説明

電気接点

【課題】
本発明は、Cr含有量やCr粉末粒径と低融点金属添加量との関係を適正化し、最適な組織および組成からなることで、溶着引離し力の低減効果を十分に発揮し、優れた遮断性能と通電性能を有するとともに、真空遮断器等の大幅な小型化を可能とする電気接点を提供することにある。
【解決手段】
本発明の電気接点は、CuとTeと耐火性金属とからなる焼結体であり、耐火性金属の原料粉末の平均粒径をdhp(μm)、耐火性金属の含有量をChp(重量%)としたとき、Teの含有量CTe(重量%)が次の式(1)の範囲にあるものである。
Te=Chp{(1.4/dhp2)+8.75×10-4}±0.005 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空遮断器,真空開閉器等に用いられる新規な真空バルブ用電気接点に関する。
【背景技術】
【0002】
真空遮断器等の受配電機器には、小型・低価格化が求められている。そのためには真空バルブ内の電気接点を低強度化し、ジュール熱により電気接点同士が溶着した際の引離し力を低減することによって、電気接点の開閉動作を行う操作機構部を小型化する必要がある。
【0003】
電気接点の多くは焼結製法によって得られるCr−Cu系の合金が用いられ、これを低強度化させる手段として、Teなどの低融点金属を添加する方法が用いられる。特許文献1〜4参照。
【0004】
【特許文献1】特開2005−135778号公報
【特許文献2】特開2003−147456号公報
【特許文献3】特開2002−279865号公報
【特許文献4】特開2002−279864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のCr−Cu系電気接点において、低融点金属は耐溶着成分として、あるいは電流遮断後の接点表面の荒れを抑制するために添加され、数重量%の添加量が必要であった。
【0006】
この程度の量の低融点金属を添加すると、通電成分であるCuマトリクスに欠陥が生じたり、焼結が不十分となりやすく、良好な通電性能や遮断性能が得られない場合がある。
【0007】
また、真空バルブを真空封止ろう付けして製作する場合、電気接点から低融点金属が揮散してろう付け部の健全性を損ない、真空バルブ内の真空度低下を招く恐れがあった。
【0008】
さらに、低融点金属添加量が適正量に対して少ない場合には、電気接点の低強度化が十分でなく、引離し力の低減効果が不足する場合があった。
【0009】
本発明の目的は、Cr含有量やCr粉末粒径と低融点金属添加量との関係を適正化し、最適な組織および組成からなることで、溶着引離し力の低減効果を十分に発揮し、優れた遮断性能と通電性能を有するとともに、真空遮断器等の大幅な小型化を可能とする電気接点を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気接点は、CuとTeと耐火性金属とからなる焼結体であり、耐火性金属の原料粉末の平均粒径をdhp(μm)、耐火性金属の含有量をChp(重量%)としたとき、Teの含有量CTe(重量%)が次の式(1)の範囲にあるものである。
【0011】
Te=Chp{(1.4/dhp2)+8.75×10-4}±0.005 ・・・(1)
また、本発明の電気接点は、CuとTeと耐火性金属とからなる焼結体であり、Cuと耐火性金属の界面において、その70〜90%に空隙を有する組織をなすものである。
【0012】
さらに、本発明の電気接点は、耐火性金属がMoあるいはCrのいずれか1種で、それを15〜40重量%含むものである。
【0013】
本発明の電気接点の製造方法は、CuとTeと耐火性金属それぞれの粉末を混合し、この混合粉末を加圧成形した後、Cuの融点以下の温度で加熱焼結するものである。
【0014】
また、本発明の電気接点の製造方法は、Cuの粉末と、表面にTeを被覆した耐火性金属の粉末とを混合して得られる混合粉末を加圧成形し、Cuの融点以下の温度で加熱焼結するものである。
【0015】
さらに、本発明の電気接点の製造方法は、耐火性金属の原料粉末の平均粒径dhpが22〜88μmの範囲にあり、粒度分布の標準偏差をσとするとき、粒径がdhp±σの範囲の耐火性金属粉末を用い、圧力30Pa〜0.2MPaの不活性あるいは還元性雰囲気中で加熱焼結するものである。
【0016】
本発明の電気接点を用いた電極は、円盤状部材と、この円盤状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒とを有するものである。
【0017】
