説明

電子部品ユニット及びその製造方法

【課題】発熱素子が発生する熱を外部に効率的に放散することが可能な電子部品ユニット及びその製造方法であって、構成部品を低減するとともに組立工数を低減する。
【解決手段】電子部品ユニット10は、発熱素子61を含む電子部品を実装するための回路基板20と、ヒートシンク40との間に伝熱基板30を介在している。伝熱基板は、回路基板よりも熱伝導率が大きい基板本体31と、この基板本体の一方の板面に形成された電気絶縁層32と、この電気絶縁層の上面に形成された伝熱用の金属箔層33とからなる。回路基板は、伝熱用の金属箔層に臨む板面20bに形成された金属箔層22を有する。回路基板の金属箔層は、伝熱用の金属箔層に半田付けされている。基板本体の他方の板面31bは、ヒートシンクに重ね合わされ且つ組み付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流が流れることによって大量の熱を発する電子部品(いわゆる、発熱素子)の熱を、ヒートシンクによって外部に放散することが可能な電子部品ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品ユニットは、発熱素子を含む各種の電子部品を有している。発熱素子には、例えば、パワーFET(Field Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子や、シャント抵抗がある。パワーFETは、モータの駆動電流を制御する場合などに多用されている。近年、発熱素子を含む電子部品が許容温度を超えないように、発熱素子が発生する熱を効率的に放散させるための技術の開発が進められている。例えば、発熱素子から回路基板へ伝わった熱を外部に放散するためのヒートシンクを用いた技術が知られている(例えば、特許文献1−2参照)。
【0003】
特許文献1で知られている電子部品ユニットは、放熱容器(ヒートシンクに相当)に金属基板及び回路基板を別々に取り付け、金属基板に絶縁層を介して発熱素子を実装するとともに、回路基板に他の電子部品を実装するものである。しかしながら、特許文献1では、金属基板と回路基板との間をリード線によって電気的に接続する必要があるので、電子部品ユニットの構成部品が多くなり、組立工数も多くなってしまう。
【0004】
特許文献2で知られている電子部品ユニットは、発熱素子を実装した回路基板の裏面に銅箔層を介して錫層を設け、この錫層に放熱シート(ヒートシンクに相当)を重ね合わせるものである。リフロー炉で錫層を溶融させることにより、銅箔層に放熱シートを固定することができる。しかしながら、特許文献2では、回路基板と放熱シートとの間を電気的に絶縁するための、何らかの対処が必要である。回路基板と放熱シートとの間に、単に電気絶縁物を介在させるのでは、電子部品ユニットの構成部品が多く、組立工数も多くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−161925号公報
【特許文献2】実用新案登録第3128955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発熱素子が発生する熱を外部に効率的に放散することが可能な電子部品ユニット及びその製造方法であって、構成部品を低減するとともに組立工数を低減することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、発熱素子を含む電子部品を実装するための回路基板と、前記発熱素子から前記回路基板へ伝わった熱を外部に放散するためのヒートシンクとを、有している電子部品ユニットにおいて、前記回路基板と前記ヒートシンクとの間に介在する伝熱基板を、更に有し、この伝熱基板は、前記回路基板よりも熱伝導率が大きい基板本体と、この基板本体の一方の板面に形成された電気絶縁層と、この電気絶縁層の上面に形成された伝熱用の金属箔層とからなり、前記回路基板は、前記伝熱用の金属箔層に臨む板面に形成された金属箔層を有し、この回路基板の金属箔層は、前記伝熱用の金属箔層に半田によって接合されており、前記基板本体の他方の板面は、前記ヒートシンクに重ね合わされ且つ組み付けられている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記基板本体は、金属製の平板からなり、前記電気絶縁層は、前記平板の一方の板面に印刷によって形成された電気絶縁性の被膜からなり、前記伝熱用の金属箔層は、前記被膜の上面に印刷によって形成された銅箔層からなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2において、前記伝熱用の金属箔層は、前記回路基板に形成されている、前記発熱素子のための回路パターンに対して、同様のパターンに形成されており、これら両方のパターン同士は、互いに電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