電気的接続構造
【課題】部品点数や組立作業工数を削減できると共に、ルーフ側及びインパネ側の配線の電気的接続を、車両本体への簡易な組付作業により実現できる電気的接続構造を提供する
【解決手段】本電気的接続構造は、車両のルーフ側の配線5とインパネ側の配線8とを接続する電気的接続構造であって、ピラー9を車室内側から覆うように取り付けられるピラーガーニッシュ組立体1を備えており、ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板3と、が備えられ、ピラーガーニッシュ組立体がピラーに取り付けられることにより、配線パターンを介して、ルーフ側の配線とインパネ側の配線とが電気的に接続される。ピラーガーニッシュには配線板を挟持する挟持部21を備えることができる。
【解決手段】本電気的接続構造は、車両のルーフ側の配線5とインパネ側の配線8とを接続する電気的接続構造であって、ピラー9を車室内側から覆うように取り付けられるピラーガーニッシュ組立体1を備えており、ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板3と、が備えられ、ピラーガーニッシュ組立体がピラーに取り付けられることにより、配線パターンを介して、ルーフ側の配線とインパネ側の配線とが電気的に接続される。ピラーガーニッシュには配線板を挟持する挟持部21を備えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続構造に関する。更に詳しくは、部品点数や組立作業工数を削減できると共に、ルーフ側及びインストルメントパネル(以下、単に「インパネ」とも略記する。)側の配線の電気的接続を、車両本体への簡易な組付作業により実現できる電気的接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ボディのピラーに沿ってワイヤハーネスを配索するようにしたピラー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤハーネスは、車両の天井部に設けられるランプユニットや電動サンルーフ等の電装部品に、インパネ側から、電源を供給したり制御信号を送信したりするためものである。このような構造におけるピラー部の組付けでは、ワイヤハーネスをピラーに組付けたのち、内装材であるピラーガーニッシュを組付けて覆う、といった作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−207685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなピラー構造の場合、ワイヤハーネスとピラーガーニッシュとをピラーに別々に組付ける必要がある。このため、作業工数が多いといった問題があった。また、ピラーガーニッシュとワイヤハーネスとをピラーに固定するための固定座面を別々に設ける必要がある。このため、これら固定用の部品点数が多いといった問題があった。また、ピラーとピラーガーニッシュとの間に固定用部品やコネクタ、ワイヤハーネスの電線等を配置するスペースを必要とするといった問題があった。更に、通常、ピラー部に配索されるワイヤハーネスは、ルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある。このため、ルーフ内装材を外す場合には、ピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスとを外す必要があり、サービス性に問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数や組立作業工数を削減できると共に、ルーフ側及びインパネ側の配線の電気的接続を、車両本体への簡易な組付作業により実現できる電気的接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、前記車両のピラーを車室内側から覆うように前記ピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ組立体を備えており、前記ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュと、前記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、が備えられ、前記ピラーガーニッシュ組立体が前記ピラーに取り付けられることにより、前記配線パターンを介して、前記ルーフ側の配線と前記インストルメントパネル側の配線とが電気的に接続されることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ピラーガーニッシュには、前記配線板を挟持する挟持部を備えることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記配線板は配線板側係合部を備え、前記挟持部は前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定されることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記挟持部は複数設けられており、前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)であることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることを要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気的接続構造によると、ピラーガーニッシュと、ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、を備えるピラーガーニッシュ組立体を備えており、このピラーガーニッシュ組立体をピラーに取り付けることにより、配線板に形成された配線パターンを介して、車両のルーフ側の配線とインパネ側の配線とが電気的に接続される。このように、ピラーガーニッシュに導電機能を持たせることにより、従来のようにピラーガーニッシュとワイヤハーネスとを車両本体のピラーに別々に組み付けたり、ワイヤハーネスをコネクタに接続したりする必要がなく、ピラーガーニッシュ組立体を組み付けるのみで済む。その結果、作業工数を削減することができる。また、従来ワイヤハーネスを固定するために必要であったクランプや車両本体側の固定座部等が不要となるので、部品点数を削減することができる。更に、ピラー部においてはワイヤハーネスを用いないので、車両のピラー部にワイヤハーネスを収容するスペースを必要としない。また、従来のように、ピラー部に配索されるワイヤハーネスがルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある場合、ルーフ内装材を外す際にはピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスを外す必要があったが、本発明の場合には、ルーフ内装材を単独で取り外すこともできる。更に、配線板がピラーガーニッシュに固定されていることにより、従来必要であったピラーガーニッシュのリブを削減したとしても、ピラーガーニッシュの剛性を確保することができる。
【0014】
また、前記ピラーガーニッシュが前記配線板を挟持する挟持部を備える場合には、簡易な作業によりピラーガーニッシュと配線板とを組み立てることができる。
【0015】
更に、前記配線板が配線板側係合部を備え、前記挟持部が前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定される場合は、簡易且つ確実にピラーガーニッシュと配線板とを組み立てることができる。
【0016】
また、前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられている場合には、ルーフ側の配線とインパネ側の配線との電気的接続をより簡易かつ確実なものとすることができる。
【0017】
