電磁誘導加熱調理器
【課題】 従来の電磁誘導加熱調理器は、容器外底面の複数の凹凸加工により発生する細かい対流は隣どおしで相互に打ち消しあい、大きな対流を発生させるまでは至らず、米の下層部と上層部に加熱ムラが生じ炊きムラが残ってしまう課題があった。
【解決手段】 本体1と、本体1内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器5と、本体1の下部に配置され、鍋状容器5に渦電流を誘起して鍋状容器5を加熱する加熱コイル3とを備える電磁誘導加熱式調理器において、鍋状容器5は、炭素95%〜100%の焼結体を基材とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成して構成したことを特徴とする。
【解決手段】 本体1と、本体1内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器5と、本体1の下部に配置され、鍋状容器5に渦電流を誘起して鍋状容器5を加熱する加熱コイル3とを備える電磁誘導加熱式調理器において、鍋状容器5は、炭素95%〜100%の焼結体を基材とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成して構成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等を本体内に収容して加熱調理する電磁誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁誘導加熱調理器は、加熱用鍋を非磁性金属のアルミニウム材等を母材として、その外側に磁性金属のフェライト系ステンレス鋼板等を合わせたクラッド板を鍋形状にプレス加工し、その後鍋の内側表面にフッ素樹脂コーティングなどの表面処理を施した構成が一般的であった。更に鍋内の調理物に良好な対流を起こし均一な加熱を実現することを目的として、前記磁性金属の外側に複数の凹凸を設け、この凹凸加工の凸部に誘導加熱コイルの磁力線を集中させ凸部の発熱を強め、凹凸部の温度差により鍋内側に細かい対流を複数発生させて、調理物の対流を活発化させ均一加熱を実現するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3477951号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁誘導加熱調理器は、複数の凹凸加工により発生する細かい対流が隣どうしで相互に打ち消しあい、大きな対流を発生させるまでは至らなかった。例えば炊飯器の場合、米はその性質から約60℃を超えると糊化が始まり、糊化が始まると水分の粘りが増すために対流が起こり難くなり、細かい対流では糊化が始まった米の対流に寄与するまでは至らず、米の下層部と上層部に加熱ムラが生じ、炊きムラが残ってしまうといった課題があった。また凹凸加工に要する加工工程を追加するため工程が複雑になり、鍋の製造コストが高くなるといった課題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、糊化が始まった粘性が高い食品においても、大きな対流を促進し、均一な加熱を実現すると共に、製造コストを抑えた電磁誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、本体と、本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、本体の下部に配置され、鍋状容器に渦電流を誘起して鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、鍋状容器は、炭素95%〜100%の焼結体を基材とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調理鍋状容器を、その殆どを熱伝導が良好な炭素材質を圧縮して高温により焼結し、材質の固有抵抗(Ω・m)を電磁誘導に適した基材で構成することにより、炭素の高熱伝導により短時間で容器の温度が均一に加熱される。さらに、焼結体の特徴である基材中に残る微細孔によって、沸騰時に多くの激しい気泡が発生し、この気泡の上昇によって糊化した米の抵抗を突き破り上面への対流を発生させる。これにより米全体の温度が均一化され、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、炭の持つ浄化作用により水の中の不純物が浄化され美味しい炊飯が可能となる。さらに、保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図3】(a)は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。(b)は、従来の金属系容器の構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図5】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の要部を示す部分断面図である。
【図6】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の外観を示す斜視図である。
【図7】実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図8】実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の蓋状プレートを示す断面図である。
【図9】実施の形態4に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図10】実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器の炭素系鍋載置時の断面図である。
【図11】実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器の金属系鍋載置時の断面図である。
【図12】実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋と磁性金属鍋の形状高さを示す断面図である。
【図13】実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の外観を示す斜視図である。
【図14】実施の形態7に係る電磁誘導加熱調理器の操作/表示部の細部を示す図である。
【図15】実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器の操作/表示部の細部を示す図である。
【図16】実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図17】実施の形態9に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図18】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図19】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図20】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図21】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図22】容器カバーの外観を示す斜視図である。
【図23】容器カバーの中に炭素焼結鍋を収容した状態を示す断面図である。
【図24】容器カバーの中に磁性金属鍋を収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電磁誘導加熱調理器の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。また、図2は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【0010】
図1,2において、1は本体、2はこの本体1に内装固着された容器カバー、3はこの容器カバー2の外壁部に設けられた電磁誘導加熱用の加熱コイルで、3aは外底部に設けられた第一加熱コイル、3bは外底部コーナー部に設けられた第二加熱コイルで、各々のコイルはスパイラル状に旋回され直列に接続され、高周波電流が供給される。4は容器カバー2の底中央部に形成した孔部に貫通して設けられた温度センサで、圧縮バネ4aにより下方から支持される。
【0011】
5は前記容器カバー2に着脱自在に内装される炭素焼結鍋(鍋状容器)であり、外底部中央は前記温度センサ4と接触する。この鍋状容器の材質は、熱伝導が良好な炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成し、内側にはフッ素コーティング等が施してある。また、焼結体は比較的割れ易いため、従来の金属系容器の板厚に対して略2〜5倍の板厚である4〜10mmで構成している。このため、焼結体を基材とした炭素焼結鍋5であっても十分な強度が得られる。さらに、この炭素焼結鍋5の比重は、略1.7g/cm3前後と金属系容器に対して軽量であり、且つ同寸法のアルミニウムは1.5倍、鉄は4.3倍、銅は4.8倍の重量となり、略2〜5倍の板厚で従来の金属系容器と同等の重量となる。
【0012】
また、炭素は非磁性のため比透磁率が1であり、鍋への投入電力を上げるには、以下の式より抵抗率ρ(Ωm)を高くする必要がある。
【0013】
【数1】
【0014】
P:鍋投入電力、 N:加熱コイル巻き数、 ρ:抵抗率
f:周波数、 μ:比透磁率、 I:コイル電流
抵抗率は、非磁性である18−8ステンレスの抵抗率(7.2×10-7)以上を設定することにより炭素でも電磁誘導加熱が可能となる。
【0015】
6は容器カバー2の上方フランジ部に例えば三箇所凸部で形成された支持部材で、炭素焼結鍋5が係止される。7は炭素焼結鍋5を覆う内蓋で、周縁部に配置されたシール材である蓋パッキン8により炭素焼結鍋5のフランジ部との密閉性を得る。9はこの内蓋7を覆い係止材10で連結された外蓋で、本体1に開閉自在に係止されている。11は内蓋7、外蓋9を貫通して設けられた蒸気口で、容器内弁11aと外部弁11bによって構成される。12は前記外蓋9の一部に設けられた操作/表示部である。さらに、20は加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ回路、21はインバータ回路20を駆動制御する制御部である。
【0016】
次に、図1,2を用いて、本実施の形態の動作について説明する。始めに所定量の米を炭素焼結鍋5内に入れた後、米量に応じた水を入れる。その後、炭素焼結鍋5を容器カバー2に載置し外蓋9を閉めると、内蓋7の蓋パッキン8が炭素焼結鍋5のフランジ部に圧接されて密閉シールされる。操作/表示部12から炊飯工程スイッチをオンして炊飯工程がスタートする。
【0017】
加熱コイル3a,3bには、インバータ回路20から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生し、加熱コイル3a,3bと磁気結合した炭素焼結鍋5の加熱コイル対向面が励磁され、容器底面に渦電流が誘起される。この渦電流と炭素焼結鍋5の持つ抵抗によりジュール熱を生じ、鍋底面が発熱して加熱が行われる。炭素焼結鍋5は、抵抗率略7.2×10-7以上の高抵抗を有しているため、電磁誘導加熱が可能となる。炭素で構成された炭素焼結鍋5は、一般に熱伝導率が高いアルミニウム(240W/mK)に対して略2倍炭素の高熱伝導特性を持つため、短時間に容器の温度が均一に上昇し、その結果、米に対して均一に効率よく加熱が行われる。
