説明

電気光学装置および電子機器

【課題】 保持容量に用いる容量用酸化膜を薄くすることにより、素子基板上に大きな段差が発生することを防止可能な電気光学装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】 アクティブマトリクス型の電気光学装置1において、画素スイッチング素子としての非線形素子5、および保持容量9を構成するにあたって、タンタル膜からなる素子用下電極61および容量用下電極62を陽極酸化してなる素子用酸化膜71および容量用酸化膜72の上層に、ITOなどの金属酸化物層や、酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層からなる素子用上電極81a、81bおよび容量用上電極84を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型の電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の電気光学装置では、互いに交差する方向に形成された走査線とデータ線の交差に対応して複数の画素が形成されている。これらの複数の画素を等価回路的にみたとき、TFT(Thin Film Transistor)からなる画素スイッチング素子と液晶容量とが直列接続されているとともに、液晶容量に対して保持容量が並列接続された構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に開示の電気光学装置では、素子基板の方に画素電極と共通電極とを形成し、画素電極と共通電極との間に発生する横電界を利用して液晶を駆動する、いわゆるIPS(In−Plane Switching)モードが採用されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成のように、画素スイッチング素子としてTFTを用いた場合には、露光、現像、エッチング処理などを含むフォトリソグラフィ工程や成膜工程を多数回、繰り返し行う必要があるため、製造プロセスが長く、製造コストが増大するという問題点がある。
【0005】
このような問題点を解消可能なものとして、タングステンなどを含有するタンタル合金層やタンタル単体膜からなる素子用下電極、その陽極酸化膜からなる素子用酸化膜、およびクロム層からなる素子用上電極を備えたTFD(Thin Film Diode)素子(非線形素子)を画素スイッチング素子として用いた電気光学装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−162602号公報
【特許文献2】特開平07−261200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、TFD素子を画素スイッチング素子として用いた電気光学装置において保持容量を構成するには、素子用酸化膜よりも厚い容量用酸化膜(誘電体膜)を形成する必要がある。それ故、保持容量が形成されている領域には、厚い容量用酸化膜に起因する大きな段差が発生してしまい、このような大きな段差は、ポリイミド膜にラビング処理を施して配向膜とする際にラビング不良を起こさせ、表示ムラが発生する原因となるので、好ましくない。
【0007】
また、IPSモードを採用した電気光学装置では、素子基板上の互いに交差する方向に第1の配線および第2の配線を形成することになる。また、容量用酸化膜を陽極酸化により形成する際に、下層側の第2の配線を給電線として用いると、第2の配線の表面にも厚い酸化タンタルが形成される結果、大きな段差が発生し、第1の配線と第2の配線との交差部分で第1の配線が断線するおそれがある。このような断線は、表示の点欠陥や線欠陥などの不具合の原因となる。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、保持容量に用いる容量用酸化膜を薄くすることにより、素子基板上に大きな段差が発生することを防止可能な電気光学装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、第1の配線と、該第1の配線に非線形素子を介して電気的に接続された画素電極と、該画素電極に対して前記液晶を介して対向する共通電極が形成された電気光学装置において、前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続され、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された保持容量が形成され、前記非線形素子は、素子用下電極と、該素子用下電極の上層に積層された素子用酸化膜と、該素子用酸化膜の上層に積層された素子用上電極とを備え、前記保持容量は、容量用下電極と、該容量用下電極の上層に積層され、前記素子用酸化膜より膜厚が厚い容量用酸化膜と、該容量用酸化膜の上層に積層された容量用上電極とを備え、前記容量用上電極は、金属酸化物層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層からなることを特徴とする。
【0010】
本願明細書において「直列接続」「並列接続」とは等価回路的に直列あるいは並列に電気的に接続していればよく、電極同士が直接接続している構成の他、他の電極、配線、回路などを介して電気的に接続している構成も含む意味である。
【0011】
