原料に有機ビヒクルなどを混合・混錬して得ることができる。誘電体材料の原料としては、例えば、誘電体材料が上述したような各種の複合酸化物系材料である場合は、当該複合酸化物に含まれる各金属原子の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの組み合わせが挙げられる。
【0021】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などが挙げられる。また、溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤が挙げられる。
【0022】
また、セラミックスペーストは、上記以外に各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などが必要に応じて含有されていてもよい。
【0023】
内部電極ペーストは、内部電極層3を構成するための導電材料と有機ビヒクルとを混合・混錬したものである。導電材料としては、上述したような金属材料を用い、球状やリン片状などの種々の形状のものを適用できる。また、内部電極ペースト中には、必要に応じて無機化合物を適量含有させることが好ましい。これにより、後述する焼成時において、セラミックスグリーンシート及び内部電極ペースト層の体積変化の差を小さくして、これに起因する応力の発生を低減することができる。その結果、この応力に基づくクラックや反りなどの不具合を抑制することが可能となる。
【0024】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体などが挙げられる。溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトンなどが挙げられる。
【0025】
内部電極ペースト中には、適宜、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、リン酸エステル、グリコール類などが適用できる。
【0026】
続いて、上述したセラミックスペースト及び内部電極ペーストを準備した後、まず、例えば、PETなどからなるキャリアシート上にセラミックスペーストをドクターブレード法などの公知の方法でセラミックスグリーンシートを形成する(ステップS1:シート成形工程)。そして、セラミックスグリーンシート上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法などの公知の方法で複数の内部電極パターンを形成する(ステップS3:内部電極形成工程)。
【0027】
続いて、内部電極パターンが形成されたセラミックスグリーンシートを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る(ステップS5:積層・プレス工程)。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る(ステップS7:切断工程)。
【0028】
続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する(ステップS9:焼成工程)。この焼成により、セラミックスグリーンシートから誘電体層2が、また、内部電極ペースト層から内部電極層3がそれぞれ形成された積層体4が得られる。脱バインダーは、グリーンチップを、空気中、又は、N及びHの混合ガスなどの還元雰囲気中で、200〜600℃程度に加熱することにより行うことができる。また、焼成は、脱バインダー後のグリーンチップを、例えば、還元雰囲気下で1100〜1300℃程度に加熱することにより行うことができる。そして、かかるグリーンチップの焼成後、得られた焼成物に、必要に応じて800〜1100℃、2〜10時間保持するアニール処理を施す。
【0029】
続いて、積層体4の両端部に導電性ペーストを塗布して焼付けし、さらにめっきを施すことにより端子電極5,6を形成する(ステップS11:端子電極形成工程)。導電性ペーストは、Cuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としても良い。以上により、図1に示されるような構成の複数の積層セラミックスコンデンサ1が得られる。
【0030】
続いて、得られた積層セラミックスコンデンサ1(被検査体)について、電気特性の検査をする(ステップS13:電気特性(耐電圧)検査工程)。電気特性の検査は、得られた被検査体が所定の電気特性を備えているかを検査するものである。電気特性の検査には、例えば、積層セラミックスコンデンサの規格(JIS規格など)に基づく、耐電圧検査、絶縁抵抗検査、静電容量検査、静電正接検査などがある。JIS規格に基づく耐電圧検査の場合は、JIS C 5102で定められた方法・条件にて検査することができる。すなわち積層セラミックスコンデンサの定格電圧の2.5倍の電圧を1秒〜5秒間、各端子電極5,6にパルス的に印加し、絶縁破壊又は破損がないかを調べるものである。そして、耐電圧検査によりスクリーニングされた被検査体は他の検査工程に移ることになる。
【0031】
続いて、電気特性検査工程でスクリーニングされた被検査体についてクラック検査を行う(ステップS15:クラック検査工程)。以下、図3及び図4を参照してクラック検査工程について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法のクラック検査工程における測定装置の概略を示す図である。図4は、図3に示す測定装置による被検査体の測定位置を示す図である。
【0032】
クラック検査工程は、図3に示されるような測定装置を用いて以下の手順で行う。まず、被検査体7を所定の冶具(図示せず)に、被検査体7の積層方向に交わる測定面が上方を向くように固定し、各端子電極5,6に外部端子8,9を電気的に接続する。次に、外部端子8,9を介して、被検査体7に昇圧可能な電源11から例えば、100V/secの昇圧速度で昇圧しながら電圧を印加する。そして、昇圧の開始と同時に被検査体7の上方に配置されたレーザ変位計12により、被検査体7の測定面における積層方向の変位量を測定する。ここで使用するレーザ変位計12は市販のものを使用することができる。また、図4に示されるように変位量の測定は、被検査体7の測定面における、略中央部P1及び略角部P2,P3,P4,P5の5箇所を行う。ここで、略角部P2,P3,P4,P5の位置は、積層方向から見たときに内部電極層3の側端部に対応している。