明では、請求項1から請求項3までのいずれか1項において、前記回路基板は、前記発熱素子を実装するための実装エリアにスルーホールを有しており、このスルーホールには、前記基板接合用の金属箔層に連なる半田が充填されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明では、請求項1又は請求項2において、前記回路基板は、前記発熱素子を複数実装するための複数の実装エリアを有しており、前記伝熱基板は、前記複数の実装エリアのそれぞれに対応するように分割されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明では、発熱素子を含む電子部品を実装するための回路基板であって一方の面に基板接合用の金属箔層が形成されているもの、一方の面に電気絶縁層とこの電気絶縁層の上の伝熱用の金属箔層が形成されている伝熱基板、及びヒートシンクを準備する準備工程と、この準備工程の後に、前記基板接合用の金属箔層と前記伝熱用の金属箔層との一方に、クリーム半田を塗布することにより半田層を形成する半田層形成工程と、
この半田層形成工程の後に、前記両方の金属箔層同士を、前記半田層を介して重ね合わせる実装工程と、この実装工程の後に、前記半田層を再溶融することにより、前記両方の金属箔層同士を半田付けによって接合する接合工程と、この接合工程の後に、前記伝熱基板の他方の面を前記ヒートシンクに重ね合わせて組み付ける組付工程と、を有していることを特徴とした電子部品ユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、回路基板とヒートシンクとの間に伝熱基板を介在させている。この伝熱基板は、熱伝導率が大きい基板本体の一方の板面に、電気絶縁層を介して伝熱用の金属箔層を形成したものである。回路基板に形成されている金属箔層に、伝熱用の金属箔層を半田によって接合するとともに、ヒートシンクに、基板本体の他方の板面を重ね合わせて組み付けることにより、回路基板とヒートシンクとを一体的に組み合わせることができる。
このように、回路基板に対して、発熱素子及び他の電子部品の両方を実装することができるので、発熱素子と他の電子部品とを接続するための配線部品は必要ない。また、基板本体の一方の板面に電気絶縁層を有しているので、回路基板とヒートシンクとの間を電気的に絶縁するための別個の部品(絶縁シートなど)は必要ない。従って、電子部品ユニットの構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。しかも、回路基板とヒートシンクとの間に伝熱基板を介在させるとともに、回路基板と伝熱基板とを半田によって接合するだけの、簡単な構成によって、発熱素子が発生する熱を外部に効率的に放散することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、伝熱基板は、金属製の平板の一方の板面に、電気絶縁性の被膜を介して銅箔層を形成することによって構成された、一体品である。金属製の平板を心材とした伝熱基板を回路基板に固定するので、伝熱基板によって回路基板を補強することができる。この結果、回路基板の曲げ剛性を高めることができる。従って、回路基板及び伝熱基板をヒートシンクに密着させることができ、回路基板から伝熱基板を介してヒートシンクに放熱する効果が一層高まる。
【0015】
請求項3に係る発明では、伝熱用の金属箔層は、回路基板に形成されている発熱素子のための回路パターンに対して、同様のパターンに形成されている。これら両方のパターン同士は、互いに電気的に接続されている。このため、発熱素子に供給される電流を、回路基板に形成されている回路パターンと、伝熱用の金属箔層のパターンとの、両方に流すことができる。従って、回路基板に形成されている回路パターンの通電容量を低減することができるため、回路パターンの厚みや幅を小さくすることができる。または、両方のパターンから発熱素子へ通電するので、より一層大容量の発熱素子を回路基板に実装することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、回路基板において、発熱素子を実装するための実装エリアにスルーホールを有しており、このスルーホールには基板接合用の金属箔層に連なる半田が充填されている。このため、発熱素子が発生した熱は、スルーホールに充填されている半田を介して伝熱基板に効率良く伝わり、さらにヒートシンクに伝わる。従って、放熱効果を一層高めることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、回路基板は、発熱素子を複数実装するための複数の実装エリアを有する。伝熱基板は、複数の実装エリアのそれぞれに対応するように分割されている。従って、比較的高価な伝熱基板を最低限に使用しながら、放熱効果が得られる。
【0018】
