説明

露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法

【課題】大型の露光装置用マスクステージ装置を軽量化、小型化すること。
【解決手段】 マスクステージMSTでは、マスクMを保持するステージ本体60がY軸(クロススキャン)方向に移動する際には、一対のXビーム70及び一対のXテーブル90と一体的にY軸方向に移動する。これに対し、ステージ本体60がX軸(スキャン)方向に移動する際は、一対のXテーブル90がステージ本体60と共に静止したXビーム70上をX軸方向に移動する。従って、マスクMをスキャン方向に移動させるためのリニアモータの推力が小さくて良く、駆動反力の影響も低減できる。また、マスクステージMSTがY軸方向に移動するとき、一対のステージガイド50も同時にY軸方向に移動するので、ステージガイド50のY軸方向幅を小さくすることができ、装置が軽量化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
に関し、更に詳しくは、露光処理時に露光用のエネルギビームに対して物体を走査方向に所定のストロークで移動させる走査型の露光装置、及び前記露光装置を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法、並びに前記露光装置を用いた露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)と、ガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、マスクに形成されたパターンをエネルギビームを用いて基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の露光装置において、マスクは、マスクステージ装置に保持され、スキャン方向に基板と同期駆動される。
【0004】
しかし、近年、露光装置の露光対象である基板は、より大型化される傾向にあり、それに伴いマスクも大型化される傾向にある。このため、マスクステージ装置も大型化しており、コスト増などが懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0018950号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、露光処理時に露光用のエネルギビームに対して物体を走査方向に所定のストロークで移動させる走査型の露光装置であって、前記物体を保持してエネルギビームに対して前記走査方向に所定のストロークで移動可能な移動体と;前記移動体に対して水平面内で前記走査方向に直交する方向の一側、及び他側に設けられ、該移動体の前記走査方向への移動をガイドし、かつ前記走査方向に直交する方向に前記移動体と共に前記所定のストロークよりも短いストロークで移動可能な一対のガイド装置と;を備える露光装置が提供される。
【0007】
これによれば、物体が走査方向に直交する方向に移動する際には、ガイド装置と共に移動体が走査方向に直交する方向に移動する。これに対し、物体が走査方向に移動する際には、移動体が一対のガイド装置より走査方向に案内される。従って、移動体を走査方向に駆動するための駆動装置を小型化できる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、本発明の露光装置を用いて前記露光対象物体を露光することと:露光された前記露光対象物体を現像することと;を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、本発明の露光装置を用いて前記露光対象物体を露光することと:露光された前記露光対象物体を現像することと;を含むデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態の液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の液晶露光装置が有するマスクステージ装置の平面図である。
【図3】図2のマスクステージ装置を+X側から見た側面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】第1の変形例のマスクステージ装置の平面図である。
【図6】第2の変形例のマスクステージ装置の平面図である。
【図7】第3の変形例のマスクステージ装置の平面図である。
【図8】第4の変形例のマスクステージ装置の平面図である。
【図9】第5の変形例のマスクステージ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)に用いられる矩形のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0013】
液晶露光装置10は、図1に示されるように、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージ装置MST、投影光学系PL、ボディ30、基板Pを保持する基板ステージPST、及びこれらの制御系等を含んでいる。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0014】
照明系IOPは、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0015】
マスクステージ装置MSTは、ステージ本体60を含む。ステージ本体60には、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により固定されている。ステージ本体60は、スキャン動作時において、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系により走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動される。また、マスクステージ装置MSTは、ステージ本体60を適宜Y軸方向にも短いストロークで移動させることができる。マスクステージ装置MSTの構成については、後に詳しく説明する。
【0016】
投影光学系PLは、マスクステージ装置MSTの図1における下方に配置されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様の構成を有している。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域が千鳥状に配置された複数の投影光学系(マルチレンズ投影光学系)を含み、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。本実施形態では、複数の投影光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな拡大系で正立正像を形成するものが用いられている。
