説明

電流拡散層を有するLED

放射を放出する活性層(7)と、n型コンタクト(10)と、p型コンタクト(9)と、電流拡散層(4)と、を有するLED、を提供する。電流拡散層(4)は、活性層(7)とn型コンタクト(10)との間に配置されている。さらには、電流拡散層(4)は、積層体の複数個の繰り返しを備えており、積層体は、少なくとも1つのn型ドープ層(44)と、アンドープ層(42)と、AlGa1−xN(0<x<1)から成る層(43)と、を備えている。AlGa1−xNから成る層(43)は、Al含有量の濃度勾配を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1による、電流拡散層を有するLEDに関する。
【関連出願】
【0002】
本特許出願は、独国特許出願第102007057674.0号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
従来の発光ダイオード(LED)においては、電気コンタクト接続が、一般的には2つの電気コンタクト層によって行われており、この場合、コンタクトエリアはチップ表面の比較的小さい領域のみに設けられていることが多い。このタイプのコンタクト接続は、半導体チップにおける不均一なキャリア注入(energization)につながり、これによって順方向電圧が上昇し、活性ゾーンにおける量子効率が低下し、これは不利である。この影響は、特に、半導体材料の横方向伝導度(transverse conductivity)が低い場合、特に窒化物化合物半導体の場合に発生する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】I. Schnitzer et al., Appl. Phys. Lett. 63 (16), October 18, 1993, 2174 - 2176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された横方向伝導度と改良された縦方向電流輸送(vertical current transport)とを特徴とする改良された電流拡散構造を有するLEDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、特許請求項1の特徴を備えているLEDによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な構造形態および発展形態に関する。
【0007】
本発明によると、放射を放出する活性層と、n型コンタクトと、p型コンタクトと、電流拡散層と、を有するLED、を提供する。電流拡散層は、活性層とn型コンタクトとの間に配置されている。さらには、電流拡散層は、積層体の複数個の繰り返し(multiply repeating layer sequence)を有する。積層体は、第1のn型ドープ層と、アンドープ層と、AlGa1−xN(0<x<1)から成る層と、を有し、AlGa1−xNから成る層は、Al含有量の濃度勾配を有する。
【0008】
積層体の複数個の繰り返しを有する電流拡散層においては、アンドープ層と、AlGa1−xNから成る層との間の界面に、2次元電子ガスが形成される。2次元電子ガスが形成される結果として、電流拡散層の横方向伝導度が上昇し、これは有利である。電流拡散層の横方向伝導度が上昇することは、活性層への均一なキャリア注入につながり、これによってLEDの効率が高まり、これは有利である。
【0009】
AlGa1−xNから成る層のアルミニウム含有量の濃度勾配によって、電流拡散層における縦方向電流輸送が向上する。さらには、これによって、個々の層の間の界面における歪みが減少する。このことは、LEDの劣化の低減につながり、この結果として、LEDの長期的な安定性および寿命が増大し、これは有利である。
【0010】
したがって、電流拡散層の組成の結果として、アンドープ層とAlGa1−xN層との間の界面に2次元電子ガスが形成されることにより、高い横方向伝導度がもたらされる。さらには、AlGa1−xNから成る層のアルミニウム含有量の濃度勾配の結果として、電流拡散層における縦方向電流輸送が最適化される。
【0011】
本発光ダイオード(LED)は、薄膜LEDとして具体化されていることが好ましい。薄膜LEDの場合には、LEDの積層体を上に形成させた(特に、堆積させた)製造基板(production substrate)を、部分的または完全に除去する。製造基板は、積層体を上にエピタキシャル成長させる成長基板であることが好ましい。
