説明

電磁弁

【課題】比較的簡易な構成で自励振動を効果的に抑制できる電磁弁を提供する。
【解決手段】スリーブ30とプランジャ32との間に介装されるコイルスプリング50の両端が平面状に加工され、そのスリーブ30側の端面が軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成されている。このため、コイルスプリング50が圧縮された際に偏荷重を発生させることができ、その偏荷重によりプランジャ32に適度な摺動抵抗を作用させることができる。それにより、プランジャ32の自励振動ひいてはそれによる異音の発生を抑制することができる。また、コイルスプリング50がスリーブ30に設けられたガイド穴48に収容される構成となっているが、スリーブ30側の底面を傾斜させるのではなく、コイルスプリング50側の端面を傾斜させるようにしたため、その斜面の加工を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動により弁部を開閉して作動流体の流量を制御可能な電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液圧制動力を発生させるブレーキ装置など、制御対象に作動流体を送り込む装置においては、作動流体の供給経路内にその流量を調整するための電磁弁が設けられている。そして、その電磁弁を開閉制御することにより作動流体の給排量を調整し、制御対象を適切に作動させる制御を実現している。
【0003】
このような電磁弁は、弁部を内蔵したボディと弁部を駆動するソレノイドとを組み付けて構成されている。ボディ内において作動流体が導入・導出される通路には弁座が設けられており、その弁座に着脱して弁部を開閉可能な弁体が配設されている。弁体は、ソレノイドを構成するプランジャに一体に支持される。例えば、常閉型の電磁弁においてソレノイドに通電がなされると、ソレノイドの固定鉄心とプランジャとの間に吸引力が発生し、弁体が弁座から離間する開弁方向に動作する。プランジャと固定鉄心との間には、その吸引力に抗してプランジャひいては弁体を固定鉄心から離間させる閉弁方向に付勢するスプリングが介装されている。このため、ソレノイドへの通電が遮断されると、弁体が弁座に着座して閉弁状態を保持する。ソレノイドに通電がなされた制御中においては、弁体に負荷される前後差圧による力、ソレノイドの吸引力、およびスプリングによる荷重がバランスするように弁開度が調整される。
【0004】
ところで、このような電磁弁においては一般に、作動流体による起振力等が原因となってプランジャが自励振動し、異音を発生させる場合がある。このような問題に対し、例えばプランジャの摺動部にある程度の摩擦力を発生させてその振動を減衰させる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。具体的には、ボディ内におけるスプリングの受け面を傾斜させることでスプリングによる偏荷重を発生させ、プランジャをボディの摺動面に押し付けるようにして摩擦を発生させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−99363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1の実施例に記載のように、筒状のボディ内に傾斜面を形成しようとすると、特殊な工具を使用する必要があるなど加工が煩雑になる可能性が高い。一方、スプリングの荷重調整用の部材に予め傾斜面を形成し、それをボディに組み付けることも考えられるが、そのような別部材を必須とすると部品点数が多くなる。このため、いずれにしても製造コストが嵩むといった問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な構成で自励振動を効果的に抑制できる電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電磁弁は、ソレノイドにより開閉制御される弁部を備えた電磁弁であって、作動流体を通過させる内部通路が形成されたボディと、ボディの端部に設けられたスリーブと、内部通路に設けられた弁座に接離可能に配置されて弁部を開閉可能な弁体と、ボディの内周面にガイドされつつ軸線方向に摺動可能に配設されて、その一端側に弁体を一体動作可能に支持するプランジャと、プランジャとスリーブとの間に介装され、弁体をソレノイドの吸引力に抗して開弁方向または閉弁方向に付勢するコイルスプリングと、を備える。コイルスプリングは、その軸線方向の両端がそれぞれ平面状に加工されるとともに、少なくともその一方の端面がその軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成され、両端面がプランジャおよびスリーブのそれぞれの対向面に当接するように配設されている。
【0009】
ここでいう「弁部」は、弁体と弁座とにより構成されて作動流体が流れる通路を開閉する部分を意味する。「作動流体」は、液体、気体、気液混合体のいずれであってもよい。「スリーブ」は、ボディに組み付けられるものであってもよいし、ボディに一体成形されたものであってもよい。「弁体」は、プランジャの一端側に組み付けられるものであってもよいし、プランジャに一体成形されたものであってもよい。「コイルスプリング」の両端の平面加工は、切削や研削によるものでもよいし、塑性加工によるものでもよい。
