説明

電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置

【課題】カメラのシャッタ羽根等を駆動する電磁アクチュエータの高速化、非作動時の耐衝撃性能の向上を図る。
【解決手段】所定の角度範囲を回動して駆動力を発生するロータ110、励磁用のコイル140、ロータの外周面と対向する弧状面を各々画定しコイルへの通電により互いに異なる磁極を発生する第1磁極部121及び第2磁極部122を有するヨーク120を備え、第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、ロータの外周面111b,111cとの間隔をロータの回転方向においてそれぞれ連続的に変化(弧状面の一端側から他端側に向けて増加)させるべく形成される。これにより、ロータを円滑にかつ一方向により速く回転させ、シャッタ羽根に閉じ動作(シャッタ動作)をより高速で行わせ、ロータの着磁方向と通電方法の変更により非通電時の耐衝撃性能を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力により駆動力を発生する電磁アクチュエータに関し、特に、着磁された円柱状のロータ、ロータの外周面に対向する磁極部を形成するヨーク等を備え、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根等の羽根を駆動する際に適用される電磁アクチュエータ及びこれを用いたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用シャッタ装置等に搭載される従来の電磁アクチュエータとしては、円形の開口部を有する基板に対して回動自在に支持されかつ外周面が周方向に二分されて着磁(N極及びS極)された円柱状のロータ、ロータの外周面に対向する円弧面を画定する磁極片を有する略U字状のヨーク、ヨークの周りに巻回された励磁用のコイル等を備え、非通電時の保持力(ディテントトルク)を高めるために、ロータと対向する磁極片を、長い円弧をなす大分割磁極片と短い円弧をなす小分割磁極片に分割して形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の電磁アクチュエータとしては、前述同様に、外周面が周方向に二分されて着磁(N極及びS極)された円柱状のロータ、ロータの外周面に対向する円弧面を画定する磁極部を有する略U字状のヨーク、ヨークの周りに巻回された励磁用のコイル等を備え、駆動トルクを高めるために、ロータの外周面から径方向に突出する突出部を設けたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁アクチュエータにおいては、磁極片をロータの外周面と対向するように折り曲げると共に周方向において二分割した磁極片(大分割磁極片と小分割磁極片)に形成しているため、構造が複雑であり、製造コストも高くなる。また、ロータの外周面に対して、大分割磁極片が対向する間隔(磁気ギャップ)と小分割磁極片が対向する間隔(磁気ギャップ)を異ならせる場合を示しているが、間隔が不連続的に変化すると共に定量的に設定されていないため、ロータの回転が円滑に行われない虞がある。また、特許文献2に記載の電磁アクチュエータにおいては、磁極部の円弧面はロータの外周面に対して一定の間隔(磁気ギャップ)をなすように形成されているため構造は簡単であるものの、ロータに突出部を設けたことにより、ロータの慣性質量が増加し、応応答性を従来同様に維持すると消費電力の増加を招き、一方、消費電力を従来同様に維持すると応答性の悪化を招くことになる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−327143号公報
【特許文献2】特開2004−194403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を図りつつ、ロータが一方向に回転する際の駆動トルク、回転速度、応答性等を高めて、例えばカメラのシャッタ羽根、絞り羽根等の羽根を駆動する駆動源として用いられる場合に、羽根を円滑にかつより速い速度で駆動することができる電磁アクチュエータ及びこれを用いたカメラ用羽根駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁アクチュエータは、周方向に二分して着磁された円筒状の外周面を有するロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面と対向する弧状面をそれぞれ画定すると共にコイルへの通電によりお互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを備え、所定の角度範囲を回動して駆動力を発生する電磁アクチュエータであって、上記第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、上記ロータの外周面との間隔をロータの回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、間隔が連続的に変化する(すなわち、間隔が、ロータの回転方向(周方向)における弧状面の一端側から他端側に向けて連続的に増加又は減少する)ため、ロータを円滑に回転させることができると共に、ロータを一方向に回転させるときの速度を他方向に回転させるときの速度よりも速くすることができる。したがって、所定の被駆動体を一方向にのみ速く駆動したい場合に、この電磁アクチュエータを用いることで、被駆動体に円滑で素早い動作を行わせることができる。また、ロータと第1磁極部及び第2磁極部の間隔を変更するのみであるため、従来の電磁アクチュエータに比べて、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を達成することができる。
