説明

電線用クランプ

【課題】従来の標準タイプの電線用クランプを有効に活用しつつ、ごく少ない種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプを実現できること。
【解決手段】電線用クランプ1は、支持体に形成された一次側の取付孔に挿入されることによって支持体に保持される一次側の留め具20と本体部10とを備える。本体部10は、直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁11〜15を有する箱状であり、対向する壁が存在する4つの壁11〜14のうちの一つの壁11の外側に一次側の留め具20が固定され、残りの4つの壁12〜15各々に、二次側の留め具が取り付けられる二次側の取付孔12A〜15Aが形成された部分である。ここで、二次側の留め具は、電線を保持する他の電線用クランプのに設けられ、一次側の取付孔にも取り付け可能な留め具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を支持体に保持するために用いられる電線用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両に設けられるワイヤハーネスは、自動車のボディなどの支持体に固定する作業を容易にするため、電線の部分に、支持体に設けられた取付孔の縁部に保持される電線用クランプが取り付けられる。
【0003】
電線用クランプは、ワイヤハーネスの電線が固定される電線支持部と、その電線支持部に固定され、支持体に形成された取付孔に挿入されることによって取付孔の縁部に保持される留め具とを備える。電線支持部は、例えば、粘着テープにより電線が固定される棒状又は板状の部分、又は電線に巻き付けられることによって電線を支持するベルトなどである。
【0004】
図10,図12及び図13は、従来の電線用クランプの一例であるベルト付きの3種類の電線用クランプ30,301,302各々の斜視図である。また、図11は、図10に示される電線用クランプ30の側断面図である。以下、図10、図12及び図13に示される電線用クランプを、それぞれ標準タイプの電線用クランプ30、高脚タイプの電線用クランプ301及びオフセットタイプの電線用クランプ302と称する。
【0005】
ベルト付きの電線用クランプ30,301,302は、2つの係止部31と、フランジ部32と、ベルト支持部33と、ベルト34とが設けられている。ベルト34は、2つの端部の一方は固定端であり、他方は自由端である。また、ベルト34は、その一方の面に、長手方向において複数配列された溝34Aが形成されている。
【0006】
2つの係止部31は、フランジ部32の一方の面に立設され、可撓性を有し、それらが両側に張り出した幅が支持体の取付孔の幅よりも大きな幅で形成されている。また、フランジ部32は、支持体の取付孔を塞ぐように、支持体の取付孔の面積よりも大きな面積で形成されている。例えば、フランジ部32は、長孔である取付孔とほぼ相似な形状に形成され、取付孔よりも一回り大きな皿状に形成されている。
【0007】
2つの係止部31は、支持体の取付孔に挿入される際に、取付孔の縁部に接して押圧され、それらが両側に張り出す幅が、取付孔の幅まで収縮する。2つの係止部31は、取付孔の内側へさらに押し込められると、取付孔の縁部の裏側において、取付孔の幅よりも大きな幅になるまで形状が復帰する。
【0008】
2つの係止部31の幅が拡がることにより、2つの係止部31各々の外側に形成された爪部が取付孔の縁部の裏側に引っ掛かり、係止部31とフランジ部32とが、取付孔の縁部を表裏両側から挟み込む。その結果、ベルト付きの電線用クランプ30,301,302は、支持体における取付孔の縁部に保持される。なお、2つの係止部31及びフランジ部32が留め具である。
【0009】
図11に示されるように、ベルト支持部33は、ベルト34が自由端側から挿入されるベルト挿通孔33Aを形成している。さらに、ベルト支持部33におけるベルト挿通孔33Aの周囲の壁の一部を形成する部分には、その可撓性により、ベルト挿通孔33Aの高さ方向において揺動可能に支持されたベルト係止爪33Bが設けられている。
【0010】
ベルト34がベルト挿通孔33Aに挿通されることにより、ベルト係止爪33Bは、ベルト34の溝34A内に押圧され、電線に巻かれたベルト34を電線の周面に密着する状態で保持する。即ち、ベルト係止爪33Bは、電線の周囲に巻かれたベルト34の輪の大きさを保持する機能を有する。なお、ベルト係止爪33Bは、ベルト34がベルト挿通孔33Aに挿通される方向に移動したときにのみ溝34Aから外れやすくなるように一方の面が斜めに形成されている。