更に、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記挟持部は複数設けられており、前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)である場合には、配線板の短辺の長さと長手方向の支持ピッチとを略同等とすることができ、配線板の耐振動性や耐歪み性を向上させることができる。即ち、従来電子制御ユニット(ECU)等に用いられる車載配線板が振動や歪みを考慮した略正方形状とされていることから、この従来の車載配線板と略同等の耐振動、耐歪みを実現できる配線板とすることができる。
【0018】
また、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である場合には、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が設けられた長尺の配線板を製造しておき、これを、どの部分で切り出しても同一形状の配線板として使用することができる。これにより、配線板の生産性を向上させることができる。
【0019】
更に、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である場合には、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、即ち、例えば、配線板を長尺に製造しておくことにより、どの部分で切り出しても配線板として使用することができる。これにより、配線板の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本実施例に係る電気的接続構造を模式的に示す説明図である。
【図2】本実施例に係るピラーガーニッシュ組立体を示す斜視図である。
【図3】図2のI−I切断線断面図である。
【図4】本実施例に係る配線板を示す平面図である。
【図5】ピラーガーニッシュと配線板との組立てを説明するための図である。
【図6】配線板とコネクタとが係合した状態を模式的に示す説明図である。
【図7】図6のII−II切断線断面図である。
【図8】図7のIII−III切断線断面図である。
【図9】図7のIV−IV切断線断面図である。
【図10】ピラーガーニッシュ組立体のピラーへの組付けを説明するための図である。
【図11】他の実施形態に係るピラーガーニッシュ組立体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
本実施形態に係る電気的接続構造は、車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、以下に述べるピラーガーニッシュ組立体を備えている。尚、上記電気的接続構造が適用される車両のピラーは特に限定されず、Aピラー部(フロントピラー部)、Bピラー部(センターピラー部)等、車両のピラー部であればいかなるピラー部にも適用可能である。
【0023】
上記「ピラーガーニッシュ」は、その構成、形状、大きさ、材質等は特に問わない。このピラーガーニッシュの材質としては、例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポレオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PCV)、アクリル樹脂(PMMA等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂を挙げることができる。また、これら樹脂の表面に織布、不織布等の表層材を貼付けた複合材等であってもよい。
ここで、上記ピラーガーニッシュは、例えば、上記配線板を挟持する挟持部を備えることができる(例えば、図2,3等参照)。上記挟持部は、その構成、形状、大きさ、数量、挟持形態等は特に問わない。
【0024】
上記「配線板」は、上記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成されている限り、その構成、形状、大きさ、配線パターンの形成形態等は特に問わない。この配線板は、通常、絶縁性の板材に、配線に相当する導体パターンを形成したものである。また、この配線板は、可撓性の比較的高いフレキシブル配線板であってもよいが、ピラーガーニッシュ組立体の剛性の確保といった観点から、可撓性の比較的低いリジッド配線板であることが好ましい。この配線板は、例えば、1又は2以上備えられていることができる(例えば、図3,11等参照)。また、この配線板には、1又は2以上の電線に相当する配線パターンが形成されていることができる(例えば、図4等参照)。更に、この配線板には、例えば、電子部品を実装することができ、これにより、ECUとして機能することができる。
【0025】
上記絶縁性の板材は特に限定されないが、例えば、ガラス布、紙等の補強材に絶縁性のあるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、BT樹脂等を含浸させたものや、ポリエステル、ポリイミド等絶縁性の樹脂板、フィルム等を挙げることができる。
また、上記配線パターンとして用いられる導体は特に限定されないが、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、クロム等の金属を挙げることができる。
【0026】
上記配線板の平面形状としては、例えば、略矩形状、略正方形状、異形状等であることができる。また、この配線板は、例えば、平板状であってもよいし、ピラー部に沿って湾曲した形状であってもよい。
【0027】
また、本実施形態の電気的接続構造では、上記ピラーガーニッシュ組立体が車両本体のピラーに取り付けられることにより、上記配線板に形成された上記配線パターンを介して、車両のルーフ側の配線と車両のインパネ側の配線とが電気的に接続されるようになっている。
上記「配線」は、電源を供給したり制御信号を送信したり等、電気的に導通可能なものであれば特に限定されない。この配線は、通常、ルーフ側に設けられるランプユニット、スイッチユニット、電動ルーフ等、また、インパネ側に設けられる中継ボックス、バッテリ、ECU等の電装部品にそれぞれ接続されている。また、上記配線は、例えば、複数の電線を束ねたワイヤハーネスであることができる。
【0028】
ここで、例えば、上記配線板が、配線板側係合部を備え、上記挟持部が、上記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、これら配線板側係合部と挟持部側被係合部とが係合することにより、上記ピラーガーニッシュと上記配線板とが固定されることができる(例えば、図5等参照)。
上記配線板側係合部は、その形状、大きさ、係合形態等は特に問わない。この配線板側係合部は、例えば、孔部(例えば、図3,4,5等参照)、突起部等であることができる。
【0029】
上記挟持部側被係合部は、上記配線板側係合部と係合する限り、その形状、大きさ、係合形態等は特に問わない。この挟持部側被係合部は、例えば、孔部、突起部(例えば、図3,5等参照)等であることができる。
【0030】
ここで、例えば、上記ルーフ側の上記配線には第1コネクタが設けられ、上記インストルメントパネル側の上記配線には第2コネクタが設けられ、上記配線板には、上記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、上記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられていることができる(例えば、図10等参照)。
【0031】
ここで、例えば、上記配線板は平面形状が略矩形状であり、上記挟持部は複数設けられており、上記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)であることができ、好ましくは、(0.85×L1)≦L2≦(1.15×L1)、特に、(0.95×L1)≦L2≦(1.05×L1)であることができる(例えば、図5等参照)。
上記配線板の短辺の長さL1は、例えば、10〜90mmであることができ、好ましくは、30〜70mm、特に、45〜55mmであることができる。
【0032】
ここで、例えば、上記配線板は平面形状が略矩形状であり、上記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部又は突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることができる(例えば、図4等参照)。
