説明

電子部品実装装置

【課題】サイズの異なる複数品種の電子部品を対象として安定して吸着保持が可能な中継ステージを備え、多品種対応性に優れた電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【解決手段】部品供給部から取り出された電子部品を仮置きする中継ステージにおいて半導体チップ6aが載置される載置部18aを、電気絶縁性の粘着性媒体62aにER粒子62bを分散させたERゲルシート62の上面を露呈させた載置面62cと、ERゲルシート62に接触して配設された1対の電極部材66c、67cとを有する構成とし、電圧印加部71によって電極部材66c、67c間に電圧を印加することによりER粒子62bに電場を作用させ、載置面62cによって半導体チップ6aを保持する粘着力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品供給部から半導体チップなどの電子部品を取り出して基板に実装する電子部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどの電子部品は部品供給部から取り出され、基板位置決め部に位置決め保持されたリードフレームや樹脂基板などの基板に実装される。このような部品実装において、部品供給部から取り出した電子部品を基板に直接移送搭載するのではなく、部品供給部と基板位置決め部との間に配置された中継ステージに一旦仮置きする構成が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献に示す先行技術例においては、部品供給部から供給ヘッドによってチップを取り出して中継ステージ(プリセンタステージ)に載置して機械的に位置決めし、位置決め後のチップを移載ヘッドによって保持して基板にボンディングするようにしている。そしてここでは、中継ステージに部品保持用の吸着孔を設け、仮置き状態のチップの位置ずれを真空吸着によって固定して防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−107050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで現今の電子機器製造分野においては、微小サイズの電子部品を含む広い範囲の部品種を作業対象とすることができるよう、生産設備の汎用性を向上させることが求められるようになってきている。ところが上述の先行技術例を含め、従来の電子部品実装装置において中継ステージを複数種類の部品種に共用する場合には、微小サイズの電子部品の吸着保持を安定して行うことが困難であるという課題があった。
【0005】
すなわち、大型サイズの電子部品を載置可能な中継ステージに微小サイズの電子部品を載置すると、吸着保持面に設けられた多数の吸着孔のうち、ごく一部の吸着孔のみが電子部品によって塞がれた状態となる。したがって他の大部分の吸着孔は開放状態となり、過大な真空リークが発生して中継ステージ全体に亘って吸着保持力が低下する。このため、微小サイズの部品種を含む多品種の電子部品への対応が求められる場合には、部品種のサイズに応じて吸着孔が配置された専用の中継ステージを部品種毎に準備する必要があり、設備費用のコストアップを招く結果となっていた。
【0006】
そこで本発明は、サイズの異なる複数品種の電子部品を対象として安定して吸着保持が可能な中継ステージを備え、多品種対応性に優れた電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品実装装置は、部品供給部から取り出した電子部品を基板位置決め部に位置決めされた基板に実装する電子部品実装装置であって、前記基板位置決め部と前記部品供給部との間に配置され前記部品供給部から取り出された電子部品が載置される中継ステージと、前記部品供給部から前記電子部品を取り出して前記中継ステージに移送する部品移送機構と、前記中継ステージ上に前記部品移送機構によって移送された電子部品を保持して前記基板位置決め部に位置決めされた前記基板に実装する部品実装機構とを備え、