【0017】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるマスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージ装置MSTと基板ステージPSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターン(マスクパターン)が転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0018】
ボディ30は、基板ステージ架台33、基板ステージ架台33上に搭載された一対のサイドコラム32、及び一対のサイドコラム32を介して水平に支持された鏡筒定盤31を含む。基板ステージ架台33は、床11上に設置された複数の防振装置34に下方から支持されており、床11に対して振動的に分離されている。鏡筒定盤31は、XY平面に平行に配置された平板状の部材から成り、その中央部には、照明光ILを通過させるための開口部35が形成されている。投影光学系PLは、上記開口部35内に挿入された状態で鏡筒定盤31に支持されている。
【0019】
基板ステージPSTは、定盤12、一対のベースフレーム14、X粗動ステージ23X、X粗動ステージと共にXY2軸ステージ装置を構成するY粗動ステージ23Y、Y粗動ステージ23Yの上方に配置された微動ステージ21、及び重量キャンセル装置40などを備えている。
【0020】
定盤12は、例えば石材により形成された、平面視(+Z側から見て)で矩形の板状部材から成り、その上面は、平坦度が非常に高く仕上げられている。
【0021】
一対のベースフレーム14は、一方が定盤12の+Y側、他方が定盤12の−Y側に配置されている。一対のベースフレーム14それぞれは、X軸方向に延びる部材から成り、基板ステージ架台33を跨いだ状態で床11上に設置されている。なお、図1では不図示であるが、一対のベースフレーム14それぞれは、X粗動ステージ23XをX軸方向に直進案内するためのXリニアガイド、及びX粗動ステージ23XをX軸方向に駆動するためのXリニアモータの要素であるX固定子(例えば磁石ユニット)などを有している。
【0022】
X粗動ステージ23Xは、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形の外形形状を有する板状(あるいは直方体状)の部材から成り、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部(不図示)が形成されている。X粗動ステージ23Xの下面には、YZ断面逆U字状の部材から成る一対のXキャリッジ15が一対のベースフレーム14に対応して固定されている。一対のXキャリッジ15それぞれは、不図示であるが、ベースフレーム14の有するXリニアガイド(不図示)に対してスライド可能に係合するスライダ、及び上述したX固定子と共にXリニアモータを構成するX可動子(例えば、コイルユニット)などを有している。X粗動ステージ23Xは、Xリニアモータを含むX粗動ステージ駆動系により、一対のベースフレーム14上でX軸方向に所定の長ストロークで駆動される。また、X粗動ステージ23Xの上面には、Yリニアガイド25が固定されている。Yリニアガイド25は、紙面奥行き方向に重なっているため不図示であるが、紙面奥行き方向(X軸方向)に所定間隔で複数本設けられている。また、不図示であるが、X粗動ステージ23Xの上面には、Y粗動ステージ23YをY軸方向に駆動するためのYリニアモータの要素であるY固定子(例えば磁石ユニット)が固定されている。
【0023】
Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23XよりもY軸方向の寸法が短い平面視で矩形の板状(あるいは直方体状)の部材から成り、中央部に開口部(不図示)が形成されている。Y粗動ステージ23Yの下面には、Yリニアガイド25に対してスライド可能に係合する複数のスライダ26がY軸方向に所定間隔で固定されており、Yリニアガイド25によりY軸方向に直進案内される。また、Y粗動ステージ23Yの下面には、上述したY固定子と共にYリニアモータを構成するY可動子(例えば、コイルユニット)が固定されている。Y粗動ステージ23Yは、Yリニアモータを含むY粗動ステージ駆動系により、X粗動ステージ23X上でY軸方向に所定の長ストロークで駆動される。また、Y粗動ステージ23Xは、Yリニアガイド25とスライダ26との係合によりX粗動ステージ23Xに対するX軸方向への相対移動が制限されており、X粗動ステージ23Xと一体的にX軸方向に移動する。なお、X粗動ステージ23XをX軸方向,Y粗動ステージ23YをY軸方向にそれぞれ駆動する駆動方式は、例えば送りねじによる駆動方式、あるいはベルト駆動方式などの他の方式であっても良い。
【0024】
微動ステージ21は、平面視ほぼ正方形の箱形の部材から成り、その上面に基板ホルダ28を介して基板Pを、例えば真空吸着(又は静電吸着)により吸着保持する。また、微動ステージ21は、不図示であるが、Y粗動ステージ23Yに固定された固定子と、微動ステージ21に固定された可動子とから成る複数のボイスコイルモータ(あるいはリニアモータ)を含む微動ステージ駆動系により、Y粗動ステージ23Y上で6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θz方向)に微少駆動される。また、微動ステージ21は、上記複数のボイスコイルモータを用いてY粗動ステージ23Yに同期駆動(Y粗動ステージ23Yと同方向に同速度で駆動)されることにより、Y粗動ステージ23Yと共にX軸方向、及び/又はY軸方向に所定の長ストロークで移動する。複数のボイスコイルモータを含み、微動ステージ駆動系の構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0025】
微動ステージ21(すなわち基板P)のXY平面内の位置情報は、微動ステージ21にミラーベース24を介して固定されたバーミラー22を用いたレーザ干渉計システム(以下、基板干渉計システムと呼ぶ)29によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。なお、実際には、バーミラー22は、X軸に直交する反射面を有するXバーミラーと、Y軸に直交する反射面を有するYバーミラーとを含み、レーザ干渉計は、Xバーミラーに対応するXレーザ干渉計と、Yバーミラーに対応するYレーザ干渉計とを有するが、図1では、代表的にYバーミラー、及びYレーザ干渉計のみが図示されている。Xレーザ干渉計、及びYレーザ干渉計は、ボディ30に固定されている。上記レーザ干渉計システム29の構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0026】