【0011】
以下、標準タイプの電線用クランプ30、高脚タイプの電線用クランプ301及びオフセットタイプの電線用クランプ302の違いについて説明する。図10に示されるように、標準タイプの電線用クランプ30におけるベルト支持部33は、フランジ部32における係止部31が設けられている面と反対側の面に対して直接固定されている。これにより、標準タイプの電線用クランプ30のベルト34により保持される電線は、支持体の取付孔から数ミリメートル程度の近傍において、その取付孔に対向する位置に保持される。
【0012】
一方、高脚タイプの電線用クランプ301におけるベルト支持部33は、フランジ部32における係止部31が設けられている面と反対側の面に立設された脚部35の先端部分に固定されている。これにより、高脚タイプの電線用クランプ301のベルト34により保持される電線は、支持体の取付孔に対して十数ミリメートルから数十ミリメートル程度離間して、その取付孔に対向する位置に保持される。このような高脚タイプの電線用クランプ301は、ワイヤハーネスにおける電線を、支持体の取付孔に対向するとともに取付孔に対して十数ミリメートルから数十ミリメートル程度離間した位置に保持する必要がある場合に用いられる。
【0013】
また、オフセットタイプの電線用クランプ302におけるベルト支持部33は、フランジ部32における係止部31が設けられている面と反対側の面から、その面に平行な方向へ伸びて形成された張出部36の先端部分に固定されている。これにより、オフセットタイプの電線用クランプ302のベルト34により保持される電線は、支持体の取付孔から横方向へ十数ミリメートルから数十ミリメートル程度ずれた位置に保持される。このようなオフセットタイプの電線用クランプ302は、ワイヤハーネスにおける電線を、支持体の取付孔からその幅方向へ十数ミリメートルから数十ミリメートル程度ずれた位置に保持する必要がある場合に用いられる。
【0014】
また、特許文献1に示される電線用クランプは、粘着テープにより電線が固定される電線支持部が、留め具のフランジ部に固定された部材に対し、フランジ部の面に平行な方向における位置を調整可能に支持された構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−273278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図10から図13に示されるように、従来の一般的な電線用クランプは、その形状が支持体の取付孔と保持する電線との位置関係の種類ごとに異なる。従って、従来の一般的な電線用クランプは、多くの種類が用意される必要があり、また、取り付け位置に応じて種類の使い分けが必要となる。そのため、従来の一般的な電線用クランプは、量産によるコスト低減効果が十分に得られないという問題点があった。さらに、従来の一般的な電線用クランプは、種類の使い分けが煩雑であるため、取り付けの作業効率が悪いという問題点もあった。
【0017】
また、特許文献1に示される電線用クランプは、支持位置を調節可能な特別な構造を備えた電線保持部及びそれを支持する支持部を必要とする。即ち、最も使用頻度が高く、量産効果によりコストの低い標準タイプの電線用クランプ(図10参照)を利用することができない。従って、特許文献1に示される電線用クランプも、量産によるコスト低減効果が十分に得られないという問題点があった。
【0018】
本発明は、図10に示されるような従来の標準タイプの電線用クランプを有効に活用しつつ、ごく少ない種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプを実現できることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の発明に係る電線用クランプは、電線を支持体に保持するために用いられる電線用クランプであり、以下に示される各構成要素を備える。
(1−1)第1の構成要素は、支持体に形成された取付穴(一次側の取付孔)に挿入されることによってその一次側の取付孔の縁部に保持される一次側の留め具である。