前記中継ステージにおいて前記電子部品が載置される載置部は、電気絶縁性の粘着性媒体に電気レオロジー粒子を分散させたシート状の機能性粘着素子の上面を露呈させた載置面と、前記機能性粘着素子に接触して配設された1対の電極とを有し、さらに前記1対の電極間に電圧を印加することにより前記電気レオロジー粒子に電場を作用させる電圧印加部と、前記電圧印加部を制御することにより前記載置面において前記機能性粘着素子によって電子部品を保持する粘着力を制御する制御部とを備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品供給部から取り出された電子部品を仮置きする中継ステージにおいて電子部品が載置される載置部を、電気絶縁性の粘着性媒体に電気レオロジー粒子を分散させたシート状の機能性粘着素子の上面を露呈させた載置面と、機能性粘着素子に接触して配設された1対の電極とを有する構成とし、1対の電極間に電圧を印加することにより電気レオロジー粒子に電場を作用させる電圧印加部を制御して、載置面において機能性粘着素子によって電子部品を保持する粘着力を制御することにより、サイズの異なる複数品種の電子部品を対象として安定して吸着保持が可能な中継ステージを備え多品種対応性に優れた電子部品実装装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の正面図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における中継ステージの構造説明図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における中継ステージに配置される電極部材の形状説明図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における中継ステージに用いられる機能性粘着素子の機能説明図
【図6】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における中継ステージ の部品保持動作を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず図1、図2を参照して、電子部品実装装置1の構成を説明する。電子部品実装装置1は基板に半導体チップなどの電子部品をボンディングによって実装する機能を有するものである。図1において基台2上には、部品供給ステージ3(部品供給部)、ユニット集合ステージ4および基板保持ステージ5(基板位置決め部)がこれらの並び方向をY方向に合わせて配列されている。部品供給ステージ3に備えられたウェハ保持テーブル3aには、実装対象となる電子部品である複数の半導体チップ6aが配列された半導体ウェハ6が保持されている。
【0011】
ユニット集合ステージ4は、送りねじ4bをモータ4cにより回転駆動する構成の直動機構(図2に示すX軸移動機構40参照)によってX方向に往復動する移動テーブル4aに、ツールストッカ15、部品回収部16、較正基準マーク17、中継ステージ18、部品認識カメラ24などの機能ユニットを集合的に配設した構成となっている。基板保持ステージ5は、基板7を保持する基板保持テーブル5aをXYテーブル機構53(図2参照)によって水平駆動する構成となっており、基板保持ステージ5によって位置決めされ保持された基板7には、部品供給ステージ3から取り出された半導体チップ6aが実装される。
【0012】
部品供給ステージ3、ユニット集合ステージ4および基板保持ステージ5の上方には、基台2のX方向の端部に位置して、Y軸フレーム8が支持ポスト8aによって両端部を支持されてY方向に架設されている。Y軸フレーム8の前面には、以下に説明する第1ヘッドユニット11、第2ヘッドユニット12をリニアモータ駆動によりY方向に案内して駆
動するヘッド移動機構9が組み込まれている。第1ヘッドユニット11には半導体チップ6aを保持して基板7に搭載する機能を有する部品実装ヘッド19が装着されており、第2ヘッドユニット12には基板7に電子部品接合用の接着剤を塗布する機能を有する塗布ヘッド20が装着されている。
【0013】
部品供給ステージ3、中継ステージ18および基板保持ステージ5の上方には、位置認識のために第1カメラ21、第2カメラ22、第3カメラ23が配設されている。第1カメラ21は部品供給ステージ3において取り出し対象の半導体チップ6aを撮像する。第2カメラ22は部品供給ステージ3から取り出されて中継ステージ18に位置補正のために仮置きされた半導体チップ6aを撮像する。また第3カメラ23は、基板保持ステージ5に保持された基板7を撮像して部品実装点の位置を認識する。またユニット集合ステージ4に配設された部品認識カメラ24は、部品供給ステージ3から取り出された半導体チップ6aを下方から撮像する。
【0014】
