説明

電気機器

【課題】動作条件によって腐食および絶縁低下が発生し、消費電流が増加するLCDモジュールを用いた場合、第1および第2設定スイッチに割り当てられている既存のポートを利用して、消費電流の増加異常を診断する電気機器の提供を目的とする。
【解決手段】液晶表示手段120と内部データを設定する複数の設定手段50、60とを備えた電気機器100において、液晶表示手段120の消費電流の増加を検出し、この検出信号に基づいて複数の設定手段50、60の出力信号を変化させる電流検出手段110と、電流検出手段110によって変化した出力信号に基づいて消費電流の異常を診断する診断手段132と、を備えたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示手段と内部データ設定用の複数の設定手段とを備えた電気機器に関し、特に、液晶表示手段の消費電流の異常を診断する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プラント、工場等において用いられる流量計などのプロセス機器には、LCD(Liquid Crystal Display)などの液晶表示手段と、内部パラメータにデータを設定する赤外線タッチスイッチなどの設定手段が備えられている(特許文献1参照)。
【0003】
プロセス機器は電気機器の一種であり、このような電気機器について図4を用いて説明する。図4は、電気機器1の構成図である。
【0004】
図4において、外部電源または内蔵電池(いずれも図示しない)の出力電圧が入力される内部電源回路10は、内部電源電圧を生成し、A/D(アナログ/デジタル変換回路)20、CPU(セントラルプロセッシングユニット)30、LCD40などに、内部電源電圧を供給する。
【0005】
センサ(図示しない)から、流量信号FLD(プロセス信号(アナログ信号))が入力されたA/D20は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0006】
CPU30は、デジタル信号をA/D20から受け取り、内部パラメータのデータを不揮発性メモリ70から読み出し、これらを用いて流量値(プロセス値)を算出する。
【0007】
CPU30は、流量値に比例する電流または電圧信号を、出力回路80を介して出力するとともに、流量値などの表示データを含む表示制御信号DCNTをLCD40に送る。LCD40は、受け取った流量値を表示する。
【0008】
CPU30は、LCD40に流量値を表示させる測定値表示モードの他に、内部パラメータのデータを設定する内部データ設定モードを備える。
【0009】
CPU30が内部データ設定モードに変更した場合、ユーザーなどは、LCD40に表示された現在の内部データを見ながら、赤外線タッチスイッチなどの第1および第2設定スイッチ50、60を押して、データを変更する。
【0010】
詳細には、第1および第2設定スイッチ50、60からCPU30へ、内部データの変更信号が送られ、CPU30はこの変更信号に基づいて、内部データを変更し、その値を不揮発性メモリ70に記憶するとともに、LCD40に表示させる。なお、内部パラメータには、例えば、流量を求めるためのメーターファクター、流量スパンなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−295297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
表示制御信号DCNTを液晶表示可能な電圧に変換するとともに、LCD40を駆動するLCDドライバーとLCD40とを備えたLCDモジュールが、液晶表示手段として用いられることがある。
【0013】
LCDモジュールは、ガラス基板の上に実装されたLCDドライバー、LCDドライバーを覆う異方導電性膜(以下、「ACF膜」という)、およびガラス基板とLCDドライバーに挟まれたITO(Indium Tin Oxide)膜を備える。
【0014】
しかし、LCDモジュールは、ACF膜またはコンタミ等から付着するイオン、周囲に存在する水分、および起動時にLCDドライバーに印加される電圧によって、ITO膜に腐食が発生する。そして、高温多湿の環境で動作しているLCDモジュールは、時間の経過とともにITO膜の腐食が進行することによって、絶縁低下が発生して消費電流が増加する、という問題がある。
【0015】
