説明

電源供給装置

【課題】トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極との間の電圧変化がトランジスタ素子のオープン故障又は過電流のどちらによるものなのかを正確に判定すること。
【解決手段】制御回路50は、抵抗素子Rを流れる電流値を検出し、過電流検出回路40によって検出された電圧値が所定値以上である場合、電流値が第1判定値以上であるか否かを判別し、電流値が第1判定値以上である場合、トランジスタ素子Tのオープン故障が発生したと判定し、電流値が第1判定値未満である場合には、過電流が発生したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている電装品を過電流から保護するための過電流保護機能を備える電源供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている電装品にワイヤーハーネスを介して電力を供給する電源供給装置には、ワイヤーハーネスや電装品を過電流による焼損等から保護するために、ヒューズを用いた過電流保護回路が設けられている。ヒューズを用いた過電流保護回路では、過電流が発生した場合、溶断したヒューズの交換等の整備を行う必要がある。このため、ヒューズを用いた過電流保護回路の設置場所が限定され、しいてはワイヤーハーネスレイアウトの自由度が低くなる。また、従来の電源供給装置には、スイッチング素子としてリレーが多く用いられているが、サイズや部品発熱が大きく装置に大型化に繋がるといった課題があった。
【0003】
そこで、近年、ヒューズやリレーの代わりにトランジスタ素子を用いた過電流保護回路が提案されている(特許文献1参照)。この過電流保護回路は、電源と電装品との間に接続されたトランジスタ素子を備え、トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極との間の電圧変化に基づいて過電流が発生したか否かを判定する。そして、過電流保護回路は、過電流が発生したと判定した場合、トランジスタ素子をオフすることによって電源と電装品との間の接続を遮断することにより、電装品を過電流から非破壊で保護する。このような過電流保護回路によれば、過電流が発生した場合であってもトランジスタ素子の整備を行う必要がない。従って、トランジスタ素子を用いた過電流保護回路を備えた電源供給装置は、設置場所が限定されることなく、ワイヤーハーネスレイアウトの自由度が高くなる。また、トランジスタ素子の小型・低損失化によって装置の小型化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−142146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トランジスタ素子がオン状態であるときにトランジスタ素子にオープン故障が発生した場合、ソース電極とドレイン電極との間の電圧が変化する。しかしながら、従来の過電流保護回路は、ソース電極とドレイン電極との間の電圧変化に基づいて過電流が発生したか否かを判定する構成になっている。このため、従来の過電流保護回路によれば、トランジスタ素子のオープン故障によってソース電極とドレイン電極との間の電圧が変化したのにも係わらず、過電流が発生したと誤判定してしまうことがある。
【0006】
一般に、トランジスタ素子にオープン故障が発生した場合と過電流が発生した場合とでは、その後に行う作業内容が異なる。具体的には、トランジスタ素子にオープン故障が発生した場合、トランジスタ素子や電源供給装置の交換等の作業が行われるのに対し、過電流が発生した場合には、電気配線の点検等の作業が行われる。このため、ソース電極とドレイン電極との間の電圧が変化した原因がオープン故障と過電流とのどちらであるのかを正確に判定することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極との間の電圧変化がトランジスタ素子のオープン故障又は過電流のどちらによるものなのかを正確に判定可能な電源供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源供給装置は、電源と、電源と電源からの電力によって駆動される負荷との間に接続され、電源から負荷への電力供給を制御するトランジスタ素子と、トランジスタ素子のゲート電極に接続された抵抗素子と、トランジスタ素子のゲート電極とソース電極との間に接続されたツェナーダイオード素子と、抵抗素子を介してトランジスタ素子のゲート電極に駆動電圧を印加することによって、トランジスタ素子のオン/オフを制御する制御回路と、トランジスタ素子のドレイン電極とソース電極との間の電圧を検出する過電流検出回路と、を備え、制御回路は、抵抗素子を流れる電流値を検出し、過電流検出回路によって検出された電圧値が所定値以上である場合、電流値が第1判定値以上であるか否かを判別し、電流値が第1判定値以上である場合、トランジスタ素子のオープン故障が発生したと判定し、電流値が第1判定値未満である場合には、過電流が発生したと判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電源供給装置によれば、トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極との間の電圧変化がトランジスタ素子のオープン故障又は過電流のどちらによるものなのかを正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態である電源供給装置の構成を示す回路図である。