図2に示すように、部品供給ステージ3はXYテーブル機構31を備えており、XYテーブル機構31の上面に装着された水平な移動プレート32には、複数の支持部材33が立設されている。支持部材33は、上面に半導体ウェハ6が装着保持されるウェハ保持テーブル3aを支持している。半導体ウェハ6はウェハシート6bに複数の半導体チップ6aを所定配列で貼着した構成となっている。ウェハシート6bには、能動面を上向きにしたフェイスアップ姿勢で個片に分割された状態の複数の半導体チップ6aが貼着保持されている。
【0015】
部品供給ステージ3には、半導体ウェハ6から半導体チップ6aをピックアップするためのピックアップ作業位置[P1]が設定されている。第1カメラ21の位置はピックアップ作業位置[P1]に対応しており、第1カメラ21によって半導体ウェハ6を撮像した撮像結果を認識処理することにより、ピックアップ対象の半導体チップ6aの位置が検出される。ウェハ保持テーブル3aの内部においてピックアップ作業位置[P1]に対応する位置には、エジェクタ機構34が配設されている。
【0016】
エジェクタ機構34は、ウェハシート6bの下面側から半導体チップ6aをピンで突き上げることにより、半導体チップ6aのウェハシート6bからの剥離を促進する機能を有している。半導体チップ6aの取り出し時にエジェクタ機構34を昇降させてウェハシート6bの下面に当接させることにより、後述する部品移送ヘッド14による半導体チップ6aのウェハシート6bからの取り出しを容易に行うことができる。
【0017】
部品取り出し動作においては、XYテーブル機構31を駆動してウェハシート6bをXY方向に水平移動させることにより、ウェハシート6bに貼着された複数の半導体チップ6aのうち、取り出し対象となる所望の半導体チップ6aをピックアップ作業位置[P1]に位置させる。なおここでは、部品供給ステージ3として、ウェハシート6bに貼着されたウェハ状態の部品を供給する方式のウェハテーブルを用いる例を示したが、複数の部品を所定の平面配列で供給する部品トレイを、ウェハテーブルと交換自在に部品供給ステージ3に配置するようにしてもよい。
【0018】
部品供給ステージ3の上方には、半導体チップ6aをピックアップノズル14aによって吸着保持する部品移送ヘッド14が配設されている。部品移送ヘッド14はピックアップアーム13aによって保持されており、ピックアップアーム13aは、Y軸フレーム8の下面に縣吊して配置されたヘッド移動機構13から、部品供給ステージ3の上方に延出して設けられている。ヘッド移動機構13を駆動することにより、ピックアップアーム13aはXYZ方向に移動するともに、X方向の軸廻りに回転する。
【0019】
これにより部品移送ヘッド14は、部品供給ステージ3から半導体チップ6aをピックアップして、ユニット集合ステージ4に設けられた中継ステージ18に移送する動作を行う(矢印a)。また必要時には、部品移送ヘッド14をピックアップ作業位置[P1]の上方からX方向に退避させることが可能となっており、さらにピックアップアーム13aを回転させて部品移送ヘッド14を反転させることにより、ピックアップノズル14aに保持した半導体チップ6aの姿勢を表裏反転させることが可能となっている。ヘッド移動機構13、ピックアップアーム13aおよび部品移送ヘッド14は、部品供給ステージ3から電子部品を取り出して中継ステージ18に移送する部品移送機構を構成する。
【0020】
ユニット集合ステージ4および基板保持ステージ5は、ベースプレート52の上面に設けられており、ベースプレート52は基台2の上面に立設された複数の支持ポスト51によって下方から支持されている。ユニット集合ステージ4の移動テーブル4aには、ツールストッカ15、部品回収部16、較正基準マーク17、中継ステージ18および部品認識カメラ24が集合的に配設されている。ツールストッカ15には、第1ヘッドユニット11、第2ヘッドユニット12に装着される各種の作業ツールを収納する。部品回収部16は、部品供給ステージ3から取り出された後に、不良部品や混入した異種部品など基板7への実装が不適と判断された部品を廃棄回収する機能を有している。較正基準マーク17は、X軸移動機構40を継続して駆動する際に熱伸縮によって生じる機構的な位置誤差を、上方に配設された第2カメラ22によって撮像して較正するために設けられた基準マークである。
【0021】