特に、外部から供給される電流が制限される2線式プロセス機器は、内部回路全体が4mA以下で動作しなければ、内部電源電圧が低下して正常に動作しなくなる。このため、2線式プロセス機器にLCDモジュールを用いた場合、消費電流が増加することによって正常に動作しなくなる。
【0016】
内蔵電池で動作する電気機器は、消費電流の増加によって電池の寿命が短くなる。
【0017】
なお、2線式プロセス機器または内蔵電池で動作する電気機器以外の電気機器であっても、消費電流の増加によって、内部回路、特に内部電源回路10の発熱が大きくなり、使用されている部品の寿命が短くなる。
【0018】
また、このようなLCDモジュールを用いた場合、消費電流の増加異常をCPU30で診断する際、診断するための信号を、新たにCPU30へ入力するという構成を取り得る。しかし、この場合、CPU30に追加の入力ポートを割り当てなければならず、入力ポートが余っていない場合、このような構成にすることは困難である、という問題がある。
【0019】
本発明は、動作条件によって腐食および絶縁低下が発生し、消費電流が増加するLCDモジュール(液晶表示手段)を用いた場合、第1および第2設定スイッチ(設定手段)に割り当てられている既存のポートを利用して、消費電流の増加異常を診断する電気機器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、
液晶表示手段と内部データを設定する複数の設定手段とを備えた電気機器において、
前記液晶表示手段の消費電流の増加を検出し、この検出信号に基づいて前記複数の設定手段の出力信号を変化させる電流検出手段と、
前記電流検出手段によって変化した前記出力信号に基づいて前記消費電流の異常を診断する診断手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記電流検出手段は、前記消費電流の検出処理を第1所定時間実行し、前記消費電流の増加を検出したとき、検出信号の状態を変化させ、前記第1所定時間の終了時まで前記状態を保持することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記電流検出手段は、前記液晶表示手段の起動処理終了後から、前記消費電流の検出処理を前記第1所定時間実行することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の発明において、
前記液晶表示手段は、前記第1所定時間経過後、表示データが復帰することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、
前記診断手段は、前記出力信号の変化した状態が第2所定時間以上継続した場合、前記消費電流の異常と診断することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、
前記電流検出手段は、
内部電源電圧を分圧した第1電圧、および前記内部電源電圧から前記消費電流に基づく電圧分降下した第2電圧が入力され、前記消費電流を流す素子を制御する演算増幅器と、
前記演算増幅器の制御電圧および前記内部電源電圧を分圧した第3電圧を比較する比較器と、を備え、
前記比較器の比較結果に基づいて前記消費電流の増加を検出する、
ことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、
前記診断手段によって診断された異常の履歴を記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、
前記診断手段によって異常と診断された場合、警報を出力する警報手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、動作条件によって腐食および絶縁低下が発生し、消費電流が増加する液晶表示手段を用いた場合、液晶表示手段の消費電流の増加を検出した信号に基づいて設定手段の出力信号を変化させ、変化した出力信号に基づいて消費電流の異常を診断する。これによって、設定手段に割り当てられている既存のポートを利用して、消費電流の増加異常を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した電気機器の構成図の例である。
【図2】図1の電流検出手段の回路図の例である。
【図3】図2の電流検出手段のタイミングチャート図の例である。