【0018】
また、炭素焼結体は、素材内部に略10〜50μmの多数の気孔を有しているため、炭素焼結鍋5の内面温度が略100℃近くに到達すると、気孔から多数の気泡が発生する。図4(a)は炭素で構成された炭素焼結鍋5の断面図、図4(b)は従来の金属系容器の断面図を示し、炭素で構成された炭素焼結鍋5の気泡発生量は従来の金属系容器に比べ格段に多く、沸騰時の揺動が激しい状態となる。この気泡は直上の米と水へと伝わり、糊化して粘性が高まった米の抵抗を突き破り、上層に対流する。
【0019】
一度対流すると米が動いて押しのけられ、熱水及び気泡の通り道を形成し、以後激しく底部から上部へ対流する。この対流経路は炊き上がり後も穴となって残り、いわゆる「カニ穴」となる。また、対流経路付近にある米粒は経路の抵抗を少なくする方向へと向き、「ご飯が立つ」方向へと向きを変える。その結果、美味しいご飯を炊き上げる要件である「複数のカニ穴があり、ご飯が立つ」といった炊飯を再現することが可能となる。加えて炭の持つ浄化作用により、水の中の不純物が浄化され、美味しいご飯の炊飯が可能となる。
【0020】
かくして、炭素焼結鍋5内の水が無くなり、急激に温度上昇すると、この温度上昇を検出する温度センサ4はその信号を制御部21に入力し、制御部21は加熱コイル3への通電を停止する。その後、炭素焼結鍋5の温度が保温状態を保つ所定温度まで低下すると、制御部21は、再び加熱コイル3への断続通電を行うが、炭素焼結鍋5の厚みによって熱容量が大きく、放熱が少なくなることから、少ない通電量で保温を保つことができ、省エネ効果が発揮される。また、炭の持つ脱臭効果により保温時の臭いが低減されるので、長時間の保温が可能となる。
【0021】
以上のように、炭素焼結鍋5を電磁誘導加熱に好適な、厚さ、抵抗率の炭素材で構成することにより、炭素の持つ高熱伝導性、低比重、高熱容量性、また多気孔性、更には炭の持つ脱臭効果、浄化・殺菌効果により、容器内の均一な温度上昇と沸騰時の多量の気泡による対流促進により、米と水を均一に加熱し炊きムラを無くし、加えて水の浄化作用により美味しい炊飯が可能となる。また保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【0022】
なお、本実施の形態では、加熱コイル3を第一と第二コイルに分割して説明したが、底面に一括設置しても同様の効果が得られる。また温度センサ4を炭素焼結鍋5の外底部に接触させて配置したが、これは例えば非接触赤外線センサ等によって水温、及び米温度を直接計測しても良い。
【0023】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図4は炭素焼結鍋5の断面図、図5は炭素焼結鍋5の要部を示す部分断面図、図6は炭素焼結鍋5の斜視図である。この実施の形態2が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5内に一体となった突起物を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0024】
13は、炭素焼結鍋5の鍋内底部で、且つ第一加熱コイル3a設置部と対向した位置に設けた断面が円錐状のリング突起(連続凸部)である。このリング突起は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形を成す。従って、本実施の形態では、炭素焼結鍋5が円状のため、このリング突起13も円状に形成し、その直径ΦAは、炭素焼結鍋5の内側直径ΦBに対して1/2〜1/4の範囲に設定される。更に断面円錐状の突起は、図5(a)に示すように、底面に対して円錐状の裾野が広がる様なR面を構成することが好適である。
【0025】
次いで、その動作について図5を用いて説明する。図5(a)は、リング突起13を有する時の気泡の発生と離脱状況、これに対し、図5(b)は、リング突起13が無いときの気泡の発生と離脱状況を示す模式図である。まず、図5(b)の場合、底面から発生した細かい気泡は、中央部付近に近い底面の場合各々独立して底面から離脱し、側面に近い底面の場合底面のコーナーRに沿って移動しながら成長して側面に沿って上昇する。この場合、側面を沿う対流が大きく、中央付近の上昇対流の数は多いが、大きな対流は発生しない。
【0026】
これに対して、図5(a)のリング突起13を有するものは、中央付近で発生した気泡が、リングの内側と外側から断面円錐状の裾野に沿って移動しながら成長して大きな気泡となり、最終的に断面円錐状の先端部から離脱する。この場合リング突起13の直径ΦAから大きな気泡が離脱するため、側面対流と中央付近の対流が同時に発生し、米と水はより一層均一化される。また、リング突起13上方部から気泡が上昇するため、この円周に沿って「カニ穴」が形成される。実施の形態1の場合、基本的にカニ穴がランダムに発生するのに対して、カニ穴発生場所を制御可能にすることにより、より確実にカニ穴が形成されるため、常に美味しいご飯が炊けることになる。この時、カニ穴発生場所は、炭素焼結鍋5の内側直径ΦBに対して、1/2〜1/4の範囲に設定すると容器内の熱伝達から均一な炊飯が可能となる。
【0027】
更に、図6に基づいて、他の例を説明する。図6(a)は、炭素焼結鍋5の鍋内底部に環状に形成されたリング突起(連続凸部)13を示す斜視図、図6(b)は、炭素焼結鍋5の鍋内底部にリング状に配置された複数の独立突起(独立凸部)13aを示す斜視図である。そして、リング突起13は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形に形成され、複数の独立突起13aは、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形に配設されている。
【0028】
このように、リング突起13および独立突起13aを鍋底形状と略相似形に形成(配設)することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができ、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化される。さらに、この独立突起13aの場合は、限られた突起の先端から気泡が成長離脱するために、リング突起13よりも更にカニ穴を発生させる場所を制限でき、確実にカニ穴を生成でき、美味しい炊飯が可能となる。
【0029】
なお、このリング突起13、及び独立突起13aは、通常の金属系鍋においても適用可能であるが、気泡発生量の違いと加工の煩わしさから、炭素を用いた炭素焼結鍋に適用することが高い効果を奏することは言うまでもない。また、リング突起13は、一重のリングで説明したが、多重のリングで構成すれば、多重の「カニ穴」ができるので、さらに優れた効果が得られる。
【0030】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図7は、炭素焼結鍋5の構造を示す断面図である。また、図8は、蓋状プレート15の構造を示す断面図である。この実施の形態3が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5内に気泡プレート14または蓋状プレート15を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0031】
気泡プレート14は、炭素焼結鍋5の略中央底面に着脱自在に装着された耐熱性を有しており、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形を成し、鍋内底部で且つプレート周縁が加熱コイル3設置部と対向した位置に配設される。14aはこの気泡プレート14の下面に設けられた係止凸部で、炭素焼結鍋5の鍋底形状に設けられた凹部に係止凸部が嵌り込むことにより、気泡プレート14は炭素焼結鍋5に係止される。蓋状プレート15は、この気泡プレート14と別形状を成すもので、下面が開放された蓋状容器形状で形成され、且つ周縁部の壁部には、複数の連通孔が形成されている。
【0032】
図7,8を用いて動作を説明する。気泡プレート14は、炭素焼結鍋5の内底面に設置される。沸騰が始まると炭素焼結鍋5の気泡プレート14に覆われた面からの気泡は気泡プレート14に阻まれて上部に上昇出来ない。発生気泡は気泡プレート14下面を伝わり周縁部から成長して大きな気泡となって放出される。従って、気泡プレート14の周縁部から大きな対流が発生し、実施の形態2で述べた様な「カニ穴」が円周状に発生して、美味しい炊飯が実現できる。さらに、図8の蓋状プレート15では、気泡が蓋状プレート内に一旦溜り、連通孔15aから大きな気泡となって図中矢印の方向に一気に噴出するため、「カニ穴」発生場所を制御できると共に、確実に「カニ穴」を生成でき、美味しい炊飯が実現できる。
【0033】
また、本実施の形態は、気泡プレート14面上に発生する気泡が極めて少なくなる代わりに、気泡プレート14の下面で発生する気泡が全てプレート周縁から放出されるため、気泡の纏まり量が多くなり、確実に「カニ穴」を形成することができる。さらに、気泡プレート14および蓋状プレート15を鍋底形状と略相似形に形成することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができる。その結果、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化されるので、美味しい炊飯が実現できる。
【0034】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図9は、炭素焼結鍋5の構造を示す断面図である。この実施の形態4が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5の鍋外底部にリング状の凹部溝(連続凹部)16を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0035】
凹部溝16は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形で、且つプレート周縁が加熱コイル3の設置部と対向した位置の鍋外底部に、例えば、炭素焼結鍋5の板厚の1/3〜1/2の溝として形成されている。
【0036】
図9を用いて動作を説明する。凹部溝16を加熱コイル3と対向させて設けることにより、発熱面積が増加すると共に、磁力線の性質上、磁力線は凹部加工を形成するコーナー部の凸部に集中する。従って凸部の発熱が強まると共に、凹部は肉厚が薄いため、他部よりも早く発熱が伝わり加熱される。これにより凹部溝16の上部から多くの気泡が発生し、同図に示したように、凹部溝16の上部から大きな対流が形成される。その結果、実施の形態2で述べたような「カニ穴」が円周状に形成され、美味しい炊飯が実現できる。
【0037】
また、炭素焼結鍋5の外面に凹部溝16を設けることにより、炭素焼結鍋5の内面に凹凸部を設ける構成に比べて、米等の食品に対する清掃性が向上する。さらに、さらに、凹部溝16を鍋底形状と略相似形に形成することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができる。その結果、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化されるので、美味しい炊飯が実現できる。
なお、本実施の形態では、連続的な凹部溝16を例に述べたが、リング状に独立した複数の独立凹部を設けても良いし、また、凹部溝16を多重に構成しても同様の効果が得られる。
【0038】
実施の形態5.
