電気光学装置及び電子機器
【課題】表示装置の厚みを低減する。
【解決手段】互いに対向する電極27及び共通電極23間に発光層が介在した構成を有し、電極27及び共通電極23間の電位差によって前記発光層が発光するELパネル3と、平面視でELパネル3に重なった状態でELパネル3からの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する表示パネル5と、ELパネル3及び表示パネル5の間に介在し、ELパネル3からの前記光の進行方向を規制するレンチキュラレンズ7と、を有し、表示パネル5は、ELパネル3からの前記光がレンチキュラレンズ7を介して前記複数の画素に照射される。
【解決手段】互いに対向する電極27及び共通電極23間に発光層が介在した構成を有し、電極27及び共通電極23間の電位差によって前記発光層が発光するELパネル3と、平面視でELパネル3に重なった状態でELパネル3からの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する表示パネル5と、ELパネル3及び表示パネル5の間に介在し、ELパネル3からの前記光の進行方向を規制するレンチキュラレンズ7と、を有し、表示パネル5は、ELパネル3からの前記光がレンチキュラレンズ7を介して前記複数の画素に照射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性表示をすることができる電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置の1つとして、複数の方向から見たときに、それぞれの視方向ごとに異なる画像を表示(以下、指向性表示と呼ぶ)することができる表示装置が知られている。このような表示装置としては、左右の異なった視点から撮影された2つの視差画像を、レンチキュラレンズを介して左眼と右眼とで観察することにより、観察者に立体的な画像として視認させることができるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、他の表示装置として、発光制御液晶パネルと表示パネルとの間に、レンチキュラレンズが介在した構成を有したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−173034号公報(第7頁、図10)
【特許文献2】特開2006−259191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献2に記載された表示装置において、発光制御液晶パネルは、バックライトからの光を透過させたり、遮光したりして、レンチキュラレンズに入射させる光を制御する機能を有している。レンチキュラレンズに入射された光は、表示パネルに射出される。このとき、表示パネルに射出される光は、レンチキュラレンズによって指向性が付与される。
【0005】
つまり、特許文献2に記載された表示装置では、発光制御液晶パネルによってレンチキュラレンズに対する光の入射部位が制御され、表示パネルに射出される光の方向がレンチキュラレンズによって制御される。一方、表示パネルにおいては、発光制御液晶パネルによるレンチキュラレンズに対する光の入射部位の制御(以下、発光制御と呼ぶ)にあわせて、視方向ごとの画像が切り替えられる。これにより、2人の観察者に、別々の画像や立体的な画像を視認させることができる。
【0006】
特許文献1に記載された表示装置では、表示部の画素が左眼画像用と右眼画像用とに区分されている。特許文献2に記載された表示装置では、発光制御にあわせて表示パネルでの視方向ごとの画像を切り替えるので、表示パネルの画素を視方向ごとに区分する必要がない。このため、同じ画面サイズで比較した場合、特許文献2の表示装置は、特許文献1の表示装置よりも表示パネルの解像度が大きい。換言すれば、特許文献2の表示装置では、特許文献1の表示装置よりも、同じ解像度で、画面サイズの小型化が図られる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された表示装置では、発光制御液晶パネルを有しているので、表示装置の厚みを低減することが困難であるという未解決の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0009】
[適用例1]互いに対向する1組の電極間に介在した構成を有し、前記1組の電極間の電位差によって前記発光層が発光するELパネルと、平面視で前記ELパネルに重なった状態で前記ELパネルからの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する画像形成パネルと、前記ELパネル及び前記画像形成パネルの間に介在し、前記ELパネルからの前記光の進行方向を規制する光学素子と、を有し、前記画像形成パネルは、前記ELパネルからの前記光が前記光学素子を介して前記複数の画素に照射されることを特徴とする電気光学装置。
【0010】
適用例1の電気光学装置は、発光層を有するEL(Electro Luminescence)パネルと、ELパネルからの光が照射される複数の画素を有する画像形成パネルとを有している。この電気光学装置では、ELパネルからの光が照射される複数の画素のそれぞれについて、光の透過及び遮断の切り替えが制御されることによって画像が形成される。また、この電気光学装置は、ELパネルと画像形成パネルとの間に、ELパネルからの光の進行方向を規制する光学素子が介在している。つまり、この電気光学装置では、光学素子によって進行方向が規制された光が画像形成パネルの複数の画素に照射されるので、指向性表示を行うことができる。また、この電気光学装置では、発光層を有するELパネルからの光を画像形成パネルの複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、電気光学装置の厚みを低減しやすくすることができる。
【0011】
[適用例2]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる複数の発光領域が前記第1方向とは交差する第2方向に並列しているとともに、前記発光層が前記発光領域ごとに独立して発光可能に構成されており、前記光学素子は、平面視で、前記ELパネルと前記複数の画素とが重なる領域の輪郭を前記第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有するとともに、前記第3方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズが、前記第2方向に配列したレンチキュラレンズで構成されており、各前記シリンドリカルレンズは、前記ELパネル、前記レンチキュラレンズ及び前記画像形成パネルを前記第2方向に沿って切断したときの断面が、前記画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、前記弓形の弦に相当する部位が、4n(nは1以上の自然数)個の前記発光領域にかかる長さを有していることを特徴とする電気光学装置。
【0012】
適用例2では、ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる発光領域の複数個が第1方向とは交差する第2方向に並列しており、発光層が発光領域ごとに独立して発光可能に構成されている。光学素子は、複数のシリンドリカルレンズを配列したレンチキュラレンズで構成されている。各シリンドリカルレンズは、平面視でELパネルと複数の画素とが重なる領域の輪郭を、第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有している。複数のシリンドリカルレンズは、第3方向に沿って延びているとともに、第2方向に配列している。そして、各シリンドリカルレンズは、電気光学装置を第2方向に沿って切断したときの断面が、画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、弓形の弦に相当する部位が、4n個の発光領域にかかる長さを有している。この電気光学装置では、各シリンドリカルレンズの弦に相当する部位にかかる4n個の発光領域のうちで発光させる発光領域の個数を制御することによって、2つの観察位置のそれぞれに向けて、それぞれ異なった画像を表示させたり、立体的な画像を表示させたりすることができる。
【0013】
[適用例3]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルを構成するEL素子が有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置。
【0014】
[適用例4]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルを構成する前記有機EL素子は、トップエミッション型であることを特徴とする電気光学装置。
【0015】
適用例4では、ELパネルを構成する有機EL素子がトップエミッション型であるので、電気光学装置の一層の薄型化が図られる。
【0016】
[適用例5]上記の電気光学装置であって、前記レンチキュラレンズは、前記複数のシリンドリカルレンズがシート状の基部に形成された構成を有しており、前記ELパネルは、前記画像形成パネル側が前記レンチキュラレンズで封止されていることを特徴とする電気光学装置。
【0017】
適用例5では、ELパネルがレンチキュラレンズで封止されているので、ELパネルの封止だけに用いられる封止部材を省略することができる。従って、電気光学装置の一層の薄型化が図られる。また、ELパネルとレンチキュラレンズとの間隔を低減しやすくすることができる。
【0018】
[適用例6]上記の電気光学装置であって、各前記発光領域は、赤系の色を呈する前記光を発する赤系領域と、緑系の色を呈する前記光を発する緑系領域と、青系の色を呈する前記光を発する青系領域とが前記第2方向に並んだ構成を有しているとともに、前記赤系領域、前記緑系領域及び前記青系領域のそれぞれに対して前記1組の電極が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【0019】
適用例6では、各発光領域は、赤系領域と、緑系領域と、青系領域とが第2方向に並んだ構成を有している。これにより、例えばフィールドシーケンシャルで、カラー表示を行うことができる。
【0020】
[適用例7]上記の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【0021】