【0008】
上記構成の電磁アクチュエータにおいて、間隔の最小値をX及び最大値をYとするとき、下記条件式
X<Y<2X
を満足する、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータ(の外周面)と第1磁極部及び第2磁極部(の弧状面)との間隔が条件式を満たすように形成することで、ディテントトルクによるロータの保持力を確保しつつ、ロータの一方向への回転速度を速くすることができる。
【0009】
上記構成の電磁アクチュエータにおいて、ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、コイルに非通電の状態で、ロータを角度範囲の両端位置にそれぞれ保持するように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータは非通電の状態で両端位置に保持されるため、消費電力を低減することができる。
【0010】
上記構成の電磁アクチュエータにおいて、ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、コイルに非通電の状態で、ロータを角度範囲の一端位置にのみ保持するように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータは非通電の状態で一端位置にのみ保持されるため、一方向の通電のオン/オフのみの簡単な通電制御により、ロータの往復回転を制御することができる。
【0011】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、開口部を有する基板と、開口部を全開した全開位置に移動する開き動作及び開口部を全閉した全閉位置に移動する閉じ動作を行うべく基板に回動自在に支持された羽根と、羽根を駆動する駆動源とを備えたカメラ用羽根駆動装置であって、上記駆動源は、周方向に二分して着磁された円筒状の外周面を有すると共に羽根を開閉駆動するロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面と対向する弧状面をそれぞれ画定すると共にコイルへの通電によりお互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを含み、第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、ロータの外周面との間隔をロータの回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、間隔が連続的に変化する(すなわち、間隔が、ロータの回転方向(周方向)における弧状面の一端側から他端側に向けて連続的に増加又は減少する)ため、ロータを円滑に回転させることができると共に、ロータを一方向に回転させるときの速度を他方向に回転させるときの速度よりも速くすることができる。したがって、羽根を一方向にのみ速く駆動したい場合に、この電磁アクチュエータを用いることで、羽根に円滑で素早い動作を行わせることができる。また、ロータと第1磁極部及び第2磁極部の間隔を変更するのみであるため、従来の駆動源に比べて、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を達成することができる。
【0012】
上記構成のカメラ用羽根駆動装置において、間隔の最小値をX及び最大値をYとするとき、下記条件式
X<Y<2X
を満足する、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータ(の外周面)と第1磁極部及び第2磁極部(の弧状面)との間隔が条件式を満たすように形成することで、ディテントトルクによるロータの保持力を確保しつつ、ロータの一方向への回転速度すなわち羽根の一方向への動作を速くすることができる。
【0013】
上記構成のカメラ用羽根駆動装置において、間隔は、羽根が全開位置にあるときに生じる磁気的吸引力よりも全閉位置にあるときに生じる磁気的吸引力が大きくなるように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、羽根が全開位置から全閉位置に向けて移動して開口部を閉じる動作が速く行われるため、羽根がシャッタ羽根として機能する場合に、円滑で高速なシャッタ動作を行わせることができる。
【0014】
上記構成のカメラ用羽根駆動装置において、ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、コイルに非通電の状態で、羽根を全開位置及び全閉位置にそれぞれ保持するように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイルが非通電の状態で羽根は全開位置及び全閉位置に保持されるため、消費電力を低減することができる。
【0015】