(1−2)第2の構成要素は、直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁を有する箱状であり、それら5つの壁のうち、対向する壁が存在する4つの壁のうちの一つの外側に一次側の留め具が固定され、残りの4つの壁各々に、二次側の留め具が取り付けられる二次側の取付孔が形成された本体部である。なお、二次側の留め具は、他の電線用クランプに設けられ、一次側の取付孔にも取り付け可能な留め具である。
【0020】
また、本体部は、立方体の5つの面を形成する5つの壁を有することが考えられる。
【0021】
また、本体部において、二次側の取付孔は長孔であり、一次側の留め具が固定された壁以外の4つの壁のうちの相互に対向する2つの壁各々における二次側の取付孔は同じ向きに形成されていることが考えられる。
【0022】
また、第2の発明に係る電線用クランプは、第1の発明に係る電線用クランプと電線を保持する従来の一般的な電線用クランプとが組み合わされた電線用クランプである。即ち、第2の発明に係る電線用クランプは、電線を支持体に保持する電線用クランプであり、以下の各構成要素を備える。
(2−1)第1の構成要素は、支持体に形成された取付穴(一次側の取付孔)に挿入されることによってその一次側の取付孔の縁部に保持される一次側の留め具である。
(2−2)直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁を有する箱状であり、それら5つの壁のうち、対向する壁が存在する4つの壁のうちの一つの外側に一次側の留め具が固定され、残りの4つの壁各々に二次側の取付孔が形成された本体部である。
(2−3)第3の構成要素は、一次側の取付孔に取り付け可能な留め具であり、二次側の取付孔に挿入され、二次側の取付孔の縁部に保持された二次側の留め具である。
(2−4)第4の構成要素は、二次側の留め具に固定され、電線を支持する電線支持部である。
【0023】
第2の発明に係る電線用クランプにおいて、電線支持部が、電線に巻き付けられることにより電線を支持するベルトを備えることが考えられる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明に係る電線用クランプは、それ自体は電線を保持する機能を備えず、電線を保持する他の電線用クランプと、一次側の取付孔が形成された支持体とを連結する用具である。以下、第1の発明に係る電線用クランプにおいて、本体部が備える5つの壁のうち、一次側の留め具が固定された壁(対向する壁が存在する4つの壁のうちの一つ)を第一の壁と称する。また、第一の壁に対向する壁を第二の壁と称する。また、対向する壁が存在する4つの壁のうち、第一の壁及び第二の壁以外の2つの壁を、それぞれ第三の壁及び第四の壁と称する。そして、本体部が備える5つの壁のうちの残りの壁を第五の壁と称する。
【0025】
第1の発明に係る電線用クランプにおいて、電線を保持する他の電線用クランプを取り付け可能な二次側の取付孔は、本体部の4箇所(第二の壁から第五の壁までの各々)に設けられている。4箇所のうちの3箇所は、第三の壁から第五の壁までの各々に存在し、一次側の留め具が取り付けられる支持体の取付孔から三方各々へ所定の距離分ずれた箇所である。また、残りの1箇所は、第二の壁に存在し、支持体の取付孔に対向して所定の間隔を隔てた箇所である。また、二次側の取付孔は、一次側の取付孔(支持体の取付孔)にも取り付け可能な留め具(二次側の留め具)、即ち、従来の一般的な電線用クランプの留め具を保持することができる。
【0026】
従って、例えば、本体部の第二の壁に設けられた二次側の取付孔に従来の標準タイプの電線用クランプが取り付けられた場合、図12に示される高脚タイプの電線用クランプ301と同等の電線用クランプが実現される。また、本体部の第三の壁に設けられた二次側の取付孔に従来の標準タイプの電線用クランプが取り付けられた場合、図13に示されるオフセットタイプの電線用クランプ302と同等の電線用クランプが実現される。
【0027】
同様に、本体部における4箇所の二次側の取付孔のうちの1つ又は複数に従来の標準タイプの電線用クランプが取り付けられることにより、多くのタイプの電線用クランプが実現される。
【0028】
以上に示したように、第1の発明に係る電線用クランプと従来の汎用的な標準タイプの電線用クランプとが組み合わされた電線用クランプ、即ち、第2の発明に係る電線用クランプは、2種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプとして機能する。即ち、本発明によれば、従来の標準タイプの電線用クランプを有効に活用しつつ、ごく少ない種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る電線用クランプ1の斜視図である。