重量キャンセル装置40は、Z軸方向に延びる柱状の部材から成り、心柱とも称される。重量キャンセル装置40は、定盤12上に配置され、レベリング装置42と称される装置を介して、微動ステージ21を水平面に対してチルト可能(XY平面に平行な軸線周りに微少角度回転可能)な状態で下方から支持している。重量キャンセル装置40は、その上半部がY粗動ステージ23Yの開口部内に挿入され、その下半部がX粗動ステージ23Xの開口部内に挿入されている。重量キャンセル装置40は、不図示の空気ばねを有しており、空気ばねが発生する鉛直方向上向きの力により、微動ステージ21、レベリング装置42,基板ホルダ28などの重量(鉛直方向下向きの力)をキャンセルし、これにより微動ステージ駆動系が有するボイスコイルモータの負荷を軽減する。
【0027】
また、重量キャンセル装置40は、そのZ軸方向に関する重心位置を含む水平面に平行な平面内で不図示の複数の連結装置を介してY粗動ステージ23Yに接続されている。連結装置は、重量キャンセル装置40の+X側、−X側、+Y側、及び−Y側それぞれに配置されており、重量キャンセル装置40は、Y粗動ステージ23Yと一体的にY軸方向、及び/又はX軸方向に定盤12上で移動する。なお、レベリング装置42、及び複数の連結装置を含み、重量キャンセル装置40の詳細な構成、及び動作については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されている。
【0028】
ここで、本実施形態の液晶露光装置10は、複数の拡大投影光学系それぞれを介して基板P上に形成される複数の投影像の合成により、一つのパターン(パターンの一部)が基板P上に生成されるため、マスクMのパターン面は、Y軸方向に所定間隔で離間した複数箇所が同時に照明系IOPに照明される。すなわち、マスクM上には、Y軸方向に所定間隔で離間した複数の照明領域が形成される。また、マスクMのパターン面には、スキャン方向(X軸方向)に延びる複数の帯状(短冊状)の領域が、Y軸方向に所定間隔で設けられている。複数の帯状の領域は、照明系IOPにより、一つおきに照明されるようにY軸方向に関する間隔が設定されている。これらの複数の帯状の領域には、基板P上に特定のパターン(以下、パターンAと称する)を形成するためのマスクパターンの一部、及び、上記パターンAとは異なる別のパターン(以下、パターンBと称する)を基板上に形成するためのマスクパターンの一部が、Y軸方向に関して交互に形成されている(各マスクパターンは不図示)。
【0029】
このため、本実施形態の液晶露光装置10では、基板P上にパターンAを形成するためのマスクパターンの一部を有する複数の帯状の領域が照明系IOPに照明されるようにY軸方向に関してマスクMを位置決めした状態で走査露光を行うことにより、基板P上にパターンAを形成することができ、基板P上にパターンBを形成するためのマスクパターンの一部を有する帯状の領域が照明系IOPに照明されるようにY軸方向に関してマスクMを位置決めした状態で走査露光を行うことにより、基板P上にパターンBが形成することができる。
【0030】
そして、本実施形態のマスクステージ装置MSTでは、上記Y軸方向に関するマスクMの位置決めを可能にするために、マスクMを保持するステージ本体60を、Y軸方向(クロススキャン方向)にも短いストロークで移動させることができるようになっている。以下、マスクステージ装置MSTの構成について説明する。
【0031】
図2に示されるように、マスクステージ装置MSTは、一対のステージガイド50,マスクMを保持するステージ本体60,一対のXビーム70、4つのベースフレーム80,一対のXビーム70に対応して設けられた一対のXテーブル90などを有している(一対のステージガイド50,一対のXビーム70、4つのベースフレーム80,及び一対のXテーブル90は、図1では不図示)。
【0032】
一対のステージガイド50は、上述した鏡筒定盤31上に搭載されている。一対のステージガイド50それぞれは、YZ断面が矩形のX軸方向に延びる部材から成り、Y軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。一対のステージガイド50の長手方向(X軸方向)の寸法は、マスクMのスキャン動作時の移動ストロークよりも幾分長く設定されている。一対のステージガイド50それぞれの上面は、平坦度が非常に高く仕上げられている。なお、ステージガイド50の材質、及び製造方法は、特に限定されないが、例えば、鉄などの金属材料、石材(例えば、斑レイ岩)、セラミックス、あるいはCFRP(Carbon Fiver Reinforced Plastics)材などにより形成することができる。また、ステージガイド50は、中空の部材であっても中実の部材であっても良く、中空の部材とする場合には、その内部にリブなどの補剛部材を設けると良い。
【0033】
ここで、鏡筒定盤31の上面における+Y側の端部近傍、及び−Y側の端部近傍には、それぞれ複数(本実施形態では、例えば5本(図2では中央の1本は不図示。図4参照)のYリニアガイド52がX軸方向に所定間隔で固定されている。また、一対のステージガイド50の下面には、図4に示されるように、複数のYリニアガイド52に対応して複数のYスライダ54が取り付けられている。Yスライダ54は、転動体(例えば複数のボールなど)を含み、Yリニアガイド52に対してY軸方向にスライド自在に係合している。Yスライダ54は、図3に示されるように1本のYリニアガイド52に付き、Y軸方向に離間して、例えば2つ設けられている。なお、ステージガイド50の上面の平面度(水平面に対する平行度)を調整する際には、ステージガイド50の下面とYスライダ54との間にシムなどの調整部材を挿入すると良い。
【0034】
図2に戻り、一対のステージガイド50は、+X側、及び−X側の端部それぞれにおいて、連結部材56により機械的に連結されている。連結部材56は、Y軸方向に延び、かつY軸方向の剛性が高い部材から成る。一対のステージガイド50のY軸方向に関する間隔(距離)は、一対の連結部材56によりほぼ一定に維持される。
【0035】
ステージ本体60は、平面視でY軸方向を長手方向とする矩形の板状部材から成り、その中央部には、Y軸方向を長手方向とする矩形の長穴状の開口部60aが形成されている。マスクMは、開口部60a内に挿入される。開口部60aを規定する壁面のうち、+X側、及び−X側の壁面それぞれには、マスクMを下方から吸着保持するための吸着パッドを含む保持部材61が、Y軸方向に所定間隔で複数(本実施形態では、例えば5つ)取り付けられている。
【0036】
また、ステージ本体60の下面の四隅近傍には、それぞれ気体静圧軸受の一種であるエアベアリング62が取り付けられている。ステージ本体60の下面に取り付けられた、例えば4つのエアベアリング62のうち、+Y側の2つのエアベアリング62の軸受面は、+Y側のステージガイド50の上面に対向し、−Y側の2つのエアベアリング62の軸受面は、−Y側のステージガイド50の上面に対向している。ステージ本体60は、例えば4つのエアベアリング62から加圧気体を噴出することにより、微少なクリアランスを介して一対のステージガイド50上に非接触浮上して(一対のステージガイド50に下方から非接触支持されて)いる(図3及び図4参照)。
【0037】