また、例えば、上記配線板の上記複数の孔部又は突起部は、それらの中心から配線板の長辺までの距離L3が、上記配線板の短辺の長さL1に対して、(0.2×L1)≦L3≦(0.6×L1)であることができ、好ましくは、(0.3×L1)≦L3≦(0.5×L1)、特に、(0.36×L1)≦L3≦(0.44×L1)であることができる(例えば、図4等参照)。
【実施例】
【0033】
以下、図面を用いて、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本実施例では、車両のフロントピラーに適用される電気的接続構造を例示する。
【0034】
(1)電気的接続構造の構成
本実施例に係る電気的接続構造10は、図1に示すように、ピラーガーニッシュ組立体1を備えている。このピラーガーニッシュ組立体1は、車両本体のフロントピラー9に取り付けられる。フロントピラー9のルーフ側には、ルーフ側コネクタ4(本発明に係る第1コネクタとして例示する。)が設けられている。ルーフ側コネクタ4は、ルーフ側ワイヤハーネス5の一端側に設けられており、ルーフ側ワイヤハーネス5の他端側は車両天井のランプユニット6に接続されている。また、フロントピラー9のインパネ側には、インパネ側コネクタ7(本発明に係る第2コネクタとして例示する。)が設けられている。インパネ側コネクタ7は、インパネ側ワイヤハーネス8の一端側に設けられており、インパネ側ワイヤハーネス8の他端側は、インパネ側に設けられた図示しない中継ボックスに接続されている。
【0035】
ピラーガーニッシュ組立体1は、図2に示すように、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュ2に固定される配線板3と、を備えている。
ピラーガーニッシュ2は、配線板3を挟持する複数(図2中7個)の挟持部21を備えている。挟持部21には、図3に示すように、スリット状の開口21Bが形成されており、その内側面には、後述する配線板側係合部と係合する突起状の挟持部側被係合部21Aがそれぞれ設けられている。尚、開口21Bの幅は、配線板3の厚さよりも大きな幅に設定されている。
【0036】
配線板3は、図4に示すように、平面形状が略矩形状で、その一面側に銅箔からなる配線パターン31が形成されている。本実施例において、配線パターン31は、2つの電線に相当する配線パターンである。また、この配線板3の短辺の長さはL1に設定されている。更に、配線板3には、複数(図4中9個)の孔部32が設けられている。各孔部32は、配線板3の長手方向に、等ピッチPで直線状に並んで配置されている。また、各孔部32の中心から配線板3の長辺までの距離はそれぞれL3に設定されている。本実施例において、孔部32の平面形状は略正方形状としている。
【0037】
孔部32のうち、両端側の孔部32は、ルーフ側コネクタ4と接続するためのルーフ側コネクタ係合部32A及びインパネ側コネクタ7と接続するためのインパネ側コネクタ係合部32Bである。そして、孔部32のうち、ルーフ側コネクタ係合部32Aとインパネ側コネクタ係合部32Bを除く孔部32は、それぞれ挟持部側被係合部21Aと係合する配線板側係合部32Cである。
【0038】
また、図5に示すように、各挟持部21は、それぞれ隣り合う挟持部21までの間隔がL2に設定されている。各挟持部21には挟持部側被係合部21Aが設けられている。挟持部側被係合部21Aは、上記孔部32と同じピッチPとなるように設けられている。これにより、本実施例では、挟持部21に設けられた挟持部側被係合部21Aと配線板側係合部32Cとが係合し、ピラーガーニッシュ2と配線板3とが固定されるようになっている。また、ルーフ側コネクタ4及びインパネ側コネクタ7は、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられた際に、それぞれルーフ側コネクタ係合部32A及びインパネ側コネクタ係合部32Bと係合可能な位置で、フロントピラー9に固定されている。
本実施例において、配線板3の短辺の長さL1は約50mmとしており、挟持部21の間隔L2は約50mmとしている。即ち、L1とL2とは略等しい長さに設定されている。また、上記距離L3は、約20mmとしている。即ち、L3はL1の約0.4倍の長さに設定されている。
【0039】
図6に示すように、配線板3は、ルーフ側コネクタ4に形成された溝部41に挿入されて固定される。溝部41の内側には、図7及び8に示すように、ルーフ側ワイヤハーネス5の各電線の端部に取り付けられた端子51が挿入されており、配線板3とルーフ側コネクタ4とが固定された際に配線パターン31と接触するようになっている。また、図7及び9に示すように、溝部41の内側の壁面には、ルーフ側コネクタ係合部32Aと係合する突起状の突起部42が設けられている。即ち、ルーフ側コネクタ4は、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられた際に、この突起部42が挟持部側被係合部21Aと等ピッチPで直線状に並んで配置するように、フロントピラー9に固定されている。尚、インパネ側コネクタ7はルーフ側コネクタ4と略同様に、配線板3が挿入される溝部と、インパネ側コネクタ係合部32Bと係合する突起部と、を備え、インパネ側ワイヤハーネス8の各電線の端部に取り付けられた端子が挿入されているが、その詳説は省略する。
【0040】
(2)電気的接続構造の作用
次に、上記構成の電気的接続構造10の作用について説明する。
先ず、図5に示すように、配線板3をピラーガーニッシュ2の挟持部21に挟持させてピラーガーニッシュ組立体1を組み立てる。このとき、配線板3を、配線板3の厚さよりも大きな幅の開口21Bに押し込むが、配線板側係合部32Cと挟持部側被係合部21Aとの係合により強固に固定される。
次に、図10に示すように、ピラーガーニッシュ組立体1をピラー9に取り付ける。この際、配線板3を各コネクタの溝部に挿入するとともに、ピラーガーニッシュ2に設けられている図示しない固定用クリップをフロントピラー9側の固定座部に固定する。これにより、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられる。この車両への組み付けと同時に、ルーフ側コネクタ4及びインパネ側コネクタ7と、配線板3の各コネクタ係合部32A、32Bとがそれぞれ係合する。これにより、配線パターン31と各コネクタ係合部32A、32Bの各端子とが接触し、配線パターン31を介して、ワイヤハーネス5及び8が電気的に接続されることになる。
【0041】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の電気的接続構造10によると、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュ2に固定され、配線パターン31が形成された配線板3と、を備えるピラーガーニッシュ組立体1を備えており、このピラーガーニッシュ組立体1をフロントピラー9に取り付けることにより、配線板3に形成された配線パターン31を介して、ルーフ側ワイヤハーネス5とインパネ側ワイヤハーネス8とが電気的に接続される。このように、ピラーガーニッシュ2に導電機能を持たせることにより、従来のようにピラーガーニッシュとワイヤハーネスとを車両本体のピラーに別々に組み付けたり、ワイヤハーネスをコネクタに接続したりする必要がなく、ピラーガーニッシュ組立体を組み付けるのみで済む。その結果、作業工数を削減することができる。また、従来ワイヤハーネスを固定するために必要であったクランプや車両本体側の固定座部等が不要となるので、部品点数を削減することができる。更に、ピラー部においては、ワイヤハーネスを用いることなく配線することができるので、ピラー部にワイヤハーネスを収容するスペースを必要としない。また、従来のように、ピラー部に配索されるワイヤハーネスがルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある場合、ルーフ内装材を外す際にはピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスを外す必要があったが、本発明の場合には、ルーフ内装材を単独で取り外すこともできる。更に、配線板3がピラーガーニッシュ2に固定されていることにより、従来必要であったピラーガーニッシュのリブを削減したとしても、ピラーガーニッシュの剛性を確保することができる。