中継ステージ18は、部品供給ステージ3と基板保持ステージ5との間に配置され、部品供給ステージ3から部品移送ヘッド14によって取り出された半導体チップ6aが載置される載置部18aを基部18b上に固定した構成となっている。中継ステージ18には中継位置[P2]が設定されており、第2カメラ22は中継位置[P2]に対応して配置されている。X軸移動機構40によって中継ステージ18を移動させることにより、中継ステージ18に載置された半導体チップ6aを中継位置[P2]に位置させて第2カメラ22によって撮像することができ、これにより中継ステージ18に載置された半導体チップ6aの位置が検出される。部品認識カメラ24は中継ステージ18に隣接して配置されており、同様にX軸移動機構40を駆動することにより、部品認識カメラ24を部品認識位置[P3]に位置させることができる。中継ステージ18に仮置きされて位置認識の後に取り出された半導体チップ6aは、部品認識位置[P3]にて部品認識カメラ24によって撮像され位置検出が行われる。
【0022】
基板保持ステージ5は、XYテーブル機構53上に基板7を保持する基板保持テーブル5aを設けた構成となっている。基板保持ステージ5には、半導体チップ6aを基板保持テーブル5aに保持された基板7に実装するための実装作業位置[P4]が設定されており、第3カメラ23は実装作業位置[P4]に対応して配置されている。第3カメラ23によって基板7を撮像することにより、基板7に設定された部品実装点7aの位置が検出される。そしてXYテーブル機構53を駆動することにより、基板保持テーブル5aは基板7とともにXY方向に水平移動し、基板7に設定された任意の部品実装点7aを実装作業位置[P4]に位置させることができる。
【0023】
次に、第1ヘッドユニット11、第2ヘッドユニット12について説明する。図2においてY軸フレーム8に設けられたヘッド移動機構9の前面には、第1ヘッドユニット11および第2ヘッドユニット12をY方向にガイドするための2条のガイドレール9aが設けられており、これらのガイドレール9aの間には以下に説明する第1ヘッドユニット11および第2ヘッドユニット12をY方向に駆動するためのリニアモータを構成する固定子9bが配設されている。ガイドレール9aには図示しないスライダがY方向にスライド自在に嵌合しており、このスライダは垂直な移動プレート11a,12aの背面に固着さ
れている。
【0024】
移動プレート11a,12aの背面には、固定子9bに対向してリニアモータを構成するする可動子(図示省略)が配設されている。これらのリニアモータを駆動することにより、第1ヘッドユニット11および第2ヘッドユニット12はガイドレール9aによってガイドされて、それぞれY方向に移動する。移動プレート11a,12aの前面には、それぞれ昇降機構11b,12bが配設されており、昇降機構11b,12bの前面には昇降プレート11c,12cが垂直方向にスライド自在に配設されている。昇降機構11b,12bを駆動することにより、昇降プレート11c,12cはそれぞれ昇降する。昇降プレート11cには、下部に部品保持ノズル19aを備えた部品実装ヘッド19が着脱自在に装着されており、昇降プレート12cには、2基の塗布ヘッド20が着脱自在に装着されている。
【0025】
部品実装ヘッド19は部品保持ノズル19aによって実装対象の電子部品である半導体チップ6aを保持する機能を有しており、部品移送ヘッド14によって部品供給ステージ3から取り出され中継ステージ18上に載置された半導体チップ6aを部品実装ヘッド19によって保持して基板7に実装する(矢印b)。すなわち部品実装ヘッド19が装着された第1ヘッドユニット11およびヘッド移動機構9は、中継ステージ18上に前述の部品移送機構によって移送された電子部品を保持して、基板保持ステージ5に位置決めされた基板7に実装する部品実装機構を構成する。
【0026】
第2ヘッドユニット12に装着された塗布ヘッド20は、部品接着用の樹脂接着剤であるペーストを収納したシリンジ20aおよびペーストを吐出する塗布ノズル20bを備えている。第2ヘッドユニット12を基板保持ステージ5に保持された基板7の上方に移動させて、塗布ヘッド20による塗布動作を行わせることにより、塗布ノズル20bから吐出したペーストを基板7の部品実装点7aに塗布する(矢印c)。
【0027】
次に図3、図4、図5を参照して、中継ステージ18において半導体チップ6aが載置される載置部18aの構成および機能について説明する。本実施の形態では、中継ステージ18に載置された半導体チップ6aを保持する手段として、従来装置において用いられていた真空吸着による方法に替えて、シート状の機能性粘着素子である電気レオロジー(ER)ゲルシート(以下、「ERゲルシート」と略記する。)の粘着力によって、半導体チップ6aを保持するようにしている。
【0028】