さらに、ステージ本体60の−X側の側面には、X軸に直交する反射面を有する一対のX移動鏡63Xが、Y軸方向に所定間隔で取り付けられている。また、ステージ本体60の−Y側の側面には、Y軸に直交する反射面を有するY移動鏡63Y(バーミラー)が取り付けられている。ステージ本体60(すなわちマスクM)のXY平面内の位置情報は、一対のX移動鏡63Xそれぞれに対応する一対のXレーザ干渉計64Xと、Y移動鏡63Yに対応するYレーザ干渉計(不図示)とを含むレーザ干渉計システム(以下、マスク干渉計システムと呼ぶ)によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ステージ本体60のθz方向の位置情報は、一対のXレーザ干渉計64Xの出力に基づいて求められる。一対のX移動鏡63X、及びY移動鏡63Yの反射面のZ位置は、マスクMのパターン面のZ位置とほぼ一致しており、マスク干渉計システムは、アッベ誤差なくマスクMの位置情報を求めることができる。
【0038】
ステージ本体60の上面であって、−Y側の端部近傍の中央部には、図3に示されるように、YZ断面U字状の部材から成るX可動子65xaが固定されている。また、ステージ本体60の+Y側の側面中央部には、YZ断面U字状の部材から成るY可動子65yが固定されている。また、図2では、Y可動子65yの下方に隠れているが、Y可動子65yの下方には、図3に示されるように、YZ断面U字状の部材から成るX可動子65xbが固定されている。X可動子65xa、Y可動子65y、及びX可動子65xbそれぞれは、一対の対向面に永久磁石を含む磁石ユニットが取り付けられている。
【0039】
図2に戻り、一対のXビーム70のうち、一方はステージ本体60の+Y側に配置され、他方はステージ本体60の−Y側に配置されている。また、図3から分かるように、+Y側のXビーム70は、−Y側のXビーム70よりも−Z側に配置されている。一対のXビーム70それぞれの構成は、特に説明する場合を除き同じであるので、以下+Y側のXビーム70について説明する。
【0040】
Xビーム70は、図2に示されるようにX軸方向に延びるYZ断面矩形の中空部材(図3参照)から成る。Xビーム70の長手方向寸法は、上述したステージガイド50の長手方向寸法よりも長く設定されている。Xビーム70の上面中央部には、X軸方向に所定間隔で配列された永久磁石を含む磁石ユニット71が固定されている。また、Xビーム70の上面であって、磁石ユニット71の+Y側、及び−Y側それぞれには、X軸方向に延びるXリニアガイド72が固定されている。また、Xビーム70の上面であって、+X側、及び−X側の端部近傍には、ショックアブソーバを含むストッパ73が固定されている。ストッパ73は、後述するXテーブル90の移動可能範囲を機械的に規定している。なお、−Y側のXビーム70の+Y側及び−Y側の側面には、ステージ本体60のY位置情報を求めるための上記Yレーザ干渉計から照射される測長ビーム(及びその反射光)を通過させるための開口部が形成されている(図3参照)。
【0041】
Xビーム70の下面であって、+X側、及び−X側の端部近傍には、図4に示されるように、それぞれXZ断面逆U字状の部材から成るYキャリッジ74が固定されている(ただし、図3に示されるように、−Y側のXビーム70の下面には、XY平面に平行な板状部材から成るスペーサ75を介してYキャリッジ74が固定されている)。Yキャリッジ74の一対の対向面間には、ベースフレーム80が挿入されている。
【0042】
ベースフレーム80は、図2に示されるように、鏡筒定盤31(すなわちボディ30)から離間した状態で床11(図2では不図示。図1参照)上に設置されており、ボディ30に対して振動的に分離されている。ベースフレーム80は、一対のXビーム70に対応して、計4つ設けられている。4つのベースフレーム80は、+Y側の2つが−Y側の2つに比べてZ軸方向の寸法が短い点を除き、同じ構成を有している。ベースフレーム80は、YZ平面に平行な板状の部材から成り、図3及び図4から分かるように、+X側、及び−X側の側面それぞれにY軸方向に所定間隔で配列された永久磁石を含む磁石ユニット81が固定されている。また、ベースフレーム80の上端面、+X側の側面、及び−X側の側面それぞれには、X軸方向に延びるXリニアガイド82が固定されている。
【0043】
これに対し、図4に示されるように、Yキャリッジ74の一対の対向面それぞれには、磁石ユニット81に所定のクリアランスを介して対向するコイルユニット76が固定されている。コイルユニット76は、磁石ユニット81と共にXビーム70をY軸方向に所定のストロークで駆動するためのYリニアモータを構成している。本実施形態では、上述したように1つのXビーム70につきYキャリッジ74が、例えば計2つ設けられていることから、1つのXビーム70は、例えば計4つのYリニアモータによりY軸方向に駆動される。
【0044】
Yキャリッジ74の一対の対向面、及び天井面それぞれには、転動体(例えば複数のボールなど)を含み、Yリニアガイド82にスライド可能に係合するスライダ77が固定されている。なお、図4では紙面奥行き方向に重なって隠れているが、Yキャリッジ74の一対の対向面、及び天井面それぞれにおいて、スライダ77は、紙面奥行き方向(Y軸方向)に所定間隔で、例えば2つずつ取り付けられている。また、不図示ではあるが、上記ベースフレーム80には、Y軸方向を周期方向とするYスケールが固定され、Yキャリッジ74には、Yスケールと共にYキャリッジ74(すなわちXビーム70)のY軸方向に関する位置情報を求めるためのYリニアエンコーダシステムを構成するエンコーダヘッドが固定されている。一対のXビーム70のY軸方向に関する位置は、上記エンコーダヘッドの出力に基づいて不図示の主制御装置により制御される。
【0045】
ここで、図3から分かるように、−Y側のXビーム70は、その下面に固定されたスペーサ75を介してフレクシャ装置78により連結部材56の−Y側の端部に機械的に連結されている。また、+Y側のXビーム70は、+X側から見てL字状の部材から成るブラケット79を介してフレクシャ装置78により連結部材56の+Y側の端部に機械的に連結されている。
【0046】
フレクシャ装置78は、XY平面に平行に配置された厚さの薄い鋼板(例えば、板ばね)を含み、ボールジョイントなどの滑節装置を介して連結部材56とスペーサ75との間、及び連結部材56とブラケット79との間にそれぞれ架設されている。フレクシャ装置78は、鋼板のY軸方向の剛性により、Y軸方向に関して一対のXビーム70と連結部材56(すなわち一対のステージガイド50)とを高剛性で連結する。従って、一対のステージガイド50は、フレクシャ装置78に牽引されることにより、一対のXビーム70と一体的にY軸方向に移動する。これに対し、フレクシャ装置78は、鋼板の柔軟性(あるいは可撓性)、及び滑節装置の作用により、Y軸方向を除く5自由度方向に関して一対の連結部材56を一対のXビーム70に拘束しないので、Xビーム70を介して振動が連結部材56に伝達しにくくなっている。また、フレクシャ装置78は、一対のステージガイド50と連結部材56とを含む系の重心位置を含むXY平面に平行な平面内で一対のXビーム70と連結部材56とを連結している。従って、一対のステージガイド50を牽引する際、一対のステージガイド50にθx方向のモーメントが作用しない。