【図4】背景技術で示した電気機器の構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施例を適用した電気機器について、図1を用いて説明する。図1は電気機器100の構成図である。
【0024】
図1において、電気機器100は、内部電源回路10、A/D20、第1設定スイッチ(設定手段)50、第2設定スイッチ(設定手段)60、不揮発性メモリ(記憶手段)70、出力回路80、電流検出手段110、LCD121とLCDドライバ122を有するLCDモジュール(液晶表示手段)120、電流検出制御手段131と診断手段132を実行するCPU130、および警報手段140を備える。
【0025】
内部電源回路10は、外部電源または内蔵電池(いずれも図示しない)から電圧が入力され、この電圧から内部電源電圧Vaを生成し、A/D20、CPU130、電流検出手段110などに内部電源電圧Vaを供給する。
【0026】
A/D20は、センサ(図示しない)から流量信号FLD(アナログ信号)が入力され、これをデジタル信号に変換し、CPU130へ送る。
【0027】
CPU130内の電流検出制御手段131は、Reset信号とSignalA信号を電流検出手段110へ送る。また、CPU130内の診断手段132は、第1および第2設定スイッチ50、60から、出力信号ST1、ST2を受け取る。
【0028】
CPU130は、不揮発性メモリ70に対してデータの読み書きを行い、出力回路80へ流量値などの出力信号を送る。また、警報手段140へ警報信号を送り、LCDドライバ122へ表示制御信号DCNTを送る。
【0029】
電流検出手段110は、内部電源電圧Vaから内部電源電圧Vbを生成し、LCDモジュール120に内部電源電圧Vbを供給する。また、LCDモジュール120の消費電流の増加に応じて、第1および第2設定スイッチ50、60の出力信号を変化させるための信号を、第1および第2設定スイッチ50、60へそれぞれ送る。
【0030】
LCDモジュール120内のLCDドライバ122は、CPU130から、表示制御信号DCNTおよびReset信号を受け取り、表示制御信号DCNTに含まれる流量値などのデータをLCD121に表示させる。
【0031】
なお、A/D20、第1設定スイッチ50、第2設定スイッチ60、不揮発性メモリ70、出力回路80、LCDモジュール120およびCPU130を用いて実行する、流量値の算出、外部出力、表示、および内部パラメータのデータ設定、記憶の各動作は、図4で説明した内容と同じである。
【0032】
つぎに、本実施例の特徴の一つである電流検出手段110の回路について、図2を用いて説明する。
【0033】
図2において、電流検出手段110は、電流制限回路111、比較回路112、AND素子(論理積素子)U1、D型フリップフロップ(以下、「D−FF」という)U2、およびFET(電界効果トランジスタ)Q1、Q2を備える。
【0034】
電流制限回路111は、抵抗R1〜R3、演算増幅器U3およびFET Q3を備え、比較回路112は、抵抗R4〜R7および比較器U4を備える。
【0035】
電流制限回路111の構成は以下の通りである。内部電源電圧Vaと共通電圧GNDとの間に、抵抗R1とR2が直列に接続される。抵抗R1の一端は、抵抗R3を介してFET Q3のソース端子に接続される。
【0036】
抵抗R1とR2の接続点は、演算増幅器U3の非反転入力端子に接続され、抵抗R3とFET Q3のソース端子の接続点は、演算増幅器U3の反転入力端子に接続される。
【0037】
演算増幅器U3の出力端子は、FET Q3のゲート端子に接続される。FET Q3のドレイン端子は、LCDモジュール120に接続される。
【0038】
比較回路112の構成は以下の通りである。演算増幅器U3の出力端子は、抵抗R4を介して比較器U4の非反転入力端子に接続される。比較器U4の非反転入力端子と出力端子との間に、正帰還抵抗として抵抗R5が接続される。
【0039】
内部電源電圧Vaと共通電圧GNDとの間に、抵抗R6とR7が直列に接続される。抵抗R6とR7の接続点は、比較器U4の反転入力端子に接続される。
【0040】
その他の部分の構成は以下の通りである。比較器U4の出力端子は、AND素子U1の一方の入力端子Aに接続される。SignalA信号が、電流検出制御手段131から、AND素子U1の他方の入力端子Bに入力される。