適用例7の電子機器は、表示部としての電気光学装置が、発光層を有するELパネルと、ELパネルからの光が照射される複数の画素を有する画像形成パネルとを有している。この電気光学装置では、ELパネルからの光が照射される複数の画素のそれぞれについて、光の透過及び遮断の切り替えが制御されることによって画像が形成される。また、この電気光学装置は、ELパネルと画像形成パネルとの間に、ELパネルからの光の進行方向を規制する光学素子が介在している。つまり、この電気光学装置を表示部として備えた電子機器では、光学素子によって進行方向が規制された光が画像形成パネルの複数の画素に照射されるので、表示部で指向性表示を行うことができる。また、この電子機器では、電気光学装置において、発光層を有するELパネルからの光を画像形成パネルの複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、電子機器の厚みを低減しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施形態について、電気光学装置の1つである表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
本実施形態における表示装置1は、平面図である図1(a)、及び図1(a)中のA−A線における断面図である図1(b)に示すように、有機EL(Electro Luminescence)パネル3と、表示パネル5と、レンチキュラレンズ7とを有している。有機ELパネル3には、図2に示すように、帯状に延びる複数の発光領域9が設けられている。なお、本実施形態では、各発光領域9が帯状に延びる方向がY方向と定義され、平面視でY方向と直交する方向がX方向と定義される。複数の発光領域9は、Y方向に沿って延びているとともに、X方向に並んでいる。
【0023】
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
有機ELパネル3は、図1(b)中のB部の拡大図である図3に示すように、基板21と、共通電極23と、有機層25と、複数の電極27と、接着層29と、封止基板31とを有している。
基板21は、例えば、ガラスなどの光透過性を有する材料で構成されている。共通電極23は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの光透過性を有する材料で構成されており、図3で見て基板21の下面に形成されている。
【0024】
有機層25は、図3で見て共通電極23の下面に形成されており、共通電極23を下面から覆っている。有機層25は、図示しない発光層を有しており、発光層に種々の層を積層した多層構造が採用され得る。多層構造としては、発光層の他にホール注入層を有する多層構造や、これらの他にホール輸送層、電子輸送層などを有する多層構造など、種々の多層構造が採用され得る。
【0025】
複数の電極27は、例えば、MgやCaなどの材料で構成されており、図3で見て有機層25の下面に形成されている。複数の電極27は、それぞれ独立して設けられており、X方向に所定間隔で並んでいる。
接着層29は、図3で見て基板21の下面側で、共通電極23、有機層25及び複数の電極27を覆っている。封止基板31は、接着層29を介して複数の電極27に対向している。これらの接着層29及び封止基板31は、基板21とともに共通電極23、有機層25及び複数の電極27を封止して、共通電極23、有機層25及び複数の電極27を保護している。
【0026】
有機ELパネル3は、共通電極23と複数の電極27との間に有機層25が介在した構成を有している。また、各電極27と共通電極23とは、1つの組を構成している。そして、有機ELパネル3では、1組の電極27及び共通電極23間の電位差によって有機層25の発光層が発光する。本実施形態では、1組の電極27及び共通電極23のうち、共通電極23が正電位に保たれ、電極27が負電位に保たれると、有機層25における発光層が白色の光を発する。
【0027】
有機層25からの白色の光は、基板21を介してレンチキュラレンズ7側に射出される。有機ELパネル3は、有機層25からの光が基板21側から射出する所謂ボトムエミッション型である。なお、白色の光を発する発光層としては、赤系の色を呈する光を発する発光層と、緑系の色を呈する光を発する発光層と、青系の色を呈する光を発する発光層とを積層した構成や、1つの発光層に各色の色素を添加した構成などが採用され得る。さらに色の組み合わせとしては、赤、緑、青の3波長成分を用いる方法の他、青及び橙、又は青緑及び赤の補色関係にある2波長成分を用いる方法などがある。
【0028】
ここで、有機ELパネル3に設けられている発光領域9について説明する。
複数の電極27は、図2中のC部における分解斜視図である図4に示すように、それぞれ、Y方向に沿って帯状に延びている。共通電極23及び有機層25は、それぞれ、平面視で複数の電極27を覆う大きさを有しているとともに、平面視で複数の電極27に重なるように形成されている。そして、各発光領域9は、各電極27と有機層25と共通電極23とが、平面視で重なり合う領域であると定義され得る。
【0029】
表示パネル5は、図3に示すように、有機ELパネル3の光射出側で有機ELパネル3の基板21に対向して設けられている。表示パネル5は、偏光板41a及び41bと、基板43a及び43bと、液晶層45とを有している。偏光板41a及び41bは、偏光板41aにおける光の透過軸の方向と、偏光板41bにおける光の透過軸の方向とが、互いに異なる方向(例えば、互いに直交する方向)に設定されている。偏光板41a及び41bは、それぞれ、透過軸の方向に偏光軸を有する直線偏光を透過させることができる。
【0030】
表示パネル5は、X方向及びY方向に沿ってマトリクス状に並ぶ図示しない複数の画素を有している。複数の画素には、有機ELパネル3からの光が偏光板41bを介して、偏光板41bの透過軸に沿った偏光軸を有する直線偏光として入射される。
【0031】
基板43bには、液晶層45側に、複数の画素のそれぞれに対応して、画素電極や、画素電極に接続されたスイッチング素子などが設けられている。また、基板43aには、液晶層45を挟んで複数の画素電極に対向する対向電極などが、液晶層45側に設けられている。表示パネル5では、各画素について、各スイッチング素子のON状態及びOFF状態の切り替えが制御される。
【0032】
本実施形態では、スイッチング素子がOFF状態のときに、このスイッチング素子に対応する画素において、液晶層45の液晶の配向状態は、この画素に入射された直線偏光の偏光軸の方向を偏光板41aの透過軸の方向に合わせる配向状態に維持される。このとき、液晶層45を透過した光は、基板43aを経て偏光板41aから射出される。
【0033】
他方、スイッチング素子がON状態のときに、このスイッチング素子につながる画素電極と、対向電極との間に電界が形成される。画素電極と対向電極との間に電界が形成された画素においては、液晶層45の液晶の配向状態は、この画素に入射された直線偏光の偏光軸の方向を維持する配向状態に変化する。このとき、液晶層45を透過した光は、基板43aを経て偏光板41aに吸収される。
つまり、表示パネル5では、複数の画素のそれぞれについて、有機ELパネル3からの光の透過及び遮断の切り替えが制御されることにより、画像を形成することができる。
【0034】
レンチキュラレンズ7は、例えば、アクリル樹脂などの光透過性を有する材料で構成され、図3に示すように、有機ELパネル3と表示パネル5との間に介在している。レンチキュラレンズ7は、有機ELパネル3の光射出側で有機ELパネル3の基板21上に設けられている。レンチキュラレンズ7は、複数のシリンドリカルレンズ61がX方向に並んだ構成を有している。各シリンドリカルレンズ61は、断面が表示パネル5側に向かって凸となる弓形を呈している。弓形の弦に相当する部位である弦部61aは、4n(nは、1以上の自然数)個の発光領域9にかかる長さを有している。なお、本実施形態では、n=1が採用されている。
【0035】
各シリンドリカルレンズ61は、図5に示すように、Y方向に対して角度θの傾きを有するY’方向に沿って延びている。これにより、表示パネル5の複数の画素の配列方向であるX方向及びY方向と、Y’方向とをずらすことができる。
ここで、有機ELパネル3からの光は、各シリンドリカルレンズ61を透過するときに干渉を発生することがある。干渉した光が表示パネル5に入射されると、複数の画素で再び干渉が発生して、表示パネル5に形成される画像に干渉縞が出現することがある。本実施形態では、Y’方向がY方向からずれているので、表示パネル5の画像に干渉縞が出現することを低く抑えることができる。
【0036】
なお、各シリンドリカルレンズ61は、平面視で有機ELパネル3と表示パネル5の複数の画素とが重なる領域の輪郭Fを、Y’方向にまたぐ長さを有している。また、複数のシリンドリカルレンズ61は、輪郭FをX方向にまたぐ長さにわたって、X方向に配列している。
上記の構成を有するレンチキュラレンズ7は、各シリンドリカルレンズ61が、有機ELパネル3における各発光領域9からの光の進行方向を規制する。有機ELパネル3からの光は、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制された状態で表示パネル5に照射される。
【0037】
上記の構成を有する表示装置1は、有機ELパネル3における発光を発光領域9ごとに制御することにより、指向性表示を行うことができる。表示装置1における指向性表示には、2人の観察者のそれぞれに対して別々の画像を表示するもの(以下、2画面表示と呼ぶ)と、2人の観察者のそれぞれに対して立体的な画像を表示するもの(以下、立体表示と呼ぶ)とがある。
ここで、表示装置1による指向性表示について、2画面表示、及び立体表示の順に説明する。
【0038】
2画面表示においては、複数の発光領域9は、図6に示すように、この図で見て左端の領域9sを起点として2n個(本実施形態では、2個)ずつ交互に、グループG1とグループG2とにわけられる。つまり、複数の発光領域9は、グループG1とグループG2とに二分される。グループG1に属する各発光領域9は、2人の観察者の一方に対する光の進行方向を示す図である図7(a)に示すように、観察者71に対する光源に設定される。グループG2に属する各発光領域9は、2人の観察者の他方に対する光の進行方向を示す図である図7(b)に示すように、観察者73に対する光源に設定される。なお、図7(a)及び(b)では、発光領域9をわかりやすく示すため、共通電極23及び複数の電極27、並びに有機層25の図示が省略され、これらにかわって複数の発光領域9が図示されている。
