説明

電磁連結装置の製造方法

【課題】高精度の削り加工が不要でありながら、起動初期時に異音が発生することを防止・抑制可能な電磁連結装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ロータ2のうちアーマチュア4に押圧し得る摩擦面を、アーマチュア4と対向する磁極部21,22と、フェーシング3とによって構成した電磁連結装置Xの製造方法として、磁極部にフェーシング3を組み付けて、磁極部21,22及びフェーシング3を面一または略面一に加工する摩擦面加工工程と、摩擦面加工工程後に、所定雰囲気下に置いて、フェーシング3を膨張させて、フェーシング3の表面を、励磁コイル12の励磁状態において必要な吸引力を確保でき且つ起動初期状態で磁極部21,22よりも優先してアーマチュア4に接触し得る程度に磁極部よりもアーマチュア4側に膨出させるフェーシング膨張工程とを経る方法を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁摩擦クラッチや電磁摩擦ブレーキ等の電磁連結装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、励磁コイルを有する磁極体と、磁極体に対向する位置に配置されるロータと、回転軸の軸方向に摺動可能なアーマチュアとを備え、励磁コイルが励磁状態である場合に、磁気吸引力によりアーマチュアがロータに押圧することにより回転トルクをロータに伝達するように構成した電磁摩擦クラッチが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ほぼ同様の構成を採用したものとして、励磁コイルが励磁状態である場合に、磁気吸引力によりアーマチュアがロータに押圧することによりアーマチュアの回転動作に制動力が働くように構成した電磁摩擦ブレーキが知られている。
【0004】
このような電磁摩擦クラッチや電磁摩擦ブレーキなどの電磁連結装置では、ロータのうちアーマチュアと接触する部分である摩擦面が、磁極部と、磁極部に設けたフェーシング(摩擦材)とによって形成されているのが一般的である。そして、励磁コイルを励磁状態にしてアーマチュアとロータの摩擦面とを相互に押圧させた際に、フェーシングによって押圧時の衝撃を緩和し得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−291705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような電磁連結装置を使い始める起動初期時(なじみ処理時)に、適度な初期トルクが得られるように、ロータの摩擦面をそれと対向するアーマチュアの摩擦面に対して傾斜させる斜め加工を行い、磁極部の表面の一部、例えばアウタポールの表面とアーマチュアとを押圧できるように構成されている。しかしながら、何れも金属製である磁極部とアーマチュアとを相互に押圧させた際には衝突音が生じる。
【0007】
そこで、摩擦面を面一または略面一にする加工を行った後に、磁極部の表面を数ミクロン単位で削り、磁極部の表面をフェーシングよりもアーアマチュアから離れた位置に設定する削り加工が施されていた。これにより、初期状態ではフェーシングは磁極部の表面よりもアーマチュア側に突出した形状となる。
【0008】
しかしながら、上述したような数ミクロン単位の削り加工は、極めて高い精度が要求され、製作工程の複雑化や生産性低下、製作コストアップを招来し得るという問題があった。
【0009】
このような課題に着目してなされた本発明の主たる目的は、高精度の削り加工が不要でありながら、起動初期時に異音(衝突音)が発生することを防止・抑制可能な電磁連結装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、励磁コイルを有する磁極体と、回転軸の軸方向に沿って磁極体と対向する位置に配置されたロータと、回転軸の軸方向に沿ってロータに接離する方向に移動可能であって且つ磁極体及びロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、ロータのうちアーマチュアに押圧し得る摩擦面を、アーマチュアと対向する磁極部と、この磁極部に設けたフェーシングとによって構成し、励磁コイルが励磁状態である場合にアーマチュアが電磁吸引力により回転軸の軸方向に移動してロータの摩擦面に押圧するように構成した電磁連結装置の製造方法に関するものである。ここで、「押圧」とは、接触した状態で押し付けて圧することを意味する。