【図2】図2は、図1に示す電源保護装置の動作を説明するための波形図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態である故障検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態である電源供給装置の構成を示す回路図である。
【図5】図5は、図4に示す電源保護装置の動作を説明するための波形図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態である故障検出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態である電源供給装置の構成及び動作について説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態である電源供給装置の構成及び動作について説明する。
【0013】
〔電源供給装置の構成〕
図1は、本発明の第1の実施形態である電源供給装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態である電源供給装置1は、車両に搭載され、電源2と負荷3との間に接続されたトランジスタ素子Tをオン/オフすることによって、電源2から負荷3への電力供給を制御するものである。本実施形態では、トランジスタ素子Tは、Nチャネル型FETによって構成されている。トランジスタ素子Tのドレイン電極には、コネクタC1を介して電源2が接続され、ソース電極には、コネクタC2を介して負荷3が接続されている。
【0014】
電源供給装置1は、昇圧回路10,スイッチング回路20,故障検出回路30,過電流検出回路40,及び制御回路50を備える。昇圧回路10は、電気配線L1を介して電源2に接続され、電源2から供給される電源電圧を所定電圧に昇圧することによってトランジスタ素子Tの駆動電圧を生成する。スイッチング回路20は、昇圧回路10とトランジスタ素子Tのゲート電極との間に接続され、図示しない複数のトランジスタ素子によって構成されている。スイッチング回路20は、制御回路50からの制御信号に従って図示しない複数のトランジスタ素子をオン/オフすることによって、電気配線L2を介してトランジスタ素子Tのゲート電極に駆動電圧を印加する。
【0015】
故障検出回路30は、電気配線L2に接続された抵抗素子Rと、抵抗素子Rの正極側のノードN1とGND(接地)電位とを接続する電気配線L3に配設された抵抗素子R1及び定電圧源31と、抵抗素子Rの負極側のノードN2とGND電位とを接続する電気配線L4に配設された抵抗素子R2と、比較器32とを備える。比較器32の非反転入力(+)端子は、抵抗素子R3を介して抵抗素子R1と定電圧源32との間のノードN3に接続されている。比較器32の反転入力(−)端子は、抵抗素子R4を介して抵抗素子R2の正極側に接続されている。比較器32の出力端子は、制御回路50の入力ポートP1に接続されている。
【0016】
比較器32の非反転入力端子には、定電圧源31から供給される比較電圧Vth_nが入力される。比較器32の反転入力(−)端子には、トランジスタ素子Tのゲート電極に印加されるゲートバイアス電圧Vが入力される。比較器32は、ゲートバイアス電圧Vと比較電圧Vth_nとの大小関係を比較し、比較結果に基づいて出力端子を介してハイレベル又はローレベルの検出信号を制御回路50に入力する。定電圧源31から供給される比較電圧Vth_nは、制御回路50のD/A出力ポートP2から出力される制御信号によって可変制御される。
【0017】
過電流検出回路40は、トランジスタ素子Tに対し並列に接続され、トランジスタ素子Tのドレイン電極とソース電極との間の電圧(以下、ソース・ドレイン電圧と表記)Vdsを検出する。過電流検出回路40は、ソース・ドレイン電圧Vdsが所定電圧以上である場合、過電流が検出されたことを示す制御信号を制御装置50に入力する。
【0018】
制御回路50は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置によって構成されている。制御回路50は、電源供給装置1全体の動作を制御する。具体的には、制御回路50は、昇圧回路10の昇圧電圧を制御する。制御回路50は、スイッチング回路20の動作を制御することによってトランジスタ素子Tのゲート電極への駆動電圧の供給/停止を制御することにより、トランジスタ素子Tのオン/オフを制御する。