【0039】
本実施形態では、観察者71に対する画像の表示と、観察者73に対する画像の表示とが、表示パネル5の1フレーム期間(本実施形態では、1/60秒)を二分した1/2フレーム期間ごとに交互に行われる。観察者71に対する画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9から光が射出され、グループG2に属する各発光領域9からは光が射出されない。なお、以下においては、各発光領域9から光が射出される点灯状態を各発光領域9がON状態であると呼び、各発光領域9から光が射出されない消灯状態を各発光領域9がOFF状態であると呼ぶ。また、図7(a)及び(b)では、構成をわかりやすく示すため、OFF状態にある各発光領域9にハッチングが施されている。
【0040】
グループG1に属する発光領域9からの光は、図7(a)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて観察者71側の領域71cに到達する。このとき、表示パネル5は、観察者71に対する画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG1に属する各発光領域9からの光を観察者71側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71に対する画像が形成される。
【0041】
観察者71に対する画像の表示は、表示パネル5の1/2フレーム期間内に実施される。そして、画像の表示は、1/2フレーム期間が経過した後に、観察者73に対する画像の表示に移行される。観察者73に対する画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がOFF状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がON状態に制御される。グループG2に属する発光領域9からの光は、図7(b)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて観察者73側の領域73cに到達する。このとき、表示パネル5は、観察者73に対する画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG2に属する各発光領域9からの光を観察者73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者73に対する画像が形成される。
【0042】
観察者71は、1フレーム期間内に、観察者71に対する画像を観察することができる。また、観察者73は、同じ1フレーム期間内に、観察者73に対する画像を観察することができる。本実施形態では、上述した観察者71に対する画像の表示と観察者73に対する画像の表示とが、1/2フレーム期間ごとに繰り返されることによって、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間ごとに移り変わる画像を連続して観察していると認識することができる。
【0043】
立体表示においては、複数の発光領域9は、図8に示すように、この図で見て左端の領域9sを起点としてn個(本実施形態では、1個)ずつ交互に、グループG1とグループG2とにわけられる。グループG2に属する各発光領域9は、2人の観察者の各右眼に対する光の進行方向を示す図である図9(a)に示すように、観察者71及び73の各右眼71a及び73aに対する光源に設定される。グループG1に属する各発光領域9は、2人の観察者の左眼に対する光の進行方向を示す図である図9(b)に示すように、観察者71及び73の各左眼71b及び73bに対する光源に設定される。
【0044】
本実施形態では、2人の観察者71及び73の各右眼71a及び73aに対する画像の表示と、2人の観察者71及び73の各左眼71b及び73bに対する画像の表示とが、交互に行われる。なお、以下においては、各右眼71a及び73aに対する画像を右眼画像と呼び、各左眼71b及び73bに対する画像を左眼画像と呼ぶ。また、右眼画像と左眼画像との間には、視差が付与されている。右眼画像の表示と、左眼画像の表示とは、表示パネル5の1フレーム期間(本実施形態では、1/60秒)を二分した1/2フレーム期間ごとに交互に行われる。
【0045】
右眼画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がOFF状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がON状態に制御される。グループG2に属する発光領域9からの光は、図9(a)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて、観察者71側の右眼領域71R、及び観察者73の右眼領域73Rに到達する。このとき、表示パネル5は、右眼画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG2に属する各発光領域9からの光を観察者71及び73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71及び73に対する右眼画像が形成される。
【0046】
右眼画像の表示は、表示パネル5の1/2フレーム期間内に実施される。そして、画像の表示は、1/2フレーム期間が経過した後に、左眼画像の表示に移行される。左眼画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がON状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がOFF状態に制御される。グループG1に属する発光領域9からの光は、図9(b)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて、観察者71側の左眼領域71L、及び観察者73側の左眼領域73Lに到達する。
【0047】
このとき、表示パネル5は、左眼画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG1に属する各発光領域9からの光を観察者71及び73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71及び73に対する左眼画像が形成される。
【0048】
観察者71及び73は、1フレーム期間内に、各右眼71a及び73aで右眼画像を観察し、各左眼71b及び73bで左眼画像を観察することができる。つまり、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間内に表示される右眼画像と左眼画像とを、視差画像すなわち立体画像として観察することができる。本実施形態では、上述した右眼画像の表示と左眼画像の表示とが、1/2フレーム期間ごとに繰り返されることによって、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間ごとに移り変わる立体的な画像を連続して観察していると認識することができる。
【0049】
上述した表示装置1は、例えば、図10に示す電子機器100の表示部110に適用され得る。この電子機器100は、カーナビゲーションシステム用の表示機器である。電子機器100では、表示装置1が適用された表示部110によって、2つの画像を異なる方向に表示することができる。例えば、運転席側に地図の画像を表示し、助手席側に映画の画像を表示することが可能となる。
なお、電子機器100としては、カーナビゲーションシステム用の表示機器に限られず、モバイルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【0050】
なお、本実施形態において、表示パネル5が画像形成パネルに対応し、Y方向が第1方向に対応し、X方向が第2方向に対応し、Y’方向が第3方向に対応している。
【0051】
本実施形態の表示装置1は、複数の発光領域9が設けられた有機ELパネル3と、有機ELパネル3からの光が照射される複数の画素を有する表示パネル5とを有している。複数の発光領域9は、それぞれY方向に沿って帯状に延びているとともに、X方向に並列している。有機ELパネル3には、各発光領域9に1組の電極27及び共通電極23が設けられている。つまり、有機ELパネル3は、有機層25中の発光層が発光領域9ごとに独立して発光可能に構成されている。
【0052】
表示装置1では、表示パネル5の複数の画素のそれぞれについて、有機ELパネル3からの光の透過及び遮断の切り替えが制御されることにより、画像が形成される。有機ELパネル3と表示パネル5との間には、有機ELパネル3からの光の進行方向を規制するレンチキュラレンズ7が介在している。表示装置1では、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制された光が表示パネル5の複数の画素に照射されるので、指向性表示を行うことができる。
【0053】
レンチキュラレンズ7は、Y’方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズ61が、X方向に配列した構成を有している。各シリンドリカルレンズ61は、平面視で有機ELパネル3と複数の画素とが重なる領域の輪郭Fを、Y’方向にまたぐ長さを有している。また、各シリンドリカルレンズ61は、表示装置1をX方向に沿って切断したときの断面が、表示パネル5側に向かって凸となる弓形を呈している。弓形の弦に相当する弦部61aは、4n個の発光領域9にかかる長さを有している。
【0054】
表示装置1では、弦部61aにかかる4n個の発光領域9を2つのグループG1及びG2にわけて、グループG1及びG2単位でON状態とOFF状態とを切り替えることにより、2画面表示や立体表示を行うことができる。
また、表示装置1では、発光層を有する有機ELパネル3からの光を表示パネル5の複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、表示装置1の厚みを低減しやすくすることができる。また、電子機器100では、表示部110として表示装置1を備えているので、電子機器100の厚みを低減しやすくすることができる。
【0055】