【0033】
次に、被検査体7と同一条件で製造された同一形状のクラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサ(基準電子部品)を準備し、上述した被検査体7と同様の条件で変位量を測定する。なお、基準積層セラミックスコンデンサは、クラックが存在しないものを用いても良く、双方を用いても良い。
【0034】
そして、変位計測定器13により出力された、被検査体7の測定面の略中央部P1及び略角部P2,P3,P4,P5の変位量と、基準積層セラミックスコンデンサの測定面の略中央部P1及び略角部P2,P3,P4,P5の変位量とを比較して、クラックの有無を判断してスクリーニングする。電歪効果を有する誘電体材料を用いた積層セラミックスコンデンサは、端子電極に電圧を印加すると、印加電圧に応じて内部電極に挟まれた誘電体層が積層方向に沿って伸びることが知られている。したがって、各測定点P1,P2,P3,P4,P5における変位量も印加電圧に応じて積層方向に所定量伸びることとなるが、本発明者らが検討した結果、後述するように、内部にクラックが存在する積層セラミックスコンデンサは、クラックが存在しない積層セラミックスコンデンサに比べて積層方向への伸びが大きくなる特異的な部分が存在したり、変位量分布のバラツキが大きくなることを見出した。
【0035】
そのため、被検査体が、クラックの存在する基準積層セラミックコンデンサの変位量や変位量分布のバラツキと同様に、特異的な変位量や変位量分布のバラツキを示す場合には、被検査体はクラックが存在すると判断することができる。一方で、被検査体が、クラックの存在する基準積層セラミックコンデンサの変位量や変位量分布のバラツキと比べ、特異的な変位量や変位量分布のバラツキが見られない場合には、被検査体はクラックが存在しないと判断することができる。
【0036】
なお、基準積層セラミックスコンデンサとして、クラックの存在しないものを用いる場合は、被検査体がクラックの存在しない基準積層セラミックスコンデンサと比べ、特異的な変位量や変位量分布のバラツキを示す場合には、被検査体はクラックが存在すると判断することができる。一方で、被検査体の変位量や変位量分布と、クラックの存在しない基準積層セラミックスコンデンサの変位量や変位量分布との差が見られない場合は、被検査体はクラックが存在しないと判断することができる。
【0037】
なお、被検査体7に印加する電圧は、耐電圧検査工程S13における印加電圧よりも低い電圧を印加することが好ましい。耐電圧検査工程S13における印加電圧以上の電圧を印加すると、被検査体7が絶縁破壊される恐れがあるからである。また、少なくとも、被検査体7の定格電圧の1.0倍以上の電圧を印加することが好ましい。印加する電圧が高いほど、クラックが存在する場合に変位量の大きな特異的な側定点を検出することができ、クラックの存在を判断しやすいからである。
【0038】
続いて、クラック検査によりスクリーニングされた被検査体について、その外観を検査(ステップS17:外観検査工程)する。外観検査は、カメラや目視により被検査体の外観に欠けた部分などが存在しないかを確認するものである。外観検査によりスクリーニングされた良品被検査体が積層セラミックスコンデンサとして、出荷されることとなる。
【0039】
以上のように、本実施形態の積層セラミックスコンデンサの製造方法によれば、クラック検査工程は、被検査体7に電圧を印加しながら被検査体7の積層方向に交わる一面の所定位置(P1,P2,P3,P4,P5)における積層方向の変位量を測定し、クラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサを準備して、当該基準積層セラミックスコンデンサに被検査体と同一条件で電圧を印加しながら基準積層セラミックスコンデンサの被検査体の測定位置に対応する所定位置における積層方向の変位量を測定し、この基準積層セラミックスコンデンサの変位量と、被検査体の変位量とを比べてクラックの有無を判断しスクリーニングしている。このため、被検査体を破壊することなくクラックが存在する被検査体を簡便に検出し取り除くことができ、製造歩留まりを向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の積層セラミックスコンデンサの製造方法は、変位量の測定にレーザ変位計を用いており、より正確に簡便に変位量を測定できるので、より確実にクラックの有無を判断することができる。
【0041】
また、本実施形態の積層セラミックスコンデンサの製造方法は、被検査体及び基準積層セラミックスコンデンサの変位量を測定する位置をそれぞれ5箇所設定しており、比較する測定位置が多くなるので、さらに確実にクラックの有無を判断することができる。
【0042】
また、本実施形態の積層セラミックスコンデンサの製造方法は、誘電体層が、電歪効果を有する誘電体材料からなるので、積層方向の変位量が大きくなり、さらに確実にクラックの有無を判断することができる。
【0043】
また、本実施形態の積層セラミックスコンデンサの製造方法は、クラック検査工程の前に被検査体に電圧を印加して耐電圧を検査する耐電圧検査工程を有するので、耐電圧検査の基準に満たない被検査体を確実に取り除くことができる。さらに、耐電圧検査により新たに発生した被検査体の電歪クラックをクラック検査工程において検出することができるので、さらに歩留まりが向上する。
【0044】
なお、本実施形態においては、電子部品の一例として積層セラミックスコンデンサの製造方法を説明したが、電歪効果を有する誘電体材料を用いる電子部品であれば、特に限定されるものではなく、例えば、積層アクチュエータなどの製造方法としても適用できる。
【実施例】
【0045】
続いて、本発明に係る電子部品の製造方法について、実施例を示して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
まず、上述した手順により被検査体となる複数の積層セラミックスコンデンサを得た。ここで、積層セラミックスコンデンサは、BaTiO系の高誘電率セラミックスを誘電体材料として用いた容量が0.33μF、定格電圧250V、層間厚み18.5μmのC3225形状(長さ3.2mm、幅2.5mm、高さ2.0mm)のものである。
