説明

電磁調理用容器

【課題】 家庭用、業務用の電磁調理器を問わず幅広く使用が可能であって、種々の料理を調理するのに好適で、しかも、ガス等別の加熱手段にも使用ができる耐久性のある電磁調理用容器を安価に提供する。
【解決手段】 電磁誘導加熱によって発熱するカーボン板3が、カーボン板支持体4に支持され、前記カーボン板の上面と容器本体2の外側底面が面接触される電磁調理用容器であって、前記カーボン板支持体の上面には凹部が形成され、該凹部は前記カーボン板の下面と当接してカーボン板を支持するための凸状部を有し、該凸状部と前記カーボン板下面との間に形成される空間と、前記凹部の内側壁面と前記カーボン板の外側面との間に形成される間隙によって上部通気用通路が形成され、前記カーボン板支持体の下面に、電磁調理器の天板との間で下部通気用通路を形成するための凸状部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁調理用容器に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、電磁誘導加熱によってカーボン板に発生した熱を利用して調理を行う電磁調理用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボン板を用いた電磁調理用容器としては、土鍋の外側底面を平らに削り取り、削られた外側底面にカーボン板を耐熱性接着剤で接着したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−303569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に、従来のカーボン板を用いた電磁調理用容器の一例を示す。この電磁調理用容器81は、容器本体82の外側底面82aを平らに削り取り、削られた外側底面82aにカーボン板83を耐熱性接着剤84で接着したものである。ここで使用されている耐熱性接着剤としては、230℃近くまでの加熱に耐えられるシリコーン系接着剤が一般的である。耐熱性接着剤84は、容器本体の外側底面82aとカーボン板83の上面全体との間に挟まれ、カーボン板上面全体にわたって層状に存在している。
このような電磁調理用容器は、カーボン板の発熱効率と蓄熱性が良好で、部分的な焦げつきが生じ難く、冷めにくい等の利点がある。
【0005】
しかしながら、このような電磁調理用容器81は、カーボン板の発熱でカーボン板が剥離等しないようにして使用することが必要である。
すなわち、このような電磁調理用容器では、通常の使用では問題はないものの、空焚きをしたり、空焚きに近い加熱をする料理、例えば、ビビンバ料理や焼き肉等を行うと、電磁誘導加熱によりカーボン板が短時間で230℃を超えることになる。このような場合、通常、電磁調理器の温度センサー、例えば、光火力センサーが作動し電磁誘導加熱が中止されるが、それまでにすでに高温となったカーボン板は、ゆっくりとしか冷めず、耐熱性接着剤が劣化して悪臭を発したり、耐熱性接着剤の劣化とカーボン板と容器本体との熱膨張の差による相互作用によってカーボン板が部分的に剥離し、耐熱性接着剤との間に隙間が生じたりする。このような状態となった電磁調理用容器を使用して料理を行った後、電磁調理用容器を洗浄すると、隙間に水が侵入し残留する。この状態で再度電磁誘導加熱を行うと、その水が急激に気化し、水蒸気となって隙間から外部に排出される。そうすると、カーボン板の剥離が進行したり、新たな剥離が生じたりすることにもなる。
このようなことが繰り返されると、耐熱性接着剤の劣化がすすみ、また、カーボン板の剥離が増加し、隙間がますます拡大することになり、隙間に侵入し残留する水の量も増加することになる。そして、この水が電磁誘導加熱によって急激に水蒸気に気化して破壊的な作用をなし、カーボン板、耐熱性接着剤を損傷させたり、破損させたりし、ついには、カーボン板が脱落したり、容器本体までも損傷させたりすることになる。
【0006】
外食産業では、高出力の電磁調理器を備えたオール電化厨房が増加し、調理時間の短縮等に応えるため、業務用に高出力の電磁調理器が導入されている。そのような高出力の電磁調理器では、230℃以上の加熱に耐えられる電磁調理用容器が必要とされる。また、近年、家庭でも高出力の電磁調理器が導入され、同様の電磁調理用容器に対する要望が高まっている。しかしながら、従来の電磁調理用容器では、これらの要望を満たすことができない。
【0007】
