説明

電気機器の外郭構造

【課題】外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立しつつデザインや機能上の制約が少ない電気機器の外郭構造を提供する。
【解決手段】硬貨Cが挿入される挿入凹部16,27が嵌合爪155並びに当該嵌合爪155と嵌合する嵌合溝225に対して結合方向と交差する方向において重なる位置に配置されているので、従来例に比較して嵌合爪15、嵌合溝22、挿入凹部16,27の配置に関するデザインや機能上の制約が少なくなる。しかも、結合方向と交差する方向において挿入凹部16,27と重なる位置にある嵌合爪155の開口面に沿った両端部が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜しているので、嵌合爪155と嵌合溝225との嵌合量(中央部の嵌合量x)を減らさなくても両者の嵌合を容易に外すことが可能であって外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品からなる外郭内に電気部品を収納してなる電気機器の外郭構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成樹脂成形品からなる外郭内に電気部品を収納してなる電気機器の外郭構造が種々提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
例えば図4に示すように、外郭は、一面が開口した箱状のボディ1とカバー2を有し互いの開口面(図4における表面)を突き合わせる形でボディ1とカバー2を結合してなり、ボディ1の開口面には結合方向に沿ってカバー2に近づく向きに突出する突壁14が設けられるとともに、突壁14の外周面における要所には結合方向と交差する方向に沿って外向きに突出する複数の嵌合爪15が形成され、カバー2には開口面との間に薄肉の壁部を挟む形で結合方向と交差する方向に沿って内向きに開口した複数の嵌合溝22が要所に設けられ、ボディ1に対してカバー2を結合向きに押しつけたときに嵌合爪15が弾性変形し壁部を乗り越えて嵌合溝22と嵌合することでボディ1とカバー2が結合される構造を有している。
【0004】
また、ボディ1とカバー2の開口面には結合方向と交差する方向に沿って外向きに開口し板状の部材(例えば、硬貨)が挿入される挿入凹部16,27が設けられている。つまり、硬貨の端部を挿入凹部16,27に挿入した状態で当該硬貨をこじれば、ボディ1とカバー2に対して反結合方向の力が加わり、嵌合爪15が弾性変形して壁部を乗り越えることで嵌合溝22との嵌合が外れてボディ1とカバー2を分離することができる。但し、嵌合爪15は薄肉の板状に形成されているために中央部に比べて両端部の方が撓み易いので、硬貨をこじる際の力が小さくて済むように、2つの嵌合爪15,15並びに嵌合溝22,22の間に挿入凹部16,27が配置されていた(図4参照)。
【特許文献1】特開平9−199869号公報
【特許文献2】特開2000−151134号公報
【特許文献3】特開平11−330713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように従来の外郭構造においては、2つの嵌合爪15,15並びに嵌合溝22,22の間に挿入凹部16,27が配置されていたため、外郭のデザインや機能(例えば、防水性など)上の制約などを十分に考慮した位置に嵌合爪等を配置する必要があった。一方、2つの嵌合爪15,15並びに嵌合溝22,22の間に挿入凹部16,27を配置しなかった場合、硬貨をこじる際の力が増大して操作性が低下したり、あるいは、嵌合爪15や嵌合溝22に過大な力が加わって塑性変形してしまう虞があった。これに対して嵌合爪15,15と嵌合溝22,22との嵌合量を少なくすると、落下による衝撃で嵌合爪15,15と嵌合溝22,22の嵌合が容易に外れてしまうという不具合が生じるため、結果的に外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立することは困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立しつつデザインや機能上の制約が少ない電気機器の外郭構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、合成樹脂成形品からなる外郭内に電気部品を収納してなる電気機器の外郭構造であって、外郭は、一面が開口した箱状のボディとカバーを有し互いの開口面を突き合わせる形でボディとカバーを結合してなり、ボディの開口面には結合方向に沿ってカバーに近づく向きに突出する突壁が設けられるとともに、突壁の外周面における要所には結合方向と交差する方向に沿って外向きに突出する複数の嵌合爪が形成され、カバーには開口面との間に薄肉の壁部を挟む形で結合方向と交差する方向に沿って内向きに開口した複数の嵌合溝が要所に設けられ、ボディとカバーを互いに結合向きに押しつけたときに嵌合爪が弾性変形し壁部を乗り越えて嵌合溝と嵌合することでボディとカバーが結合されるものにおいて、ボディとカバーの開口面には結合方向と交差する方向に沿って外向きに開口し板状の部材が挿入される挿入凹部が設けられ、何れかの嵌合爪並びに当該嵌合爪と嵌合する嵌合溝に対して結合方向と交差する方向において重なる位置に前記挿入凹部が配置されるとともに、結合方向と交差する方向において挿入凹部と重なる位置にある嵌合爪の開口面に沿った両端部が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、硬貨のような板状の部材が挿入される挿入凹部が何れかの嵌合爪並びに当該嵌合爪と嵌合する嵌合溝に対して結合方向と交差する方向において重なる位置に配置されているので、従来例に比較して嵌合爪、嵌合溝、挿入凹部の配置に関するデザインや機能上の制約が少なくなり、しかも、結合方向と交差する方向において挿入凹部と重なる位置にある嵌合爪の開口面に沿った両端部が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜しているので、嵌合爪と嵌合溝との嵌合量を減らさなくても両者の嵌合を容易に外すことが可能であって外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態で例示する電気機器は、自動二輪車に搭載された主装置(図示せず)との間で無線通信を行い、予め割り当てられている識別符号(ID)を主装置に送信する発信機であって、主装置における識別符号の認証が成功したときにだけセルモータによるエンジン始動が許可されるようになっている。但し、本発明の技術思想が適用可能な電気機器は本実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の電気機器は、図1に示すように合成樹脂成形品からなる外郭と、外郭内に収納されるプリント配線板3と、同じく外郭内に収納される防水パッキン4とで構成される。なお、以下の説明では図1(a)を基準にして上下左右の向きを規定するとともに、同図(c)における上下の向きを前後の向きと規定する。
【0011】
外郭は扁平な略直方体状であって、一面が開口した箱状のボディ1とカバー2を有し互いの開口面を突き合わせる形でボディ1とカバー2を結合して構成される。ボディ1は、上部を除く略全体に収納凹所10が設けられ、上部にはロック機構が設けられている。また、収納凹所10の右端側には角筒状のエンジンキー収納部11が設けられ、ボディ1の背面側上部に開口した挿入口(図示せず)から自動二輪車のエンジンキーのキー部分を挿入し、エンジンキーがエンジンキー収納部11から抜け落ちないようにロック機構でロックするようになっている。このロック機構は、ボディ1上部の背面側に露出する操作部12aとエンジンキーの一部に係止する係止爪(図示せず)とが一体に形成されたロック部材12がボディ1上部において左右方向に移動自在に保持されるとともに、係止爪がエンジンキー収納部11の挿入口に近づく向きにコイルばね13で弾性付勢されて構成されている。したがって、操作部12aを操作し、コイルばね13のばね力に抗してロック部材12を移動させれば、係止爪とエンジンキーの係止が外れてエンジンキー収納部11からエンジンキーを引き抜くことができる。
【0012】
ボディ1の開口面における収納凹所10の周囲には結合方向(前後方向)に沿ってカバー2に近づく向き(前向き)に突出する突壁14が全周に渡って突設されている。突壁14は前方からみて略矩形枠状に形成され、結合方向と交差する方向(上下方向又は左右方向)に沿って外向きに突出する複数(図示例では5つ)の嵌合爪151〜155が上下左右の四辺における外周面に設けられている。上辺には2つの嵌合爪151,152が左右両側の端部近傍に設けられ、左右両辺並びに下辺には各々1つの嵌合爪153,154,155が設けられている。ここで、嵌合爪155は突壁14下辺の左右方向略中央に設けられるとともに、開口面に沿った両端部(左右方向における両端部)が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜する形状に形成されている(図1(e)参照)。