【図2】電線用クランプ1の側面図である。
【図3】電線用クランプ1の平面図である。
【図4】電線用クランプ1の背面図である。
【図5】電線用クランプ1の正面図である。
【図6】電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第1の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。
【図7】電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第2の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。
【図8】電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第3の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの正面図である。
【図9】電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第4の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの側面図である。
【図10】従来の標準タイプの電線用クランプ30の斜視図。
【図11】電線用クランプ30の側断面図。
【図12】従来の高脚タイプの電線用クランプ301の斜視図。
【図13】従来のオフセットタイプの電線用クランプ302の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する性格は有さない。
【0031】
以下、図1から図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電線用クランプ1について説明する。電線用クランプ1は、ワイヤハーネスの電線を自動車のボディ又はインストルメントパネルなどの支持体に保持するために用いられる用具である。電線用クランプ1は、それ自体は電線を保持する機能を備えず、電線を保持する他の電線用クランプと、取付孔が形成された支持体とを連結する用具である。
【0032】
図1から図5に示されるように、電線用クランプ1は、本体部10と一次側の留め具20とを備えている。この電線用クランプ1は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂からなる一体成型部材である。
【0033】
電線用クランプ1において、一次側の留め具20は、自動車のボディ又はインストルメントパネルなどの支持体に形成された取付孔に挿入されることにより、その取付孔の縁部に保持される部分である。便宜上、支持体に形成された取付孔のことを一次側の取付孔と称する。一次側の留め具20は、箱状の本体部10における1つの壁11の外側に固定されている。
【0034】
図1,図2及び図4に示されるように、一次側の留め具20は、支持体に形成された一次側の取付孔に挿入される挿入部21と、一次側の取付孔に挿入されない皿状のフランジ部22とを備える。
【0035】
挿入部21は、フランジ部22の一方の面に立設された2つの支柱部211と、2つの支柱部211に対して架設された梁部212と、梁部212の両側に張り出して設けられた2つの係止部213とを備える。2つの係止部213は、可撓性を有し、梁部212の両側に張り出した幅が、一次側の取付孔の幅よりも大きな幅で形成されている。
【0036】
また、フランジ部22は、一次側の取付孔を塞ぐように、一次側の取付孔の面積よりも大きな面積で形成されている。例えば、フランジ部22は、長孔である一次側の取付孔と比較して、形状がほぼ相似で一回り大きな投影面を有する皿状に形成されている。
【0037】
挿入部21が一次側の取付孔に挿入される際に、2つの係止部213は、一次側の取付孔の縁部(支持体)に接して押圧され、梁部212の両側に張り出す幅が、一次側の取付孔の幅まで収縮する。挿入部21が一次側の取付孔の内側へさらに押し込められると、2つの係止部213の形状は、一次側の取付孔の縁部の裏側において、一次側の取付孔の幅よりも大きな幅になるまで復帰する。その結果、2つの係止部213各々の外側に形成された爪部213Aが、一次側の取付孔の縁部の裏側に引っ掛かり、爪部213Aとフランジ部22とが、一次側の取付孔の縁部を表裏両側から挟み込む。その結果、一次側の留め具20が支持体に保持される。