【0041】
D−FF U2のCLK端子(クロック端子)に、AND素子U1の出力端子が接続されるとともに、内部電源電圧Vaが、D−FF U2のD端子に入力される。
【0042】
Reset信号が、電流検出制御手段131から、D−FF U2のCLR端子(クリア端子)に入力され、内部電源電圧Vaが、D−FF U2のPR端子(プリセット端子)に入力される。
【0043】
D−FF U2の出力Q端子は、FET Q1、Q2のゲート端子に接続される。FET Q1のドレインとソースが、診断手段132に入力され、ドレイン端子とソース端子の間に、第1設定スイッチ50の接点が接続される。
【0044】
FET Q2のドレインとソースが、診断手段132に入力され、ドレイン端子とソース端子の間に、第2設定スイッチ60の接点が接続される。
【0045】
つぎに、電気機器100の動作について説明する。まず、電流制限回路111の動作について説明する。
【0046】
内部電源電圧Vaを抵抗R1とR2で分圧した電圧V1(第1電圧)が、演算増幅器U3の非反転入力に入力される。LCDモジュール120の消費電流をILとすると、内部電源電圧Vaから、消費電流ILに抵抗R3を乗じた電圧分降下した電圧V2(第2電圧)が、演算増幅器U3の反転入力に入力される。
【0047】
LCDモジュール120の消費電流ILが少ない場合、第1電圧V1は第2電圧V2より小さいので、演算増幅器U3の出力はロー電圧(共通電圧GNDに等しい)となる。演算増幅器U3の出力電圧(制御電圧Vcnt)が、消費電流ILを流すFET Q3のゲート電圧を制御することによって、消費電流ILがLCDモジュール120に流れる。
【0048】
一方、LCDモジュール120の消費電流ILが多くなり、第1電圧V1と第2電圧V2が等しくなった場合、演算増幅器U3の出力はハイ電圧1となる。このとき、消費電流ILは、
IL=R1×Va/(R3×(R1+R2)) 式(1)
となり、LCDモジュール120に供給される電流は、式(1)の電流に制限される。なお、ハイ電圧1は、内部電源電圧Vaに、FET Q3のゲートとソース間の電圧Vgsを加算した電圧に等しく、この電圧は内部電源電圧Vaより大きい。
【0049】
すなわち、消費電流ILが少ない場合、演算増幅器U3の出力はロー電圧となり、LCDモジュール120の動作に必要な消費電流ILが供給される。一方、消費電流ILが増加した場合、演算増幅器U3の出力はハイ電圧1となり、LCDモジュール120に供給される電流は、式(1)で表した電流に制限される。
【0050】
このように、消費電流ILが増加した場合、演算増幅器U3の出力電圧はハイ電圧1になるので、演算増幅器U3の出力電圧によって、消費電流ILの増加を検出できる。
【0051】
なお、消費電流ILの増加の検出は、抵抗(図示しない)に消費電流ILを流して、その抵抗の両端に発生する電圧によって検出してもよい。
【0052】
つぎに、比較回路112の動作について説明する。比較回路112は、演算増幅器U3の出力電圧(制御電圧)Vcntと、内部電源電圧Vaを抵抗R6とR7で分圧した電圧V3(第3電圧)とを比較する。
【0053】
演算増幅器U3の出力電圧が第3電圧V3より小さい場合、比較器U4の出力はロー電圧となる。一方、演算増幅器U3の出力電圧が第3電圧V3より大きい場合、比較器U4の出力はハイ電圧2となる。なお、ハイ電圧2は、内部電源電圧Vaに等しい。
【0054】
従って、比較器U4の出力電圧によっても、演算増幅器U3の出力電圧と同様に、消費電流ILの増加を検出することができる。
【0055】
このような動作をもとに、電流検出手段110の動作について、図3のタイミングチャートを用いて説明する。なお、図3は、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によって、消費電流の異常が発生している状態におけるタイミングチャートである。
【0056】
図3において、(a)はReset信号の電圧、(b)は演算増幅器U3の出力電圧、(c)はAND素子U1の入力Aの電圧(比較器U4の出力電圧)、(d)はSignalAの電圧(AND素子U1の入力Bの電圧)、(e)はAND素子U1の出力電圧、(f)は検出信号Idetの電圧(D−FF U2の出力Qの電圧)、(g)は第1および第2出力信号ST1、ST2の電圧を、それぞれ表したタイミングチャートである。
【0057】