【0013】
また、ボディ1開口面の下端部には、円弧状であって前方並びに下方に開口する挿入凹部16が凹設されている。この挿入凹部16は、ボディ1とカバー2の結合方向と交差する方向(上下方向)において嵌合爪155と重なる位置(左右方向における中央)に配置されている(図1(e)参照)。さらに、ボディ1開口面における左上端並びに右下端にはカバー2との位置決め用のダボ17,17が突設されている。
【0014】
一方、カバー2もボディ1と同様に上部を除く略全体に収納凹所20が設けられている。収納凹所20における上下左右の内壁面には、内側に向かって僅かに突出する段部21が全周に渡って設けられ、さらに、上下左右の内壁面における段部21前面と開口面との間の部位には、開口面との間に薄肉の壁部23を挟む形で結合方向と交差する方向(上下方向又は左右方向)に沿って内向きに開口した複数(図示例では5つ)の嵌合溝221〜225が凹設されている。これら5つの嵌合溝221〜225は各々ボディ1の嵌合爪151〜155と各別に嵌合するものであって、内壁面の上部における左右両側の端部近傍に嵌合溝221,222が設けられ、内壁面の左右両端部並びに下部に嵌合溝223,224,225が設けられている。また、カバー2開口面における右上端並びに左下端にはボディ1のダボ17,17と嵌合する位置決め用の嵌合孔26,26が設けられている。さらに、カバー2開口面の下端部には、円弧状であって後方並びに下方に開口する挿入凹部27が凹設されている。この挿入凹部27は、ボディ1とカバー2の結合方向と交差する方向(上下方向)において嵌合溝225と重なる位置(左右方向における中央)に配置されている(図1(d)参照)。
【0015】
カバー2の収納凹所20に防水パッキン4が収納される。防水パッキン4は、弾力性を有する合成樹脂材料によって扁平な矩形箱状に形成され、前面には、有底円筒形状の表示用突起41と、後述するタクトスイッチTSを操作するための円柱状の操作用突起42とが前方に向かって突設されている。そして、カバー2の前壁に貫設されている位置決め孔24並びに操作孔25に表示用突起41及び操作用突起42を挿通し内壁面並びに底壁面に密着するようにして防水パッキン4がカバー2の収納凹所20内に収納される(図1(b)(c)参照)。ここで、防水パッキン4の外周面における前端近傍には、後方から段部21に当接する外鍔部40が全周に渡って設けられている。
【0016】
プリント配線板3は、表面(前面)にICやチップ抵抗、タクトスイッチTS、表示用の発光ダイオードなどの電子部品が実装されるとともに、裏面(背面)にはボタン型電池Bを保持する電池ケース5とチップ型のアンテナ6が実装されており、表面をカバー2側に向けた形で防水パッキン4の内側に収納される。但し、防水パッキン4の内壁面から内向きに突設された複数の係合突起43がプリント配線板3の端縁に係合することでプリント配線板3が保持されている。ここで、防水パッキン4の内側にプリント配線板3が収納された状態では、防水パッキン4の表示用突起41の背面側に表示用の発光ダイオードが対向し、発光ダイオードの発する光が表示用突起41の底面を透過して外部に照射され、また、防水パッキン4の操作用突起42の背面側にはタクトスイッチTSの操作釦が当接しており(図1(b)参照)、操作用突起42を外部から押操作することでタクトスイッチTSをオン操作することができる。
【0017】
次に、本実施形態の外郭を組み立てる手順を説明する。
【0018】
まずカバー2の収納凹所20に防水パッキン4を収納した後、防水パッキン4の内側にプリント配線板3を収納する。続いて、互いの開口面同士を突き合わせるとともにボディ1のダボ17,17とカバー2の嵌合孔26,26を嵌合するようにボディ1とカバー2を互いに押しつければ、嵌合爪151〜155が弾性変形し、やがて薄肉の壁部23を乗り越えて各々嵌合溝221〜225と嵌合することでボディ1とカバー2が結合される。また、ボディ1の突壁14が全周に渡って防水パッキン4の外鍔部40に当接するため、ボディ1とカバー2の結合面に生じる隙間を防水パッキン4の外鍔部40によってシールすることができて電気機器の防水性が向上するものである。
【0019】
ここで、嵌合爪151〜154と嵌合溝221〜224との嵌合量は結合面に沿った方向において均一である。しかしながら、両端部が傾斜している嵌合爪155と嵌合溝225との嵌合量は、中央部の嵌合量xに対して両端部の嵌合量yが少なくなっている(図2参照)。
【0020】