本願発明者が、下電極、酸化膜および上電極が積層されたTFD素子や容量素子において、電流−電圧特性を低下させることなく酸化膜の膜厚を低減するための検討を行った結果、上電極を構成する金属材料の酸化物標準生成エンタルピーが高いほど、電流値が低いという新たな知見を得た。また、下電極と上電極との間に印加した電圧と電流値との関係(I−V特性)を求め、その切片より、界面の電位障壁高さを求めたところ、酸化物標準生成エンタルピーと電位障壁高さとは、概ね比例関係を示すという新たな知見を得た。このような知見によれば、酸化物標準生成エンタルピーが高い金属によって上電極を形成すれば、電流レベルが低いので、その分、酸化膜を薄くできることになる。ここで、酸化物標準生成エンタルピーが高いということは、酸化物が生成されにくいことを意味していることから、金属酸化物によって上電極を形成した場合も、電位障壁高さが高く、酸化膜を薄くできることになる。
【0012】
ここに本発明では、容量用上電極を、金属酸化物層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層によって構成してある。このため、容量用酸化膜については、従来のように容量用上電極をクロム層で構成した場合と比較して、膜厚を薄くしても、保持容量の漏れ電流や耐電圧を従来と同等レベルを確保できる。従って、保持容量の容量用酸化膜を薄くできるので、素子基板上に大きな段差が形成されない。よって、ポリイミド膜などにラビング処理を施して配向膜とする際、段差に起因するラビング不良が発生しないので、表示ムラの発生を防止できる。
【0013】
本発明において、前記素子用上電極は、例えば、前記容量用上電極と同一の導電材料からなる。このように構成すると、素子用酸化膜についても、従来のように容量用上電極をクロム層で構成した場合と比較して、膜厚を薄くすることができる。従って、陽極酸化後、非線形素子の非線形特性を向上させることを目的に絶縁膜中に水素を添加するための熱処理工程を行った際、絶縁膜中への水素の添加が、従来の膜厚と比較して絶縁膜全体に効果的に行われる。このため、非線形素子の非線形特性を向上させることができるので、電気光学装置のコントラスト特性を向上させることができる。また、容量用上電極および素子用上電極いずれについてもクロムを用いないので、環境保護に貢献できる。
【0014】
本発明において、前記素子用上電極については、前記容量用上電極と材料の異なる金属層によって構成してもよい。この場合、前記容量用上電極は、金属酸化物層、または酸化物標準生成エンタルピーが前記素子用上電極を構成する金属層よりも高い金属層からなることが好ましい。この場合、前記素子用上電極は、クロム層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層からなることが好ましい。このように構成すると、素子用酸化膜については膜厚を厚くしたまま、容量用酸化膜の膜厚を薄くできる。従って、保持容量の単位面積当たりの容量値を高くできるので、以下の式
容量比=(保持容量+液晶容量)/非線形素子の容量
で表される容量比を一定にするにあたって、保持容量の占有面積を縮小でき、画素開口率の向上を図ることができる。
【0015】
本発明において、前記金属酸化物層は、例えば、インジウム・錫酸化物層であり、前記の酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層は、例えば、タングステン層、モリブデン層、および銀層のうちのいずれかである。この場合の各層は、インジウム・錫酸化物、タングステン、モリブデン、銀を主成分としておれば、その他の成分が添加してあってもよい。ここで、容量用上電極などにインジウム・錫酸化物などの光透過性の導電膜を用いれば、画素内に同時形成される電極も、インジウム・錫酸化物などの光透過性の導電膜で構成できるので、画素開口率を向上することができる。
【0016】
このような電気光学装置のうち、代表的なものがIPSモードの電気光学装置であり、この電気光学装置では、前記素子基板には、前記第1の配線より下層側で当該第1の配線と交差する方向に延び、前記共通電極が直接あるいは他の導電層を介して接続する第2の配線が形成されている。このような構成の電気光学装置においては、第2の配線の上層に厚い酸化膜が容量用酸化膜と同時形成される場合があるが、このような場合でも、第2の配線の上層に形成される酸化膜は、従来と比較して薄い。それ故、第1の配線と第2の配線との交差部分に大きな段差が発生しないので、第1の配線の断線を防止することができる。
【0017】
本発明において、前記素子用酸化膜および前記容量用酸化膜は、前記素子用下電極および前記容量用下電極の表面に対する水蒸気酸化などといった各種の方法で形成することができるが、前記素子用下電極および前記容量用下電極の表面を陽極酸化し、前記素子用酸化膜については、前記素子用下電極の表面を陽極酸化してなる酸化膜として形成し、前記容量用酸化膜については、前記容量用下電極の表面を陽極酸化してなる酸化膜として形成することが好ましい。
【0018】
本発明に係る電気光学装置は、例えば、携帯電話機やモバイルコンピュータなどといった電子機器に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を説明する前に、図1を参照して、本願発明者が得た「酸化物標準生成エンタルピーと電位障壁高さとの関係」に関する新たな知見を説明しておく。
【0020】