上記構成のカメラ用羽根駆動装置において、ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、コイルに非通電の状態で、羽根を全開位置にのみ保持するように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイルが非通電の状態で、羽根は全開位置にのみ保持されるため、閉じ動作を行わせる向きへの通電をオン/オフする簡単な通電制御により、羽根の開閉動作を制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成をなす本発明の電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置によれば、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を達成しつつ、ロータ(及び羽根)が一方向に回転(動作)する際の駆動トルク、回転速度、応答性等を高めることができ、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根等を、円滑でより速く作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図9は、本発明に係る電磁アクチュエータを駆動源として備えたカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示すものである。ここで、図1及び図2は装置の内部を透視した平面図、図3は装置を展開した部分断面図、図4は電磁アクチュエータを示す平面図、図5は電磁アクチュエータの部分図、図6はロータと第1磁極部及び第2磁極部との間隔と保持力及び速度の関係を示す図、図7及び図8は電磁アクチュエータの動作図、図9は通電制御を行う際のタイムチャートである。
【0018】
この装置は、図1ないし図3に示すように、円形の開口部10a,20aを有する基板としての地板10及び裏板20、開口部10a,20aを開閉するべく地板10に回動自在に支持された羽根としてのシャッタ羽根30、シャッタ羽根30を駆動する駆動源としての電磁アクチュエータ100等を備えている。
【0019】
地板10は、図1ないし図3に示すように、開口部10a、後述するロータ110を回動自在に支持する支軸11、略扇状の貫通孔10b、後述するヨーク120を位置決めするピン12及び突起13、後述する押え板150を連結する連結部14、シャッタ羽根30を回動自在に支持する支軸15a,15b等を備えている。
裏板20は、図3に示すように、地板10と所定の間隔をおいて連結され、シャッタ羽根30を回動自在に収容する羽根室Wを画定している。
【0020】
シャッタ羽根30は、図1及び図2に示すように、一対のシャッタ羽根31,32により形成されている。シャッタ羽根31は、図1及び図2に示すように、支軸15aが挿入される円孔31a、後述する駆動ピン112が挿入される長孔31bを備えている。シャッタ羽根32は、図1及び図2に示すように、支軸15bが挿入される円孔32a、後述する駆動ピン112が挿入される長孔32bを備えている。
そして、駆動ピン112が往復動することにより、一対のシャッタ羽根31,32は、図1に示すように、お互いに遠ざかって開口部10aを全開した全開位置に移動する開き動作と、図2に示すように、お互いに近づいて重なり合い開口部10a,20aを全閉した全閉位置に移動する閉じ動作を行うようになっている。
【0021】
電磁アクチュエータ100は、図1ないし図3に示すように、地板10に回動自在に支持されるロータ110、略U字状のヨーク120、ヨーク120に外嵌して固定されるボビン130、ボビン130に巻回された励磁用のコイル140、ロータ110の抜け落ちを規制すると共にヨーク120を地板10に押え込んで固定する押え板150等により形成されている。
【0022】
ロータ110は、図3及び図4(a),(b)に示すように、円柱状に形成されたマグネット部111、マグネット部111に一体的に結合されて回転駆動力を外部に伝達する駆動ピン112を備えている。
マグネット部111は、図4(a),(b)及び図5に示すように、支軸11が通される貫通孔111a、回転軸Lを通る境界面Fを境に二分されて異なる磁極に着磁されたN極側の外周面111b及びS極側の外周面111cを備えるように形成されている。外周面111b,111cは、全体として円筒状の外周面を画定している。
そして、ロータ110は、駆動ピン112の位置が図4(a)に示す一端位置θ1と図4(b)に示す他端位置θ2により規定される、所定の角度範囲(作動角)Δθを回動するようになっている。
【0023】
ヨーク120は、発生する磁力線を導く磁路を形成するものであり、図4(a),(b)及び図5に示すように、略U字状に形成され、その一端領域において第1磁極部121、その他端領域において第2磁極部122、屈曲領域においてピン12が通される位置決め用の孔123を有するように形成されている。
【0024】
第1磁極部121は、図5に示すように、所定の中心角α1の角度範囲に亘って湾曲して形成されており、ロータ110の外周面111b,111cと対向する弧状面121aを画定している。
弧状面121aは、図5に示すように、ロータ110の回転方向(周方向)において、一端位置P11〜他端位置P12の間で外周面111b,111cと対向するように形成されると共に、外周面111b,111cとの間隔を連続的に変化させる、すなわち、一端位置P11から他端位置P12に向けて連続的に増加させるように、湾曲して形成されている。
【0025】
第2磁極部122は、図5に示すように、所定の中心角α2の角度範囲に亘って湾曲して形成されており、ロータ110の外周面111b,111cと対向する弧状面122aを画定している。