また、図11に示す電磁調理用容器81は、どのような種類の調理でもできるのではなく、容器本体82の形状、容量等によって調理できる範囲が限られる。そのため、種々の調理を行うようにしておくためには、容器本体の形状、容量等が異なる複数種類の電磁調理用容器を取り揃えておくことが必要になるが、これには、購入コストを初めとし経費がかかる。
【0008】
このことは、図11に示す電磁調理用容器81を業務用に使用する場合、多数種の電磁調理用容器を、同一種毎に複数取り揃えることが必要で、その総数はかなりの数になることから、購入コストを初めとした経費は相当な額となる。
そこで、取り揃える電磁調理用容器の数をある程度絞りこむことになるが、電磁調理用容器を使用した料理を客に提供した後、回収した容器本体を洗浄し乾燥等して、次の調理に利用せざるを得ない場合も生ずる。しかしながら、このような場合、生乾きや充分に乾燥していない状態で電磁調理用容器を使用すると、電磁誘導加熱に伴い容器本体やカーボン板に残留した水分等が急激に気化し水蒸気となる。このような水蒸気は、容器本体82とカーボン板83とを接着させている耐熱性接着剤84を劣化させたり、容器本体82とカーボン板83との部分的剥離を生じさせることになる。このようなことを繰り返せば、前記したと同様、カーボン板、耐熱性接着剤が損傷したり、破損したりし、ついには、カーボン板が脱落したり、容器本体までも損傷したりすることになる。
同様なことは、客席に電磁調理器を備えた店舗においてもいえる。
【0009】
ところで、図11に示す電磁調理用容器81は、容器本体82がカーボン板83と耐熱性接着剤84で接着され一体化していることから、ガス等別の加熱手段による調理には使用できない。例えば、電磁調理用容器81を用いて、ガス加熱して調理しようとすると、カーボン板が燃焼してしまい、その後電磁誘導加熱による調理はできなくなる。
【0010】
本出願の発明者等は、上記のような実情に鑑み鋭意研究を進めたところ、容器本体とカーボン板とが分離できるようにすればよいとの着想を得、この発明に到達したものであり、家庭用、業務用の電磁調理器を問わず幅広く使用が可能であって、種々の料理を調理するのに好適で、しかも、ガス等別の加熱手段にも使用ができる耐久性のある電磁調理用容器を安価に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は、(1)電磁誘導加熱によって発熱するカーボン板が、カーボン板支持体に支持され、前記カーボン板の上面と容器本体の外側底面が面接触される電磁調理用容器であって、前記カーボン板支持体の上面には凹部が形成され、該凹部は前記カーボン板の下面と当接してカーボン板を支持するための凸状部を有し、該凸状部と前記カーボン板下面との間に形成される空間と、前記凹部の内側壁面と前記カーボン板の外側面との間に形成される間隙によって上部通気用通路が形成され、前記カーボン板支持体の下面に、電磁調理器の天板との間で下部通気用通路を形成するための凸状部を有することを特徴とする。
そして、(2)前記(1)において、前記カーボン板支持体の上面の凸状部が、並列する所定数の直線状突条であることが好ましい。
また、(3)前記(1)または(2)において、前記カーボン板支持体の上面の凹部に前記カーボン板の下部が収容されていることが好ましい。
(4)前記(1)、(2)または(3)において、前記カーボン板支持体の下面の凸状部が、並列する所定数の直線状突条であってもよい。
(5)前記(1)、(2)または(3)において、前記カーボン板支持体の下面の凸状部が、所定数の脚状突起であってもよい。
(6)前記(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記カーボン板支持体が板状体であってもよい。
(7)前記(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記カーボン板支持体が皿状体であってもよい。
(8)前記(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記カーボン板支持体の凹部から下面に貫通孔が穿設されていてもよい。