本発明に関わる真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極とを備え、それらの少なくとも一方が、本発明の電気接点を用いた電極からなるものである。
【0018】
本発明に関わる真空遮断器は、少なくとも一方に本発明の電気接点を用いた固定側電極及び可動側電極を真空容器内に備えた真空バルブと、この真空バルブ内の固定側電極及び可動側電極の各々に真空バルブ外に接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、Cr含有量やCr粉末粒径と低融点金属添加量との関係を適正化し、最適な組織および組成を見つけることによって、溶着引離し力の低減効果を十分に発揮し、優れた遮断性能と通電性能を有するとともに、真空遮断器等の大幅な小型化を可能とする電気接点を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明者らは、焼結電気接点におけるTe添加による強度低減機構が、耐火性金属粒子とCuマトリクスの間の物理的乖離によることを見出した。すなわち、Teは優先的に耐火性金属とCuの界面に空隙を形成させ、界面強度の低下を招き、接点材料としての強度を低下させる。このため、強度低減に有効なTe添加量は、耐火性金属とCuの界面の面積に依存し、耐火性金属の粒径と含有量によって最適値が決定されるとの知見を得た。
【0022】
この知見を基に、本発明の電気接点はCuとTeと耐火性金属からなる焼結体で、耐火性金属の原料粉末の平均粒径をdhp(μm)、耐火性金属の含有量をChp(重量%)としたとき、Teの含有量CTe(重量%)は次の式(1)の範囲にある。
【0023】
これにより、高い通電性能や遮断性能を有しながら、適量のTeによって耐火性金属とCuマトリクスの金属的な結合を乖離し、効果的に強度を低減することによって、溶着した電気接点同士を引離す力を小さくすることができる。Teの含有量がこの範囲より少ないと強度低減効果が不足し、この範囲より多いと耐火性金属とCuマトリクスとの界面においてTeが余剰となり、Cuマトリクスの組織に気孔などの欠陥を形成し、接点材料としての組織の健全性を損なうとともに、通電性能などが低下する。
【0024】
Te=Chp{(1.4/dhp2)+8.75×10-4}±0.005 ・・・(1)
したがって、本発明の電気接点はCuとTeと耐火性金属からなる焼結体で、Cuと耐火性金属の界面において、その70〜90%に空隙を有する組織をなすものである。Cuと耐火性金属の界面の空隙による物理的乖離によって、界面強度が低下し、前述のように溶着引離し力を効果的に低減できる。
【0025】
また、本発明の電気接点において、耐火性金属としてMoあるいはCrのいずれか1種を含むことにより、良好な耐電圧性能と遮断性能を有する電気接点を得ることができる。この耐火性金属の含有量は15〜40重量%であることが望ましく、これより少ないと耐電圧性能が不足し、これより多いと通電性能が低下するとともに、焼結性が低下して緻密な電気接点の製造が困難になる。
【0026】
本発明の電気接点の製造方法は、CuとTeと耐火性金属それぞれの粉末を混合し、この混合粉末を加圧成形した後、Cuの融点以下の温度で加熱焼結するもので、比較的容易に低コストで製造することが可能になる。
【0027】
Teの粉末を混合する代わりに、あらかじめ耐火性金属の表面をTeで被覆してもよく、これにより前述の界面強度の低減効果を、さらに効率よく発揮させることができる。Te被覆は、蒸着などの物理気相析出法や、他の表面処理技術を応用することによって可能である。
【0028】
また、混合粉末の加圧成形過程において最終形状に成形することにより、加熱焼結後に機械加工を用いることなく、電気接点を製造することができる。この加熱焼結は、真空中で行っても本発明の目的とする接点材料が得られるが、圧力30Pa〜0.2MPaの不活性あるいは還元性雰囲気中で行うことにより、加熱過程でのTeの揮散を抑制し、前述の界面強度の低減効果をより高めることができる。
【0029】
本発明の電気接点の製造方法において、用いる耐火性金属の原料粉末の粒径は、そのばらつき範囲が小さいものを用いることが好ましい。具体的には、平均粒径dhpが22〜88μmの範囲にあり、粒度分布の標準偏差をσとするとき、粒径がdhp±σの範囲の粉末を用いることが望ましい。平均粒径がこれより小さいと、Teの分散が不均一になり、界面強度の低減効果が不十分になりやすい。
【0030】
