説明

電源装置

【課題】コンデンサ容量を更に低減することで一層のコンデンサの小型化および低コスト化が実現できる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、整流回路12と平滑コンデンサ13とを備え交流電源40から供給される交流電力から直流電力を生成してファンモータ20に供給する直流電源部と、ファンモータ20に加わる直流電圧を検出する電圧検出手段14と、電圧検出手段14で検出した直流電圧を取り込んでファンモータ20の駆動制御を行う制御手段11と、整流回路12の出力側に並列に接続され制御手段11や外部負荷30に直流電力を供給するスイッチング電源15と、制御手段11により開閉制御されることでスイッチング電源15から外部負荷30への駆動電力の供給を開始もしくは停止する開閉手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に係わり、特に、モータに電力供給を行う電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な電気機器に搭載され、電気機器に備えられたモータや表示手段等といった各種装置や電気機器を運転制御する制御手段に駆動電力を供給する電源装置では、商用電源等の交流電源からの瞬間的な電力供給の遮断(以下、瞬断と記載する)が発生した場合に備えて、様々な対策が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、電気機器に備えられた直流ブラシレスモータに駆動電力を供給する電源装置であって、直流ブラシレスモータ駆動用の直流電圧を検出し、検出した直流電圧が所定値(以下、所定電圧と記載)以下となった場合に瞬断が発生したと判断し、制御手段以外の各種装置への電力供給を停止するものが提案されている。この電源装置では、電源装置に備えられたコンデンサの充電電圧の低下をできる限り抑えることで、瞬断により制御手段へ供給する直流電圧が低下して制御手段がリセットされることをできる限り遅らせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−296154号公報(第4〜5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源装置における瞬断検知方法では、瞬断を検知するための所定電圧が、直流ブラシレスモータ駆動用の直流電圧に近い値であればあるほど瞬断の検知が早く行える。瞬断の検知が早く行えれば、各種装置への電力供給の遮断を早く行えるので、瞬断発生後の早い段階で各種装置での電力消費量を低減でき、コンデンサの充電電圧の低下を遅らせることができる。これにより、コンデンサ容量の低減ができてコンデンサの小型化および低コスト化が実現できる。
【0006】
一方、検出する直流ブラシレスモータ駆動用の直流電圧には、直流ブラシレスモータの回転数に対応したリップル電圧が重畳される。リップル電圧は、直流ブラシレスモータの回転数に応じてその振幅が変化し、一般的には、直流ブラシレスモータの回転数が高いほどリップル電圧の振幅も大きくなる。
【0007】
以上の点から、交流電源の瞬断を検知する際は、リップル電圧の下限値を検出して瞬断と誤判断しないよう、上記所定電圧は、直流ブラシレスモータの最大回転数時のリップル電圧の振幅を考慮してこのときのリップル電圧の下限値より低い値とする必要があり、これに起因したコンデンサの容量の低減に限界が存在した。つまり、更なるコンデンサの小型化および低コスト化が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は以上述べた問題点を解決し、コンデンサ容量を更に低減することで一層のコンデンサの小型化および低コスト化が実現できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するものであって、本発明の電源装置は、整流回路とコンデンサとを備え交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して電動機に供給する直流電源部と、コンデンサの両端の直流電圧を検出する電圧検出手段と、制御手段とを備え、電動機の回転制御を行うものであって、制御手段は、電動機の回転数に対応させた所定電圧を予め記憶し、電圧検出手段から取り込んだ直流電圧が、電動機の回転数に対応する所定電圧以下となれば、交流電源からの電力供給が遮断されたと判断するものである。