(9)前記(1)ないし(8)のいずれかにおいて、前記容器本体およびカーボン板支持体が、陶磁器、石材、ガラス、セラミックス、または、耐熱性合成樹脂のうちから選択された1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、この発明(1)の電磁調理用容器は、従来の電磁調理用容器のようにカーボン板と容器本体の外側底面が耐熱性接着剤によって接着されていないことから、空焚きや、それに近い加熱をする料理、高出力の電磁調理器での料理に使用しても、カーボン板、容器本体、カーボン板支持体が損傷・破損したりすることがない。そのため、家庭用、業務用を問わず幅広い電磁調理器に使用可能であって、しかも、種々の料理を調理するのに好適で、耐久性に優れている。そして、カーボン板支持体、カーボン板、容器本体が組立・分解可能であり、従って、カーボン板支持体、カーボン板、容器本体をバラバラにでき、掃除、洗浄が容易であり、また、損傷があれば、損傷したものだけを交換することができる利点がある。
また、この電磁調理用容器は構造が簡単であって、製造コストを低減できる利点がある。
また、家庭用、業務用に限らず、電磁誘導加熱による調理後、カーボン板とカーボン板支持体は電磁調理器に残したまま、分離した容器本体だけで料理を提供することができる。
また、例えば、家庭では、形状、容量等の異なる複数種の容器本体を取り揃え、カーボン板とカーボン板支持体を共用するようにすれば、電磁調理用容器によって調理できる範囲を広げることができ便利である。とりわけ、電磁調理用容器の重要部品であるカーボン板は高価であり、これが共用できることになると、一種類の電磁調理用容器を購入し、後は、必要な複数種の容器本体を購入するだけで、種々の調理をすることが可能となり、購入コスト等を低く抑えることができる。
また、電磁調理用容器を使用して調理した後、同一または別の種類の容器本体を、電磁調理器に残っているカーボン板と接触させ、引き続き電磁誘導加熱を行うことで、同一または別の調理を行うことができる。容器本体を洗浄したものの生乾きや充分に乾燥していない状態で、同一の容器本体を使用して調理する場合、容器本体に残っている水分が気化して水蒸気となっても、カーボン板、容器本体を損傷したり、破損したりすることにはならない。そのため、高価なカーボン板を長期にわたり使用できる。
また、業務用として用いる場合には、厨房等に装備している電磁調理器の電磁誘導加熱器の口数に応じた数のカーボン板とカーボン板支持体があれば、電磁誘導加熱器の口数以上の容器本体に対して共用することができる。つまり、店舗の座席、収容可能客数等に基づき、必要とする複数種の形状、容量等の容器本体を必要数取り揃えておけば、客の要求に応じ、必要とする形状、容量等の容器本体を選択することで、必要とする料理を迅速に提供することができる。電磁調理用容器の重要部品である高価なカーボン板が共用できることから、必要な数の電磁調理用容器を購入するとともに、必要な複数種の容器本体を追加購入することでよく、購入コスト等を低く抑えることもできる。
また、電磁調理用容器を使用して調理した後、同一または別の種類の容器本体を、電磁調理器に残っているカーボン板支持体に支持されたカーボン板と接触させ、引き続き電磁誘導加熱を行うことで、同一または別の調理を行うことができる。乾燥した状態の容器本体が不足して、生乾きや充分に乾燥していない容器本体を使用せざるを得ない場合、容器本体に残っている水分が気化して水蒸気となっても、カーボン板、容器本体を損傷したり、破損したりすることにはならない。そのため、高価なカーボン板を長期にわたり使用できる。
電磁調理用容器による調理のための電磁誘電加熱は、調理の種類による所定の昇温プログラムと光火力センサー等の温度センサーからの温度検出値を比較し、電磁誘導加熱器への通電と通電停止を制御することで行われるが、電磁調理用容器には、上部通気用通路、下部通気用通路が形成されていることから、電磁誘導加熱に伴い空気の流れが発生し、これによる冷却効果が働き、電磁調理用容器や、電磁調理器の天板が必要以上に高温にならない。そのため、電磁誘導加熱器への通電と通電停止を頻繁に行なうことなく、調理に応じた昇温を行うことでき、電磁誘導加熱器の寿命を延ばすことができる。
また、電磁調理用容器を使用して調理している最中に、容器本体から吹きこぼれが生じたりして、水分等がカーボン板支持体の凹部に溜まると、水分が気化して水蒸気となるが、水蒸気は、上部通気用通路を経て速やかに外に放出されることになる。また、吹きこぼれ等の汚れがこびりつき、カーボン板、カーボン板支持体を洗浄したものの、生乾きや充分に乾燥していない状態で使用せざるを得ない場合でも、上部通気用通路、下部通気用通路が水蒸気排出路として機能し、発生した水蒸気は、速やかに排出されることから、水蒸気の圧力でカーボン板が移動したり、電磁調理用容器が電磁調理器の天板から浮き上がったり、天板上を滑って移動してしまうようなことが起きる恐れがない。