なお、本実施形態において、表示パネル5と観察者71及び73との間に、少なくとも赤、青及び緑のフィルタエレメントを有するカラーフィルタを設ければ、カラー表示を行うことができる。
【0056】
本実施形態では、レンチキュラレンズ7で有機ELパネル3からの光の進行方向を規制するようにしたが、光学素子はレンチキュラレンズ7に限定されず、遮光性を有する層に開口部を設けた所謂視差バリアも採用され得る。
【0057】
また、本実施形態では、有機層25を有する有機ELパネル3を例に説明したが、ELパネルの構成はこれに限定されず、無機ELパネルも採用され得る。
【0058】
また、本実施形態では、有機ELパネル3が有機層25に白色の光を発する発光層を有する場合を例に説明したが、有機ELパネル3の構成はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、各発光領域9を、赤系の色を呈する光を発する赤系領域9rと、緑系の色を呈する光を発する緑系領域9gと、青系の色を呈する光を発する青系領域9bとに区分けした構成が採用され得る。この場合、有機層25は、赤系有機層25rと、緑系有機層25gと、青系有機層25bとに区分けされる。
【0059】
ここで、赤系の色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。緑系の色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑を含む。青系の色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、赤系の色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、緑系の色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。青系の色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0060】
赤系有機層25r、緑系有機層25g及び青系有機層25bは、それぞれY方向に沿って帯状に延びているとともに、X方向に所定間隔で並んでいる。また、赤系有機層25r、緑系有機層25g及び青系有機層25bのそれぞれに対して、1組の電極27及び共通電極23が設けられている。
【0061】
赤系有機層25rには、共通電極23が正電位に保たれ、電極27が負電位に保たれると、赤系の色を呈する光を発する発光層が含まれている。同様に、緑系有機層25gには、緑系の色を呈する光を発する発光層が含まれ、青系有機層25bには、青系の色を呈する光を発する発光層が含まれている。
従って、図11に示す構成では、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bをON状態にすることにより、赤系の色を呈する光、緑系の色を呈する光及び青系の色を呈する光が混色されて発光領域9から白色の光を射出させることができる。
【0062】
また、図11に示す構成では、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bのそれぞれに対して、1組の電極27及び共通電極23が設けられているので、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bのそれぞれを独立して発光させることができる。従って、例えばフィールドシーケンシャルで、カラーの2画面表示やカラーの立体表示を行うことができる。これにより、カラーフィルタを省略することができ、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【0063】
光は、カラーフィルタを通過することによって輝度が低下してしまうことがある。本実施形態では、図11に示す構成によってカラーフィルタを省略することができるので、輝度の低下を低く抑えることができる。
また、カラーフィルタを用いる場合、表示パネル5には、カラーフィルタの赤、青及び緑のフィルタエレメントの数に対応する個数の画素が必要となるので、表示装置1の解像度を向上させることが困難である。本実施形態では、図11に示す構成によってカラーフィルタを省略してもカラー表示を行うことができるので、表示装置1の解像度を向上させやすくすることができ、高精細の表示装置1を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態では、有機層25からの光が基板21側から射出するボトムエミッション型の有機ELパネル3を採用したが、有機ELパネル3はこれに限定されない。有機ELパネル3は、表示装置1の別の例を示す断面図である図12(a)に示すように、光が基板21側とは反対側から射出するトップエミッション型も採用され得る。図12(a)に示す構成の場合、有機ELパネル3は、図3に示す封止基板31に替えて封止フィルム81が設けられている。
【0065】
図12(a)に示す有機ELパネル3は、この図で見て下から順に、基板21と、共通電極23と、有機層25と、複数の電極27と、接着層29と、封止フィルム81とを有している。封止フィルム81は、例えば、アクリル樹脂などの光透過性を有する材料で構成され得る。そして、レンチキュラレンズ7は、有機ELパネル3の光射出側で封止フィルム81上に設けられている。
【0066】
トップエミッション型の有機ELパネル3が採用された表示装置1では、封止フィルム81を、図3に示す封止基板31よりも薄く構成することができるので、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【0067】
また、封止フィルム81を、図3に示す封止基板31よりも薄く構成することができるということは、レンチキュラレンズ7と有機層25との間の間隔を狭めやすくできることを意味する。このことは、表示装置1の光学設計の自由度を拡大することができる点で好ましい。それは、レンズと光源との間隔の設定の自由度が増すからである。レンズと光源との間隔の設定の自由度が拡大されれば、図7(a)及び(b)に示す領域71c及び73cや、図9(a)及び(b)に示す右眼領域71R及び73R、並びに左眼領域71L及び73Lの設定の自由度が拡大され得る。
【0068】
図12(a)に示す表示装置1では、有機ELパネル3を封止フィルム81で封止する構成としたが、表示装置1の構成はこれに限定されない。有機ELパネル3は、表示装置1のさらに別の例を示す断面図である図12(b)に示すように、レンチキュラレンズ7が封止フィルム81を兼ねる構成が採用され得る。
【0069】
図12(b)に示す構成では、レンチキュラレンズ7は、シート状の基部83に複数のシリンドリカルレンズ61が形成された構成を有している。図12(b)に示す構成では、図12(a)に示す封止フィルム81の厚みを省略することができるので、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における表示装置の主要構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図3】図1(b)中のB部の拡大図。
【図4】図2中のC部における分解斜視図。
【図5】本発明の実施形態におけるレンチキュラレンズの平面図。
【図6】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図7】本発明の実施形態における表示装置での2画面表示を説明する図。
【図8】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図9】本発明の実施形態における表示装置での立体表示を説明する図。
【図10】本発明の実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【図11】本発明の実施形態における有機ELパネルの他の例を示す分解斜視図。
【図12】本発明の実施形態における表示装置の別の例を示す断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…表示装置、3…有機ELパネル、5…表示パネル、7…レンチキュラレンズ、9…発光領域、25…有機層、61…シリンドリカルレンズ、100…電子機器、110…表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性表示をすることができる電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置の1つとして、複数の方向から見たときに、それぞれの視方向ごとに異なる画像を表示(以下、指向性表示と呼ぶ)することができる表示装置が知られている。このような表示装置としては、左右の異なった視点から撮影された2つの視差画像を、レンチキュラレンズを介して左眼と右眼とで観察することにより、観察者に立体的な画像として視認させることができるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、他の表示装置として、発光制御液晶パネルと表示パネルとの間に、レンチキュラレンズが介在した構成を有したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−173034号公報(第7頁、図10)
【特許文献2】特開2006−259191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献2に記載された表示装置において、発光制御液晶パネルは、バックライトからの光を透過させたり、遮光したりして、レンチキュラレンズに入射させる光を制御する機能を有している。レンチキュラレンズに入射された光は、表示パネルに射出される。このとき、表示パネルに射出される光は、レンチキュラレンズによって指向性が付与される。
【0005】
つまり、特許文献2に記載された表示装置では、発光制御液晶パネルによってレンチキュラレンズに対する光の入射部位が制御され、表示パネルに射出される光の方向がレンチキュラレンズによって制御される。一方、表示パネルにおいては、発光制御液晶パネルによるレンチキュラレンズに対する光の入射部位の制御(以下、発光制御と呼ぶ)にあわせて、視方向ごとの画像が切り替えられる。これにより、2人の観察者に、別々の画像や立体的な画像を視認させることができる。
【0006】