【0012】
薄膜発光ダイオードチップの基本的な原理は、例えば、非特許文献1に記載されており、これに関するこの文書の開示内容は、参照によって本出願に組み込まれている。
【0013】
本LEDは、窒化物化合物半導体をベースとしていることが好ましい。これに関して、「窒化物化合物半導体をベースとしている」とは、活性エピタキシャル積層体またはその少なくとも1つの層が、III−V族窒化物化合物半導体材料、好ましくはAlGaIn1−n−mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を備えていることを意味する。この場合、この材料は、上の化学式による数学的に正確な組成を有する必要はない。そうではなく、この材料は、1つまたは複数のドーパントと、AlGaIn1−n−mN材料の特徴的な物理特性を実質的に変化させることのない追加の構成成分とを含んでいることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(Al、Ga、In、N)を含んでいるのみであり、これらの構成成分は、その一部を少量のさらなる物質によって置き換えることができる。
【0014】
AlGa1−xNから成る層は、アンドープ層とn型ドープ層との間に配置されていることが好ましい。
【0015】
アンドープ層とAlGa1−xNから成る層との間の界面に、特に高い横方向伝導度を有する領域が形成される。この領域の横方向伝導度が高いことは、各界面において伝導帯および価電子帯のバンド端の曲がりが発生することによりポテンシャル井戸が形成され、これらの井戸の中に、特に高い横方向伝導度を有する2次元電子ガスが発生するというバンドモデルにおいて説明することができる。
【0016】
AlGa1−xNから成る層とn型ドープ層との間の界面には、負の分極電荷が形成されることがあり、結果として、電子に対する障壁が形成され、この障壁は、電流拡散層における縦方向電流輸送に対して悪影響を及ぼすことがある。このような障壁は、AlGa1−xNから成る層におけるアルミニウム含有量の濃度勾配によって、2次元電子ガスにおける電荷キャリア密度を大幅に変化させることなく減少させることができる。さらには、アンドープ層とAlGa1−xNから成る層との間の界面と、AlGa1−xNから成る層とn型ドープ層との間の界面とに発生する歪みも、この濃度勾配によって減少する。
【0017】
AlGa1−xNから成る層は、活性層への方向に減少する、アルミニウム含有量の濃度勾配を有することが好ましい。
【0018】
このようにして構築される電流拡散層を理由として、アンドープ層とAlGa1−xNから成る層との間の界面に2次元電子ガスが形成され、この電子ガスによって電流拡散層の横方向伝導度が増大し、したがって、活性層への均一なキャリア注入が達成される。AlGa1−xNから成る層のアルミニウム含有量の濃度勾配(活性層に向かって減少する)によって、電流拡散層における縦方向電流輸送が良好になり、この結果として活性層へのキャリア注入が改良される。
【0019】
アルミニウム含有量の濃度勾配は、線形的に減少することが好ましい。これに代えて、アルミニウム含有量の濃度勾配は、段階的に減少することができる。
【0020】
電流拡散層は、積層体の少なくとも10個の繰り返しを有することが好ましく、特に好ましくは、電流拡散層は、積層体の少なくとも20個の繰り返しを有する。
【0021】
このようにして、電流拡散層には、アンドープ層とAlGa1−xNから成る層との間の界面が多数形成され、これらの界面には、バンドの曲がりに起因してそれぞれのポテンシャル井戸が形成され、これらの井戸の中に、高い横方向伝導度を有する2次元電子ガスが発生する。したがって、電流拡散層全体の横方向伝導度は、AlGa1−xNから成る層が1つのみ埋め込まれている電流拡散層と比較して、さらに増大する。
【0022】
さらには、アルミニウム含有量の濃度勾配を有する、AlGa1−xNから成る層が複数存在する結果として、電流拡散層全体における縦方向電流輸送が増大し、この結果として、全体としてLEDの効率が高まる。
【0023】
AlGa1−xNから成る層は、10nm〜20nmの間の厚さ、例えば12nmの厚さを有することが好ましい。
【0024】
AlGa1−xNから成る層におけるアルミニウム含有量xには、0.1≦x≦0.3が当てはまることが好ましい。AlGa1−xNから成る層におけるアルミニウムの割合xは、一例として、アンドープ層との界面において0.2である。
【0025】
