説明

電流コンバート回路

【課題】オペアンプ構成の電流コンバート回路において、使用温度が高くても小さな電流信号を大きな電圧信号に変換できるようにする。
【解決手段】電流を電圧に変換するオペアンプ構成の電流コンバート回路において、オペアンプに接続される帰還回路を、少なくとも、帰還抵抗と、発光ダイオードとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状の電流信号を電圧信号に変換する電流コンバート回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パルス状の電流信号を電圧信号に変換する場合、図2に示すようなオペアンプ(A)を使った電流コンバート回路が用いられる。この場合、大きな電流信号iが入力された場合、変換される電圧信号vAの振幅制限をし、所定レベルの信号に整形するための2個のシリコンダイオードD1、D2が帰還抵抗Rf1に極性を異にして並列接続される。
【0003】
このような役目を担うシリコンダイオードの一例として、(株)東芝製の型名1SS187があり、図3にこの素子の順方向電流IF−順方向電圧VFの電気特性を示す。同図から明らかなように、順方向電流IFが10μA〜100μAの範囲で順方向電圧VFが約100mV程変動することが分かる。例えば、使用温度が25℃の場合、順方向電流IFが10μA時には、順方向電圧VFが約380mV発生することが示されている。
【0004】
これにより、順方向電流IFが0.1μAと非常に小さい場合の順方向電圧VF1は、VF1=380mV−2桁×100mV=180mVとなる。この程度の電圧信号レベルであれば、入力オフセット電圧が数十mVの一般的なオペアンプやコンパレータの入力信号としては十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の電流コンバート回路では、使用温度が高くなると、シリコンダイオードD1、D2の順方向電圧VFが低下し、特にコンマ数μAと小さい順方向電流IFにあっては順方向電圧VFが数十mV程度にしかならない。これは、一般に、シリコンダイオードは種類を問わず約2mV/℃の温度特性を有しているためである。
【0006】
したがって、例えば使用温度が25℃の場合には、順方向電流IFが0.1μA時に順方向電圧VFが180mVも発生していたのが100℃に上昇した場合、その順方向電圧VF2は、VF2=180mV(25℃時)−2mV/℃×(100−25)℃=30mVとなる。
【0007】
このように、シリコンダイオードD1、D2で構成されている電流コンバート回路では、使用温度が高くなると低レベルの電圧信号vAが変換出力されるようになる。これは、一般的なオペアンプやコンパレータの入力信号としては不十分なレベルなので回路動作が不安定になる問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、小さい電流信号でも、従来よりも比較的に大きい電圧信号に変換できる電流コンバート回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電流コンバート回路では、少なくとも、オペアンプと、このオペアンプの入力端子と出力端子との間に接続される帰還回路と、を備え、この帰還回路は少なくとも帰還抵抗と、この帰還抵抗と並列接続された発光ダイオードとから成るものである。
【0010】
また、本発明の電流コンバート回路では帰還回路の発光ダイオードは、少なくとも2個が互いに極性を異にして並列接続されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオペアンプ構成の電流コンバート回路では、オペアンプに接続される帰還回路を、少なくとも、帰還抵抗と、発光ダイオードとで構成したので、電流信号を従来より大きなレベルの電圧信号に変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の電流コンバート回路の第1の実施の形態について説明する。図1に本発明の電流コンバート回路が適用される電流信号変換装置1の基本的な回路構成を示す。同図において、電流信号変換装置1は、パルス状の電流信号iPをデジタル信号vCに変換するものであり、主に電流検出回路10と、本発明の電流コンバート回路20と、コンパレータ回路30とから構成されている。
【0013】
電流検出回路10は、フェライトコア又はパーマロイコアと一体の電流検出用コイルLが設けられた電流ピックアップ12から成っている。電流検出用コイルLは、信号線SLの被測定信号であるパルス状の電流信号iPを検出するものである。この電流検出用コイルLに誘起された電流信号iS(又は電圧信号vS)は、出力端子a、a’を介して後段の電流コンバート回路20に入力される。
【0014】
電流コンバート回路20は、反転型のオペアンプ(A)22と、帰還回路24と、利得制限用の抵抗Rg1と、バイパスコンデンサCbと、分圧用の抵抗R1、R2とから構成されている。帰還回路24は、負帰還の閉ループであり、帰還抵抗Rf1と、2個の発光ダイオードLED1、LED2とから構成されている。
【0015】
オペアンプ(A)22の反転入力端子(−)には、抵抗Rg1が、非反転入力端子(+)には接地されたバイパスコンデンサCb及び直流電源Vからの電圧を受けている抵抗R1、R2がそれぞれ接続されている。これにより、非反転入力端子(+)には、直流電源VをR1と、R2とで分圧された基準電圧Vrが設定される。この基準電圧Vrは出力端子b’を通して、後述するヒステリシスコンパレータ(C)32の基準電圧Vrとしても供給される。
【0016】
