説明

電池

アルカリ電池は、ハウジングと、ハウジング内のカソードと、アノードと、アノードとカソードとの間のセパレータと、アノード及びカソードと接触するアルカリ電解質とを含むことができる。カソードはアノード空洞を画定し、アノードはアノード空洞内に堆積する。カソードは、アノード空洞に隣接する上面を有する。電池は、カソードの上面に堆積した保護層及び/又はアノード上に堆積したゲルプラグを含むことができる。保護層は、カソードの上面にコーティングされたPVA層を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関し、並びに関連した構成要素及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電池類又は電気化学セル類は、普通に使用される電気エネルギー源である。電池は、通常アノードと呼ばれる負電極と、通常カソードと呼ばれる正電極と、を含有する。アノードは、酸化し得る活物質を含有し、カソードは、還元し得る活物質を含有又は消費する。アノード活物質は、カソード活物質を還元することができる。
【0003】
電池が装置における電気エネルギー源として用いられるとき、アノード及びカソードに対する電気接点が形成され、それによって電子が装置を貫流することができるとともに、酸化及び還元それぞれの反応を生じさせることで電力が供給される。アノード及びカソードと接触している電解質は、電極間のセパレータを貫流するイオンを含有することで、放電中における電池全体の荷電平衡を維持する。
【0004】
本願は、電池装置、及び電池の不良を最小限にする電池装置を製造する方法に関する。例えば、アノード材料の粒子が移動すると、アノード粒子間の導電性が低下することがある。更に、アノード材料が移動してカソード材料と直接接触すると、電池が内部短絡することがある。使用前又は使用中に電池が衝撃力を受けると移動が起こることがある。例えば、商品棚にある電池は、硬い面に落ちることがある。したがって、本明細書に開示する各種装置は、アノード材料の移動を最小限にし、並びに/又はアノード材料とカソード材料との間の接触を最小限にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ハウジングと、ハウジング内のカソードと、アノードと、アノードとカソードとの間のセパレータと、アノード及びカソードと接触するアルカリ電解質とを含む、アルカリ電池が開示される。カソードはアノード空洞を画定し、アノードはアノード空洞内に堆積する。カソードは、アノード空洞に隣接する上面を有する。電池は、カソードの上面に堆積した保護層を含む。
【0006】
一部の実施形態において、アノードは亜鉛を含むことができ、カソードは二酸化マンガンを含むことができる。
【0007】
一部の実施形態において、セパレータは、アノード空洞の寸法に一致する断面形状を画定する長手方向壁を有するスリーブへと巻かれた、1枚のセパレータ材料を含むことができる。セパレータは、スリーブの少なくとも1つの長手方向端部に複数の切り込みを含むことができ、この切り込みは複数のセグメントを画定する。複数のセグメントは、スリーブの長手方向壁に対して半径方向内向きに配置され横壁を画定することができる。例えば、ハウジングは、アノード空洞より上に配置された凸形内側面を有するセル密閉部を含むことができ、横壁は凸形状を有することができ、凸形内側面と当接することができる。一部の実施形態において、スリーブは、スリーブの表面積を基準とする紙の少なくとも25%の重なり部分を有することができる。例えば、スリーブは、スリーブの表面積を基準とする紙の少なくとも80%の重なり部分を含むことができ、複数のセグメントは、半径方向外向きに延びて保護層を画定する。
【0008】
一部の実施形態において、保護層はワッシャ形状のセパレータ材料片を含むことができる。一部の実施形態において、保護層は、ポリビニルアルコール、エチルビニルアセテートポリマー又は酢酸ビニル/エチレンコポリマーの層を含むことができる。例えば、保護層は、ホウ酸架橋ポリビニルアルコールの層であってもよい。一部の実施形態において、電池は、カソードの上面、アノードの上面、又はこれらの組み合わせに架橋ポリビニルアルコールの層を含むことができ、この層は保護層に追加することができる。一部の実施形態において、保護層を電気的に絶縁することができる。例えば、保護層は、水酸化カリウムに対して耐性のある高分子材料(例えば、ポリアミド系封止剤及び/又はアスファルト系封止剤)を含むことができる。
【0009】
一部の実施形態において、電池は、空洞内のアノード上に堆積したゲルを更に含むことができる。ゲル材料は、アノード内にもある所定量の電解質及び所定量のゲル化剤を含むことができる。
【0010】
一部の実施形態において、電池の構造により、落下試験前の開回路電圧(「OCV」)測定と落下試験後のOCV測定との間で、2%未満の電池が、0.01ボルトを超える電圧降下をするようにできる。電池の構造により、落下試験の後、少なくとも98%の電池が、電池容量の少なくとも95%を保有するようにすることもできる。落下試験は、電池が、電池の端部から2回落ち、電池のハウジングの側部に沿って2回落ちるように、それぞれの電池を落下させることを含めて、1メートルの高さからコンクリート面に電池を6回落下させること、及び6回の落下の後、落下試験後のOCV測定で電池を試験する前に、又は電池の残量を求める前に、室温で少なくとも24時間電池を保存することを含む。
【0011】
いくつかの態様では、ハウジングと、ハウジング内のカソードと、アノードと、アノードとカソードとの間のセパレータと、アノード及びカソードと接触するアルカリ電解質とを含む、アルカリ電池が開示される。カソードはアノード空洞を画定し、アノードはアノード空洞内に堆積する。電池は、アノード空洞内のアノード上に堆積するゲルを含む。ゲルは、電解質及びゲル化剤を含む。
【0012】