弧状面122aは、図5に示すように、ロータ110の回転方向(周方向)において、一端位置P21〜他端位置P22の間で外周面111b,111cと対向するように形成されると共に、外周面111b,111cとの間隔を連続的に変化させる、すなわち、一端位置P21から他端位置P22に向けて連続的に増加させるように、湾曲して形成されている。
【0026】
このように、第1磁極部121の弧状面121a及び第2磁極部122の弧状面122aは、ロータ110の外周面111b,111cとの間隔を、ロータ110の回転方向においてそれぞれ連続的に変化させる、すなわち、弧状面121a,122aの一端側(P11,P21)から他端側(P12,P22)に向けて連続的に増加させるように形成されているため、ロータ110を円滑に回転させることができると共に、ロータ110を一方向(図4中の時計回り)に回転させるときの速度を他方向(図4中の反時計回り)に回転させるときの速度よりも速くすることができる。
換言すれば、上記間隔は、シャッタ羽根30が図1に示す全開位置にあるときに生じる磁気的吸引力よりも図2に示す全閉位置にあるときに生じる磁気的吸引力が大きくなるように形成されている。したがって、シャッタ羽根30が図1に示す全開位置から図2に示す全閉位置に向けて移動する閉じ動作を、円滑にかつより高速に行わせることができる。
また、ロータ110と第1磁極部121及び第2磁極部122の間隔を変更する、すなわち、弧状面121a,122aの形状のみを変更するものであるため、従来の電磁アクチュエータに比べて、高速化のための部品が必要なく、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を達成することができる。
【0027】
ここで、図5に示すように、弧状面121a,122aの一端位置P11,P21における間隔(最小値)をX、弧状面121a,122aの他端位置P12,P22における間隔(最大値)をYとするとき、弧状面121a,122aと外周面111b,111cとの径方向における間隔が、好ましくは、下記条件式
X<Y<2X
を満足するように形成される。
【0028】
上記条件式について、図6を参照しつつ説明する。図6は、間隔の最小値Xに対して間隔の最大値Yを変化させたとき、ロータ110の回転速度(シャッタ速度)とシャッタ羽根30が全開位置にあるときの保持力(磁気的吸引力)の関係を示したグラフである。
図6に示されるように、間隔の最小値Xを基準として、最大値Yを単調に増加させた場合、ロータ110の回転速度(シャッタ速度)は徐々に速くなり、一方、保持力(磁気的吸引力)は徐々に小さくなる。
したがって、Yの値をX〜2Xの範囲に設定する、すなわち、ロータ110(の外周面111b,111c)と第1磁極部121(の弧状面121a)及び第2磁極部122(の弧状面122a)との間隔が、最小値をX及び最大値をYとするとき、X<Y<2Xの関係を満たすように形成することで、ディテントトルク(磁気的吸引力)によるロータ110の保持力を確保しつつ、ロータ110の一方向へ(時計回り)の回転速度すなわちシャッタ羽根30が閉じ動作を行う速度を速くすることができる。
【0029】
ボビン130は、図3及び図4(a),(b)に示すように、ヨーク120の第2磁極部122側を通して、ヨーク120に外嵌固定されている。
コイル140は、ボビン130の周りに巻回されている。そして、コイル140が一方向に通電されると、ロータ110を時計回りに回転させる磁気的付勢力(吸引力及び反発力)を及ぼす磁力線を発生し、コイル140が逆方向に通電されると、ロータ110を反時計回りに回転させる磁気的付勢力(吸引力及び反発力)を及ぼす磁力線を発生するようになっている。
押え板150は、図3に示すように、扁平な板状に形成され、地板10の支軸11に回動自在に支持されたロータ110の抜け落ちを規制し、ボビン130が装着されたヨーク120を地板10に押し付けて固定するようになっている。
【0030】
上記構成をなす電磁アクチュエータ100を備えたカメラ用羽根駆動装置の動作について、図1及び図2の状態図、図7及び図8のロータ110の動作図、図9のタイムチャートを参照しつつ説明する。
先ず、コイル140が非通電の状態で、図7(a)に示すように、ロータ110が反時計回りの回転端(一端位置θ1)に位置するとき、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ磁気的吸引力が生じており、ロータ110は反時計回りの回転端にてストッパ(不図示)により位置決めされて保持されている。
このとき、シャッタ羽根30は、図1に示すように、開口部10a,20aを全開した全開位置に位置付けられている。
【0031】
この状態において、コイル140が一方向に通電されると、図7(b)に示すように、第1磁極部121にN極が発生し、第2磁極部122にS極が発生する。
これにより、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ電磁力による反発力が生じて、ロータ110は時計回りに回転し始める。
【0032】
そして、ロータ110が図7(b)に示す状態から時計回りに回転する際に、弧状面121a,122aと外周面111b,111cとの間隔が一端位置P11,P21から他端位置P12,P22に向けて連続的に増加するように形成されているため、ロータ110が一端位置θ1から他端位置θ2に向う時計回りの回転動作が円滑でかつ高速で行われて、図7(c)に示すようにロータ110は時計回りの回転端(他端位置θ2)まで移動してストッパ(不図示)により位置決めされて停止する。