【0011】
そして、本発明の電磁連結装置の製造方法は、磁極部にフェーシングを組み付けて、磁極部の表面及びフェーシングの表面を略面一に加工する摩擦面加工工程と、摩擦面加工工程後に、所定雰囲気下において、フェーシングを膨張させ、フェーシングの表面を、励磁コイルの励磁状態において必要な吸引力を確保でき且つ起動初期状態で磁極部よりも優先してアーマチュアに接触し得る程度に磁極部よりもアーマチュア側に膨出させるフェーシング膨張工程とを経ることを特徴としている。
【0012】
このような製造方法であれば、摩擦面加工工程で磁極部の表面とフェーシングの表面を略面一にした後は、特別な高精度の加工を要することなく、フェーシングを所定の雰囲気下に置いておくだけで、物性を利用して膨張させたフェーシングを磁極部の表面よりもアーマチュア側に突出させることができるため、製作工程の単純化を図ることができ、生産性の向上及び製作コストの低廉化を実現することができる。なお、「略面一」とは、磁極部の表面とフェーシングの表面とが完全に一平面上にある状態(面一)と、若干の誤差はあるものの、一平面上にあるとみなしてよい状態のことをいうものとする。そして、本発明におけるフェーシング膨張工程では、フェーシングの膨張程度を次の2つの条件、つまり、励磁コイルの励磁状態において必要な吸引力を確保できるという条件(第1条件)、起動初期状態で磁極部よりも優先してアーマチュアに接触し得るという条件(第2条件)を満たすようにしている。ここで、第1条件を満たすことにより、フェーシングの膨張量(磁極部の表面に対する突出高さ)が大きくなり過ぎた場合に生じ得る不具合、すなわち、励磁コイルの励磁状態において必要な吸引力を発揮できずに、電磁連結装置としての機能を果たさないという不具合を防止することができる。また、第2条件を満たすことにより、フェーシングの膨張量(磁極部の表面に対する突出高さ)が小さ過ぎた場合に生じ得る不具合、すなわち、起動初期時に、磁極部の表面をロータに直接押圧させることによって、異音(衝突音)が発生するという不具合を好適に防止・抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明では、電磁連結装置を完成させるまでの時点であれば摩擦面加工工程及びフェーシング膨張工程はどの時点で行ってもよいが、工場などから納品先へ電磁連結装置を輸送する場合には、この輸送時間を利用して、フェーシング膨張工程を行うようにすることが好ましい。すなわち、フェーシング膨張工程は、磁極部にフェーシングを組み付けて摩擦面加工工程を行った後の状態で、完成前の電磁連結装置を輸送中に行うようにすれば、輸送時間を有効利用することができ、生産効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高精度の削り加工が不要でありながら、起動初期時に異音(衝突音)が発生することを防止・抑制可能な電磁連結装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電磁摩擦クラッチ(励磁状態)の模式断面図。
【図2】同実施形態におけるロータの摩擦面の断面図。
【図3】図2のa方向矢視図。
【図4】図2のP領域拡大図。
【図5】同実施形態に係る電磁摩擦クラッチの製造工程を示すフローチャート。
【図6】同実施形態におけるフェーシング膨張工程後の図4対応図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る電磁連結装置は、図1に示すように、回転軸Aに固定されたロータ2と、このロータ2に対向配置されたアーマチュア4と、磁束を発生させる励磁コイル12を有する磁極体1とを備え、励磁コイル12に通電し、その励磁コイル12から発生した磁束によってロータ2にアーマチュア4を吸着させたり、励磁コイル12への通電を解除して、ロータ2とアーマチュア4とを離隔させることにより、トルクの伝達及び遮断を行う乾式の電磁摩擦クラッチである。
【0018】
この電磁摩擦クラッチXは、図1(図1は電磁摩擦クラッチXの作用原理を模式的に示す図である)に示すように、励磁コイル12を有する磁極体1と、回転軸Aと、磁極体1と対向する位置に配置され回転軸Aに固定されたロータ2と、回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2に接離する方向に移動可能であって且つ磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア4と、アーマチュア4をロータ2から離間する方向に付勢し得る付勢部材5(この付勢部材5は、アーマチュア4をロータ2から離間させた位置に保持し、且つトルク伝達可能な部材である)とを備えたものである。