次に、実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図10は、炭素焼結鍋5を載置した場合の電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図、図11は、磁性金属鍋(鍋状容器)5aを載置した場合の電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。この実施の形態5が図1に示す実施の形態1と異なるのは、電磁誘導加熱調理器に用いられる厚さ1mm〜2mm程度の一般的な磁性金属鍋と、前記4mm〜10mmの炭素焼結鍋とが、同一本体に各々着脱自在に収納可能な内蓋支持構造を有している点である。その他の構成については、実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0039】
17は、外蓋9と内蓋7の二重構造とし、この外蓋9と内蓋7との間隙に配した内蓋バネである。この内蓋バネ17により、外蓋9に対し内蓋7は上下可動可能となり、この内蓋7の上下可動により、厚さの異なる鍋材によっても密閉構造を維持できる。
【0040】
図10,11を用いて動作を説明する。図10は板厚4mm〜10mmの炭素焼結材で形成した炭素焼結鍋5を載置した図であり、容器5のフランジ部が厚いため、内蓋バネ17が圧縮されて、フランジ部と蓋パッキン8が密閉される。図11は板厚1mm〜2mm程度の一般的な磁性金属鍋5aを載置した図であり、内蓋バネ17が伸張した状態で、フランジ部と蓋パッキン8が密閉される。このように厚さの異なる炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aとを、密閉構造を保ちつつ同一本体1に各々着脱自在に収納可能としたことにより、例えば、一つの本体1に対し板厚の異なる複数種類の鍋を同梱可能であり、鍋の使いまわしや炊き分けが可能となり使い勝手が向上する。
【0041】
実施の形態6.
次に、実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図12は炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aの形状高さを示す断面図、図13は磁性金属鍋5aの外観を示す斜視図である。この実施の形態6が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5のフランジ部に切り欠き部18が形成されている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0042】
図12に示す様に、フランジ部を含む炭素焼結鍋5の高さ(C)と磁性金属鍋5aの高さ(D)を同一に形成する。切り欠き部18は、容器カバー2の上部に設けられた凸状の支持部材6と当接部に位置する炭素焼結鍋5のフランジ部に形成され、支持部材6と同数設けられる。本実施の形態では3箇所設けられている。
【0043】
図12,13を用いて動作を説明する。図12(b)に示すように、磁性金属鍋5aはこの支持部材6の上に載置される。炭素焼結鍋5は、切り欠き部18と支持部材6の位置を合わせて載置することにより、炭素焼結鍋5のフランジ部は容器カバー2の上端と直接接触して設置される。支持部材6の高さ(3mm〜8mm程度)及び磁性金属鍋5aの板厚(1mm〜2mm程度)を合わせた厚さと、炭素焼結鍋5の板厚(4mm〜10mm)とを略等しくすることで、各々の鍋を載置した時に高さが略同一となるため、内蓋7を閉めた時に鍋のフランジ部が蓋パッキン8により確実に密閉される。
【0044】
このように、厚さの異なる炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aとを、密閉構造を保ちつつ、同一の本体1に各々着脱自在に収納可能としたことにより、例えば、一つの本体1に対し板厚の異なる複数種類の鍋を同梱可能であり、鍋の使いまわしや炊き分けが可能となり使い勝手が向上する。
また、炭素焼結鍋5のフランジ部の一部を切り欠いて、内蓋7との間隔を調整しているので、内蓋7を上下可動可能にしなくても、鍋内の密閉性が十分に確保される。
【0045】
実施の形態7.
次に、実施の形態7に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図14は、操作/表示部12の細部を示す図である。この実施の形態7が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5に対応した炭釜炊飯スイッチ(第1の炊飯スイッチ)12aと、磁性金属鍋5aに対応した普通炊飯スイッチ(第2の炊飯スイッチ)12bとを備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
炭釜炊飯スイッチ12aは、炭素焼結鍋5を載置した時に選択するスイッチであり、普通炊飯スイッチ12bは、磁性金属鍋5aを載置した時に選択するスイッチである。このように、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5a用のスイッチを各々設けることにより、制御部21は、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの出力信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御を行うことができる。
【0047】
例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。他の方法として、電流を増すためにコイル電圧を上昇させる等、炭素焼結鍋5への投入電力を増やす制御を行うことが可能となる。また、熱伝導率が高いために給水工程を短くしたり、保温時の投入電力の低減制御等、より効率の良い炊飯工程、保温工程が可能となり、美味しい炊き上がりと省エネを実現できる。
【0048】
なお、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの代わりに、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれか一方を選択する選択スイッチと、炊飯スイッチとを設けてもよい。この場合にも、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが載置されていたかを選択スイッチで選択できるので、炊飯スイッチで炊飯処理を行う際には、制御部21は、選択スイッチの出力信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御することができる。例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。
【0049】
実施の形態8.
次に、実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図15は、操作/表示部12の細部を示す図であり、図16は、駆動回路を示す図である。この実施の形態8が図14に示す実施の形態7と異なるのは、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの代わりに、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが本体1に収納されたか判定する鍋判定部(鍋判定手段)22と、炊飯スイッチ12cとを備えている点である。その他の構成については実施の形態7と同一または同等であり、実施の形態7と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0050】
炊飯スイッチ12cは、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5a兼用のスイッチである。炊飯スイッチ12cがオンされると、鍋判定部22が自動的に炭素焼結鍋5か磁性金属鍋5aかを判定して、判定結果信号を制御部21に送る。制御部21では、この判定結果信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御を行う。鍋判定部22での鍋の判定方法は、例えば一定の駆動周波数で動作させた時のコイル電流の違いでも良いし、実施の形態5であれば内蓋7の上下位置の違い、また実施の形態6であれば支持部材6へ掛かる圧力の違いを検出してもよい。
【0051】
このように、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが載置されていたかを鍋判定部22で判定できるので、炊飯スイッチ12cで炊飯処理を行う際には、制御部21は、鍋判定部22の判定結果信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御することができる。例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。また、鍋判定手段で自動的に鍋部材を判定しているため、使用者による入力間違いを防止することができる。
【0052】
実施の形態9.
次に、実施の形態9に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図17は鍋状容器の構造を示す断面図である。この実施の形態9が図1に示す実施の形態1と異なるのは、鍋状容器としてクラッド鍋(鍋状容器)19を用いている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0053】
クラッド鍋19は、フェライト系ステンレス鋼板等の磁性金属の外層19aを母材として、その内側に炭素95%〜100%の炭素焼結材の内層19bを組み合わせたクラッド材からなり、磁性金属の外層19aの厚さを0.4〜1.0mm、炭素焼結材の内層19bの厚さを外層19aに対して略1/2倍〜3倍としたクラッド材として構成した。その後、クラッド鍋19の内側表面にフッ素樹脂コーティングなどの表面処理を施している。
【0054】
この構成によれば、クラッド鍋19の内側に配置した、炭素の高熱伝導により短時間で容器の温度が均一に加熱されることに加え、焼結体の特徴である基材中に残る微細孔によって、沸騰時に多くの激しい気泡が発生し、この気泡の上昇によって糊化した米の抵抗を突き破り、上面への対流を発生させる。板厚については金属系の基材が厚い場合は略1/2程度の炭素焼結材とし、金属系が薄い場合は、略3倍程度の炭素焼結材で構成することにより、全体的な厚さを抑えつつ、炭素焼結材による気泡を好適に生成することができる。
【0055】
その結果、米全体の温度が均一化され、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、炭の持つ浄化作用により水の中の不純物が浄化され美味しい炊飯が可能となる。さらに、保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【0056】
なお、磁性金属の外層19aの代わりに、プラスチック材の外層を用いてもよい。プラスチック材の外層によって十分な強度が得られると共に、鍋全体の軽量化を図ることができる。そして、内層の炭素焼結材によって電磁誘導加熱を行うことにより、炭素焼結材から多くの気泡が発生し、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。
また、磁性金属の外層19aと炭素焼結材の内層19bとを組み合わせたクラッド材は、鍋の底部だけに用い、側部は磁性金属のみで構成してもよい。上面への対流の発生に寄与するのは、主に底部で発生した気泡なので、底部のみに炭素焼結材を用いた構成であっても、十分な対流が得られ、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。
さらに、鍋の底部は炭素焼結材のみで構成し、鍋の側部は磁性金属のみで構成してもよい。この場合にも、底部で発生する気泡によって十分な対流が得られるので、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、鍋全体を炭素焼結材のみで構成するのに比べて、高い強度が得られる。
【0057】
実施の形態10.