図1は、下電極、酸化膜および上電極が積層されたTFD素子や容量素子において、上電極を構成する金属材料の酸化物標準生成エンタルピーΔHfと、酸化膜/上電極界面における電位障壁高さφsとの関係を示すグラフである。なお、図1において、クロム、タングステン、モリブデン、銀、インジウム・錫酸化物の各結果をCr、W、Mo、Ag、ITO(Indium Tin Oxide)として示してある。
【0021】
本願発明者は、下電極、酸化膜および上電極が積層されたTFD素子や容量素子において、上電極を構成する材料を種々変えて、下電極と上電極との間に印加した電圧と電流値との関係(I−V特性)を求め、その切片より、界面の電位障壁高さφsを求めたところ、以下の関係
電位障壁高さφs
Cr<W<Mo<Ag<(ITO)
酸化物標準生成エンタルピーΔHf
Cr<W<Mo<Ag<(ITO)
が得られた。また、上電極を構成する酸化物標準生成エンタルピーΔHfと電位障壁高さφsとは、図1に示すように、概ね比例関係を示すという知見が得られた。
【0022】
従って、酸化物標準生成エンタルピーΔHfが高い金属によって上電極を形成すれば、界面の電位障壁高さφsが高く、流れる電流値が低いので、その分、酸化膜を薄くできることになる。ここで、酸化物標準生成エンタルピーが高いということは、酸化物が生成されにくいことを意味していることから、金属酸化物によって上電極を形成した場合も、酸化膜を薄くできることになる。従って、図1には、インジウム・錫酸化物については酸化物標準生成エンタルピーが0として、インジウム・錫酸化物の結果もプロットしてある。
【0023】
ここに、本発明では、以下に詳述するように、アクティブマトリクス型の電気光学装置において、保持容量を構成する容量用上電極を、ITOなどの金属酸化物層、またはタングステン、モリブデン、銀などの酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層によって構成してある。このため、容量用酸化膜については、従来のように容量用上電極をクロム層で構成した場合と比較して、膜厚を薄くしても漏れ電流や耐電圧を従来と同等レベルを確保できることになる。
【0024】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明を適用した電気光学装置を説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺が各層や各部材ごとに異なる場合がある。また、各図においては、断面図および平面図に関わらず、TFD素子(非線形素子)の素子用下電極などを構成する導電膜ついて右下がりの斜線を付し、TFD素子の素子用上電極などを構成する導電膜については右上がりの斜線を付してある。
【0025】
(全体構成)
図2は、本発明が適用される電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。図3は、図2に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0026】
図2に示す電気光学装置1は、IPSモードを採用したアクティブマトリクス型の液晶装置であり、この電気光学装置1では、X方向に延びた走査線3(第1の配線)と、Y方向に延びたデータ線2(第2の配線)との交差点に対応して複数の画素10がマトリクス状に構成されている。データ線2はデータ線駆動回路12に接続され、走査線3は走査線駆動回路13に接続されている。本形態では、走査線3に非線形素子5が接続され、この非線形素子5を介して画素電極83が接続されている。データ線2には共通電極63が接続している。共通電極63と画素電極83との間には液晶容量4が形成され、等価回路的にみると、液晶容量4は、非線形素子5に対して直列接続されている。また、本形態では、データ線2と画素電極83との間に保持容量9が形成されており、等価回路的にみると、保持容量9は、非線形素子5に直列接続され、かつ、液晶容量4には並列接続されている。
【0027】
図3に示すように、本形態の電気光学装置1は、対向配置された一対の基板を有している。一方の基板は、非線形素子5や画素電極83が形成された素子基板20であり、他方の基板は対向基板30である。素子基板20と対向基板30とはシール材14によって貼り合わされ、その内側に液晶11が封入されている。本形態の電気光学装置1では、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ15が実装されている。
【0028】
本形態において、液晶11はIPSモードで駆動されるため、詳しくは後述するように、素子基板20の内側表面には、複数本の走査線3、走査線3に接続される複数の非線形素子5、および非線形素子5と1対1に接続される画素電極83が形成され、素子基板20の内側表面には、さらに、図2に示したデータ線2、共通電極63および保持容量9も形成されている。なお、素子基板20において、画素電極83などの表面には、ポリイミドなどからなる配向膜22が形成されている。対向基板30の内側表面には、ポリイミドなどからなる配向膜32が形成されている。但し、TNモードやVANモードの電気光学装置と違って、本形態の電気光学装置1では、対向基板30の内側表面には共通電極(対向電極)が形成されていない。なお、電気光学装置1をカラー表示用に構成する場合、対向基板30には、「R」、「G」、「B」のカラーフィルタが形成されるが、本発明とは直接、関係しないので、その図示や説明を省略する。また、対向基板30には、ブラックマトリクスなどと称せられる遮光膜や、平坦化膜が形成される場合もあるが、これらについても説明を省略する。また、素子基板20の外側表面や対向基板30の外側表面には、偏光板や位相差板などの光学部材が配置されるが、これらの光学部材についても図示および説明を省略する。