【0047】
図2に戻り、一対のXテーブル90のうち、一方は+Y側のXビーム70上に搭載され、他方は、−Y側のXビーム70上に搭載されている。一対のXテーブル90それぞれの構成は、特に説明する場合を除き同じである。
【0048】
Xテーブル90は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の板状部材から成り、XY平面に平行に配置されている。Xテーブル90の下面中央部には、図3に示されるように、磁石ユニット71に所定のクリアランスを介して対向するコイルユニット91が固定されている。コイルユニット91は、上述した磁石ユニット71と共にXテーブル90をX軸方向に所定のストロークで駆動するためのXリニアモータを構成している。また、Xテーブル90の下面における四隅部近傍には、転動体(例えば複数のボールなど)を含み、Xリニアガイド72にスライド自在に係合するスライダ92が固定されている。スライダ92は、1本のXリニアガイド72につき、例えば2つ設けられている。Xテーブル90は、複数のXリニアガイド72によりXビーム70に対するY軸方向への相対移動が制限されており、Xビーム70と一体的にY軸方向に移動する。なお、不図示ではあるが、上記Xビーム70には、X軸方向を周期方向とするXスケールが固定され、Xテーブル90には、Xスケールと共にXテーブル90のX軸方向に関する位置情報を求めるためのXリニアエンコーダシステムを構成するエンコーダヘッドが固定されている。一対のXテーブル90のX軸方向に関する位置は、上記エンコーダヘッドの出力に基づいて不図示の主制御装置により同期制御される。
【0049】
−Y側のXテーブル90の上面には、直方体状のブラケット93を介してX固定子94xaが固定されている。X固定子94xaは、X可動子65xaの一対の対向面間に挿入される不図示のコイルユニットを有している。X固定子94xaとX可動子65xaとは、電磁力(ローレンツ力)によりXテーブル90に対してステージ本体60をX軸方向に微少駆動するXボイスコイルモータ99xaを構成している。
【0050】
また、+Y側のXテーブル90の上面には、直方体状のブラケット95を介してX固定子94xbが固定されている。X固定子94xbは、X可動子65xbの一対の対向面間に挿入される不図示のコイルユニットを有している。X固定子94xbとX可動子65xbとは、Xテーブル90に対して電磁力(ローレンツ力)によりステージ本体60をX軸方向に微少駆動するXボイスコイルモータ99xbを構成している。
【0051】
また、X固定子94xbの上方には、ブラケット95を介してY固定子94yが固定されている。Y固定子94yは、Y可動子65yの一対の対向面間に挿入され不図示のコイルユニットを有している。Y固定子94yとY可動子65yとは、Xテーブル90に対して電磁力(ローレンツ力)によりステージ本体60をY軸方向に微少駆動するYボイスコイルモータ99yを構成している。
【0052】
ステージ本体60は、一対のXテーブル90がX軸方向に所定のストロークで同期駆動される際、Xボイスコイルモータ99xa、99xbにより、一対のXテーブル90に同期して(一対のXテーブル90と同方向に同じ速度で)駆動される。これにより、一対のXテーブル90とステージ本体60とが一体的(ただし非接触状態(振動的に分離された状態)で)にX軸方向に所定のストロークで移動する。
【0053】
また、ステージ本体60は、一対のXビーム70がY軸方向に所定のストロークで同期駆動される際、Yボイスコイルモータ99yにより、一対のXビーム70(実際には、+Y側のXビーム70)に同期して(一対のXビーム70と同方向に同じ速度で)駆動される。これにより、一対のXビーム70とステージ本体60とが一体的(ただし非接触状態(振動的に分離された状態)で)にY軸方向に所定のストロークで移動する。また、ステージ本体60は、例えば一対のXテーブル90に同期してX軸方向に駆動される際、Yボイスコイルモータ99yによりY軸方向に適宜微少駆動される。また、ステージ本体60は、Xボイスコイルモータ99xa、及びXボイスコイルモータ99xbの推力差によりθz方向に適宜微少駆動される。
【0054】
ここで、Yボイスコイルモータ99yのZ位置、及びX位置は、ステージ本体60の重心位置CGのZ位置、及びX位置とそれぞれほぼ同じとなっている。従って、Yボイスコイルモータ99yを用いてステージ本体60に推力を作用させても、ステージ本体60には、θx方向のモーメントが作用しない。また、Xボイスコイルモータ99xaは、ステージ本体60の重心位置CGよりも上方に配置され、Xボイスコイルモータ99xbは、ステージ本体60の重心位置CGよりも下方に配置されているが、Xボイスコイルモータ99xa、及びXボイスコイルモータ99xbは、重心位置CGに対して対称な位置に配置されている。また、Xボイスコイルモータ99xa、99bのX位置は、ステージ本体60の重心位置CGのX位置とほぼ同じとなっている。従って、Xボイスコイルモータ99xa、99xbを用いてステージ本体60に推力を作用させても、ステージ本体60には、θy、及びθz方向のモーメントが作用しない。従って、ステージ本体60をXY平面に沿って精度良く駆動できる。なお、不図示であるが、Xテーブル90には、ステージ本体60のXテーブル90に対する移動可能量を機械的に規定するストッパ部材、あるいはX軸、及びY軸方向に関してステージ本体60のXテーブル90に対する相対移動量を計測するためのギャップセンサなどが取り付けられている。
【0055】
以上のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスク搬送装置(マスクローダ)によって、マスクステージ装置MST上へのマスクMのロードが行われるとともに、不図示の基板搬入装置によって、基板ステージPST上への基板Pの搬入(ロード)が行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。
【0056】
ここで、前述したように、本実施形態の液晶露光装置10では、例えば基板Pに形成するパターンが選択される際にマスクステージ装置MSTのステージ本体60がY軸方向に所定のストロークで駆動される。ステージ本体60がY軸方向に移動する際、一対のXビーム70がYリニアモータにより4つのベースフレーム80上で駆動される。また、一対のXビーム70がY軸方向に駆動される際、Yボイスコイルモータ99yによってステージ本体60が一対のXビーム70に同期してY軸方向に駆動される。この際、一対のXビーム70と共に一対のステージガイド50が一体的にY軸方向に移動するので、ステージ本体60は、一対のステージガイド50上から脱落しない。
【0057】