図3(a)、(b)、(c)は、載置部18aの上面図、側面図および下面図をそれぞれ示している。図3の各図に示すように、載置部18aは、水平な矩形状の保持プレート60の上面に同様に矩形状の電極基板61を重ねて配設し、さらに電極基板61の上面を部分的にERゲルシート62によって覆った構成となっている。保持プレート60、電極基板61の各コーナ部には、それぞれ取り付け孔60a、61aが同位置に設けられており、載置部18aは取り付け孔60a、61aを上方から挿通するボルト(図示省略)によって中継ステージ18の基部18b(図2参照)に締結固定される。
【0029】
ERゲルシート62は、図5に示すように、シリコーンオイル、塩化ジフェニル、トランスオイルなどの電気絶縁性の粘着性媒体62aに、シリカゲル、セルロース、ポリスチレン系イオン交換樹脂などの電気レオロジー(ER)粒子62b(以下、「ER粒子62b」と略記する。)を分散させたシート状の機能性粘着素子であり、ER粒子62bに電場を作用させることにより、粘性が変化する特性を有している。ここでは、電場が作用しない通常状態においてER粒子62bが粘着性媒体62aの上面に浮き出るように、また電場を作用させた状態においてER粒子62bが粘着性媒体62a内に沈み込んで、粘着性媒体62aの上面が平滑となるように、ERゲルシート62の組成が設定されている。
【0030】
ERゲルシート62が電極基板61の上面を覆った状態では、ERゲルシート62の下面には電極基板61の上面に配設された1対の電極66,67(図4参照)が接触しており、電極66,67間に数百ボルト程度の電圧を印加することにより、複数のER粒子62bは相互に作用する静電引力によって電場方向に配位連結する。これにより、ERゲルシート62の粘性が変化するとともに、ER粒子62bは粘着性媒体62aの内部において下方に移動して、粘着性媒体62aの表面はER粒子62bが存在しない平滑な状態となる。
【0031】
図4は、図3(b)におけるX−X矢視、すなわちERゲルシート62を除去した状態の電極基板61を示している。電極基板61の上面には、1対の電極66、67がY方向(図4において左右方向)に対向して配設されている。電極66、67は、銅膜などの金属膜を電極基板61の上面にエッチングなどの方法によってパターニングして形成されており、それぞれ接続用の環状端子66a、67a、基部66b、67b、電極部材66c、67cより構成される。
【0032】
開孔部を有する形状の接続用の環状端子66a、67aは、電極基板61のY方向の両側端部に設けられた端子孔61bに開孔部を一致させて配置されており、図3(b)に示すように、電圧印加用の端子63を電極基板61の下面とナット65との間に挟み込んだ状態で、導通ボルト64とナット65とを締結することにより、電極66、67は、図4に示す電圧印加部71と電気的に接続される。ここでは電極66が正側に、電極67が負側に接続される。保持プレート60の下面において端子63、ナット65が取り付けられる位置には、下面を部分的に切り欠いた逃がし部60bが設けられており、ナット65が保持プレート60の下面から突出しないようになっている。
【0033】
電圧印加部71は、図5に示すように、電圧を発生する電源装置71aおよび電圧印加回路を断接する開閉スイッチ71bを備えており、電源装置71aを作動させた状態で開閉スイッチ71bを開閉することにより、電極66、67への電圧印加がON/OFFされる。電圧印加部71は、制御部72によって制御され、電極66、67へ印加される電圧値の調整や電圧印加のON/OFFが制御される。これにより、ERゲルシート62によって半導体チップ6aを保持する粘着力が制御される。すなわち、電圧印加部71は、1対の電極66,67間に電圧を印加することにより、ER粒子62bに電場を作用させる。そして制御部72は、電圧印加部71を制御することにより載置面62cにおいてERゲルシート62によって半導体チップ6aを保持する粘着力を制御する。
【0034】
環状端子66a、67aはそれぞれX方向(図4において下方向)に細長の柵形状で設けられた基部66b、67bと連結されており、さらに基部66b、67bからは、それぞれ電極基板61の内側方向に向かって複数の櫛歯状の電極部材66c、67cが延出して設けられている。ここで、電極部材66cと電極部材67cとは、相互が隣接して正側と負側が常に対となるように、互い違いに組み合わせて配置されている。そしてERゲルシート62は、基部66b、67b、電極部材66c、67cの上面を覆う形で電極基板61に貼着され、ERゲルシート62が上方に露呈された上面は、載置部18aに載置された半導体チップ6aを粘着力によって保持する載置面62cとして機能する。
【0035】