また、耐火性金属粒子の微細分散により、Cuマトリクスの結晶粗大化が抑制され、いわゆる組織の微細化強化機構が働き、電気接点の強度が高まる傾向にある。さらに、混合粉末の流動性が低下し、耐火性金属が凝集しやすくなるとともに生産性が低下する。耐火性金属の平均粒径が上記範囲より大きいと、組織の均一性が低下し、電流遮断時における接点面においてCuが溶出し、溶着が発生しやすくなる。用いる粒径の範囲は、dhp±σの範囲にあることで、前記(1)式による強度低減効果が効率よく得られる。
【0031】
本発明の電気接点を用いた電極は、円盤状部材と、この円盤状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒とを有し、円盤状部材が本発明の電気接点からなることにより、通電抵抗が小さく、所望の性能を有する電極が得られる。
【0032】
本発明に関わる真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極を備え、その少なくとも一方が、本発明の電気接点を用いた電極からなるものである。また、本発明に関わる真空遮断器は、少なくとも一方に本発明の電気接点を用いた固定側電極及び可動側電極を真空容器内に備えた真空バルブと、この真空バルブ内の固定側電極及び可動側電極の各々に真空バルブ外に接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備えたものである。これにより、優れた遮断性能や通電性能を有し、電気接点同士が溶着した際の引離し力が小さく、操作機構部を小型化することができ、小型で低価格の真空遮断器、さらには各種真空開閉装置が得られる。
【実施例1】
【0033】
表1に示す組成の電気接点を作製し、これを用いて電極を作製した。図1は作製した電極の構造を示す断面図である。図1において、1は電気接点、2はアークに駆動力を与えるためのスリット溝、3はステンレス製の補強板、4は電極棒、5はろう材である。
【0034】
電気接点1の作製方法は次の通りである。まず、所定の粒径のMo粉末またはCr粉末と、60μm以下のCu粉末およびTe粉末とを、表1の組成となるような配合比でV型混合器により混合した。次にこの混合粉末を、円盤形状の金型に充填し、油圧プレスにより400MPaの圧力で加圧成形した。成形体の密度は、およそ73%であった。これを圧力40Paの水素雰囲気中で、1060℃×2時間加熱して焼結し、電気接点1の素材となる焼結体を作製した。得られた焼結体の相対密度は、およそ96%であった。
【0035】
得られた焼結体を機械加工し、図1に示す形状の電気接点1を作製した。なお、スリット溝2を有する最終形状を形作ることのできる金型に混合粉末を充填し、焼結する方法によっても電気接点1を得ることができ、この方法では機械加工などの後加工が不要であるため、容易に製作が可能である。
【0036】
さらに、電極の作製方法は次の通りである。電極棒4を無酸素銅で、また、補強板3をSUS304であらかじめ機械加工により作製しておき、前記の焼結および機械加工で得られた電気接点1,補強板3,電極棒4それぞれの間にろう材5を載置し、これを8.2×10-4Pa以下の真空中で970℃×10分間加熱し、図1に示す電極を作製した。この電極は定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kA用の真空バルブに用いられる電極である。なお、電気接点1の強度が十分であれば、補強板3は省いてもよい。
【実施例2】
【0037】
実施例1で作製した電極を用いて、真空バルブを作製した。真空バルブの仕様は、定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kAである。
【0038】
図2は、本実施例に関わる真空バルブの構造を示す図である。図2において、1a,1bはそれぞれ固定側電気接点,可動側電気接点、3a,3bは補強板、4a,4bはそれぞれ固定側電極棒,可動側電極棒で、これらをもってそれぞれ固定側電極6a,可動側電極6bを構成する。なお、本実施例では、固定側と可動側の電気接点の溝が接触面において一致するように設置した。可動側電極6bは、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐ可動側シールド8を介して可動側ホルダー12にろう付け接合される。これらは、固定側端板9a,可動側端板9b、及び絶縁筒13によって高真空にろう付け封止され、固定側電極6a及び可動側ホルダー12のネジ部をもって外部導体と接続される。絶縁筒13の内面には、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐシールド7が設けられ、また、可動側端板9bと可動側ホルダー12の間には摺動部分を支えるためのガイド11が設けられる。可動側シールド8と可動側端板9bの間にはベローズ10が設けられ、真空バルブ内を真空に保ったまま可動側ホルダー12を上下させ、固定側電極6aと可動側電極6bを開閉させることができる。