次に、実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図18は、鍋状容器の構造を示す断面図であり、図19は、駆動回路を示す図である。この実施の形態10が図1に示す実施の形態1と異なるのは、安全弁30と調圧部(調圧手段)31とが内蓋7に設けられている点と、調圧部31が制御手段21によって制御されている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0058】
図18に示すように、安全弁30は、内蓋7を貫通する通気孔30aと、この通気孔30aを開閉する弁部30bとを備え、炭素焼結鍋5内部の圧力が所定以上の場合に、弁部30bが開き、通気孔30aを開放させる。その結果、炭素焼結鍋5内部の圧力が異常に高くなるのを防止できる。
また、調圧部31は、内蓋7を貫通する通気孔31aと、この通気孔31aを開閉する調圧ボール(調圧弁)31bと、調圧ボール31bを横方向に摺動させるソレノイド31cとを備えている。そして、ソレノイド31cの駆動により、調圧ボール31bが左右に摺動し、通気孔31aを開閉制御することができる。この開閉制御によって、炭素焼結鍋5内部の圧力を調整できる。
【0059】
次に、図20のフローチャートを用いて、本実施の形態の動作について説明する。始めに所定量の米を炭素焼結鍋5内に入れた後、米量に応じた水を入れる。その後、炭素焼結鍋5を容器カバー2に載置し外蓋9を閉めると、内蓋7の蓋パッキン8が炭素焼結鍋5のフランジ部に圧接されて密閉シールされる。操作/表示部12から炊飯工程スイッチをオンして炊飯工程がスタートする(S100)。
【0060】
加熱コイル3a,3bには、インバータ回路20から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生し、加熱コイル3a,3bと磁気結合した炭素焼結鍋5の加熱コイル対向面が励磁され、容器底面に渦電流が誘起される。この渦電流と炭素焼結鍋5の持つ抵抗によりジュール熱を生じ、鍋底面が発熱して加熱が行われる。なお、炭素焼結鍋5を加熱させる際には、予め、制御部21の制御に基づいて、ソレノイド31cを駆動させて、調圧ボール31bを横方向に摺動させており、この摺動により、通気孔31aは開放されているものとする。
【0061】
炭素焼結鍋5の加熱により、鍋底面の温度がT1(例えば、100℃)まで上昇した場合(S101)、温度センサ4から伝送される鍋底面の温度の測定値に基づいて、制御部21は、ソレノイド31cを駆動させる。ソレノイド31cの駆動によって、調圧ボール31bは横方向に摺動し、通気孔31aを閉鎖させる。また、制御部21は、インバータ回路20の動作を停止(または低下)させ、炭素焼結鍋5の加熱を中断して、炭素焼結鍋5内部の温度を低下させる(S102)。この炭素焼結鍋5内部の温度低下により、炭素焼結鍋5内部は減圧される。
【0062】
炭素焼結鍋5の素材は、多数の気孔を有する多孔質性を有するので、図21に示すように、炭素焼結鍋5内部の減圧によって、多数の気孔に蓄えられた空気が気泡となって鍋内に多数出現する。この気泡によって、炭素焼結鍋5内部の水と米が攪拌され、感度分布が均一化される。このため、炭素焼結鍋5内部の温度分布も均一化され、均一な炊飯が実現される。
【0063】
次に、鍋底面の温度が、T2(例えば、90℃)に降下した時点で(S103)、制御部21は、ソレノイド31cを駆動させて、調圧ボール31bを横方向に摺動させる。この摺動により、通気孔31aは開放され、炭素焼結鍋5内部の圧力が上昇する。その後、制御部21は、炭素焼結鍋5の加熱を再開させて(S104)、通常の炊飯工程に移行する(S105)。
【0064】
以上のように、本実施の形態は、炭素焼結鍋5内部を減圧制御しているので、炭素焼結鍋5の内面に設けられた多数の気孔から気泡が鍋内に出現し、この気泡によって、炭素焼結鍋5内部の水と米が攪拌され、感度分布が均一化される。このため、炭素焼結鍋5内部の温度分布も均一化され、均一な炊飯が実現される。
なお、減圧制御による攪拌処理(S101からS104までの処理)は、複数回行ってもよい。また、調圧ボール31bおよびソレノイド31cの代わりに小型のポンプを設けて、炭素焼結鍋5内部の空気をポンプで抜き出して、炭素焼結鍋5内部を減圧してもよい。この場合にも、多数の気孔から気泡が鍋内に出現させることができ、感度分布が均一化および温度分布も均一化が図れ、均一な炊飯が実現される。
【0065】
実施の形態11.
次に、実施の形態11に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図22は、容器カバー2の外観を示す斜視図である。この実施の形態11が図12に示す実施の形態6と異なるのは、容器カバー2上端の縁部に複数のストッパー32が設けられている点である。その他の構成については実施の形態6と同一または同等であり、実施の形態6と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
図22に示すように、容器カバー2上端の縁部には、3個のストッパー32が上下動自在に配置されている。これらのストッパー32の上部には、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を押圧するゴム製のヘッド部(滑り止め部材)32aが設けられている。また、ストッパー32の下端には、ストッパー32を上方に付勢するバネ材33が設けられている。このバネ材33の付勢力によって、ストッパー32は、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を下から押圧する。
【0067】
図23は、容器カバー2の中に炭素焼結鍋5を収容した状態を示す断面図である。また、図24は、容器カバー2の中に磁性金属鍋5aを収容した状態を示す断面図である。これらの図面に示すように、ストッパー32が上下動することにより、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aの鍋厚の違いが吸収される。このため、鍋厚の異なる複数の鍋が、容器カバー2内に選択的に収納可能となる。また、各ストッパー32は、バネ材33によって上方に付勢されているので、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を下から押圧し、回動を抑制した状態で、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)を容器カバー2内に確実に固定することができる。
【0068】
特に、ストッパー32の上部には、ゴム製のヘッド部32aが設けられているので、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部と、ストッパー32のヘッド部32aとの摩擦力が増加し、一層確実に、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)の回動を抑制することができる。
なお、ストッパー32は、3個に限定されることはなく、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)を支持するのに適した所定の個数(4個,5個等)であればよい。また、各ストッパー32を上方に付勢する手段としては、バネ材33に限定されることはなく、ゴム材その他のいずれかの弾性部材であればよい。
【符号の説明】
【0069】
1…本体、2…容器カバー、3…加熱コイル、4…温度センサ、4a…圧縮バネ、5…炭素焼結鍋(鍋状容器)、5a…磁性金属鍋(鍋状容器)、6…支持部材、7…内蓋、8…蓋パッキン、9…外蓋、10…係止材、11…蒸気口、12…操作/表示部、12a…炭釜炊飯スイッチ、12b…普通炊飯スイッチ、12c…炊飯スイッチ、13…リング突起(連続凸部)、13a…独立突起(独立凸部)、14…気泡プレート、15…蓋状プレート、16…凹部溝(連続凹部)、17…内蓋バネ、18…切り欠き部、19…クラッド鍋(鍋状容器)、19a…外層、19b…内層、20…インバータ回路、21…制御部、22…鍋判定部(鍋判定手段)、30…安全弁、30a…通気孔、30b…弁部、31…調圧部、31a…通気孔、31b…調圧ボール(調圧弁)、31c…ソレノイド、32…ストッパー、32a…ヘッド部(滑り止め部材)、33…バネ材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等を本体内に収容して加熱調理する電磁誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁誘導加熱調理器は、加熱用鍋を非磁性金属のアルミニウム材等を母材として、その外側に磁性金属のフェライト系ステンレス鋼板等を合わせたクラッド板を鍋形状にプレス加工し、その後鍋の内側表面にフッ素樹脂コーティングなどの表面処理を施した構成が一般的であった。更に鍋内の調理物に良好な対流を起こし均一な加熱を実現することを目的として、前記磁性金属の外側に複数の凹凸を設け、この凹凸加工の凸部に誘導加熱コイルの磁力線を集中させ凸部の発熱を強め、凹凸部の温度差により鍋内側に細かい対流を複数発生させて、調理物の対流を活発化させ均一加熱を実現するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3477951号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁誘導加熱調理器は、複数の凹凸加工により発生する細かい対流が隣どうしで相互に打ち消しあい、大きな対流を発生させるまでは至らなかった。例えば炊飯器の場合、米はその性質から約60℃を超えると糊化が始まり、糊化が始まると水分の粘りが増すために対流が起こり難くなり、細かい対流では糊化が始まった米の対流に寄与するまでは至らず、米の下層部と上層部に加熱ムラが生じ、炊きムラが残ってしまうといった課題があった。また凹凸加工に要する加工工程を追加するため工程が複雑になり、鍋の製造コストが高くなるといった課題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、糊化が始まった粘性が高い食品においても、大きな対流を促進し、均一な加熱を実現すると共に、製造コストを抑えた電磁誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、本体と、本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、本体の下部に配置され、鍋状容器に渦電流を誘起して鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、鍋状容器は、炭素95%〜100%の焼結体を基材とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調理鍋状容器を、その殆どを熱伝導が良好な炭素材質を圧縮して高温により焼結し、材質の固有抵抗(Ω・m)を電磁誘導に適した基材で構成することにより、炭素の高熱伝導により短時間で容器の温度が均一に加熱される。さらに、焼結体の特徴である基材中に残る微細孔によって、沸騰時に多くの激しい気泡が発生し、この気泡の上昇によって糊化した米の抵抗を突き破り上面への対流を発生させる。これにより米全体の温度が均一化され、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、炭の持つ浄化作用により水の中の不純物が浄化され美味しい炊飯が可能となる。さらに、保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図3】(a)は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。(b)は、従来の金属系容器の構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図5】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の要部を示す部分断面図である。