【0010】
この態様によれば、コイルスプリングの少なくともその一方の端面がその軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成されているため、そのコイルスプリングが軸線方向に圧縮された際には、その周方向位置によって軸線方向の荷重分布に偏りが生じる。したがって、ソレノイドに通電がなされてプランジャがスリーブに対して近接方向に動作した際には、両者間に介装されたコイルスプリングによる偏荷重がプランジャに付与されるようになる。すなわち、プランジャに対して軸線方向の付勢力のほか、その軸線方向と直角方向の分力が作用するようになり、プランジャがその分力の方向に変位してボディに押し付けられる。その結果、プランジャは、ボディに押し付けられた部分において摩擦による摺動抵抗を受けるようになり、その減衰力によって自励振動が抑制されるようになる。
【0011】
また、コイルスプリングの両端が平面状に加工されているため、プランジャおよびスリーブのそれぞれに安定に保持される。すなわち、仮にこのような平面加工が施されていないコイルスプリングを用いた場合には、プランジャおよびスリーブのそれぞれとコイルスプリングとの接触面積が小さいためにプランジャの動作に応じたコイルスプリングの挙動が不安定となる。しかし、この態様によれば、コイルスプリングがその両端面においてプランジャおよびスリーブのそれぞれに安定に当接することができるため、そのコイルスプリングの安定な動作を確保できるようになる。さらに、そのようにコイルスプリングの両端面を平面状に加工することを前提にその少なくとも一方を傾斜させるため、その傾斜角度を精度よく実現することができる。このようにコイルスプリングによる偏荷重を発生させる場合、それにより自励振動を抑制するに足る摺動抵抗が得られるようにする一方で、その摺動抵抗が弁部の作動応答性を阻害しないようにする必要もある。この態様によれば、コイルスプリングの端面加工によりその傾斜角度を最適に設定することも可能になる。
【0012】
具体的には、スリーブとプランジャとが、コイルスプリングを介装する対向面において略平行に形成され、コイルスプリングは、その軸線方向の両端がそれぞれ軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成されるとともに、その一端面と他端面とが略平行となるように形成されていてもよい。
【0013】
この態様によれば、スリーブとプランジャとの対向面がほぼ平行である一方、コイルスプリングもそれに合わせるように両端面がほぼ平行となっているため、コイルスプリングがスリーブおよびプランジャのそれぞれに安定に当接する構造を実現できる。一方、コイルスプリングの軸線がプランジャの軸線に対して傾くことになるため、コイルスプリングの付勢力がプランジャの軸線方向とそれに直角な方向とに分解される。そして、その付勢力の分力による摩擦力がプランジャに作用し、そのプランジャをボディの内周面に押し付けて上述した摺動抵抗を発生させ、自励振動を抑制することができる。この態様によれば、コイルスプリングをスリーブとプランジャとの間に面接触にて安定な状態に保持できるため、摩擦力がばらつくことも少なく、安定した分力を発生させることができる。その結果、プランジャひいては弁体の挙動も安定に保つことができる。
【0014】
より具体的には、スリーブが、ボディの一端側を封止するとともに固定鉄心として機能してもよい。プランジャは、ボディ内を弁室と背圧室とに区画するとともに、その弁室側にて弁体を支持する一方、その背圧室側にてスリーブに対向配置されていてもよい。このような構成は、いわゆる常閉型の電磁弁に適用して特に有効である。スリーブに傾斜面を設ける必要がないため、容易に実現することができる。
【0015】
また、スリーブが、コイルスプリングを収容する所定深さのガイド穴を有し、そのガイド穴の底面によりコイルスプリングの一端面を支持する一方、そのガイド穴の内周面とコイルスプリングの外周面との間に、コイルスプリングの軸線の傾斜を許容するクリアランスが形成されるように構成されていてもよい。ここでいう「コイルスプリングの軸線の傾斜」は、コイルスプリングの端面が傾斜するように形成された結果、コイルスプリングがスリーブとプランジャとの間で圧縮荷重を受けたときに形成されている傾斜である。その圧縮荷重によるコイルスプリングの変形によって形成される傾斜であってもよいし、コイルスプリングそのものの形状に起因する傾斜であってもよい。
【0016】
この態様によれば、コイルスプリングをスリーブのガイド穴に収容する構成をとるため、そのコイルスプリングをボディ内に安定に保持することができる。また、そのガイド穴の内周面とコイルスプリングの外周面との間に適度なクリアランスが形成され、コイルスプリングの軸線の傾斜を許容する。すなわち、コイルスプリングが圧縮された際にそのコイルスプリングの外周面とガイド穴との間の摩擦力の発生が抑制されるため、コイルスプリングそのものが弁体の作動応答性を低下させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電磁弁によれば、比較的簡易な構成で自励振動を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁弁の構成を表す断面図である。