【0039】
このように、実施例1で作製した電気接点を図2に示す電気接点1a,1bに用いて、本発明に係わる真空バルブを作製した。
【実施例3】
【0040】
実施例2で作製した真空バルブを搭載した真空遮断器を作製した。図3は、本発明に関わる真空バルブ14とその操作機構を示す真空遮断器の構成図である。
【0041】
真空遮断器は、操作機構部を前面に配置し、背面に真空バルブ14を支持する3相一括型の3組のエポキシ筒15を配置した構造である。真空バルブ14は、絶縁操作ロッド16を介して、操作機構によって開閉される。
【0042】
遮断器が閉路状態の場合、電流は上部端子17,電気接点1,集電子18,下部端子19を流れる。電極間の接触力は、絶縁操作ロッド16に装着された接触バネ20によって保たれている。電極間の接触力および短絡電流による電磁力は、支えレバー21およびプロップ22で保持されている。投入コイル30を励磁すると開路状態からプランジャ23がノッキングロッド24を介してローラ25を押し上げ、主レバー26を回して電極間を閉じたあと、支えレバー21で保持している。
【0043】
遮断器が引き外し自由状態では、引き外しコイル27が励磁され、引き外しレバー28がプロップ22の係合を外し、主レバー26が回って電極間が開かれる。
【0044】
遮断器が開路状態では、電極間が開かれたあと、リセットバネ29によってリンクが復帰し、同時にプロップ22が係合する。この状態で投入コイル30を励磁すると閉路状態になる。なお、31は排気筒である。
【実施例4】
【0045】
実施例1で作製した電気接点を実施例2で示した定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kAの真空バルブに用い、実施例3で示した真空遮断器に搭載して性能試験を行った。
【0046】
【表1】

【0047】
表1は、電気接点組成と性能試験結果を示すもので、No.1〜No.9が本発明品、No.10〜No.20が比較品で、各性能はTeを含まないNo.10の結果を基準(1.0)とし、相対値で表わした。
【0048】
従来技術であるTeを含む電気接点で、本発明の式(1)の範囲から外れた添加量の場合がNo.11とNo.12である。No.11ではTe添加量が少なく、引離し力の低減効果が見られない。また、No.12ではTe添加量が過剰のため、Cuマトリクスに欠陥が生じて通電性能が低下するとともに、Teの揮散による耐電圧性能の低下が生ずる。同様に、No.15〜No.18もTeの添加量が本発明の式(1)の範囲から外れる場合で、Teが少ない場合(No.15,No.17)には引離し力の低減効果が小さく、Teが多い場合(No.16,No.18)には耐電圧性低下のほか、通電性能や遮断性能の低下が生ずる。なお、No.13とNo.14はCr含有量が本発明の範囲から外れた場合で、比較的高融点の耐アーク成分であるCrが少ないと(No.13)耐電圧性能が低下し、Crが多いと(No.14)通電抵抗が大きくなり、それに伴い遮断性能も低下する。さらに、No.19とNo.20は、用いたCr粉末の粒径が本発明の範囲から外れた場合で、Cr粒径が小さいと(No.19)通電性能が低下するとともに、微細化強化機構との相殺作用によって強度低減効果が低下し、引離し力の低減効果が小さくなる。Cr粒径が大きいと(No.20)Cr粒子の分布が不均一となりやすく、耐電圧性能が低下するとともに、Cuの溶出に伴って溶着面積が増大し、引離し力が大きくなる。
【0049】
以上の比較例に対し、本発明のNo.1〜No.6ではTe添加量並びにCr含有量が適正であるため、溶着接点同士の引離し性が大幅に改善され、通電性能や遮断性能および耐電圧性能の著しい低下は見られない。また、耐火性金属にMoを用いた場合でも(No.7〜No.9)、Te添加量が本発明の範囲にあることによって、大幅な引離し力の低減効果が発揮されるとともに、他の性能も実用上支障のない範囲にある。
【0050】
本発明のNo.1〜No.6の電気接点の断面組織を、走査電子顕微鏡により観察した。図4は、その電子顕微鏡像の一例である。このように、本発明に関わる電気接点においては、Cr粒子とCuマトリクスとの界面に、幅1μm程度の空隙が存在し、両者が物理的に乖離していた。また、界面に対する空隙の割合は、電子顕微鏡像から測定した結果、いずれの電気接点においても表1に示すように70〜90%の範囲にあった。以上の傾向は、耐火性金属にMoを用いたNo.7〜No.9の電気接点においても同様であった。