なお、電磁調理用容器を洗浄した後、生乾きや充分に乾燥していない状態で電磁調理を行う必要が生じ、電磁誘導加熱をせざるを得ない場合において、容器本体、カーボン板、カーボン板支持体に付着したり吸着等したりした水や、これ等の間に残留した水が、カーボン板の発熱に伴って気化し水蒸気となっても、水蒸気が容器本体、カーボン板、カーボン板支持体を破損したりすることなく、速やかに上部通気用通路、および/または、下部通気用通路から外部に排出させることができることになる。
そして、電磁誘導加熱による調理ではなく、ガス等の加熱手段による調理には、分離した容器本体をガス等の加熱手段にかけ調理することができ、高価なカーボン板をガスの炎によって燃焼させることにはならない。
また、電磁調理用容器のカーボン板は薄くできることから、カーボン板がその分安く入手でき、電磁調理用容器の価格を抑えることができる。
前記したことは、客席に電磁調理器を備えた店舗においても同様である。
そして、前記(2)の電磁調理用容器では、良好な上部通気用通路が形成できるとともにカーボン板を安定して支持することができる。なお、カーボン板支持体の上面の凸状部が、並列する所定数の直線状突条でなく、曲線状突条であってよいし、突条は並列していなくてもよい。また、突条に代え、点状突起等種々の形状であってもよい。
前記(3)の電磁調理用容器では、カーボン板の上面がカーボン板支持体の上面より上に位置することになり、容器本体の外側底面とカーボン板支持体の上面とが接触することがなく、上部通気用通路がふさがる恐れがない。
前記(4)の電磁調理用容器では、電磁調理器の天板との間で良好な方向性のある下部通気用通路が形成できるとともに電磁調理用容器を安定して支持することができる。
前記(5)の電磁調理用容器では、電磁調理器の天板との間で広く良好な下部通気用通路が形成できるとともに、例えば、3個の脚状突起で、電磁調理用容器を安定して電磁調理器の天板に載置できる。
カーボン板支持体の下面の凸状部としては、前記(4)、(5)に記載の形状に限られず、種々の形状が採用可能である。
前記(6)の電磁調理用容器では、前記カーボン板支持体の外周部が上方位置にないことから、容器本体を取り扱う上でじゃまにならない。
前記(7)の電磁調理用容器では、容器本体からの吹きこぼれ等があっても、カーボン板支持体に留まり、電磁調理器の天板に広がる恐れがない。
前記(8)の電磁調理用容器では、貫通孔によって、上部通気用通路と下部通気用通路が連通し、空気による冷却効果が向上するとともに、電磁調理用容器を洗浄した後、生乾きや充分に乾燥していない状態で電磁調理を行う必要が生じ、電磁誘導加熱をせざるを得ない場合において、容器本体、カーボン板、カーボン板支持体に付着したり吸着等したりした水や、これ等の間に残留した水が、カーボン板の発熱に伴って気化し水蒸気となっても、速やかに上部通気用通路と下部通気用通路から外部に排出させることができることになる。
前記(9)の電磁調理用容器は、素材も安価であり、しかも、製造が容易である。
そして、(1)ないし(9)の電磁調理用容器は、カーボン板を露出しないようにでき、見栄えがよいものであり、商品価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の電磁調理用容器の一実施の形態を示す分解図である。
【図2】図1に示す電磁調理用容器の(a)は縦断面図、(b)は部分拡大図である。
【図3】図1に示す電磁調理用容器のカーボン板支持体の平面図である。
【図4】図1に示す電磁調理用容器のカーボン板支持体の底面図である。
【図5】この発明の電磁調理用容器の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図6】この発明の電磁調理用容器の更に他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図7】この発明の電磁調理用容器の更に他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図8】この発明の電磁調理用容器に使用するカーボン板支持体の他の実施の形態を示す平面図である。
【図9】この発明の電磁調理用容器に使用するカーボン板支持体のさらに他の実施の形態を示す底面図である。