第1出力信号ST1は、第1設定スイッチ50の接点間の電圧であり、診断手段132に対する第1設定スイッチ50の出力信号である。第2出力信号ST2は、第2設定スイッチ60の接点間の電圧であり、診断手段132に対する第2設定スイッチ60の出力信号である。
【0058】
なお、図3では、第1および第2設定スイッチ50、60は、ユーザーなどによって押されていない、すなわち接点は開放されているものとして説明する。
【0059】
図3(a)のReset信号は、時間t1において、ロー電圧からハイ電圧2に変化する。そして、時間t8においてロー電圧に変化し、時間t9においてハイ電圧2に変化する。ここで、時間t1からt8までの時間は、以下で説明する消費電流の検出および診断を行う時間を含み、これを電流検出マスク時間DTとする。
【0060】
図3(b)の演算増幅器U3の出力電圧について説明する。時間t1において、LCDドライバ122に入力されるReset信号(a)がハイ電圧2になり、LCDドライバ122は、リセット状態が解除されて起動処理を開始する。
【0061】
LCDドライバ122の起動処理は時間t1からt2まで行われ、この間LCDドライバ122に起動電流が流れるので、LCDモジュール120の消費電流ILは増加する。このため、演算増幅器U3の出力電圧(b)は、上述した電流制限動作によって、時間t1においてロー電圧からハイ電圧1に変化し(図示したb1の部分)、時間t2においてロー電圧に変化する。
【0062】
なお、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下は、徐々にゆっくりと進行するものである。従って、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によって、LCDモジュール120の消費電流ILは、急激に増加するものではなく、僅かな増加および減少を繰り返す。そして、増加分は減少分より僅かに大きいため、消費電流ILは、長い時間(例えば、数日、数週間)をかけて、ゆっくりと右肩上がりに増加していく。
【0063】
LCDモジュール120の腐食および絶縁低下が進行している場合、電流検出マスク時間DTは例えば10秒間であり、消費電流ILは、この間僅かな増加および減少を繰り返す。
【0064】
これによって、演算増幅器U3の出力電圧(b)は、時間t4においてロー電圧からハイ電圧1に変化し(消費電流増加(図示したb2の部分))、時間t5においてロー電圧に変化する(消費電流減少)。そして、時間t6においてロー電圧からハイ電圧1に変化し(消費電流増加(図示したb3の部分))、時間t7においてロー電圧に変化する(消費電流減少)。
【0065】
なお、演算増幅器U3の出力電圧(b)のb1、b2、b3の部分は、いずれも消費電流ILが増加したことによってハイ電圧1になったものである。ここで、b1の部分は、LCDドライバ122の起動処理によるものであり、一方、b2、b3の部分は、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によるものである。このように、b1とb2、b3の部分では、消費電流ILの増加の原因がそれぞれ異なる。
【0066】
後述する診断手段132が消費電流の異常と診断した場合、時間t8からt9の間、電流検出制御手段131からのReset信号(a)のロー電圧によって、LCDドライバ122はリセット状態となり、時間t9において、リセット状態が解除されて起動処理を開始する。このため、演算増幅器U3の出力電圧(b)は、時間t9以降、b1、b2、b3の部分と同様の動作を繰り返す。なお、診断手段132が消費電流の異常と診断しなければ、Reset信号(a)は、時間t8からt9の間、ハイ電圧2を維持し(図示しない)、LCDドライバ122はリセット状態にならない。
【0067】
図3(c)のAND素子U1の入力Aの電圧(比較器U4の出力電圧)について説明する。
【0068】
上述した比較回路112の動作によって、AND素子U1の入力Aの電圧(c)は、時間t1においてロー電圧からハイ電圧2に変化し、時間t2においてロー電圧に変化する。そして、時間t4、t5において、時間t1、t2と同じ変化(ロー電圧→ハイ電圧2→ロー電圧)を行い、時間t6、t7においても、時間t1、t2と同じ変化を行う。
【0069】
すなわち、AND素子U1の入力Aの電圧(c)は、演算増幅器U3の出力電圧(b)のハイ電圧1を、ハイ電圧2にレベル変換したものである。