【0019】
制御回路50は、D/A出力ポートP2を介して制御信号を出力することによって、定電圧源31が出力する比較電圧Vth_nの大きさを制御する。制御回路50は、入力ポートP1を介して比較器32から入力される検出信号に基づいて、トランジスタ素子Tの故障を検出する。制御回路50は、過電流検出回路40からの制御信号に応じてトランジスタ素子Tのオン/オフを制御する。
【0020】
抵抗素子Rの負極側の電気配線L2とトランジスタ素子Tのソース電極と負荷3とを接続する電気配線L5との間には、ツェナーダイオードZDと抵抗素子R5とが並列接続されている。すなわち、トランジスタ素子Tのゲート電極とソース電極との間には、ツェナーダイオードZDと抵抗素子R5とが並列接続されている。ツェナーダイオードZDは、電気配線L5から電気配線L2側への電流の流れを常時許容しつつ、所定のクランプ電圧が生じた場合に電気配線L2から電気配線L5側へのクランプ電流の流れを許容する。
【0021】
〔電源供給装置の動作〕
図2は、トランジスタ素子Tのオン/オフに応じたスイッチング回路20の出力電圧Vout,ゲートバイアス電流I,ゲートバイアス電圧V,及びソース電圧Vの変化を示す波形図である。ここで、スイッチング回路20の出力電圧Voutとは、スイッチング回路20から出力されるトランジスタ素子Tの駆動電圧を意味し、本実施形態では図1に示すノードN1の電圧値を示す。ゲートバイアス電流Iとは、トランジスタ素子Tのゲート電極に供給される電流を意味し、本実施形態では図1に示す抵抗素子Rを流れる電流を示す。ゲートバイアス電圧Vとは、トランジスタ素子Tのゲート電極に印加される電圧を意味し、本実施形態では図1に示すノードN2の電圧値を示す。ソース電圧Vとは、トランジスタ素子Tのソース電極の電圧を意味し、本実施形態では図1に示すノードN4の電圧値を示す。なお、図2では、トランジスタ素子Tの過渡的な動作に伴う波形の変化は図示を省略している。
【0022】
〔正常動作時〕
始めに、トランジスタ素子Tが正常である場合における電源供給装置1の動作について説明する。トランジスタ素子Tが正常である場合、図2(a)に示すように、時刻T=T1において制御回路50がトランジスタ素子Tをオフ状態からオン状態に切り替えることをスイッチング回路20に指示すると、図2(b)に示すようにスイッチング回路20の出力電圧Voutは駆動電圧Vout1まで増加する。これにより、図2(c)の実線L1に示すように、ゲートバイアス電流Iは電流I1まで増加し、図2(d)の実線L4に示すように、ゲートバイアス電圧Vはゲートバイアス電圧V1まで増加し、トランジスタ素子Tはオン状態になる。この結果、図2(e)の実線L6に示すように、ソース電圧Vはソース電圧V1まで増加し、電源2からの電力がトランジスタ素子Tを介して負荷3に供給される。
【0023】
〔オン故障予兆時〕
次に、トランジスタ素子Tにオン故障の予兆がある場合における電源供給装置1の動作について説明する。トランジスタ素子Tにオン故障の予兆がある場合、図2(b)に示すようにスイッチング回路20の出力電圧Voutが駆動電圧Vout1まで増加すると、ゲートバイアス電流Iにオン故障に由来するゲートリーク電流が加算されることによって、ゲートバイアス電流Iは、図2(c)の破線L2に示すように、正常動作時のゲートバイアス電流I1より大きいゲートバイアス電流I2まで増加する。なお、ゲートバイアス電圧V及びソース電圧Vはそれぞれ正常動作時のゲートバイアス電圧V1及びソース電圧V1程度まで増加する。
【0024】
〔トランジスタ素子のオープン故障時〕
次に、トランジスタ素子Tにオープン故障が発生した場合における電源供給装置1の動作について説明する。トランジスタ素子Tにオープン故障が発生した場合、スイッチング回路20の出力電圧Voutが駆動電圧Vout1まで増加してもトランジスタ素子Tがオン状態にならないため、図2(e)の一点鎖線L7に示すように、ソース電圧Vは接地電位(この場合、電圧ゼロ)に保持される。このため、ゲートバイアス電圧Vgは、図2(d)の一点鎖線L5に示すように、ゲートバイアス電圧V1,V2より大きいゲートバイアス電圧V2まで増加し、トランジスタ素子Tのゲート電極とソース電極との間に設けられたツェナーダイオードZDにクランプ電圧以上の電圧が印加されることによってクランプ電流が流れる。これにより、ゲートバイアス電流Igは、図2(c)の一点鎖線L3に示すように、ゲートバイアス電流I1,I2より大きいゲートバイアス電流I3まで増加する。
【0025】
〔過電流発生時〕
次に、過電流が発生した場合における電源供給装置1の動作について説明する。過電流が発生した場合、ゲートバイアス電圧Vが正常動作時のゲートバイアス電圧V1より若干低下するが、ゲートバイアス電流I及びソース電圧Vは変化しない。一方、トランジスタ素子のドレイン電極とソース電極との間の電圧は増加する。