【0038】
なお、一次側の留め具20の構成は、以上に示された構成とは異なる構成であってもかまわない。例えば、一次側の留め具20が、従来の一般的な電線用クランプ30,301,302が備える留め具と同じ構成を有することも考えられる。
【0039】
本体部10は、立方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁を有する箱状の部分である。即ち、本体部10は、中空の立方体における1つの面のみが除かれた形状を有している。一次側の留め具20は、本体部10における対向する壁が存在する4つの壁11〜14のうちの一つの壁11の外側に、一次側の留め具20の中心とその壁11の中心とが一致するように固定されている。
【0040】
以下、本体部10が備える5つの壁のうち、一次側の留め具が固定された壁を第一の壁11と称する。また、第一の壁11に対向する壁を第二の壁12と称する。また、対向する壁が存在する4つの壁11〜14のうち、第一の壁11及び第二の壁12以外の2つの壁を、それぞれ第三の壁13及び第四の壁14と称する。そして、本体部10が備える5つの壁のうちの残りの壁を第五の壁15と称する。なお、本体部10において、第五の壁15に対向する方向の開口は、電線用クランプ1を成型する際に金型を抜くための開口である。
【0041】
また、便宜上、第五の壁15の面に直交する方向をX軸方向、第三の壁13及び第四の壁14の各面に直交する方向をY軸方向、第一の壁11及び第二の壁12の各面に直交する方向をZ軸方向と称する。
【0042】
本体部10における第二の壁12から第五の壁15の各々の中央部分には、他の電線用クランプに設けられた二次側の留め具が取り付けられる二次側の取付孔12A〜15Aが形成されている。二次側の取付孔12A〜15Aは、全て長孔であり、電線用クランプ1が備える一次側の留め具20及び他の電線用クランプが備える留め具が取り付けられる一次側の取付孔と形状及び大きさが同じである。
【0043】
二次側の取付孔12A〜15Aに取り付けられる他の電線用クランプの一例は、図10及び図11に示される従来の標準タイプの電線用クランプ30である。従って、標準タイプの電線用クランプ30などの従来の汎用的な電線用クランプは、一次側の取付孔及び本体部10における二次側の取付孔12A〜15Aのいずれにも取り付け可能である。
【0044】
また、図1及び図2に示されるように、本体部10において、第三の壁13及び第四の壁14の各々における二次側の取付孔13A,14Aは同じ向きに形成されている。具体的には、第三の壁13及び第四の壁14の各々における二次側の取付孔13A,14Aは、いずれのX軸方向を長手方向とする長孔である。即ち、二次側の取付孔13A,14Aは、Y軸方向から見て完全に重なるように形成されている。
【0045】
一方、本体部10において、第五の壁15における二次側の取付孔15Aは、その長手方向が、二次側の取付孔13A,14A各々の長手方向に沿う中心線を含む平面(X−Y平面)に対して直交する向きに形成されている。即ち、二次側の取付孔15Aは、Z軸方向を長手方向とする長孔である。
【0046】
また、第二の壁12における二次側の取付孔12Aは、一次側の留め具20が一次側の取付孔に取り付けられているときに一次側の取付孔と同じ向きとなるように形成されている。即ち、第二の壁12における二次側の取付孔12Aは、X軸方向を長手方向とする長孔であり、一次側の留め具20が一次側の取付孔に取り付けられている状態においては、一次側の取付孔の長手方向もX軸方向となる。
【0047】
次に、図6〜図9を参照しつつ、電線用クランプ1と最も利用頻度の高い従来の標準タイプの電線用クランプ30とが組み合わされた電線用クランプについて説明する。標準タイプの電線用クランプ30は、図10及び図11に示されている。なお、便宜上、標準タイプの電線用クランプ30が備える留め具31,32(2つの係止部31及びフランジ部32)のことを二次側の留め具31,32と称する。
【0048】
図6〜図9に示される電線用クランプは、一次側の留め具20及び本体部10を含む電線用クランプ1を備える。さらに、図6〜図9に示される電線用クランプは、従来の標準タイプの電線用クランプ30を備える。
