説明

電気掃除機

【課題】正常運転の電動送風機を停止させることなく、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出して電動送風機の運転を停止し、電動送風機の発煙・発火を未然に防ぎかつ信頼性に優れた電気掃除機を提供する。
【解決手段】本電気掃除機は、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出する火花検出手段と、この火花検出手段からの火花検出情報に基づく検出値が所定値より大きいとき、電動送風機を制御する制御手段を備え、所定値は複数設定され、電動送風機の起動時から所定時間内では第1の所定値が設定され、所定時間経過後は、第1の所定値より低い所定値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機に係り、特に、電動送風機から発生する火花を検出する火花検出手段を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動送風機から発生する発煙・発火を防止するために、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を火花検出手段で検出して、電動送風機を制御する電気掃除機が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電気掃除機に用いる火花検出手段は、A/D変換手段がサンプリングしたデジタル値の今回データと前回データを求め、この求めた差の値が予め設定した所定の火花判断レベルより大きい時、火花異常と判断する。また、所定時間内における最大値と最小値の差を求め、この求めた差の値が予め設定した所定の火花判断レベルより大きい時、火花異常と判断する。
【0004】
また、特許文献2に記載の電気掃除機は、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出する光検出手段を設け、この光検出手段により火花を検出して電動送風機の異常を検出し、電動送風機を停止させる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電気掃除機は、A/D変換手段がサンプリングしたデジタル値の今回データと前回データを求め、この求めた差の値が予め設定した所定の火花判断レベルより大きい時、火花異常と判断する。また、一般に電動送風機の起動時に火花が高めに発生し、その後、下がっていく傾向にあるが、この傾向を考慮した火花検出手段と電動送風機の制御にはなっておらず、さらに、所定値が1個では、電動送風機をある程度運転し安定した時の火花に合わせて所定値を設定した場合には、起動時に火花が高めに発生したときに、所定値より高くなり、電動送風機を正常運転状態でも停止させてしまう不都合がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の電気掃除機は、光を検出する手段はスパークが発生する光の量が大きくても、時間とともに収束する場合もあり、光検出の安定性に欠けて信頼性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−86124号公報
【特許文献2】特開2006−204470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、正常運転の電動送風機を停止させることなく、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出して電動送風機の運転を停止し、電動送風機の発煙・発火を未然に防ぎかつ信頼性に優れた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電気掃除機は、掃除機本体に設けた集塵室と、この集塵室に吸引負圧を作用させる電動送風機と、この電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出する火花検出手段と、この火花検出手段からの火花検出情報に基づく検出値が所定値より大きいとき、前記電動送風機を制御する制御手段を備えた電気掃除機において、前記所定値は複数設定され、前記電動送風機の起動時から所定時間内では第1の所定値が設定され、前記所定時間経過後は、前記第1の所定値より低い所定値が設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気掃除機によれば、正常運転の電動送風機を停止させることなく、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出して電動送風機の運転を停止し、電動送風機の発煙・発火を未然に防ぎかつ信頼性に優れた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の電気掃除機の概念図。
【図2】本発明の一実施形態の電気掃除機に用いる電動送風機を一部切欠した側面図。
【図3】本発明の一実施形態の電気掃除機に用いる電動送風機用制御回路のブロック図。
【図4】本発明の一実施形態の電気掃除機の火花検出の制御フローチャート。
【図5】本発明の一実施形態の電気掃除機の火花検出に用いるサンプリング方法の概念図。
【図6】本発明の一実施形態の電気掃除機に用いる電動送風機の起動後の運転時間と火花量の相関図。