【図10】この発明の電磁調理用容器の更に他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図11】従来のカーボン板を用いた電磁調理用容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
この発明で、用語「陶磁器」は、陶器・磁器類の総称であって、土器等も含むものとして使用している。
図1は、この発明の電磁調理用容器の一実施の形態を示す分解図、図2は、その電磁調理用容器の縦断面図、図3はカーボン板支持体の平面図、図4はカーボン板支持体の底面図で、容器本体は取手付きの鍋として示されている。
図1、図2に示される電磁調理用容器1は、陶磁器製の容器本体2、カーボン板3、陶磁器製のカーボン板支持体4とからなる。図1においてカーボン板支持体4は一部破断して示している。
容器本体2は、底が平らとなるように削られたものである。そして、容器本体2の底の厚さは、これ単体でガス等の加熱手段による調理にも耐えられるように設定されている。
円盤状のカーボン板3の上面と下面は平行な面となっている。
カーボン板支持体4は、浅めの皿状をしており、内側上面4aに凹部4bが形成され、凹部4bには、カーボン板3を支持するための背の低い同一高さの突条4cが直線状に合計6本並列して設けられているが、突条の数、配置等はこれに限られない。カーボン板支持体4の外側下面は、断面円弧状の溝5が5本並列して形成され、溝と溝との間に合計4本の直線状の突条4dが筋状に並列しているが、突条4dの数等はこれに限られない。カーボン板支持体4においては、内側の突条4cの長手方向と外側下面の突条4dの長手方向は平行となっているが、これに限られるものではない。
【0015】
電磁調理用容器1は、カーボン板3の下面とカーボン板支持体4の内側の突条4cの頂部とを当接させて、カーボン板3をカーボン板支持体4で支持し、カーボン板3の上面に容器本体2の外側底面を面接触させることで構成されることになる。
【0016】
カーボン板支持体4の凹部4bの直径は、カーボン板3の直径よりやや大きく設定されており、カーボン板3を突条4cで支持させると、凹部4bの内側壁面とカーボン板3の外側面との間に隙間pが形成され、カーボン板3の下面とカーボン板支持体4の突条4cとの間に形成される空間と前記隙間pとが接続することになり、これによって複数の上部通気用通路6が形成される。
カーボン板3の厚さtは、電磁誘導加熱器による発熱が良好なように、薄く設定されている。
カーボン板支持体4の突条4cの高さhは、カーボン板3が電磁誘導加熱による発熱が損なわれないようにするとともに、上部通気通路を形成するのに充分な高さであればよい。カーボン板支持体4の凹部4bの深さdは、カーボン板3を突条4cで支持させてカーボン板3の下部(より具体的には、大半)を収容すると、カーボン板支持体の凹部4bからカーボン板3がやや突出するように設定されており、容器本体2の外側底面がカーボン板支持体4の内側上面4aと接触せず、上部通気用通路6がふさがらないようになっているが、これに限られず、カーボン板支持体の内側上面4aと、カーボン板3の上面が同一面に位置するように設定してもよい。
なお、容器本体2の外側底面の直径をカーボン板3の直径以下とすることが、カーボン板支持体4の凹部4bの内側壁面とカーボン板3の外側面との間に形成された隙間pからの通気を容易とする上で好ましい。
カーボン板支持体4の外側下面に形成された断面円弧状の溝は、電磁調理用容器1を電磁調理器(図示せず)の天板に載置したとき、天板との間の下部通気通路7を形成することになる。
直径180mmで、薄い3mm厚さのカーボン板3を使用する場合、カーボン板支持体4は、厚さrを6mm、凹部4b直径183mm(従って、間隙pは1.5mm)、深さd3mm、突条4cの高さh1.5mm、溝の深さ1.5mm、容器本体2の底厚4mmが例示できる。
【0017】
このような構造の電磁調理用容器1は、従来の電磁調理用容器のようにカーボン板と容器本体の外側底面が耐熱性接着剤によって接着されていないことから、空焚きや、それに近い加熱をする料理、高出力の電磁調理器での料理に使用しても、カーボン板3、容器本体2、カーボン板支持体4が損傷・破損したりすることがない。そのため、家庭用、業務用を問わず幅広い電磁調理器に使用可能であって、しかも、種々の料理を調理するのに好適で、耐久性に優れている。そして、カーボン板支持体4、カーボン板3、容器本体2が組立・分解可能であり、従って、カーボン板支持体4、カーボン板3、容器本体2をバラバラにでき、掃除、洗浄が容易であり、また、損傷があれば、損傷したものだけを交換することができる利点がある。