【0049】
標準タイプの電線用クランプ30の留め具である二次側の留め具31,32(図9参照)は、電線用クランプ1における二次側の取付孔12A〜15Aのうちの1つ又は複数に挿入され、その二次側の取付孔の縁部に保持される。ここで、二次側の留め具31,32は、一次側の取付孔にも取り付け可能である。
【0050】
また、図9に示されるように、標準タイプの電線用クランプ30は、電線支持部として、二次側の留め具のフランジ部32に固定されたベルト支持部33及びそのベルト支持部33に支持されたベルト34を備える。このベルト34は、電線に巻き付けられることにより電線を支持する。
【0051】
<第1の連結パターン>
図6は、電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第1の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。この第1の連結パターンにおいては、電線をベルト34で保持する標準タイプの電線用クランプ30における一次側の留め具31,32が、電線用クランプ1における第二の壁12の二次側の取付孔12Aに取り付けられている。なお、図6において、電線及び支持体の図示は省略されている。
【0052】
電線用クランプ1における二次側の取付孔12Aは、一次側の取付孔に対向して所定の間隔を隔てた箇所に存在する。ここで、一次側の留め具20におけるフランジ部22の高さをH1、立方体状の本体部10の高さ及び幅の寸法をL、標準タイプの電線用クランプ30におけるフランジ部32の下面からベルト支持部33の上面までの高さをH2、とすると、一次側の取付孔と二次側の取付孔12Aとの間隔は、(H1+L)である。
【0053】
従って、第1の連結パターンで組み合わされた電線用クランプ1及び標準タイプの電線用クランプ30は、図12に示された従来の高脚タイプの電線用クランプ301と同等に機能する。即ち、図6に示される電線用クランプにおいて、標準タイプの電線用クランプ30のベルト34により保持される電線は、一次側の取付孔から距離(H1+L+H2)だけ離間して、一次側の取付孔に対向する位置に保持される。このとき、電線は、一次側の取付孔が設けられた支持体の表面と平行な方向(X軸方向)に概ね沿って保持される。
【0054】
なお、二次側の取付孔12Aは、一次側の留め具20が一次側の取付孔に取り付けられているときに一次側の取付孔と同じ向きとなるように形成されているため、二次側の取付孔12Aに取り付けられた標準タイプの電線用クランプ30は、それが一次側の取付孔に直接取り付けられた場合と同じ向きに保持される。
【0055】
<第2の連結パターン>
図7は、電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第2の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。この第2の連結パターンにおいては、電線をベルト34で保持する標準タイプの電線用クランプ30における一次側の留め具31,32が、電線用クランプ1における第四の壁14の二次側の取付孔14Aに取り付けられている。なお、この第2の連結パターンには、標準タイプの電線用クランプ30における一次側の留め具31,32が、電線用クランプ1における第三の壁13の二次側の取付孔13Aに取り付けられる場合も含まれる。なお、図7において、電線及び支持体の図示は省略されている。
【0056】
電線用クランプ1における二次側の取付孔14Aは、一次側の取付孔の中心からその幅方向(長手方向に直交する方向)へ長さ(L/2)だけずれた位置に存在する。従って、第2の連結パターンで組み合わされた電線用クランプ1及び標準タイプの電線用クランプ30は、図13に示された従来のオフセットタイプの電線用クランプ302と同等に機能する。即ち、図7に示される電線用クランプにおいて、標準タイプの電線用クランプ30のベルト34により保持される電線は、一次側の取付孔の中心からその幅方向へ距離(L/2+H2)だけずれた位置に保持される。このとき、電線は、一次側の取付孔が設けられた支持体の表面と平行な方向(X軸方向)に概ね沿って保持される。
【0057】
<第3の連結パターン>