このように、AlGa1−xNから成る層におけるアルミニウム含有量を、例えばアンドープ層との界面においてx=0.2と選択し、活性層に向かう方向に含有量が減少することによって、2次元電子ガスにおける電荷キャリア密度の望ましい増大と、AlGa1−xNから成る層とn型ドープ層との間の界面における縦方向電流輸送障壁の望ましくない増大との間で、最適な妥協点となる。全体として、LEDの効率が高まり、これは有利である。
【0026】
AlGa1−xNから成る層は、少なくとも部分的にドープされていることが好ましい。AlGa1−xNから成る層は、少なくとも部分的にSiドープされていることが好ましい。
【0027】
AlGa1−xNから成る層のうち、活性層の側にある部分領域がドープされており、AlGa1−xNから成る層のうち、活性層とは反対側の部分領域がドープされていないことが好ましい。
【0028】
2次元電子ガスにおける電子の移動度が高いことの主たる理由は、イオン化されたドーピング原子の拡散が低減するためである。2次元電子ガスは、アンドープ層とAlGa1−xNから成る層との間の界面に形成され、この場合、2次元電子ガスは、アンドープ層に集中して存在する。2次元電子ガスにおける電子の移動度は、AlGa1−xNから成る層のうち活性層とは反対側のアンドープ部分領域によってさらに高まり、なぜなら、イオン化されたドーピング原子の拡散がさらに減少するためである。結果として、横方向伝導度および電流拡散がさらに改良され、その結果としてLEDの効率が高まり、これは有利である。
【0029】
本LEDのさらなる特徴、利点、好ましい構造形態、および有用性は、以下に図1〜図3を参照しながら説明する例示的な実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるLEDの例示的な実施形態の概略的な断面を示している。
【図2】本発明によるLEDの電流拡散層の積層体の例示的な実施形態の概略的な断面を示している。
【図3】本発明によるLEDの電流拡散層の例示的な実施形態の概略的な断面における、アルミニウム含有量のプロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
同一の構成部分、または機能が同じである構成部分には、いずれの場合も同一の参照数字を付してある。図示した構成部分と、構成部分の互いのサイズの関係は、正しい縮尺ではないものとみなされたい。
【0032】
図1は、エピタキシャル積層体13を有する、本発明によるLEDの概略的な断面を示しており、このLEDは薄膜LEDとして具体化されていることが好ましい。薄膜LEDの場合には、LEDの積層体を上に形成させた(特に、堆積させた)製造基板を、部分的または完全に除去する。製造基板は、積層体を上にエピタキシャル成長させる成長基板であることが好ましい。
【0033】
LEDのエピタキシャル積層体13は、活性層7を有する。LEDの活性層7は、好ましくは、放射を発生させるためのpn接合、ダブルへテロ構造、多重量子井戸構造(MQW)、または特に好ましくは単一量子井戸構造(SQW)を備えている。本出願においては、量子井戸構造という表現は、具体的には、閉じ込めの結果として電荷キャリアにおいてエネルギー状態の量子化が起こりうる任意の構造を含んでいる。特に、量子井戸構造という表現は、量子化の次元について何らかの指定を行うものではない。したがって、量子井戸構造は、特に、量子井戸、量子細線、量子ドットおよびこれらの構造の任意の組合せを包含する。
【0034】
活性層7は、例えば、p型ドープ半導体層8と、n型ドープ接合層6との間に配置されている。本LEDのp型ドープ半導体層8は、単一の層ではないものと理解されたい。そうではなく、p型ドープ半導体層8は、同様にp型にドープされた積層体から構成することができる。
【0035】
n型ドープ接合層6には、一例として、例えばGaNから成るn型ドープ層5が隣接している。GaNから成るn型ドープ層5の上には電流拡散層4が配置されており、電流拡散層4の上には、一例として、例えばGaNから成る第2のn型ドープ層3が形成されていることが好ましい。第2のn型ドープ層3の上には、n型コンタクト10が配置されていることが好ましい。
【0036】
n型コンタクト10は、良好な電流拡散を得る目的で、ボンディングパッド、もしくは、ボンディングパッドに電気的に接続されている複数のコンタクトウェブ(contact web)、またはその両方を備えていることができる。ボンディングパッドに導電接続されている複数のコンタクトウェブを有する編成構造によって、LEDにおける比較的均一な電流分布を達成することが可能である。