いくつかの態様では、ハウジングと、ハウジング内のカソードと、アノードと、アノードとカソードとの間のセパレータと、アノード及びカソードと接触するアルカリ電解質とを含む、アルカリ電池が説明される。カソードはアノード空洞を画定し、アノードはアノード空洞内に堆積する。ハウジングは、アノード空洞より上に配置された内側面を有するセル密封部を含む。セパレータは、アノード空洞の寸法と一致する断面形状を画定する長手方向壁を有するスリーブへと巻かれた、1枚のセパレータ材料を含む。セパレータには、スリーブの一方の長手方向端部に複数の切り込みを含む。切り込みは複数のセグメントを画定する。複数のセグメントは、長手方向壁に対して半径方向内向きに配置されて内側面と当接する横壁を画定する。
【0013】
いくつかの態様では、ハウジングと、ハウジング内のカソードと、アノードと、アノードとカソードとの間のセパレータと、アノード及びカソードと接触するアルカリ電解質とを含む、アルカリ電池が説明される。カソードはアノード空洞を画定し、アノードはアノード空洞内に堆積する。電池は、カソードの上面、アノードの上面、又はこれらの組み合わせにポリビニルアルコールの層を含む。一部の実施形態において、ポリビニルの層は、例えば、ホウ酸で架橋することができる。
【0014】
電池ハウジングの内部に第1の量の電解質を加え、電池ハウジングは、アノード空洞を画定するカソード及び空洞内のセパレータを含むことと、セパレータがアノード材料とカソードとの間にあるようにアノード材料をアノード空洞に加えることと、アノード空洞内のアノード材料上にゲルを堆積させ、ゲルは第2の量の電解質を含むこととを含む、アルカリ電池を作製する方法が説明される。
【0015】
一部の実施形態において、アノード材料をアノード空洞に加える前に、第1の量の電解質をカソード及びセパレータに完全に吸収させることができる。一部の実施形態において、アノード材料はゲル化剤(例えば、アノード材料内と同じゲル化剤)を含むことができる。一部の実施形態において、本方法は、カソードの上面を架橋ポリビニルアルコールの層でコーティングすることを更に含むことができる。
【0016】
1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明で明らかにする。他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面により、並びに請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電池の実施形態の実装例の断面図。
【図2A】落下試験後の、ゲルプラグ付きとゲルプラグなしの電池の試験結果。
【図2B】落下試験後の、ゲルプラグ付きとゲルプラグなしの電池の試験結果。
【図3】ゲルプラグ付きの電池を作製する方法の実施形態のフローチャート。
【図4】ワッシャ形状の保護層の実施形態。
【図5】カソード、セパレータ、及びホウ酸架橋ポリビニルアルコールの層を含む電池ハウジング。
【図5A】カソードの上面の架橋ポリビニルアルコールの層の拡大図。
【図6】複数のセグメントを画定する複数の切り込みを上部部分に有する1枚のセパレータ材料。
【図7A】半径方向外向きに延びる上部部分のセグメントを有するセパレータの実施形態。
【図7B】半径方向外向きに延びる上部部分のセグメントを有するセパレータの実施形態。
【図8A】半径方向内向きに延びる上部部分のセグメントを有するセパレータの実施形態。
【図8B】半径方向内向きに延びる上部部分のセグメントを有するセパレータの実施形態。
【0018】
各種の図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、電池又は電気化学セル10は、カソード12、アノード14、及びカソード12とアノード14との間のセパレータ16を収容するハウジング18を有する。ハウジング18は、内側面及び外側面を有する円筒形ハウジングである。ハウジング18の内側面と接触しているカソード12はカソード活物質を含み、アノード14はアノード活物質を含む。示すように、カソード12は、アノード14用の空洞を形成する、積み重ねた複数の円筒形中空ペレットを含む。また、電解質は電池10全体にわたって分散される。ハウジング18は、円筒形部分15、負端子9、及び正端子11を含む。負端子9は、シール22、金属上部キャップ24、及び集電器20を包含する。正端子11は、負端子9から反対側の電池10の端部にある。
【0020】
アノード14は、アノード活物質の粒子を含む。例えば、活性アノード物質は亜鉛粒子とすることができる。アノード活物質のこれらの粒子は、カソード12によって画定されるアノード空洞に堆積する。しかしながら、これらの粒子は、バッテリの耐用期間中に移動し、その結果、性能問題が生じることがある。例えば、アノード粒子は、アノード空洞から外に移動して、カソード12の上部部分と接触することがあり、これにより、電池不良になることがある。更に、アノード空洞内部のアノード粒子が移動した結果、粒子と粒子の接触が減少し、ひいては粒子間の導電性が低くなることがあり、これにより、電池の耐用期間が短くなったり、又は電池の電圧出力が周期的に低下したりすることがある。更に、アノード材料の移動によりセパレータ16に応力が加わることがある。したがって、アノード粒子の移動を最小限にする、並びに/又はアノード材料とカソード材料との間の接触を最小限にするいくつかの特徴が本明細書に開示される。本明細書で説明する特徴のそれぞれは、単独で又は他の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0021】