【図6】実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の外観を示す斜視図である。
【図7】実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図8】実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の蓋状プレートを示す断面図である。
【図9】実施の形態4に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の構造を示す断面図である。
【図10】実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器の炭素系鍋載置時の断面図である。
【図11】実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器の金属系鍋載置時の断面図である。
【図12】実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋と磁性金属鍋の形状高さを示す断面図である。
【図13】実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器の炭素焼結鍋の外観を示す斜視図である。
【図14】実施の形態7に係る電磁誘導加熱調理器の操作/表示部の細部を示す図である。
【図15】実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器の操作/表示部の細部を示す図である。
【図16】実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図17】実施の形態9に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図18】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図19】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【図20】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図21】実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器の鍋状容器の構造を示す断面図である。
【図22】容器カバーの外観を示す斜視図である。
【図23】容器カバーの中に炭素焼結鍋を収容した状態を示す断面図である。
【図24】容器カバーの中に磁性金属鍋を収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電磁誘導加熱調理器の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。また、図2は、実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の駆動回路を示す図である。
【0010】
図1,2において、1は本体、2はこの本体1に内装固着された容器カバー、3はこの容器カバー2の外壁部に設けられた電磁誘導加熱用の加熱コイルで、3aは外底部に設けられた第一加熱コイル、3bは外底部コーナー部に設けられた第二加熱コイルで、各々のコイルはスパイラル状に旋回され直列に接続され、高周波電流が供給される。4は容器カバー2の底中央部に形成した孔部に貫通して設けられた温度センサで、圧縮バネ4aにより下方から支持される。
【0011】
5は前記容器カバー2に着脱自在に内装される炭素焼結鍋(鍋状容器)であり、外底部中央は前記温度センサ4と接触する。この鍋状容器の材質は、熱伝導が良好な炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成し、内側にはフッ素コーティング等が施してある。また、焼結体は比較的割れ易いため、従来の金属系容器の板厚に対して略2〜5倍の板厚である4〜10mmで構成している。このため、焼結体を基材とした炭素焼結鍋5であっても十分な強度が得られる。さらに、この炭素焼結鍋5の比重は、略1.7g/cm3前後と金属系容器に対して軽量であり、且つ同寸法のアルミニウムは1.5倍、鉄は4.3倍、銅は4.8倍の重量となり、略2〜5倍の板厚で従来の金属系容器と同等の重量となる。
【0012】
また、炭素は非磁性のため比透磁率が1であり、鍋への投入電力を上げるには、以下の式より抵抗率ρ(Ωm)を高くする必要がある。
【0013】
【数1】
【0014】
P:鍋投入電力、 N:加熱コイル巻き数、 ρ:抵抗率
f:周波数、 μ:比透磁率、 I:コイル電流
抵抗率は、非磁性である18−8ステンレスの抵抗率(7.2×10-7)以上を設定することにより炭素でも電磁誘導加熱が可能となる。
【0015】
6は容器カバー2の上方フランジ部に例えば三箇所凸部で形成された支持部材で、炭素焼結鍋5が係止される。7は炭素焼結鍋5を覆う内蓋で、周縁部に配置されたシール材である蓋パッキン8により炭素焼結鍋5のフランジ部との密閉性を得る。9はこの内蓋7を覆い係止材10で連結された外蓋で、本体1に開閉自在に係止されている。11は内蓋7、外蓋9を貫通して設けられた蒸気口で、容器内弁11aと外部弁11bによって構成される。12は前記外蓋9の一部に設けられた操作/表示部である。さらに、20は加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ回路、21はインバータ回路20を駆動制御する制御部である。
【0016】
次に、図1,2を用いて、本実施の形態の動作について説明する。始めに所定量の米を炭素焼結鍋5内に入れた後、米量に応じた水を入れる。その後、炭素焼結鍋5を容器カバー2に載置し外蓋9を閉めると、内蓋7の蓋パッキン8が炭素焼結鍋5のフランジ部に圧接されて密閉シールされる。操作/表示部12から炊飯工程スイッチをオンして炊飯工程がスタートする。
【0017】
加熱コイル3a,3bには、インバータ回路20から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生し、加熱コイル3a,3bと磁気結合した炭素焼結鍋5の加熱コイル対向面が励磁され、容器底面に渦電流が誘起される。この渦電流と炭素焼結鍋5の持つ抵抗によりジュール熱を生じ、鍋底面が発熱して加熱が行われる。炭素焼結鍋5は、抵抗率略7.2×10-7以上の高抵抗を有しているため、電磁誘導加熱が可能となる。炭素で構成された炭素焼結鍋5は、一般に熱伝導率が高いアルミニウム(240W/mK)に対して略2倍炭素の高熱伝導特性を持つため、短時間に容器の温度が均一に上昇し、その結果、米に対して均一に効率よく加熱が行われる。
【0018】
また、炭素焼結体は、素材内部に略10〜50μmの多数の気孔を有しているため、炭素焼結鍋5の内面温度が略100℃近くに到達すると、気孔から多数の気泡が発生する。図4(a)は炭素で構成された炭素焼結鍋5の断面図、図4(b)は従来の金属系容器の断面図を示し、炭素で構成された炭素焼結鍋5の気泡発生量は従来の金属系容器に比べ格段に多く、沸騰時の揺動が激しい状態となる。この気泡は直上の米と水へと伝わり、糊化して粘性が高まった米の抵抗を突き破り、上層に対流する。
【0019】
一度対流すると米が動いて押しのけられ、熱水及び気泡の通り道を形成し、以後激しく底部から上部へ対流する。この対流経路は炊き上がり後も穴となって残り、いわゆる「カニ穴」となる。また、対流経路付近にある米粒は経路の抵抗を少なくする方向へと向き、「ご飯が立つ」方向へと向きを変える。その結果、美味しいご飯を炊き上げる要件である「複数のカニ穴があり、ご飯が立つ」といった炊飯を再現することが可能となる。加えて炭の持つ浄化作用により、水の中の不純物が浄化され、美味しいご飯の炊飯が可能となる。
【0020】
かくして、炭素焼結鍋5内の水が無くなり、急激に温度上昇すると、この温度上昇を検出する温度センサ4はその信号を制御部21に入力し、制御部21は加熱コイル3への通電を停止する。その後、炭素焼結鍋5の温度が保温状態を保つ所定温度まで低下すると、制御部21は、再び加熱コイル3への断続通電を行うが、炭素焼結鍋5の厚みによって熱容量が大きく、放熱が少なくなることから、少ない通電量で保温を保つことができ、省エネ効果が発揮される。また、炭の持つ脱臭効果により保温時の臭いが低減されるので、長時間の保温が可能となる。
【0021】
以上のように、炭素焼結鍋5を電磁誘導加熱に好適な、厚さ、抵抗率の炭素材で構成することにより、炭素の持つ高熱伝導性、低比重、高熱容量性、また多気孔性、更には炭の持つ脱臭効果、浄化・殺菌効果により、容器内の均一な温度上昇と沸騰時の多量の気泡による対流促進により、米と水を均一に加熱し炊きムラを無くし、加えて水の浄化作用により美味しい炊飯が可能となる。また保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【0022】
なお、本実施の形態では、加熱コイル3を第一と第二コイルに分割して説明したが、底面に一括設置しても同様の効果が得られる。また温度センサ4を炭素焼結鍋5の外底部に接触させて配置したが、これは例えば非接触赤外線センサ等によって水温、及び米温度を直接計測しても良い。
【0023】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図4は炭素焼結鍋5の断面図、図5は炭素焼結鍋5の要部を示す部分断面図、図6は炭素焼結鍋5の斜視図である。この実施の形態2が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5内に一体となった突起物を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0024】
13は、炭素焼結鍋5の鍋内底部で、且つ第一加熱コイル3a設置部と対向した位置に設けた断面が円錐状のリング突起(連続凸部)である。このリング突起は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形を成す。従って、本実施の形態では、炭素焼結鍋5が円状のため、このリング突起13も円状に形成し、その直径ΦAは、炭素焼結鍋5の内側直径ΦBに対して1/2〜1/4の範囲に設定される。更に断面円錐状の突起は、図5(a)に示すように、底面に対して円錐状の裾野が広がる様なR面を構成することが好適である。
【0025】
次いで、その動作について図5を用いて説明する。図5(a)は、リング突起13を有する時の気泡の発生と離脱状況、これに対し、図5(b)は、リング突起13が無いときの気泡の発生と離脱状況を示す模式図である。まず、図5(b)の場合、底面から発生した細かい気泡は、中央部付近に近い底面の場合各々独立して底面から離脱し、側面に近い底面の場合底面のコーナーRに沿って移動しながら成長して側面に沿って上昇する。この場合、側面を沿う対流が大きく、中央付近の上昇対流の数は多いが、大きな対流は発生しない。