【0070】
AND素子U1は、電源として内部電源電圧Vaが供給されている。内部電源電圧Vaより大きいハイ電圧1が、AND素子U1の入力電圧範囲内であれば、比較回路112を用いないで、演算増幅器U3の出力(b)をAND素子U1の入力A(c)に直接入力することができ、回路規模、スペースおよびコストを削減することができる。
【0071】
一方、AND素子U1の入力電圧範囲が、内部電源電圧Va(ハイ電圧2)以下であれば、演算増幅器U3の出力(b)をAND素子U1の入力A(c)に直接入力すると、AND素子U1は動作不能となる。
【0072】
従って、ハイ電圧2にレベル変換を行う比較回路112を用いて、比較器U4の出力をAND素子U1のAに入力することによって、AND素子U1は動作可能となる。
【0073】
図3(d)のSignalAの電圧(AND素子U1の入力Bの電圧)、(e)のAND素子U1の出力電圧、(f)の検出信号Idetの電圧(D−FF U2の出力Qの電圧)、について説明する。
【0074】
SignalAの電圧(d)は、LCDドライバ122の起動処理が終了した時間t2以降の時間t3において、ロー電圧からハイ電圧2に変化し、時間t8においてロー電圧に変化する。時間t9以降は同様の動作を行う。
【0075】
SignalAの電圧(d)が、時間t3からt8までのハイ電圧2を保持している時間を、第1所定時間FT1とする。
【0076】
AND素子U1の出力電圧(e)は、入力A、Bの論理積によって、時間t4においてロー電圧からハイ電圧2に変化し、時間t5においてロー電圧に変化する。そして、時間t6においてロー電圧からハイ電圧2に変化し、時間t7においてロー電圧に変化する。時間t9以降は同様の動作を行う。
【0077】
AND素子U1の出力電圧(e)は、演算増幅器U3の出力(b)のb2、b3に対応する部分がハイ電圧2として出力され、b1に対応する部分はロー電圧のままである。
【0078】
すなわち、AND素子U1の出力電圧(e)には、消費電流ILの増加のうち、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によるものが抽出されて、出力される。
【0079】
内部電源電圧Va(ハイ電圧2)がD−FF U2のD入力に入力され、D−FF U2は、CLK(クロック)の立ち上がりでのD入力の状態を保持し出力する。
【0080】
このため、検出信号Idetの電圧(f)は、時間t4においてロー電圧からハイ電圧2に変化する。そして、D−FF U2のCLRにはReset信号(a)が入力されているので、時間t8において、クリアされてロー電圧に変化する。時間t9以降は同様の動作を行う。
【0081】
このように、検出信号Idetの電圧(f)は、腐食による消費電流ILの増加を検出した時間t4においてハイ電圧2に変化し、第1所定時間FT1が終了する時間t8まで、この状態を保持する。
【0082】
SignalAの電圧(d)をAND素子U1のBに入力することによって(入力Bによって入力Aをマスクする)、検出信号Idetの電圧(f)は、LCDドライバ122の起動処理が終了した時間t2以降の第1所定時間FT1の間、消費電流ILの検出処理を実行し、腐食による消費電流の増加を検出できる。
【0083】
これによって、消費電流ILの増加のうち、LCDドライバ122の起動処理によるものは検出されないで、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によるものを検出することができる。
【0084】
なお、LCDドライバ122の起動処理による消費電流ILの増加が小さければ、演算増幅器U3の出力(b)のb1の部分はロー電圧のままなので、AND素子U1の入力BにSignalAを用いず、これに代えて内部電源電圧Vaを入力してもよい。この場合、AND素子U1の出力と検出信号Idetは、図3の(e)、(f)と同様の波形となる。
【0085】
図3(g)の第1および第2出力信号ST1、ST2の電圧について説明する。FET Q1、Q2のドレイン−ソース間は、検出信号Idetの電圧(f)がハイ電圧2のときにオンする。
【0086】
このため、接点が開放されている第1および第2設定スイッチ50、60のそれぞれの出力である、第1および第2出力信号ST1、ST2(g)は、検出信号Idetの電圧(f)のロー電圧とハイ電圧2を入れ替えた(反転させた)電圧となる。