【0029】
(素子基板20の詳細構成)
図4は、本発明を適用した電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図4のA−A′線、B−B′線、C−C′線、D−D′線で電気光学装置を切断したときの構造を模式的に示す断面図である。図6(a)、(b)はそれぞれ、本発明を適用した電気光学装置および従来の電気光学装置における非線形素子および保持容量の構成を比較して示す説明図である。
【0030】
図4および図5(a)、(b)、(c)、(d)において、本形態の電気光学装置1では、X方向に延びた走査線3(第1の配線)と、Y方向に延びたデータ線2(第2の配線)との交差点に対応して複数の画素10がマトリクス状に構成されている。
【0031】
走査線3は、後述する理由からITO膜からなる金属配線である。これに対して、データ線2は、タンタル単体膜やタンタル合金膜などのタンタル膜からなる金属配線である。データ線2は、タンタル膜に変えて、ニオブ膜やニオブとタンタルとの合金膜を用いることがある。また、データ線2は、タンタル膜やニオブ膜などに窒素や酸素をドープすることもある。
【0032】
本形態では、データ線2と走査線3との交差点の近傍に非線形素子5が形成されており、非線形素子5は、データ線2に並列する方向に延びて走査線3と交差する短冊状の素子用下電極61を備えている。図4および図5(a)、(b)に示すように、素子用下電極61の表面(上面および側面の双方)には、素子用下電極61の表面を酸化してなる素子用酸化膜71が形成されている。素子用酸化膜71の表面には、走査線3が第1の素子用上電極81aとして通っており、素子用下電極61、素子用酸化膜71、および走査線3(第1の素子用上電極81a)によって第1のTFD素子5aが形成されている。また、素子用酸化膜71の表面には、走査線3と並列するように第2の素子用上電極81bが形成されており、素子用下電極61、素子用酸化膜71、および第2の素子用上電極81bによって第2のTFD素子5bが形成されている。このようにして、非線形素子5は、第1のTFD素子5aと第2のTFD素子5bとが極性を逆向きに直列接続されたBack−to−Back構造を有している。なお、素子用下電極61は、タンタル膜によって形成されている。
【0033】
図4に示すように、非線形素子5の第2の素子用上電極81bには、X方向に延びた画素配線部82、Y方向に延びた複数本の櫛歯状の画素電極83、およびX方向に延びて複数本の画素電極83の先端部同士を連結する容量用上電極84がこの順に接続されている。
【0034】
ここで、第2の素子用上電極81b、画素配線部82、画素電極83、および容量用上電極84は、走査線3(第1の素子用上電極81a)と同時形成されたITO膜によって形成されている。
【0035】
また、画素10内には、データ線2からのX方向への突出部分によって容量用下電極62が構成され、容量用下電極62からは複数本の櫛歯状の共通電極63がY方向に延びている。ここで、容量用下電極62および共通電極63はタンタル膜からなる。
【0036】
図4および図5(c)に示すように、共通電極63と画素電極83とは、X方向において交互に配置され、その間で液晶11を駆動する。言い換えれば、画素電極83、液晶11および共通電極63によって、図2に示す液晶容量4が構成されている。
【0037】
図4および図5(d)に示すように、容量用下電極62の表面側には、この容量用下電極62を酸化してなる容量用酸化膜72が形成されており、容量用上電極84は、容量用酸化膜72を介して容量用下電極62に対向している。このようにして、容量用下電極62、容量用酸化膜72、および容量用上電極84によって保持容量9が構成されている。
【0038】
再び、図4および図5(a)、(b)、(c)、(d)において、データ線2は、製造方法を後述するように、素子用下電極61や容量用下電極62を陽極酸化して素子用酸化膜71および容量用酸化膜72を形成するための給電線として利用されることから、陽極酸化の際、データ線2および共通電極63の表面にも、容量用酸化膜72と膜厚が同一の絶縁層73、74が形成されている。従って、走査線3とデータ線2との交差部分では、走査線3とデータ線2との間に絶縁層74が介在している。なお、容量用酸化膜72、および絶縁層73、74の膜厚は、素子用酸化膜71よりも厚い。
【0039】
本形態の電気光学装置1において、走査線3(第1の素子用上電極81a)、第2の素子用上電極81b、画素配線部82、画素電極83、および容量用上電極84は、いずれもITO膜から構成されており、このようなITO膜を上電極として用いた非線形素子5および保持容量9では、上電極をクロム層で構成した場合と比較して、その電流−電圧特性(I−V特性)から得られる、酸化膜と上電極界面での電位障壁高さφsが高く、電流レベルが低い。従って、本形態では、非線形素子5および保持容量9の各々に対して、上電極にクロム層を用いた従来の非線形素子や保持容量と同一のI−V特性を確保しようとした場合に、素子用酸化膜71および容量用酸化膜72の膜厚を薄くできる。