【0019】
磁極体1は、ロータ2側に開口する断面視コ字状の凹部11aが形成されたリング状のヨーク11と、凹部11a内に収容される励磁コイル12とを備えたものであり、フィールドコアとも称される。励磁コイル12にはリード線が接続されている。本実施形態では、連結板13を介してヨーク11を固定部F(図1参照)に固定することにより、磁極体1全体を移動不能に固定している。
【0020】
ロータ2は、図2及び図3(図3は図2のa方向矢視図である)磁極体1を収容する磁極体収容凹部2aを有し、さらに磁極体1と背向する側にフェーシング3を収容するリング状のフェーシング収容凹部2bを形成したものである。本実施形態のロータ2では、相対的に回転軸Aに近い内周側のインナポール21と、相対的に回転軸Aから遠い外周側のアウタポール22とによって磁極部を構成している。フェーシング収容凹部2bは、インナポール21とアウタポール22とに跨がって形成されている。また、ロータ2の中央部には回転軸Aを一体回転可能に保持し得る回転軸保持孔2cを形成している。
【0021】
フェーシング3は、図2乃至図4(図4は図2のP領域拡大図である)に示すように、ロータ2のフェーシング収容凹部2bに離脱不能に収容可能なリング状をなし、磁極部の表面(本実施形態では各ポール21,22の表面)とともに、励磁状態においてアーマチュア4に押圧し得るロータ2の摩擦面として機能するものである。フェーシング3の配合組成は適宜変更可能なものであり、一例としては、例えばアラミド繊維や非鉄金属繊維等の繊維系を主材料とするものであったり、フェノール樹脂や合成ゴム等の樹脂系充填剤や、フリクションダストや無機質粉末等の摩擦調整材を配合したものを挙げることができる。フェーシングは、ロータ2のフェーシング収容凹部2bに収容可能なリング状をなすものである。
【0022】
アーマチュア4は、例えば鋼(ステンレス鋼、軟鋼)を主材料(母材の材料)とするリング状をなすものである。このアーマチュア4は、回転軸Aのラジアル方向には移動不能である一方、回転軸Aの軸方向(スラスト方向)にスライド移動可能なものである。
【0023】
付勢部材5は、例えば板バネから構成され、励磁コイル12への通電状態が切断された場合にロータ2(具体的にはフェーシング3)に押圧しているアーマチュア4をロータ2から離間させてハブ6側へ復帰させる復帰バネとして機能し、またトルク伝達部材としても機能するものである。本実施形態では、図1に示すように、この付勢部材5をハブ6に固着し、このハブ6と一体に形成され入力側となるプーリ7を回転軸A回りに回動可能に設定している。
【0024】
次に、このような構成をなす電磁摩擦クラッチXの動作について説明する。
【0025】
励磁コイル12が励磁されていない無励磁状態である場合、アーマチュア4は、ロータ2から離間した位置に付勢部材5によって保持され、ハブ6に押圧している(図示省略)。したがって、アーマチュア4はプーリ7と共に駆動されているが、ロータ2とは間隙を隔てているのでロータ2には駆動トルクは伝達されず、回転軸Aは停止している。
【0026】
一方、励磁コイル12が励磁状態である場合、アーマチュア4は、磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材5の付勢力に抗してロータ2に接触する位置まで回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2側に吸引される(図1参照)。したがって、プーリ7からの駆動トルクがロータ2に伝達され、回転軸Aは駆動(回動)する。
【0027】
すなわち、本実施形態に係る励磁作動形電磁摩擦クラッチXは、励磁状態では、アーマチュア4がロータ2に磁気吸着されて、入力側(プーリ7)の回転が回転軸Aに伝達される一方、励磁コイル12に対する通電を切断して励磁状態から無励磁状態へ切り替えると、磁気吸着力が消滅し、アーマチュア4は付勢部材5の弾性復帰力によりロータ2から離れた位置に復帰し、入力側(プーリ7)から回転軸Aへの駆動力の伝達が切断される。
【0028】
そして、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、ロータ2のうち励磁状態においてアーマチュア4に押圧し得る摩擦面を、図5に示す工程を経て形成している。
【0029】