以上説明した本実施形態の液晶露光装置10のマスクステージ装置MSTによれば、スキャン動作時など、マスクMを保持するステージ本体60がX軸方向に長ストロークで駆動される際には、ステージ本体60が静止した一対のステージガイド50上を非接触で移動するので、振動などの発生が抑制される。従って、マスクMの高精度の位置決めが可能となる。また、比較的軽量な一対のXテーブル90が対応するXビーム70上でX軸方向に駆動され、これに伴いステージ本体60がX軸方向に長ストロークで移動する。従って、比較的小さな推力で一対のXテーブル90を駆動できるので、床11に作用する駆動反力も小さく、床振動が抑制され、ボディ30に対する影響を低減できる。
【0058】
また、マスクMをY軸方向に移動させる際には、ステージ本体60と一対のステージガイド50がともにY軸方向に移動するので、ステージガイド50の幅方向(Y軸方向)寸法は狭くても良い。従って、ステージガイド50を軽量化することができるとともに、加工、及び運搬が容易となり、かつマスクステージ装置MST組立時の作業性が向上する。
【0059】
また、一対のステージガイド50を駆動する際の駆動反力は、ボディ30から振動的に分離された4つのベースフレーム80に作用するので、振動が投影光学系PL、基板干渉計システムのレーザ干渉計などに伝達しない。また、一対のステージガイド50とステージ本体60とがY軸方向に関して振動的に分離されているので、一対のステージガイド50を駆動する際に、ステージ本体60にθx方向のモーメントが作用しない。なお、仮に一対のステージガイド50の駆動に伴いステージ本体60にθx方向のモーメントが作用しても、高精度な位置決めを必要としないマスクMのY軸方向への駆動動作であり、次の露光動作時にはその振動が収束するので露光動作に対する影響は小さい。なお、一対のステージガイド50をY軸方向に駆動(牽引)する際に、ステージガイド50の重心位置に駆動力を作用するようにフレクシャ装置78の取付位置を厳密に調整することにより、ステージガイド50に作用するθz方向のモーメントを抑制できる。
【0060】
また、フレクシャ装置78によりXビーム70とステージガイド50とを機械的に連結し、Xビーム70がステージガイド50を牽引する構成としたので、例えばステージガイド50を駆動するためのアクチュエータを設ける場合にくらべ低コストである。
【0061】
以下、上記実施形態のいくつかの変形例について、マスクステージ装置を中心として説明する。なお、以下の変形例では、説明の簡略化及び図示の便宜上から、同様の構成、機能を有する部材については上記実施形態と同じ符号を用いて説明する。
【0062】
図5に示される第1の変形例のマスクステージ装置MSTaでは、一対のXビーム70が、その+X側、及び−X側の端部近傍において、それぞれY軸方向に延び、Y軸方向の剛性が高い連結部材170に機械的に連結されている。従って、一対のXビーム70が一体的にY軸方向に移動する。このため、第1の変形例に係るマスクステージ装置MSTaでは、+Y側のXビーム70をY軸方向に駆動するためのYリニアモータが設けられておらず、−Y側のXビーム70のみがYリニアモータにより駆動される。これにより、コストダウンを図ることが可能となる。また、一対のXビーム70を同期制御する必要がないので、制御が容易である。また、第1の変形例のマスクステージ装置MSTaでは、一対のステージガイド50が、連結ロープ156により連結されている。この場合であっても、一対のステージガイド50のY軸方向に関する距離(間隔)は、連結部材170、及び4つのフレクシャ装置78により一定に保たれる。
【0063】
図6に示される第2の変形例のマスクステージ装置MSTbでは、一対のステージガイド50が機械的に連結されていない。ステージガイド50の長手方向両端部には、直方体状の接続部材256が固定されている。接続部材256の+Y側、及び−Y側の側面それぞれには、フレクシャ装置78の一端が接続されている。フレクシャ装置78の他端は、スペーサ75(図7では不図示。図3参照)、ブラケット79、あるいは平面視L字状の部材から成る支持部材279を介してXビーム70に取り付けられている。そして、Xビーム70がY軸方向に駆動されると、接続部材256に接続された一対のフレクシャ装置78のいずれかを介してXビーム70に牽引されることにより、ステージガイド50がY軸方向に移動する。
【0064】
図7に示される第3の変形例のマスクステージ装置MSTcでは、フレクシャ装置に代えてプッシャ装置378がスペーサ75(図7では不図示。図3参照)、あるいはブラケット79に取り付けられている。プッシャ装置378は、例えば鋼球を含み、Xビーム70がY軸方向に駆動されることにより、その鋼球でステージガイド50の長手方向両端部に固定された連結部材56を押圧して一対のステージガイド50をY軸方向に移動させる。また、スキャン動作時には、鋼球が連結部材56から離間する方向にXビーム70が駆動される。これにより、Xビーム70とステージガイド50とが振動的に分離される。なお、プッシャ装置に、例えばエアアクチュエータなどを設け、鋼球のみをY軸方向、すなわち連結部材56に接近、及び離間する方向に移動可能に構成しても良い。
【0065】
図8に示される第4の変形例のマスクステージ装置MSTdでは、一対のステージガイド50が機械的に連結されていない。ステージガイド50の長手方向の両端部には、XZ平面に平行な板状部材450が一対Y軸方向に所定間隔で取り付けられている。そして、一対の板状部材450の間には、スペーサ75(図7では不図示。図3参照)、あるいはブラケット79に支持部材470を介して取り付けられプッシャ装置478の鋼球が挿入されている。第4の変形例のマスクステージ装置MSTdでは、Xビーム70がY軸方向に駆動されると、プッシャ装置478の鋼球が一対の板状部材450の一方に接触してステージガイド50を押圧することにより、ステージガイド50をY軸方向に駆動する。
【0066】
図9に示される第5の変形例のマスクステージ装置MSTeでは、一対のステージガイド50が機械的に連結されていない。+Y側のステージガイド50は、+Y側のXビーム70に一対のフレクシャ装置78により連結されており、Xビーム70が+Y方向に移動すると、これに牽引されて+Y方向に移動する。+Y側のXビーム70には、ブラケット79を介して上記第3の変形例と同様のプッシャ装置378が取り付けられており、Xビーム70が−Y方向に移動すると、ステージガイド50の端部に固定された被押圧部材550がプッシャ装置378の鋼球に押圧され、ステージガイド50が−Y方向に移動する。−Y側のステージガイド50も、−Y側のXビーム70に同様に連結されている。
【0067】
また、上記実施形態(及びその変形例(以下同じ))では、図2に示されるように、鏡筒定盤31上にYリニアガイド52が複数固定され、それらの上をステージガイド50がYリニアガイド52に沿ってY方向に移動するように構成されているが、これに限らず、例えばステージガイド50の下面に気体静圧軸受、又はころなどの転動体を複数設け、鏡筒定盤31上を低摩擦で移動できるようにしても良い。ただし、ステージ本体60の脱落を防止するため、ステージガイド50をY軸方向に直進案内する何らかの装置を設けておくことが好ましい。ステージガイド50をY軸方向へ案内する装置としては、例えば気体静圧軸受、機械的な一軸ガイド装置、あるいは気体静圧軸受を用いた一軸ガイド装置などを用いることができる。