請求項6に係る発明では、一方の金属箔層にクリーム半田を塗布することにより半田層を形成し、両方の金属箔層同士を半田層を介して重ね合わせ、この半田層を再溶融することにより、両方の金属箔層同士を半田付けによって接合する。この結果、伝熱基板は回路基板に一体化される。伝熱基板の一方の面には、電気絶縁層を介して伝熱用の金属箔層が形成されているので、回路基板と伝熱基板との間を電気的に絶縁するための別個の部品(絶縁シートなど)は必要ない。従って、電子部品ユニットの構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。
次に、伝熱基板の他方の面をヒートシンクに重ね合わせて組み付ける。このようにして、回路基板とヒートシンクとの間に伝熱基板を介在させるとともに、これらの3つの部材を一体的に組み立てることができる。このように、回路基板とヒートシンクとの間に伝熱基板を介在させるとともに、回路基板と伝熱基板とを半田によって接合するだけの、簡単な方法によって、発熱素子が発生する熱を外部に効率的に放散することができる。
また、回路基板に対して、発熱素子及び他の電子部品の両方を実装することができるので、発熱素子と他の電子部品とを接続するための配線部品は必要ない。従って、電子部品ユニットの構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る電子部品ユニットの断面図である。
【図2】図1に示された電子部品ユニットの分解図である。
【図3】図1の3部を拡大して示した図である。
【図4】図2に示された回路基板と伝熱基板の各回路パターンを、回路基板への部品実装レイアウトと共に示した図である。
【図5】図2に示された回路基板と伝熱基板の関係を伝熱基板側から見た分解図である。
【図6】図1に示された電子部品ユニットの製造方法を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施例2に係る電子部品ユニットの要部断面図である。
【図8】本発明の実施例3に係る電子部品ユニットの要部断面図である。
【図9】本発明の実施例4に係る電子部品ユニットの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係る電子部品ユニットについて、図1〜図5に基づき説明する。図1及び図2に示されるように、実施例1の電子部品ユニット10は、回路基板20と伝熱基板30とヒートシンク40とカバー50とからなる。
【0022】
回路基板20は、エポキシ樹脂等の電気絶縁性を有した樹脂材料によって構成された平板であって、電子部品60及びコネクタ71を有している。電子部品60は、発熱素子61及び他の素子62の総称である。本発明では、電子部品60に少なくとも発熱素子61が含まれ、この発熱素子61は、回路基板20に表面実装(Surface Mount)によって取り付けられている。
【0023】
「発熱素子」とは、大電流が流れることによって比較的大きな熱量を発する電子部品のことであり、例えば半導体スイッチング素子やシャント抵抗が含まれる。半導体スイッチング素子としては、例えばパワーFETがある。パワーFETは、例えば、電動パワーステアリングを実現するためにステアリング系の操舵アシストを行うモータ駆動用の半導体スイッチング素子として採用される。他の素子62としては、例えばコンデンサがある。
【0024】
「表面実装」は、基板に電子部品を取り付ける(実装する)方式の一種であり、基板の表面に電子部品を直接に半田付けする方法である。この表面実装は、電子部品のリードを基板の孔に固定する方法に比べて、実装密度を高めることができる。
【0025】
表面実装の具体的な手順は次の通りである。先ず、基板において、電子部品のマウント位置にクリーム半田印刷をする。次に、チップマウンタによって電子部品をマウント位置にマウントする。その後、電子部品がマウントされた基板をリフロー炉に入れて、熱を加えることにより半田を溶かす(リフロープロセス)。この結果、電子部品は基板に固定される。
【0026】
図3に示されるように、上記回路基板20は、例えば、両面に金属箔層21,22を有した、いわゆる両面基板(2層基板)である。つまり、回路基板20は、一方の板面20aに形成された第1の金属箔層21と、他方の板面20bに形成された第2の金属箔層22とを有する。回路基板20の一方の板面20bは、伝熱基板30に臨む面のことである。回路基板20の他方の板面20bは、伝熱基板30とは反対側の面のことである。このように、回路基板20と第1及び第2の金属箔層21,22とによって、積層構造体23が構成される。尚、回路基板20は、2層基板に限定されず、多層基板であってもよい。
【0027】
図4(a)は、電子部品60及びコネクタ71を実装した構成の回路基板20を、一方の板面20a側から見て表している。図4(b)は、回路基板20だけを一方の板面20a側から見て表している。図4(c)は、伝熱基板30を一方の板面31a側から見て表している。