【0026】
これに対して、図5(a)のリング突起13を有するものは、中央付近で発生した気泡が、リングの内側と外側から断面円錐状の裾野に沿って移動しながら成長して大きな気泡となり、最終的に断面円錐状の先端部から離脱する。この場合リング突起13の直径ΦAから大きな気泡が離脱するため、側面対流と中央付近の対流が同時に発生し、米と水はより一層均一化される。また、リング突起13上方部から気泡が上昇するため、この円周に沿って「カニ穴」が形成される。実施の形態1の場合、基本的にカニ穴がランダムに発生するのに対して、カニ穴発生場所を制御可能にすることにより、より確実にカニ穴が形成されるため、常に美味しいご飯が炊けることになる。この時、カニ穴発生場所は、炭素焼結鍋5の内側直径ΦBに対して、1/2〜1/4の範囲に設定すると容器内の熱伝達から均一な炊飯が可能となる。
【0027】
更に、図6に基づいて、他の例を説明する。図6(a)は、炭素焼結鍋5の鍋内底部に環状に形成されたリング突起(連続凸部)13を示す斜視図、図6(b)は、炭素焼結鍋5の鍋内底部にリング状に配置された複数の独立突起(独立凸部)13aを示す斜視図である。そして、リング突起13は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形に形成され、複数の独立突起13aは、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形に配設されている。
【0028】
このように、リング突起13および独立突起13aを鍋底形状と略相似形に形成(配設)することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができ、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化される。さらに、この独立突起13aの場合は、限られた突起の先端から気泡が成長離脱するために、リング突起13よりも更にカニ穴を発生させる場所を制限でき、確実にカニ穴を生成でき、美味しい炊飯が可能となる。
【0029】
なお、このリング突起13、及び独立突起13aは、通常の金属系鍋においても適用可能であるが、気泡発生量の違いと加工の煩わしさから、炭素を用いた炭素焼結鍋に適用することが高い効果を奏することは言うまでもない。また、リング突起13は、一重のリングで説明したが、多重のリングで構成すれば、多重の「カニ穴」ができるので、さらに優れた効果が得られる。
【0030】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図7は、炭素焼結鍋5の構造を示す断面図である。また、図8は、蓋状プレート15の構造を示す断面図である。この実施の形態3が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5内に気泡プレート14または蓋状プレート15を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0031】
気泡プレート14は、炭素焼結鍋5の略中央底面に着脱自在に装着された耐熱性を有しており、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形を成し、鍋内底部で且つプレート周縁が加熱コイル3設置部と対向した位置に配設される。14aはこの気泡プレート14の下面に設けられた係止凸部で、炭素焼結鍋5の鍋底形状に設けられた凹部に係止凸部が嵌り込むことにより、気泡プレート14は炭素焼結鍋5に係止される。蓋状プレート15は、この気泡プレート14と別形状を成すもので、下面が開放された蓋状容器形状で形成され、且つ周縁部の壁部には、複数の連通孔が形成されている。
【0032】
図7,8を用いて動作を説明する。気泡プレート14は、炭素焼結鍋5の内底面に設置される。沸騰が始まると炭素焼結鍋5の気泡プレート14に覆われた面からの気泡は気泡プレート14に阻まれて上部に上昇出来ない。発生気泡は気泡プレート14下面を伝わり周縁部から成長して大きな気泡となって放出される。従って、気泡プレート14の周縁部から大きな対流が発生し、実施の形態2で述べた様な「カニ穴」が円周状に発生して、美味しい炊飯が実現できる。さらに、図8の蓋状プレート15では、気泡が蓋状プレート内に一旦溜り、連通孔15aから大きな気泡となって図中矢印の方向に一気に噴出するため、「カニ穴」発生場所を制御できると共に、確実に「カニ穴」を生成でき、美味しい炊飯が実現できる。
【0033】
また、本実施の形態は、気泡プレート14面上に発生する気泡が極めて少なくなる代わりに、気泡プレート14の下面で発生する気泡が全てプレート周縁から放出されるため、気泡の纏まり量が多くなり、確実に「カニ穴」を形成することができる。さらに、気泡プレート14および蓋状プレート15を鍋底形状と略相似形に形成することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができる。その結果、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化されるので、美味しい炊飯が実現できる。
【0034】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図9は、炭素焼結鍋5の構造を示す断面図である。この実施の形態4が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5の鍋外底部にリング状の凹部溝(連続凹部)16を備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0035】
凹部溝16は、炭素焼結鍋5の鍋底形状と略相似形で、且つプレート周縁が加熱コイル3の設置部と対向した位置の鍋外底部に、例えば、炭素焼結鍋5の板厚の1/3〜1/2の溝として形成されている。
【0036】
図9を用いて動作を説明する。凹部溝16を加熱コイル3と対向させて設けることにより、発熱面積が増加すると共に、磁力線の性質上、磁力線は凹部加工を形成するコーナー部の凸部に集中する。従って凸部の発熱が強まると共に、凹部は肉厚が薄いため、他部よりも早く発熱が伝わり加熱される。これにより凹部溝16の上部から多くの気泡が発生し、同図に示したように、凹部溝16の上部から大きな対流が形成される。その結果、実施の形態2で述べたような「カニ穴」が円周状に形成され、美味しい炊飯が実現できる。
【0037】
また、炭素焼結鍋5の外面に凹部溝16を設けることにより、炭素焼結鍋5の内面に凹凸部を設ける構成に比べて、米等の食品に対する清掃性が向上する。さらに、さらに、凹部溝16を鍋底形状と略相似形に形成することにより、炭素焼結鍋5の側面から等間隔の位置に気泡を発生させることができる。その結果、側面近傍の対流が促進され、米と水はより一層均一化されるので、美味しい炊飯が実現できる。
なお、本実施の形態では、連続的な凹部溝16を例に述べたが、リング状に独立した複数の独立凹部を設けても良いし、また、凹部溝16を多重に構成しても同様の効果が得られる。
【0038】
実施の形態5.
次に、実施の形態5に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図10は、炭素焼結鍋5を載置した場合の電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図、図11は、磁性金属鍋(鍋状容器)5aを載置した場合の電磁誘導加熱調理器の構造を示す断面図である。この実施の形態5が図1に示す実施の形態1と異なるのは、電磁誘導加熱調理器に用いられる厚さ1mm〜2mm程度の一般的な磁性金属鍋と、前記4mm〜10mmの炭素焼結鍋とが、同一本体に各々着脱自在に収納可能な内蓋支持構造を有している点である。その他の構成については、実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0039】
17は、外蓋9と内蓋7の二重構造とし、この外蓋9と内蓋7との間隙に配した内蓋バネである。この内蓋バネ17により、外蓋9に対し内蓋7は上下可動可能となり、この内蓋7の上下可動により、厚さの異なる鍋材によっても密閉構造を維持できる。
【0040】
図10,11を用いて動作を説明する。図10は板厚4mm〜10mmの炭素焼結材で形成した炭素焼結鍋5を載置した図であり、容器5のフランジ部が厚いため、内蓋バネ17が圧縮されて、フランジ部と蓋パッキン8が密閉される。図11は板厚1mm〜2mm程度の一般的な磁性金属鍋5aを載置した図であり、内蓋バネ17が伸張した状態で、フランジ部と蓋パッキン8が密閉される。このように厚さの異なる炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aとを、密閉構造を保ちつつ同一本体1に各々着脱自在に収納可能としたことにより、例えば、一つの本体1に対し板厚の異なる複数種類の鍋を同梱可能であり、鍋の使いまわしや炊き分けが可能となり使い勝手が向上する。
【0041】
実施の形態6.
次に、実施の形態6に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図12は炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aの形状高さを示す断面図、図13は磁性金属鍋5aの外観を示す斜視図である。この実施の形態6が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5のフランジ部に切り欠き部18が形成されている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0042】
図12に示す様に、フランジ部を含む炭素焼結鍋5の高さ(C)と磁性金属鍋5aの高さ(D)を同一に形成する。切り欠き部18は、容器カバー2の上部に設けられた凸状の支持部材6と当接部に位置する炭素焼結鍋5のフランジ部に形成され、支持部材6と同数設けられる。本実施の形態では3箇所設けられている。
【0043】
図12,13を用いて動作を説明する。図12(b)に示すように、磁性金属鍋5aはこの支持部材6の上に載置される。炭素焼結鍋5は、切り欠き部18と支持部材6の位置を合わせて載置することにより、炭素焼結鍋5のフランジ部は容器カバー2の上端と直接接触して設置される。支持部材6の高さ(3mm〜8mm程度)及び磁性金属鍋5aの板厚(1mm〜2mm程度)を合わせた厚さと、炭素焼結鍋5の板厚(4mm〜10mm)とを略等しくすることで、各々の鍋を載置した時に高さが略同一となるため、内蓋7を閉めた時に鍋のフランジ部が蓋パッキン8により確実に密閉される。
【0044】
このように、厚さの異なる炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aとを、密閉構造を保ちつつ、同一の本体1に各々着脱自在に収納可能としたことにより、例えば、一つの本体1に対し板厚の異なる複数種類の鍋を同梱可能であり、鍋の使いまわしや炊き分けが可能となり使い勝手が向上する。
また、炭素焼結鍋5のフランジ部の一部を切り欠いて、内蓋7との間隔を調整しているので、内蓋7を上下可動可能にしなくても、鍋内の密閉性が十分に確保される。
【0045】
実施の形態7.