そして、電源装置には、整流回路の出力側に並列に接続され制御手段と外部負荷とに直流電力を供給する電力供給部と、制御手段により開閉制御されることで電力供給部から外部負荷へ直流電力を供給もしくは供給停止する開閉手段とをさらに備え、制御手段は、交流電源からの電力供給が遮断されたと判断すれば、開閉手段を開として電力供給部から外部負荷への直流電力の供給を停止するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電源装置は、交流電源からの電力供給の遮断を判断する際の所定電圧を複数備えている。電動機では、回転数に応じた回生電流が発生し回転数が高いほど生じる回生電流も大きくなる。本発明では電動機で発生する回生電流によりコンデンサが充電されることに着目し、回転数に応じて停電検知を行う閾値である所定電圧を定めている。制御手段は、電圧検出手段から取り込んだ直流電圧が電動機の回転数毎に定められた所定電圧以下であれば、交流電源での瞬断が発生したと判断して電力供給部から外部負荷への直流電力の供給停止を行うので、制御手段へ供給される直流電圧の低下に起因する制御手段のリセットをできる限り遅らせ、かつ、コンデンサの容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例である電源装置の電気的な構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施例における、瞬断検知の所定電圧を説明する図であり、(A)はファンモータの回転数が低い場合、(B)ファンモータの回転数が高い場合、(C)はファンモータの回転数による違い、を示している。
【図3】本発明の実施例における、制御手段に記憶された停電判断電圧テーブルである。
【図4】本発明の実施例に係る制御手段での処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、脱臭機に備えられた電源装置であって、脱臭機の送風ファンを回転するファンモータや、イオン発生装置や紫外線照射装置等といった複数の電気装置に電力を供給する電源装置を例に挙げて説明する。
尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、本発明の電源装置1は、整流回路12と、コンデンサ13と、電圧検出手段14と、電力供給手段であるスイッチング電源15と、開閉手段であるスイッチ16と、制御手段11とを備えている。
【0014】
整流回路12は、入力端に交流電源40が接続され、出力端に駆動回路21が接続されている。整流回路12は、交流電源40から供給される交流電圧を整流して脈流電圧を得る回路であり、主にブリッジダイオードで構成されている。尚、駆動回路21は、電動機であるファンモータ20(例えば、直流ブラシレスモータであり、出力軸に図示しない送風ファンが取り付けられている)を、制御手段11の指示に応じて駆動する回路である。
【0015】
コンデンサ13は、整流回路12と駆動回路21とを接続する2本の接続ラインに両端が接続されることにより、整流回路12の出力端や駆動回路21の入力端に並列接続されている。コンデンサ13は、整流回路12で整流された脈流電圧を平滑する。
【0016】
電圧検出手段14は、例えば2個以上の抵抗素子が直列接続されて形成されており、整流回路12と駆動回路21とを接続する2本の接続ラインに両端が接続されることにより、整流回路12の出力端や駆動回路21の入力端に並列接続されている。電圧検出手段14は、コンデンサ13両端の直流電圧を抵抗素子で分圧し、その分圧値を制御手段11に出力する。
【0017】
スイッチング電源15は、入力端が交流電源40と整流回路12の入力端とを接続する2本の接続ラインに両端が接続されることにより、整流回路12に並列接続されている。また、スイッチング電源15の出力端には、制御手段11やスイッチ16を介して外部負荷である負荷30が接続されている。スイッチング電源15は、MOS−FET等のスイッチング素子やトランス、ダイオード等で構成されており、制御手段11によってその動作が制御される。スイッチング電源15は、交流電源40から交流電圧を入力し、これを所定の直流電圧に変換して出力端に接続された制御手段11や負荷30に供給する。
【0018】
スイッチ16は、図示しない駆動コイルに電力が供給/遮断されることによって開閉するものであり、一端がスイッチング電源15の出力端に、他端が負荷30に接続されている。スイッチ16の開閉によりスイッチング電源15から負荷30への直流電圧の供給/供給停止が行われる。
尚、負荷30は、脱臭機に備えられたファンモータ20以外の複数の電気装置であり、例えば、イオン発生装置、紫外線照射装置、使用者に運転状態や設定状態を表示する表示装置等である。
【0019】