【図2】電磁弁に組み込まれるコイルスプリングの構造および作用を表す部分拡大図である。
【図3】コイルスプリングによる作用を表す図である。
【図4】第2実施形態にかかる電磁弁の構成を表す断面図である。
【図5】コイルスプリングによる作用を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁弁の構成を表す断面図である。なお、以下の説明では便宜的に図示の状態を基準に各構成の位置関係を表現することがある。
本実施形態の電磁弁は、車両用ブレーキ装置において液圧源とホイールシリンダとをつなぐ液圧回路に配置され、作動流体としてのブレーキフルードの流量を制御するものである。なお、本実施形態においてはその電磁弁の構成に特徴を有し、ブレーキ装置の一般的な構成および動作については公知であるため、後者の説明については省略する。
【0020】
電磁弁1は、ホイールシリンダ内の液圧を増圧させる増圧弁または減圧させる減圧弁として使用され、非通電時は閉弁した状態にあり、必要に応じて通電されて開弁される常閉型のリニア制御弁として構成されている。電磁弁1は、内部に弁部を有するボディ2と、その弁部の開度を制御するためのソレノイド3とを含んで構成される。
【0021】
ボディ2は、段付円筒状をなし、その下端開口部にはブレーキフルードを上流側(一次圧側)から導入する導入ポート10が設けられ、長手方向中央付近の側部にはそのブレーキフルードを下流側(二次圧側)へ導出する一対の導出ポート12が設けられている。これら導入ポート10と導出ポート12とを連通する通路には、有底円筒状の弁座部材14が圧入されており、弁座部材14の底部中央には、これを軸線方向に貫通する弁孔16が設けられている。弁孔16の導出ポート12側の開口部はテーパ状に形成され、そのテーパ面によって弁座18が形成されている。ボディ2内の弁座18の下流側には、弁体20が配置されている。弁体20は、段付円柱状をなし、その基端部が後述のプランジャ32の一端側(図の下端側)に圧入され、プランジャ32と一体的に動作する。弁体20の先端部は縮径されて、その半球状の先端面にて弁座18に着脱して弁部を開閉する。
【0022】
一方、ソレノイド3は、ボディ2の上端部に接合された有底円筒状のスリーブ30と、ボディ2とスリーブ30とに囲まれた空間に配置された円柱状のプランジャ32と、スリーブ30に対して外挿されたコイル部34とを備えている。コイル部34は、ボディ2に外挿される円筒状のボビン36と、ボビン36に巻回された電磁コイル38と、電磁コイル38を外方から覆うようにして収容するケース40とを備えている。スリーブ30は、プランジャ32および電磁コイル38とともに磁気回路を形成する固定鉄心として機能する磁性体からなる。ボディ2は非磁性部材から構成されている。なお、本実施形態において、ボディ2とスリーブ30とを合わせたものが電磁弁1全体としてのボディを構成すると捉えることもできる。プランジャ32は、そのボディ内を弁部側の弁室42と弁部と反対側の背圧室44とに区画する。
【0023】
プランジャ32の周縁部には、そのプランジャ32を軸線方向に貫通する複数の連通路46が形成されており、弁室42に流入した作動液がその連通路46を介して背圧室44にも導入されるようになっている。プランジャ32は、背圧室44側でスリーブ30に対向配置されている。
【0024】
スリーブ30のプランジャ32との対向面には所定深さのガイド穴48が設けられ、そのガイド穴48の底面とプランジャ32の上端面(弁体20とは反対側の端面)との間にコイルスプリング50が介装されている。ガイド穴48とプランジャ32とは、そのコイルスプリング50を介装する対向面において互いに略平行となる。コイルスプリング50は、プランジャ32を介して弁体20を閉弁方向に付勢する付勢手段として機能する。本実施形態においては、プランジャの自励振動を抑制するために、コイルスプリング50の形状に工夫がなされている。
【0025】
図2は、電磁弁に組み込まれるコイルスプリングの構造および作用を表す部分拡大図である。(A)は本実施形態のコイルスプリングの構造を示し、(B)は変形例にかかるコイルスプリングの構造を示している。図3は、コイルスプリングによる作用を表す図である。なお、同図においては便宜上、コイル部の図示を省略している。
【0026】
図2(A)に示すように、コイルスプリング50は、その軸線方向の両端がそれぞれ平面状に加工されている。コイルスプリング50の一方の端面52は、コイルスプリング50の軸線方向と垂直となるように研削され、他方の端面54はその軸線方向と垂直な面に対して傾斜角度θにて傾斜するように研削されている。このため、図3に示したように、コイルスプリング50がスリーブ30とプランジャ32との間に介装されるように組み付けられ、弁体20が開弁方向にリフトした状態においては、コイルスプリング50は圧縮され、その両端面にてプランジャ32およびスリーブ30のそれぞれの対向面に比較的安定に当接する。