特許文献1に記載された表示装置では、表示部の画素が左眼画像用と右眼画像用とに区分されている。特許文献2に記載された表示装置では、発光制御にあわせて表示パネルでの視方向ごとの画像を切り替えるので、表示パネルの画素を視方向ごとに区分する必要がない。このため、同じ画面サイズで比較した場合、特許文献2の表示装置は、特許文献1の表示装置よりも表示パネルの解像度が大きい。換言すれば、特許文献2の表示装置では、特許文献1の表示装置よりも、同じ解像度で、画面サイズの小型化が図られる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された表示装置では、発光制御液晶パネルを有しているので、表示装置の厚みを低減することが困難であるという未解決の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0009】
[適用例1]互いに対向する1組の電極間に介在した構成を有し、前記1組の電極間の電位差によって前記発光層が発光するELパネルと、平面視で前記ELパネルに重なった状態で前記ELパネルからの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する画像形成パネルと、前記ELパネル及び前記画像形成パネルの間に介在し、前記ELパネルからの前記光の進行方向を規制する光学素子と、を有し、前記画像形成パネルは、前記ELパネルからの前記光が前記光学素子を介して前記複数の画素に照射されることを特徴とする電気光学装置。
【0010】
適用例1の電気光学装置は、発光層を有するEL(Electro Luminescence)パネルと、ELパネルからの光が照射される複数の画素を有する画像形成パネルとを有している。この電気光学装置では、ELパネルからの光が照射される複数の画素のそれぞれについて、光の透過及び遮断の切り替えが制御されることによって画像が形成される。また、この電気光学装置は、ELパネルと画像形成パネルとの間に、ELパネルからの光の進行方向を規制する光学素子が介在している。つまり、この電気光学装置では、光学素子によって進行方向が規制された光が画像形成パネルの複数の画素に照射されるので、指向性表示を行うことができる。また、この電気光学装置では、発光層を有するELパネルからの光を画像形成パネルの複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、電気光学装置の厚みを低減しやすくすることができる。
【0011】
[適用例2]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる複数の発光領域が前記第1方向とは交差する第2方向に並列しているとともに、前記発光層が前記発光領域ごとに独立して発光可能に構成されており、前記光学素子は、平面視で、前記ELパネルと前記複数の画素とが重なる領域の輪郭を前記第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有するとともに、前記第3方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズが、前記第2方向に配列したレンチキュラレンズで構成されており、各前記シリンドリカルレンズは、前記ELパネル、前記レンチキュラレンズ及び前記画像形成パネルを前記第2方向に沿って切断したときの断面が、前記画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、前記弓形の弦に相当する部位が、4n(nは1以上の自然数)個の前記発光領域にかかる長さを有していることを特徴とする電気光学装置。
【0012】
適用例2では、ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる発光領域の複数個が第1方向とは交差する第2方向に並列しており、発光層が発光領域ごとに独立して発光可能に構成されている。光学素子は、複数のシリンドリカルレンズを配列したレンチキュラレンズで構成されている。各シリンドリカルレンズは、平面視でELパネルと複数の画素とが重なる領域の輪郭を、第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有している。複数のシリンドリカルレンズは、第3方向に沿って延びているとともに、第2方向に配列している。そして、各シリンドリカルレンズは、電気光学装置を第2方向に沿って切断したときの断面が、画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、弓形の弦に相当する部位が、4n個の発光領域にかかる長さを有している。この電気光学装置では、各シリンドリカルレンズの弦に相当する部位にかかる4n個の発光領域のうちで発光させる発光領域の個数を制御することによって、2つの観察位置のそれぞれに向けて、それぞれ異なった画像を表示させたり、立体的な画像を表示させたりすることができる。
【0013】
[適用例3]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルを構成するEL素子が有機EL素子であることを特徴とする電気光学装置。
【0014】
[適用例4]上記の電気光学装置であって、前記ELパネルを構成する前記有機EL素子は、トップエミッション型であることを特徴とする電気光学装置。
【0015】
適用例4では、ELパネルを構成する有機EL素子がトップエミッション型であるので、電気光学装置の一層の薄型化が図られる。
【0016】
[適用例5]上記の電気光学装置であって、前記レンチキュラレンズは、前記複数のシリンドリカルレンズがシート状の基部に形成された構成を有しており、前記ELパネルは、前記画像形成パネル側が前記レンチキュラレンズで封止されていることを特徴とする電気光学装置。
【0017】
適用例5では、ELパネルがレンチキュラレンズで封止されているので、ELパネルの封止だけに用いられる封止部材を省略することができる。従って、電気光学装置の一層の薄型化が図られる。また、ELパネルとレンチキュラレンズとの間隔を低減しやすくすることができる。
【0018】
[適用例6]上記の電気光学装置であって、各前記発光領域は、赤系の色を呈する前記光を発する赤系領域と、緑系の色を呈する前記光を発する緑系領域と、青系の色を呈する前記光を発する青系領域とが前記第2方向に並んだ構成を有しているとともに、前記赤系領域、前記緑系領域及び前記青系領域のそれぞれに対して前記1組の電極が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【0019】
適用例6では、各発光領域は、赤系領域と、緑系領域と、青系領域とが第2方向に並んだ構成を有している。これにより、例えばフィールドシーケンシャルで、カラー表示を行うことができる。
【0020】
[適用例7]上記の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【0021】
適用例7の電子機器は、表示部としての電気光学装置が、発光層を有するELパネルと、ELパネルからの光が照射される複数の画素を有する画像形成パネルとを有している。この電気光学装置では、ELパネルからの光が照射される複数の画素のそれぞれについて、光の透過及び遮断の切り替えが制御されることによって画像が形成される。また、この電気光学装置は、ELパネルと画像形成パネルとの間に、ELパネルからの光の進行方向を規制する光学素子が介在している。つまり、この電気光学装置を表示部として備えた電子機器では、光学素子によって進行方向が規制された光が画像形成パネルの複数の画素に照射されるので、表示部で指向性表示を行うことができる。また、この電子機器では、電気光学装置において、発光層を有するELパネルからの光を画像形成パネルの複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、電子機器の厚みを低減しやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施形態について、電気光学装置の1つである表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
本実施形態における表示装置1は、平面図である図1(a)、及び図1(a)中のA−A線における断面図である図1(b)に示すように、有機EL(Electro Luminescence)パネル3と、表示パネル5と、レンチキュラレンズ7とを有している。有機ELパネル3には、図2に示すように、帯状に延びる複数の発光領域9が設けられている。なお、本実施形態では、各発光領域9が帯状に延びる方向がY方向と定義され、平面視でY方向と直交する方向がX方向と定義される。複数の発光領域9は、Y方向に沿って延びているとともに、X方向に並んでいる。
【0023】
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
有機ELパネル3は、図1(b)中のB部の拡大図である図3に示すように、基板21と、共通電極23と、有機層25と、複数の電極27と、接着層29と、封止基板31とを有している。
基板21は、例えば、ガラスなどの光透過性を有する材料で構成されている。共通電極23は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの光透過性を有する材料で構成されており、図3で見て基板21の下面に形成されている。
【0024】
有機層25は、図3で見て共通電極23の下面に形成されており、共通電極23を下面から覆っている。有機層25は、図示しない発光層を有しており、発光層に種々の層を積層した多層構造が採用され得る。多層構造としては、発光層の他にホール注入層を有する多層構造や、これらの他にホール輸送層、電子輸送層などを有する多層構造など、種々の多層構造が採用され得る。
【0025】
複数の電極27は、例えば、MgやCaなどの材料で構成されており、図3で見て有機層25の下面に形成されている。複数の電極27は、それぞれ独立して設けられており、X方向に所定間隔で並んでいる。
接着層29は、図3で見て基板21の下面側で、共通電極23、有機層25及び複数の電極27を覆っている。封止基板31は、接着層29を介して複数の電極27に対向している。これらの接着層29及び封止基板31は、基板21とともに共通電極23、有機層25及び複数の電極27を封止して、共通電極23、有機層25及び複数の電極27を保護している。
【0026】