【0051】
一方、Te添加量が少ない場合(No.15,No.17)の走査電子顕微鏡像は、図5にその一例を示すように、Cr粒子とCuマトリクスとの界面に空隙は存在せず、界面強度が低下する様相がなく、引離し力低減効果が得られない。また、Te添加量が多い場合(No.16,No.18)には、図4のようなCrとCuの界面乖離が見られたが、Cuマトリクスには図6に一例を示すように気孔が多く見られ、マトリクスの健全性が損なわれている様相であった。
【0052】
このように、本発明に関わる電気接点によって、健全な材料組織を維持することによって優れた遮断性能,通電性能および耐電圧性能を有しながら、溶着した接点同士の引離し力を大幅に低減することができ、操作機構部の小型化が実現可能な真空バルブおよび真空遮断器が得られる。
【実施例5】
【0053】
実施例2で作製した真空バルブを、真空遮断器以外の真空開閉装置に搭載した。図7は、実施例2で作製した真空バルブ14を搭載した、路肩設置変圧器用の負荷開閉器である。
【0054】
この負荷開閉器は、主回路開閉部に相当する真空バルブ14が、真空封止された外側真空容器32内に複数対収納されたものである。外側真空容器32は、上部板材33と下部板材34及び側部板材35を備え、各板材の周囲(縁)が互いに溶接によって接合されているとともに、設備本体とともに設置されている。
【0055】
上部板材33には、上部貫通孔36が形成されており、各上部貫通孔36の縁には環状の絶縁性上部ベース37が各上部貫通孔36を覆うように固定されている。そして、各上部ベース37の中央に形成された円形空間部には、円柱状の可動側電極棒4bが往復動(上下動)自在に挿入されている。すなわち、各上部貫通孔36は上部ベース37と可動側電極棒4bによって閉塞されている。
【0056】
可動側電極棒4bの軸方向端部(上部側)は、外側真空容器32の外部に設置される操作器(電磁操作器)に連結されるようになっている。また、上部板材33の下部側には、各上部貫通孔36の縁に沿って外側ベローズ38が往復動(上下動)自在に配置されており、各外側ベローズ38は、軸方向の一端側が上部板材33の下部側に固定され、軸方向の他端側が各可動側電極棒4bの外周面に装着されている。すなわち、外側真空容器32を密閉構造とするために、各上部貫通孔36の縁には各可動側電極棒4bの軸方向に沿って外側ベローズ38が配置されている。また、上部板材33には排気管(図示省略)が連結され、この排気管を介して外側真空容器32内が真空排気されるようになっている。
【0057】
一方、下部板材34には下部貫通孔39が形成されており、各下部貫通孔39の縁には絶縁性ブッシング40が各下部貫通孔39を覆うように固定されている。各絶縁性ブッシング40の底部には、環状の絶縁性下部ベース41が固定されている。そして、各下部ベース41の中央の円形空間部には、円柱状の固定側電極棒4aが挿入されている。すなわち、下部板材34に形成された下部貫通孔39は、それぞれ絶縁性ブッシング40,下部ベース41、及び固定側電極棒4aによって閉塞されている。そして、固定側電極棒4aの軸方向の一端側(下部側)は、外側真空容器32の外部に配置されたケーブル(配電線)に連結されるようになっている。
【0058】
外側真空容器32の内部には、負荷開閉器の主回路開閉部に相当する真空バルブ14が収納されており、各可動側電極棒4bは、2つの湾曲部を有するフレキシブル導体(可撓性導体)42を介して互いに連結されている。このフレキシブル導体42は、軸方向において2つの湾曲部を有する導電性板材としての銅板とステンレス板を交互に複数枚積層して構成されている。フレキシブル導体42には貫通孔43が形成されており、各貫通孔43に各可動側電極棒4bを挿入して互いに連結される。
【0059】
以上のように、実施例2で作製した本発明に関わる真空バルブは、路肩設置変圧器用の負荷開閉器にも適用可能であり、これ以外の真空絶縁スイッチギアなどの各種真空開閉装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の新規な真空バルブ用電気接点は、真空遮断器,真空開閉器等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施例に関わる電極の構造を示す断面図。
【図2】本発明の第2実施例に関わる真空バルブの構造を示す図。