更に、オペアンプ(A)22の反転入力端子(−)と、出力端子bとの間には上記帰還回路24が設けられており、帰還抵抗Rf1と、極性を互いに異にさせた2個の発光ダイオードLED1、LED2とが並列接続されている。
【0017】
なお、本実施例では発光ダイオードLED1、LED2は、Rhom社製の型番SML−310VTを用いている。図4には、この素子の順方向電流IF−順方向電圧VFの電気特性が実線で示されている。同図から明らかなように、順方向電流IFが0.1μA以上において、使用温度が100℃であっても最低1Vもの順方向電圧VFが発生することが示されている。この順方向電圧VFは、上記従来のシリコンダイオードD1、D2に比較して約6倍の値である。
【0018】
なお、上記シリコンダイオードD1、D2の順方向電流IF−順方向電圧VFの電気特性が破線で示されている。
【0019】
また、本実施例では、オペアンプ(A)22を直流型で動作するように構成してあるが、これに限らず信号入力ラインにコンデンサを設けて交流型で動作するように構成してもよい。
【0020】
コンパレータ回路30は、電流コンバート回路20から出力される電圧信号vAを取り込んで、反転入力端子(−)に設定されている基準電圧Vrとのレベル比較してデジタル信号vCに変換する回路であり、主にオペアンプ構成のヒステリシスコンパレータ(C)32と、利得制限用の抵抗Rg2と、帰還抵抗Rf2とから構成されている。
【0021】
ヒステリシスコンパレータ(C)32の非反転入力端子(+)には抵抗Rg2が接続されている。更に、非反転入力端子(+)と、出力端子c(c’は接地)との間には帰還抵抗Rf2が接続されており、ヒステリシスレベルは抵抗Rg2と、帰還抵抗Rf2とにより決定される。
【0022】
なお、本実施例では、ヒステリシスコンパレータ(C)32のヒステリシス電圧V0を約50mVに設定してある。
【0023】
次に、上記構成の電流信号変換装置1の動作について、図5に示す信号波形を参照しながら説明する。
【0024】
信号線SLを流れる被測定用のパルス状の電流信号iP(図5の(a)を参照)は、電流ピックアップ12の電流検出用コイルLに誘起されてスパイク状の電流信号iS(図3の(b)を参照)として発生し、電流コンバート回路20の抵抗Rg1を介してオペアンプ(A)22の反転入力端子(−)に入力される。
【0025】
この電流信号iSは、出力端子bから帰還回路24を経て反転入力端子(−)に戻り、一定レベルで増幅される。その際、帰還回路24の発光ダイオードLED1、LED2の端子間に発生する順方向電圧VFに基づく振幅制限(最大振幅制限電圧:±vL)を受けるが、電流信号iSが小さい場合には振幅制限を受けることなく、一定レベルで増幅される(図5の(c)を参照)。一方、電流信号iSが大きい場合には最大振幅制限を受けるので、方形波状の電圧信号vAに増幅される(図5の(d)を参照)。
【0026】
本実施例の電流コンバート回路20の電圧信号vAは、図4の実線で示す順方向電流IF−順方向電圧VF特性に基づいて出力される。同図から明らかなように、例えば、使用温度が25℃において順方向電流IFが0.1μA時には順方向電圧VFが約1.23V発生する。また、100℃においても、約1.08Vもの順方向電圧VFが発生し、この順方向電圧VFは、ヒステリシスコンパレータ(C)32に設定されているヒステリシス電圧V0値より十分に大きいものとなっている。
【0027】
電流コンバート回路20からの電圧信号vAは、後段のコンパレータ回路30の抵抗Rg2を通して非反転端子(+)に供給される。これにより、反転入力端子(−)に設定されている基準電圧Vrに基づいて、デジタル信号VC(図5の(d)を参照)が出力される。
【0028】
以上述べたように、本実施例の電流検出装置1では、図4に示す順方向電流IF−順方向電圧VFの電気特性から明らかなように、電流コンバート回路20の電圧信号vAのレベルは、ヒステリシスコンパレータ(C)32に設定されるヒステリシス電圧V0より十分に大きい。従来のシリコンダイオード構成の場合には、使用温度が100℃になると、順方向電流IFが0.1μA時には順方向電圧VFが約30mV程度しか発生しなかったのに対して、本案のLED構成では約1.08Vも発生する。
【0029】
このように、使用温度が高くても、小さい電流信号iSを、高い電圧信号vAに変換することが可能である。したがって、本案の電流コンバート回路20では、小さな電流から大きな電流のパルス(又はスパイク)状の電流信号を一定レベルで振幅制限した電圧信号に、広範囲で変換させることが可能である。
【0030】
次に、本発明の電流コンバート回路の第2の実施の形態について説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0031】
図6に、本発明の電流コンバート回路の構成を示す。同図において、電流コンバート回路20のオペアンプ22を非反転型で動作する構成にしたものである。オペアンプ22の反転入力端子(−)には接地された利得制限用の抵抗Rgが、非反転入力端子(+)には接地された電流/電圧変換用の抵抗R1がそれぞれ接続されている。この抵抗R1には、電流信号iSの大きさに応じた電圧信号vSが発生するようになっている。
【0032】
オペアンプ22に接続される帰還回路24の構成は第1実施例と同じである。帰還回路24の発光ダイオードLED1、LED2の両端に発生する順方向電圧VFに基づいて電圧信号vAに変換され、この場合にはオペアンプ22に入力される電圧信号vSと、出力される電圧信号vAとの極性は同じになる。
【0033】