次に、実施の形態7に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図14は、操作/表示部12の細部を示す図である。この実施の形態7が図1に示す実施の形態1と異なるのは、炭素焼結鍋5に対応した炭釜炊飯スイッチ(第1の炊飯スイッチ)12aと、磁性金属鍋5aに対応した普通炊飯スイッチ(第2の炊飯スイッチ)12bとを備えている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
炭釜炊飯スイッチ12aは、炭素焼結鍋5を載置した時に選択するスイッチであり、普通炊飯スイッチ12bは、磁性金属鍋5aを載置した時に選択するスイッチである。このように、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5a用のスイッチを各々設けることにより、制御部21は、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの出力信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御を行うことができる。
【0047】
例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。他の方法として、電流を増すためにコイル電圧を上昇させる等、炭素焼結鍋5への投入電力を増やす制御を行うことが可能となる。また、熱伝導率が高いために給水工程を短くしたり、保温時の投入電力の低減制御等、より効率の良い炊飯工程、保温工程が可能となり、美味しい炊き上がりと省エネを実現できる。
【0048】
なお、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの代わりに、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれか一方を選択する選択スイッチと、炊飯スイッチとを設けてもよい。この場合にも、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが載置されていたかを選択スイッチで選択できるので、炊飯スイッチで炊飯処理を行う際には、制御部21は、選択スイッチの出力信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御することができる。例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。
【0049】
実施の形態8.
次に、実施の形態8に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図15は、操作/表示部12の細部を示す図であり、図16は、駆動回路を示す図である。この実施の形態8が図14に示す実施の形態7と異なるのは、炭釜炊飯スイッチ12aと普通炊飯スイッチ12bとの代わりに、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが本体1に収納されたか判定する鍋判定部(鍋判定手段)22と、炊飯スイッチ12cとを備えている点である。その他の構成については実施の形態7と同一または同等であり、実施の形態7と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0050】
炊飯スイッチ12cは、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5a兼用のスイッチである。炊飯スイッチ12cがオンされると、鍋判定部22が自動的に炭素焼結鍋5か磁性金属鍋5aかを判定して、判定結果信号を制御部21に送る。制御部21では、この判定結果信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御を行う。鍋判定部22での鍋の判定方法は、例えば一定の駆動周波数で動作させた時のコイル電流の違いでも良いし、実施の形態5であれば内蓋7の上下位置の違い、また実施の形態6であれば支持部材6へ掛かる圧力の違いを検出してもよい。
【0051】
このように、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aのいずれが載置されていたかを鍋判定部22で判定できるので、炊飯スイッチ12cで炊飯処理を行う際には、制御部21は、鍋判定部22の判定結果信号に基づいて、それぞれの鍋に最適な駆動周波数で誘導加熱制御することができる。例えば、炭釜炊飯時には、磁性金属鍋5aを誘導加熱する駆動周波数に比べて、1.5〜2倍の高い駆動周波数で誘導加熱制御することにより、鍋投入電力が増加し、好適な炊飯が可能となる。また、鍋判定手段で自動的に鍋部材を判定しているため、使用者による入力間違いを防止することができる。
【0052】
実施の形態9.
次に、実施の形態9に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図17は鍋状容器の構造を示す断面図である。この実施の形態9が図1に示す実施の形態1と異なるのは、鍋状容器としてクラッド鍋(鍋状容器)19を用いている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0053】
クラッド鍋19は、フェライト系ステンレス鋼板等の磁性金属の外層19aを母材として、その内側に炭素95%〜100%の炭素焼結材の内層19bを組み合わせたクラッド材からなり、磁性金属の外層19aの厚さを0.4〜1.0mm、炭素焼結材の内層19bの厚さを外層19aに対して略1/2倍〜3倍としたクラッド材として構成した。その後、クラッド鍋19の内側表面にフッ素樹脂コーティングなどの表面処理を施している。
【0054】
この構成によれば、クラッド鍋19の内側に配置した、炭素の高熱伝導により短時間で容器の温度が均一に加熱されることに加え、焼結体の特徴である基材中に残る微細孔によって、沸騰時に多くの激しい気泡が発生し、この気泡の上昇によって糊化した米の抵抗を突き破り、上面への対流を発生させる。板厚については金属系の基材が厚い場合は略1/2程度の炭素焼結材とし、金属系が薄い場合は、略3倍程度の炭素焼結材で構成することにより、全体的な厚さを抑えつつ、炭素焼結材による気泡を好適に生成することができる。
【0055】
その結果、米全体の温度が均一化され、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、炭の持つ浄化作用により水の中の不純物が浄化され美味しい炊飯が可能となる。さらに、保温運転時も容器の高熱容量性から少消費電力で保温可能となると共に、脱臭・殺菌作用により、臭い移りの無い長時間保温が可能となる。
【0056】
なお、磁性金属の外層19aの代わりに、プラスチック材の外層を用いてもよい。プラスチック材の外層によって十分な強度が得られると共に、鍋全体の軽量化を図ることができる。そして、内層の炭素焼結材によって電磁誘導加熱を行うことにより、炭素焼結材から多くの気泡が発生し、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。
また、磁性金属の外層19aと炭素焼結材の内層19bとを組み合わせたクラッド材は、鍋の底部だけに用い、側部は磁性金属のみで構成してもよい。上面への対流の発生に寄与するのは、主に底部で発生した気泡なので、底部のみに炭素焼結材を用いた構成であっても、十分な対流が得られ、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。
さらに、鍋の底部は炭素焼結材のみで構成し、鍋の側部は磁性金属のみで構成してもよい。この場合にも、底部で発生する気泡によって十分な対流が得られるので、炊きムラの無い美味しいご飯に仕上げることができる。また、鍋全体を炭素焼結材のみで構成するのに比べて、高い強度が得られる。
【0057】
実施の形態10.
次に、実施の形態10に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図18は、鍋状容器の構造を示す断面図であり、図19は、駆動回路を示す図である。この実施の形態10が図1に示す実施の形態1と異なるのは、安全弁30と調圧部(調圧手段)31とが内蓋7に設けられている点と、調圧部31が制御手段21によって制御されている点である。その他の構成については実施の形態1と同一または同等であり、実施の形態1と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0058】
図18に示すように、安全弁30は、内蓋7を貫通する通気孔30aと、この通気孔30aを開閉する弁部30bとを備え、炭素焼結鍋5内部の圧力が所定以上の場合に、弁部30bが開き、通気孔30aを開放させる。その結果、炭素焼結鍋5内部の圧力が異常に高くなるのを防止できる。
また、調圧部31は、内蓋7を貫通する通気孔31aと、この通気孔31aを開閉する調圧ボール(調圧弁)31bと、調圧ボール31bを横方向に摺動させるソレノイド31cとを備えている。そして、ソレノイド31cの駆動により、調圧ボール31bが左右に摺動し、通気孔31aを開閉制御することができる。この開閉制御によって、炭素焼結鍋5内部の圧力を調整できる。
【0059】
次に、図20のフローチャートを用いて、本実施の形態の動作について説明する。始めに所定量の米を炭素焼結鍋5内に入れた後、米量に応じた水を入れる。その後、炭素焼結鍋5を容器カバー2に載置し外蓋9を閉めると、内蓋7の蓋パッキン8が炭素焼結鍋5のフランジ部に圧接されて密閉シールされる。操作/表示部12から炊飯工程スイッチをオンして炊飯工程がスタートする(S100)。
【0060】
加熱コイル3a,3bには、インバータ回路20から高周波電流が供給され、高周波磁界が発生し、加熱コイル3a,3bと磁気結合した炭素焼結鍋5の加熱コイル対向面が励磁され、容器底面に渦電流が誘起される。この渦電流と炭素焼結鍋5の持つ抵抗によりジュール熱を生じ、鍋底面が発熱して加熱が行われる。なお、炭素焼結鍋5を加熱させる際には、予め、制御部21の制御に基づいて、ソレノイド31cを駆動させて、調圧ボール31bを横方向に摺動させており、この摺動により、通気孔31aは開放されているものとする。
【0061】
炭素焼結鍋5の加熱により、鍋底面の温度がT1(例えば、100℃)まで上昇した場合(S101)、温度センサ4から伝送される鍋底面の温度の測定値に基づいて、制御部21は、ソレノイド31cを駆動させる。ソレノイド31cの駆動によって、調圧ボール31bは横方向に摺動し、通気孔31aを閉鎖させる。また、制御部21は、インバータ回路20の動作を停止(または低下)させ、炭素焼結鍋5の加熱を中断して、炭素焼結鍋5内部の温度を低下させる(S102)。この炭素焼結鍋5内部の温度低下により、炭素焼結鍋5内部は減圧される。
【0062】
炭素焼結鍋5の素材は、多数の気孔を有する多孔質性を有するので、図21に示すように、炭素焼結鍋5内部の減圧によって、多数の気孔に蓄えられた空気が気泡となって鍋内に多数出現する。この気泡によって、炭素焼結鍋5内部の水と米が攪拌され、感度分布が均一化される。このため、炭素焼結鍋5内部の温度分布も均一化され、均一な炊飯が実現される。
【0063】
次に、鍋底面の温度が、T2(例えば、90℃)に降下した時点で(S103)、制御部21は、ソレノイド31cを駆動させて、調圧ボール31bを横方向に摺動させる。この摺動により、通気孔31aは開放され、炭素焼結鍋5内部の圧力が上昇する。その後、制御部21は、炭素焼結鍋5の加熱を再開させて(S104)、通常の炊飯工程に移行する(S105)。
【0064】
以上のように、本実施の形態は、炭素焼結鍋5内部を減圧制御しているので、炭素焼結鍋5の内面に設けられた多数の気孔から気泡が鍋内に出現し、この気泡によって、炭素焼結鍋5内部の水と米が攪拌され、感度分布が均一化される。このため、炭素焼結鍋5内部の温度分布も均一化され、均一な炊飯が実現される。
なお、減圧制御による攪拌処理(S101からS104までの処理)は、複数回行ってもよい。また、調圧ボール31bおよびソレノイド31cの代わりに小型のポンプを設けて、炭素焼結鍋5内部の空気をポンプで抜き出して、炭素焼結鍋5内部を減圧してもよい。この場合にも、多数の気孔から気泡が鍋内に出現させることができ、感度分布が均一化および温度分布も均一化が図れ、均一な炊飯が実現される。
【0065】
実施の形態11.