これにより、シャッタ羽根30は、図1に示す全開位置から図2に示す全閉位置まで移動する閉じ動作(シャッタ動作)が円滑に行われると共に、図9に示す開口波形から理解されるように、従来の閉じ動作(シャッタ動作)よりも高速で行われる。
【0033】
そして、この全閉位置において、コイル140の通電が断たれると、図7(d)に示すように、外周面111cと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111bと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ磁気的吸引力が作用し、ロータ110は時計回りの回転端(他端位置θ2)にてストッパ(不図示)により位置決めされて保持されている。
【0034】
一方、コイル140が逆向きに通電されると、図8(e)に示すように、第1磁極部121及び第2磁極部122にそれぞれ逆の磁極が発生する。そして、ロータ110は、図8(f)に示すように、反時計回りの回転端(一端位置θ1)まで逆の経路を辿って安定して移動して、ストッパ(不図示)により位置決めされて停止する。
これにより、シャッタ羽根30は、図2に示す全閉位置から図1に示す全開位置まで移動する開き動作が円滑に行われる。この開き動作は、特に速さが要求されないため、従来よりも遅くてなっても何ら支障がない。
【0035】
そして、この全開位置において、コイル140の通電が断たれると、図8(g)に示すように、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ磁気的吸引力が作用し、ロータ110は反時計回りの回転端(一端位置θ1)にて保持される。
【0036】
上記のように、第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、ロータ110の外周面111b,111cとの間隔をロータ110の回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されているため、ロータ110を円滑に回転させることができると共に、ロータ110を一方向(時計回り)に回転させるときの速度を他方向(反時計回り)に回転させるときの速度よりも速くすることができ、シャッタ羽根30の閉じ動作(シャッタ動作)を円滑で素早く行わせることができる。
また、ロータ110の外周面111b,111cと第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、コイル140に非通電の状態で、シャッタ羽根30を全開位置及び全閉位置にそれぞれ保持するように形成されているため、消費電力を低減することができる。
【0037】
図10及び図11は、本発明に係る電磁アクチュエータの他の実施形態を示すものであり、図10はその平面図、図11はその動作図である。
この実施形態においては、ロータ110´の境界面F´の位置を変更した以外は、前述の実施形態と同一の構成をなすため、同一の構成については同一の符合を付して説明を省略する。
【0038】
すなわち、この電磁アクチュエータ100´は、図10(a),(b)に示すように、ロータ110´、ヨーク120、ボビン130、コイル140等を備えている。
ロータ110´は、図10(a),(b)に示すように、マグネット部111、駆動ピン112を備えるように形成され、マグネット部111の外周面111b,111cを二分する境界面F´が駆動ピン112に対して所定角度ずれた位置に設けられている。
【0039】
そして、ロータ110´の外周面111b,111cと第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、コイル140が非通電の状態で、ロータ110´を角度範囲Δθの一端位置θ1にのみ、磁気的吸引力により保持するように形成されている。これによれば、コイル140に対して一方向の通電のオン/オフのみの簡単な通電制御を行うことにより、ロータ110´の往復回転を制御することができる。
【0040】
次に、上記電磁アクチュエータ100´を備えたカメラ用羽根駆動装置の動作について、図1及び図2の状態図、図11のロータ110´の動作図、図12のタイムチャートを参照しつつ説明する。
先ず、コイル140が非通電の状態で、図11(a)に示すように、ロータ110´が反時計回りの回転端(一端位置θ1)に位置するとき、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ磁気的吸引力が生じており、ロータ110´は反時計回りの回転端にてストッパ(不図示)により位置決めされて保持されている。
このとき、シャッタ羽根30は、図1に示すように、開口部10a,20aを全開した全開位置に位置付けられている。
【0041】
この状態において、コイル140が一方向に通電されると、図11(b)に示すように、第1磁極部121にN極が発生し、第2磁極部122にS極が発生する。
これにより、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ電磁力による反発力が生じて、ロータ110´は時計回りに回転し始める。
【0042】