【0040】
(電気光学装置の製造方法)
図7(a)〜(c)および図8(a)〜(c)は、本形態の電気光学装置の製造工程のうち、素子基板20の製造工程を示す説明図である。なお、図7および図8において、右側領域には1つの画素の平面図を示し、右側領域には、図4のA−A′線に相当する位置での断面図を示してある。
【0041】
まず、図7(a)に示すように、素子基板20の表面全体にタンタル酸化膜などにより下地層21を形成した後、素子基板20の全面にタンタル膜6aを形成する。
【0042】
このようなタンタル膜6aは、スパッタ法などによって成膜できる。スパッタ法では、RFスパッタ装置やマグネトロンスパッタ装置などで行われる。このような成膜装置において、チャンバー内に下部電極用の原料(タンタル)のターゲットを配置し、真空ポンプなどの排気装置でチャンバー内を減圧し、アルゴンなどの不活性ガスを導入した状態で、高周波電界を印加してプラズマを形成する。その結果、プラズマ中の正イオンがターゲットに加速衝突し、その反動でターゲット材料が素子基板20に堆積する。なお、成膜の際、チャンバー内に不活性ガスとともに窒素ガスあるいは酸素ガスを導入すれば、窒素添加タンタル膜や酸素添加タンタル膜を形成することができる。このような窒素や酸素の導入は、チャンバー内にアルゴンと窒素や酸素とを各々同時に導入する方法、あるいはチャンバー内にアルゴンと窒素や酸素との混合ガスを導入する方法により実現できる。また、窒素添加タンタルや酸素添加タンタルをターゲットとして用いてスパッタ成膜を行って、窒素添加タンタル膜や酸素添加タンタル膜を形成してもよい。さらに、スパッタ法に代えて、イオンプレーティング法、EB蒸着法、PLD法などといったその他のPVD法を用いて、タンタル膜6aを形成してもよい。
【0043】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル膜6bをパターニングし、図7(b)に示すように、データ線2、素子用下電極61、容量用下電極62、および共通電極63を備えたタンタルパターン6bを形成する。ここで、素子用下電極61は、データ線2に対してブリッジ部6cを介して接続している。
【0044】
次に、データ線2から給電してタンタルパターン6bの表面全体に陽極酸化を行い、図7(c)に示すように、タンタルパターン6bの表面にタンタルの陽極酸化膜からなる酸化膜7aを形成する。この工程で行う陽極酸化法では、燐酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩やフタル酸塩などの芳香族カルボン酸塩の水溶液或いはアルコール溶液などの電解液(化成液)に素子基板20を浸漬させ、電解液中において陰極板と対向させた状態で、タンタルパターン6bと陰極板との間に電圧を印加する。上記の芳香族カルボン酸塩としては、サリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウム、フタル酸ジアンモニウムなどを用いることができる。
【0045】
この工程で形成される酸化膜7aの膜厚は例えば10〜100nm程度であり、従来と比較して薄い。このような酸化膜7aのうち、素子用下電極61の表面に形成された酸化膜7aが素子用酸化膜71である。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン6bおよびその表面に形成された酸化膜7aを、図8(c)に示すようにパターニングし、ブリッジ部6cを除去する。その結果、表面に素子用酸化膜71が形成された素子用下電極61が、データ線2、容量用下電極62、および共通電極63を備えたタンタルパターン6dから島状に分離される。
【0047】
次に、データ線2から給電してタンタルパターン6dの表面全体に陽極酸化を行い、図8(b)に示すように、陽極酸化膜からなる酸化膜7bを形成する。この工程で行う陽極酸化法でも、酸化膜7aを形成した工程と同様、燐酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩やフタル酸塩などの芳香族カルボン酸塩の水溶液或いはアルコール溶液などの電解液(化成液)に素子基板20を浸漬させ、電解液中において陰極板と対向させた状態で、タンタルパターン6bと陰極板との間に電圧を印加する。上記の芳香族カルボン酸塩としては、サリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウム、フタル酸ジアンモニウムなどを用いることができる。
【0048】
この工程では、酸化膜7aを形成した工程と比較して陽極酸化電圧が高く、酸化膜7bの膜厚は例えば50〜125nm程度であり、素子用酸化膜71の膜厚よりも厚い。但し、酸化膜7aの膜厚は、従来と比較して薄い。この酸化膜7bのうち、容量用下電極62の表面に形成された酸化膜が容量用酸化膜72である。その際、データ線2および共通電極63の表面にも絶縁膜73、74が形成されるが、素子用下電極61の表面には、酸化膜7bは形成されない。
【0049】
次に、各絶縁層の膜質や絶縁性を向上させ、素子特性のばらつきを低減するとともに素子特性の経時的安定性を得るために、320〜400℃で10〜120分程度、熱処理工程を行う。このような工程は、水素を含有する雰囲気中で行い、絶縁膜中に水素を添加することにより、非線形素子5の非線形特性を改善する。
【0050】