制御手段11は、ROMやRAM等で構成される記憶部を有し、使用者が指示した運転情報や図示しない各種センサから入力される検知情報に対応して電源装置1を制御する。具体的には、制御手段11は、上述したようにスイッチング電源15を制御するとともに、電圧検出手段14から取り込んだ直流電圧に応じて駆動回路21の制御を行う。また、制御手段11は、スイッチ16の開閉制御を行うことで、スイッチング電源15から負荷30への直流電圧の供給/供給停止を制御する。また、詳細な説明は省略するが、制御手段11は、使用者が指示した運転情報や図示しない各種センサから入力される検知情報に対応して、脱臭機の運転に関わる制御、例えば、イオン発生装置や紫外線照射装置の運転制御を行う。
【0020】
尚、本実施例では、制御手段11が電源装置1に関わる制御以外に、上述したように脱臭機の運転に関わる制御も行うものとして説明するが、これに限るものではなく、電源装置1を制御する制御手段とは別に脱臭機の運転に関わる制御を行う制御手段を設けてもよい。また、電源装置1の外部に備えられ脱臭機の運転に関わる制御を行う制御手段が電源装置1の制御も行うようにしてもよい。
また、電力供給手段としてスイッチング電源15を使用しているが、これに限るものではなく、例えば、トランスを使用して所望の電圧に昇圧あるいは降圧して制御手段11や負荷30に供給してもよい。
【0021】
次に、図1乃至図3を使用して、本実施例の電源装置1における、交流電源40からの電力供給の遮断を判断する際の原理と動作を説明する。図2は、交流電源40からの電力供給が瞬間的に遮断された(瞬断が発生した)際の、電圧検出手段14で検出する検出電圧Vmの時間的な変化を表したものである。図2(A)〜(C)の各図において、Vr1およびVr2は、ファンモータ20の回転に起因して検出電圧Vmに重畳されるリップル電圧であり、Vr1<Vr2である。また、Vs、Vs1、Vs2は制御手段11が瞬断発生を検知するための閾値となる所定電圧である停電判断電圧であり、Vs1およびVs2は上述したVr1およびVr2に対応して定められた値(Vs1>Vs2)である。また、Veはスイッチング電源15から制御手段11に供給される電圧が制御手段11の駆動電圧を下回る検出電圧Vm(以下、リセット電圧と記載する)の値であり、検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となれば、制御手段11は停止する(リセットされる)。尚、以下の説明では、一般的な停電判断電圧の説明を行う場合は、単にVsとして説明する。
【0022】
瞬断が発生した場合、コンデンサ13の充電電圧は、ファンモータ20やスイッチング電源15に供給されることによって時間とともに低下する。従って、コンデンサ13両端の電圧つまりはコンデンサ13の充電電圧である検出電圧Vmは、例えば図2(A)の線43aおよび破線44aで示すように、コンデンサ13の容量や負荷30の抵抗分に対応した時定数に従って低下する。上述したように、この検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となれば、スイッチング電源15を介して制御手段11に供給される直流電圧も低下して制御手段11がリセットされる。
【0023】
制御手段11がリセットされると、点42aで交流電源40からの電力供給が復帰して制御手段11に再び直流電圧が加えられた際、瞬断発生前に設定されていた脱臭機の運転条件や電源装置1の設定条件等が全てリセットされ初期設定状態となるため、再度使用者が運転条件を設定する等といった手間が発生する。これを防ぐためには、瞬断発生中の制御手段11への電圧供給ができるだけ途絶えないように、つまりは、コンデンサ13の容量を大きくして充電量を多くすることでコンデンサ13からの放電時間を長くし、検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となるのをできる限り遅くする必要があるため、コンデンサ13の大容量化に起因してコンデンサ13の大型化およびコストアップとなっていた。
【0024】
そこで、背景技術で説明したように、制御手段11が瞬断発生を検知すれば、負荷30への電圧供給を停止することで、検出電圧Vmの低下をできる限り遅くして検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下とならないよう、つまり、制御手段11への直流電圧の供給時間を長くして制御手段11のリセットを遅延させることが考えられる。例えば、図2(A)に示すように、制御手段11は電圧検出手段14で検出する検出電圧Vmが所定の停電判断電圧Vs1以下(図2(A)における点41a以下)となれば、瞬断が発生したと判断する。瞬断を検知した制御手段11は、スイッチ16を開(図1における破線で示した状態)として負荷30への直流電圧の供給を停止する。