アノード14は、一部の実施形態において、アノード粒子及び電解質のスラリーの形態であってもよい。例えば、アノード粒子は亜鉛粒子であってもよい。亜鉛粒子の例には、米国特許第6,284,410号(Durkot et al.)及び米国特許第6,521,378号(Durkot et al.)に記載されるものが挙げられる。特定の実施形態では、アノード14は球状亜鉛粒子を含むことができる。球状の亜鉛粒子は、例えば、米国特許出願公開第2004/0258995(A1)号、「Anode for Battery」(Costanzo et al.、2004年12月23日公開)に記載されている。亜鉛粒子は、(例えば、数百ppmのインジウム及びビスマスを含有する)亜鉛合金であり得る。アノードは、例えば、亜鉛粒子を約40重量%〜約90重量%(例えば、約67重量%〜約80重量%)含んでよい。特定の実施形態では、アノードは、亜鉛粒子を68重量%及び亜鉛微粉を15%含むことができる。
【0022】
アノード14は、一部の実施形態において、ゲル化剤を含むことができる。ゲル化剤の例には、ポリアクリル酸、グラフトスターチ材、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロース、又はこれらの組み合わせが挙げられる。ポリアクリル酸の例には、(Noveon Inc.から入手可能な)カーボポール940及び934、並びに(3Vから入手可能な)Polygel 4Pが挙げられる。グラフトスターチ材の例には、Waterlock A221(Grain Processing Corporation,Muscatine,IAから入手可能)がある。ポリアクリル酸の塩の例には、Alcosorb G1(Ciba Specialtiesから入手可能)がある。アノードは、例えばゲル化剤を約0.1重量%〜約1重量%含んでよい。
【0023】
電池10は、図1に示すように、アノード14より上に配置されたゲルプラグ30を含む。ゲルプラグ30は、アノード活物質を含むのではなくて、むしろアノード14の部分(例えば、亜鉛微粉又は亜鉛粒子)の移動を最小限にする。ゲルプラグ30は、電池全体に分散する電解質、及びゲル化剤を含むことができる。一部の実施形態において、ゲルプラグ30はまた、超吸収剤を含むことができる。ゲルプラグ30は、ゲル化剤をアノード14よりも高い割合で有することができる。例えば、ゲルプラグ30は、ゲル化剤を1重量%〜5重量%(例えば、ゲル化剤を2重量%)含むことができる。ゲル化剤は、アノード14で使用するゲル化剤と同じであってもよく、又は異なるゲル化剤であってもよい。一部の実施形態において、ゲルプラグ30は、Waterlock A221を0.1重量%及びカーボポール940を1.9重量%含むことができる。
【0024】
ゲルプラグ30は、アノード空洞内部のアノードの移動を抑制し、アノード粒子がカソードコンソール(cathode consol)の上面に流出するのを最小限にする高い粘度を有することができる。ゲルプラグ30を追加することで、落下試験の結果を改善することができる。例えば、落下試験は、周囲条件下で1メートルの高さからコンクリートの硬質な剛体面の上に自由落下させて、消費者による電池の無作為の落下を模擬的に再現するように電池を落下させることを含むことができる。落下試験は、電池が端部で2回、及び電池のハウジングの円筒壁の側部に沿って2回、コンクリートの硬質な剛体面に衝突するように、電池を6回落下させることを含むことができる。落下試験は、電池を落下させた後、少なくとも24時間、周囲条件で電池を保存することを含むことができる。少なくとも24時間電池を保存した後、OCV測定を行って、落下試験中に電池を落下させたことに起因する電池不良又は電池の電圧出力の低下を検出することができる。
【0025】
ゲルプラグ30はまた、電池が振動条件に供されるとき、粒子間の導電性を改善することができる。例えば、図2A及び図2Bは、負荷電圧不安定性(「LVI」)試験の例を示している。LVI試験は、電池の放電中に、振動を与える軽い打撃力を電池に加え、電池の出力を測定することを含む。図2Aは、ゲルプラグを有する電池のLVI試験結果の例を示し、一方、図2Bは、ゲルプラグは有さないが、その他の点では図2Aで試験された電池と同一である電池のLVI試験結果の例を示している。それぞれのバッテリは、微粉15%とともに充填物を68%有する亜鉛アノードを含む。図2Aと図2Bの比較から明らかなように、ゲルプラグを備えた電池は、放電時に、LVI試験の振動を与える軽い打撃力によって電圧出力が変動することがないので、ゲルプラグ30があることにより、電池のLVI試験性能が改善される。これは、ゲルプラグ30が存在することにより、粒子間の導電性の低下をもたらすことがあるアノード粒子の移動が減少する電池を得ることができることを示唆している。
【0026】
一部の実施形態において、アノード14は、ゲルプラグ30用の空間を追加するために、カソード高さよりも低いアノード高さにすることができる。例えば、カソード12の高さの93%の高さまで亜鉛スラリーを空洞内に充填することができ、次いで、ゲルプラグが残りの7%を占めることができる。
【0027】
多くの製造技術を用いてゲルプラグ30を電池10に加えることができる。1つの製造技術が図3のフローチャートに開示されている。そのプロセスは、最初に、電池ハウジング18内にカソード12を配置し、そのカソードによって画定される空洞内にセパレータを配置することを含む。この方法は、第1の量の電解質をハウジングに加えることを含んでもよい。次いで、アノードスラリーを加えて空洞を満たすことができる。次いで、補足量の電解質をゲルプラグ30を形成するゲルの形態で加える。一部の実施形態では、第1の量の電解質が、カソード及びセパレータに完全に吸収されるまでアノードスラリーを加えない。例えば、毛管力によって電解質をカソード及び/又はセパレータ内に吸収することができる。
【0028】