有機ELパネル3は、共通電極23と複数の電極27との間に有機層25が介在した構成を有している。また、各電極27と共通電極23とは、1つの組を構成している。そして、有機ELパネル3では、1組の電極27及び共通電極23間の電位差によって有機層25の発光層が発光する。本実施形態では、1組の電極27及び共通電極23のうち、共通電極23が正電位に保たれ、電極27が負電位に保たれると、有機層25における発光層が白色の光を発する。
【0027】
有機層25からの白色の光は、基板21を介してレンチキュラレンズ7側に射出される。有機ELパネル3は、有機層25からの光が基板21側から射出する所謂ボトムエミッション型である。なお、白色の光を発する発光層としては、赤系の色を呈する光を発する発光層と、緑系の色を呈する光を発する発光層と、青系の色を呈する光を発する発光層とを積層した構成や、1つの発光層に各色の色素を添加した構成などが採用され得る。さらに色の組み合わせとしては、赤、緑、青の3波長成分を用いる方法の他、青及び橙、又は青緑及び赤の補色関係にある2波長成分を用いる方法などがある。
【0028】
ここで、有機ELパネル3に設けられている発光領域9について説明する。
複数の電極27は、図2中のC部における分解斜視図である図4に示すように、それぞれ、Y方向に沿って帯状に延びている。共通電極23及び有機層25は、それぞれ、平面視で複数の電極27を覆う大きさを有しているとともに、平面視で複数の電極27に重なるように形成されている。そして、各発光領域9は、各電極27と有機層25と共通電極23とが、平面視で重なり合う領域であると定義され得る。
【0029】
表示パネル5は、図3に示すように、有機ELパネル3の光射出側で有機ELパネル3の基板21に対向して設けられている。表示パネル5は、偏光板41a及び41bと、基板43a及び43bと、液晶層45とを有している。偏光板41a及び41bは、偏光板41aにおける光の透過軸の方向と、偏光板41bにおける光の透過軸の方向とが、互いに異なる方向(例えば、互いに直交する方向)に設定されている。偏光板41a及び41bは、それぞれ、透過軸の方向に偏光軸を有する直線偏光を透過させることができる。
【0030】
表示パネル5は、X方向及びY方向に沿ってマトリクス状に並ぶ図示しない複数の画素を有している。複数の画素には、有機ELパネル3からの光が偏光板41bを介して、偏光板41bの透過軸に沿った偏光軸を有する直線偏光として入射される。
【0031】
基板43bには、液晶層45側に、複数の画素のそれぞれに対応して、画素電極や、画素電極に接続されたスイッチング素子などが設けられている。また、基板43aには、液晶層45を挟んで複数の画素電極に対向する対向電極などが、液晶層45側に設けられている。表示パネル5では、各画素について、各スイッチング素子のON状態及びOFF状態の切り替えが制御される。
【0032】
本実施形態では、スイッチング素子がOFF状態のときに、このスイッチング素子に対応する画素において、液晶層45の液晶の配向状態は、この画素に入射された直線偏光の偏光軸の方向を偏光板41aの透過軸の方向に合わせる配向状態に維持される。このとき、液晶層45を透過した光は、基板43aを経て偏光板41aから射出される。
【0033】
他方、スイッチング素子がON状態のときに、このスイッチング素子につながる画素電極と、対向電極との間に電界が形成される。画素電極と対向電極との間に電界が形成された画素においては、液晶層45の液晶の配向状態は、この画素に入射された直線偏光の偏光軸の方向を維持する配向状態に変化する。このとき、液晶層45を透過した光は、基板43aを経て偏光板41aに吸収される。
つまり、表示パネル5では、複数の画素のそれぞれについて、有機ELパネル3からの光の透過及び遮断の切り替えが制御されることにより、画像を形成することができる。
【0034】
レンチキュラレンズ7は、例えば、アクリル樹脂などの光透過性を有する材料で構成され、図3に示すように、有機ELパネル3と表示パネル5との間に介在している。レンチキュラレンズ7は、有機ELパネル3の光射出側で有機ELパネル3の基板21上に設けられている。レンチキュラレンズ7は、複数のシリンドリカルレンズ61がX方向に並んだ構成を有している。各シリンドリカルレンズ61は、断面が表示パネル5側に向かって凸となる弓形を呈している。弓形の弦に相当する部位である弦部61aは、4n(nは、1以上の自然数)個の発光領域9にかかる長さを有している。なお、本実施形態では、n=1が採用されている。
【0035】
各シリンドリカルレンズ61は、図5に示すように、Y方向に対して角度θの傾きを有するY’方向に沿って延びている。これにより、表示パネル5の複数の画素の配列方向であるX方向及びY方向と、Y’方向とをずらすことができる。
ここで、有機ELパネル3からの光は、各シリンドリカルレンズ61を透過するときに干渉を発生することがある。干渉した光が表示パネル5に入射されると、複数の画素で再び干渉が発生して、表示パネル5に形成される画像に干渉縞が出現することがある。本実施形態では、Y’方向がY方向からずれているので、表示パネル5の画像に干渉縞が出現することを低く抑えることができる。
【0036】
なお、各シリンドリカルレンズ61は、平面視で有機ELパネル3と表示パネル5の複数の画素とが重なる領域の輪郭Fを、Y’方向にまたぐ長さを有している。また、複数のシリンドリカルレンズ61は、輪郭FをX方向にまたぐ長さにわたって、X方向に配列している。
上記の構成を有するレンチキュラレンズ7は、各シリンドリカルレンズ61が、有機ELパネル3における各発光領域9からの光の進行方向を規制する。有機ELパネル3からの光は、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制された状態で表示パネル5に照射される。
【0037】
上記の構成を有する表示装置1は、有機ELパネル3における発光を発光領域9ごとに制御することにより、指向性表示を行うことができる。表示装置1における指向性表示には、2人の観察者のそれぞれに対して別々の画像を表示するもの(以下、2画面表示と呼ぶ)と、2人の観察者のそれぞれに対して立体的な画像を表示するもの(以下、立体表示と呼ぶ)とがある。
ここで、表示装置1による指向性表示について、2画面表示、及び立体表示の順に説明する。
【0038】
2画面表示においては、複数の発光領域9は、図6に示すように、この図で見て左端の領域9sを起点として2n個(本実施形態では、2個)ずつ交互に、グループG1とグループG2とにわけられる。つまり、複数の発光領域9は、グループG1とグループG2とに二分される。グループG1に属する各発光領域9は、2人の観察者の一方に対する光の進行方向を示す図である図7(a)に示すように、観察者71に対する光源に設定される。グループG2に属する各発光領域9は、2人の観察者の他方に対する光の進行方向を示す図である図7(b)に示すように、観察者73に対する光源に設定される。なお、図7(a)及び(b)では、発光領域9をわかりやすく示すため、共通電極23及び複数の電極27、並びに有機層25の図示が省略され、これらにかわって複数の発光領域9が図示されている。
【0039】
本実施形態では、観察者71に対する画像の表示と、観察者73に対する画像の表示とが、表示パネル5の1フレーム期間(本実施形態では、1/60秒)を二分した1/2フレーム期間ごとに交互に行われる。観察者71に対する画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9から光が射出され、グループG2に属する各発光領域9からは光が射出されない。なお、以下においては、各発光領域9から光が射出される点灯状態を各発光領域9がON状態であると呼び、各発光領域9から光が射出されない消灯状態を各発光領域9がOFF状態であると呼ぶ。また、図7(a)及び(b)では、構成をわかりやすく示すため、OFF状態にある各発光領域9にハッチングが施されている。
【0040】
グループG1に属する発光領域9からの光は、図7(a)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて観察者71側の領域71cに到達する。このとき、表示パネル5は、観察者71に対する画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG1に属する各発光領域9からの光を観察者71側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71に対する画像が形成される。
【0041】
観察者71に対する画像の表示は、表示パネル5の1/2フレーム期間内に実施される。そして、画像の表示は、1/2フレーム期間が経過した後に、観察者73に対する画像の表示に移行される。観察者73に対する画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がOFF状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がON状態に制御される。グループG2に属する発光領域9からの光は、図7(b)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて観察者73側の領域73cに到達する。このとき、表示パネル5は、観察者73に対する画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG2に属する各発光領域9からの光を観察者73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者73に対する画像が形成される。
【0042】
観察者71は、1フレーム期間内に、観察者71に対する画像を観察することができる。また、観察者73は、同じ1フレーム期間内に、観察者73に対する画像を観察することができる。本実施形態では、上述した観察者71に対する画像の表示と観察者73に対する画像の表示とが、1/2フレーム期間ごとに繰り返されることによって、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間ごとに移り変わる画像を連続して観察していると認識することができる。
【0043】
立体表示においては、複数の発光領域9は、図8に示すように、この図で見て左端の領域9sを起点としてn個(本実施形態では、1個)ずつ交互に、グループG1とグループG2とにわけられる。グループG2に属する各発光領域9は、2人の観察者の各右眼に対する光の進行方向を示す図である図9(a)に示すように、観察者71及び73の各右眼71a及び73aに対する光源に設定される。グループG1に属する各発光領域9は、2人の観察者の左眼に対する光の進行方向を示す図である図9(b)に示すように、観察者71及び73の各左眼71b及び73bに対する光源に設定される。