【図7】本発明の一実施形態の電気掃除機に用いる電源電圧区分と設定値との相関図表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る電気掃除機について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電気掃除機1は、掃除機本体2と、この掃除機本体2の前部に形成されたホース接続口2aに一端が着脱可能に接続された集塵ホース3と、この集塵ホース3の他端の手元操作パイプ4に着脱自在に接続された延長管5と、この延長管5の先端に着脱自在に接続された吸込口体6とを備えている。
【0014】
掃除機本体2の内部には、集塵ホース3に連通し、いずれも図示しない、第1の塵埃除去手段と高速で流れる空気中に含まれる塵埃を重力差で分離する高速分離方式を採用し、第2の塵埃分離手段として、プリーツフィルタとから構成される集塵ユニットを備えた集塵室7と、この集塵室7に吸込負圧を作用させる電動送風機10とが設けられる。
【0015】
図2に示すように、電動送風機10は、吸気口11を有する遠心ファン部12と、排気口13を有するモータ部14とから構成される。
このモータ部14は、排気口13を有するモータハウジング15と、このモータハウジング15の内周面15aに設けられた固定子16と、モータハウジング15内に回動自在に軸支された回転子17と、モータハウジング15に設けられ、回転子17に電気的に接続された一対のブラシ機構18とから構成され、固定子16と、回転子17と、一対のブラシ機構18とでモータ20が構成される。
【0016】
回転子17は、固定子16の内側に配設される。回転子17は、その軸芯に配置されたロータ軸21と、このロータ軸21に巻回されたフィールド巻線22(回転子巻線)と、このフィールド巻線22に電気的に接続され、ロータ軸21に設けられた整流子23とを備える。
【0017】
また、ブラシ機構18は、ブラシホルダ固定部24に貫設されたブラシホルダ25と、このブラシホルダ25に摺動自在に収容されたカーボンブラシ26と、このカーボンブラシ26を回転子17の整流子23に押圧付勢させるコイルバネ27とを備える。
【0018】
図3に示すように、電動送風機用制御回路30には、電動送風機10と、火花検出手段31と、制御手段32と、電力調整部33と、電源電圧検知手段34が設けられる。
火花検出手段31には、電動送風機10の電流を検出するカレントトランスを用い、このカレントトランスで検出した電流は電圧値に変換される。電源には例えば商用電源定格100Vを用いる。
【0019】
制御手段32はマイコン、メモリを備え、電力調整部33には例えばトライアックが用いられる。
火花検出手段31で電動送風機10を流れた電流を検出し、火花検出情報に基づき、制御手段32、電力調整部33を介して電動送風機10を制御する。
また、電源電圧検知手段34は電源電圧を検知し、電源電圧情報を制御手段32に入力する。
【0020】
なお、一般的な電動送風機と同様に、電動送風機10の起動時に火花が高めに発生し、その後、下がっていく傾向にある。
【0021】
次に、電動送風機用制御回路30による火花検出について説明する。
【0022】
図4に示す火花検出の制御フローチャートに従って、火花検出の実施例について説明する。
【0023】
電気掃除機1が使用され、電動送風機10が起動される(S1)。
火花検出が行われる(S2)。
この火花検出は、図5に示すように、等時間間隔で複数のサンプリングを行う。このサンプリングは、例えば、50Hzの半周波数で、10ms、100ポイントのサンプリング間隔で行う。位相制御が行われている場合は、電流が流れている間だけ、サンプリングする。
【0024】
例えば、火花検出手段31で電動送風機10を流れた電流を検知し、電圧に変換する。この電圧値をサンプリング(n−2)の前回実測値Iaとして制御手段32に記憶する。さらに、火花検出手段31で電動送風機10を流れた電流を検知し、電圧に変換する。
この電圧値をサンプリング(n−1)の今回実測値Ibとして制御手段32に記憶する。
【0025】
制御手段32により予測値Ineを演算する。
予測値Ineは前回実測値Iaと今回実測値Ibから予測され、前回実測値Iaと今回実測値Ibの差に今回実測値Ibを加えた値である。
すなわち、Ine=Ib+(Ib−Ia)である。
制御手段32は、予測値Ineと実測値Inの差の絶対値が、火花検出情報に基づく検出値(火花量)として、制御手段32の記憶手段に記憶する。
制御手段32は、電動送風機10の起動後、所定時間経過したか否か判断する(S3)。
【0026】
図6は電動送風機の起動後の運転時間と火花量の相関を示す。
この所定時間は、図6に示すように、起動から火花量が安定する、例えば、2分に設定する。
起動後の時間が所定時間を経過していない場合(S3のNO)、検出値が第1の所定値以上か否かを判断する(S4)。
【0027】
なお、所定値の決め方は次のような実験によって決定される。
電動送風機の起動から火花量が安定するまでの時間と火花量を測定する。これを複数の電動送風機で確認する。この実験から起動時の最も高い火花量と、火花量が安定する時間と火花量を求め、安全係数を掛けて所定値を設定する。
ここで、第1の所定値は、図6に示す最大検出値に、誤作動を防止する安全係数(例えば1.1)を考慮した値である。
【0028】
検出値が第1の所定値以上である場合(S4のYES)、制御手段32は、電動送風機10を停止させる(S5)。