次に、素子基板20の全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、ITO膜を、図8(c)に示すようにパターニングし、走査線3(第1の素子用上電極81a)、第2の素子用上電極81b、画素電極83、および容量用上電極84を形成する。その結果、第1の素子用下電極61、素子用酸化膜71、および走査線3(第1の素子用上電極81a)を備えた第1のTFD素子5aと、第1の素子用下電極61、素子用酸化膜71、および第2の素子用上電極81bを備えた第2のTFD素子5bが形成され、第1のTFD素子5aおよび第2のTFD素子5bによって、Back−to−Back構造の非線形素子5が形成される。また、容量用下電極62、容量用酸化膜72、および容量用上電極84によって保持容量9が形成される。さらに、画素電極83に対して共通電極63が対向するように形成される。
【0051】
しかる後、素子基板20の全面にポリイミド樹脂などを塗布、焼成した後、ラビング処理を行い、図3および図5に示すように、配向膜22を形成する。このようにして素子基板20を形成する。
【0052】
このようにして製造した素子基板20は、配向膜32が形成された対向基板30とシール材14によって貼り合わせた後、シール材14の途切れ部分から液晶11を注入し、しかる後に、シール材14の途切れ部分を封止材で封止する。これにより、電気光学装置1が完成する。
【0053】
(本形態の主な効果)
以上説明したように本形態では、クロム膜に代えて、ITO膜によって、走査線3(第1の素子用上電極81a)、第2の素子用上電極81b、および容量用上電極84を形成しているため、図1を参照して説明した理由から、図6(a)に示すように、本形態では、図6(b)に示す従来例と比較して、素子用酸化膜71および容量用酸化膜72を薄くできる。特に、容量用酸化膜72は、素子用酸化膜71より厚いので、容量用酸化膜72を薄くすると、素子基板20に形成される段差を小さくできる。このため、ポリイミド膜などにラビング処理を施して配向膜22とする際、段差に起因するラビング不良が発生しないので、表示ムラの発生を防止できる。
【0054】
また、素子用酸化膜71および容量用酸化膜72の膜厚を薄くできるので、陽極酸化時間を短くできる。それ故、素子基板20を形成する際の陽極酸化工程のタクトを短縮することができるので、製造コストを低減できる。
【0055】
また、素子用酸化膜71の膜厚が薄いので、陽極酸化後の熱処理工程で絶縁膜中への水素の添加が、従来の膜厚と比較して絶縁膜全体に効果的に行われる。このため、非線形素子5の非線形特性を向上させることができるので、電気光学装置1のコントラスト特性を向上させることができる。
【0056】
さらに、データ線2において金属部分として残るタンタルの膜厚が、従来のデータ線2において金属部分として残るタンタル層より厚いので、データ線2の抵抗を低減できる。逆にいえば、データ線2の抵抗を同一レベルでよいのであれば、データ線2を構成するためのタンタル膜6aを薄く形成すればよいことになる。
【0057】
さらにまた、本形態の電気光学装置1は、IPSモードが採用されているため、素子基板20には、走査線3より下層側で走査線3と交差する方向に延びたデータ線2が形成されているが、このデータ線2に形成された絶縁層73も、従来と比較して薄い。このため、データ線2の周辺でも、そこに形成される段差は、保持容量9が形成されている領域の段差と同様、従来と比較して低い。それ故、走査線3とデータ線2との交差部分において、走査線3が断線することがない。
【0058】
しかも、容量用上電極84および素子用上電極81a、81bのいずれについてもクロムを用いないので、環境保護に貢献できる。
【0059】
さらに、容量用上電極84および素子用上電極81a、81bのいずれをもITOを用いるため、画素電極83などもITOで構成できるので、画素開口率を向上することができる。
【0060】
[実施の形態1の変形例]
上記実施の形態1では、酸化膜/ITO膜界面での電位障壁高さφsが高いとして、走査線3(第1の素子用上電極81a)、第2の素子用上電極81b、および容量用上電極84をITO膜によって構成したが、図1に示す酸化物標準生成エンタルピーΔHfと電位障壁高さφsとの関係からすれば、走査線3(第1の素子用上電極81a)、第2の素子用上電極81b、および容量用上電極84をタングステン(W)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)によって形成した場合も、クロム(Cr)を用いた場合と比較して電位障壁高さφsが高いので、素子用酸化膜71および容量用酸化膜72の膜厚を薄くできるという利点がある。
【0061】
[実施の形態2]
図9は、本発明を適用した電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。図10(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置を図9のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線に相当する位置で切断したときの構造を模式的に示す断面図である。なお、本形態の電気光学装置は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0062】