先ず、ロータ2のフェーシング収容凹部2bにフェーシング3を収容して、ロータ2の磁極部(インナポール21、アウタポール22)の表面と、フェーシング3とからなる摩擦面を略面一にする加工を施す(摩擦面加工工程S1)。この摩擦面加工工程S1は、例えば適宜の切断具を用いて行うことができ、磁極部(インナポール21、アウタポール22)の表面とフェーシング3の表面とを完全に一平面上に並ぶように平滑に加工するが、ごくわずかな微差は許容される。なお、ロータ2のフェーシング収容凹部2bにフェーシング3を圧入した状態で収容することにより、フェーシング収容凹部2bからフェーシング3が不意に離脱することを防止できる。ここで、摩擦面加工工程S1後のロータ2の摩擦面は図4に示す形態と同一ないし略同一である。
【0030】
そして、本実施形態では、摩擦面加工工程S1を経た後にフェーシング膨張工程S2を行う。このフェーシング膨張工程S2は、所定雰囲気下に置いて、フェーシング3を膨張させて、フェーシング3の表面を、励磁コイル12の励磁状態において必要な吸引力を確保でき且つ起動初期状態で磁極部(インナポール21,アウタポール22)よりも優先してアーマチュア4に接触し得る程度に磁極部(インナポール21,アウタポール22)よりもアーマチュア4側に膨出させる工程である。具体的には、フェーシング3の材質に応じて適切な高温多湿環境下に置いたフェーシング3を、一切の加工を施すことなく、自然に膨張させるのがこのフェーシング膨張工程S2である。なお、フェーシング膨張工程S2は、摩擦面加工工程S1の後に半製品を輸送し、この輸送時間を利用して実施することができる。ここで、半製品を輸送する手段としては、トラックはもちろんのこと、船や航空機、鉄道車両などを挙げることができる。
【0031】
フェーシング膨張工程S2を経たロータ2の摩擦面は、図6に示すように、フェーシング3が磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面よりもアーマチュア4側に突出した形状となる。そして、磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面に対するフェーシング3の突出量(高さ)は、例えば数μm乃至数十μmである。
【0032】
所定の場所へ輸送した後に、この電磁連結装置(電磁摩擦クラッチX)を初めて起動させた場合(起動初期時、なじみ処理時)、励磁コイル12を励磁させてアーマチュア4とロータ2とを押圧させると、ロータ2の摩擦面のうち磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面よりも所定高さ分だけアーマチュア4側に突出したフェーシング3がアーマチュア4に当たる。その結果、起動初期時にアーマチュア4と磁極部(ポール21,22)とが押圧すれば生じ得る異音(滑り音、衝撃音)を消したり、小さくすることができる。しかも、磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面に対するフェーシング3の突出量(高さ)を上述したような値に設定することにより、フェーシング3の突出量(高さ)が多過ぎる(高すぎる)ことに起因して励磁コイル12の励磁状態時に必要な吸引力を確保できない、という不具合が生じることを防止できる。また、なじみ処理により、ロータ2の摩擦面は図2に示す形態になる。
【0033】
このように、本実施形態では、摩擦面加工工程S1で磁極部(インナポール21,アウタポール22)とフェーシング3を面一または略面一にした後は、例えば磁極部(インナポール21,アウタポール22)を数μm単位で削って段差を形成したり、斜めに加工する等の高度な加工を要することなく、フェーシング3を組み込んだロータ2を所定の雰囲気下に置いておくことでフェーシング3のみを膨張させて、磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面よりもアーマチュア4側に突出させた形状にしているため、製作工程の単純化及び製作コストの低廉化を図ることができる。そして、フェーシング膨張工程S2では、磁極部(インナポール21,アウタポール22)の表面に対するフェーシング3の突出量(高さ))を、励磁コイル12の励磁状態において必要な吸引力を確保できるという条件と、起動初期状態で磁極部(各ポール21,22)よりも優先してアーマチュア4に接触し得るという条件とを満たすように設定してため、励磁作動形電磁連結装置(電磁摩擦クラッチX)として動力伝達機能を適切に発揮するとともに、起動初期時の異音(滑り音、衝突音)の発生を好適に防止・抑制することができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、半製品の輸送中にフェーシング膨張工程S2を行うようにしているため、輸送時間を有効利用することができ、生産効率が向上する。