【0037】
エピタキシャル積層体13は、n型コンタクト10とは反対側の面において、接続層12(例えばはんだ層)によってキャリア1の上に固定されている。このキャリアの裏側には、例えば電極2を設けることができる。
【0038】
n型コンタクト10およびp型コンタクト9は、LEDのエピタキシャル積層体13との電気的な接触を形成する目的で設けられている。p型コンタクト9は、キャリア1の側のエピタキシャル積層体13の面に隣接しており、この場合、p型コンタクト9は、隣接しているエピタキシャル積層体13とのオーミック接触を形成することが好ましい。p型コンタクト9は、好ましくは、活性層7によって放出される放射を反射する層とすることができる。このようにして、例えば、キャリア1の中または接続層12において生じうる吸収損失が低減する。
【0039】
p型コンタクト9と接続層12との間には、バリア層11が含まれていることが好ましく、このバリア層は、例えばTiWNを含んでいる。バリア層11は、特に、接続層12の材料がp型コンタクト9の中に拡散することを防止し、拡散は、特に、ミラー層として機能するp型コンタクト9の反射を阻害しうる。
【0040】
本LEDは、窒化物化合物半導体をベースとしていることが好ましい。これに関して、「窒化物化合物半導体をベースとしている」とは、活性エピタキシャル積層体またはその少なくとも1つの層が、III−V族窒化物化合物半導体材料、好ましくはAlGaIn1−n−mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を備えていることを意味する。この場合、この材料は、上の化学式による数学的に正確な組成を有する必要はない。そうではなく、この材料は、1つまたは複数のドーパントと、AlGaIn1−n−mN材料の特徴的な物理特性を実質的に変化させることのない追加の構成成分とを含んでいることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(Al、Ga、In、N)を含んでいるのみであり、これらの構成成分は、その一部を少量のさらなる物質によって置き換えることができる。
【0041】
電流拡散層4は、LEDのn型ドープ側に位置していることが好ましい。電流拡散層4は、2つのn型ドープ層3,5の間に配置されていることが好ましく、これらの層3,5は、例えばGaNを含んでおり、いずれもSiドープされていることが好ましい。
【0042】
電流拡散層4は、積層体の複数個の繰り返しを有する。電流拡散層4は、積層体の少なくとも10個の繰り返しを有することが好ましく、特に好ましくは、電流拡散層4は、積層体の少なくとも20個の繰り返しを有する。
【0043】
図2は、電流拡散層の積層体の概略的な断面の詳細な構造を示している。
【0044】
この積層体は、例えばGaNから成るn型ドープ層41と、例えばGaNから成る、隣接するアンドープ層42とを有する。GaNから成るアンドープ層42には、AlxGa1−xN(0<x<1)から成る層43が隣接していることが好ましい。AlxGa1−xNから成る層43は、アンドープ部分領域43aとドープされた部分領域43bとから成ることが好ましく、AlxGa1−xNから成る層43のドープされた部分領域43bは、活性層7の側にある。AlxGa1−xNから成る層43には、例えばGaNから成る第2のn型ドープ層44が隣接している。
【0045】
このようにして構築される電流拡散層4を理由として、GaNから成るアンドープ層42とAlGa1−xNから成る層43との間の界面に2次元電子ガスが形成される。2次元電子ガスが形成される結果として、電流拡散層4の横方向伝導度が上昇し、これは有利である。電流拡散層4の横方向伝導度が上昇することは、活性層7への均一なキャリア注入につながり、これによってLEDの効率が高まり、これは有利である。
【0046】
横方向伝導度が高いことは、各界面に伝導帯および価電子帯のバンド端の曲がりが発生することによってポテンシャル井戸が形成され、これらの井戸の中に、特に高い横方向伝導度を有する2次元電子ガスが発生するというバンドモデルにおいて説明することができる。
【0047】
電流拡散層4は、図2に示したような積層体の少なくとも10個の繰り返しを有することが好ましい。特に好ましくは、電流拡散層4は、積層体の少なくとも20個の繰り返しを有する。
【0048】