【0044】
本実施形態では、2人の観察者71及び73の各右眼71a及び73aに対する画像の表示と、2人の観察者71及び73の各左眼71b及び73bに対する画像の表示とが、交互に行われる。なお、以下においては、各右眼71a及び73aに対する画像を右眼画像と呼び、各左眼71b及び73bに対する画像を左眼画像と呼ぶ。また、右眼画像と左眼画像との間には、視差が付与されている。右眼画像の表示と、左眼画像の表示とは、表示パネル5の1フレーム期間(本実施形態では、1/60秒)を二分した1/2フレーム期間ごとに交互に行われる。
【0045】
右眼画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がOFF状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がON状態に制御される。グループG2に属する発光領域9からの光は、図9(a)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて、観察者71側の右眼領域71R、及び観察者73の右眼領域73Rに到達する。このとき、表示パネル5は、右眼画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG2に属する各発光領域9からの光を観察者71及び73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71及び73に対する右眼画像が形成される。
【0046】
右眼画像の表示は、表示パネル5の1/2フレーム期間内に実施される。そして、画像の表示は、1/2フレーム期間が経過した後に、左眼画像の表示に移行される。左眼画像の表示では、グループG1に属する各発光領域9がON状態に制御され、グループG2に属する各発光領域9がOFF状態に制御される。グループG1に属する発光領域9からの光は、図9(b)に示すように、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制されて、観察者71側の左眼領域71L、及び観察者73側の左眼領域73Lに到達する。
【0047】
このとき、表示パネル5は、左眼画像に対応して、複数の画素のそれぞれにおける液晶の駆動が制御される。複数の画素のそれぞれについて液晶の駆動が制御された表示パネル5には、グループG1に属する各発光領域9からの光を観察者71及び73側に透過する画素と遮断する画素とによって、観察者71及び73に対する左眼画像が形成される。
【0048】
観察者71及び73は、1フレーム期間内に、各右眼71a及び73aで右眼画像を観察し、各左眼71b及び73bで左眼画像を観察することができる。つまり、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間内に表示される右眼画像と左眼画像とを、視差画像すなわち立体画像として観察することができる。本実施形態では、上述した右眼画像の表示と左眼画像の表示とが、1/2フレーム期間ごとに繰り返されることによって、観察者71及び73のそれぞれは、1フレーム期間ごとに移り変わる立体的な画像を連続して観察していると認識することができる。
【0049】
上述した表示装置1は、例えば、図10に示す電子機器100の表示部110に適用され得る。この電子機器100は、カーナビゲーションシステム用の表示機器である。電子機器100では、表示装置1が適用された表示部110によって、2つの画像を異なる方向に表示することができる。例えば、運転席側に地図の画像を表示し、助手席側に映画の画像を表示することが可能となる。
なお、電子機器100としては、カーナビゲーションシステム用の表示機器に限られず、モバイルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【0050】
なお、本実施形態において、表示パネル5が画像形成パネルに対応し、Y方向が第1方向に対応し、X方向が第2方向に対応し、Y’方向が第3方向に対応している。
【0051】
本実施形態の表示装置1は、複数の発光領域9が設けられた有機ELパネル3と、有機ELパネル3からの光が照射される複数の画素を有する表示パネル5とを有している。複数の発光領域9は、それぞれY方向に沿って帯状に延びているとともに、X方向に並列している。有機ELパネル3には、各発光領域9に1組の電極27及び共通電極23が設けられている。つまり、有機ELパネル3は、有機層25中の発光層が発光領域9ごとに独立して発光可能に構成されている。
【0052】
表示装置1では、表示パネル5の複数の画素のそれぞれについて、有機ELパネル3からの光の透過及び遮断の切り替えが制御されることにより、画像が形成される。有機ELパネル3と表示パネル5との間には、有機ELパネル3からの光の進行方向を規制するレンチキュラレンズ7が介在している。表示装置1では、レンチキュラレンズ7によって進行方向が規制された光が表示パネル5の複数の画素に照射されるので、指向性表示を行うことができる。
【0053】
レンチキュラレンズ7は、Y’方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズ61が、X方向に配列した構成を有している。各シリンドリカルレンズ61は、平面視で有機ELパネル3と複数の画素とが重なる領域の輪郭Fを、Y’方向にまたぐ長さを有している。また、各シリンドリカルレンズ61は、表示装置1をX方向に沿って切断したときの断面が、表示パネル5側に向かって凸となる弓形を呈している。弓形の弦に相当する弦部61aは、4n個の発光領域9にかかる長さを有している。
【0054】
表示装置1では、弦部61aにかかる4n個の発光領域9を2つのグループG1及びG2にわけて、グループG1及びG2単位でON状態とOFF状態とを切り替えることにより、2画面表示や立体表示を行うことができる。
また、表示装置1では、発光層を有する有機ELパネル3からの光を表示パネル5の複数の画素に照射するので、バックライト等の光源を省略することができる。従って、表示装置1の厚みを低減しやすくすることができる。また、電子機器100では、表示部110として表示装置1を備えているので、電子機器100の厚みを低減しやすくすることができる。
【0055】
なお、本実施形態において、表示パネル5と観察者71及び73との間に、少なくとも赤、青及び緑のフィルタエレメントを有するカラーフィルタを設ければ、カラー表示を行うことができる。
【0056】
本実施形態では、レンチキュラレンズ7で有機ELパネル3からの光の進行方向を規制するようにしたが、光学素子はレンチキュラレンズ7に限定されず、遮光性を有する層に開口部を設けた所謂視差バリアも採用され得る。
【0057】
また、本実施形態では、有機層25を有する有機ELパネル3を例に説明したが、ELパネルの構成はこれに限定されず、無機ELパネルも採用され得る。
【0058】
また、本実施形態では、有機ELパネル3が有機層25に白色の光を発する発光層を有する場合を例に説明したが、有機ELパネル3の構成はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、各発光領域9を、赤系の色を呈する光を発する赤系領域9rと、緑系の色を呈する光を発する緑系領域9gと、青系の色を呈する光を発する青系領域9bとに区分けした構成が採用され得る。この場合、有機層25は、赤系有機層25rと、緑系有機層25gと、青系有機層25bとに区分けされる。
【0059】
ここで、赤系の色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。緑系の色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑を含む。青系の色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、赤系の色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、緑系の色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。青系の色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0060】
赤系有機層25r、緑系有機層25g及び青系有機層25bは、それぞれY方向に沿って帯状に延びているとともに、X方向に所定間隔で並んでいる。また、赤系有機層25r、緑系有機層25g及び青系有機層25bのそれぞれに対して、1組の電極27及び共通電極23が設けられている。
【0061】
赤系有機層25rには、共通電極23が正電位に保たれ、電極27が負電位に保たれると、赤系の色を呈する光を発する発光層が含まれている。同様に、緑系有機層25gには、緑系の色を呈する光を発する発光層が含まれ、青系有機層25bには、青系の色を呈する光を発する発光層が含まれている。
従って、図11に示す構成では、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bをON状態にすることにより、赤系の色を呈する光、緑系の色を呈する光及び青系の色を呈する光が混色されて発光領域9から白色の光を射出させることができる。
【0062】
また、図11に示す構成では、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bのそれぞれに対して、1組の電極27及び共通電極23が設けられているので、赤系領域9r、緑系領域9g及び青系領域9bのそれぞれを独立して発光させることができる。従って、例えばフィールドシーケンシャルで、カラーの2画面表示やカラーの立体表示を行うことができる。これにより、カラーフィルタを省略することができ、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【0063】
光は、カラーフィルタを通過することによって輝度が低下してしまうことがある。本実施形態では、図11に示す構成によってカラーフィルタを省略することができるので、輝度の低下を低く抑えることができる。