図1に示すように、電池10はまた、カソード12の上面に配置された保護層32を含む。この保護層32は、一部の実施形態において、カソード12とほぼ等しい内径及び外径を有する、ワッシャ形状のセパレータ材料片であってもよい。図4は、ワッシャ形状のセパレータ材料の保護層32の実施例の斜視図を示している。例えば、保護層32は、ポリプロピレン(例えば、不織布ポリプロピレン又はミクロ孔質ポリプロピレン)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせで形成することができる。一部の実施形態において、保護層32は、不織布材料の層と組み合わせたセロハンの層を含むことができる。不織布材料としては、例えば、ポリビニルアルコール及び/又はレーヨンを挙げることができる。通常、ワッシャは、パルプ、PVA繊維で作られる紙状材料などの、アノードとカソードとの間のセパレータとして適切な任意の材料、及び/又はPVA、ポリエチルビニルアルコール、セロハン、及びこれらの組み合わせなどの高分子材料を含む任意のセパレータとして適切な任意の材料とすることができる。一部の実施形態において、保護層を電気的に絶縁することができる。例えば、保護層は、水酸化カリウムに対して耐性のある高分子材料(例えば、ポリアミド系封止剤及び/又はアスファルト系封止剤)を含むことができる。
【0029】
電池は、一部の実施形態において、架橋ポリビニルアルコール(例えば、ホウ酸架橋ポリビニルアルコール)の層を含むことができる。架橋ポリビニルアルコールは、カソードの上面、アノードの上面、ゲルプラグの上面、又はこれらの組み合わせ上にコーティングすることができ、アノード粒子の移動を最小限にする、並びに/又はアノード材料とカソード材料との間の直接接触を最小限にすることができる。PVA層は、亜鉛粒子とカソードとの間の電気的接触を防止することができる。架橋ポリビニルアルコールは、ホウ酸を蒸留水に溶かし、ポリビニルアルコール(「PVA」)粉末を室温で溶液に添加して懸濁液を生成することで調製することができる。次いで、懸濁液を80℃まで加熱し、約1時間その温度に保持することができる。懸濁液が透明になった後、得られたホウ酸架橋ポリビニルアルコールを冷却し、次いで、これを電池の製造に使用することができる。ホウ酸対PVAの比率は、1:15〜1:25(例えば、約1:20)とすることができる。通常、ホウ酸1グラム当たり脱イオン水約340グラムを使用する。例えば、脱イオン水250グラムをFisherホウ酸0.7365グラム及びDupont Elvanol 71−30 PVA14.56グラムと混合してホウ酸架橋ポリビニルアルコールを生成することができる。ホウ酸架橋ポリビニルアルコールの層はイオン伝導性とすることができ、更に、カソードによって画定される空洞から移動したアノード粒子とカソードの上面との間にバリアを形成することができる。
【0030】
架橋ポリビニルアルコールの層は、一部の実施形態において、図1に示すように、電池内でカソード12の上面に配置された保護層32として機能することができる。一部の実施形態において、架橋ポリビニルアルコールの層は、ワッシャ形状のセパレータ材料片の保護層32と合わせて使用することができ、カソード12とワッシャ形状のセパレータ材料片の保護層32との間で、カソードの上面に配置することができる。一部の実施形態において、架橋ポリビニルアルコールの層は、ゲルプラグ30がない場合に、カソードによって画定される空洞内のアノードスラリーの上面にコーティングすることができる。一部の実施形態において、架橋ポリビニルアルコールの層は、ゲルプラグとアノードスラリーとの間に配置するか、又はゲルプラグの上面に堆積することができる。アノード空洞上の架橋ポリビニルアルコールの層により、空洞内のアノード粒子が余分に移動するのを最小限にすることができる。
【0031】
例えば、図5及び図5Aに示すように、架橋ポリビニルアルコール(例えば、ホウ酸架橋ポリビニルアルコール)のイオン伝導層37をカソード12の上面に塗布することができる。図5は、カソード12、セパレータ16、及びアノード空洞19に隣接するカソードの上面に配置された保護層37を含み、アノード材料をアノード空洞19内に含む前の、又はキャップ及び/若しくはシールをハウジング18に追加する前の電池ハウジング18を示している。示すように、架橋PVAコーティングは、ハウジング18の内側面の一部及び/又はアノード空洞19に面するカソードの上部の非常に小さい部分を覆うことができる。例えば、ホウ酸変性PVAのイオン伝導性コーティングをバルブによってカソードの上面に塗布することができ、電池及びカソードを高速回転させることで、均一なコーティングを形成することができる。例えば、乾燥量を基準として乾燥ホウ酸3重量%(ホウ酸粉末:PVA粉末)に相当するホウ酸0.10重量%を含むPVA3.5重量%溶液を、先端が18ゲージのニードル(0.08cm(0.033インチ))によって、775rpmの速度で回転するAAサイズ電池のカソード及びハウジングに塗布することができる。例えば、先端が18ゲージのニードルは、East Providence,Rhode Islandに所在のEFD Inc.,A Nordson Companyから市販されている。ニードル先端は、カソード上面に比較的平らに置くことができ、その一方で、ニードルは約60°の角度をなすようにニードル先端をカットすることができる。回転方向はニードルの方向から離れる方向とすることができる。ビードは、概ねハウジング18の内側面及び/又はカソードの上部内側面をコーティングするように修正することができる。このような条件下で作られ、ホウ酸架橋PVAの層がカソードの上面を覆うAAサイズの電池は、PVAコーティングを含まないがその他の点は同一である電池に勝る、改善された落下試験成績を示した。落下試験は、周囲条件下で1メートルの高さからコンクリートの硬質な剛体面に自由落下させて、消費者による無作為の落下を模擬的に再現するように電池を落下させることを含むことができる。落下試験は、それぞれの互いに垂直な3つの方向から2回(例えば、電池が端部から2回、円筒形ハウジングの側部から2回、コンクリート面に衝突するように)落下させて、電池を6回落下させることを含むことができる。落下試験は、電池を落下させた後、少なくとも24時間、周囲条件で電池を保存することを含む。それぞれの電池が上記のように6回落下されたときに、落下試験の不良を、0.01ボルトを超える開回路電圧の低下と定義して試験前後の値を比較すると、PVAコーティングのない群は、1100個中52個の不良率であり、その一方で、カソード上に架橋PVAコーティングを含む群は、160個中たった1個の不良率だった。