検出値が第1の所定値以上である場合は、起動後所定時間内で、電動送風機10の整流子23とカーボンブラシ26との摩擦によって火花が発生していることを示すため、電動送風機10を停止させて、電動送風機10の発煙・発火を未然に防ぐ。
【0029】
S3において、起動後の時間が所定時間を経過している場合(S3のYES)、検出値が第2の所定値以上か否かを判断する(S6)。
ここで、第2の所定値は、図6に示す安定値に誤作動を防止する安全係数(例えば1.4)を考慮した値である。
検出値が第2の所定値以上である場合(S6のYES)、制御手段32は、電動送風機10を停止させる(S5)。
【0030】
検出値が第2の所定値以上である場合は、起動後所定時間経過後の安定運転時、電動送風機10の整流子23とカーボンブラシ26との摩擦によって火花が発生していることを示すため、電動送風機10を停止させて、電動送風機10の発煙・発火を未然に防ぐ。
【0031】
S4において、検出値が第1の所定値以上でない場合(S4のNO)、S2に戻り、火花検出が繰り返し行われる。
S6において、検出値が第2の所定値以上でない場合(S6のNO)、S2に戻り、火花検出が繰り返し行われる。
このように、S4及びS6において、検出値が第1の所定値及び第2の所定値以上でない場合は、電動送風機10が電動送風機10の整流子23とカーボンブラシ26との摩擦による火花の発生がないことを示すため、電動送風機10の運転を継続する。
【0032】
なお、図6における起動後の運転時間と火花量の相関及び第1の設定値と第2の設定値は、図7に示すように、電源電圧の区分毎に決定され、例えばAC90V≦電源電圧<AC100Vでは、第1の設定値はC1、第2の設定値はC2である。
【0033】
なお、これらの設定値は、電源電圧毎、電動送風機の動作運転モード毎、電源周波数あるいはこれらの組み合わせにより、それぞれ変更が可能である。
また、本実施形態では、設定値は第1の設定値と、この設定値より低い第2の設定値との2個の設定値としたが、さらに、第2の設定値より低い第3の設定値、さらに、同様に複数の設定値を設定してもよい。また、電源は交流電源に限らず、コードレスの充電方式であってもよい。
【0034】
上述のように、本電気掃除機によれば、火花検出手段からの火花検出情報に基づく検出値が、電動送風機の起動時から所定時間内では第1の所定値より大きいときに、電動送風機は制御、例えば停止され、所定時間経過後は、第1の所定値より低い第2の所定値より大きいときに、電動送風機は制御、例えば停止される。
【0035】
従って、所定時間内に対する大きな所定値を1個設定し、安定時の異常火花を検知して電動送風機停止できないこと、あるいは安定運転時に対する小さな所定値を1個設定し、起動時に正常運転であるにもかかわらず、電動送風機を停止させる従来とは異なり、正常運転の電動送風機を停止させることなく、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出して電動送風機の運転を停止し、電動送風機の発煙・発火を未然に防ぐことができる。
【0036】
本実施形態の電気掃除機によれば、正常運転の電動送風機を停止させることなく、電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出して電動送風機の運転を停止し、電動送風機の発煙・発火を未然に防ぎかつ信頼性にすぐれた電気掃除機が実現される。
【符号の説明】
【0037】
1 電気掃除機
2 掃除機本体
2a ホース接続口
3 集塵ホース
4 手元操作パイプ
5 延長管
6 吸込口体
7 集塵室
10 電動送風機
11 吸気口
12 遠心ファン部
13 排気口
14 モータ部
15 モータハウジング
15a 内周面
16 固定子
17 回転子
18 ブラシ機構
20 モータ
21 ロータ軸
22 フィールド巻線
23 整流子
24 ブラシホルダ固定部
25 ブラシホルダ
26 カーボンブラシ
27 コイルバネ
30 電動送風機用制御回路
31 火花検出手段
32 制御手段
33 電力調整部
34 電源電圧検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除機本体に設けた集塵室と、この集塵室に吸引負圧を作用させる電動送風機と、この電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生する火花を検出する火花検出手段と、この火花検出手段からの火花検出情報に基づく検出値が所定値より大きいとき、前記電動送風機を制御する制御手段を備えた電気掃除機において、
前記所定値は複数設定されかつ、
前記電動送風機の起動時から所定時間内では第1の所定値が設定され、
前記所定時間経過後は、前記第1の所定値より低い所定値が設定されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記複数の所定値は、前記電動送風機の動作運転モード、電源周波数、電源電圧値により、それぞれ変更が可能であること特徴とする請求項1記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187824(P2010−187824A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33783(P2009−33783)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】