【0026】
以上のように、この電源供給装置1では、電源供給装置1の動作状態に応じてゲートバイアス電流Iの値が大きく変化する。そこで、この電源供給装置1では、制御回路50が、以下に示す故障検出処理を実行することにより、ゲートバイアス電流Iの変化をゲートバイアス電圧Vの変化として比較器32により検出し、検出結果に基づいて電源供給装置1の動作状態を判定する。具体的には、制御回路50は、正常動作時、オン故障予兆時、及びトランジスタのオープン故障時それぞれについて予め設定された判定値に基づいて定電圧源31が出力する比較電圧Vth_nを変化させる。そして、制御回路50は、ゲートバイアス電圧Vと比較電圧Vth_nの大小関係に基づいて出力される比較器32からの検出信号に基づいて、電源供給装置1の動作状態が正常動作時、オン故障予兆時、トランジスタのオープン故障時、及び過電流発生時のいずれであるかを判定する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、この故障検出処理を実行する際の電源供給装置1の動作について説明する。
【0027】
〔故障検出処理〕
図3は、本発明の第1の実施形態である故障検出処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、故障検出処理はステップS1の処理に進む。
【0028】
ステップS1の処理では、制御回路50が、トランジスタ素子Tがオン状態であるか否かを判別する。判別の結果、トランジスタ素子Tがオフ状態である場合、制御回路50は、故障検出処理を終了する。一方、トランジスタ素子Tがオン状態である場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS2の処理に進める。
【0029】
ステップS2の処理では、過電流検出回路40が、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA以上であるか否かを判別する。過電流判定電圧VdsAは、本発明に係る所定値に対応する。判別の結果、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA以上である場合、過電流検出回路40は故障検出処理をステップS6の処理に進める。一方、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA未満である場合には、過電流検出回路40は故障検出処理をステップS3の処理に進める。
【0030】
ステップS3の処理では、制御回路50が、比較器32からの検出信号に基づいて、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより大きいか否かを判別する。ゲートバイアス電流IAは、電源供給装置1が正常動作している時のゲートバイアス電流I1より大きい任意の電流値であり、本発明に係る第2判定値に対応する。判別の結果、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより小さい場合、制御回路50は、故障検出処理をステップS4の処理に進める。一方、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより大きい場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS5の処理に進める。
【0031】
ステップS4の処理では、制御回路50が、トランジスタ素子Tは正常な動作状態にあると判定する。これにより、ステップS4の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0032】
ステップS5の処理では、制御回路50は、トランジスタ素子Tにオン故障の予兆があると判定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0033】
ステップS6の処理では、制御回路50が、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IBより大きいか否かを判別する。ゲートバイアス電流IBは、電源供給装置1が正常動作している時のゲートバイアス電流I1より大きい任意の電流値であり、本発明に係る第1判定値に対応する。ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IBより大きい場合、制御回路50は、故障検出処理をステップS7の処理に進める。一方、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IBより小さい場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS8の処理に進める。