【0032】
保護層32は、電解質及びカソードと接触したときに安定している(実質上化学的に不活性である)任意の材料であってもよい。他の例には、Fuji Hunt Coの一部門であるSpecialty Chemicalsから入手可能なVERSAMID又はREAMID−100などのポリアミド系接着剤が挙げられる。保護層32は、エチルビニルアセテートポリマー又は酢酸ビニル/エチレンコポリマーであってもよい。
【0033】
電池10はまた、図1又は図6に示すセパレータ16などのセパレータを含む。セパレータは、電気化学セル(例えば、アルカリ性セル)で使用される標準的なセパレータ材料のいずれかで形成することができ、アノード空洞の寸法に一致する長手方向壁を画定するスリーブを形成するように巻くことができる。セパレータ16は、アノード14とカソード12との間の電気的接触を防止する。図1に示すように、セパレータは、多くの技術により形成することができる、閉じた底部を有することができる。例えば、セパレータは、ポリプロピレン(例えば不織布ポリプロピレン又は微孔性ポリプロピレン)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせから形成することができる。ある実施形態において、セパレータは、不織布材料の層と組み合わせたセロハンの層を含むことができる。不織布材料としては、例えば、ポリビニルアルコール及び/又はレーヨンを挙げることができる。
【0034】
セパレータ16のようなセパレータは、電気化学セル(例えば、アルカリ性セル)において使用される任意の標準的なセパレータ材料で形成することができる。例えば、セパレータは、ポリプロピレン(例えば不織布ポリプロピレン又は微孔性ポリプロピレン)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせから形成することができる。一部の実施形態において、セパレータは、不織布材料の層と組み合わされたセロハンの層を含むことができる。不織布材料としては、例えば、ポリビニルアルコール及び/又はレーヨンを挙げることができる。
【0035】
カソードの上面に配置された保護層は、セパレータ自体の上部部分によって形成することもできる。例えば、図6、図7A、及び図7Bに示すように、セパレータ16は、スリーブの少なくとも1つの長手方向端部に複数の切り込み33を有する1枚のセパレータ材料を含むことができ、その切り込みは、複数のセグメント35を画定する。図7A及び図7Bに示すように、セグメント35は、図7Bに示すように半径方向外向きに延びて保護層を画定することができる。切り込みは、図6に示すように、所定の長さの単純なスリットとすることができる。他の実施形態では、切り込みは、上部部分30のセグメント35が、図7Bに示すように、セパレータ16の本体に対してほぼ垂直に半径方向外向きに延びて、アノード空洞に隣接するカソードの上面に載ることができる保護層を形成することを可能にする他の形状(例えば、V字形状又はU字形状)を有することができる。一部の実施形態において、セパレータ16は、セパレータの表面積を基準とするセパレータ材料の少なくとも80%の重なり部分を有するように、少なくとも1.8巻きすることができる。図7A及び図7Bに示すように、セパレータ16は2巻きすることができる。一部の実施形態において、図7A及び図7Bに示すように、切り込み33は、隣接する巻き付け部のセグメント35が、セグメントが外に張り出すのに起因して形成される、隣接する巻き付け部のセグメント間の空き空間に広がることができるように、隣接する巻き付け部の切り込み33からずらすことができる。半径方向外向きに広がる切り込みをカソード上面の上に載ったプラスチックシール22と組み合わせて、セパレータのセグメント35がカソード12とプラスチックシール22との間に挟み込まれるようにすることができる。
【0036】
セパレータの横方向端部にある切り込みは、セパレータと電池のハウジングとの間に良好なシールを形成することができ、これは、セパレータを通り過ぎるアノード粒子の移動を最小限にして、カソードの上面との望ましくない接触を抑制することができる。例えば、複数のセグメントは、長手方向壁に対して半径方向内向きに配置されて、横壁を画定することができる。ハウジングは、アノード空洞より上に配置された内側面26を有するセル密閉部を含むことができ、横壁17は、その内側面と当接してシールを形成することができる。例えば、セル密閉部の内側面は、ドーム形の面又は凸面であってもよい。例えば、図1に示すように、電池は負端子にシール22及びキャップ24を含むことができ、シールは、アノード空洞より上に凸形内側面26を有する。セパレータ16の切り込みのある横方向端部は、ドーム形の内側面26と当接してシールを形成する。示すように、横壁は凸形状を形成することもできる。例えば、図8Aに示すように、セパレータは、セパレータ材料を約1.25巻きすることができ、一定の間隔で配置された切り込み33を含むことができる。示すように、切り込みは所定の長さの単純なスリットであってもよい。他の実施形態では、切り込みは、図8Bに示すように、上部部分30のセグメント35が内側に張り出して、電池ハウジングのドーム形上側面と対接することを可能にする他の形状(例えば、V字形状又はU字形状)を有することができる。セパレータに切り込み33があることで、キャップがアノード上に置かれて、キャップの内側面がセパレータのセグメント35を内側に押し付けたときに、セグメント35が重なり、ひいてはしわの形成を回避するのが可能になる。
【0037】