また、カラーフィルタを用いる場合、表示パネル5には、カラーフィルタの赤、青及び緑のフィルタエレメントの数に対応する個数の画素が必要となるので、表示装置1の解像度を向上させることが困難である。本実施形態では、図11に示す構成によってカラーフィルタを省略してもカラー表示を行うことができるので、表示装置1の解像度を向上させやすくすることができ、高精細の表示装置1を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態では、有機層25からの光が基板21側から射出するボトムエミッション型の有機ELパネル3を採用したが、有機ELパネル3はこれに限定されない。有機ELパネル3は、表示装置1の別の例を示す断面図である図12(a)に示すように、光が基板21側とは反対側から射出するトップエミッション型も採用され得る。図12(a)に示す構成の場合、有機ELパネル3は、図3に示す封止基板31に替えて封止フィルム81が設けられている。
【0065】
図12(a)に示す有機ELパネル3は、この図で見て下から順に、基板21と、共通電極23と、有機層25と、複数の電極27と、接着層29と、封止フィルム81とを有している。封止フィルム81は、例えば、アクリル樹脂などの光透過性を有する材料で構成され得る。そして、レンチキュラレンズ7は、有機ELパネル3の光射出側で封止フィルム81上に設けられている。
【0066】
トップエミッション型の有機ELパネル3が採用された表示装置1では、封止フィルム81を、図3に示す封止基板31よりも薄く構成することができるので、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【0067】
また、封止フィルム81を、図3に示す封止基板31よりも薄く構成することができるということは、レンチキュラレンズ7と有機層25との間の間隔を狭めやすくできることを意味する。このことは、表示装置1の光学設計の自由度を拡大することができる点で好ましい。それは、レンズと光源との間隔の設定の自由度が増すからである。レンズと光源との間隔の設定の自由度が拡大されれば、図7(a)及び(b)に示す領域71c及び73cや、図9(a)及び(b)に示す右眼領域71R及び73R、並びに左眼領域71L及び73Lの設定の自由度が拡大され得る。
【0068】
図12(a)に示す表示装置1では、有機ELパネル3を封止フィルム81で封止する構成としたが、表示装置1の構成はこれに限定されない。有機ELパネル3は、表示装置1のさらに別の例を示す断面図である図12(b)に示すように、レンチキュラレンズ7が封止フィルム81を兼ねる構成が採用され得る。
【0069】
図12(b)に示す構成では、レンチキュラレンズ7は、シート状の基部83に複数のシリンドリカルレンズ61が形成された構成を有している。図12(b)に示す構成では、図12(a)に示す封止フィルム81の厚みを省略することができるので、表示装置1の厚みを一層低減しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における表示装置の主要構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図3】図1(b)中のB部の拡大図。
【図4】図2中のC部における分解斜視図。
【図5】本発明の実施形態におけるレンチキュラレンズの平面図。
【図6】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図7】本発明の実施形態における表示装置での2画面表示を説明する図。
【図8】本発明の実施形態における有機ELパネルの平面図。
【図9】本発明の実施形態における表示装置での立体表示を説明する図。
【図10】本発明の実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【図11】本発明の実施形態における有機ELパネルの他の例を示す分解斜視図。
【図12】本発明の実施形態における表示装置の別の例を示す断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…表示装置、3…有機ELパネル、5…表示パネル、7…レンチキュラレンズ、9…発光領域、25…有機層、61…シリンドリカルレンズ、100…電子機器、110…表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1組の電極間に発光層が介在した構成を有し、前記1組の電極間の電位差によって前記発光層が発光するELパネルと、
平面視で前記ELパネルに重なった状態で前記ELパネルからの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する画像形成パネルと、
前記ELパネル及び前記画像形成パネルの間に介在し、前記ELパネルからの前記光の進行方向を規制する光学素子と、を有し、
前記画像形成パネルは、前記ELパネルからの前記光が前記光学素子を介して前記複数の画素に照射されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる複数の発光領域が前記第1方向とは交差する第2方向に並列しているとともに、前記発光層が前記発光領域ごとに独立して発光可能に構成されており、
前記光学素子は、平面視で、前記ELパネルと前記複数の画素とが重なる領域の輪郭を前記第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有するとともに、前記第3方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズが、前記第2方向に配列したレンチキュラレンズで構成されており、
各前記シリンドリカルレンズは、前記ELパネル、前記レンチキュラレンズ及び前記画像形成パネルを前記第2方向に沿って切断したときの断面が、前記画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、前記弓形の弦に相当する部位が、4n(nは1以上の自然数)個の前記発光領域にかかる長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記ELパネルを構成するEL素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記ELパネルを構成する前記有機EL素子は、トップエミッション型であることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記レンチキュラレンズは、前記複数のシリンドリカルレンズがシート状の基部に形成された構成を有しており、
前記ELパネルは、前記画像形成パネル側が前記レンチキュラレンズで封止されていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
各前記発光領域は、赤系の色を呈する前記光を発する赤系領域と、緑系の色を呈する前記光を発する緑系領域と、青系の色を呈する前記光を発する青系領域とが前記第2方向に並んだ構成を有しているとともに、前記赤系領域、前記緑系領域及び前記青系領域のそれぞれに対して前記1組の電極が設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
互いに対向する1組の電極間に発光層が介在した構成を有し、前記1組の電極間の電位差によって前記発光層が発光するELパネルと、
平面視で前記ELパネルに重なった状態で前記ELパネルからの光が照射される複数の画素を有し、前記複数の画素のそれぞれについて前記光の透過及び遮断の切り替えが制御されて画像を形成する画像形成パネルと、
前記ELパネル及び前記画像形成パネルの間に介在し、前記ELパネルからの前記光の進行方向を規制する光学素子と、を有し、
前記画像形成パネルは、前記ELパネルからの前記光が前記光学素子を介して前記複数の画素に照射されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ELパネルは、平面視で第1方向に沿って帯状に延びる複数の発光領域が前記第1方向とは交差する第2方向に並列しているとともに、前記発光層が前記発光領域ごとに独立して発光可能に構成されており、
前記光学素子は、平面視で、前記ELパネルと前記複数の画素とが重なる領域の輪郭を前記第2方向とは交差する第3方向にまたぐ長さを有するとともに、前記第3方向に沿って延びる複数のシリンドリカルレンズが、前記第2方向に配列したレンチキュラレンズで構成されており、
各前記シリンドリカルレンズは、前記ELパネル、前記レンチキュラレンズ及び前記画像形成パネルを前記第2方向に沿って切断したときの断面が、前記画像形成パネル側に向かって凸となる弓形を呈するとともに、前記弓形の弦に相当する部位が、4n(nは1以上の自然数)個の前記発光領域にかかる長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記ELパネルを構成するEL素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記ELパネルを構成する前記有機EL素子は、トップエミッション型であることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記レンチキュラレンズは、前記複数のシリンドリカルレンズがシート状の基部に形成された構成を有しており、
前記ELパネルは、前記画像形成パネル側が前記レンチキュラレンズで封止されていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
各前記発光領域は、赤系の色を呈する前記光を発する赤系領域と、緑系の色を呈する前記光を発する緑系領域と、青系の色を呈する前記光を発する青系領域とが前記第2方向に並んだ構成を有しているとともに、前記赤系領域、前記緑系領域及び前記青系領域のそれぞれに対して前記1組の電極が設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置を表示部として備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−15100(P2009−15100A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178053(P2007−178053)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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