【0068】
上記実施形態において、複数のリニアモータ、及びボイスコイルモータは、すべてムービングコイル方式であったが、これに限らずムービングマグネット方式でも良い。
【0069】
また、フレクシャ装置は、鋼板を有する構成であったが、Y軸方向への剛性が高く、かつその他の5自由度方向の剛性が極端に低い構成であれば、これに限らず、鋼板に替えて、例えばロープ、あるいはチェーンなどを有していても良い。また、上記第3及び第4の変形例(それぞれ図7及び図8参照)では、プッシャ装置378,478をステージ本体60に当接させて押圧したが、これに限らずXビーム70にスラスト型のエアベアリングを取り付け、その軸受面から噴出される気体の静圧により非接触でステージ本体60を押圧しても良い。また、Xビーム70、及びステージ本体60それぞれに、互いに同じ磁極が対向するように(S極とS極、あるいはN極とN極とが対向するように)一組の永久磁石を取り付け、その一組の永久磁石間に発生する反発力(斥力)により非接触でステージ本体60を押圧しても良い。
【0070】
また、Xビーム70は、長手方向の両端部がベースフレーム80により下方から支持されていたが、Xビーム70の長手方向中間部を下方から支持する補助フレームを追加して設けても良い。この場合、補助フレームをベースフレーム80と同様に構成し、Xビーム70にYキャリッジ74と同様な構成の部材を取り付けても良い。この場合、Xビーム70を駆動するYリニアモータが増加するので、Xビーム70が長く重量が増加する場合に有効である。なお、補助フレームにリニアモータの要素を設けず、Yリニアガイド部材のみを設けても良い。また、補助フレームは、1つに限らず、複数設けられても良い。
【0071】
また、ステージガイド50は、その長手方向の両端部において一対のフレクシャ装置78によりXビーム70に連結されていたが、これに限らずステージガイド50の重心位置に対応する一箇所(長手方向中央部)でフレクシャ装置78を用いてXビーム70に連結されても良い。この場合であっても、Xビーム70を用いてステージガイド50を牽引する際、ステージガイド50にθx、及びθz方向のモーメントが作用しない。
【0072】
また、マスクMに形成されたマスクパターンに抵触しなければ(照明光ILを遮らなければ)、鏡筒定盤31上にステージ本体60のY軸方向に関する中間部を支持する中間支持部材を設けても良い。これにより、ステージ本体60の自重に起因する撓みを抑制できる。この場合、中間支持部材をステージガイド50と同様に構成し、ステージ本体60に中間支持部材に対応するエアベアリングを取り付けると良い。
【0073】
また、上記実施形態では、一対のXビーム70上にそれぞれXテーブル90が搭載され、そのXテーブル90を介して電磁的にステージ本体60が駆動される構成であったが、これに限らず、例えば露光精度が要求されないような場合には、Xテーブル90を省略して、ステージ本体60を直接一対のXビーム70上に搭載しても良い。この場合、Y軸方向、及びθz方向への微少駆動が不可能となるが、装置を簡略化することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、一対のステージガイド50が一対のXビーム70とともにY軸方向に移動するように構成されていたが、これに限らず、一対のステージガイド50は、鏡筒定盤31に固定されていても良い。この場合、ステージガイド50をステージ本体60のY軸方向への移動可能量に応じて、上記実施形態よりも広幅の部材により構成すると良い。
【0075】
また、上記実施形態では、一対のXビーム70が計4つのベースフレーム80を介して床面上に設置されたが、一対のXビーム70をボディ30から振動的に分離できればこれに限らず、例えばボディ30などを収容するチャンバの天井などから一対のXビーム70を吊り下げ支持しても良い。
【0076】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、投影光学系PLが、複数本の投影光学ユニットを備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学ユニットの本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0078】
また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が拡大系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は縮小系及び等倍系のいずれでも良い。
【0079】
なお、上記実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0080】
なお、上記実施形態のマスクステージ装置は、サイズ(外径、対角線、一辺の少なくとも1つを含む)が500mm以上の基板、例えば液晶表示素子などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の大型の露光装置に対して適用することが特に有効である。
【0081】
また、上記実施形態のマスクステージ装置は、ステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用することができる。
【0082】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状部材)のものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明の露光装置は、露光処理時に露光用のエネルギビームに対して物体を走査方向に所定のストロークで移動させるのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの製造に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【符号の説明】
【0084】
10…液晶露光装置、31…鏡筒定盤、50…ステージガイド、60…ステージ本体、70…Yビーム、80…ベースフレーム、90…Xテーブル、M…マスク、MST…マスクステージ装置、P…基板、PST…基板ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光処理時に露光用のエネルギビームに対して物体を走査方向に所定のストロークで移動させる走査型の露光装置であって、
前記物体を保持してエネルギビームに対して前記走査方向に所定のストロークで移動可能な移動体と;
前記移動体に対して水平面内で前記走査方向に直交する方向の一側、及び他側に設けられ、該移動体の前記走査方向への移動をガイドし、かつ前記走査方向に直交する方向に前記移動体と共に前記所定のストロークよりも短いストロークで移動可能な一対のガイド装置と;を備える露光装置。
【請求項2】