次に、実施の形態11に係る電磁誘導加熱調理器を説明する。図22は、容器カバー2の外観を示す斜視図である。この実施の形態11が図12に示す実施の形態6と異なるのは、容器カバー2上端の縁部に複数のストッパー32が設けられている点である。その他の構成については実施の形態6と同一または同等であり、実施の形態6と同一又は同等な構成部分については同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
図22に示すように、容器カバー2上端の縁部には、3個のストッパー32が上下動自在に配置されている。これらのストッパー32の上部には、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を押圧するゴム製のヘッド部(滑り止め部材)32aが設けられている。また、ストッパー32の下端には、ストッパー32を上方に付勢するバネ材33が設けられている。このバネ材33の付勢力によって、ストッパー32は、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を下から押圧する。
【0067】
図23は、容器カバー2の中に炭素焼結鍋5を収容した状態を示す断面図である。また、図24は、容器カバー2の中に磁性金属鍋5aを収容した状態を示す断面図である。これらの図面に示すように、ストッパー32が上下動することにより、炭素焼結鍋5と磁性金属鍋5aの鍋厚の違いが吸収される。このため、鍋厚の異なる複数の鍋が、容器カバー2内に選択的に収納可能となる。また、各ストッパー32は、バネ材33によって上方に付勢されているので、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部を下から押圧し、回動を抑制した状態で、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)を容器カバー2内に確実に固定することができる。
【0068】
特に、ストッパー32の上部には、ゴム製のヘッド部32aが設けられているので、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)のフランジ部と、ストッパー32のヘッド部32aとの摩擦力が増加し、一層確実に、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)の回動を抑制することができる。
なお、ストッパー32は、3個に限定されることはなく、炭素焼結鍋5(又は磁性金属鍋5a)を支持するのに適した所定の個数(4個,5個等)であればよい。また、各ストッパー32を上方に付勢する手段としては、バネ材33に限定されることはなく、ゴム材その他のいずれかの弾性部材であればよい。
【符号の説明】
【0069】
1…本体、2…容器カバー、3…加熱コイル、4…温度センサ、4a…圧縮バネ、5…炭素焼結鍋(鍋状容器)、5a…磁性金属鍋(鍋状容器)、6…支持部材、7…内蓋、8…蓋パッキン、9…外蓋、10…係止材、11…蒸気口、12…操作/表示部、12a…炭釜炊飯スイッチ、12b…普通炊飯スイッチ、12c…炊飯スイッチ、13…リング突起(連続凸部)、13a…独立突起(独立凸部)、14…気泡プレート、15…蓋状プレート、16…凹部溝(連続凹部)、17…内蓋バネ、18…切り欠き部、19…クラッド鍋(鍋状容器)、19a…外層、19b…内層、20…インバータ回路、21…制御部、22…鍋判定部(鍋判定手段)、30…安全弁、30a…通気孔、30b…弁部、31…調圧部、31a…通気孔、31b…調圧ボール(調圧弁)、31c…ソレノイド、32…ストッパー、32a…ヘッド部(滑り止め部材)、33…バネ材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成すると共に、抵抗率を7.2×10−7以上とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記溝部は、前記鍋状容器の鍋底形状と略相似形を有することを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記溝部は、リング状に形成された連続凹部もしくはリング状に配置された複数の独立凹部であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項4】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器の鍋内底部に着脱自在に配設されたプレートを備え、
前記プレートおよび前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
沸騰時に前記鍋状容器の前記プレートに覆われた面からの気泡が前記プレートの下面を伝わり周縁部から放出されることを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記プレートは、前記鍋状容器の鍋底形状と略相似形を有し、プレート周縁が前記加熱コイルと対向した位置に配設したことを特徴とする請求項4記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記プレートは、下面が開放した有底筒形状で形成され、且つ周壁部には、複数の連通孔が形成され、
沸騰時に前記鍋状容器の前記プレートに覆われた面からの気泡が有底筒形状の前記プレート内に一旦溜り、前記連通孔から大きな気泡となって放出されることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項7】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
前記鍋状容器内の圧力を調整する調圧手段と、
前記調圧手段を調整して、前記鍋状容器内を減圧させる制御手段とを備えることを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記調圧手段は、前記鍋状容器内外の圧力を調整する調圧弁を有し、 前記制御手段は、前記鍋状容器内が所定温度に上昇した場合に、前記調圧弁を閉じ、前記鍋状容器内の温度を降下させるよう加熱量を制御することを特徴とする請求項7記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項9】
本体と、前記本体内に支持体を介して着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
前記鍋状容器は、上縁にフランジ部が設けられた、厚さの異なる複数の鍋を有すると共に、これらの鍋を前記本体に選択的に収納可能であり、
前記支持体の上端部には、前記フランジ部を下方から押圧して、前記鍋状容器の回動を抑止するストッパーが設けられていることを特徴とする電磁誘導加加熱調理器。
【請求項10】
前記ストッパーの上部には、前記フランジ部を押圧する滑り止め部材が設けられていることを特徴とする請求項9記載の電磁誘導加加熱調理器。
【請求項1】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素95%〜100%の焼結体を基材として構成すると共に、抵抗率を7.2×10−7以上とし、前記鍋状容器の鍋外底部で前記加熱コイルと対向した位置に、溝部を形成したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記溝部は、前記鍋状容器の鍋底形状と略相似形を有することを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記溝部は、リング状に形成された連続凹部もしくはリング状に配置された複数の独立凹部であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項4】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器の鍋内底部に着脱自在に配設されたプレートを備え、
前記プレートおよび前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
沸騰時に前記鍋状容器の前記プレートに覆われた面からの気泡が前記プレートの下面を伝わり周縁部から放出されることを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記プレートは、前記鍋状容器の鍋底形状と略相似形を有し、プレート周縁が前記加熱コイルと対向した位置に配設したことを特徴とする請求項4記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記プレートは、下面が開放した有底筒形状で形成され、且つ周壁部には、複数の連通孔が形成され、
沸騰時に前記鍋状容器の前記プレートに覆われた面からの気泡が有底筒形状の前記プレート内に一旦溜り、前記連通孔から大きな気泡となって放出されることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項7】
本体と、前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
前記鍋状容器内の圧力を調整する調圧手段と、
前記調圧手段を調整して、前記鍋状容器内を減圧させる制御手段とを備えることを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記調圧手段は、前記鍋状容器内外の圧力を調整する調圧弁を有し、 前記制御手段は、前記鍋状容器内が所定温度に上昇した場合に、前記調圧弁を閉じ、前記鍋状容器内の温度を降下させるよう加熱量を制御することを特徴とする請求項7記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項9】
本体と、前記本体内に支持体を介して着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、
前記鍋状容器は、炭素を包含した焼結体を基材として構成し、
前記鍋状容器は、上縁にフランジ部が設けられた、厚さの異なる複数の鍋を有すると共に、これらの鍋を前記本体に選択的に収納可能であり、
前記支持体の上端部には、前記フランジ部を下方から押圧して、前記鍋状容器の回動を抑止するストッパーが設けられていることを特徴とする電磁誘導加加熱調理器。
【請求項10】
前記ストッパーの上部には、前記フランジ部を押圧する滑り止め部材が設けられていることを特徴とする請求項9記載の電磁誘導加加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−78190(P2009−78190A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13128(P2009−13128)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2007−166297(P2007−166297)の分割
【原出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2007−166297(P2007−166297)の分割
【原出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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