【0047】
続いて、複数の被検査体を定各電圧の2.5倍である625Vの電圧を1〜5秒間パルス的に印加して耐電圧検査を行ない、絶縁破壊された被検査体を除いた。そして、耐電圧検査を通過した被検査体について、上述したように図3に示される測定装置を用いて以下のような手順で変位量を測定した。まず、被検査体7を冶具により被検査体7の積層方向に交わる測定面が上側を向くように各端子電極を狭持して測定装置の支持台に固定し、冶具に電源11から延びた外部端子8,9を電気的に接続した。そして、被検査体7に電源11から100V/secの昇圧速度で625Vまで電圧を印加して、被検査体7の上方に配置されたレーザ変位計(株式会社キーエンス社製 LK−G10)12により、被検査体7の測定面における積層方向の変位量を測定した。また測定は、図4に示される測定面の略中央部P1及び略角部P2,P3,P4,P5の5箇所について行った。また、各測定点では、それぞれ3回繰り返し測定し、それぞれの平均を求めた。
【0048】
また、上述した被検査体7となる積層セラミックスコンデンサと同一条件で製造した同一形状のクラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサを準備して、上述した被検査体7の測定と同一の条件で変位量を測定した。
【0049】
図5及び図6に測定した結果を示す。図5は、クラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサの電圧変化に対する変位量の変化を示す図である。図6は、クラックが存在しない被検査体としての積層セラミックスコンデンサの電圧変化に対する変位量の変化を示す図である。
【0050】
図5に示されるように、クラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサは、略中央部P1の変位量が、略角部P2,P3,P4,P5の変位量に比べて大きな値を示した。例えば、定各電圧の2倍程度の500Vでは、略中央部P1の変位量が、略角部P2,P3,P4,P5の変位量の約1.7倍程度となり、特異的な変位量を示した。一方で、図6に示されるように、クラックが存在しない被検査体の各側定点P1,P2,P3,P4,P5における変位量には、所定の差が見られるものの特異的な変位量の側定点は無かった。
【0051】
以上により、基準積層セラミックスコンデンサと被検査体とのそれぞれの側定点における複数箇所の変位量の違いからクラックの有無の判断ができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る製造方法が適用される積層セラミックスコンデンサの断面図である。
【図2】本実施形態に係る積層セラミックスコンデンサの製造方法のフローを示す図である。
【図3】本実施形態に係る製造方法のクラック検査工程における測定装置の概略を示す図である。
【図4】図3に示す測定装置による被検査体の測定箇所を示す図である。
【図5】クラックが存在する基準積層セラミックスコンデンサの電圧変化に対する変位量の変化を示す図である。
【図6】クラックが存在しない被検査体としての積層セラミックスコンデンサの電圧変化に対する変位量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…積層セラミックスコンデンサ、2…誘電体層、3…内部電極層、4…積層体、5,6…端子電極、7…被検査体、8,9…外部端子、11…電源、12…レーザ変位計、13…変位計測定器、L1…レーザ光、L2…反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と電極層とが積層されてなる略直方体の積層体と、当該積層体の外部に形成された端子電極とを有する電子部品の製造方法であって、
前記積層体に端子電極が形成されて得られる被検査体のクラックを検査するクラック検査工程を有し、
前記クラック検査工程は、前記被検査体に電圧を印加しながら前記被検査体の積層方向に交わる一面の所定位置における前記積層方向の変位量を測定する工程と、基準電子部品を準備して、当該基準電子部品に前記被検査体と同一条件で電圧を印加しながら前記基準電子部品の前記被検査体の測定位置に対応する位置における積層方向の変位量を測定する工程と、前記被検査体の前記変位量と前記基準電子部品の前記変位量とを比べることによりクラックの有無を判断しスクリーニングする工程とを有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記基準電子部品として、クラックが存在する電子部品及び/又はクラックが存在しない電子部品を用いることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記変位量の測定には、レーザ変位計を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記被検査体及び前記基準電子部品の前記変位量を測定する位置は、それぞれ複数箇所を設定することを特徴とする請求項1〜3記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記誘電体層は、電歪効果を有する誘電体材料からなることを特徴とする請求項1〜4記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記クラック検査工程の前に前記被検査体に電圧を印加して耐電圧を検査する耐電圧検査工程を有することを特徴とする請求項1〜5記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記クラック検査工程における前記被検査体に印加する電圧は、前記耐電圧検査工程における印加電圧より低いことを特徴とする請求項6記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−124276(P2008−124276A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307066(P2006−307066)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】