【0027】
このとき、コイルスプリング50の周方向位置によって軸線方向の荷重分布に偏りが生じる。図示の例では、コイルスプリング50の右半部の荷重が左半部よりも大きくなり、プランジャ32に対して軸中心よりも右方に偏った偏荷重を付与する。この結果、コイルスプリング50とプランジャ32との間に右方への摩擦力(黒矢印)を発生させる。その結果、プランジャ32がその重心位置(中央部付近)を中心に回動し、その軸線(太い一点鎖線)がボディ2の軸線(細い一点鎖線)に対してやや傾く。それにより、プランジャ32が左方のP点にてボディ2の内周面に比較的強く押し付けられ(黒矢印)、摩擦による摺動抵抗(白矢印)を発生させる。その摺動抵抗が減衰力となってプランジャ32の自励振動が抑制されるようになる。
【0028】
なお、本実施形態では図2(A)に示すように、コイルスプリング50の片側の端面54についてのみ傾斜角度θをもたせた例を示したが、同図(B)に変形例を示すように、コイルスプリング150の一方の端面54のみならず他方の端面252についても、コイルスプリング150の軸線方向と垂直な面に対して傾斜させてもよい。その場合、一方の端面54の傾斜角度θ1の大きさと他方の端面252の傾斜角度θ2の大きさとが等しくなるようにしてもよいし、異なるようにしてもよい。自励振動の抑制および弁部の開閉動作の応答性の観点から適正な摺動抵抗が得られるよう、コイルスプリング150により発生させるべき偏荷重の大きさおよび方向を決定し、傾斜角度θ1,θ2を設定すればよい。
【0029】
図1に戻り、以上のように構成された電磁弁1において、ソレノイド3への通電が停止されると、コイルスプリング50の付勢力によってプランジャ32が閉弁方向に移動して弁体20が弁座18に着座する。このとき、コイルスプリング50が伸長するにつれてそのコイルスプリング50とプランジャ32との摩擦力も低下するため、プランジャ32がボディ2から受ける摺動抵抗も低減する。また、弁座18を形成するテーパ面に弁体20の球状面がガイドされるため、弁部の安定した閉弁動作を担保することができる。
【0030】
一方、ソレノイド3への通電がなされると、そのソレノイド3の吸引力によってプランジャ32がコイルスプリング50の付勢力に抗してスリーブ30に近接する方向に変位する。それにより弁体20が弁座18から離間し、弁部はその通電量に応じた開度に制御される。このとき、弁部の前後差圧の変動により弁体20およびプランジャ32に自励振動が発生しようとしても、コイルスプリング50の偏荷重による上述した摺動抵抗が発生するため、その自励振動は防止されるか少なくとも抑制されるようになる。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態の電磁弁1においては、スリーブ30とプランジャ32との間に介装されるコイルスプリング50の両端が平面状に加工され、そのスリーブ30側の端面が軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成されている。このため、コイルスプリング50が圧縮された際に偏荷重を発生させることができ、その偏荷重によりプランジャ32に適度な摺動抵抗を作用させることができる。それにより、プランジャ32の自励振動ひいてはそれによる異音の発生を抑制することができる。また、コイルスプリング50がスリーブ30に設けられたガイド穴48に収容される構成となっているが、スリーブ30側の底面を傾斜させるのではなく、コイルスプリング50側の端面を傾斜させるようにしたため、その斜面の加工を容易に行うことができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る電磁弁は、コイルスプリングの形状が異なる以外は第1実施形態の電磁弁と同様である。このため、上記第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図4は、第2実施形態にかかる電磁弁の構成を表す断面図である。図5は、コイルスプリングによる作用を表す図である。
図4に示すように、電磁弁201においても、スリーブ30とプランジャ32との間に、プランジャ32を閉弁方向に付勢するコイルスプリング250が介装されている。コイルスプリング250は、その軸線方向の両端がそれぞれ軸線方向と垂直な面に対して傾斜するとともに、その一端面と他端面とが平行となるように研削されている。
【0034】
このため、図5にも示すように、コイルスプリング250の圧縮状態にかかわらず、スリーブ30およびプランジャ32のそれぞれに安定に当接する構造を実現できる。一方、コイルスプリング250の軸線がプランジャ32の軸線に対して傾くことになるため(太い一点鎖線参照)、コイルスプリング250の付勢力がプランジャ32の軸線方向とそれに直角な方向とに分解される。そして、その付勢力の分力による摩擦力(黒矢印)がプランジャ32に作用し、そのプランジャ32をボディ2の内周面に押し付けて上述した摺動抵抗を発生させ、同様に自励振動を抑制することができる。