実施の形態1では、第1の素子用上電極81a、および第2の素子用上電極81bが容量用上電極84と同一材料からなる例であったが、本形態のように、第1の素子用上電極81a、および第2の素子用上電極81bが容量用上電極84と異なる材料によって形成してもよい。
【0063】
すなわち、本形態では、図9および図10(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、走査線3、画素配線部82、画素電極83、および容量用上電極84は、実施の形態1と同様、ITO膜によって形成され、容量用酸化膜72は、従来のように容量用上電極をクロム膜で形成した場合と比較して薄い。
【0064】
これに対して、非線形素子5の第1のTFD素子5aには、クロム膜からなる第1の素子用上電極81aが形成され、この第1の素子用上電極81aの上層にITO膜からなる走査線3が形成されている。また、非線形素子5の第2のTFD素子5bには、クロム膜からなる第2の素子用上電極81bが形成され、この第2素子用上電極81bの上層に、画素電極83など含むITO膜パターンが形成されている。このため、素子用酸化膜71は、従来のように素子用上電極をクロム膜で形成した場合と同等である。
【0065】
従って、本形態では、素子用酸化膜71については膜厚を厚くしたまま、容量用酸化膜72の膜厚を薄くできる。従って、保持容量9の単位面積当たりの容量値を高くできるので、以下の式
容量比=(保持容量9+液晶容量4)/非線形素子5の容量
で表される容量比を一定にするにあたって、保持容量9の占有面積を縮小でき、画素開口率の向上を図ることができる。
【0066】
また、容量用上電極84にはITOを用いるため、画素電極83などもITOで構成できるので、画素開口率を向上することができる。
【0067】
このような構成の素子基板20を製造するには、実施の形態1において、図8(b)を参照して説明した工程の後、クロム膜の成膜工程およびパターニング工程によって、クロム膜からなる第1の素子用上電極81aおよび第2の素子用上電極81bを形成すればよい。
【0068】
[実施の形態2の変形例]
上記実施の形態2では、容量用上電極84がITO膜によって形成され、第1の素子用上電極81aおよび第2の素子用上電極81bがクロム膜で形成されていたが、容量用上電極84については、酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高く、かつ、酸化物標準生成エンタルピーが素子用上電極81a、81bを構成する金属層よりも高い金属層であれば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)からなる構成であってもよい。この場合、素子用上電極81a、81bについてはクロムに限定されるものではないが、素子用酸化膜71の膜厚を従来と同等か、あるいは従来より薄くするという観点からすれば、素子用上電極81a、81bについても、クロム層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層(タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)など)であることが好ましい。
【0069】
[その他の実施の形態]
上記形態では、X方向に延びた走査線3(第1の配線)をITO膜など、電位障壁高さφsが高い導電膜で形成し、Y方向に延びたデータ線2(第2の配線)をタンタル膜としたが、X方向に延びた走査線3をタンタル膜からなる第2の配線とし、Y方向に延びたデータ線2をITO膜など、電位障壁高さφsが高い導電膜で形成してもよい。また、上記形態では、給電線を第2の配線として残した構成であったが、陽極酸化後に給電線を除去した電気光学装置、あるいは絶縁膜の形成に陽極酸化に代えて、水蒸気酸化などの方法を採用したため、給電線を必要としない電気光学装置に本発明を適用してもよい。
【0070】
上記形態では、極性を逆向きにして第1のTFD素子5aと第2のTFD素子5bとを直列接続した非線形素子5が用いたが、極性を逆向きにして2つのTFD素子を並列接続した非線形素子5を画素スイッチング素子として用いてもよい。このような非線形素子を用いた場合も、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称であるため、反転駆動方式を採用した場合でも、品位の高い画像を安定して表示できる。本形態では、共通電極63がタンタル膜から構成され、画素電極83がITO膜から構成されているが、例えば、タンタル膜とITO膜とを電気的に接続することにより、共通電極63および画素電極83の双方をタンタル膜とした構成、あるいは共通電極63および画素電極83の双方をITO膜とした構成などを採用してもよい。なお、このようなタンタル膜とITO膜とを電気的に接続するには、素子基板20の製造工程において、ブリッジ部をエッチング除去する際、タンタル膜およびその表面に形成された酸化膜を部分的に除去してタンタル膜の端面を露出させ、この端面とITO膜とを接続すればよいので、接続を図るための工程を別途、行う必要がない。
【0071】
上記形態では、IPSモードの電気光学装置に本発明を適用したが、FFSモードの電気光学装置に本発明を適用してもよい。
【0072】