また、この電磁調理用容器1は構造が簡単であって、製造コストを低減できる利点がある。
また、家庭用、業務用に限らず、電磁誘導加熱による調理後、カーボン板3とカーボン板支持体4は電磁調理器に残したまま、分離した容器本体2だけで料理を提供することができる。
電磁調理用容器1による調理のための電磁誘電加熱は、調理の種類による所定の昇温プログラムと光火力センサー等の温度センサーからの温度検出値を比較し、電磁誘導加熱器への通電と通電停止を制御することで行われるが、電磁調理用容器1には、上部通気用通路6、下部通気用通路7が形成されていることから、電磁誘導加熱に伴い空気の流れが発生し、これによる冷却効果が働き、電磁調理用容器1や、電磁調理器の天板が必要以上に高温にならない。そのため、電磁誘導加熱器への通電と通電停止を頻繁に行なうことなく、調理に応じた昇温を行うことでき、電磁誘導加熱器の寿命を延ばすことができる。
また、電磁調理用容器1を使用して調理している最中に、容器本体2から吹きこぼれが生じたりして、水分等がカーボン板支持体4の凹部に溜まると、水分が気化して水蒸気となるが、水蒸気は、上部通気用通路6を経て速やかに外に放出されることになる。また、吹きこぼれ等の汚れがこびりつき、カーボン板3、カーボン板支持体4を洗浄したものの、生乾きや充分に乾燥していない状態で使用せざるを得ない場合でも、上部通気用通路6、下部通気用通路7が水蒸気排出路として機能し、発生した水蒸気は、速やかに排出されることから、水蒸気の圧力でカーボン板3が移動したり、電磁調理用容器1が電磁調理器の天板から浮き上がったり、天板上を滑って移動してしまうようなことが起きる恐れがない。
なお、電磁調理用容器1を洗浄した後、生乾きや充分に乾燥していない状態で電磁調理を行う必要が生じ、電磁誘導加熱をせざるを得ない場合において、容器本体2、カーボン板3、カーボン板支持体4に付着したり吸着等したりした水や、これ等の間に残留した水が、カーボン板3の発熱に伴って気化し水蒸気となっても、水蒸気が容器本体2、カーボン板3、カーボン板支持体4を破損したりすることなく、速やかに上部通気用通路6、および/または、下部通気用通路7から外部に排出させることができることになる。
そして、電磁誘導加熱による調理ではなく、ガス等の加熱手段による調理には、分離した容器本体2をガス等の加熱手段に直接かけ調理することができ、高価なカーボン板3をガスの炎によって燃焼させることにはならない。
また、前述したように、電磁調理用容器1のカーボン板3は薄くできることから、カーボン板をその分安く入手でき、電磁調理用容器1の価格を抑えることができる。
電磁調理用容器1では、カーボン板支持体4が浅めの皿状をしていることから、容器本体2からの吹きこぼれ等があっても、カーボン板支持体4に留まり、電磁調理器の天板に広がる恐れがない。
電磁調理用容器1は、カーボン板3を大きく露出しないようにでき、見栄えがよいものであり、商品価値が高いものでもある。
【0018】
電磁調理用容器1は、容器本体2、カーボン板3、カーボン板支持体4が組立・分解可能であることから、容器本体2を別の形状、容量等の容器本体に交換すれば、別の料理をすることができることになる。そうすると、種々の形状、容量等の容器本体を取り揃えておき、カーボン板3、カーボン板支持体4を共用するようにすれば、電磁調理用容器によって調理できる範囲を広げることができ、便利である。
【0019】
図5は、別の容器本体12を用いた電磁調理用容器11を示す。カーボン板3、カーボン板支持体4は、図1に示した電磁調理用容器のものを共用しているものとして示している。従って、カーボン板3、カーボン板支持体4について、図1に示したと同じ番号を示し、この電磁調理用容器11についての説明は省略する。
容器本体12による料理としては、シチュー等の料理が例示できる。
【0020】
図6は、さらに別の容器本体22を用いた電磁調理用容器21を示す。カーボン板3、カーボン板支持体4は、図1に示した電磁調理用容器1のものを共用しているものとして示している。従って、カーボン板3、カーボン板支持体4について、図1に示したと同じ番号を示し、この電磁調理用容器21についての説明は省略する。
容器本体22による料理としては、煮物等の料理が例示できる。
【0021】