【0087】
つぎに、診断手段132の異常診断処理について説明する。診断手段132は、第1および第2出力信号ST1、ST2を受け取る。両方の電圧は、時間t4においてハイ電圧2からロー電圧に変化しており、ロー電圧の状態が、時間t4から第2所定時間FT2以上継続していると判断した場合、腐食により消費電流ILが増加しているとして、消費電流の異常と診断する。
【0088】
なお、電流検出マスク時間DTにおける1回の診断だけではなく、周期的に繰り返して、複数回異常と診断された場合に、消費電流の異常であると決定してもよい。これによって、診断の精度をあげることができる。
【0089】
ここで、第1所定時間FT1は電流検出マスク時間DT(例えば10秒)より短く、第2所定時間FT2は、第1所定時間FT1より短く、第1および第2設定スイッチ50、60を押す時間(例えば2〜3秒)より長い。すなわち、電流検出マスク時間DT(例:10秒)>第1所定時間FT1(例:8秒)>第2所定時間FT2(例:6秒)>第1および第2設定スイッチ50、60を押す時間(例:2〜3秒)、となる。
【0090】
第2所定時間FT2を、第1および第2設定スイッチ50、60を押す時間より長くすることによって、診断手段132は、ユーザーによって第1および第2設定スイッチ50、60が押されても(接点が接触)、第1および第2出力信号ST1、ST2のロー電圧の継続時間を第2所定時間FT2以下と判断し、消費電流の異常と診断しない。
【0091】
これによって、第1および第2設定スイッチ50、60が押された場合、誤診断を防止できる。
【0092】
なお、2個(複数)の設定スイッチを用いた理由は以下による。ユーザーが、誤って1つの設定スイッチを第2所定時間FT2より長く押した場合であっても、他方の設定スイッチの出力信号はハイ電圧2のままなので、消費電流の異常と診断しない。これによって、正確な診断を行うことができ、誤診断を防止できる。
【0093】
本実施例によれば、電流検出手段110は、LCDモジュール120の腐食による消費電流ILの増加を検出し、検出信号Idetによって、第1および第2設定スイッチ50、60の出力信号ST1、ST2を変化させる。そして、診断手段132は、出力信号ST1、ST2の変化した状態(ロー電圧の状態)が第2所定時間FT2以上継続した場合、腐食による消費電流ILの増加異常と診断できる。
【0094】
診断手段132への検出信号Idetの伝送に、第1および第2設定スイッチ50、60の出力信号ST1、ST2を利用しているので、第1および第2設定スイッチ50、60に割り当てられている既存のCPU130の入力ポートを利用して、異常診断をすることができる。これによって、CPU130の入力ポートが余っていない場合でも、異常診断を実現することができる。
【0095】
また、LCDドライバ122の起動電流が大きくても、SignalA信号をAND素子U1のBに入力することによってU1の入力Aはマスクされて、D−FF U2は、起動処理終了後に消費電流ILの検出処理を実行できる。これによって、消費電流ILの増加のうち、LCDドライバ122の起動処理によるものは検出されないで、LCDモジュール120の腐食および絶縁低下によるものを検出することができ、より正確な異常診断を実現することができる。
【0096】
なお、LCDモジュール120の消費電流ILが増加した場合、LCD121に誤った値が表示されることがある。このため、LCDドライバ122にReset信号を入力し、時間t8からt9の間リセット状態にして(図3の(a)参照)、時間t9以降、LCDドライバ122を再起動させることによって、LCD121を正常な値の表示に復帰させることができる。
【0097】
つぎに、異常の履歴を記憶させる動作について説明する。図1において、診断手段132は、腐食による消費電流ILの異常と診断した場合、診断結果と診断を実行した時刻を不揮発性メモリ70に記憶させる。
【0098】
不揮発性メモリ70に異常の履歴が記憶され、ユーザーなどが異常の履歴を読み出すことによって、異常の経過、今後の異常(消費電流ILの増加)の進行度合いを予測することができる(予知診断)。
【0099】
また、警報手段140について説明する。診断手段132は、腐食による消費電流ILの異常と診断した場合、警報手段140によって外部へ警報(アラーム)を出力させる。
【0100】