前記一対のガイド装置それぞれは、前記走査方向に延びるベースと、前記ベース上を前記走査方向に少なくとも前記所定のストロークで移動可能なガイド用移動体とを有し、
前記移動体は、前記ガイド用移動体と共に前記ベース上を前記走査方向に移動する請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記一対のガイド装置それぞれが有する前記ガイド用移動体の少なくとも一方に設けられた第1固定子と、前記移動体に設けられた第1可動子とを含む第1リニアモータを更に備え、
前記移動体は、前記ガイド装置が前記走査方向に直交する方向に移動する際には、前記第1リニアモータによって、前記ガイド用移動体に非接触状態で同期駆動されることにより前記ガイド用移動体と共に前記走査方向に直交する方向に移動する請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第1リニアモータは、前記移動体の重心位置を通り前記走査方向に直交する方向に平行な軸線上で前記移動体に推力を作用させる請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記移動体は、前記一対のガイド装置それぞれが有する前記ガイド用移動体それぞれに設けられた第2固定子と、前記移動体に設けられた一対の第2可動子とを含む一対の第2リニアモータによって、前記ガイド用移動体に非接触状態で同期駆動されることにより前記ガイド用移動体と共に前記走査方向に移動する請求項2〜4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記一対の第2リニアモータは、それぞれ前記移動体の重心位置に対して対称な位置に推力を作用させる請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記移動体は、前記一対の第2リニアモータが発生する推力差により前記水平面に直交する軸線周り方向に適宜微少駆動される請求項5又は6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記ガイド用移動体は、前記ベースに設けられた固定子と、前記ガイド用移動体に設けられた可動子とを含むリニアモータにより前記ベースに対して前記走査方向に駆動される請求項2〜7のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記移動体を下方から支持し、前記一対のガイド装置と共に前記走査方向に直交する方向に移動可能な支持部材を更に備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記移動体は、前記支持部材に非接触支持される請求項9に記載の露光装置。
【請求項11】
前記支持部材を前記走査方向に直交する方向に機械的に案内する一軸ガイド装置を更に備える請求項9又は10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記支持部材は、前記走査方向に直交する方向に所定間隔で複数設けられる請求項9〜11のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項13】
前記複数の支持部材が互いに機械的に接続され、一体的に前記走査方向に直交する方向に移動する請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記支持部材は、接続装置により前記一対のガイド装置に機械的に接続され、前記接続装置を介して前記一対のガイド装置に牽引される請求項9〜13のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項15】
前記接続装置は、前記走査方向に直交する方向の剛性に比べて他の方向の剛性が低い請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記接続装置は、前記支持部材の重心位置を含む前記水平面に平行な平面内で前記支持部材に接続される請求項14又は15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記接続装置は、前記走査方向に離間して一対設けられ、
前記一対の接続装置は、前記支持部材の重心位置から等距離に配置される請求項13〜16のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項18】
前記支持部材は、前記ガイド装置に設けられた押圧装置に押圧されることにより前記走査方向に直交する方向に移動する請求項9〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項19】
前記移動体が前記走査方向に所定のストロークで移動する際に、前記押圧装置は、前記支持部材から離間する請求項18に記載の露光装置。
【請求項20】
前記一対のガイド装置が機械的に連結され、一体的に前記走査方向に直交する方向に移動する請求項1〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
前記物体には、所定のパターンが形成され、
前記パターンは、前記物体に同期して前記走査方向に移動する所定の露光対象物体に前記エネルギビームを用いて転写される請求項1〜20のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項22】
前記露光対象物体には、投影光学系を介して前記エネルギビームが照射されることにより前記パターンが転写され、
前記移動体、及びガイド装置は、少なくとも前記水平面に平行な方向に関して前記投影光学系に対して振動的に分離される請求項21に記載の露光装置。
【請求項23】
前記投影光学系は、前記パターン像を拡大する拡大光学系である請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記露光対象物体は、フラットパネルディスプレイの製造に用いられる基板である請求項21〜23のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項25】
請求項24に記載の露光装置を用いて前記露光対象物体を露光することと;
露光された前記露光対象物体を現像することと;を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項26】
請求項21〜23のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記露光対象物体を露光することと;
露光された前記露光対象物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−58391(P2012−58391A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199931(P2010−199931)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】