【0042】
また、ピラーガーニッシュ2が配線板3を挟持する挟持部21を備えているので、簡易な作業によりピラーガーニッシュ2と配線板3とを組み立てることができる。
更に、配線板3が配線板側係合部32Cを備え、挟持部21が配線板側係合部32Cと係合する挟持部側被係合部21Aを備え、配線板側係合部32Cと挟持部側被係合部21Aとが係合することにより、ピラーガーニッシュ2と配線板3とが固定されるので、簡易且つ確実にピラーガーニッシュ2と配線板3とを組み立てることができる。
【0043】
また、ルーフ側ワイヤハーネス5にはルーフ側コネクタ4が設けられ、インパネ側ワイヤハーネス8にはインパネ側コネクタ7が設けられ、配線板3には、ルーフ側コネクタ4と接続するためのルーフ側コネクタ係合部32Aと、インパネ側コネクタ7と接続するためのインパネ側コネクタ係合部32Bとが設けられているので、ルーフ側ワイヤハーネス5とインパネ側ワイヤハーネス8との電気的接続をより簡易かつ確実なものとすることができる。
更に、配線板3は平面形状が略矩形状であり、挟持部21は複数設けられており、配線板3の短辺の長さL1と複数の挟持部21の間隔L2とが、略等しく設定されているので、配線板の耐振動性や耐歪み性を向上させることができる。即ち、従来ECU等に用いられる車載配線板が振動や歪みを考慮した略正方形状とされていることから、この従来の車載配線板と略同等の耐振動、耐歪みを実現できる配線板とすることができる。
【0044】
また、配線板3は平面形状が略矩形状であり、配線板3には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部32が、ほぼ直線上に並んで配置されており、複数の孔部32のうちのルーフ側に位置する孔部32はルーフ側コネクタ係合部32Aであり、インパネ側に位置する孔部32はインパネ側コネクタ係合部32Bであり、これら以外の孔部32は配線板側係合部32Cであるので、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部32が設けられた長尺の配線板を製造しておき、これを、どの部分で切り出しても同一形状の配線板3として使用することができる。これにより、配線板3の生産性を向上させることができる。
【0045】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、1つの配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体1としたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、2つの配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体11としてもよい。更に、3以上の配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体としてもよい。
【0046】
また、上記実施例では、2つの電線に相当する配線パターン31を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、1つや3つ以上の電線に相当する配線パターンを形成するようにしてもよい。更に、多数の電線に相当する配線パターンを形成するとともに、配線板3に電子部品を実装することにより、配線板3をECUとして機能させるようにすることもできる。
【0047】
更に、上記実施例では、配線パターン31を配線板3の一面側に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、配線パターンを配線板3の両面側にもうけるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例では、電気的接続構造10をフロントピラー部に適用する例を示したが、これに限定されず、例えば、センターピラーやリアピラー等に適用してもよい。
【0049】
更に、上記実施例では、配線板3に孔部32を設け、挟持部21及び各コネクタ4,7に孔部32と係合する突起状の部位をそれぞれ設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、配線板側に突起部を設け、挟持部及び各コネクタ側に突起部と係合する孔部をそれぞれ設けるようにしてもよい。更に、配線板側に孔部と突起部とを組み合わせて設け、挟持部及び各コネクタ側にこれら孔部及び突起部と係合する突起部及び孔部を設けるようにしてもよい。これにより、ピラーガーニッシュに対する配線板の組付けに方向性を持たせることができ、誤った方向に組付けてしまうことを防止できる。
【0050】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0051】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,11;ピラーガーニッシュ組立体、2;ピラーガーニッシュ、21;挟持部、21A;挟持部側被係合部、21B;開口、3;配線板、31;配線パターン、32;孔部、32A;ルーフ側コネクタ係合部、32B;インパネ側コネクタ係合部、32C;配線板側係合部、4;ルーフ側コネクタ、41;溝部、42;突起部、5;ルーフ側ワイヤハーネス、51;端子、6;ランプユニット、7;インパネ側コネクタ、8;インパネ側ワイヤハーネス、9;フロントピラー、10;電気的接続構造。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接続構造に関する。更に詳しくは、部品点数や組立作業工数を削減できると共に、ルーフ側及びインストルメントパネル(以下、単に「インパネ」とも略記する。)側の配線の電気的接続を、車両本体への簡易な組付作業により実現できる電気的接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ボディのピラーに沿ってワイヤハーネスを配索するようにしたピラー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤハーネスは、車両の天井部に設けられるランプユニットや電動サンルーフ等の電装部品に、インパネ側から、電源を供給したり制御信号を送信したりするためものである。このような構造におけるピラー部の組付けでは、ワイヤハーネスをピラーに組付けたのち、内装材であるピラーガーニッシュを組付けて覆う、といった作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−207685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなピラー構造の場合、ワイヤハーネスとピラーガーニッシュとをピラーに別々に組付ける必要がある。このため、作業工数が多いといった問題があった。また、ピラーガーニッシュとワイヤハーネスとをピラーに固定するための固定座面を別々に設ける必要がある。このため、これら固定用の部品点数が多いといった問題があった。また、ピラーとピラーガーニッシュとの間に固定用部品やコネクタ、ワイヤハーネスの電線等を配置するスペースを必要とするといった問題があった。更に、通常、ピラー部に配索されるワイヤハーネスは、ルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある。このため、ルーフ内装材を外す場合には、ピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスとを外す必要があり、サービス性に問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数や組立作業工数を削減できると共に、ルーフ側及びインパネ側の配線の電気的接続を、車両本体への簡易な組付作業により実現できる電気的接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、前記車両のピラーを車室内側から覆うように前記ピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ組立体を備えており、前記ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュと、前記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、が備えられ、前記ピラーガーニッシュ組立体が前記ピラーに取り付けられることにより、前記配線パターンを介して、前記ルーフ側の配線と前記インストルメントパネル側の配線とが電気的に接続されることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ピラーガーニッシュには、前記配線板を挟持する挟持部を備えることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記配線板は配線板側係合部を備え、前記挟持部は前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定されることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記挟持部は複数設けられており、前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)であることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることを要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項4において、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気的接続構造によると、ピラーガーニッシュと、ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、を備えるピラーガーニッシュ組立体を備えており、このピラーガーニッシュ組立体をピラーに取り付けることにより、配線板に形成された配線パターンを介して、車両のルーフ側の配線とインパネ側の配線とが電気的に接続される。このように、ピラーガーニッシュに導電機能を持たせることにより、従来のようにピラーガーニッシュとワイヤハーネスとを車両本体のピラーに別々に組み付けたり、ワイヤハーネスをコネクタに接続したりする必要がなく、ピラーガーニッシュ組立体を組み付けるのみで済む。その結果、作業工数を削減することができる。また、従来ワイヤハーネスを固定するために必要であったクランプや車両本体側の固定座部等が不要となるので、部品点数を削減することができる。更に、ピラー部においてはワイヤハーネスを用いないので、車両のピラー部にワイヤハーネスを収容するスペースを必要としない。また、従来のように、ピラー部に配索されるワイヤハーネスがルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある場合、ルーフ内装材を外す際にはピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスを外す必要があったが、本発明の場合には、ルーフ内装材を単独で取り外すこともできる。更に、配線板がピラーガーニッシュに固定されていることにより、従来必要であったピラーガーニッシュのリブを削減したとしても、ピラーガーニッシュの剛性を確保することができる。
【0014】
また、前記ピラーガーニッシュが前記配線板を挟持する挟持部を備える場合には、簡易な作業によりピラーガーニッシュと配線板とを組み立てることができる。
【0015】
更に、前記配線板が配線板側係合部を備え、前記挟持部が前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定される場合は、簡易且つ確実にピラーガーニッシュと配線板とを組み立てることができる。
【0016】
また、前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられている場合には、ルーフ側の配線とインパネ側の配線との電気的接続をより簡易かつ確実なものとすることができる。
【0017】
更に、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記挟持部は複数設けられており、前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)である場合には、配線板の短辺の長さと長手方向の支持ピッチとを略同等とすることができ、配線板の耐振動性や耐歪み性を向上させることができる。即ち、従来電子制御ユニット(ECU)等に用いられる車載配線板が振動や歪みを考慮した略正方形状とされていることから、この従来の車載配線板と略同等の耐振動、耐歪みを実現できる配線板とすることができる。
【0018】
また、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である場合には、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が設けられた長尺の配線板を製造しておき、これを、どの部分で切り出しても同一形状の配線板として使用することができる。これにより、配線板の生産性を向上させることができる。
【0019】
更に、前記配線板は平面形状が略矩形状であり、前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である場合には、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、即ち、例えば、配線板を長尺に製造しておくことにより、どの部分で切り出しても配線板として使用することができる。これにより、配線板の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本実施例に係る電気的接続構造を模式的に示す説明図である。
【図2】本実施例に係るピラーガーニッシュ組立体を示す斜視図である。
【図3】図2のI−I切断線断面図である。
【図4】本実施例に係る配線板を示す平面図である。
【図5】ピラーガーニッシュと配線板との組立てを説明するための図である。
【図6】配線板とコネクタとが係合した状態を模式的に示す説明図である。
【図7】図6のII−II切断線断面図である。
【図8】図7のIII−III切断線断面図である。
【図9】図7のIV−IV切断線断面図である。
【図10】ピラーガーニッシュ組立体のピラーへの組付けを説明するための図である。
【図11】他の実施形態に係るピラーガーニッシュ組立体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
本実施形態に係る電気的接続構造は、車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、以下に述べるピラーガーニッシュ組立体を備えている。尚、上記電気的接続構造が適用される車両のピラーは特に限定されず、Aピラー部(フロントピラー部)、Bピラー部(センターピラー部)等、車両のピラー部であればいかなるピラー部にも適用可能である。
【0023】
上記「ピラーガーニッシュ」は、その構成、形状、大きさ、材質等は特に問わない。このピラーガーニッシュの材質としては、例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポレオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PCV)、アクリル樹脂(PMMA等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂を挙げることができる。また、これら樹脂の表面に織布、不織布等の表層材を貼付けた複合材等であってもよい。
ここで、上記ピラーガーニッシュは、例えば、上記配線板を挟持する挟持部を備えることができる(例えば、図2,3等参照)。上記挟持部は、その構成、形状、大きさ、数量、挟持形態等は特に問わない。