図7は、さらに別の容器本体32を用いた電磁調理用容器31を示す。カーボン板3、カーボン板支持体4は、図1に示した電磁調理用容器1のものを共用しているものとして示している。従って、カーボン板3、カーボン板支持体4について、図1に示したと同じ番号を示し、この電磁調理用容器31についての説明は省略する。
容器本体32による料理としては、蒸し料理等の料理が例示できる。
【0022】
上記したことから明らかであるように、種々の形状、容量等の容器本体を取り揃えておき、カーボン板、カーボン板支持体を共用するようにすれば、家庭、業務用としても以下のような利点がある。
すなわち、家庭では、形状、容量等の異なる複数種の容器本体を取り揃え、カーボン板とカーボン板支持体を共用するようにすれば、電磁調理用容器によって調理できる範囲を広げることができ便利である。とりわけ、電磁調理用容器の重要部品であるカーボン板は高価であり、これが共用できることになると、一種類の電磁調理用容器を購入し、後は、必要な複数種の容器本体を購入するだけで、種々の調理をすることが可能となり、購入コスト等を低く抑えることができる。
また、電磁調理用容器を使用して調理した後、同一または別の種類の容器本体を、電磁調理器に残っているカーボン板支持体に支持されたカーボン板と接触させ、引き続き電磁誘導加熱を行うことで、同一または別の調理を行うことができる。容器本体を洗浄したものの生乾きや充分に乾燥していない状態で、同一の容器本体を使用して調理する場合、容器本体に残っている水分が気化して水蒸気となっても、カーボン板、容器本体を損傷したり、破損したりすることにはならない。そのため、高価なカーボン板を長期にわたり使用できる。
また、業務用として用いる場合には、厨房等に装備している電磁調理器の電磁誘導加熱器の口数に応じた数のカーボン板とカーボン板支持体があれば、電磁誘導加熱器の口数以上の容器本体に対して共用することができる。つまり、店舗の座席、収容可能客数等に基づき、必要とする複数種の形状、容量等の容器本体を必要数取り揃えておけば、客の要求に応じ、必要とする形状、容量等の容器本体を選択することで、必要とする料理を迅速に提供することができる。電磁調理用容器の重要部品である高価なカーボン板が共用できることから、必要な数の電磁調理用容器を購入するとともに、必要な複数種の容器本体を追加購入することでよく、購入コスト等を低く抑えることもできる。
また、電磁調理用容器を使用して調理した後、同一または別の種類の容器本体を、電磁調理器に残っているカーボン板支持体に支持されたカーボン板と接触させ、引き続き電磁誘導加熱を行うことで、同一または別の調理を行うことができる。乾燥した状態の容器本体が不足して、生乾きや充分に乾燥していない容器本体を使用せざるを得ない場合、容器本体に残っている水分が気化して水蒸気となっても、カーボン板、容器本体を損傷したり、破損したりすることにはならない。そのため、高価なカーボン板を長期にわたり使用できる。
【0023】
前記した以外の容器本体としては、更に、種々の物があるが、ご飯鍋等が例示できる。
【0024】
図8に、カーボン板支持体の上面の凸状部の別の形態を示す。
このカーボン板支持体40は、凹部40aにカーボン板3を支持するための背の低い同一高さの突条40bが合計8本放射状に設けられている点が、図1に示したものと相違するものである。このカーボン板支持体40を使用した電磁調理用容器についての説明は省略する。
このようなカーボン板支持体40によれば、カーボン板の支持が確実に行われることになる。
【0025】
図9に、カーボン板支持体の下面の凸状部の別の形態を示す。
このカーボン板支持体50は、外側下面に円形の脚状突起50aが正三角の頂点に配置された点が、図1に示したものと相違するものである。このカーボン板支持体50を使用した電磁調理用容器についての説明は省略する。
このようなカーボン板支持体50によれば、電磁調理器の天板との間で広く良好な下部通気用通路が形成できるとともに、脚状突起50aによる3点支持のため、電磁調理用容器をガタつきなく、安定して電磁調理器の天板に載置できる。
【0026】
図10に、カーボン板支持体のさらに別の形態を示す。
このカーボン板支持体60は、板状体となっており、また、凹部60aから下面に貫通孔61が穿設されている点が、図1に示したものと相違するものである。このカーボン板支持体60を使用した電磁調理用容器についての説明は省略する。