このようにして、電流拡散層4には、GaNから成るアンドープ層42とAlGa1−xNから成る層43との間の界面が多数形成され、これらの界面には、バンドの曲がりに起因してそれぞれのポテンシャル井戸が形成され、これらの井戸の中に、高い横方向伝導度を有する2次元電子ガスが発生する。したがって、電流拡散層全体の横方向伝導度は、AlGa1−xNから成る層43が1つのみ埋め込まれている電流拡散層と比較して、さらに増大する。
【0049】
AlGa1−xNから成る層43は、部分領域43bにおいてドープされていることが好ましい。部分領域43bは、Siドープされていることが好ましい。
【0050】
AlGa1−xNから成る層43のうち、活性層7とは反対側の部分領域43aは、ドープされていないことが好ましい。
【0051】
2次元電子ガスにおける電子の移動度が高いことの主たる理由は、イオン化されたドーピング原子の拡散が低減するためである。2次元電子ガスは、GaNから成るアンドープ層42と、AlGa1−xNから成る層43との間の界面に形成され、この場合、2次元電子ガスは、GaNから成るアンドープ層42に集中して存在する。2次元電子ガスにおける電子の移動度は、AlGa1−xNから成る層43のうち活性層7とは反対側のアンドープ部分領域43aによってさらに高まり、なぜなら、イオン化されたドーピング原子の拡散がさらに減少するためである。結果として、横方向伝導度および電流拡散がさらに改良され、その結果としてLEDの効率が高まり、これは有利である。
【0052】
AlGa1−xNから成る層43と、GaNから成る第2のn型ドープ層44との間の界面には、負の分極電荷が形成されることがあり、結果として、電子に対する障壁が形成され、この障壁は、電流拡散層4における縦方向電流輸送に対して悪影響を及ぼすことがある。この障壁の形成は、AlGa1−xNから成る層43におけるアルミニウム含有量の濃度勾配によって、2次元電子ガスにおける電荷キャリア密度を大幅に変化させることなく防止することができる。さらには、GaNから成るアンドープ層42と、AlGa1−xNから成る層43との間の界面と、AlGa1−xNから成る層43と、GaNから成る第2のn型ドープ層44との間の界面とに発生する歪みも、この濃度勾配によって減少する。
【0053】
図3は、電流拡散層4の積層体におけるアルミニウム含有量のプロファイルを示している。図3は、左から右に見たとき、GaNから成るn型ドープ層41、GaNから成るアンドープ層42、AlGa1−xNから成る層43、GaNから成る第2のn型ドープ層44、を示している。
【0054】
AlGa1−xNから成る層43は、活性層7への方向に減少する、アルミニウム含有量の濃度勾配を有する。アルミニウム含有量の濃度勾配は、線形的に減少することが好ましい。これに代えて、アルミニウム含有量の濃度勾配は、段階的に減少することができる。
【0055】
AlGa1−xNから成る層43のアルミニウム含有量の濃度勾配によって、電流拡散層4における縦方向電流輸送が向上する。さらには、これによって、個々の層の間の界面における歪みが減少する。このことは、LEDの劣化の低減につながり、この結果として、LEDの長期的な安定性および寿命が増大し、これは有利である。
【0056】
全体として、このように形成されている電流拡散層4を理由として、2次元電子ガスが形成される結果として高い横方向伝導度がもたらされ、それと同時に、AlGa1−xNから成る層43におけるアルミニウム含有量の濃度勾配の結果として、電流拡散層4における縦方向電流輸送が最適化される。
【0057】
AlGa1−xNから成る層43におけるアルミニウム含有量xには、0.1≦x≦0.3が当てはまることが好ましい。特に好ましくは、AlGa1−xNから成る層43におけるアルミニウムの割合xは、GaNから成るアンドープ層42との界面Aにおいて0.2である。
【0058】
このように、AlGa1−xNから成る層43におけるアルミニウム含有量を、例えば、GaNから成るアンドープ層42との界面Aにおいてx=0.2と選択し、活性層7に向かう方向に含有量が減少することによって、2次元電子ガスにおける電荷キャリア密度の望ましい増大と、AlGa1−xNから成る層43と、GaNから成る第2のn型ドープ層44との間の界面における縦方向電流輸送障壁の望ましくない増大との間で、最適な妥協点となる。全体として、LEDの効率が高まり、これは有利である。
【0059】
電流拡散層4の積層体は、例えば以下に示す層厚さを有する個々の層から構成される。
【0060】