【0025】
このように負荷30への直流電圧供給を停止すれば、コンデンサ13の充電電圧は制御手段11のみで使用されることとなり、図2(A)の線45aで示すように、各負荷への電圧供給を停止しない場合(破線44a)と比べて、検出電圧Vmの低下が遅くなる。検出電圧Vmの低下を遅らせることで、点42aで交流電源40からの電力供給が復帰するまで検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下とならないようにでき、制御手段11への直流電圧の供給を途切れさせないようにできるので、コンデンサ13の容量を大きくすることなく、瞬断発生に起因する制御手段11のリセットをできる限り発生させないようにできる。
【0026】
以上説明した方法では、コンデンサ13の充電電圧の放電時間、つまり、検出電圧Vmの低下時間を遅らせるためには、制御手段11が瞬断発生をできる限り早く検知し、負荷30への直流電圧の供給をできる限り早く停止することが望ましい。そして、瞬断発生の検知をできる限り早くするためには、停電判断電圧Vsをできる限り高く設定する必要がある。しかし、図2(A)および(B)に示すように、検出電圧Vmにはリップル電圧が重畳されているため、停電判断電圧Vsを高く設定していると、以下に説明するように、リップル電圧が大きい場合、制御手段11が電圧検出手段14から検出電圧Vmを取り込んだときに、瞬断が発生したと誤判断する虞があった。
【0027】
一般的に、リップル電圧の振幅はファンモータ20の回転数が高くなるにつれて大きくなる。図2(A)はファンモータ20の回転数が低い場合(例えば、400rpm)であり、リップル電圧Vr1の振幅は小さい。一方、図2(B)はファンモータ20の回転数が高い場合(例えば、1750rpm)であり、リップル電圧Vr2の振幅は図2(A)のリップル電圧Vr1に比べて大きい。
【0028】
従って、図2(B)に示す振幅のリップル電圧Vr2が検出電圧Vmに重畳された場合に、停電判断電圧VsをVs1で設定すれば、リップル電圧Vr2の下端値が停電判断電圧Vs1を下回る虞があり、電圧検出手段14が検出したリップル電圧Vr2下端値を取り込んだ制御手段11が、瞬断が発生したと誤判断する虞があった。この誤判断を防ぐためには、停電判断電圧Vsをある一定の値以下、具体的には、ファンモータ20の高い回転数に対応したリップル電圧Vr2の振幅を考慮した停電判断電圧Vs2とする必要がある。しかし、停電判断電圧をVs2と設定すれば、ファンモータ20の回転数が低い場合、制御手段11が瞬断を検知する前に検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となってしまい制御手段11がリセットされる虞があった。これを防ぐためには、コンデンサ13の容量を検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下とならないような容量とする必要があり、コンデンサ13の小容量化に限界があった。
【0029】
そこで、本発明の電源装置1は、瞬断が発生してファンモータ20が停止したときに、ファンモータ20で発生しファンモータ20の回転数に起因した大きさとなる回生電流によりコンデンサ13が充電されることを利用して、ファンモータ20の回転数に応じた停電判断電圧Vsを設定し、これに用いて瞬断発生を検知する。
【0030】
まず、ファンモータ20の回転数による回生電流の違いが検出電圧Vmに与える影響を説明する。図2(C)は、瞬断発生直前のファンモータ20の回転数Rの違いによる、検出電圧Vmの低下時間の違いを表している。一般的に、直流ブラシレスモータのような電動機では、停止する直前の回転数が高いほど、発生する回生電流が大きくなる。従って、瞬断が発生して検出電圧Vmが停電判断電圧Vs以下となり、制御手段11が負荷30への直流電圧供給を停止した後の検出電圧Vmの低下速度は、ファンモータ20の回転数Rが高いほど遅くなる。
【0031】
例えば、R=400rpmのときは、ファンモータ20で発生する回生電流が小さいため、停電が続く場合は点46aで検出電圧Vmがゼロとなる。R=820rpmのときは、R=400rpmのときと比べてファンモータ20で発生する回生電流が大きいため、検出電圧Vmがゼロとなる点46bは点46aに比べて右方向にシフト、つまり、検出電圧Vmの低下速度が遅くなる。R=1750rpmのときは、R=400rpmや820rpmのときと比べてファンモータ20で発生する回生電流がさらに大きいため、検出電圧Vmがゼロとなる点46cは点46bに比べてさらに右方向にシフトし、検出電圧Vmの低下速度がさらに遅くなる。