次に、本発明の電流コンバート回路の第3の実施の形態について説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。図7に本発明の電流コンバート回路の構成を示す。同図において、電流コンバート回路20のオペアンプ22を差動型で動作するように構成したものである。オペアンプ22の反転入力端子(−)には利得制限用の抵抗Rgが、非反転入力端子(+)には接地された電流/電圧変換用の抵抗R1がそれぞれ接続されている。オペアンプ22に接続される帰還回路24の構成は第1実施例と同じである。この場合にはオペアンプ22の反転入力端子(−)と、非反転入力端子(+)とに、互いに逆位相の電流信号iSを各々に入力させる。これにより、振幅の大きさが同じで且つ逆位相の電流信号(±iS)のみが、帰還回路24の発光ダイオードLED1、LED2の両端に発生する順方向電圧VFに基づいて電圧信号vAに変換される。
【0034】
次に、本発明の電流コンバート回路の第4の実施の形態について説明する。上記第1〜第3実施例では、電流コンバート回路20の帰還回路24は負帰還型であるが、これに限らず、図8に示す正帰還型の帰還回路84であっても良い。この帰還回路84の構成は第1実施例と同じである。この場合にも、オペアンプ22の反転入力端子(−)に入力される電流信号iS(又は電圧信号vS)は、帰還回路84の発光ダイオードLED1、LED2の両端に発生する順方向電圧VFに基づいた電圧信号vAに変換される。
【0035】
次に、本発明の電流コンバート回路の第5の実施の形態について説明する。上記第1〜第4実施例では電流コンバート回路20の帰還回路24(84)の発光ダイオードの数は2個であるが、個数を限定するものではない。図9に、本発明の電流コンバート回路が適用される電流信号変換装置1の構成を示す。
【0036】
なお、上記実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施例の形態では、電流コンバート回路20の帰還回路94を、帰還抵抗Rf1と、複数個が直列接続された発光ダイオード(LED1とLED1’)(LED2とLED2’)とで構成してある。このように発光ダイオードの数を増やすことによって、電流コンバート回路20の電圧及び電流の最大許容量を大きく設定できる利点がある。
【0037】
以上述べた第1〜第5実施例の本発明のオペアンプ構成の電流コンバート回路20では、オペアンプ22の入力端子と、出力端子との間に接続される帰還回路24(84、94)が、帰還抵抗Rf1と、シリコンダイオードより順方向電圧VFが大きい電気特性を有する複数個の発光ダイオードとで構成されている。これにより、コンマ数μAの小さい電流信号iSであっても、発光ダイオードの両端に発生する順方向電圧VFに基づいて、高レベルの電圧信号vAに変換することが可能である。
【0038】
この電圧信号vAのレベルは、従来のシリコンダイオード構成の電流コンバート回路の場合より約3倍もある。したがって、使用温度が高くなっても、一般的なオペアンプの入力オフセット電圧やコンパレータのヒステリシス電圧より下回ることはないので電流/電圧変換が安定して行われる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
アナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理するオペアンプ構成の回路全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】 本発明の電流コンバート回路が適用される第1の実施の形態に係る電流信号変換装置の構成図である。
【図2】 従来技術の電流コンバート回路を示す構成図である。
【図3】 シリコンダイオードの電気特性を示す図である。
【図4】 発光ダイオードの電気特性を示す図である。
【図5】 図1に示す電流信号変換装置の動作を説明するための信号波形図である。
【図6】 第2の実施の形態例の電流コンバート回路の構成図である。
【図7】 第3の実施の形態例の電流コンバート回路の構成図である。
【図8】 第4の実施の形態例の電流コンバート回路の構成図である。
【図9】 本発明の電流コンバート回路が適用される第5の実施の形態に係る電流信号変換装置の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 電流検出回路
12 電流ピックアップ
20 電流コンバート回路
22 オペアンプ
24 帰還回路
30 コンパレータ回路
32 ヒステリシスコンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を電圧に変換する電流コンバート回路において、少なくとも、
オペアンプと、
このオペアンプの入力端子と出力端子との間に接続される帰還回路とを備え、この帰還回路は少なくとも、帰還抵抗と、この帰還抵抗と並列接続された発光ダイオードとから成ることを特徴とする電流コンバート回路。
【請求項2】
前記帰還回路の発光ダイオードは、少なくとも2個が互いに極性を異にして並列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電流コンバート回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−49660(P2007−49660A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255716(P2005−255716)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(597019609)株式会社 シーディエヌ (22)
【Fターム(参考)】