ハウジング18などの電池ハウジングを1つ以上の異なる材料で形成することができる。ある実施形態において、電池ハウジングは、ニッケル、ニッケルメッキ鋼(例えば、ニッケルメッキ冷延鋼)、ステンレス鋼、アルミニウムクラッドステンレス鋼、アルミニウム、及び/又はアルミニウム合金のような1つ以上の金属類及び/又は金属合金類を含むことができる。特定の実施形態において、電池ハウジングは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスルホン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、及び/又はポリアミドのような1つ以上のプラスチック類を含むことができる。シール22のようなシールは、例えば、ポリマー(例えば、ナイロン)から作製することができる。キャップ24のようなキャップは、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、又は鋼のような金属又は金属合金から作製することができる。
【0038】
カソード12のようなカソードは、少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ)のカソード活物質を含むことができる。ある実施形態において、カソードは更に、少なくとも1つの導電性助剤及び/又は少なくとも1つの結合剤を含むことができる。電解質はまた、カソードを通して分散される。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、二酸化マンガン(MnO)などの酸化マンガンであり得る。二酸化マンガンは、電解合成のMnO(EMD)、化学合成のMnO(CMD)、又はEMDとCMDのブレンドにすることができる。二酸化マンガンの販売業者には、Kerr−McGee Corp.(例えば、Trona D及びhigh−power EMDの製造会社)、東ソー株式会社、Delta Manganese、Delta EMD Ltd、三井化学株式会社、ERACHEM、JMCが挙げられる。特定の実施形態では、カソードは、二酸化マンガン(例えば、EMD)を約80重量%〜約94重量%(例えば、約82重量%〜約86重量%)含むことができる(電解質がカソード全体に分散された後、重量%が決まる)。
【0039】
カソード活物質の他の例には、銅、ニッケル、及びビスマス含有材料を挙げることができる。例えば、カソード活物質として使用するのに適した銅含有材料には、酸化銅(例えば、酸化第二銅(CuO)、酸化第一銅(CuO))、水酸化銅(例えば、水酸化第二銅(Cu(OH))、水酸化第一銅(Cu(OH)))、ヨウ素酸塩第二銅(Cu(IO)、AgCuO、LiCuO、Cu(OH)(IO)、CuH(IO)、銅含有金属酸化物又はカルコゲニド、ハロゲン化銅(例えば、CuCl)、及び/又は銅マンガン酸化物(例えば、Cu(MnO)が挙げられる。酸化銅は、化学量論的(例えば、CuO)とすることもできるし、又は非化学量論的(例えば、CuO、ここで0.5≦x≦1.5)とすることもできる。カソード活物質の別の例には、CuInOClがある。オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)をカソード活物質として使用することもできる。オキシ水酸化ニッケルとしては、例えば、β−オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたβ−オキシ水酸化ニッケル、γ−オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたγ−オキシ水酸化ニッケル、β−オキシ水酸化ニッケルとγ−オキシ水酸化ニッケルとの固溶体、又はオキシ水酸化コバルトでコーティングされた、β−オキシ水酸化ニッケルとγ−オキシ水酸化ニッケルとの固溶体を挙げることができる。カソード活物質の更なる例としては、5価のビスマス含有金属酸化物を含むカソード活物質が挙げられる。
【0040】
特定の実施形態において、カソードは多孔質であることができる。多孔質カソードとしては、例えば、1つ以上の上記カソード活物質(例えば、EMD、NiOOH)を挙げることができる。
【0041】
導電助剤は、カソード12の電子導電性を増大させることができる。導電助剤の例に、炭素粒子がある。炭素粒子は、カソードに用いられる従来の炭素粒子のいずれかにすることができる。炭素粒子は、例えば、グラファイト粒子であり得る。黒鉛粒子は、合成、非合成、又は合成と非合成のブレンドであることができ、これらは膨張性又は非膨張性であることができる。特定の実施形態において、カソード中の黒鉛粒子は、非合成、非膨張性の黒鉛粒子であることができる。こうした実施形態では、黒鉛粒子の平均粒径は、Sympatec HELIOS分析装置を用いて測定した場合で約20マイクロメートル未満(例えば、約2マイクロメートル〜約12マイクロメートル、約5マイクロメートル〜約9マイクロメートル)にすることができる。グラファイト粒子は、例えば、Brazilian Nacional de Grafite(Itapecirica,MG Brazil(MP−0702X))又は中越黒鉛工業所(日本)(中越グレードWH−20A及びWH−20AF)から入手可能である。カソードは、例えば、炭素粒子を約3重量%〜約9重量%(例えば、約4重量%〜約7重量%)含んでよい。ある実施形態において、カソードは、黒鉛粒子を約4重量%〜約9重量%(例えば約4重量%〜約6.5重量%)含むことができる。導電助剤の別の例には、米国特許第6,858,349号(Luoら)、及び米国特許出願公開第2002/0172867(A1)号、「Battery Cathode」(Anglin、2002年11月21日公開)などに記載の炭素繊維がある。一部の実施形態では、カソードは、炭素繊維を約2重量%未満(例えば、約1.5重量%未満、約1重量%未満、約0.75重量%未満、約0.5重量%未満)、及び/又は約0.1重量%超(例えば、約0.2重量%超、約0.3重量%超、約0.4重量%超、約0.45重量%超)含むことができる。特定の実施形態では、カソードは、1つ以上の導電性助剤を合計約1重量%〜約10重量%含むことができる。