【0034】
ステップS7の処理では、制御回路50が、トランジスタ素子Tにオープン故障が発生していると判定する。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0035】
ステップS8の処理では、制御回路50は、過電流が発生していると判定する。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0036】
〔第2の実施形態〕
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の第2の実施形態である電源供給装置の構成及び動作について説明する。
【0037】
〔電源供給装置の構成〕
図4は、本発明の第2の実施形態である電源供給装置の構成を示す回路図である。図4に示すように、本発明の第2の実施形態である電源供給装置1は、第1の実施形態である電源供給装置の構成に加えて、電源2とトランジスタ素子Tとの間に接続されたダイオード素子D1を備える。ダイオード素子D1のアノード電極は電源2に接続され、カソード電極はトランジスタ素子Tのドレイン電極に接続されている。ダイオード素子D1は、トランジスタ素子Tにオープン故障が発生した場合に発生するトランジスタ素子Tのゲート電極側から電源2側への電流の流れを規制する。なお、本実施形態では、ダイオード素子によって電流を規制することとしたが、トランジスタ素子を設け、トランジスタ素子内部の寄生ダイオードによって電流を規制してもよい。
【0038】
〔電源供給装置の動作〕
図5は、トランジスタ素子Tのオン/オフに応じたスイッチング回路20の出力電圧Vout,ゲートバイアス電流I,ゲートバイアス電圧V,及びソース電圧Vの変化を示す波形図である。なお、正常動作時、トランジスタ素子Tのオン故障予兆時、トランジスタ素子Tのオープン故障時、及び過電流発生時における電源供給装置1の動作は第1の実施形態と同様である。そこで、以下ではその説明を省略し、電源供給装置1の出力オープン故障時における電源供給装置1の動作についてのみ説明する。
【0039】
〔出力オープン故障時〕
電源供給装置1に出力オープン故障が発生した場合、ゲートバイアス電流Iは抵抗素子R2を介して接地電位に流れるために、図5(c)の二点鎖線L11に示すように、ゲートバイアス電流Iは正常動作時のゲートバイアス電流I1より小さいゲートバイアス電流I4まで増加する。一方、ゲートバイアス電圧Vは正常動作時のゲートバイス電圧V1から大きく変化しないが、図5(e)の二点鎖線L12に示すように、ソース電圧Vは、正常動作時のソース電圧V1より大きいソース電圧V2まで増加する。
【0040】
このような構成を有する電源供給装置1では、制御回路50が、以下に示す故障検出処理を実行することによって、電源供給装置1の動作状態が正常動作時、オン故障予兆時、トランジスタのオープン故障時、出力オープン故障時、及び過電流発生時のいずれであるかを判定する。以下、図6に示すフローチャートを参照して、この故障検出処理を実行する際の電源供給装置1の動作について説明する。
【0041】
〔故障検出処理〕
図6は、本発明の第2の実施形態である故障検出処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、故障検出処理はステップS11の処理に進む。
【0042】
ステップS11の処理では、制御回路50が、トランジスタ素子Tがオン状態であるか否かを判別する。判別の結果、トランジスタ素子Tがオフ状態である場合、制御回路50は、故障検出処理を終了する。一方、トランジスタ素子Tがオン状態である場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS12の処理に進める。
【0043】
ステップS12の処理では、過電流検出回路40が、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA以上であるか否かを判別する。過電流判定電圧VdsAは、本発明に係る所定値に対応する。判別の結果、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA以上である場合、過電流検出回路40は故障検出処理をステップS18の処理に進める。一方、ソース・ドレイン電圧Vdsが過電流判定電圧VdsA未満である場合には、過電流検出回路40は故障検出処理をステップS13の処理に進める。
【0044】
ステップS13の処理では、制御回路50が、比較器32からの検出信号に基づいて、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより大きいか否かを判別する。ゲートバイアス電流IAは、電源供給装置1が正常動作している時のゲートバイアス電流I1より大きい任意の電流値であり、本発明に係る第2判定値に対応する。判別の結果、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより小さい場合、制御回路50は、故障検出処理をステップS14の処理に進める。一方、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流IAより大きい場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS17の処理に進める。