【0024】
上記「配線板」は、上記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成されている限り、その構成、形状、大きさ、配線パターンの形成形態等は特に問わない。この配線板は、通常、絶縁性の板材に、配線に相当する導体パターンを形成したものである。また、この配線板は、可撓性の比較的高いフレキシブル配線板であってもよいが、ピラーガーニッシュ組立体の剛性の確保といった観点から、可撓性の比較的低いリジッド配線板であることが好ましい。この配線板は、例えば、1又は2以上備えられていることができる(例えば、図3,11等参照)。また、この配線板には、1又は2以上の電線に相当する配線パターンが形成されていることができる(例えば、図4等参照)。更に、この配線板には、例えば、電子部品を実装することができ、これにより、ECUとして機能することができる。
【0025】
上記絶縁性の板材は特に限定されないが、例えば、ガラス布、紙等の補強材に絶縁性のあるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、BT樹脂等を含浸させたものや、ポリエステル、ポリイミド等絶縁性の樹脂板、フィルム等を挙げることができる。
また、上記配線パターンとして用いられる導体は特に限定されないが、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、クロム等の金属を挙げることができる。
【0026】
上記配線板の平面形状としては、例えば、略矩形状、略正方形状、異形状等であることができる。また、この配線板は、例えば、平板状であってもよいし、ピラー部に沿って湾曲した形状であってもよい。
【0027】
また、本実施形態の電気的接続構造では、上記ピラーガーニッシュ組立体が車両本体のピラーに取り付けられることにより、上記配線板に形成された上記配線パターンを介して、車両のルーフ側の配線と車両のインパネ側の配線とが電気的に接続されるようになっている。
上記「配線」は、電源を供給したり制御信号を送信したり等、電気的に導通可能なものであれば特に限定されない。この配線は、通常、ルーフ側に設けられるランプユニット、スイッチユニット、電動ルーフ等、また、インパネ側に設けられる中継ボックス、バッテリ、ECU等の電装部品にそれぞれ接続されている。また、上記配線は、例えば、複数の電線を束ねたワイヤハーネスであることができる。
【0028】
ここで、例えば、上記配線板が、配線板側係合部を備え、上記挟持部が、上記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、これら配線板側係合部と挟持部側被係合部とが係合することにより、上記ピラーガーニッシュと上記配線板とが固定されることができる(例えば、図5等参照)。
上記配線板側係合部は、その形状、大きさ、係合形態等は特に問わない。この配線板側係合部は、例えば、孔部(例えば、図3,4,5等参照)、突起部等であることができる。
【0029】
上記挟持部側被係合部は、上記配線板側係合部と係合する限り、その形状、大きさ、係合形態等は特に問わない。この挟持部側被係合部は、例えば、孔部、突起部(例えば、図3,5等参照)等であることができる。
【0030】
ここで、例えば、上記ルーフ側の上記配線には第1コネクタが設けられ、上記インストルメントパネル側の上記配線には第2コネクタが設けられ、上記配線板には、上記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、上記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられていることができる(例えば、図10等参照)。
【0031】
ここで、例えば、上記配線板は平面形状が略矩形状であり、上記挟持部は複数設けられており、上記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)であることができ、好ましくは、(0.85×L1)≦L2≦(1.15×L1)、特に、(0.95×L1)≦L2≦(1.05×L1)であることができる(例えば、図5等参照)。
上記配線板の短辺の長さL1は、例えば、10〜90mmであることができ、好ましくは、30〜70mm、特に、45〜55mmであることができる。
【0032】
ここで、例えば、上記配線板は平面形状が略矩形状であり、上記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部又は突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、上記複数の孔部又は突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部であることができる(例えば、図4等参照)。
また、例えば、上記配線板の上記複数の孔部又は突起部は、それらの中心から配線板の長辺までの距離L3が、上記配線板の短辺の長さL1に対して、(0.2×L1)≦L3≦(0.6×L1)であることができ、好ましくは、(0.3×L1)≦L3≦(0.5×L1)、特に、(0.36×L1)≦L3≦(0.44×L1)であることができる(例えば、図4等参照)。
【実施例】
【0033】
以下、図面を用いて、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本実施例では、車両のフロントピラーに適用される電気的接続構造を例示する。
【0034】
(1)電気的接続構造の構成
本実施例に係る電気的接続構造10は、図1に示すように、ピラーガーニッシュ組立体1を備えている。このピラーガーニッシュ組立体1は、車両本体のフロントピラー9に取り付けられる。フロントピラー9のルーフ側には、ルーフ側コネクタ4(本発明に係る第1コネクタとして例示する。)が設けられている。ルーフ側コネクタ4は、ルーフ側ワイヤハーネス5の一端側に設けられており、ルーフ側ワイヤハーネス5の他端側は車両天井のランプユニット6に接続されている。また、フロントピラー9のインパネ側には、インパネ側コネクタ7(本発明に係る第2コネクタとして例示する。)が設けられている。インパネ側コネクタ7は、インパネ側ワイヤハーネス8の一端側に設けられており、インパネ側ワイヤハーネス8の他端側は、インパネ側に設けられた図示しない中継ボックスに接続されている。
【0035】
ピラーガーニッシュ組立体1は、図2に示すように、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュ2に固定される配線板3と、を備えている。
ピラーガーニッシュ2は、配線板3を挟持する複数(図2中7個)の挟持部21を備えている。挟持部21には、図3に示すように、スリット状の開口21Bが形成されており、その内側面には、後述する配線板側係合部と係合する突起状の挟持部側被係合部21Aがそれぞれ設けられている。尚、開口21Bの幅は、配線板3の厚さよりも大きな幅に設定されている。
【0036】
配線板3は、図4に示すように、平面形状が略矩形状で、その一面側に銅箔からなる配線パターン31が形成されている。本実施例において、配線パターン31は、2つの電線に相当する配線パターンである。また、この配線板3の短辺の長さはL1に設定されている。更に、配線板3には、複数(図4中9個)の孔部32が設けられている。各孔部32は、配線板3の長手方向に、等ピッチPで直線状に並んで配置されている。また、各孔部32の中心から配線板3の長辺までの距離はそれぞれL3に設定されている。本実施例において、孔部32の平面形状は略正方形状としている。
【0037】
孔部32のうち、両端側の孔部32は、ルーフ側コネクタ4と接続するためのルーフ側コネクタ係合部32A及びインパネ側コネクタ7と接続するためのインパネ側コネクタ係合部32Bである。そして、孔部32のうち、ルーフ側コネクタ係合部32Aとインパネ側コネクタ係合部32Bを除く孔部32は、それぞれ挟持部側被係合部21Aと係合する配線板側係合部32Cである。
【0038】