【0028】
図4(a),(b)及び図5に示されるように、第1及び第2の金属箔層21,22は、回路基板20にプリント配線された薄膜状の導電層であり、所定の回路パターンに形成されている。第1の金属箔層21(つまり、第1の回路パターン層21)は、発熱素子61が実装される第1のエリア24と、他の素子62が実装される第2のエリア25とに区分けされている。第2の金属箔層22(つまり、第2の回路パターン層22)は、伝熱基板30に接合する基板接合用の金属箔層である。
【0029】
図4(a),(b)に示されるように、第1の回路パターン層21には、第1のエリア24において発熱素子61を実装するための実装エリア24aを有している。発熱素子61は、実装エリア24aにおいて、第1の回路パターン層21に表面実装されることにより、第1の回路パターン層21に電気的に接続される。詳しくは、図3に示すように、第1の回路パターン層21の上に印刷によって第1半田層26が形成されている。この第1半田層26が再溶融することによって、第1の回路パターン層21に発熱素子61が表面実装される。また、第1の回路パターン層21には、第1半田層26を介して他の素子62も実装される。
【0030】
図4(a)に示されるように、他の素子62は、そのリードが、第2のエリア25において回路基板20の孔に差し込まれて半田付けされることによって、第1の回路パターン層21に電気的に接続される。
【0031】
図5に示されるように、第2の回路パターン層22は、第1の回路パターン層21(図4(b)参照)における第1のエリア24に対応するように形成されている。つまり、第1のエリア24においては、第1の回路パターン層21に対して第2の回路パターン層22が概ね同じパターンに形成されている。
【0032】
図3及び図5に示されるように、伝熱基板30は、少なくとも回路基板20の第2の回路パターン層22の一部に重ね合わされるものである。この伝熱基板30は、基板本体31と、この基板本体31の一方の板面31aに形成された電気絶縁層32と、この電気絶縁層32の上面(外面)に形成された伝熱用の金属箔層33とからなる。
【0033】
基板本体31は、回路基板20よりも熱伝導率の高い材料によって構成されている。より具体的には、基板本体31は金属製の平板であって、例えばアルミニウム合金や銅合金等の金属材料からなる。参考として、温度条件0℃のときにおける、各物質の熱伝導率を挙げると次の通りである。つまり、アルミニウムの熱伝導率は236(W/(m・K))、銅の熱伝導率は403(W/(m・K))、ビスフェノールA型(bisphenol A)エポキシ樹脂の熱伝導率は0.21(W/(m・K))である。
【0034】
このような伝熱基板30は、基板本体31が金属材料からなるので、一般に金属ベース基板と言われている。例えば、基板本体31がアルミニウム合金によって構成されている場合には、伝熱基板30はアルミベース基板(アルミ基板)と言われる。
【0035】
図3に示されるように、電気絶縁層32は、基板本体31の一方の板面31aの概ね全面にわたって、印刷によって形成された被膜からなる。この電気絶縁層32は、電気絶縁性を有するとともに、高い熱伝導性をも有している材料からなる薄膜であり、例えばエポキシ樹脂の膜からなる。電気絶縁層32の厚みは、電気絶縁性を確保しつつ放熱性を高めるために、50μmから200μmまでの範囲に設定されることが好ましい。薄すぎると電気絶縁性を確保するのに限界があり、厚すぎると放熱性を高めるのに限界があるからである。高い熱伝導性を有している電気絶縁層32から伝熱基板30への熱伝導性は良好である。つまり、放熱性が良好である。
【0036】
図3及び図4(c)に示されるように、伝熱用の金属箔層33は、電気絶縁層32を介して基板本体31の一方の板面31aに、プリント配線された薄膜状の導電層である。つまり、伝熱用の金属箔層33は、被膜の上面に印刷によって形成された銅箔層からなり、第2の回路パターン層22と同様のパターンに形成されている。この伝熱用の金属箔層33(つまり、第3の回路パターン層33)には電子部品が全く実装されていない。
【0037】
伝熱用の金属箔層33(第3の回路パターン層33)は、回路基板20の第2の金属箔層22(第2の回路パターン層22)に第2半田層34によって接合されている。この第2半田層34は、第2及び第3の回路パターン層22,23と同様のパターンに形成されている。このため、両方の回路パターン層22,33同士は、第2半田層34によって互いに電気的に接続されている。
【0038】
図1〜図3に示されるように、ヒートシンク40は、発熱素子61から回路基板20へ伝わった熱を外部に放散するための放熱板であって、電子部品ユニット10のベースを兼ねている。このヒートシンク40は、例えばアルミニウム合金や銅合金からなる。基板本体31の他方の板面31b(回路基板20とは反対側の板面31b)は、ヒートシンク40の一方の板面40aに重ねられるとともに、このヒートシンク40に複数の締結部材41によって組み付けられている。締結部材41は、例えばビスやリベットからなる。