図8は、電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第3の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。この第3の連結パターンにおいては、それぞれ電線をベルト34で保持する2つの標準タイプの電線用クランプ30における一次側の留め具31,32各々が、電線用クランプ1における第三の壁13及び第四の壁14の二次側の取付孔13A,14Aの各々に取り付けられている。なお、図8において電線及び支持体の図示は省略されている。
【0058】
電線用クランプ1における二次側の取付孔13A,14Aは、一次側の取付孔の中心から左右の各方向へ長さ(L/2)だけずれた位置に存在する。さらに、二次側の取付孔13A,14Aは同じ向きに形成されている。従って、第3の連結パターンで組み合わされた電線用クランプ1及び標準タイプの電線用クランプ30は、図13に示された従来のオフセットタイプの電線用クランプ302が左右対称に2つ並べられた場合と同等に機能する。即ち、図8に示される電線用クランプにおいて、2つの標準タイプの電線用クランプ30のベルト34各々により保持される2組の電線は、それぞれ一次側の取付孔の中心から左右の各方向へ距離(L/2+H2)だけずれた位置に保持される。このとき、電線は、一次側の取付孔が設けられた支持体の表面と平行な方向(X軸方向)に概ね沿って保持される。
【0059】
<第4の連結パターン>
図9は、電線用クランプ1と標準タイプの電線用クランプ30とが第4の連結パターンで組み合わされた電線用クランプの斜視図である。この第4の連結パターンにおいては、電線9をベルト34で保持する標準タイプの電線用クランプ30における一次側の留め具31,32が、電線用クランプ1における第五の壁15の二次側の取付孔15Aに取り付けられている。
【0060】
電線用クランプ1における二次側の取付孔15Aは、一次側の取付孔の中心からその長手方向へ長さ(L/2)だけずれた位置に存在する。さらに、二次側の取付孔15Aは、その長手方向がZ軸方向に沿うように形成されている。従って、図9に示される電線用クランプにおいて、標準タイプの電線用クランプ30のベルト34により保持される電線9は、一次側の取付孔の中心からその長手方向へ距離(L/2+H2)だけずれた位置において、一次側の取付孔が設けられた支持体6の表面に直交する方向(Z軸方向)に概ね沿って保持される。
【0061】
また、以上に示された第1の連結パターンから第4の連結パターンのうちの複数が組み合わされた連結パターンも考えられる。さらに、複数の電線用クランプ1と、1つ以上の標準タイプの電線用クランプ30とが組み合わされる連結パターンも考えられる。
【0062】
例えば、2つの電線用クランプ1を第1の連結パターン(図6)で組み合わせ、第二の壁12に取り付けられた一方の電線用クランプ1に対し、第1の連結パターンから第4の連結パターンのいずれかにより、電線を保持する標準タイプの電線用クランプ30が取り付けられることが考えられる。
【0063】
同様に、2つの電線用クランプ1を第2の連結パターン(図7)で組み合わせ、第四の壁14に取り付けられた一方の電線用クランプ1に対し、第1の連結パターンから第4の連結パターンのいずれかにより、電線を保持する標準タイプの電線用クランプ30が取り付けられることも考えられる。
【0064】
また、第3の連結パターン(図8)で組み合わされた複数組の電線用クランプが、第1の連結パターン(図6)でさらに組み合わされた電線用クランプも考えられる。
【0065】
以上に示したように、電線用クランプ1と従来の汎用的な標準タイプの電線用クランプ30とが組み合わされた電線用クランプは、2種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプとして機能する。即ち、電線用クランプ1が採用されることにより、従来の標準タイプの電線用クランプ30を有効に活用しつつ、ごく少ない種類の部品によって多くのタイプの電線用クランプを実現できる。
【0066】
以上に示した実施形態では、本体部10は、立方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁11〜15を有する箱状であるが、本体部10は、立方体以外の直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁11〜15を有する箱状であることも考えられる。
【0067】