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した電気光学装置1は、携帯電話機やモバイル型のパーソナルコンピュータの他、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどの電子機器に適用できる他、30インチを越えるような大画面を備えた電子機器を構成するのに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】下電極、酸化膜および上電極が積層されたTFD素子や容量素子において、上電極を構成する金属材料の酸化物標準生成エンタルピーΔHfと、酸化膜/上電極界面における電位障壁高さφsとの関係を示すグラフである。
【図2】本発明が適用される電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図4のA−A′線、B−B′線、C−C′線、D−D′線で電気光学装置を切断したときの構造を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置および従来の電気光学装置における非線形素子および保持容量の構成を比較して示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の製造工程のうち、素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の製造工程のうち、素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図10】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図9のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線で電気光学装置を切断したときの構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1・・電気光学装置、2・・データ線(第2の配線)、3・・走査線(第1の配線)、5・・非線形素子、5a・・第1のTFD素子、5b・・第2のTFD素子、4・・液晶容量、9・・保持容量、10・・画素、20・・素子基板、30・・対向基板、61・・素子用下電極、62容量用下電極、63・・共通電極、71・・素子用酸化膜、72・・容量用酸化膜、81a、81a′・・第1の素子用上電極、81b、81b′・・第2の素子用上電極、83・・画素電極、84・・容量用上電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、第1の配線と、該第1の配線に非線形素子を介して電気的に接続された画素電極と、該画素電極に対して前記液晶を介して対向する共通電極が形成された電気光学装置において、
前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続され、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された保持容量が形成され、
前記非線形素子は、素子用下電極と、該素子用下電極の上層に積層された素子用酸化膜と、該素子用酸化膜の上層に積層された素子用上電極とを備え、
前記保持容量は、容量用下電極と、該容量用下電極の上層に積層され、前記素子用酸化膜より膜厚が厚い容量用酸化膜と、該容量用酸化膜の上層に積層された容量用上電極とを備え、
前記容量用上電極は、金属酸化物層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記素子用上電極は、前記容量用上電極と同一の導電材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記素子用上電極は、金属層によって構成され、
前記容量用上電極は、金属酸化物層、または酸化物標準生成エンタルピーが前記素子用上電極を構成する金属層よりも高い金属層からなることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記素子用上電極は、クロム層、または酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層からなることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記金属酸化物層は、インジウム・錫酸化物層であり、
前記の酸化物標準生成エンタルピーがクロムよりも高い金属層は、タングステン層、モリブデン層、および銀層のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記素子基板には、前記第1の配線より下層側で当該第1の配線と交差する方向に延び、前記共通電極が直接あるいは他の導電層を介して接続する第2の配線が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記素子用酸化膜は、前記素子用下電極の表面を陽極酸化してなる酸化膜であり、
前記容量用酸化膜は、前記容量用下電極の表面を陽極酸化してなる酸化膜であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−17825(P2007−17825A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201179(P2005−201179)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】