【0039】
図3に示されるように、好ましくは、伝熱基板30における他方の板面31bは、放熱グリスの層35(放熱グリス層35)を介してヒートシンク40の一方の板面40aに接合される。この放熱グリス層35は例えばシリコングリスからなる。放熱グリス層35を介在させることによって、伝熱基板30からヒートシンク40への熱伝導が促進される。
【0040】
このように、ヒートシンク40に対して、伝熱基板30と回路基板20とをこの順に重ね合わせるとともに、ヒートシンク40に伝熱基板30と回路基板20とを複数の締結部材41によって共締めすることにより、互いに一体的に組み付けることが可能である。ヒートシンク40に組み付けられた回路基板20及び伝熱基板30は、カバー50によって覆われる。
【0041】
少なくとも発熱素子61が発した熱は、第1半田層26、第1の回路パターン層21、回路基板20、第2の金属箔層22(第2の回路パターン層22)、第2半田層34、伝熱用の金属箔層33、電気絶縁層32、基板本体31、放熱グリス層35を介してヒートシンク40に伝わり、このヒートシンク40から大気に放散される。
【0042】
なお、図5に示されるように、回路基板20の第2の回路パターン層22には、伝熱基板30に重ならない位置において、シャント抵抗等の発熱素子63が実装されるエリア、及び他の電子部品の実装エリア等が割り当てられている。この発熱素子63が発した熱は、第2の金属箔層22(第2の回路パターン層22)、第2半田層34、伝熱用の金属箔層33、電気絶縁層32、基板本体31、放熱グリス層35を介してヒートシンク40に伝わり、このヒートシンク40から大気に放散される。
【0043】
実施例1の電子部品ユニット10の構成をまとめると次の通りである。
電子部品ユニット10では、回路基板20とヒートシンク40との間に伝熱基板30を介在させている。この伝熱基板30は、熱伝導率が大きい基板本体31の一方の板面31aに、電気絶縁層32を介して伝熱用の金属箔層33を形成したものである。回路基板20に形成されている金属箔層22に、伝熱用の金属箔層33を半田によって接合するとともに、ヒートシンク40に、基板本体31の他方の板面31bを重ね合わせて組み付けることにより、回路基板20とヒートシンク40とを一体的に組み合わせることができる。
【0044】
このように、回路基板20に対して、発熱素子61及び他の電子部品60の両方を実装することができるので、発熱素子61と他の素子62とを接続するための配線は必要ない。また、基板本体31の一方の板面31aに電気絶縁層32を有しているので、回路基板20とヒートシンク40との間を電気的に絶縁するための別個の部品(絶縁シートなど)は必要ない。従って、電子部品ユニット10の構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。しかも、回路基板20とヒートシンク40との間に伝熱基板30を介在させるとともに、回路基板20と伝熱基板30とを半田によって接合するだけの、簡単な構成によって、発熱素子61が発生する熱を外部に効率的に放散することができる。
【0045】
さらには、伝熱基板30は、金属製の平板31(基板本体31)の一方の板面31aに、電気絶縁性の被膜32(電気絶縁層32)を介して銅箔層33を形成することによって構成された、一体品である。金属製の平板31を心材とした伝熱基板30を回路基板20に固定するので、伝熱基板30によって回路基板20を補強することができる。この結果、回路基板20の曲げ剛性が高まる。従って、回路基板20及び伝熱基板30をヒートシンク40に密着させることができ、回路基板20から伝熱基板30を介してヒートシンク40に放熱する効果が一層高まる。
【0046】
次に、実施例1の電子部品ユニット10の製造方法について、図1〜図5を参照しつつ、図6に基づき説明する。
【0047】
電子部品ユニット10を製造するには、先ず、図6に示されるステップS1(準備工程)において、回路基板20と伝熱基板30とヒートシンク40とを準備する。準備される回路基板20には、一方の板面20aに第1の回路パターン層21が形成され、他方の板面20bに第2回路パターン層22が形成されている。また、準備される伝熱基板30には、基板本体31の一方の板面31aに電気絶縁層32と、この電気絶縁層32上の伝熱用の金属箔層33とが形成されている。
【0048】
この準備工程の後に、ステップS2(第2半田層の形成工程)において、基板接合用の金属箔層22と伝熱用の金属箔層33との一方に、クリーム半田を塗布することにより第2半田層34を形成する。この第2半田層34は、金属箔層22,33の一方の上にクリーム半田がクリーム半田印刷機によって印刷(塗布)されることで、形成される。クリーム半田(Cream Solder)とは、半田の粒子を溶剤とフラックスとによって練り上げたクリーム状の半田のことである。