例えば、本体部10における二次側の取付孔12A〜15A各々の中心線の交点を基準点とした場合に、基準点から第一の壁11及び第二の壁12各々の外側の面までの長さL1と、基準点から第三の壁13、第四の壁14及び第五の壁15各々の外側の面までの長さL2との関係を、(2×L1=L2)とすることが考えられる。これにより、第1の連結パターン(図6)における一次側の取付孔と二次側の取付孔12Aとの間隔(2×L1)と、第2の連結パターン(図7)における一次側の取付孔の中心と二次側の取付孔14Aとのずれの長さ(L1)とが等しくなる。
【0068】
また、電線用クランプ1と組み合わされる他の電線用クランプとしては、図10に示されるようのベルト付きの電線用クランプとは異なる電線用クランプが採用されることも考えられる。
【0069】
電線用クランプ1との組み合わせの対象となる他の電線用クランプは、例えば、二次側の留め具31,32(図10参照)と、二次側の留め具31,32におけるフランジ部32に固定され、粘着テープにより電線が固定される棒状又は板状の電線支持部とを備えた電線用クランプであることが考えられる。
【0070】
また、電線用クランプ1との組み合わせの対象となる他の電線用クランプは、例えば、二次側の留め具31,32(図10参照)と、二次側の留め具31,32におけるフランジ部32に固定され、電線の末端に接続されるコネクタ(電線支持部の一例)とを備えた電線用クランプであることも考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1 電線用クランプ
6 支持体
9 電線
10 本体部
11 第一の壁
12 第二の壁
12A〜15A 取付孔
13 第三の壁
14 第四の壁
15 第五の壁
20 留め具
21 挿入部
22 フランジ部
30 標準タイプの電線用クランプ
31 係止部(留め具)
32 フランジ部(留め具)
33 ベルト支持部
34 ベルト
211 支柱部
212 梁部
213 係止部
213A 爪部
301 高脚タイプの電線用クランプ
302 オフセットタイプの電線用クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を支持体に保持するために用いられる電線用クランプであって、
前記支持体に形成された一次側の取付孔に挿入されることによって前記一次側の取付孔の縁部に保持される一次側の留め具と、
直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁を有する箱状であり、該5つの壁のうち、対向する壁が存在する4つの壁のうちの一つの外側に前記一次側の留め具が固定され、残りの4つの壁各々に、他の電線用クランプに設けられ前記一次側の取付孔にも取り付け可能な二次側の留め具が取り付けられる二次側の取付孔が形成された本体部と、を備えることを特徴とする電線用クランプ。
【請求項2】
前記本体部は、立方体の5つの面を形成する前記5つの壁を有する、請求項1に記載の電線用クランプ。
【請求項3】
前記本体部において、前記二次側の取付孔は長孔であり、前記一次側の留め具が固定された壁以外の4つの壁のうちの相互に対向する2つの壁各々における前記二次側の取付孔は同じ向きに形成されている、請求項1又は請求項2に記載の電線用クランプ。
【請求項4】
電線を支持体に保持する電線用クランプであって、
前記支持体に形成された一次側の取付孔に挿入されることによって前記一次側の取付孔の縁部に保持される一次側の留め具と、
直方体の6つの面のうちの5つの面を形成する5つの壁を有する箱状であり、該5つの壁のうち、対向する壁が存在する4つの壁のうちの一つの外側に前記一次側の留め具が固定され、残りの4つの壁各々に二次側の取付孔が形成された本体部と、
前記一次側の取付孔に取り付け可能な留め具であり、前記二次側の取付孔に挿入され、前記二次側の取付孔の縁部に保持された二次側の留め具と、
前記二次側の留め具に固定され、前記電線を支持する電線支持部と、を備えることを特徴とする電線用クランプ。
【請求項5】
前記電線支持部は、前記電線に巻き付けられることにより前記電線を支持するベルトを備える、請求項3に記載の電線用クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−234424(P2011−234424A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99571(P2010−99571)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】