そして、ロータ110´が図11(b)に示す状態から時計回りに回転する際に、弧状面121a,122aと外周面111b,111cとの間隔が一端位置P11,P21から他端位置P12,P22に向けて連続的に増加するように形成されているため、ロータ110´が一端位置θ1から他端位置θ2に向う時計回りの回転動作が円滑でかつ高速で行われて、図11(c)に示すようにロータ110´は時計回りの回転端(他端位置θ2)まで移動してストッパ(不図示)により位置決めされて停止する。
これにより、シャッタ羽根30は、図1に示す全開位置から図2に示す全閉位置まで移動する閉じ動作(シャッタ動作)が円滑に行われる。
【0043】
そして、この全閉位置において、コイル140の通電が断たれると、図11(d)に示すように、第1磁極部121及び第2磁極部122において電磁力により生じていた磁極が消滅し、外周面111bと第1磁極部121の弧状面121aとの間及び外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間には、ロータ110´を反時計回りに回転付勢する磁気的吸引力が作用する。
【0044】
そして、ロータ110´は、図11(e)に示すように、反時計回りの回転端(一端位置θ1)まで逆の経路を辿って安定して移動して、ストッパ(不図示)により位置決めされて停止する。
これにより、シャッタ羽根30は、図2に示す全閉位置から図1に示す全開位置まで移動する開き動作が円滑に行われる。
【0045】
そして、この全開位置において、コイル140の通電が断たれると、図11(a)に示すように、外周面111bと第1磁極部112の弧状面112aとの間、外周面111cと第2磁極部122の弧状面122aとの間に、それぞれ磁気的吸引力が作用し、ロータ110´は反時計回りの回転端(一端位置θ1)にて保持される。
【0046】
上記のように、第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、ロータ110´の外周面111b,111cとの間隔をロータ110´の回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されているため、ロータ110´を円滑に回転させることができると共に、反時計回りの回転端(一端位置θ1)における保持力を最も強くすることができ、シャッタ羽根30の閉じ動作(シャッタ動作)を高い保持力の状態から円滑に行わせることができる。
また、ロータ110´の外周面111b,111cと第1磁極部121及び第2磁極部122の弧状面121a,122aは、コイル140が非通電の状態で、シャッタ羽根30を全開位置にのみ保持するように形成されているため、コイル140に対して閉じ動作を行わせる向きへの通電をオン/オフする簡単な通電制御により、シャッタ羽根30の開閉動作を制御することができる。
【0047】
上記実施形態においては、第1磁極部121及び第2磁極部122とロータ110,110´との間隔(磁気ギャップ)を、弧状面121a,122aの一端側から他端側に向けて連続的に増加させる変化パターンを示したが、これに限定されるものではなく、逆に一端側から他端側に向けて連続的に減少させる変化パターンを採用してもよい。
上記実施形態においては、電磁アクチュエータがカメラ用のシャッタ羽根30を駆動する駆動源として適用される場合を示したが、これに限定されるものではなく、絞り羽根、NDフィルタ羽根等のその他の羽根を駆動する駆動源として用いられてもよい。また、シャッタ羽根30として一対のシャッタ羽根31,32を示したが、これに限定されるものではなく、一枚のシャッタ羽根を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータ、構造の簡素化、小型化、低コスト化等を達成しつつ、ロータが一方向に回転する際の駆動トルク、回転速度、応答性、耐衝撃性能等を高めることができるため、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根等の羽根を駆動する駆動源として適用できるのは勿論のこと、その他の回転駆動力を必要とする分野における駆動源としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る電磁アクチュエータを備えたカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る電磁アクチュエータを備えたカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図1及び図2に示すカメラ用羽根駆動装置の展開部分断面図である。
【図4】本発明に係る電磁アクチュエータの一実施形態を示すものであり、(a)はロータが一端位置にある状態を示す平面図、(b)はロータが他端位置にある状態を示す平面図である。
【図5】図4に示す電磁アクチュエータの一部を拡大した部分拡大図である。
【図6】電磁アクチュエータにおけるロータと磁極部との間隔、保持力、ロータの回転速度(シャッタ速度)の関係を示したグラフである。
【図7】図4に示す電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、(a),(b),(c),(d)は、それぞれの動作状態を示す平面図(動作図)である。
【図8】図4に示す電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、(e),(f),(g)は、それぞれの動作状態を示す平面図(動作図)である。
【図9】コイルへの通電制御及びシャッタ羽根の開口波形を示すタイムチャートである。