【0042】
カソードは、他の添加剤を含むことができる。ある実施形態において、カソードは、二酸化チタン(TiO)を含むことができる。特定の実施形態において、カソードは、TiOを約0.1重量%〜約2重量%(例えば約0.2重量%〜約2重量%)含むことができる。
【0043】
カソードは、カソード活物質を結合剤、溶媒/水、及び炭素源などの他の構成成分とともに混合することにより作製することができる。例えば、MnOなどのカソード活物質は、炭素(例えば、グラファイト、アセチレンブラック)と組み合わせ、少量の水と混合して、カソードスラリーを形成してよい。次いで、スラリーを、内腔を画定する円筒形中空ペレットに成形することにより、カソードスラリーを固体カソードにすることができる。一部の実施形態において、次いで、カソードを形成するカソードスラリーで集電器をコーティングすることができる。一部の実施形態において、ハウジング18内でカソードスラリーを最終形状に成形することができる。結合剤の例としては、ポリエチレン粉末、ポリアクリルアミド、ポートランドセメント、並びにフルオロカーボン樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。ポリエチレン結合剤の例は、商標名Coathylene HA−1681(Hoechstから入手可能)として販売されている。カソードは、結合剤を例えば最大約2重量%(例えば結合剤を最大約1重量%)含んでよい。特定の実施形態において、カソードは、結合剤を約0.1重量%〜約2重量%(例えば、約0.1重量%〜約1重量%)含むことができる。
【0044】
カソードを通して分散される電解質(及び/又は電池の残部で用いられる電解質)は、電池で用いられる電解質のいずれでも可能である。ある実施形態において、カソードは、電解質を約5重量%〜約10重量%(例えば、約6重量%〜約7重量%)含むことができる。電解質は、水性又は非水性であり得る。水性電解質は、アルカリ性溶液、例えば水酸化物水溶液(例えば、LiOH、NaOH、KOH)、又は水酸化物溶液の混合物(例えば、NaOH/KOH)などにすることができる。例えば、水性水酸化物溶液は、約33重量%〜約40重量%の水酸化物物質、例えば約9NのKOH(約37重量%KOH)を含むことができる。ある実施形態では、電解質は、最大約4重量%(例えば約2重量%)の酸化亜鉛を含むこともできる。
【0045】
電解質は、他の添加剤を含むことができる。例として、電解質は、電解質中のカソード活物質の溶解度を低減する(例えば、抑える)可溶性物質(例えば、アルミニウム物質)を含むことができる。特定の実施形態では、電解質は以下のもの、すなわち、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルカリ金属アルミン酸塩、アルミニウム金属、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、又はこれらの混合物の1つ以上を含むことができる。電解質添加剤は、例えば、米国特許出願公開第2004/0175613(A1)号、名称「Battery」(Eylem et al.、2004年9月9日公開)に記載されている。
【0046】
アノード14などのアノードは、ガス発生阻害剤を含むこともできる。ガス発生阻害剤は、ビスマス、スズ、鉛、インジウムなどの無機物質とすることができる。あるいは、ガス化抑制剤は、リン酸エステル、イオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤などの有機化合物であってもよい。イオン性界面活性剤の例は、例えば、米国特許第4,777,100号(Chalilpoyilら)にて開示されている。
【0047】
ある実施形態において、電池は、アノードによりセルの中に発生する場合がある(例えば、アノードが亜鉛を含む場合)水素ガスの量を低下させるために、水素再結合触媒を含むことができる。水素再結合触媒は、例えば、米国特許第6,500,576号(Davis et al.)及び同第3,893,870号(Kozawa)に記載されている。あるいは、電池は更に、米国特許第5,300,371号(Tomantschger他)に記載されているような圧力作動バルブ又は圧力作動通気を備えるように構築することができる。
【0048】
一部の実施形態において、電池10などの電池は一次電気化学セルであってもよい。一次セルとは、1度だけ(例えば、完全に消費されるまで)放電されて、その後廃棄されることを意味する。一次セルは、再充電させることは意図していない。一次セルは、例えば、David Linden著、「Handbook of Batteries」(McGraw−Hill、第2版、1995年)に記載されている。他の実施形態では、本明細書で説明した特徴を二次電気化学セル内で使用することができる。二次電気化学セルは、多数回(例えば、50回を超えて、100回を超えて、又はそれ以上)再充電されることができる。いくつかの実施形態では、二次セルは、多数の層を有するセパレータ及び/又は比較的厚いセパレータなどの、比較的頑健なセパレータを包含することができる。二次セルはまた、セルの中で生じ得る膨張のような変化に適応する設計にすることができる。二次セルは、例えば、Falk及びSalkind著、「Alkaline Storage Batteries」(John Wiley & Sons,Inc.、1969年)及び米国特許第345,124号(Virloyら)に記載されている。
【0049】
バッテリ10などのバッテリは、いくつかの異なる電圧(例えば、1.5V、3.0V、4.0V)のいずれかとすることができ、及び/又は、例えば、単3、単4、単5、単1、又は単2電池であってもよい。電池10は、円筒形であるが、いくつかの実施形態では、非円筒形にすることができる。
【0050】