すなわち上記構成において、中継ステージ18において半導体チップ6aが載置される載置部18aは、電気絶縁性の粘着性媒体62aにER粒子62bを分散させたシート状のERゲルシート62の上面を露呈させた載置面62cと、ERゲルシート62に接触して配設された1対の電極66,67とを有する形態となっている。さらに載置部18aは、水平な保持プレート60の上面に電極基板61を介して配設された1対の電極66,67を、ERゲルシート62によって覆って構成され、1対の電極66、67は、それぞれ
基部66b、67bから延出して設けられた複数の櫛歯状の電極部材66c、67cを同一平面内で互い違いに組み合わせて配列されている。なお、1対の電極の構成としては、本実施の形態に示すように複数の櫛歯状の電極部材66c、67cを組み合わせる形態以外にも、渦巻き状の2つの電極パターンを同心状に組み合わせる形態など、各種の平面幾何形状のものを用いることができる。
【0036】
次に図5を参照して、載置部18aの部品保持機能を説明する。まず、図5(a)は、開閉スイッチ71bが開状態となって、電極部材66c、67cの間に電圧が印加されていない状態を示している。この状態では、ERゲルシート62を構成するER粒子62bが粘着性媒体62aの上面、すなわち載置面62cに浮き出た形となっており、載置面62cは平滑な粘着性媒体62aの表面が本来有する粘着力を失う。このため、載置部18aに載置された半導体チップ6aには、載置面62cによる保持力が及ばない。
【0037】
これに対し図5(b)は、開閉スイッチ71bが閉状態となって、電極部材66c、67cの間に電源装置71aによって発生した電圧が印加されている状態を示している。この状態では、電極部材66c、67cの間に生じる電場EがERゲルシート62内のER粒子62bに作用し、ER粒子62bには分極が生じる。そしてこの分極によりER粒子62b相互に作用する静電引力によって、ER粒子62bは電場方向に配位連結する。これにより、ER粒子62bは粘着性媒体62aの内部において下方に移動して、粘着性媒体62aの表面から浮き出ていたER粒子62bは粘着性媒体62a内に沈み込み、載置面62cは平滑な粘着性媒体62aの表面が本来有する粘着力を回復する。このため、載置部18aに載置された半導体チップ6aには載置面62cによる保持力が及び、半導体チップ6aの位置が固定される。
【0038】
次に図6を参照して、中継ステージ18への半導体チップ6aの載置動作における部品移送ヘッド14の昇降動作、中継ステージ18からの半導体チップ6aの取り出し動作における部品実装ヘッド19の昇降動作と、載置部18aの部品保持動作との時系列的関連について説明する。図6において、タイミングt1は、部品供給ステージ3から半導体チップ6aをピックアップした部品移送ヘッド14が中継ステージ18の直上に到達し、下降を開始するタイミングを示している。この後、部品移送ヘッド14は高速で下降し、タイミングt2にて下降速度を低速に切り換えた後、タイミングt3にて半導体チップ6aを載置部18aの載置面62cに着地させる。
【0039】
次いで、半導体チップ6aを載置面62cに押し付けた状態を保持した後、タイミングt4にて部品移送ヘッド14は半導体チップ6aを載置面62cに残置した状態で上昇する。そしてこのタイミングt4に同期して、電圧印加部71による電圧印加をON状態にする。これにより、載置面62cは図5(b)に示す状態となり、部品移送ヘッド14によって載置された半導体チップ6aは、粘着性媒体62aの粘着力によって載置面62cに保持される。
【0040】
この後、部品実装ヘッド19による半導体チップ6aの取り出しが実行される。すなわち、タイミングt5は、部品実装ヘッド19が中継ステージ18の直上に到達し、下降を開始するタイミングを示している。この後部品実装ヘッド19は高速で下降し、タイミングt6にて下降速度を低速に切り換えた後、タイミングt7にて載置部18aの載置面62cに保持された状態の半導体チップ6aの上面に部品保持ノズル19aを当接させる。そしてこのタイミングt7に同期して、電圧印加部71による電圧印加をOFF状態にする。これにより、載置面62cは図5(a)に示す状態となり、粘着性媒体62aの粘着力による保持が解除された状態となる。次いで、半導体チップ6aを部品保持ノズル19aによって吸着保持した後、タイミングt8にて部品実装ヘッド19は半導体チップ6aとともに載置面62cから上昇する。
【0041】