GaNから成るn型ドープ層41は、約15nmの厚さd41を有することが好ましい。GaNから成るアンドープ層42(2次元電子ガスは主としてこの層に形成される)は、約10nmの厚さd42を有することが好ましい。AlGa1−xNから成る層43は、約12nmの厚さd43を有することが好ましく、この場合、ドープされた部分領域43bは、約8nmの厚さd43bを有する。この部分領域には、好ましくは約13nmの厚さd44を有する、GaNから成る第2のn型ドープ層44が隣接している。したがって、全体として電流拡散層4の積層体の好ましい厚さdは、約50nmとなる。したがって、好ましくは20個の積層体から成る電流拡散層4の層厚さは、約1μmとなる。
【0061】
上述した層に加えて、本LEDは、例えば、バッファ層、バリア層、接合層のうちの1つ以上を含んでいることができる。さらには、LEDの個々の層は異なるドーピング処理を有することができる。
【0062】
ここまで、本発明によるLEDについて例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に制限されないものと認識されたい。本発明は、任意の新規の特徴と、特徴の任意の組合せ(特に、特許請求項における特徴の任意の組合せを含む)を包含しており、これらの特徴および組合せは、それ自体が特許請求項または例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合でも本発明に含まれる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射を放出する活性層(7)と、n型コンタクト(10)と、p型コンタクト(9)と、電流拡散層(4)と、を有するLEDであって、
− 前記電流拡散層(4)が前記活性層(7)と前記n型コンタクト(10)との間に配置されており、
− 前記電流拡散層(4)が積層体の複数の繰り返しを有し、
− 前記積層体が、少なくとも1つのn型ドープ層(44)と、アンドープ層(42)と、AlGa1−xN(0<x<1)から成る層(43)と、を有し、
− AlGa1−xNから成る前記層(43)がAl含有量の濃度勾配を有する、
LED。
【請求項2】
AlGa1−xNから成る前記層(43)が前記アンドープ層(42)と前記n型ドープ層(44)との間に配置されている、請求項1に記載のLED。
【請求項3】
AlGa1−xNから成る前記層(43)が、前記活性層(7)への方向に減少するAl含有量の濃度勾配、を有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載のLED。
【請求項4】
前記Al含有量の前記濃度勾配が線形的に減少する、請求項3に記載のLED。
【請求項5】
前記Al含有量の前記濃度勾配が段階的に減少する、請求項3に記載のLED。
【請求項6】
前記電流拡散層(4)が、前記積層体の11以上の繰り返しを有する、請求項1から請求項5のいずれかに記載のLED。
【請求項7】
AlGa1−xNから成る前記層(43)が、10nm〜20nmの間の厚さを有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載のLED。
【請求項8】
AlGa1−xNから成る前記層(43)における前記アルミニウム含有量xに、0.1≦x≦0.3が当てはまる、請求項1から請求項7のいずれかに記載のLED。
【請求項9】
AlGa1−xNから成る前記層(43)が少なくとも部分的にドープされている、請求項1から請求項8のいずれかに記載のLED。
【請求項10】
AlGa1−xNから成る前記層(43)が少なくとも部分的にSiドープされている、請求項9に記載のLED。
【請求項11】
AlGa1−xNから成る前記層(43)のうち、前記活性層(7)の側にある部分領域(43b)、がドープされている、請求項9から請求項10のいずれかに記載のLED。
【請求項12】
AlGa1−xNから成る前記層(43)のうち、前記活性層(7)とは反対側の部分領域(43a)、がドープされていない、請求項1から請求項11のいずれかに記載のLED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−505070(P2011−505070A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535206(P2010−535206)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001882
【国際公開番号】WO2009/067983
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】