ユーザーなどは、視覚(表示、光など)、聴覚(音声など)で、警報を知ることによって、異常の具合を確認し、電気機器100を交換するなどの適切な対応を取ることができる。
【0101】
なお、設定手段として、第1および第2設定スイッチ50、60を用いて説明したが、これ以上の数の設定スイッチを用いてもよい。設定手段は、機械的な接点スイッチの他に、電子スイッチ、赤外線などの光や磁力を感知するスイッチなどを用いてもよい。
【0102】
電気機器100として、プロセス機器を例にして説明したが、これに限られず、液晶表示手段とデータ設定用の設定手段とを備えた電気機器であれば、本発明を適用することができる。
【0103】
なお、電流検出制御手段131、診断手段132は、CPU130などのプロセッサによって所定のプログラムに従って実行する他、論理回路によって実現してもよい。
【0104】
なお、本発明は、前述の実施例に限定されることなく、その本質を逸脱しない範囲で、さらに多くの変更および変形を含む。また、前述した各手段の組み合わせ以外の組み合わせを含むことができる。
【符号の説明】
【0105】
10 内部電源回路
20 A/D
50 第1設定スイッチ(設定手段)
60 第2設定スイッチ(設定手段)
70 不揮発性メモリ(記憶手段)
80 出力回路
100 電気機器
110 電流検出手段
120 LCDモジュール(液晶表示手段)
121 LCD
122 LCDドライバ
130 CPU
131 電流検出制御手段
132 診断手段
140 警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示手段と内部データを設定する複数の設定手段とを備えた電気機器において、
前記液晶表示手段の消費電流の増加を検出し、この検出信号に基づいて前記複数の設定手段の出力信号を変化させる電流検出手段と、
前記電流検出手段によって変化した前記出力信号に基づいて前記消費電流の異常を診断する診断手段と、
を備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記消費電流の検出処理を第1所定時間実行し、前記消費電流の増加を検出したとき、検出信号の状態を変化させ、前記第1所定時間の終了時まで前記状態を保持することを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記液晶表示手段の起動処理終了後から、前記消費電流の検出処理を前記第1所定時間実行することを特徴とする請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記液晶表示手段は、前記第1所定時間経過後、表示データが復帰することを特徴とする請求項2または3に記載の電気機器。
【請求項5】
前記診断手段は、前記出力信号の変化した状態が第2所定時間以上継続した場合、前記消費電流の異常と診断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気機器。
【請求項6】
前記電流検出手段は、
内部電源電圧を分圧した第1電圧、および前記内部電源電圧から前記消費電流に基づく電圧分降下した第2電圧が入力され、前記消費電流を流す素子を制御する演算増幅器と、
前記演算増幅器の制御電圧および前記内部電源電圧を分圧した第3電圧を比較する比較器と、を備え、
前記比較器の比較結果に基づいて前記消費電流の増加を検出する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機器。
【請求項7】
前記診断手段によって診断された異常の履歴を記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機器。
【請求項8】
前記診断手段によって異常と診断された場合、警報を出力する警報手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電気機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−41177(P2011−41177A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188977(P2009−188977)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】