また、図5に示すように、各挟持部21は、それぞれ隣り合う挟持部21までの間隔がL2に設定されている。各挟持部21には挟持部側被係合部21Aが設けられている。挟持部側被係合部21Aは、上記孔部32と同じピッチPとなるように設けられている。これにより、本実施例では、挟持部21に設けられた挟持部側被係合部21Aと配線板側係合部32Cとが係合し、ピラーガーニッシュ2と配線板3とが固定されるようになっている。また、ルーフ側コネクタ4及びインパネ側コネクタ7は、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられた際に、それぞれルーフ側コネクタ係合部32A及びインパネ側コネクタ係合部32Bと係合可能な位置で、フロントピラー9に固定されている。
本実施例において、配線板3の短辺の長さL1は約50mmとしており、挟持部21の間隔L2は約50mmとしている。即ち、L1とL2とは略等しい長さに設定されている。また、上記距離L3は、約20mmとしている。即ち、L3はL1の約0.4倍の長さに設定されている。
【0039】
図6に示すように、配線板3は、ルーフ側コネクタ4に形成された溝部41に挿入されて固定される。溝部41の内側には、図7及び8に示すように、ルーフ側ワイヤハーネス5の各電線の端部に取り付けられた端子51が挿入されており、配線板3とルーフ側コネクタ4とが固定された際に配線パターン31と接触するようになっている。また、図7及び9に示すように、溝部41の内側の壁面には、ルーフ側コネクタ係合部32Aと係合する突起状の突起部42が設けられている。即ち、ルーフ側コネクタ4は、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられた際に、この突起部42が挟持部側被係合部21Aと等ピッチPで直線状に並んで配置するように、フロントピラー9に固定されている。尚、インパネ側コネクタ7はルーフ側コネクタ4と略同様に、配線板3が挿入される溝部と、インパネ側コネクタ係合部32Bと係合する突起部と、を備え、インパネ側ワイヤハーネス8の各電線の端部に取り付けられた端子が挿入されているが、その詳説は省略する。
【0040】
(2)電気的接続構造の作用
次に、上記構成の電気的接続構造10の作用について説明する。
先ず、図5に示すように、配線板3をピラーガーニッシュ2の挟持部21に挟持させてピラーガーニッシュ組立体1を組み立てる。このとき、配線板3を、配線板3の厚さよりも大きな幅の開口21Bに押し込むが、配線板側係合部32Cと挟持部側被係合部21Aとの係合により強固に固定される。
次に、図10に示すように、ピラーガーニッシュ組立体1をピラー9に取り付ける。この際、配線板3を各コネクタの溝部に挿入するとともに、ピラーガーニッシュ2に設けられている図示しない固定用クリップをフロントピラー9側の固定座部に固定する。これにより、ピラーガーニッシュ組立体1がフロントピラー9に取り付けられる。この車両への組み付けと同時に、ルーフ側コネクタ4及びインパネ側コネクタ7と、配線板3の各コネクタ係合部32A、32Bとがそれぞれ係合する。これにより、配線パターン31と各コネクタ係合部32A、32Bの各端子とが接触し、配線パターン31を介して、ワイヤハーネス5及び8が電気的に接続されることになる。
【0041】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の電気的接続構造10によると、ピラーガーニッシュ2と、ピラーガーニッシュ2に固定され、配線パターン31が形成された配線板3と、を備えるピラーガーニッシュ組立体1を備えており、このピラーガーニッシュ組立体1をフロントピラー9に取り付けることにより、配線板3に形成された配線パターン31を介して、ルーフ側ワイヤハーネス5とインパネ側ワイヤハーネス8とが電気的に接続される。このように、ピラーガーニッシュ2に導電機能を持たせることにより、従来のようにピラーガーニッシュとワイヤハーネスとを車両本体のピラーに別々に組み付けたり、ワイヤハーネスをコネクタに接続したりする必要がなく、ピラーガーニッシュ組立体を組み付けるのみで済む。その結果、作業工数を削減することができる。また、従来ワイヤハーネスを固定するために必要であったクランプや車両本体側の固定座部等が不要となるので、部品点数を削減することができる。更に、ピラー部においては、ワイヤハーネスを用いることなく配線することができるので、ピラー部にワイヤハーネスを収容するスペースを必要としない。また、従来のように、ピラー部に配索されるワイヤハーネスがルーフ側のワイヤハーネスと一体であって、ルーフ内装材に取り付けてある場合、ルーフ内装材を外す際にはピラーガーニッシュとピラーに固定してあるワイヤハーネスを外す必要があったが、本発明の場合には、ルーフ内装材を単独で取り外すこともできる。更に、配線板3がピラーガーニッシュ2に固定されていることにより、従来必要であったピラーガーニッシュのリブを削減したとしても、ピラーガーニッシュの剛性を確保することができる。
【0042】
また、ピラーガーニッシュ2が配線板3を挟持する挟持部21を備えているので、簡易な作業によりピラーガーニッシュ2と配線板3とを組み立てることができる。
更に、配線板3が配線板側係合部32Cを備え、挟持部21が配線板側係合部32Cと係合する挟持部側被係合部21Aを備え、配線板側係合部32Cと挟持部側被係合部21Aとが係合することにより、ピラーガーニッシュ2と配線板3とが固定されるので、簡易且つ確実にピラーガーニッシュ2と配線板3とを組み立てることができる。
【0043】
また、ルーフ側ワイヤハーネス5にはルーフ側コネクタ4が設けられ、インパネ側ワイヤハーネス8にはインパネ側コネクタ7が設けられ、配線板3には、ルーフ側コネクタ4と接続するためのルーフ側コネクタ係合部32Aと、インパネ側コネクタ7と接続するためのインパネ側コネクタ係合部32Bとが設けられているので、ルーフ側ワイヤハーネス5とインパネ側ワイヤハーネス8との電気的接続をより簡易かつ確実なものとすることができる。
更に、配線板3は平面形状が略矩形状であり、挟持部21は複数設けられており、配線板3の短辺の長さL1と複数の挟持部21の間隔L2とが、略等しく設定されているので、配線板の耐振動性や耐歪み性を向上させることができる。即ち、従来ECU等に用いられる車載配線板が振動や歪みを考慮した略正方形状とされていることから、この従来の車載配線板と略同等の耐振動、耐歪みを実現できる配線板とすることができる。
【0044】
また、配線板3は平面形状が略矩形状であり、配線板3には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部32が、ほぼ直線上に並んで配置されており、複数の孔部32のうちのルーフ側に位置する孔部32はルーフ側コネクタ係合部32Aであり、インパネ側に位置する孔部32はインパネ側コネクタ係合部32Bであり、これら以外の孔部32は配線板側係合部32Cであるので、配線板の生産性を向上させることができる。即ち、例えば、長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部32が設けられた長尺の配線板を製造しておき、これを、どの部分で切り出しても同一形状の配線板3として使用することができる。これにより、配線板3の生産性を向上させることができる。
【0045】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、1つの配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体1としたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、2つの配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体11としてもよい。更に、3以上の配線板3を備えるピラーガーニッシュ組立体としてもよい。
【0046】
また、上記実施例では、2つの電線に相当する配線パターン31を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、1つや3つ以上の電線に相当する配線パターンを形成するようにしてもよい。更に、多数の電線に相当する配線パターンを形成するとともに、配線板3に電子部品を実装することにより、配線板3をECUとして機能させるようにすることもできる。
【0047】