なお図6に示す例では、タイミングt4〜タイミングt7の間だけ電圧印加をON状態とするようにしているが、この例は電圧印加が必須とされる最小の時間帯を示しており、この時間帯を先行または遅延させる形でON/OFFのタイミングを設定してもよい。すなわち、電圧印加をONするタイミングは、タイミングt4に先行したタイミングであってもよく、また電圧印加をOFFするタイミングは、タイミングt8において電圧印加がOFFとなっていれば、タイミングt7から遅延したタイミングであってもよい。
【0042】
上記説明したように、本発明の電子部品実装装置1は、部品供給ステージ3から取り出された半導体チップ6aを仮置きする中継ステージ18において半導体チップ6aが載置される載置部18aを、電気絶縁性の粘着性媒体62aにER粒子62bを分散させたERゲルシート62の上面を露呈させた載置面62cと、ERゲルシート62に接触して配設された1対の電極66,67とを有する構成とし、1対の電極間66,67に電圧を印加することによりER粒子62bに電場を作用させる電圧印加部71を制御して載置面62cにおいてERゲルシート62によって半導体チップ6aを保持する粘着力を制御するようにしたものである。
【0043】
この構成により、対象とする半導体チップ6aの形状やサイズに関係なく、載置面62cの全面に亘って保持力を確保することが可能となっている。したがって真空吸着によって電子部品を保持する従来技術における問題点、すなわち部品種のサイズに応じて吸着孔が配置された専用の中継ステージを部品種毎に準備する必要があって、設備費用のコストアップを招くという難点が解消される。これにより、サイズの異なる複数品種の半導体チップ6aを対象として安定して吸着保持が可能な中継ステージ18を備え、多品種対応性に優れた電子部品実装装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電子部品実装装置は、サイズの異なる複数品種の電子部品を対象として安定して吸着保持が可能な中継ステージを備え、多品種対応性に優れるという特徴を有し、リードフレームなどの基板に半導体チップなどの電子部品を実装する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 電子部品実装装置
3 部品供給ステージ
5 基板保持ステージ
6a半導体チップ
7 基板
9、13 ヘッド移動機構
14 部品移送ヘッド
18 中継ステージ
18a 載置部
19 部品実装ヘッド
60 保持プレート
61 電極基板
62 ERゲルシート
62a 粘着性媒体
62b ER粒子
62c 載置面
66、67 電極
66b、67b 基部
66c、67c 電極部材
71 電圧印加部
72 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給部から取り出した電子部品を基板位置決め部に位置決めされた基板に実装する電子部品実装装置であって、
前記基板位置決め部と前記部品供給部との間に配置され前記部品供給部から取り出された電子部品が載置される中継ステージと、前記部品供給部から前記電子部品を取り出して前記中継ステージに移送する部品移送機構と、前記中継ステージ上に前記部品移送機構によって移送された電子部品を保持して前記基板位置決め部に位置決めされた前記基板に実装する部品実装機構とを備え、
前記中継ステージにおいて前記電子部品が載置される載置部は、電気絶縁性の粘着性媒体に電気レオロジー粒子を分散させたシート状の機能性粘着素子の上面を露呈させた載置面と、前記機能性粘着素子に接触して配設された1対の電極とを有し、
さらに前記1対の電極間に電圧を印加することにより前記電気レオロジー粒子に電場を作用させる電圧印加部と、前記電圧印加部を制御することにより前記載置面において前記機能性粘着素子によって電子部品を保持する粘着力を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記載置部は、水平な保持プレートの上面に配設された前記1対の電極を前記シート状の機能性粘着素子によって覆って構成され、前記1対の電極は、それぞれ基部から延出して設けられた複数の櫛歯状の電極部材を同一平面内で互い違いに組み合わせて配列されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−124304(P2011−124304A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279151(P2009−279151)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】