【0035】
また、このような構成によればコイルスプリング250の全体が傾斜するため、第1実施形態の構成と比較して幅方向のスペースを大きくとるところ、図示のように、ガイド穴48の内周面とコイルスプリング250の外周面との間に適度なクリアランスが形成され、コイルスプリング250の圧縮状態にかかわらず、その軸線の傾斜が許容されている。その結果、コイルスプリング250そのものがプランジャ32ひいては弁体20の作動応答性を低下させることもない。
【0036】
本実施形態によれば、コイルスプリング250の両端面を平行にすることで、スリーブ30およびプランジャ32の各受け面にしっかり設置できるので、安定性が向上する。また、自励振動を抑制する減衰力から研削面の傾斜角度を逆算することも可能であり、安定的に必要最小限の摩擦力を発生させるよう設定することができるようになる。
【0037】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0038】
例えば、各実施形態では常閉型の電磁弁を例に説明したが、非通電時は開弁した状態にあり、必要に応じて通電されて閉弁される常開型のリニア制御弁として構成することもできる。具体的には、ソレノイドによりプランジャに閉弁方向の吸引力を付与し、コイルスプリングによりプランジャを開弁方向に付勢するように構成してもよい。概略的には、例えば図1に示したような電磁弁において、プランジャとスリーブ(固定鉄心)の位置関係を入れ替えてもよい。そして、プランジャに固定された弁体をスリーブの中央を貫通させて弁座に着脱できるようにし、プランジャとスリーブとの間にコイルスプリングを介装させるようにしてもよい。
【0039】
また、各実施形態では電磁弁をブレーキ装置の液圧制御に用いられる液圧制御弁として構成した例を示したが、他の制御対象の動作を制御するために作動流体の流量を制御する制御弁として構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 電磁弁、 2 ボディ、 3 ソレノイド、 10 導入ポート、 12 導出ポート、 14 弁座部材、 16 弁孔、 18 弁座、 20 弁体、 30 スリーブ、 32 プランジャ、 34 コイル部、 36 ボビン、 38 電磁コイル、 40 ケース、 42 弁室、 44 背圧室、 46 連通路、 48 ガイド穴、 50,150 コイルスプリング、 201 電磁弁、 250 コイルスプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドにより開閉制御される弁部を備えた電磁弁であって、
作動流体を通過させる内部通路が形成されたボディと、
前記ボディの端部に設けられたスリーブと、
前記内部通路に設けられた弁座に接離可能に配置されて前記弁部を開閉可能な弁体と、
前記ボディの内周面にガイドされつつ軸線方向に摺動可能に配設されて、その一端側に前記弁体を一体動作可能に支持するプランジャと、
前記プランジャと前記スリーブとの間に介装され、前記弁体を前記ソレノイドの吸引力に抗して開弁方向または閉弁方向に付勢するコイルスプリングと、を備え、
前記コイルスプリングは、その軸線方向の両端がそれぞれ平面状に加工されるとともに、少なくともその一方の端面がその軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成され、両端面が前記プランジャおよび前記スリーブのそれぞれの対向面に当接するように配設されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記スリーブと前記プランジャとが、前記コイルスプリングを介装する対向面において略平行に形成され、
前記コイルスプリングは、その軸線方向の両端がそれぞれ軸線方向と垂直な面に対して傾斜するように形成されるとともに、その一端面と他端面とが略平行となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記スリーブが、前記ボディの一端側を封止するとともに固定鉄心として機能し、
前記プランジャは、前記ボディ内を弁室と背圧室とに区画するとともに、その弁室側にて前記弁体を支持する一方、その背圧室側にて前記スリーブに対向配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記スリーブが、前記コイルスプリングを収容する所定深さのガイド穴を有し、そのガイド穴の底面により前記コイルスプリングの一端面を支持する一方、そのガイド穴の内周面と前記コイルスプリングの外周面との間に、前記コイルスプリングの軸線の傾斜を許容するクリアランスが形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−2086(P2011−2086A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147955(P2009−147955)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】