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、電磁連結装置として、電磁摩擦クラッチXを例示したが、このような電磁摩擦クラッチXと略同様の構造を用いて、回転軸を回転不能に固定することにより、励磁コイルに通電し、その励磁コイルから発生した磁束によってロータにアーマチュアを吸着させた場合に、アーマチュアに制動力が働くように構成した乾式の電磁摩擦ブレーキにも、本発明の製造方法を適用することができる。このような電磁摩擦ブレーキの一例としては、励磁コイルが励磁されていない無励磁状態である場合、アーマチュアはロータから離間した位置に付勢部材によって保持され、プーリと共に駆動される一方、励磁コイルが励磁状態である場合、アーマチュアが、磁極体及びロータと共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材の付勢力に抗してロータに接触する位置まで回転軸の軸方向に沿ってロータ側に吸引され、回転していない回転軸に固定されたロータに押圧することにより、アーマチュアに対して制動力が働くようにした態様を挙げることができる。
【0036】
また、電磁連結装置を完成させるまでの時点であれば摩擦面加工工程及びフェーシング膨張工程はどの時点で行ってもよく、輸送する前の時点、あるいは輸送した後の時点でこれら2つの工程を行うことも可能である。
【0037】
また、磁極部の表面及びフェーシングの表面を面一または略面一に加工する摩擦面加工工程では、面一となる摩擦面が回転軸の軸方向に直交する角度以外の角度となるようにしてもよい。その一例としては、磁極部のうち回転軸から相対的に遠い方(アウタポール側)を回転軸に相対的に近い方(インナポール側)よりもアーマチュア側に位置付ける(突出させる)ようにロータの摩擦面を加工する態様を挙げることができる。
【0038】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…磁極体
12…励磁コイル
2…ロータ
21,22…磁極部(インナポール,アウタポール)
3…フェーシング
4…アーマチュア
A…回転軸
X…電磁連結装置(電磁摩擦クラッチ)
S1…摩擦面加工工程
S2…フェーシング膨張工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルを有する磁極体と、
回転軸の軸方向に沿って前記磁極体と対向する位置に配置されたロータと、
前記回転軸の軸方向に沿って前記ロータに接離する方向に移動可能であって且つ前記磁極体及び前記ロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、
前記ロータのうち前記アーマチュアに押圧し得る摩擦面を、前記アーマチュアと対向する磁極部と、この磁極部に設けたフェーシングとによって構成し、前記励磁コイルが励磁状態である場合に前記アーマチュアが電磁吸引力により前記回転軸の軸方向に移動して前記ロータの前記摩擦面に押圧するように構成した電磁連結装置の製造方法であって、
前記磁極部に前記フェーシングを組み付けて、前記磁極部の表面及び前記フェーシングの表面を略面一に加工する摩擦面加工工程と、
前記摩擦面加工工程後に、所定雰囲気下に置いて、前記フェーシングを膨張させて、当該フェーシングの表面を、前記励磁コイルの励磁状態において必要な吸引力を確保でき且つ起動初期状態で前記磁極部よりも優先して前記アーマチュアに接触し得る程度に前記磁極部よりもアーマチュア側に膨出させるフェーシング膨張工程とを経ることを特徴とする電磁連結装置の製造方法。
【請求項2】
前記フェーシング膨張工程は、前記磁極部に前記フェーシングを組み付けて前記摩擦面加工工程を行った後の状態で、完成前の電磁連結装置を輸送中に行うようにした請求項1に記載の電磁連結装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189194(P2012−189194A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55624(P2011−55624)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】