【図3】本発明の第3実施例に関わる真空遮断器の構造を表す図。
【図4】本発明の第4実施例に関わる電気接点材料の組織の一例を示す図。
【図5】本発明の第4実施例に関わる比較例の電気接点材料の組織の一例を示す図。
【図6】本発明の第4実施例に関わる比較例の電気接点材料の組織の一例を示す図。
【図7】本発明の第4実施例に関わる路肩設置変圧器用負荷開閉器の構造を表す図。
【符号の説明】
【0062】
1 電気接点
1a 固定側電気接点
1b 可動側電気接点
2 スリット溝
3,3a,3b 補強板
4,4a,4b 電極棒
5 ろう材
6a 固定側電極
6b 可動側電極
7 シールド
8 可動側シールド
9a 固定側端板
9b 可動側端板
10 ベローズ
11 ガイド
12 可動側ホルダー
13 絶縁筒
14 真空バルブ
15 エポキシ筒
16 絶縁操作ロッド
17 上部端子
18 集電子
19 下部端子
20 接触バネ
21 支えレバー
22 プロップ
23 プランジャ
24 ノッキングロッド
25 ローラ
26 主レバー
27 引き外しコイル
28 引き外しレバー
29 リセットバネ
30 投入コイル
31 排気筒
32 外側真空容器
33 上部板材
34 下部板材
35 側部板材
36 上部貫通孔
37 上部ベース
38 外側ベローズ
39 下部貫通孔
40 絶縁性ブッシング
41 下部ベース
42 フレキシブル導体
43 フレキシブル導体貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuとTeと耐火性金属とからなる焼結体で、前記耐火性金属の原料粉末の平均粒径をdhp(μm)、前記耐火性金属の含有量をChp(重量%)とするとき、前記Teの含有量CTe(重量%)が式(1)の範囲にあることを特徴とする電気接点。
Te=Chp{(1.4/dhp2)+8.75×10-4}±0.005 ・・・(1)
【請求項2】
CuとTeと耐火性金属とからなる焼結体で、前記Cuと耐火性金属の界面において、その70〜90%に空隙を有する組織をなすことを特徴とする電気接点。
【請求項3】
前記耐火性金属は、MoあるいはCrのいずれか1種であることを特徴とする請求項1および2に記載の電気接点。
【請求項4】
前記耐火性金属の含有量は、15〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3に記載の電気接点。
【請求項5】
CuとTeと耐火性金属それぞれの粉末を混合して得られる混合粉末を加圧成形し、Cuの融点以下の温度で加熱焼結することを特徴とする電気接点の製造方法。
【請求項6】
Cuの粉末と、表面にTeを被覆した耐火性金属の粉末とを混合して得られる混合粉末を加圧成形し、Cuの融点以下の温度で加熱焼結することを特徴とする電気接点の製造方法。
【請求項7】
前記加熱焼結は、圧力30Pa〜0.2MPaの不活性あるいは還元性雰囲気中でなすことを特徴とする請求項5および6に記載の電気接点の製造方法。
【請求項8】
前記耐火性金属の原料粉末は、平均粒径dhpは22〜88μmの範囲にあり、粒度分布の標準偏差をσとするとき、粒径がdhp±σの範囲の粉末を用いることを特徴とする請求項5および6に記載の電気接点の製造方法。
【請求項9】
円盤状部材と、前記円盤状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒とを有し、前記円盤状部材が請求項1〜3に記載の電気接点からなる電極。
【請求項10】
真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極とを備えた真空バルブにおいて、前記固定側電極及び可動側電極の少なくとも一方が、請求項5に記載の電極からなる真空バルブ。
【請求項11】
真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極を備えた真空バルブと、前記真空バルブ内の前記固定側電極及び可動側電極の各々に前記真空バルブ外に接続された導体端子と、前記可動側電極を駆動する開閉手段とを備えた真空遮断器において、前記真空バルブが請求項6に記載の真空バルブからなる真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−76218(P2009−76218A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241725(P2007−241725)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】