【0032】
以上のことから、瞬断が発生する直前のファンモータ20の回転数Rが高い場合は、回転数Rが低い場合に比べて検出電圧Vmの低下速度が遅くなるので、制御手段11により長く直流電圧が供給でき、検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となるまでの時間、つまり、制御手段11がリセットされるまでの時間も長くなる。従って、瞬断が発生する直前のファンモータ20の回転数Rが高い場合は、回転数Rが低い場合に比べて瞬断発生を検知するタイミングを遅くしても、制御手段11がリセットされる可能性は少ない。
【0033】
以上を考慮し、図2(A)に示すように、ファンモータ20の回転数Rが低く(以下、低い回転数をRLと記載)振幅が小さいリップル電圧Vr1が検出電圧Vmに重畳される場合は、リップル電圧Vr1に対応した停電判断電圧Vs1とし、図2(B)に示すように、ファンモータ20の回転数Rが高く(以下、高い回転数をRHと記載)振幅がリップル電圧Vr1より大きいリップル電圧Vr2が検出電圧Vmに重畳される場合は、リップル電圧Vr2に対応し停電判断電圧Vs1よりも低い停電判断電圧Vs2とする。
【0034】
ファンモータ20の回転数がRHの場合、図2(B)に示すように、制御手段11は、電圧検出手段14から取り込んだ検出電圧Vmが点41bに低下するまで瞬断発生の検知はできないが、ファンモータ20の回転数RHに対応した回生電流がコンデンサ13に供給されることによって、図2(B)の線45bで示すように、検出電圧Vmの低下が、ファンモータ20の回転数がRLであり振幅が小さいリップル電圧Vr1が重畳される場合(図2(A)の線45a)に比べて緩やかになる。そして、検出電圧Vmがリセット電圧Ve以下となる前に点42bで瞬断から復帰した交流電源40からの電力供給が再開されるので、制御手段11がリセットされないようにしつつリップル電圧に起因する瞬断発生の誤判断を防ぐことができる。
【0035】
一方、ファンモータ20の回転数がRLでありリップル電圧Vrの振幅が小さくなる場合は、図2(A)に示すように、停電判断電圧VsをVs2より高いVs1に設定する。これにより、制御手段11は、点41aで瞬断を素早く検知できるので、負荷30への直流電力供給を素早く停止できる。これにより、検出電圧Vmが、制御手段11で必要な電圧を下回る前に点42aで交流電源40からの電力供給が再開され、制御手段11がリセットされないようにすることができる。
【0036】
図3は、制御手段11の記憶部に予め記憶されている停電判断電圧テーブル50である。この停電判断電圧テーブル50は、上述したファンモータ20で発生しその回転数Rに対応した回生電流による効果を加味して予め設定されているものであり、ファンモータ20の回転数毎にその回転数時に検出電圧Vmに重畳されるリップル電圧Vrの大きさと、その回転数時の停電検出電圧Vsとが定められている。
尚、本実施例におけるファンモータ20の回転数は、最小回転数:400rpm、最大回転数:1750rpmとしている。また、制御手段11は、ファンモータ20の回転数Rを駆動回路21を介して指示しており、その指示回転数を現在のファンモータ20の回転数Rとして認識している。
【0037】
リップル電圧Vrは、予め試験等を行って、ファンモータ20の回転数毎に測定したものである。停電判断電圧Vsは、交流電源40から正常に交流電圧が供給されている場合に電圧検出手段14で検出した検出電圧Vmから、リップル電圧Vrを2で除したものを引き、これから更に所定の電圧を引いたものである。図3の停電判断電圧テーブル50の作成にあたっては、正常時の検出電圧Vm:140V、所定の電圧:5Vとしており、例えば、R=400rpmの場合の停電判断電圧Vsは(140−3/2)−5=134Vとなる。尚、所定の電圧(ここでは5V)を更に引いて停電判断電圧Vsを定めているのは、電圧検出手段14での外来ノイズの影響等による検出結果のバラつきを考慮したためである。
【0038】
次に、図4を用いて、制御手段11が交流電源40からの電力供給が遮断されたことを検知する際の処理について説明する。図4は、制御手段11が交流電源40からの電力供給が遮断されたことを検知する際の処理の流れを示すフローチャートであり、STはステップを表しこれに続く数字はステップの番号を表している。尚、図4のフローチャートでは、本発明に関わる処理を中心に説明しており、使用者の指示した運転条件に対応する脱臭機の運転制御等、その他の処理については説明を省略する。
【0039】