更に、上記実施例では、配線パターン31を配線板3の一面側に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、配線パターンを配線板3の両面側にもうけるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例では、電気的接続構造10をフロントピラー部に適用する例を示したが、これに限定されず、例えば、センターピラーやリアピラー等に適用してもよい。
【0049】
更に、上記実施例では、配線板3に孔部32を設け、挟持部21及び各コネクタ4,7に孔部32と係合する突起状の部位をそれぞれ設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、配線板側に突起部を設け、挟持部及び各コネクタ側に突起部と係合する孔部をそれぞれ設けるようにしてもよい。更に、配線板側に孔部と突起部とを組み合わせて設け、挟持部及び各コネクタ側にこれら孔部及び突起部と係合する突起部及び孔部を設けるようにしてもよい。これにより、ピラーガーニッシュに対する配線板の組付けに方向性を持たせることができ、誤った方向に組付けてしまうことを防止できる。
【0050】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0051】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,11;ピラーガーニッシュ組立体、2;ピラーガーニッシュ、21;挟持部、21A;挟持部側被係合部、21B;開口、3;配線板、31;配線パターン、32;孔部、32A;ルーフ側コネクタ係合部、32B;インパネ側コネクタ係合部、32C;配線板側係合部、4;ルーフ側コネクタ、41;溝部、42;突起部、5;ルーフ側ワイヤハーネス、51;端子、6;ランプユニット、7;インパネ側コネクタ、8;インパネ側ワイヤハーネス、9;フロントピラー、10;電気的接続構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、
前記車両のピラーを車室内側から覆うように前記ピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ組立体を備えており、
前記ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュと、前記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、が備えられ、
前記ピラーガーニッシュ組立体が前記ピラーに取り付けられることにより、前記配線パターンを介して、前記ルーフ側の配線と前記インストルメントパネル側の配線とが電気的に接続されることを特徴とする電気的接続構造。
【請求項2】
前記ピラーガーニッシュには、前記配線板を挟持する挟持部を備える請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項3】
前記配線板は配線板側係合部を備え、
前記挟持部は前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、
前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定される請求項2記載の電気的接続構造。
【請求項4】
前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、
前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、
前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気的接続構造。
【請求項5】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記挟持部は複数設けられており、
前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)である請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電気的接続構造。
【請求項6】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である請求項4に記載の電気的接続構造。
【請求項7】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である請求項4に記載の電気的接続構造。
【請求項1】
車両のルーフ側の配線と前記車両のインストルメントパネル側の配線とを接続する電気的接続構造であって、
前記車両のピラーを車室内側から覆うように前記ピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ組立体を備えており、
前記ピラーガーニッシュ組立体には、ピラーガーニッシュと、前記ピラーガーニッシュに固定され、配線パターンが形成された配線板と、が備えられ、
前記ピラーガーニッシュ組立体が前記ピラーに取り付けられることにより、前記配線パターンを介して、前記ルーフ側の配線と前記インストルメントパネル側の配線とが電気的に接続されることを特徴とする電気的接続構造。
【請求項2】
前記ピラーガーニッシュには、前記配線板を挟持する挟持部を備える請求項1記載の電気的接続構造。
【請求項3】
前記配線板は配線板側係合部を備え、
前記挟持部は前記配線板側係合部と係合する挟持部側被係合部を備え、
前記配線板側係合部と前記挟持部側被係合部とが係合することにより、前記ピラーガーニッシュと前記配線板とが固定される請求項2記載の電気的接続構造。
【請求項4】
前記ルーフ側の前記配線には第1コネクタが設けられ、
前記インストルメントパネル側の前記配線には第2コネクタが設けられ、
前記配線板には、前記第1コネクタと接続するための第1コネクタ係合部と、前記第2コネクタと接続するための第2コネクタ係合部とが設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気的接続構造。
【請求項5】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記挟持部は複数設けられており、
前記配線板の短辺の長さL1と前記複数の挟持部のうちの少なくとも2つの挟持部間の間隔L2との関係は、(0.8×L1)≦L2≦(1.2×L1)である請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電気的接続構造。
【請求項6】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の孔部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、
前記複数の孔部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である請求項4に記載の電気的接続構造。
【請求項7】
前記配線板は平面形状が略矩形状であり、
前記配線板には、その長手方向に略等間隔で略同一サイズで略同一形状の複数の突起部が、ほぼ直線上に並んで配置されており、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第1コネクタ係合部であり、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記第2コネクタ係合部であり、
前記複数の突起部の少なくとも1つは、前記配線板側係合部である請求項4に記載の電気的接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−129488(P2011−129488A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289756(P2009−289756)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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