本明細書で説明した特徴を1つ以上有する電池は、落下試験前のOCV測定と落下試験後のOCV測定との間で、0.01ボルトを超える電圧降下をする可能性を2%未満持ち得る(例えば、1つ以上の特徴を有する同じ電池の2%未満が、電池の落下試験後、0.01ボルト未満の電圧降下をすることがある)。落下試験は、電池が、電池の端部から2回落ちるように、並びに電池のハウジングの側部に沿って2回落ちるように、それぞれの電池を落下させることを含めて、1メートルの高さからコンクリート面に電池を6回落下させること、及び6回の落下の後、落下試験後のOCV測定で電池を試験する前に、室温で少なくとも24時間電池を保存することを含む。更に、本明細書で説明した1つ以上の特徴有する電池は、落下試験の後、電池容量の少なくとも95%を保有する可能性を少なくとも98%持ち得る(例えば、1つ以上の特徴を有する同じ電池の少なくとも98%は、落下試験後に電池容量の少なくとも95%を保有する)。
【0051】
いくつかの実施態様について述べた。しかし、この開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいと理解されるであろう。例えば、上記の特徴のそれぞれを単独で使用してもよく、又は他の特徴と組み合わせて使用してもよい。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範疇にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハウジングと、
(b)前記ハウジング内のカソードであって、アノード空洞を画定し、前記空洞に隣接する上面を有する、カソードと、
(c)前記アノード空洞内に堆積したアノードと、
(d)前記アノードと前記カソードとの間のセパレータと、
(e)前記アノード及び前記カソードと接触するアルカリ電解質と、
(f)前記カソードの前記上面に堆積した保護層と、を含む、アルカリ電池。
【請求項2】
前記アノードが亜鉛を含み、前記カソードが二酸化マンガンを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記セパレータが、前記アノード空洞の寸法と一致する断面形状を画定する長手方向壁を有するスリーブへと巻かれた、1枚のセパレータ材料を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記セパレータが、前記スリーブの少なくとも1つの長手方向端部に複数の切り込みを含み、前記切り込みが複数のセグメントを画定する、請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記複数のセグメントが、前記スリーブの前記長手方向壁に対して半径方向内向きに配置されて横壁を画定する、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記ハウジングが、前記アノード空洞より上に配置された凸形内側面を有するセル密閉部を含み、前記横壁は凸形状を有し、前記凸形内側面と当接する、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記スリーブが、前記スリーブの表面積を基準とする紙の少なくとも80%の重なり部分を含み、前記複数のセグメントが半径方向外向きに延びて前記保護層を画定する、請求項4に記載の電池。
【請求項8】
前記スリーブが、前記スリーブの表面積を基準とする紙の少なくとも25%の重なり部分を有する、請求項3に記載の電池。
【請求項9】
前記保護層が、ワッシャ形状のセパレータ材料片を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項10】
前記保護層が電気的に絶縁しており、水酸化カリウムに対して耐性のある高分子材料を含み、好ましくは、前記高分子材料が、選択されたポリアミド系封止剤、アスファルト系封止剤、及びこれらの組み合わせである、請求項1に記載の電池。
【請求項11】
前記保護層が、ポリビニルアルコールの層を含み、好ましくは、前記ポリビニルアルコールが架橋されている、請求項1に記載の電池。
【請求項12】
前記保護層は、エチルビニルアセテートポリマーの層又は酢酸ビニル/エチレンコポリマーの層を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項13】
前記カソードの前記上面、前記アノードの上面、又はこれらの組み合わせに架橋ポリビニルアルコールの層を更に含む、請求項1に記載の電池。
【請求項14】
前記空洞内の前記アノード上に堆積したゲルを更に含み、前記ゲルの材料が、前記アノード内にも存在する所定量の電解質及び所定量を含むゲル化剤を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項15】
前記電池と同じ構造を有する電池の2%未満が、落下試験前の開回路電圧測定と落下試験後の開回路電圧測定との間で、0.01ボルトを超える電圧降下をするものであり、前記落下試験は、前記電池が前記電池の端部から2回落ちるように、並びに前記電池が前記電池の前記ハウジングの側部に沿って2回落ちるように、それぞれの電池を落下させることを含めて、1メートルの高さからコンクリート面にそれぞれの電池を6回落下させること、及び前記6回の落下の後、前記落下試験後の開回路電圧測定の前に、室温で少なくとも24時間前記電池を保存することからなる、請求項1に記載の電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2011−515007(P2011−515007A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548221(P2010−548221)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050667
【国際公開番号】WO2009/107037
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】