使用者の運転開始指示を受けて制御手段11は脱臭機の運転を開始する。運転を開始した制御手段11は、電圧検出手段14からファンモータ20に印加される電圧である検出電圧Vmを定期的に取り込む(ST1)。また、制御手段11は駆動回路21に指示したファンモータ20の回転数Rを記憶する(ST2)。取り込んだ検出電圧Vmやファンモータ20の回転数Rは、制御手段11の図示しない記憶部に記憶される。
【0040】
次に、制御手段11は、記憶している停電判断電圧テーブル50を参照し、取り込んだファンモータ20の回転数Rに対応する停電判断電圧Vsを抽出する(ST3)。
【0041】
次に、制御手段11は、検出電圧Vmが抽出した停電判断電圧Vs以下であるか否かを判断する(ST4)。検出電圧Vmが抽出した停電判断電圧Vs以下であれば(ST4−Yes)、制御手段11はスイッチ16を開とする、あるいは、スイッチ16が開である状態を維持して負荷30への直流電圧の供給を停止し(ST7)、ST4へ処理を戻す。
【0042】
検出電圧Vmが抽出した停電判断電圧Vs以下でなければ(ST4−No)、制御手段11はスイッチ16が開となっているか否かを判断する(ST5)。スイッチ16が開となっていなければ(ST5−No)、制御手段11はST1に処理を戻す。スイッチ16が開となっていれば(ST5−Yes)、制御手段11はスイッチ16を閉として負荷30への直流電圧の供給を再開し(ST6)、ST1へ処理を戻す。
【0043】
以上説明した通り、本発明の電源装置によれば、交流電源からの電力供給の遮断を判断する際の所定電圧を複数備えている。電動機では、回転数に応じた回生電流が発生し回転数が高いほど生じる回生電流も大きくなる。本発明では電動機で発生する回生電流によりコンデンサが充電されることに着目し、回転数に応じて停電検知を行う閾値である所定電圧を定めている。制御手段は、電圧検出手段から取り込んだ直流電圧が電動機の回転数毎に定められた所定電圧以下であれば、交流電源での瞬断が発生したと判断して電力供給部から外部負荷への直流電力の供給停止を行うので、制御手段へ供給される直流電圧の低下に起因する制御手段のリセットをできる限り遅らせ、かつ、コンデンサの容量を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電源装置
11 制御手段
12 整流回路
13 コンデンサ
14 電圧検出手段
15 スイッチング電源
16 スイッチ
20 ファンモータ
30 負荷
40 交流電源
50 停電判断電圧テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路とコンデンサとを備え交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して電動機に供給する直流電源部と、前記コンデンサの両端の直流電圧を検出する電圧検出手段と、制御手段とを備え、前記電動機の回転制御を行う電源装置であって、
前記制御手段は、前記電動機の回転数に対応させた所定電圧を予め記憶し、前記電圧検出手段から取り込んだ直流電圧が、前記電動機の回転数に対応する所定電圧以下となれば、前記交流電源からの電力供給が遮断されたと判断することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電動機の回転数が高くなるのに従って、複数の前記所定電圧は低くなるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電動機の回転数と複数の前記所定電圧とを対応づけた停電判断電圧テーブルを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源装置は、前記整流回路の出力側に並列に接続され前記制御手段と外部負荷とに直流電力を供給する電力供給手段と、前記制御手段により開閉制御されることで前記電力供給手段から前記外部負荷へ直流電力を供給もしくは供給停止する開閉手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記交流電源からの電力供給が遮断されたと判断すれば、前記開閉手段を開として前記電力供給手段から前記外部負荷への直流電力の供給を停止することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−62957(P2013−62957A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200052(P2011−200052)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】