【0045】
ステップS14の処理では、制御回路50が、比較器32からの検出信号に基づいて、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流ICより小さいか否かを判別する。ゲートバイアス電流ICは、電源供給装置1が正常動作している時のゲートバイアス電流I1より小さい任意の電流値であり、本発明に係る第3判定値に対応する。判別の結果、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流ICより小さい場合、制御回路50は、故障検出処理をステップS16の処理に進める。一方、ゲートバイアス電流Iがゲートバイアス電流ICより大きい場合には、制御回路50は、故障検出処理をステップS15の処理に進める。
【0046】
ステップS15の処理では、制御回路50が、トランジスタ素子Tは正常な動作状態にあると判定する。これにより、ステップS15の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0047】
ステップS16の処理では、制御回路50は、出力オープン故障が発生したと判定する。これにより、ステップS16の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。
【0048】
ステップS17の処理では、制御回路50は、トランジスタ素子Tにオン故障の予兆があると判定する。これにより、ステップS17の処理は完了し、一連の故障検出処理は終了する。なお、ステップS18〜ステップS20の処理は、図3に示すフローチャートにおけるステップS6〜ステップS8の処理と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 電源供給装置
2 電源
3 負荷
10 昇圧回路
20 スイッチング回路
30 故障検出回路
31 定電圧源
32 比較器
40 過電流検出回路
50 制御回路
C1,C2 コネクタ
L1,L2,L3,L4,L5 電気配線
R,R1,R2,R3,R4,R5 抵抗素子
T トランジスタ素子
ZD ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源と該電源からの電力によって駆動される負荷との間に接続され、該電源から該負荷への電力供給を制御するトランジスタ素子と、
前記トランジスタ素子のゲート電極に接続された抵抗素子と、
前記トランジスタ素子のゲート電極とソース電極との間に接続されたツェナーダイオード素子と、
前記抵抗素子を介して前記トランジスタ素子のゲート電極に駆動電圧を印加することによって、該トランジスタ素子のオン/オフを制御する制御回路と、
前記トランジスタ素子のドレイン電極とソース電極との間の電圧を検出する過電流検出回路と、を備え、
前記制御回路は、前記抵抗素子を流れる電流値を検出し、前記過電流検出回路によって検出された電圧値が所定値以上である場合、該電流値が第1判定値以上であるか否かを判別し、該電流値が第1判定値以上である場合、前記トランジスタ素子のオープン故障が発生したと判定し、該電流値が第1判定値未満である場合には、過電流が発生したと判定することを特徴とする電源供給装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記過電流検出回路によって検出された電圧値が所定値未満である場合、前記電流値が第2判定値以上であるか否かを判別し、前記電流値が第2判定値以上である場合、前記トランジスタ素子にオン故障の予兆があると判定することを特徴とする請求項1に記載の電源供給装置。
【請求項3】
前記電源と前記トランジスタ素子との間に接続され、該トランジスタ素子側から該電源側への電流の流れを規制する逆流防止回路を備え、
前記制御回路は、前記電流値が第2判定値未満である場合、該電流値が該第2判定値より小さい第3判定値未満であるか否かを判別し、該電流値が第3判定値未満である場合、出力オープン故障が発生していると判定することを特徴とする請求項2に記載の電源供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182066(P2011−182066A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42277(P2010−42277)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】