【0049】
この第2半田層の形成工程の後に、ステップS3(第1実装工程)において、基板接合用の金属箔層22と伝熱用の金属箔層33とを、第2半田層34を介して重ね合わせる。同時に基板接合用の金属箔層22(第2回路パターン層22)に第2半田層34を介してシャント抵抗等の発熱素子63(図5参照)を実装する。
【0050】
この第1実装工程の後に、ステップS4(第1接合工程)において、第2半田層34を再溶融することにより、基板接合用の金属箔層22と伝熱用の金属箔層33とを半田付けによって接合する。例えば、伝熱用の金属箔層33及びシャント抵抗等の発熱素子63がマウントされた状態の回路基板20をリフロー炉に入れて加熱した後に冷却する(リフロープロセス)。この結果、第2半田層34が再溶融した後に固まることにより、両方の金属箔層22,33同士が接合される。同時に、基板接合用の金属箔層22に、シャント抵抗等の発熱素子63が接合される。
【0051】
この第1接合工程の後に、ステップS5(第1半田層の形成工程)において、回路基板20を上下反転させて、第1回路パターン層21にクリーム半田を塗布することにより第1半田層26を形成する。この第1半田層26は、上記第2半田層34と同様に、第1回路パターン層21にクリーム半田がクリーム半田印刷機によって印刷(塗布)されることで、形成される。
【0052】
この第1半田層の形成工程の後に、ステップS6(第2実装工程)において、回路基板20の第1回路パターン層21に第1半田層26を介して発熱素子61を実装する。
【0053】
この第2実装工程の後に、ステップS7(第2接合工程)において、発熱素子61がマウントされた状態の回路基板20をリフロー炉に入れて加熱した後に冷却する(リフロープロセス)。この結果、第1半田層26が再溶融した後に固まることにより、第1回路パターン層21に発熱素子61が接合される。
【0054】
この第2接合工程の後に、ステップS8(第3実装工程)において、回路基板20の第1回路パターン層21に形成されているリード取付孔に他の素子62のリードを挿入することによって、他の素子62を実装する。
【0055】
この第3実装工程の後に、ステップS9(第3接合工程)において、他の素子62がマウントされた状態の回路基板20をフロー槽に通して半田付けする。この結果、回路基板20の第1回路パターン層21に他の素子62が半田付けによって接合される。
【0056】
この第3接合工程の後に、次のステップS10(組付工程)において、ヒートシンク40に伝熱基板30の他方の板面31bを重ね合わせ、伝熱基板30と回路基板20とを締結部材41によって組み付ける。その後、ヒートシンク40にカバー50を被せることによって、電子部品ユニット10の製造を完了する。
【0057】
なお、ステップS2〜S4の実施と、ステップS5〜S7の実施とは、実施順序を入れ替えてもよい。
【0058】
実施例1の電子部品ユニット10の製造方法の説明をまとめると次の通りである。
上述した電子部品ユニット10の製造方法によれば、金属箔層22,33の一方にクリーム半田を塗布することにより半田層34(第2半田層34)を形成し、両方の金属箔層22,33同士を半田層34を介して重ね合わせ、この半田層34を再溶融することにより、両方の金属箔層22,33同士を半田付けによって接合する。この結果、伝熱基板30は回路基板20に一体化される。伝熱基板30の一方の面31aには、電気絶縁層32を介して伝熱用の金属箔層33が形成されているので、回路基板20と伝熱基板30との間を電気的に絶縁するための別個の部品(絶縁シートなど)は必要ない。従って、電子部品ユニット10の構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。
【0059】
次に、伝熱基板30の他方の面31bをヒートシンク40に重ね合わせて組み付ける。このようにして、回路基板20とヒートシンク40との間に伝熱基板を介在させるとともに、これらの3つの部材20,30,40を一体的に組み立てることができる。このように、回路基板20とヒートシンク40との間に伝熱基板30を介在させるとともに、回路基板20と伝熱基板30とを半田によって接合するだけの、簡単な構成によって、発熱素子61が発生する熱を外部に効率的に放散することができる。
【0060】
また、回路基板20に対して、発熱素子61及び他の素子62の両方を実装することができるので、発熱素子61と他の電子素子62とを接続するための配線は必要ない。従って、電子部品ユニット10の構成部品を少なくできるとともに、組立工数を低減することができる。
【実施例2】
【0061】
次に、実施例2に係る電子部品ユニットについて説明する。図7は実施例2の電子部品ユニット10Aの断面構造を示している。実施例2は、上記図3に示される実施例1の電子部品ユニット10を、図7に示される電子部品ユニット10Aに変更したことを特徴とし、他の構成及び製造方法については上記図1〜図6に示す構成及び製造方法と同じなので、説明を省略する。