【図10】本発明に係る電磁アクチュエータの他の実施形態を示すものであり、(a)はロータが一端位置にある状態を示す平面図、(b)はロータが他端位置にある状態を示す平面図である。
【図11】図10に示す電磁アクチュエータの動作を説明するものであり、(a),(b),(c),(d),(e)は、それぞれの動作状態を示す平面図(動作図)である。
【図12】コイルへの通電制御及びシャッタ羽根の開口波形を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 地板(基板)
11 支軸
12 ピン
13 突起
14 連結部
15a,15b 支軸
20 裏板(基板)
10a,20a 開口部
10b 貫通孔
30(31,32) シャッタ羽根
31a,32a 円孔
31b,32b 長孔
100,100´ 電磁アクチュエータ(駆動源)
110,110´ ロータ
L 回転軸
F,F´ 境界面
111 マグネット部
111b,111c 外周面
112 駆動ピン
120 ヨーク
121 第1磁極部
121a 弧状面
122 第2磁極部
122a 弧状面
130 ボビン
140 コイル
150 押え板
θ1 一端位置
θ2 他端位置
Δθ 角度範囲(作動角)
P11,P21 一端位置
P12,P22 他端位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に二分して着磁された円筒状の外周面を有するロータと、励磁用のコイルと、前記ロータの外周面と対向する弧状面をそれぞれ画定すると共に前記コイルへの通電によりお互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを備え、所定の角度範囲を回動して駆動力を発生する電磁アクチュエータであって、
前記第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記ロータの外周面との間隔を前記ロータの回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されている、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記間隔の最小値をX及び最大値をYとするとき、下記条件式
X<Y<2X
を満足する、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記コイルに非通電の状態で、前記ロータを前記角度範囲の両端位置にそれぞれ保持するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記コイルに非通電の状態で、前記ロータを前記角度範囲の一端位置にのみ保持するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
開口部を有する基板と、前記開口部を全開した全開位置に移動する開き動作及び前記開口部を全閉した全閉位置に移動する閉じ動作を行うべく前記基板に回動自在に支持された羽根と、前記羽根を駆動する駆動源とを備えたカメラ用羽根駆動装置であって、
前記駆動源は、周方向に二分して着磁された円筒状の外周面を有すると共に前記羽根を開閉駆動するロータと、励磁用のコイルと、前記ロータの外周面と対向する弧状面をそれぞれ画定すると共に前記コイルへの通電によりお互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを含み、
前記第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記ロータの外周面との間隔を前記ロータの回転方向においてそれぞれ連続的に変化させるように形成されている、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記間隔の最小値をX及び最大値をYとするとき、下記条件式
X<Y<2X
を満足する、ことを特徴とする請求項5に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項7】
前記間隔は、前記羽根が前記全開位置にあるときに生じる磁気的吸引力よりも前記全閉位置にあるときに生じる磁気的吸引力が大きくなるように形成されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項8】
前記ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記コイルに非通電の状態で、前記羽根を前記全開位置及び全閉位置にそれぞれ保持するように形成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項9】
前記ロータの外周面と第1磁極部及び第2磁極部の弧状面は、前記コイルに非通電の状態で、前記羽根を前記全開位置にのみ保持するように形成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のカメラ用羽根駆動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−69733(P2009−69733A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240544(P2007−240544)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】