このようなカーボン板支持体60によれば、カーボン板支持体の外周部が上方位置にないことから、容器本体を取り扱う上でじゃまにならない。また、貫通孔61によって、上部通気用通路と下部通気用通路が連通し、空気による冷却効果が向上するとともに、電磁調理用容器を洗浄した後、生乾きや充分に乾燥していない状態で電磁調理を行う必要が生じ、電磁誘導加熱をせざるを得ない場合において、容器本体、カーボン板、カーボン板支持体に付着したり吸着等したりした水や、これ等の間に残留した水が、カーボン板の発熱に伴って気化し水蒸気となっても、速やかに上部通気用通路と下部通気用通路から外部に排出させることができることになる。図10において、貫通孔は一つとしているが、これに限らない。
【0027】
カーボン板支持体は鉢状または深目の皿状であってもよく、さらに、円形外形でなく、楕円、六角、三角等の適宜の形状でもよい。
カーボン板支持板の凹部の形状も円形の凹部に限られない。
【0028】
容器本体が円筒形のもの等を主に説明したが、これに限られず、その他の形状(例えば、楕円、四角、三角等の多角形やハート形)でも良く、また、扁平な形状、グラタン皿のような形状、陶板のような形状等種々の形状のものが可能である。
【0029】
また、容器本体、カーボン板支持体を陶磁器製として説明したが、これに限られず、石材、ガラス、セラミックス(カーボン板支持体としては、多孔質または発泡セラミックスを含む)、耐熱性合成樹脂であってもよいものである。実用的な観点からは、陶磁器製であることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 電磁調理用容器
2 容器本体
3 カーボン板
4 カーボン板支持体
4c 突条
4d 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導加熱によって発熱するカーボン板が、カーボン板支持体に支持され、前記カーボン板の上面と容器本体の外側底面が面接触される電磁調理用容器であって、
前記カーボン板支持体の上面には凹部が形成され、該凹部は前記カーボン板の下面と当接してカーボン板を支持するための凸状部を有し、該凸状部と前記カーボン板下面との間に形成される空間と、前記凹部の内側壁面と前記カーボン板の外側面との間に形成される間隙によって上部通気用通路が形成され、
前記カーボン板支持体の下面に、電磁調理器の天板との間で下部通気用通路を形成するための凸状部を有することを特徴とする電磁調理用容器。
【請求項2】
前記カーボン板支持体の上面の凸状部が、並列する所定数の直線状突条であることを特徴とする請求項1記載の電磁調理用容器。
【請求項3】
前記カーボン板支持体の上面の凹部に前記カーボン板の下部が収容されていることを特徴とする請求項1または2記載の電磁調理用容器。
【請求項4】
前記カーボン板支持体の下面の凸状部が、並列する所定数の直線状突条であることを特徴とする請求項1、2または3記載の電磁調理用容器。
【請求項5】
前記カーボン板支持体の下面の凸状部が、所定数の脚状突起であることを特徴とする請求項1、2または3記載の電磁調理用容器。
【請求項6】
前記カーボン板支持体が板状体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項の電磁調理用容器。
【請求項7】
前記カーボン板支持体が皿状体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の電磁調理用容器。
【請求項8】
前記カーボン板支持体の凹部から下面に貫通孔が穿設されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の電磁調理用容器。
【請求項9】
前記容器本体およびカーボン板支持体が、陶磁器、石材、ガラス、セラミックス、または、耐熱性合成樹脂のうちから選択された1種であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電磁調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−70908(P2012−70908A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217563(P2010−217563)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(596064330)オーシン商事株式会社 (3)
【出願人】(599097887)株式会社 華月 (4)
【Fターム(参考)】