【0062】
具体的には、実施例2の電子部品ユニット10Aは、回路基板20において、発熱素子61を実装するための実装エリア24a(図4(b)参照)に、少なくとも1つのスルーホール81を有している。このスルーホール81は、回路基板20を板厚方向に貫通した孔である。スルーホール81の壁面には、第1及び第2の金属箔層21,22を電気的に接続するための、環状の金属箔82が形成されている。環状の金属箔82は、例えば第1及び第2の金属箔層21,22と共に、スルーホール81の壁面に印刷やメッキを施すことによって形成される。環状の金属箔82は、第1及び第2の金属箔層21,22同士を電気的に接続するように、第1及び第2の金属箔層21,22に連なっている。
【0063】
上述のように、伝熱用の金属箔層33は、回路基板20に形成されている、第1及び第2の金属箔層21,22の回路パターンに対して、同様のパターンに形成されている。第1及び第2の金属箔層21,22の回路パターンは、伝熱用の金属箔層33のパターンに第2半田層34を介して電気的に接続されている。このため、発熱素子61に供給する電流を、第1及び第2の金属箔層21,22の回路パターンと、伝熱用の金属箔層33のパターンとの、両方に流すことができる。つまり、伝熱用の金属箔層33を有効活用することができる。
【0064】
従って、第1の金属箔層21の回路パターンの通電容量を低減することができる。その分、第1の金属箔層21の回路パターンの厚みや幅を小さくすることができる。
【0065】
または、第1の金属箔層21の回路パターンと、第2の金属箔層22の回路パターンと、伝熱用の金属箔層33の回路パターンとから、発熱素子61へ通電することにより、より一層大容量の発熱素子61を回路基板20に実装することができる。
【0066】
上記スルーホール81には、半田83(ホール内半田83)が充填されている。より具体的には、環状の金属箔82の内部にホール内半田83が充填されている。このホール内半田83は、第1及び第2の金属箔層21,22と、第1及び第2半田層26,34と、ホール内半田83とに連なることによって、互いに電気的に接続される。
【0067】
また、発熱素子61が発生した熱は、スルーホール81に充填されている半田(ホール内半田)を介して伝熱基板30に効率良く伝わり、さらにヒートシンク40に伝わる。従って、放熱効果を一層高めることができる。
【0068】
さらに、実施例2の電子部品ユニット10Aは、上記実施例1の電子部品ユニット10と同様の作用、効果を有する
【実施例3】
【0069】
次に、実施例3に係る電子部品ユニットについて説明する。図8は実施例3の電子部品ユニット10Bの断面構造を示している。実施例3は、上記図7に示される実施例2の電子部品ユニット10Aを、図8に示される電子部品ユニット10Bに変更したことを特徴とし、他の構成及び製造方法については上記図1〜図6に示す構成及び製造方法と同じなので、説明を省略する。
【0070】
図8は、回路基板20に複数の発熱素子61,61を実装した場合において、第1の金属箔層21の回路パターンと、第2の金属箔層22の回路パターンと、伝熱用の金属箔層33の回路パターンとが、各々の発熱素子61,61に対応して互いに分離していることを示している。スルーホール81は、各々の発熱素子61,61毎に、回路基板20に少なくとも1つずつ有している。このため、各々の発熱素子61,61に対応しているスルーホール81同士は電気的に非導通である。
【0071】
さらに、実施例3の電子部品ユニット10Bは、上記実施例1の電子部品ユニット10と同様の作用、効果を有する
【実施例4】
【0072】
次に、実施例4に係る電子部品ユニットについて説明する。図9は実施例4の電子部品ユニット10Cの断面構造を示している。実施例4は、上記図1及び図3に示される実施例1の電子部品ユニット10を、図9に示される電子部品ユニット10Cに変更したことを特徴とし、他の構成及び製造方法については上記図1〜図6に示す構成及び製造方法と同じなので、説明を省略する。
【0073】
回路基板20は、発熱素子61を複数実装するための複数の実装エリア24a(図4(b)参照)を有している。伝熱基板30は、複数の実装エリア24aのそれぞれに対応するように分割されている。つまり、複数の伝熱基板30は、それぞれ対応する実装エリア24aの大きさに合わせた、小さいものですむ。ヒートシンク40の一方の板面40aは、それぞれの伝熱基板30が重ね合わされる部分を除いて、凹部91に形成されている。このように、比較的高価な伝熱基板30を最低限に使用しながら、放熱効果が得られる。
【0074】
さらに、実施例4の電子部品ユニット10Cは、上記実施例1の電子部品ユニット10と同様の作用、効果を有する
【0075】