一方、電池Bの交換時等において、図3に示すようにボディ1とカバー2の挿入凹部16,27に硬貨Cの端部を挿入して硬貨Cをこじれば、ボディ1とカバー2に各々反結合向きの力がはたらいて嵌合爪155が変形し、中央部よりも嵌合量が少ない嵌合爪155の両端部が先に壁部23を乗り越えて嵌合溝225との嵌合が外れ、さらに残りの嵌合爪151〜154と嵌合溝221〜224の嵌合も全て外れればボディ1からカバー2を分離することができる。
【0021】
而して、本実施形態では硬貨Cが挿入される挿入凹部16,27が嵌合爪155並びに当該嵌合爪155と嵌合する嵌合溝225に対して結合方向と交差する方向において重なる位置に配置されているので、従来例に比較して嵌合爪15、嵌合溝22、挿入凹部16,27の配置に関するデザインや機能上の制約が少なくなり、しかも、結合方向と交差する方向において挿入凹部16,27と重なる位置にある嵌合爪155の開口面に沿った両端部が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜しているので、嵌合爪155と嵌合溝225との嵌合量(中央部の嵌合量x)を減らさなくても両者の嵌合を容易に外すことが可能であって外郭を分離する際の良好な操作性と適当な嵌合強度を両立することができる。特に、ボディ1とカバー2の成形材料として、強度が高い代わりに弾力性が低いもの(例えば、ガラス繊維を混入したABS樹脂など)を使用した場合、挿入凹部16,27と重なる嵌合爪155の両端部に傾斜を設けなければ嵌合爪155若しくは挿入凹部16,27が塑性変形したり破損する虞があるが、本実施形態のように嵌合爪155の両端部に傾斜を設けることで嵌合爪155や挿入凹部16,27の塑性変形又は破損を防止することができる。言い換えると、デザイン上の制約によって挿入凹部16,27が設けられているボディ1とカバー2の下端部の肉厚を薄くしなければならない場合にも十分に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は同図(a)のC−C線断面矢視図、(c)は同図(a)のD−D線断面矢視図、(d)はカバーの背面図、(e)はボディの正面図である。
【図2】同上を示し、(a)は図1(a)のE−E線断面矢視図、(b)は図1(a)のF−F線断面矢視図である。
【図3】同上の背面側からみた斜視図である。
【図4】従来例を示し、(a)はカバーの背面図、(b)はボディの正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ボディ
2 カバー
3 プリント配線板
4 防水パッキン
10 収納凹所
14 突壁
151〜155 嵌合爪
16 挿入凹部
20 収納凹所
221〜225 嵌合溝
23 壁部
27 挿入凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂成形品からなる外郭内に電気部品を収納してなる電気機器の外郭構造であって、
外郭は、一面が開口した箱状のボディとカバーを有し互いの開口面を突き合わせる形でボディとカバーを結合してなり、ボディの開口面には結合方向に沿ってカバーに近づく向きに突出する突壁が設けられるとともに、突壁の外周面における要所には結合方向と交差する方向に沿って外向きに突出する複数の嵌合爪が形成され、カバーには開口面との間に薄肉の壁部を挟む形で結合方向と交差する方向に沿って内向きに開口した複数の嵌合溝が要所に設けられ、ボディとカバーを互いに結合向きに押しつけたときに嵌合爪が弾性変形し壁部を乗り越えて嵌合溝と嵌合することでボディとカバーが結合されるものにおいて、
ボディとカバーの開口面には結合方向と交差する方向に沿って外向きに開口し板状の部材が挿入される挿入凹部が設けられ、何れかの嵌合爪並びに当該嵌合爪と嵌合する嵌合溝に対して結合方向と交差する方向において重なる位置に前記挿入凹部が配置されるとともに、結合方向と交差する方向において挿入凹部と重なる位置にある嵌合爪の開口面に沿った両端部が外側に向かって徐々に突出量が小さくなるように傾斜していることを特徴とする電気機器の外郭構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−299803(P2007−299803A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124264(P2006−124264)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(592070649)竜野松下電工株式会社 (61)
【Fターム(参考)】