なお、本発明では、回路基板20は、両面に金属箔層21,22を有した、いわゆる両面基板に限定されるものではなく、他方の板面20bにのみ第2の金属箔層22を有した片面基板の構成であってもよい。その場合には、第2の金属箔層22に発熱素子61を含む電子部品60を実装すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の電子部品ユニット及びその製造方法は、車両用電動パワーステアリング装置のモータの駆動電流を制御する半導体スイッチング素子や音響用のパワー素子等の発熱素子が発生する熱を外部に放散するのに用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10…電子部品ユニット、20…回路基板、20a…一方の板面、20b…他方の板面、21…第1の金属泊箔層(第1回路パターン層)、22…基板接合用の金属箔層(第2の金属泊箔層、第2回路パターン層)、24a…実装エリア、30…伝熱基板、31…基板本体、31a…一方の板面、31b…他方の板面、32…電気絶縁層、33…伝熱用の金属箔層、34…半田層(第2半田層)、40…ヒートシンク、40a…一方の板面、60…電子部品、61…発熱素子、62…他の素子、81…スルーホール、82…環状の金属箔、83…スルーホールに充填された半田(ホール内半田)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子を含む電子部品を実装するための回路基板と、前記発熱素子から前記回路基板へ伝わった熱を外部に放散するためのヒートシンクとを、有している電子部品ユニットにおいて、
前記回路基板と前記ヒートシンクとの間に介在する伝熱基板を、更に有し、
この伝熱基板は、前記回路基板よりも熱伝導率が大きい基板本体と、この基板本体の一方の板面に形成された電気絶縁層と、この電気絶縁層の上面に形成された伝熱用の金属箔層とからなり、
前記回路基板は、前記伝熱用の金属箔層に臨む板面に形成された金属箔層を有し、
この回路基板の金属箔層は、前記伝熱用の金属箔層に半田によって接合されており、
前記基板本体の他方の板面は、前記ヒートシンクに重ね合わされ且つ組み付けられている、ことを特徴とした電子部品ユニット。
【請求項2】
前記基板本体は、金属製の平板からなり、
前記電気絶縁層は、前記平板の一方の板面に印刷によって形成された電気絶縁性の被膜からなり、
前記伝熱用の金属箔層は、前記被膜の上面に印刷によって形成された銅箔層からなることを特徴とした請求項1記載の電子部品ユニット。
【請求項3】
前記伝熱用の金属箔層は、前記回路基板に形成されている、前記発熱素子のための回路パターンに対して、同様のパターンに形成されており、
これら両方のパターン同士は、互いに電気的に接続されていることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の電子部品ユニット。
【請求項4】
前記回路基板は、前記発熱素子を実装するための実装エリアにスルーホールを有しており、
このスルーホールには、前記基板接合用の金属箔層に連なる半田が充填されていることを特徴とした請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の電子部品ユニット。
【請求項5】
前記回路基板は、前記発熱素子を複数実装するための複数の実装エリアを有しており、
前記伝熱基板は、前記複数の実装エリアのそれぞれに対応するように分割されていることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の電子部品ユニット。
【請求項6】
発熱素子を含む電子部品を実装するための回路基板であって一方の面に基板接合用の金属箔層が形成されているもの、一方の面に電気絶縁層とこの電気絶縁層の上の伝熱用の金属箔層が形成されている伝熱基板、及びヒートシンクを準備する準備工程と、
この準備工程の後に、前記基板接合用の金属箔層と前記伝熱用の金属箔層との一方に、クリーム半田を塗布することにより半田層を形成する半田層形成工程と、
この半田層形成工程の後に、前記両方の金属箔層同士を、前記半田層を介して重ね合わせる実装工程と、
この実装工程の後に、前記半田層を再溶融することにより、前記両方の金属箔層同士を半田付けによって接合する接合工程と、
この接合工程の後に、前記伝熱基板の他方の面を前記ヒートシンクに重ね合わせて組み付ける組付工程と、を有していることを特徴とした電子部品ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−165867(P2011−165867A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26587(P2010−26587)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】